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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】エンジンの冷却装置
(51)【国際特許分類】
   F02B 37/00 20060101AFI20240408BHJP
【FI】
F02B37/00 302D
F02B37/00 301H
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020042700
(22)【出願日】2020-03-12
(65)【公開番号】P2021143627
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2022-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089004
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】西坂 聡
(72)【発明者】
【氏名】砂田 知宏
(72)【発明者】
【氏名】中杉 龍郎
(72)【発明者】
【氏名】檜垣 周治
【審査官】北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-042550(JP,A)
【文献】特開2019-044683(JP,A)
【文献】特開2005-002797(JP,A)
【文献】特開2018-131977(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターボ過給機を含む排気系部品がエンジンの片側側部に配設されると共に気筒配列方向が車体前後方向に略平行に縦置き配置されたエンジンの冷却装置において、
前記ターボ過給機に冷却水を供給する冷却水供給管と、
前記ターボ過給機から冷却水を還流する冷却水還流管とを有し、
前記冷却水還流管は、エンジンの前記片側側部に支持されると共に前記片側側部と排気系部品の間において気筒配列方向に延設され
前記排気系部品は、気筒配列方向に直列状に配置されたターボ過給機と触媒装置とを含み、
前記冷却水還流管は、前記ターボ過給機と触媒装置との接合部近傍位置で分割可能に構成されたことを特徴とするエンジンの冷却装置。
【請求項2】
前記排気系部品に対して車体前後方向前方に位置するラジエータを有し、
前記冷却水還流管は、前記ターボ過給機と前記ラジエータを連通すると共に略直線状に延設されたことを特徴とする請求項1に記載のエンジンの冷却装置。
【請求項3】
前記冷却水還流管は、前記ラジエータに接近する程高さ位置が高くなるように構成されたことを特徴とする請求項2に記載のエンジンの冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの冷却装置に関し、特に、ターボ過給機を含む排気系部品がエンジンの片側側部に配設された縦置きエンジンの冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ターボ過給機のタービンシャフトは、油潤滑式シャフト軸受部によりセンタハウジング内に回転自在に軸受けされている。排気ガスの運動エネルギにより回転駆動されるタービンは、200,000rpmを超える高速回転で駆動されるため、シャフト軸受部は極めて熱負荷が高く、シャフト軸受部に供給される潤滑油の熱劣化を招く。
そこで、エンジン運転時、エンジン内部を冷却するための冷却水をセンタハウジング内に形成されたウォータジャケットに強制循環させることにより、シャフト軸受部の冷却を図る水冷式ターボ過給機が存在している。
【0003】
特許文献1の内燃機関の冷却水通路構造は、エンジン本体に結合され且つエンジン本体の本体ウォータジャケットに接続された分岐通路を形成する通路形成部材と、この通路形成部材に配設された水温センサとを有し、分岐通路は、本体ウォータジャケットの出口に接続する入口端からラジエータの入口側に接続する出口端に延びる主供給通路と、この主供給通路から分岐し且つターボ過給機の過給機ウォータジャケットの出口側に接続する過給機戻り通路とを含み、水温センサは、主供給通路における過給機戻り通路の接続部よりも入口端側に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-131977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の内燃機関の冷却水通路構造は、水温センサがターボ過給機を通過した冷却水の影響を受け難くなるため、エンジン本体の本体ウォータジャケットを通過した冷却水の温度を水温センサによって正確に検出することが可能になる。
しかし、特許文献1の技術では、ターボ過給機を冷却した冷却水の還流管がターボ過給機の上方を略U字状に湾曲して配設されているため、エンジン停止時、シャフト軸受部の冷却能力が不足し、タービンシャフトやシャフト軸受部等に対する熱害を十分に回避できない虞がある。
【0006】
エンジンを停止した場合、エンジンに回転駆動されるウォータポンプも一緒に停止するため、冷却水通路を流れる冷却水の流れが停止することになる。このエンジン停止時が、高負荷運転の直後であれば、ターボ過給機は高温状態になっており、ターボ過給機、所謂センタハウジングに形成された過給機ウォータジャケット内に残留した冷却水が熱によって水蒸気(気泡)になる。発生した水蒸気が、U字状に湾曲した冷却水還流管からシャフト軸受部近傍に亙って滞在した場合、残留する水蒸気がターボ過給機外部への放熱を阻害するため、シャフト軸受部に存在する潤滑油を熱劣化させ、場合によっては、タービンシャフトの回転を軸支するベアリングの焼付きを招くことが懸念される。
【0007】
冷却水還流管を湾曲させることなくターボ過給機の外側に水平状に配設することで、冷却水還流管をターボ過給機と略同じ高さ位置に配設することも考えられる。
しかし、冷却水還流管をターボ過給機の外側に配設した場合、ターボ過給機からの対流熱に加えて、冷却水還流管を支持するブラケットを介した伝導熱の影響を受ける虞がある。
特に、気筒配列方向が車体前後方向に平行な縦置きエンジンでは、サスペンションタワー等の車体骨格部材による車幅方向の寸法制約があるため、冷却水還流管はターボ過給機に一層接近したレイアウトになり、熱影響が大きくなる。
即ち、水冷式ターボ過給機の冷却性能には、未だ改善の余地が残されている。
【0008】
本発明の目的は、エンジンの運転状態に拘らず水冷式ターボ過給機の冷却性能を向上可能なエンジンの冷却装置等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1のエンジンの冷却装置は、ターボ過給機を含む排気系部品がエンジンの片側側部に配設されると共に気筒配列方向が車体前後方向に略平行に縦置き配置されたエンジンの冷却装置において、前記ターボ過給機に冷却水を供給する冷却水供給管と、前記ターボ過給機から冷却水を還流する冷却水還流管とを有し、前記冷却水還流管は、エンジンの前記片側側部に支持されると共に前記インシュレータと排気系部品の間において気筒配列方向に延設され、前記排気系部品は、気筒配列方向に直列状に配置されたターボ過給機と触媒装置とを含み、前記冷却水還流管は、前記ターボ過給機と触媒装置との接合部近傍位置で分割可能に構成されたことを特徴としている。
【0010】
このエンジンの冷却装置では、前記ターボ過給機に冷却水を供給する冷却水供給管と、前記ターボ過給機から冷却水を還流する冷却水還流管とを有するため、ターボ過給機用冷却回路を構成することにより、エンジン運転時、ターボ過給機に冷却水を供給することができ、ターボ過給機による熱交換後の冷却水を還流することができる。
前記冷却水還流管をエンジンの片側側部に固定することによりターボ過給機から離隔させて伝導熱の影響を回避することができるため、エンジン停止時、冷却水還流管に残留する水蒸気の発生を防止することができる。
【0011】
また、前記冷却水還流管は、エンジンの片側側部と排気系部品の間において気筒配列方向に延設されたため、エンジン運転時、片側側部と排気系部品の間を流れる走行風を整流することができ、走行風を用いて冷却水還流管を冷却する冷却性能を更に向上することができる。
さらに、エンジンからターボ過給機のみを取り外すことができ、ターボ過給機の保守性を確保することができる。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記排気系部品に対して車体前後方向前方に位置するラジエータを有し、前記冷却水還流管は、前記ターボ過給機と前記ラジエータを連通すると共に略直線状に延設されたことを特徴としている。この構成によれば、エンジン停止時、発生した水蒸気をラジエータまで滞留させることなく誘導することができる。
【0013】
請求項3の発明は、請求項2の発明において、前記冷却水還流管は、前記ラジエータに接近する程高さ位置が高くなるように構成されたことを特徴としている。この構成によれば、エンジン停止時、冷却水還流管に残留する水蒸気を確実に防止することができる。
【0014】
【発明の効果】
【0015】
本発明のエンジンの冷却装置によれば、冷却水還流管を縦置きエンジンの片側側部と排気系部品の間に延設することにより、エンジンの運転状態に拘らず水冷式ターボ過給機の冷却性能を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施例1に係るエンジンの概略構成図である。
図2】冷却水回路図である。
図3】エンジンの右側側面図である。
図4】右側前方から視たエンジンの斜視図である。
図5】右側後方から視たエンジンの斜視図である。
図6】排気系部品周辺のエンジンの要部拡大図である。
図7】ラジエータとエンジンの要部側面図である。
図8】ラジエータとエンジンの要部斜視図である。
図9】ターボ過給機と各冷却水配管との位置関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
以下の説明は、本発明を車両用エンジンに適用したものを例示したものであり、本発明、その適用物、或いは、その用途を制限するものではない。
【実施例1】
【0018】
以下、本発明の実施例1について図1図9に基づいて説明する。
まず、本発明に係るエンジン1の概略構成について、図1に基づき説明する。
エンジン1は、4輪の車両に搭載されたガソリンエンジン(特に、4ストローク式内燃機関)である。このエンジン1は、列状に配置された6つのシリンダ21を備え、これらのシリンダ21が車体前後方向に沿って並んだ直列6気筒縦置きエンジンである。
【0019】
図1に示すように、エンジン1は、エンジン本体2と、吸気装置3と、排気装置4と、ターボ過給機5と、燃料供給装置6と、冷却システムS(図2参照)等を備えている。
吸気装置3は、エンジン本体2の一側、例えば、左側に形成された吸気ポートに接続された吸気通路31を有している。吸気通路31の上流端には、エアクリーナ32が設けられ、新気は、エアクリーナ32を介して吸気通路31に吸入される。吸気通路31には、ターボ過給機5のコンプレッサ51と、スロットルバルブ33と、インタクーラ34と、サージタンク35等が介設されている。
【0020】
吸気通路31を流れてきた吸気は、コンプレッサ51によって過給され、スロットルバルブ33を通過してインタクーラ34に送られる。インタクーラ34では、コンプレッサ51の圧縮作用により上昇した吸気温度の冷却を行っている。
スロットルバルブ33は、エンジン1の運転中、基本的に全開若しくはこれに近い開度に維持されている。そして、エンジン1の停止時等必要なときのみ閉弁される。
合成樹脂製のサージタンク35は、吸気ポートと吸気通路31との接続部分近傍領域に所定の容積室を形成するように設けられ、各気筒の燃焼室に供給される吸気量の平準化を図っている。
【0021】
図1に示すように、排気装置4は、エンジン本体2の他側、例えば、右側に形成された排気マニホールド40に上流端が接続された排気通路41と、第1EGR通路42と、第2EGR通路43と、ブローバイガス通路44等を有している。
排気マニホールド40は、シリンダヘッド2aに形成された前側3気筒の排気ポートと後側3気筒の排気ポートを夫々集合すると共に、各々の集合排気ガスを1つに集合する集合部40a(図9参照)を備えている。
【0022】
排気通路41の途中部には、排気系部品として、ターボ過給機5と、触媒コンバータ45と、GPF(Gasoline Particulate Filter)46等が夫々介設されている。
ターボ過給機5は、タービン52が集合部40aに対向するように排気マニホールド40に対して接続される。触媒コンバータ45は、三元触媒を含んで構成され、GPF46は、排気ガスに含まれる粒子状物質を除去可能に構成されている。
【0023】
第1EGRは、吸気系に比較的高温のEGRガスを供給し、着火性を高めると共にポンピングロスを低減している。第1EGR通路42は、エンジン本体2のシリンダヘッド2aと吸気通路31の下流側領域を接続し、途中部に第1EGRバルブ47、第1EGRクーラ47aを備えている。第2EGRは、吸気系に比較的低温のEGRガスを供給し、燃焼温度の低下によりNOx発生量を低減している。第2EGR通路43は、排気通路41と吸気通路31の上流側領域を接続し、途中部に第2EGRバルブ48と、第2EGRクーラ48aを備えている。ブローバイガス通路44は、エンジン本体2内で発生したブローバイガスを吸気通路31に戻すため、エンジン本体2のヘッドカバー内と吸気通路31(コンプレッサ51よりも上流側領域)とを接続している。
【0024】
ターボ過給機5は、水冷式VG(Variable Geometry)ターボ過給機であり、角度変更可能な複数の可動ベーン(図示略)を備え、タービン52に流入する排気ガスの流速を調整して過給状態を制御している。図1に示すように、ターボ過給機5は、コンプレッサ51と、タービン52とを備えている。コンプレッサ51とタービン52とは、シャフト53で連結されている。シャフト53は、後述するセンタハウジング56にベアリング(図示略)を介して回転可能に軸支されている。センタハウジング56には、冷却水が流動可能な中空状のウォータジャケット56a(図2参照)が形成されている。
【0025】
図1に示すように、燃料供給装置6は、車体後部に搭載された燃料タンク61と、燃料配管64を介して燃料タンク61に接続された高圧燃料ポンプ62と、この燃料ポンプ62により加圧された燃料を各気筒の燃焼室に分配する燃料レール63(燃料供給管)等を備えている。
【0026】
次に、冷却システムSについて説明する。
図2に示すように、冷却システムSは、エンジン本体2に冷却水を循環させる主冷却回路70と、ターボ過給機5のウォータジャケット56aに冷却水を循環させる第1冷却回路80と、空調の車内暖房用ヒータ13(ヒータコア)に冷却水を循環させる第2冷却回路90等を主な構成要素としている。熱交換対象部材であるヒータ13は、エンジン本体2で暖められた冷却水と車内空気とを熱交換させている。
【0027】
主冷却回路70は、冷却水をウォータポンプ22から車体前部に配設されたラジエータ11の上流側タンクに相当するアッパタンク11aに供給する主冷却水供給管71と、外気と熱交換された冷却水をラジエータ11の下流側タンクに相当するロアタンク11bからウォータポンプ22に還流させる主冷却水還流管72を備えている。主冷却水供給管71と主冷却水還流管72は、ゴムホースによって構成されている。尚、ラジエータ11は、サイドフロータイプのラジエータである。
【0028】
ウォータポンプ22によって加圧された冷却水は、エンジン本体2のシリンダブロック内に形成されたウォータジャケット(図示略)を流れた後、シリンダヘッド2a内に形成されたウォータジャケット(図示略)に送られる。シリンダヘッド2aで熱交換を行った冷却水は、サーモスタット(図示略)により流量が制御される。冷却水の温度が所定温度以上のとき、冷却水は、主冷却水供給管71を介してラジエータ11に供給され、冷却水の温度が所定温度未満のとき、冷却水は、ラジエータ11を経由することなくウォータポンプ22にリターンされる。
【0029】
図2に示すように、第1冷却回路80は、冷却水をウォータポンプ22からターボ過給機5のセンタハウジング56に形成されたウォータジャケット56aに供給する第1冷却水供給管81a~81cと、センタハウジング56で熱交換を行った冷却水をウォータジャケット56aからウォータポンプ22に還流させる第1冷却水還流管82a,82bを備えている。
【0030】
前半部分の第1冷却水供給管81aは、ウォータポンプ22によって加圧された冷却水を第1EGRクーラ47aに供給している。中間部分の第1冷却水供給管81bは、第1EGRクーラ47aで熱交換を行った冷却水を分岐部Bに供給している。後半部分の第1冷却水供給管81cは、冷却水を分岐部Bからセンタハウジング56に供給している。
第1冷却水還流管82a,82cは、センタハウジング56で熱交換を行った冷却水をシリンダヘッド2aを介してウォータポンプ22に還流している。
【0031】
また、冷却水温度が極端に上昇して冷却水が気化した状態(ヒートソーク状態)のとき、沸騰蒸気は、第1冷却水還流管82aから第1冷却水還流管82bを介してラジエータ11のキャップ部11cに供給される。キャップ部11cは、冷却水の気体成分を分離可能な気水分離機能を備えている。気水分離された冷却水は、主冷却水還流管72を介してウォータポンプ22に還流される。
【0032】
図2に示すように、第2冷却回路90は、冷却水をウォータポンプ22からヒータ13に供給する第2冷却水供給管91a~91cと、ヒータ13で熱交換を行った冷却水をヒータ13からウォータポンプ22に還流させる第2冷却水還流管92を備えている。
前半部分の第2冷却水供給管91aは、第1冷却水供給管81aと兼用され、中間部分の第2冷却水供給管91bは、第1冷却水供給管81bと兼用されている。後半部分の第2冷却水供給管91cは、冷却水を分岐部Bからヒータ13に供給している。第2冷却水還流管92には、第2冷却水還流管92の途中部と分岐部Bとを接続(連通)する接続管93が設けられている。これにより、第2冷却水還流管92の途中部は、接続管93及び第1冷却水供給管81cを介してウォータジャケット56aに連通されている。
【0033】
次に、エンジン本体2の外観構成について説明する。
図3図8に示すように、エンジン本体2は、側壁部の左側領域に、インタクーラ34のサブタンク14と直方体状の第1EGRクーラ47a等が配設され、側壁部の右側領域に、ターボ過給機5、触媒コンバータ45、及びGPF46等が配設されている。
尚、図3図5図7図8では、説明の便宜上、触媒コンバータ45及びGPF46を省略している。以下、図において、矢印F方向を車体前後方向前方とし、矢印L方向を車幅方向左方とし、矢印U方向を車体上下方向上方として説明する。
【0034】
エンジン本体2の左側前方に設けられた吸気ダクト(図示略)から導入された吸気は、エンジン本体2の前端左方且つ上段位置に設置されたエアクリーナ32に送られる。図示を省略しているが、吸気通路31は、エンジン本体2の上段左側近傍領域を後方に向けて延設される。そして、吸気通路31は、エンジン本体2の後方且つ変速機(図示略)の上方に回り込んで、エンジン本体2の後方からエンジン本体2の右側近傍領域に延び、ターボ過給機5(コンプレッサ51)に後側から接続されている。
【0035】
図3図5図7図8に示すように、吸気通路31は、ターボ過給機5のコンプレッサ51からエンジン本体2の上側を通ってエンジン本体2の左側近傍領域まで延設されている。コンプレッサ51の圧縮作用によって高密度にされた吸気は、エンジン本体2の左方に配置されたインタクーラ34に送られる。インタクーラ34では、ウォータポンプ22から冷却水通路(図示略)を介して供給された冷却水と高温吸気とを熱交換させることにより、コンプレッサ51の圧縮により温度上昇した吸気の冷却が行われている。
【0036】
図3図5に示すように、ターボ過給機5は、エンジン本体2の右側壁部において、前後方向中間部で且つシリンダヘッド2aに対応した上段部に配設されている。このターボ過給機5は、コンプレッサ51を収容するコンプレッサハウジング54と、このコンプレッサハウジング54の前方に形成されてタービン52を収容するタービンハウジング55と、前後に水平状に延びるシャフト53をベアリングを介して軸支するセンタハウジング56を有している。センタハウジング56内に形成されたウォータジャケット56aは、シャフト53を囲繞するように断面略C字状に形成されている。
【0037】
シャフト53の潤滑油は、右側壁部の中段部後側部分から上方に延びるオイル供給管57を介してセンタハウジング56上部に供給され、センタハウジング56下部から後側下方に延びるオイル排出管58により還流されている。図9に示すように、排気マニホールド40の集合部40aは、タービンハウジング55の左側壁部の後端部分に接続され、タービン52を回転駆動した排気ガスは、タービンハウジング55の前端部から排出される。
【0038】
図3図4図6図9に示すように、タービンハウジング55は、前端部に排気ガスの排出口55a(接合部)が形成されている。図6に示すように、筒状の触媒コンバータ45は、ターボ過給機5の前側に直列状に配置され、その導入口がタービンハウジング55の排出口55aに連結されている。タービンハウジング55と触媒コンバータ45は、連結部に相当する排出口55aで所定の締結部材を介して着脱可能に構成されている。
【0039】
触媒コンバータ45は、軸心が上下に延びるように下方に向けて屈曲配置されている。これにより、触媒コンバータ45の前端部をエンジン本体2の前端部に揃えている。
GPF46は、筒状に形成され、その前端上部が触媒コンバータ45の排出口に接続されている。GPF46は、後方に延びるように配置され、その後端部がタービンハウジング55の下方に位置するように配設されている。
【0040】
図6に示すように、触媒コンバータ45及びGPF46は、一体形成された共通のハウジングに収容され、側面視にて略J字状に構成されている。これら触媒コンバータ45及びGPF46は、エンジン本体2の右側壁部から所定距離離隔して配置され、右側壁部にブラケット49a~49cを介して取り付けられている。ブラケット49aは、触媒コンバータ45の前側上端部、ブラケット49bは、GPF46の前側下端部、ブラケット49cは、GPF46の後端部に夫々設けられている。
【0041】
ターボ過給機5の前半部及び触媒コンバータ45の上半部とエンジン本体2の右側壁部との間に、アルミメッキ鋼板製インシュレータ15が介設されている。このインシュレータ15は、シリンダヘッド2aの右側領域に対応すると共にコンプレッサハウジング54の前側部分よりも前方に延設されている。これにより、車両前方から導入され且つインシュレータ15の右方領域、つまり、タービンハウジング55及び触媒コンバータ45の近傍領域を前後方向に流れる走行風の抵抗を低減し、走行風の流速を高めている。
【0042】
図4図6に示すように、エンジン本体2の前側壁部には、中段部右側部分にウォータポンプ22が設けられている。ウォータポンプ22は、ベルト及びプーリを含む伝達機構によりクランクシャフトに連結されている。鋼管製第1冷却水供給管81a(第2冷却水供給管91a)は、ウォータポンプ22の左側(昇圧部)対応部位から左側上方に傾斜状に延設され、エンジン本体2の左方において第1EGRクーラ47aの前側下部に接続されている。
【0043】
図3図5に示すように、鋼管製第1冷却水供給管81b(第2冷却水供給管91b)は、第1EGRクーラ47aの後側下部から略水平方向後方に延設されると共にエンジン本体2の後端部において一旦下降した後略水平方向右方に延設されている。第1冷却水供給管81bの下流端部に相当する分岐部Bは、エンジン本体2の右側壁部後端近傍部分に配置されている。
【0044】
図3図5図7図9に示すように、弾性体、例えばゴム製の第1冷却水供給管81cは、分岐部Bの上部から前側上方に延設され、センタハウジング56の左側部分に連結されている。即ち、第1EGRクーラ47aと第1冷却水供給管81bの接続部は、センタハウジング56と第1冷却水供給管81cの接続部よりも高い位置に形成されているものの、冷却水はセンタハウジング56のウォータジャケット56aに対して下方から供給される。
【0045】
第1冷却水還流管82aは、第1冷却水供給管81cとセンタハウジング56の左側部分との接続部よりも高い位置から水平方向前方に延設されている。第1冷却水還流管82cは、第1冷却水還流管82aの下流端部に接続されると共に、鉛直下方に延びた後、前側下方に延びてウォータポンプ22の上側対応部位に連結されている。
【0046】
図4図8図9に示すように、第1冷却水還流管82aは、前後に分割可能に形成されている。分割部には前後1対のフランジ部82fが夫々設けられ、これらのフランジ部82fは、タービンハウジング55と触媒コンバータ45の接合部である排出口55aの左側近傍位置に配設されている。分割された第1冷却水還流管82aを連結する際には、前後各々のフランジ部82fを前後に重ね合わせた後、各々のフランジ部82fを締結部材を用いて前方から締結する。尚、第1冷却水還流管82aを分割する場合、前方から締結部材を取り外す。
【0047】
弾性体、例えばゴム製の第1冷却水還流管82bは、第1冷却水還流管82aの下流側端部から水平方向前方に延設され、ラジエータ11の近傍位置において左方に湾曲している。この第1冷却水還流管82bの下流端部は、連通管12を介してターボ過給機5の前方で且つ上方に配置されたラジエータ11のキャップ部11cに連結されている。
【0048】
第1冷却水還流管82aと第1冷却水還流管82bは、センタハウジング56とラジエータ11のキャップ部11cとの間を連通する所謂冷却水還流管を形成している。この冷却水還流管は、インシュレータ15と触媒コンバータ45との間相当領域(第1冷却水還流管82a及び第1冷却水還流管82bの後半部)において水平且つ前後に延びる略直線状に構成され、第1冷却水還流管82bの左方湾曲状の前半部においてラジエータ11に接近する程高さ位置が高くなるように構成されている。
【0049】
図7図9に示すように、第1冷却水還流管82a,82bの接続部は、ブラケット83によってエンジン本体2の右側壁部に固定されている。ブラケット83は、第1冷却水還流管82cを避けつつ第1冷却水還流管82aの前端部及び第1冷却水還流管82bの後端部を下方から受ける受け部材と、受け部材と協働して第1冷却水還流管82aの前端部及び第1冷却水還流管82bの後端部を挟み込む閉じ部材とから構成され、閉じ部材は受け部材に対して締結部材を用いて上方から締結される。
【0050】
図3図4図7に示すように、第2冷却水還流管92は、エンジン本体2の右側壁部後端から中段部、具体的には、ターボ過給機5よりも下方であるシリンダヘッド2aとシリンダブロックとの合わせ面付近を水平方向前方に延びてウォータポンプ22に連結されている。エンジン本体2の右側壁部の中段部(シリンダブロック)には、インシュレータ15とは別のインシュレータが配設されている。第2冷却水還流管92の水平部分は、インシュレータとGPF46との間に延設されている。
【0051】
接続管93は、第2冷却水還流管92の水平部分後端部から後側上方に延設され、第1冷却水供給管81cの接続部と向かい合うように分岐部Bの下部に連結されている。接続管93は、弾性体、例えば、ゴムホースで構成され、その内径が、第1冷却水供給管81b,81cの内径の60%以下に設定されている。これにより、エンジン運転時、ターボ過給機5に供給される冷却水量を確保している。また、接続管93は、エンジン停止時の冷却性を確保するため、内径が3mm以上に設定されている。
【0052】
次に、本発明の実施形態によるエンジンの冷却装置の作用効果について説明する。
本実施形態によれば、ターボ過給機5に冷却水を供給する第1冷却水供給管81a~81cと、ターボ過給機5から冷却水を還流する第1冷却水還流管82a~82cとを有するため、ターボ過給機5用冷却回路を構成することにより、エンジン運転時、ターボ過給機5に冷却水を供給することができ、ターボ過給機5による熱交換後の冷却水を還流することができる。第1冷却水還流管82a,82bは、エンジン本体2の右側壁部に支持されると共に右側壁部とターボ過給機5及び触媒コンバータ45の間において気筒配列方向に延設されたため、エンジン運転時、エンジン本体2の右側壁部とターボ過給機5及び触媒コンバータ45の間を流れる走行風を用いて第1冷却水還流管82a,82bを冷却することができると共に、第1冷却水還流管82a,82bをエンジン本体2の右側壁部に固定することによりターボ過給機5から離隔させて伝導熱の影響を回避することができる。また、冷却水還流管に相当する第1冷却水還流管82aと第1冷却水還流管82bの後半部(上流側部分)を水平状に配設することができるため、エンジン停止時、第1冷却水還流管82aと第1冷却水還流管82bの上流部に残留する水蒸気の発生を防止することができる。
【0053】
エンジン本体2のシリンダヘッド2aとターボ過給機5及び触媒コンバータ45との間に気筒配列方向に延設されたインシュレータ15を設けたため、エンジン本体2の右側壁部とターボ過給機5及び触媒コンバータ45の間を流れる走行風を整流することができ、冷却水還流管に相当する第1冷却水還流管82aと第1冷却水還流管82bの後半部の冷却性能を更に向上することができる。
【0054】
ターボ過給機5及び触媒コンバータ45に対して前方に位置するラジエータ11を有し、冷却水還流管に相当する第1冷却水還流管82aと第1冷却水還流管82bの後半部は、ターボ過給機5とラジエータ11を連通すると共に略直線状に延設されたため、エンジン停止時、発生した水蒸気をラジエータ11まで滞留させることなく誘導することができる。
【0055】
第1冷却水還流管82bは、ラジエータ11に接近する程高さ位置が高くなるように構成されたため、エンジン停止時、第1冷却水還流管82aと第1冷却水還流管82bに残留する水蒸気を確実に防止することができる。
【0056】
排気系部品は、気筒配列方向に直列状に配置されたターボ過給機5と触媒コンバータ45とを含み、第1冷却水還流管82aの上流部は、ターボ過給機5と触媒コンバータ45との接合部55a近傍位置で分割可能に構成されたため、エンジン本体2からターボ過給機5のみを取り外すことができ、ターボ過給機5の保守性を確保することができる。
【0057】
次に、前記実施形態を部分的に変更した変形例について説明する。
1〕前記実施形態においては、6気筒の縦置きガソリンエンジンの例について説明したが、少なくとも縦置きエンジンであれば良く、エンジン種類、気筒数、型式、配置形態等は任意に設定することが可能であり、例えば、4気筒ディーゼルエンジンであっても良い。
【0058】
2〕前記実施形態においては、排気系部品として、ターボ過給機5と、触媒コンバータ45の例について説明したが、ターボ過給機5と、触媒コンバータ45と、GPF46のうち何れか1つあるいは2つであっても良い。また、ディーゼルエンジンの場合、ターボ過給機5と、触媒コンバータ45と、GPF46の内から選択可能である。
【0059】
3〕前記実施形態においては、冷却水還流管を、第1冷却水還流管82aと、第1冷却水還流管82bの水平状の後半部と、第1冷却水還流管82bの左方湾曲状の前半部とで構成した例について説明したが、冷却水還流管(第1冷却水還流管82aと第1冷却水還流管82b)を略直線状に形成すると共に前方程高さ位置が高くなるように構成しても良い。また、キャップ部11cが低く配設された場合、冷却水還流管(第1冷却水還流管82aと第1冷却水還流管82b)を水平方向略直線状に形成しても良い。
【0060】
4〕その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく、前記実施形態に種々の変更を付加した形態や各実施形態を組み合わせた形態で実施可能であり、本発明はそのような変更形態も包含するものである。
【符号の説明】
【0061】
1 エンジン
2 エンジン本体
2a シリンダヘッド
5 ターボ過給機
15 インシュレータ
22 ウォータポンプ
45 触媒コンバータ
55a 接合部
80 第1冷却回路
81a~81c 第1冷却水供給管
82a~82c 第1冷却水還流管
S 冷却システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9