(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】モルタル、及びコンクリート材料中のクレイ微粒子検出方法
(51)【国際特許分類】
C04B 28/02 20060101AFI20240408BHJP
C04B 14/10 20060101ALI20240408BHJP
C04B 14/02 20060101ALI20240408BHJP
G01N 33/38 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
C04B28/02
C04B14/10 B
C04B14/02 Z
G01N33/38
(21)【出願番号】P 2020020445
(22)【出願日】2020-02-10
【審査請求日】2022-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(73)【特許権者】
【識別番号】591121111
【氏名又は名称】株式会社安部日鋼工業
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 浩
(72)【発明者】
【氏名】大村 一馬
(72)【発明者】
【氏名】宮島 朗
(72)【発明者】
【氏名】辛 軍青
(72)【発明者】
【氏名】石井 豪
【審査官】小川 武
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-074676(JP,A)
【文献】特許第6606782(JP,B1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0308800(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0037800(US,A1)
【文献】特開2010-173914(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1595102(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0177663(US,A1)
【文献】西田 勇一 ,第3章 新しい保湿剤の特性と効果 スメクタイトの特性と効果,FRAGRANCE JOURNAL 臨時増刊,2000年,No.17,P.175-184
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B2/00-32/02
C04B40/00-40/06
C04B103/00-111/94
G01N 33/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント100重量部に対して、
合成ヘクトライト、合成スティーブンサイト、合成サポナイト、及びこれらの変性品から選択された一種以上の、最大直径が10μmであるクレイ微粒子を0.16~0.75重量部含有
し、
製造28日後の透気係数が0.0024×10
-16
m
2
~0.0028×10
-16
m
2
であり、
混練後 硬化するまでの間、静止状態ではゲルを形成し、
振動変形下でのみ流動体となり、材料分離が発生しないことを特徴とするモルタル。
【請求項2】
セメント、骨材、ならびに合成ヘクトライト、合成スティーブンサイト、合成サポナイト、及びこれらの変性品から選択された一種以上の、最大直径が10μmであるクレイ微粒子を含むコンクリート材料中の
クレイ微粒子含有量の検出方法であって、
硬化前の前記コンクリート材料を水に懸濁して、前記コンクリート材料の懸濁液を作成する工程と、
前記コンクリート材料の懸濁液を40分間静置し、上澄み液を採取する工程と、
上澄み液を乾燥させて乾燥物の質量を計測して評価する工程と、
前記乾燥物の質量を、
下記式(1)、
Y=2.75X - 4.02 (式1)
のYに代入して、クレイ微粒子の添加量(X)を計算する工程と、
を備えていることを特徴とするコンクリート材料中の
クレイ微粒子含有量の検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント及びクレイ微粒子を含む硬化性無機材料に関する。また、硬化性無機材料中のクレイ微粒子を検出するための、検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートに代表される硬化性無機材料が、建築や土木の分野で広く使用されている。一般的なコンクリートは、水、セメント、骨材を主な原料としており、これらの原料を混練し、硬化させて所望の形状の構造物を得ている。
【0003】
コンクリートを用いて構造物を製造する場合、硬化前のフレッシュコンクリートを型枠へ充填しつつ、加振して締め固めする工程が必要となっている。この作業は自動化が難しいために、加振せずに充填が可能な高流動コンクリートが開発されている。特許文献1には、スメクタイトクレーとホスホネート添加剤から成る、コンクリートに適用可能な添加剤によって流動性を高める技術が開示されている。
【0004】
高流動コンクリートを用いることで、製造現場における充填作業の効率化を実現することができる。しかしながら、高流動コンクリートは従来のコンクリートよりも高価であること、また、長距離の移動では材料分離が発生しやすく品質管理が難しいこと、等の課題があった。
【0005】
一方、硬化後のコンクリートは基本的に多孔質体であり、透気性を有している。透気性が大きすぎるコンクリートは同時に透水性も大きくなり、中性化が進み易く、耐久性に劣ることが知られている。このため、コンクリートの防水性を高め、透気性を小さくさせる各種の試みが行われている。特許文献2には、コンクリートの表面にシラン化合物を含有する下塗層と、アクリル系樹脂を含有する中塗層と、上塗層を順次配設するコンクリートの保護技術が開示されている。特許文献3には、水膨潤性合成無機層状珪酸塩と疎水性樹脂水性分散体を含有する組成物から形成される被膜をコンクリートの表面に塗布して通気性を抑える技術が開示されている。特許文献4には、セメント、ポゾラン微粉末、ヘクトライト、骨材の砂、及び軽量骨材を含有する吹付け材料をコンクリートに吹き付けて耐久性を向上させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2003-212621号公報
【文献】特開2013-159537号公報
【文献】特開2006-027237号公報
【文献】特開2006-206403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般的なコンクリートは、混練後の成形時に材料分離が発生することが問題となっている。また、硬化後の劣化を防止して、耐久性を高めることが求められている。本発明の解決しようとする課題は、これらの解決すべき課題に鑑みてなされたものであって、硬化前の状態で、好ましい流動性を維持して取り扱いが容易であると同時に、材料分離の発生が抑制された硬化性無機材料の提供を、解決しようとする課題としている。
【0008】
本発明のもう一つの解決しようとする課題は、硬化後の透気性が小さく、耐久性の高い成形品を得ることのできる硬化性無機材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のモルタルは、セメント100重量部に対して、合成ヘクトライト、合成スティーブンサイト、合成サポナイト、及びこれらの変性品から選択された一種以上の、最大直径が10μmであるクレイ微粒子を0.16~0.75重量部含有し、
混練後 硬化するまでの間、静止状態ではゲルを形成し、
振動変形下でのみ流動体となり、材料分離が発生しないことを特徴とする。
【0010】
発明者らは、クレイ微粒子を含有することで、硬化性無機材料の硬化前および硬化後の特性を改善できることを見いだして、本発明をなすに至った。
【0011】
本発明のモルタルは、製造28日後の透気係数が0.0024×10-16m2~0.0028×10-16m2であることを特徴とする。
【0012】
本発明はまた、コンクリート材料に含まれるクレイ微粒子含有量の検出方法を提供する。本発明のクレイ微粒子検出方法は、セメント、骨材、ならびに合成ヘクトライト、合成スティーブンサイト、合成サポナイト、及びこれらの変性品から選択された一種以上の、最大直径が10μmであるクレイ微粒子を含むコンクリート材料中のクレイ微粒子含有量の検出方法である。クレイ微粒子検出方法は、硬化前のコンクリート材料を水に懸濁して、コンクリート材料の懸濁液を作成する工程と、コンクリート材料の懸濁液を40分間静置し、上澄み液を採取する工程と、上澄み液を乾燥させて乾燥物の質量を計測して評価する工程と、乾燥物の質量を、下記式(1)、
Y=2.75X - 4.02 (式1)
のYに代入して、クレイ微粒子の添加量(X)を計算する工程とを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の硬化性無機材料は、混練後硬化するまでの間、静止状態ではゲルを形成し、振動変形下でのみ粘度の低い流動体となり、材料分離が発生しない。
【0014】
本発明の硬化性無機材料は、硬化することで、透気係数の小さい高耐久性の成形品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1(a)は、実施例1の加振試験前のフレッシュコンクリートを示し、
図1(b)は加振試験後のフレッシュコンクリートを示す図面代用写真である。
【
図2】
図2(a)は、実施例2の加振試験前のフレッシュコンクリートを示し、
図2(b)は加振試験後のフレッシュコンクリートを示す図面代用写真である。
【
図3】
図3は、実施例3のフレッシュコンクリートの加振試験結果を示す図面代用写真である。
【
図4】
図4は、実施例4のフレッシュコンクリートの加振試験結果を示す図面代用写真である。
【
図5】
図5は、硬化性無機材料に含まれるクレイ微粒子の量と、硬化性無機材料の懸濁液から採取した上澄み液に含まれる粒子の質量との関係を示したグラフである。
【
図6】
図6(a)は、モルタルと水の混合物を振盪した直後の状態を示し、
図6(b)は、静置後に二層化した混合物の状態を示す。
【
図7】
図7は、硬化性無機材料に含まれるクレイ微粒子の量と、溶媒と混合して静置したときの硬化性無機材料の層の高さとの関係を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明にかかる硬化性無機材料の最適な実施の形態を示す。
【0017】
本発明の硬化性無機材料は、クレイ微粒子を0.0001重量部以上15重量部以下の割合で含むことを特徴とする。本発明におけるクレイ微粒子とは、ケイ酸塩化合物からなる薄片状の鉱物である。クレイ微粒子は、数十個単位で粒子が積み重なり、最大直径が10μm前後となる層状の構造を示している。
【0018】
本発明のクレイ微粒子は、合成ヘクトライト(Na0.3(Mg2.7, Li0.3)Si4O10(OH)2 )、合成スティーブンサイト((Ca0.5, Na)0.3(Mg, Fe)3Si4O10(OH)2 )、合成サポナイト((Ca0.5, Na)0.3(Mg, Fe)3(Si, Al)4O10(OH)2)、及びこれらの変性品で構成することができる。これらのクレイ微粒子は、水とセメントを含む流動性のある分散質に分散させることで、個々の微粒子が周囲に水分子を結合した状態のコロイドとなり、組成物全体のレオロジー特性を改善する。具体的には、組成物全体の保水力を向上させ、同時に、弾性体化させ、降伏応力を上昇させ、塑性粘度を降下させる。
【0019】
クレイ微粒子は、組成物中のより大きな粒子の間に入り込んで分散した状態になるため、非常に微量でもレオロジー特性の改善効果を示す。具体的には、0.0001重量部の含有量でも、保水性を改善し、高度なチキソトロピー性を与え、材料分離を発生させない。一方、15重量部を超えて添加すると均一な分散が困難になり、その結果、硬化性無機材料全体が不均一な物性を示すため、好ましくない。
【0020】
本発明に係る硬化性無機材料中のクレイ微粒子の好適な検出方法を説明する。本発明の検出方法は、混練後のフレッシュ状態の硬化性無機材料を水に懸濁して、硬化性無機材料の懸濁液を作成することが好ましい。そして、硬化性無機材料懸濁液を10分以上静置して、固形分を沈殿させ、上澄み液を採取する。この上澄み液には、硬化性無機材料の中から分離したクレイ微粒子が含まれており、上澄み液を乾燥させることで、上澄み液に含まれるクレイ微粒子を分離することができる。硬化性無機材料中のクレイ微粒子の重量と、硬化性無機材料の懸濁液の上澄みに含まれるクレイ微粒子の重量との間には、高い相関関係が認められるので、上澄み液に含まれていた固形分の質量を計測することで、硬化性無機材料中のクレイ微粒子を検出することができる。
【実施例】
【0021】
本発明の硬化性無機材料について、コンクリートから骨材を除いたモルタルとして具現化した実施例と、硬化性無機材料中に含まれるクレイ微粒子の検出方法の例について、以下に説明する。
【0022】
(実施例1)
水6.5Kg,セメント16.2Kg,細骨材48.6Kg、クレイ微粒子であるヘクトライトのフッ素変性品0.0258Kgを混練してフレッシュ状態のモルタル(以下、単にフレッシュモルタルとも言う)を製造した。
【0023】
硬化前のフレッシュモルタルの材料分離の有無を調べる加振試験について説明する。最初に、混練直後のフレッシュモルタルを円錐台形状の容器に充填する。次に、容器を上下転倒してフレッシュモルタルの塊を引き抜き、支持台となる平板上に静置した。そして、支持台をバイブレータ(軽便電棒、エクセン株式会社製)によって加振した。
【0024】
本実施例のフレッシュモルタルは、加振と共に流動して拡がり、約40秒で円筒状の原型をとどめない形状となった。しかし、このとき材料分離は発生せず、フレッシュモルタルの外観は均一であった。加振試験前のフレッシュモルタルの状態を
図1(a)に示し、加振試験後の材料分離が発生していないフレッシュモルタルの状態を
図1(b)に示す。
【0025】
本実施例のフレッシュモルタルを硬化してモルタルとしたときの特性を、透気係数によって評価した。コンクリート、モルタル等の透気係数は、外部からの水や劣化因子の浸透しやすさと強い関連性があり、コンクリート構造物の耐久性を評価する指標として使用される。
【0026】
透気係数の測定にはトレント法を採用した。測定装置としてパーマトール、エフティ-エス株式会社製を用い、コンクリートの表面を密閉して真空ポンプによって吸引し、真空圧力空間を形成した。そして一定時間経過後に圧力変化を測定した。
【0027】
トレント法による測定の結果、本実施例のモルタルは、製造28日後の透気係数が、0.0024×10-16m2であった。
【0028】
(実施例2)
水7.1Kg,セメント16.2Kg,細骨材48.6Kg、クレイ微粒子であるヘクトライトのフッ素変性品0.0258Kgを混練してフレッシュモルタルを製造した。
【0029】
実施例1と同一の方法で本実施例のモルタルの加振試験をおこなった。フレッシュモルタルは加振と共に流動して拡がり、約9秒で円筒状の原型をとどめない形状となった。しかし、このとき材料分離は発生せず、フレッシュモルタルの外観は均一であった。加振試験前のフレッシュモルタルの状態を
図2(a)に示し、加振試験後の材料分離が発生していないフレッシュモルタルの状態を
図2(b)に示す。
【0030】
本実施例のフレッシュモルタルを硬化してモルタルとしたときの透気係数をトレント法により測定した。本実施例のモルタルは、製造28日後の透気係数が、0.0028×10-16m2であった。
【0031】
(実施例3)
水6.0Kg,セメント16.0Kg,細骨材50.0Kg、クレイ微粒子であるヘクトライトのフッ素変性品、0.04Kgを混練してフレッシュモルタルを製造した。このモルタルは、水の割合が多く、通常は材料分離が発生する配合である。
【0032】
JIS A 1150に準拠したスランプフロー試験方法で、本実施例のモルタルの加振試験をおこなった。このとき材料分離は発生せず、フレッシュモルタルの外観は均一であった。加振試験後の材料分離が発生していないフレッシュモルタルの状態を
図3に示す。
【0033】
(実施例4)
水8.0Kg,セメント16.0Kg,細骨材50.0Kg、クレイ微粒子であるヘクトライトのフッ素変性品、0.12Kgを混練してフレッシュモルタルを製造した。このモルタルは、水の割合が特に多く、通常はモルタルとしての使用が困難な配合である。
【0034】
JIS A 1150に準拠したスランプフロー試験方法で、本実施例のモルタルの加振試験をおこなった。このとき材料分離は発生せず、フレッシュモルタルの外観は均一であった。加振試験後の材料分離が発生していないフレッシュモルタルの状態を
図4に示す。
【0035】
(比較例)
水6.5Kg,セメント16.2Kg,細骨材48.6Kgを混練して、フレッシュモルタルを製造した。
【0036】
比較例のフレッシュモルタルを硬化してモルタルとしたときの透気係数をトレント法により測定した。クレイ微粒子を全く含まないモルタルは、製造28日後の透気係数が、0.0069×10-16m2であった。
【0037】
実施例1のモルタルの透気係数が0.0024×10-16m2であり、実施例2のモルタルの透気係数が0.0028×10-16m2であることと比較すると、比較例のモルタルの透気係数は有意に高い。
【0038】
クレイ微粒子を加えたモルタルは、クレイ微粒子の保水効果、いわゆる内部養生効果によって、内部組織が緻密になり、透気係数が小さくなっている。透気係数の比較結果から、実施例のモルタルは、従来のモルタルよりも耐久性が向上していることが明らかとなった。
【0039】
(クレイ微粒子を検出する方法の実施例)
セメント100g、クレイ微粒子5gからなる硬化性無機材料を、水895gと混合して懸濁液を得た。硬化性無機材料懸濁液を40分間静置した後、上澄み液を採取した。採取した上澄み液を乾燥させて質量を計測したところ、9.39gであった。
【0040】
同様に、セメント100g、クレイ微粒子8gからなる硬化性無機材料を水892gに懸濁し、上澄み液を採取して乾燥させたところ、19.66gの乾燥物を得た。セメント100g、クレイ微粒子10gからなる硬化性無機材料を水890gに懸濁し、上澄み液を採取して乾燥させたところ、21.01gの乾燥物を得た。セメント100g、クレイ微粒子12.5gからなる硬化性無機材料を水887.5gに懸濁し、上澄み液を採取して乾燥させたところ、31.73gの乾燥物を得た。セメント100g、クレイ微粒子15.0gからなる硬化性無機材料を水885gに懸濁し、上澄み液を採取して乾燥させたところ、36.84gの乾燥物を得た。
【0041】
硬化性無機材料に含まれるクレイ微粒子の量と、硬化性無機材料の懸濁後に採取した上澄み液の乾燥質量との間には、高い相関関係が認められる。
図5に、硬化性無機材料に含まれるクレイ微粒子の量と、硬化性無機材料の上澄み液の乾燥質量との関係をグラフで示す。硬化性無機材料中のクレイ微粒子の添加量(X)gに対する乾燥質量(Y)gの関係は、
Y=2.75X - 4.02 (式1)
で、相関係数R
2=0.98であった。
【0042】
以上の結果から、硬化性無機材料を懸濁して上澄み液を採取し、これを乾燥して得られた乾燥物の質量を測定することで、硬化性無機材料に含まれるクレイ微粒子を検出して定量できることが明らかとなった。
【0043】
(クレイ微粒子を検出する方法の代替例)
硬化性無機材料に含まれるクレイ微粒子を検出するための、より簡易な代替例を以下に示す。
【0044】
代替例の検出方法は、硬化性無機材料と溶媒を透明な密封容器に入れて振盪し、一定時間静置する工程を有する。硬化性無機材料と溶媒の混合物は、振盪直後は均一な懸濁液となっているが、時間の経過と共に硬化性無機材料が沈降し、上層の上澄み液と下層の材料層に二層化する。
図6(a)に、振盪直後の混合物の状態を示し、
図6(b)に、二層化した混合物の状態を示す。
【0045】
クレイ微粒子を含む硬化性無機材料は、水と混合して振盪し静置した時に、硬化性無機材料の沈降が遅く、上澄み液と材料層の界面の位置変化が小さい。言い換えると、振盪後に静置した状態でも、材料層の液面高さが維持される。また、クレイ微粒子の含有量が多い硬化性無機材料ほど、材料層の沈降が遅く、材料層の液面が高い状態のまま維持される。材料層の液面高さによって、クレイ微粒子の含有量を精度高く推定することが可能になる。
【0046】
図7に、クレイ微粒子を含むモルタルを水と混合して振盪した後、40分静止して、材料層であるモルタル層の液面高さを測定した結果を示す。クレイ微粒子の添加量は、セメント100重量部に対して、5重量部、8重量部、10重量部、12.5重量部、15重量部の5水準に設定した。
図7に示すとおり、クレイ微粒子の添加量が多いほど、モルタル層の液面が高い状態のまま維持されており、クレイ微粒子の添加量とモルタル層の液面高さとは比例している。
【0047】
以上の結果から、上澄み液を乾燥させる方法以外に、懸濁液の液面高さの相対的な比較によっても、硬化性無機材料中のクレイ微粒子を検出できることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の硬化性無機材料は、セメント、コンクリート、モルタル、セメントペーストに利用することができる。