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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】合成樹脂製容器蓋
(51)【国際特許分類】
   B65D 55/02 20060101AFI20240408BHJP
   B65D 41/34 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
B65D55/02
B65D41/34
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020000814
(22)【出願日】2020-01-07
(65)【公開番号】P2021109661
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2022-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000228442
【氏名又は名称】日本クロージャー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100194629
【弁理士】
【氏名又は名称】小嶋 俊之
(72)【発明者】
【氏名】大森 慎二
(72)【発明者】
【氏名】杉山 尚
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー マイケル マズールキエヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】プラナフ バット
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー ブランカ
【審査官】矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-18290(JP,A)
【文献】特開2014-61929(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0032402(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0312305(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 55/02
B65D 41/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
口頸部の外周面には雄螺条及び該雄螺条の下方に位置する係止あご部が形成されている容器に適用される合成樹脂製容器蓋であって、天面壁及び該天面壁の周縁から垂下する筒状スカート壁を有し、該スカート壁の内周面には該雄螺条に螺合せしめられる雌螺条が形成されている本体と、周方向に間隔をおいて配設された複数個の破断橋絡部を介して該本体の該スカート壁に接続され、内周面には該係止あご部に係止せしめられる係止手段が配設されている筒状タンパーエビデント裾部とを含み、該係止手段は周方向に間隔をおいて配設され且つ該タンパーエビデント裾部に接続された基端から上方及び半径方向内方に延出する複数個の係止片又は周方向に連続して延在し且つ該タンパーエビデント裾部に接続された基端から上方及び半径方向内方に延出する環状の係止片から構成されており、該本体の該スカート壁には下方に突出する突出片が配設されており、そして更に該本体のスカート壁と該タンパーエビデント裾部とを接続し且つ該タンパーエビデント裾部に対する該本体の上方への移動を許容する非破断接続片が配設されている合成樹脂製容器蓋において、
少なくとも該突出片が存在する角度領域において、該係止片には該口頸部に合成樹脂製容器蓋を装着した状態において該口頸部の該係止あご部と該タンパーエビデント裾部との間に位置する延出部が形成されており、該延出部の外面には被係合手段が形成されており、
該突出片の外面には該被係合手段に係合する係合手段が形成されており、
該口頸部に合成樹脂製容器蓋が装着され該口頸部が密封されている状態において、該口頸部を開封するために該本体が開方向に回転され、該破断橋絡部が破断されて該タンパーエビデント裾部から該本体が上方に移動され、該非破断接続部の所定部位を旋回中心として該本体が該タンパーエビデント裾部に対して所定角度を超えて旋回されると、該突出片の下部が該延出部を弾性的に乗り越えて、該突出片の該係合手段が該延出部の該被係合手段に係止せしめられる、
ことを特徴とする合成樹脂製容器蓋。
【請求項2】
該延出部の該外面は、上方に向かって漸次半径方向外方に突出し、次いで上方に向かって漸次半径方向内方に後退しており、漸次半径方向外方に突出する領域と漸次半径方向内方に後退する領域との境界領域が該被係合手段を構成している、請求項1記載の合成樹脂製容器蓋。
【請求項3】
該延出部の該外面における、上方に向かって漸次半径方向外方に突出する部位は縦断面において円弧状である、請求項2記載の合成樹脂製容器蓋。
【請求項4】
該突出片の該外面には周方向に延在する少なくとも1個の突条又は溝が形成されており、該突条又は該溝が該係合手段を構成している、請求項1から3までのいずれかに記載の合成樹脂製容器蓋。
【請求項5】
該突出片の該外面には隆起部が形成されており、該突条又は該溝が該隆起部に配設されている、請求項4記載の合成樹脂製容器蓋。
【請求項6】
該係止片の内面には、該口頸部に合成樹脂製容器蓋を装着した状態において、該係止あご部の下方において半径方向内方に突出する係止突起が形成されている、請求項1から5までのいずれかに記載の合成樹脂製容器蓋。
【請求項7】
該延出部は該突出片が存在する角度領域以外においても形成されている、請求項1から6までのいずれかに記載の合成樹脂製容器蓋。
【請求項8】
該係止手段は周方向に間隔をおいて配設され且つ該タンパーエビデント裾部に接続された基端から上方及び半径方向内方に延出する複数個の係止片から構成されており、該延出部は該係止片の各々の周方向両側部に夫々形成されている、請求項1から7までのいずれかに記載の合成樹脂製容器蓋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口頸部の外周面には雄螺条及びこの雄螺条の下方に位置する係止あご部が形成されている容器に適用され、容器の口頸部を開封した後においても容器蓋の全体が容器の口頸部から分離されることがない、タンパーエビデント特性を備えた合成樹脂製容器蓋に関する。
【背景技術】
【0002】
口頸部の外周面には雄螺条及びこの雄螺条の下方に位置する係止あご部が形成されている容器に適用される合成樹脂製容器蓋として、下記特許文献1乃至3には、天面壁及びこの天面壁の周縁から垂下する筒状スカート壁を有し、スカート壁の内周面には口頸部の雄螺条に螺合せしめられる雌螺条が形成されている本体と、周方向に間隔をおいて配設された複数個の破断橋絡部を介して該本体の該スカート壁に接続され、内周面には係止あご部に係止せしめられる係止手段が配設されている筒状タンパーエビデント裾部と、を含む形態の合成樹脂製容器蓋が開示されている。係止手段は周方向に間隔をおいて配設され且つタンパーエビデント裾部に接続された基端から上方及び半径方向内方に延出する複数個の係止片又は周方向に連続して延在し且つタンパーエビデント裾部に接続された基端から上方及び半径方向内方に延出する1個の係止片から構成されている。更に、本体のスカート壁には下方に突出する突出片が配設されており、突出片の周方向片側又は両側には、本体のスカート壁とタンパーエビデント裾部とを接続し且つタンパーエビデント裾部に対する本体の上方への移動を許容する非破断接続片が配設されている。
【0003】
上記のとおりの容器蓋を容器の口頸部に装着して口頸部を密封する際には、口頸部に容器蓋を被嵌して閉方向に回転し、容器蓋の雌螺条を口頸部の雄螺条に螺合せしめる。螺合の進行に応じて口頸部に対して容器蓋が下降され、タンパーエビデント裾部に形成されている係止手段は口頸部の係止あご部を弾性的に乗り越えてその下方に位置せしめられる。口頸部を開封する際には、容器蓋を開方向に回転せしめて口頸部の雄螺条と容器蓋の雌螺条との螺合を解除する。螺合の解除に応じて容器蓋の本体は口頸部に対して上昇されるが、タンパーエビデント裾部は係止手段が口頸部の係止あご部に係止することによって上昇が阻止され、従って破断橋絡部に応力が生成され破断橋絡部が破断される。破断橋絡部が破断された後に本体が上昇を続け、タンパーエビデント裾部から本体が上方に離隔されると、これに応じて非破断接続片が変形せしめられるが、非破断接続片が破断されることはなくタンパーエビデント裾部は口頸部に装着され続け、本体が口頸部から離脱された後においても本体は非破断接続片を介してタンパーエビデント裾部に接続させ続け、従って容器の口頸部から分離されることはない。容器蓋の本体が口頸部から離脱された後においては、非破断接続片の所定部位を旋回中心として容器蓋の本体が口頸部から離隔する方向に旋回される。そして、容器蓋の本体が所定角度を超えて旋回されると、スカート壁に形成されている突出片の先端部が口頸部の係止あご部を弾性的に乗り越えて係止あご部の上面側に位置し、これによって本体が口頸部に接近する方向に戻ることが阻止され、本体は口頸部から離隔した位置に保持され、口頸部が開封された状態に維持させる。突出片の先端部が係止あご部を弾性的に乗り越える際には、突出片が弾性的に変形し次いで弾性的に復元することに起因して音が発生され、これによって消費者は容器蓋の本体が所要開位置まで旋回されたことを認識することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-18290号公報
【文献】特開2012-76771号公報
【文献】特開2014-31202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
而して、近時における環境問題及び材料コスト削減の観点から包装容器の軽量化が要請され、容器蓋においても薄肉化と共に軸線方向寸法の低減が要請されている状況において、本発明者等の経験によれば、上記のとおりの従来の容器蓋には、特に口頸部の軸線方向長さが比較的短く、これに応じて容器蓋の軸線方向寸法が比較的短い(即ち上下方向高さは比較的低い)場合、口頸部を開封するために口頸部から離脱された本体を口頸部から離隔する方向に旋回し、これによって突出片の先端部が口頸部の係止あご部を弾性的に乗り越えて係止あご部の上側に位置する際に、容器蓋の軸線方向寸法が比較的短いことに起因して突出片の延出長さも比較的短くなってしまう故に、突出片と係止あご部との相互干渉量が過小になり、(1)突出片の先端部が一旦係止あご部の上側になった後に偶発的に突出片の先端部が係止あご部の下側に戻ってしまって本体が所要開位置に維持されない傾向がある、(2)突出片が係止あご部を弾性的に乗り越える際の音の発生が不充分で消費者は本体が所要開位置まで旋回されたことを認識することができないことが少なくない、という解決すべき問題があることが判明している。
【0006】
上記問題を解決するために、本発明者等は、先に、特願2019-025644の明細書において、少なくとも突出片が存在する角度領域には、口頸部に容器蓋を装着した状態において口頸部の係止あご部とタンパーエビデント裾部との間に位置する延出部を係止片に形成することによって、容器蓋の軸線方向長さが比較的短い場合でも、口頸部から離脱された本体が所要開位置まで旋回されると、本体はかかる所要開位置に充分確実に維持され、そしてまた本体が所要開位置に旋回される際には消費者が聴取することができる音が充分確実に発生されるようにすることを提案した。
【0007】
然るに、本発明者等が先に提案した合成樹脂製容器蓋も、未だ充分に満足することができるものではなく、次のとおりの問題が残留することが判明した。即ち、容器蓋の本体は、所要開位置において突出片の下部の外面が延出部の上部の外面と当接することで所要開位置に維持されるが、容器蓋の軸線方向長さが比較定短い場合には突出片の軸線方向寸法も比較的短くなるため、本体が所要開位置にあるときの、容器の口頸部に対する本体の旋回角度が充分に大きくなく、使用者が容器の口頸部の上端部に口をつけた際に、スカート壁の下端が使用者の顔面に当接してしまい使用者を不快にさせてしまう虞がある。更に、突出片の軸線方向寸法が比較的短くなることで、突出片の下部の外面が延出部の上部の外面に充分確実に当接することができなくなり、容器蓋の本体が所要開位置に維持されなくなる虞もある。
【0008】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、本発明者等が先に提案した合成樹脂製容器蓋に更に改良を加えて、容器蓋の軸線方向長さが比較的短い場合であっても、本体が所要開位置にあるときの、容器の口頸部に対する本体の回転角度を充分大きくすることができ且つかかる旋回角度を大きくした場合であっても本体は充分確実に所要開位置に維持されるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、更に鋭意検討を加えた結果、延出部の外面には被係合手段を、突出片の外面には被係合手段に係合する係合手段を夫々形成し、口頸部に容器蓋が装着され口頸部が密封されている状態において、口頸部を開封するために本体が開方向に回転され、破断橋絡部が破断されてタンパーエビデント裾部から本体が上方に移動され、非破断接続片の所定部位を旋回中心として本体がタンパーエビデント裾部に対して所定角度を超えて旋回されると、突出片の下部が延出部を弾性的に乗り越えて、突出片の係合手段が延出部の被係合手段に係止せしめられるようにすることで、上記主たる技術的課題を解決することができることを見出した。
【0010】
即ち、本発明によれば、上記主たる技術的課題を達成する合成樹脂製容器蓋として、
口頸部の外周面には雄螺条及び該雄螺条の下方に位置する係止あご部が形成されている容器に適用される合成樹脂製容器蓋であって、天面壁及び該天面壁の周縁から垂下する筒状スカート壁を有し、該スカート壁の内周面には該雄螺条に螺合せしめられる雌螺条が形成されている本体と、周方向に間隔をおいて配設された複数個の破断橋絡部を介して該本体の該スカート壁に接続され、内周面には該係止あご部に係止せしめられる係止手段が配設されている筒状タンパーエビデント裾部とを含み、該係止手段は周方向に間隔をおいて配設され且つ該タンパーエビデント裾部に接続された基端から上方及び半径方向内方に延出する複数個の係止片又は周方向に連続して延在し且つ該タンパーエビデント裾部に接続された基端から上方及び半径方向内方に延出する環状の係止片から構成されており、該本体の該スカート壁には下方に突出する突出片が配設されており、そして更に該本体のスカート壁と該タンパーエビデント裾部とを接続し且つ該タンパーエビデント裾部に対する該本体の上方への移動を許容する非破断接続片が配設されている合成樹脂製容器蓋において、
少なくとも該突出片が存在する角度領域において、該係止片には該口頸部に合成樹脂製容器蓋を装着した状態において該口頸部の該係止あご部と該タンパーエビデント裾部との間に位置する延出部が形成されており、該延出部の外面には被係合手段が形成されており、
該突出片の外面には該被係合手段に係合する係合手段が形成されており、
該口頸部に合成樹脂製容器蓋が装着され該口頸部が密封されている状態において、該口頸部を開封するために該本体が開方向に回転され、該破断橋絡部が破断されて該タンパーエビデント裾部から該本体が上方に移動され、該非破断接続部の所定部位を旋回中心として該本体が該タンパーエビデント裾部に対して所定角度を超えて旋回されると、該突出片の下部が該延出部を弾性的に乗り越えて、該突出片の該係合手段が該延出部の該被係合手段に係合せしめられる、
ことを特徴とする合成樹脂製容器蓋が提供される。
【0011】
好ましくは、該延出部の該外面は、上方に向かって漸次半径方向外方に突出し、次いで上方に向かって漸次半径方向内方に後退しており、漸次半径方向外方に突出する領域と漸次半径方向内方に後退する領域との境界領域が該被係合手段を構成している。この場合には、該延出部の該外面における、上方に向かって漸次半径方向外方に突出する部位は縦断面において円弧状であるのが良い。好適には、該突出片の該外面には周方向に延在する少なくとも1個の突条又は溝が形成されており、該突条又は該溝が該係合手段を構成している。この場合には、該突出片の該外面には隆起部が形成されており、該突条又は該溝が該隆起部に配設されている。該係止片の内面には、該口頸部に合成樹脂製容器蓋を装着した状態において、該係止あご部の下方において半径方向内方に突出する係止突起が形成されているのが好ましい。該延出部は該突出片が存在する角度領域以外においても形成されているのが好適である。好ましくは、該係止手段は周方向に間隔をおいて配設され且つ該タンパーエビデント裾部に接続された基端から上方及び半径方向内方に延出する複数個の係止片から構成されており、該延出部は該係止片の各々の周方向両側部に夫々形成されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の容器蓋においては、本体は突出片の外面に形成された係合手段が延出部の外面に形成された被係合手段に係合することで所要開位置に保持されるため、容器蓋の軸線方向長さが比較的短い場合であっても、本体が所要開位置にあるときの容器の口頸部に対する本体の回転角度を大きくすることができ且つかかる回転角度を大きくした場合であっても本体は充分確実に所要開位置に維持される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1に示す容器蓋の正面図。
図2図1に示す容器蓋の一部を断面で示す正面図。
図3図1に示す容器蓋の底面図。
図4図1に示す容器蓋を容器の口頸部に装着した状態を、一部を断面で示す右側面図。
図5図1の容器蓋の本体を容器の口頸部から離脱せしめるために本体を開方向に回転せしめて上昇せしめた開封操作中間状態を示す正面図。
図6図1の容器蓋の本体を、口頸部から離脱した後に口頸部から離隔する方向に幾分か旋回せしめた状態を、一部を断面で示す側面図。
図7図1の容器蓋の本体を容器の口頸部から離脱した後に口頸部から離隔する方向に所定開位置まで旋回した状態を、一部を断面で示す側面図。
図8図7における突出片近傍の拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明に従って構成された合成樹脂製容器蓋の好適実施形態について、更に詳述する。
【0015】
本発明に従って構成された合成樹脂製容器蓋の好適実施形態を図示している図1乃至図3を参照して説明すると、ポリエチレン又はポリプロピレンの如き適宜の合成樹脂から射出成形又は圧縮成形によって好都合に一体成形することができる、全体を番号2で示す容器蓋は、本体4とタンパーエビデント裾部6とを含んでいる。本体4は円形天面壁8とこの天面壁8の周縁から垂下する円筒形状のスカート壁10を有する。天面壁8の内面の外周縁部には2条のシール突条、即ち内側環状突条12及び外側環状突条14が形成されている。天面壁8の内面の中央領域には変形防止手段15が設けられている。変形防止手段15は、天面壁8の内面中央において下方に突出する突部15aと、この突部15aの外周面から放射状に延びる複数(図示の実施形態においては8本)のリブ15bと、リブ15bの径方向外側端が内周面に接続される円環突条15cとから構成されている。変形防止手段15の存在に起因して天面壁8の剛性は増大せしめられ、これにより、容器内に例えば炭酸飲料を収容して容器の口頸部を容器蓋2で密封することで容器内が陽圧となる場合であっても、天面壁8の変形が防止される。スカート壁10の外周面の上下方向中間部にはそこに掛けられる指の滑りを防止するための凹凸16が繰り返し形成されている。スカート壁10の外周面の下端部には、後述する特定領域を除いて、下端縁に沿って周方向に連続して延在する突条17が円弧形状に形成されている。突条17の径方向外方への突出量については後に言及する。スカート壁10の内周面には雌螺条18が形成されている。この雌螺条18には周方向に間隔をおいて切欠20が形成されている。
【0016】
タンパーエビデント裾部6は全体として円筒形状であり、後述する破断橋絡部及び一対の非破断接続片を介して本体4のスカート壁10に接続されている。タンパーエビデント裾部6の外周面の上端部には、スカート壁10の外周面に形成された突条17と対応した突条21が上端縁に沿って周方向に連続して形成されている。突条21の径方向外方への突出量については後に言及する。タンパーエビデント裾部6の内周面には係止手段22が配設されている。図示の実施形態において、係止手段22は周方向に間隔をおいて形成された9個の弧状係止片24a乃至24iから構成されている。弧状係止片24a乃至24iの各々は、タンパーエビデント裾部6の内周面に接続された基端から軸線方向上方及び半径方向内方に延出せしめられている。図示の実施形態において係止手段22は周方向に間隔を置いて配設された9個の弧状係止片24a乃至24iから構成されているが、所望ならば周方向に連続して延在しタンパーエビデント裾部6の内周面に接続された基端から軸線方向上方及び半径方向内方に延出する環状の係止片から係止手段22を構成することもできる。
【0017】
本発明に従って構成された容器蓋2においては、少なくとも後述する突出片34が形成されている領域において、係止片24a乃至24iの先端から延出する延出部26が形成されている。図示の実施形態においては、係止片24a乃至24iの各々において、周方向両側部から延出する矩形状の2個の延出部26が形成されている。延出部26の外面には被係合手段27が形成されているがこれについては後述する。延出部26の各々の内面は平坦な面でよい。係止片24a乃至24iの各々の主部、即ち延出部26以外の部位の内面には、半径方向内側に突出する係止突起28が形成されているのが望ましい。かかる係止突起28は上方に向かって漸次突出量が増大し、上面は実質上水平に延在するのが好適である。係止突起28の各々は係止片24a乃至24iの各々における周方向中央部、即ち上記延出部26が存在しない部分に形成されている。所望ならば、係止片24a乃至24iの各々の周方向全体に渡って係止突起28を形成することもできる。
【0018】
図1乃至図3を参照して説明を続けると、番号30で示す特定領域において、本体4のスカート壁10の下端縁(後述する突出片34が接続される端縁)は他の領域の下端縁よりも上方に変位せしめられており、またタンパーエビデント裾部6の上端縁(後述する突出片34の下端縁と対向する端縁)は他の領域の上端縁よりも下方に変位せしめられており、スカート壁10とタンパーエビデント裾部6との間には正面図において横長に延びる開口32が生成されている。開口32の周方向中央部において、スカート壁10にはその下端から下方に突出する略矩形状の突出片34が形成されている。突出片34の外面には係合手段35が形成されているがこれについては後述する。図1及び図4を参照することによって明確に理解される如く、突出片34は実質上垂直に垂下している。
【0019】
ここで、本発明に従って構成された容器蓋2においては、延出部26の外面には被係合手段27が形成されていると共に突出片34の外面には被係合手段27に係合する係合手段35が形成されていることが重要である。図示の実施形態においては、図2及び図3と共に図8を参照することによって明確に理解されるとおり、延出部26の各々の外面は、上方に向かって漸次半径方向外側に突出し、次いで上方に向かって漸次半径方向内方に後退しており、漸次半径方向外方に突出する領域と漸次半径方向内方に後退する領域との境界領域が被係合手段27を構成している。上方に向かって漸次半径方向外側に突出する部位26aは縦断面図において円弧状である。一方、突出片34の外面には、図1及び図4を参照することによって明確に理解されるとおり、周方向に延在する3個の突条35a乃至35cが上下方向に間隔をおいて形成されており、係合手段35は突条35a乃至35cによって構成されている。図示の実施形態においては、突出片34の外面には隆起部37が形成されており、突条35a乃至35cは隆起部37の外面に配設されている。隆起部37は突出片34の外面の下半部において周方向全域に亘って形成されている。隆起部37の断面形状は略矩形であって、その径方向外側への突出量は、スカート壁10及びタンパーエビデント裾部6の外周面に夫々形成された突条17及び突条21の径方向外方への突出量と実質上同一である。それ故に、容器蓋2が単体又は容器の口頸部に装着された状態で搬送される際に、隆起部37の周方向両端面に何らかの部材が引っかかってしまうことが可及的に防止される。
【0020】
図1及び図2に明確に図示するとおり、上記特定領域30においては、上記突出片34に隣接してその周方向両側に一対の非破断接続片38a及び38bが配設されている。図示の実施形態における非破断接続片38aは、スカート壁10の下端縁に接続された上端部40a、この上端部40aに続いて周方向片側(図1及び図2において右側)に実質上水平に延びる第一の傾動部42a、中間部44a、中間部44aに続いて第一の傾動部42aの下方を周方向他側(図1及び図2において左側)に実質上水平に延びてタンパーエビデント裾部6に接続されている第二の傾動部46aから構成されている。非破断接続片38bも、スカート壁10の下端縁に接続された上端部40b、この上端部40bに続いて周方向片側(図1及び図2において左側)に実質上水平に延びる第一の傾動部42b、中間部44b、中間部44bに続いて第一の傾動部42bの下方を周方向他側(図1及び図2において右側)に実質上水平に延びてタンパーエビデント裾部6に接続されている第二の傾動部46bから構成されている。所望ならば、非破断接続片38aにおける第一の傾動部42a及び第二の傾動部46a並びに非破断接続片38bにおける第一の傾動部42b及び第二の傾動部46bを実質上水平ではなく所定方向に傾斜せしめることもできる。図1を参照することによって明確に理解される如く、非破断接続片38aと非破断接続片38bとは線対称ではなく構成要素の周方向寸法が幾分相違せしめられている(この理由については上記特許文献2の記載を参照されたい)。
【0021】
番号30で示す特定領域即ち突出片34並びに一対の非破断接続片38a及び38bが存在する領域以外の領域においては、タンパーエビデント裾部6を本体4のスカート壁10の下端に接続する複数個の破断橋絡部48が周方向に間隔をおいて複数個配設されている。図示の実施形態においては、スカート壁10の内面及びタンパーエビデント裾部6の内面に渡って軸線方向に延びる幅狭突条が周方向に間隔を置いて6個形成されており、かかる幅狭突条におけるスカート壁10とタンパーエビデント裾部6との間に位置する部分が破断橋絡部48を構成している(図2を参照されたい)。所望ならば、一対の非破断接続片38a及び38bが存在する領域においても、例えば第一の傾動部42a及び42bとスカート壁10との間或いは第二の傾動部46a及び46bとタンパーエビデント裾部6との間に或いは突出片34とタンパーエビデント裾部6との間に破断橋絡部を配設することもできる。
【0022】
図4には、容器蓋2と共に容器の口頸部50も図示されている。ポリエチレンテレフタレートの如き適宜の合成樹脂或いはガラスから形成することができる容器の口頸部50は全体として円筒形状であり、その上面は開口されている。口頸部50の外周面には、雄螺条52とこの雄螺条52の下方に位置する係止あご部54が形成されている。
【0023】
口頸部50に容器蓋2を装着して口頸部50を密封する際には、口頸部50に容器蓋2を被嵌して閉方向(図4において上方から見て時計方向)に回転せしめ、口頸部50の雄螺条52に容器蓋2の雌螺条18を螺合せしめる。雄螺条52に対する雌螺条18の螺合の進行に応じて容器蓋2は口頸部50に対して漸次下降する。図4に図示する状態まで口頸部50に対して容器蓋2が下降せしめられると、容器蓋2の本体4における天面壁8の内面に形成されている内側環状突条12及び外側環状突条14が夫々口頸部50の内周面及び外周面に密接せしめられ、これによって口頸部50が密封される。容器蓋2のタンパーエビデント裾部6の内周面に配設されている係止片24a乃至24iの各々における主部即ち延出部26以外の部分は、弾性的に変形して口頸部50の係止あご部54よりも下方に位置し、内面に形成されている係止突起28の上面は係止あご部54の下面に対向して位置する。一方、係止片24a乃至24iの各々における延出部26は、本体4のスカート壁10と口頸部50の係止あご部54との間に位置し、スカート壁10の内周面と係止あご部54の外周面との間に位置している。
【0024】
口頸部50を開封する際には、容器蓋2を開方向(図4において上方から見て反時計方向)に回転せしめ、口頸部50の雄螺条52に対する容器蓋2の雌螺条18の螺合を漸次解除する。螺合を漸次解除すると容器蓋2の本体4は開方向に回転せしめられると共に上昇せしめられるが、タンパーエビデント裾部6は係止片24a乃至24iの係止突起28の上面が口頸部50の係止あご部54の下面に係止して上昇が阻止され、これに起因して破断橋絡部48に相当な応力が生成され、破断橋絡部48が破断される。しかる後においては、容器蓋2の本体4は開方向への回転と共に上昇し、タンパーエビデント裾部6から上方に漸次離間せしめられる。図5を参照することによって明確に理解される如く、タンパーエビデント裾部6から本体4が漸次上方に離間せしめられると、非破断接続片38aの第一の傾動部42a及び非破断接続片38bの第二の傾動部46bは夫々の中間部44a及び第二の傾動部46bの下端を中心として図5において時計方向に旋回、即ち時計方向に傾動され、一方非破断接続片38aの第二の傾動片46a及び非破断接続片38bの第一の傾動部42bは夫々の下端及び上端を中心として図5において反時計方向に旋回、即ち反時計方向に傾動され、これに応じて非破断接続片38a及び38bにおける第一の傾動部42a及び42b並びに第二の傾動部46a及び46bの鉛直線に対する傾斜角度が漸次低減される。図5と共に図6を参照することによって明確に理解される如く、口頸部50の雄螺条54に対する容器蓋2の雌螺条18の螺合が完全に解除されると、容器蓋2の本体4は口頸部50から離脱される。しかしながら、本体4は非破断接続片38a及び38bを介して、口頸部50に装着され続けているタンパーエビデント裾部6に接続され続けている故に、容器の口頸部50から離間されることはない。
【0025】
容器蓋2の本体4が口頸部50から離脱された後においては、非破断接続片38a及び38bの中間部44a及び44bを旋回支点として本体4を口頸部50から遠ざかる方向(図6において時計方向)に旋回する。この際、図6に示すとおり、突出片34は、その延出端が係止片24a及び24iの片側部(係止片24aにおいては図3において左側部、係止片24iにおいては図3において右側部)に当接し、弾性的に変形して係止片24a及び24iの外側面に沿って上昇し、次いで係止片24a及び24iの延出部26(係止片24aにおいては図3において左側の延出部26、係止片24iにおいては図3において右側の延出部26)の外側面における円弧状の部位26aに沿って上昇する。しかる後に、突出片34の下部は延出部26の円弧状の部位26aを弾性的に乗り越えて、図7及び図8に図示する如く、突出片34の係合手段35が延出部24の被係合手段27に係合せしめられる。図示の実施形態においては、上下方向に隣接した2つの突条即ち突条35aと突条35bとの間に被係合手段27が嵌入することで、係合手段35は被係合手段27に係合せしめられている。所望ならば、被係合手段27が突条35bと突条35cとの間に嵌入して、係合手段35が被係合手段27に係合されるようにしてもよい。かくして容器蓋2の本体4は図7及び図8に図示する開位置に保持される。また、突出片34が延出部26の円弧状の部位26aを乗り越えて弾性的に復元される際には音が生成される。
【0026】
本発明の容器蓋においては、本体4は突出片34の外面に形成された係合手段35が延出部24の外面に形成された被係合手段27に係合することで所要開位置に保持されるため、容器蓋の軸線方向長さが比較的短い場合であっても、本体4が所要開位置にあるときの容器の口頸部50に対する本体4の旋回角度を大きくすることができ且つかかる旋回角度を大きくした場合であっても本体4は充分確実に所要開位置に維持される。図示の実施形態においては、突出片34の外面には隆起部37が形成され、係合手段35を構成する突条35a乃至35cは隆起部37の外面に配設されていることに起因し、突出片34の外面に隆起部37が形成されていない場合と比べて、本体4が所要開位置にあるときの容器の口頸部50に対する本体4の旋回角度をより大きくすることができる。また、図示の実施形態においては、係合手段35は突出片34の外面に形成された3個の突条35a乃至35cから構成されており、係合手段35が被係合手段27に係止せしめられた状態にあっては、上下方向に隣接した2つの突条即ち突条35aと突条35bとの間に被係合手段27が嵌入されるため、本体4は開位置に安定して保持される。
【0027】
内容物の飲食を途中で中断した場合には、図7に図示する位置に保持されている本体4を口頸部50に接近する方向(図6及び図7において反時計方向)に強制的に旋回せしめて再び口頸部50に被嵌し、そして容器蓋2を閉方向に回転せしめて口頸部50の雄螺条52に容器蓋2の雌螺条18を螺合せしめ、かくして容器蓋2を再び図4に図示する状態に位置せしめ、口頸部50を仮密封することができる。
【0028】
以上、添付図面を参照して本発明に従って構成された容器蓋の好適実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形乃至修正が可能であることは多言を要しない。例えば、図示の実施形態においては、係止片24a乃至24iの各々の周方向両側部に延出部26を形成しているが、係止片24a乃至24iの各々の適宜の部位(例えば中央部或いは周方向に間隔をおいた複数個の部位)に1個或いは3個以上の延出部を形成することもでき、所望ならば係止片24a乃至24iの周方向幅と実質上同一の幅を有する1個の延出部を形成することもできる。また、図示の実施形態においては、係止片24a乃至24iの各々に延出部26を形成しているが、所望ならば特定の複数個の係止片のみに或いは突出片34が存在する角度領域に配置された係止片のみに延出部を形成することもできる。そしてまた、図示の実施形態においては、突出片34が存在する角度領域に2個の係止片24a及び24iが存在するが、突出片34が存在する角度領域に1個の係止片のみが存在する形態にして、かかる1個の係止片のみに延出部を形成することもできる。係止片が周方向に連続して延びる環状である場合も、突出片34が存在する角度領域に1個又は複数個の延出部を形成し、突出片34が存在する角度領域のみならずその他の角度領域にも渡って周方向に間隔をおいて複数個の延出部を形成し、或いは周方向に連続して延在する環状の延出部を形成することができる。更に、図示の実施形態においては、突出片34は単一片から構成されているが、複数個の片から突出片を構成することもでき、また単一片の突出端(下端)から基端(上端)に向かって延びる1個又は複数個のスリットを形成して複数個の部分に分割することもできる。また、図示の実施形態においては、突出片34の周方向両側に位置する2個の非破断接続片38a及び38bが配設されているが、1個或いは3個以上の非破断接続片を配設することもできる。更にまた、図示の実施形態においては、係合手段35は突出片34の外面に形成された3個の突条35a乃至35cから構成されており、係合手段35が被係合手段27に係合せしめられた状態にあっては、上下方向に隣接した2つの突条の間に被係合手段27が嵌入されていたが、これに替えて、係合手段35を単一の突条から構成されるようにして、かかる突条が被係合手段27を弾性的に乗り越えることでこれに係合されるようにしてもよい。また、係合手段35を突条ではなく溝から構成されるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0029】
2:容器蓋
4:本体
6:タンパーエビデント裾部
8:天面壁
10:スカート壁
18:雌螺条
22:係止手段
24a:係止片
24b:係止片
24c:係止片
24d:係止片
24e:係止片
24f:係止片
24g:係止片
24h:係止片
24i:係止片
26:延出部
27:被係合手段
34:突出片
35:係合手段
35a:突条
35b:突条
35c:突条
37:隆起部
38a:非破断接続片
38b:非破断接続片
48:破断橋絡部
50:口頸部
52:雄螺条
54:係止あご部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8