(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】洗浄水タンク装置、及びそれを備えた水洗便器装置
(51)【国際特許分類】
E03D 1/30 20060101AFI20240408BHJP
E03D 5/10 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
E03D1/30
E03D5/10
(21)【出願番号】P 2020099808
(22)【出願日】2020-06-09
【審査請求日】2023-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100159846
【氏名又は名称】藤木 尚
(72)【発明者】
【氏名】林 信宏
(72)【発明者】
【氏名】北浦 秀和
(72)【発明者】
【氏名】志牟田 晃大
(72)【発明者】
【氏名】黒石 正宏
(72)【発明者】
【氏名】橋本 博
(72)【発明者】
【氏名】篠原 弘毅
(72)【発明者】
【氏名】畑間 健司
【審査官】村川 雄一
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-195862(JP,A)
【文献】特開2021-134620(JP,A)
【文献】実開平5-81374(JP,U)
【文献】中国実用新案第205577052(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2010/0242160(US,A1)
【文献】特開2006-161285(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 1/30
E03D 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水洗便器への洗浄水の供給を行う洗浄水タンク装置であって、
上記水洗便器に供給すべき洗浄水を貯留すると共に、貯留した洗浄水を上記水洗便器へ排出するための排水口が形成された貯水タンクと、
上記排水口を開閉し、上記水洗便器への洗浄水の供給、停止を行う排水弁と、
上記排水弁を引き上げる排水弁引き上げ部であって、上記排水弁引き上げ部は上記排水弁に向けて下方に延びるロッドを備える、上記排水弁引き上げ部と、
上記排水弁と上記排水弁引き上げ部から延びる上記ロッドとを連結して上記ロッドにより上記排水弁を引き上げると共に、所定のタイミングで切断され、上記排水弁を降下させるクラッチ機構とを備え、
上記クラッチ機構は、非係合側姿勢と係合側姿勢とを切換可能である可動体を備え、上記可動体は上記排水弁に設けられ、上記可動体は上記ロッドが引き上げられるときに、上記ロッドと当接する当接部を備え、
上記可動体の上記係合側姿勢は、上記当接部が引き上げ時の上記ロッドと当接される位置に位置決めされる姿勢であり、
上記可動体の上記非係合側姿勢は、上記当接部が下降時の上記ロッドと当接しない位置に位置決めされる姿勢であり、
上記可動体は、上記ロッドと上記当接部との当接が外れて下降する下降時において、上記非係合側姿勢を維持しながら下降し、
上記可動体は、上記排水弁の下降終了後に、上記排水弁に向けて下降する上記ロッドが上記可動体のうち上記当接部以外の部分に当接することにより上記非係合側姿勢から上記係合側姿勢に切り替えられる、洗浄水タンク装置。
【請求項2】
上記クラッチ機構の上記可動体は、回転動作の中心となる回転軸を備え、上記可動体は、上記係合側姿勢と上記非係合側姿勢とを回転動作により切り替えるように構成され、上記可動体の重心は、上記回転軸よりも上側に位置する請求項1記載の洗浄水タンク装置。
【請求項3】
上記可動体の上記非係合側姿勢においては、上記可動体の重心は上記回転軸を通る鉛直線に対して一方側に位置決めされ、
上記非係合側姿勢から切り換えられる上記係合側姿勢においては、上記可動体の重心が上記鉛直線に対して一方側と反対側の他方側に位置決めされる請求項2に記載の洗浄水タンク装置。
【請求項4】
上記可動体は、上記排水弁に向けて下降する上記ロッドが、上記可動体のうち上記回転軸よりも上記係合側姿勢側の部分に当接することにより、上記非係合側姿勢から上記係合側姿勢に回転動作により切り替えるように構成される請求項2又は3に記載の洗浄水タンク装置。
【請求項5】
上記回転軸の軸線の延びる方向から見た側面視で、上記ロッドの先端は、曲面を形成している請求項4に記載の洗浄水タンク装置。
【請求項6】
上記可動体の上記当接部は、頂部側に斜めの傾斜面を備え、上記傾斜面の法線は、上記可動体が上記係合側姿勢であるとき、上記回転軸を通る鉛直線に対して上記非係合側姿勢側の領域に向けて延び、
上記可動体が下降後に上記係合側姿勢となった場合に、上記ロッドが上記排水弁に向けて下降するとき、上記ロッドが上記当接部の上記傾斜面に当接することにより、上記可動体の上記非係合側姿勢への回動が生じ、上記可動体が上記係合側姿勢から上記非係合側姿勢に切り替えられる、請求項4又は5に記載の洗浄水タンク装置。
【請求項7】
上記排水弁は、上記排水弁の下降終了後に、上記可動体の回転動作を一定の範囲内に規制する規制部を備えている、請求項2乃至6の何れか1項に記載の洗浄水タンク装置。
【請求項8】
上記排水弁引き上げ部は、供給された水道水の給水圧を利用して、上記排水弁を駆動する排水弁水圧駆動部により構成され、
上記可動体が、上記排水弁の下降終了後に、上記係合側姿勢に切り替えられた後、上記当接部と、上記当接部より下方に位置する上記ロッドの引上部との間に隙間が形成される、請求項1乃至7の何れか1項に記載の洗浄水タンク装置。
【請求項9】
水洗便器装置であって、
請求項1乃至8の何れか1項に記載の洗浄水タンク装置と、
この洗浄水タンク装置から供給される洗浄水により洗浄される上記水洗便器と、
を有することを特徴とする水洗便器装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄水タンク装置に関し、特に、水洗便器への洗浄水の供給を行う洗浄水タンク装置、及びそれを備えた水洗便器装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、特許文献1に記載されているように、ロータンク装置が知られている。このようなロータンク装置は水圧シリンダ装置を備えており、水圧シリンダ装置内に供給された洗浄水により、水圧シリンダ装置のピストンを動作させ、連結部を上方に引き上げて、排水弁を開弁するように構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載のロータンク装置では、水圧シリンダ装置から水が流出するまで排水弁を閉弁させることができず、閉弁まで時間を要する等、排水弁引き上げ部から排水弁を安定した動作で下降させることができないという問題があった、
【0005】
そこで、本発明は、排水弁を引き上げる連結部に連結を切断可能なクラッチ機構を備え、排水弁引き上げ部から排水弁を安定した動作で下降させ、排水弁の安定した動作を実現することができる。また、本実施形態によれば、このようなクラッチ機構の切断により下降された排水弁に対し、排水弁引き上げ部のロッドが当接部に当接しながら乗り越えるようにして下降することなく、可動体は、ロッドが下降されて当接部以外の部分に当接することにより非係合側姿勢から係合側姿勢に切り替えられることができる。よって、ロッドが当接部と当接しながら乗り越えるように下降することによるロッドの引っ掛かりや乗り越え不良等を抑制でき、クラッチ機構の可動体の動作及び排水弁の動作を安定させやすくできる洗浄水タンク装置、及びそれを備えた水洗便器装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明の一実施形態は、水洗便器への洗浄水の供給を行う洗浄水タンク装置であって、上記水洗便器に供給すべき洗浄水を貯留すると共に、貯留した洗浄水を上記水洗便器へ排出するための排水口が形成された貯水タンクと、上記排水口を開閉し、上記水洗便器への洗浄水の供給、停止を行う排水弁と、上記排水弁を引き上げる排水弁引き上げ部であって、上記排水弁引き上げ部は上記排水弁に向けて下方に延びるロッドを備える、上記排水弁引き上げ部と、上記排水弁と上記排水弁引き上げ部から延びる上記ロッドとを連結して上記ロッドにより上記排水弁を引き上げると共に、所定のタイミングで切断され、上記排水弁を降下させるクラッチ機構とを備え、上記クラッチ機構は、非係合側姿勢と係合側姿勢とを切換可能である可動体を備え、上記可動体は上記排水弁に設けられ、上記可動体は上記ロッドが引き上げられるときに、上記ロッドと当接する上記当接部を備え、上記可動体の上記係合側姿勢は、上記当接部が引き上げ時の上記ロッドと当接される位置に位置決めされる姿勢であり、上記可動体の上記非係合側姿勢は、上記当接部が下降時の上記ロッドと当接しない位置に位置決めされる姿勢であり、上記可動体は、上記ロッドと上記当接部との当接が外れて下降する下降時において、上記非係合側姿勢を維持しながら下降し、上記可動体は、上記排水弁の下降終了後に、上記排水弁に向けて下降する上記ロッドが上記可動体のうち上記当接部以外の部分に当接することにより上記非係合側姿勢から上記係合側姿勢に切り替えられることを特徴としている。
このように構成された本発明の一実施形態によれば、排水弁と排水弁引き上げ部から延びるロッドとの連結を切断可能なクラッチ機構を備え、排水弁引き上げ部から排水弁を安定した動作で下降させ、排水弁の安定した動作を実現することができる。また、本実施形態によれば、クラッチ機構において可動する可動体は、上記ロッドと上記当接部との当接が外れて下降する下降時において、上記非係合側姿勢を維持しながら下降することができ、また、上記可動体は、上記排水弁の下降終了後に、上記排水弁に向けて下降する上記ロッドが上記可動体のうち上記当接部以外の部分に当接することにより上記非係合側姿勢から上記係合側姿勢に切り替えられることができる。これにより、排水弁に向けて下降するロッドが、当接部に当接しながら乗り越えるようにして下降することなく、可動体は、ロッドが下降されて当接部以外の部分に当接することにより非係合側姿勢から係合側姿勢に切り替えられることができる。よって、ロッドが当接部と当接しながら乗り越えるように下降することによるロッドの引っ掛かりや乗り越え不良等を抑制でき、可動体の動作及び排水弁の動作を安定させやすくできる。
【0007】
本発明の一実施形態において、好ましくは、上記クラッチ機構の上記可動体は、回転動作の中心となる回転軸を備え、上記可動体は、上記係合側姿勢と上記非係合側姿勢とを回転動作により切り替えるように構成され、上記可動体の重心は、上記回転軸よりも上側に位置する。
このように構成された本発明の一実施形態によれば、上記クラッチ機構の上記可動体は、係合側姿勢と非係合側姿勢とを回転動作により切り替えることができるので、可動体の動作範囲を比較的小さくでき、他のスライド動作をするような作動機構に比べて可動体の構造がコンパクトに形成できる。また、可動体の重心は、回転軸よりも上側に位置するので、可動体の重心が回転軸に対して一方側又は他方側にずれた状態においては、可動体が、可動体の重心が回転軸に対してずれた側において自身の姿勢を自身の重さにより保持しやすくできる。
【0008】
本発明の一実施形態において、好ましくは、上記可動体の上記非係合側姿勢においては、上記可動体の重心は上記回転軸を通る鉛直線に対して一方側に位置決めされ、上記非係合側姿勢から切り換えられる上記係合側姿勢においては、上記可動体の重心が上記鉛直線に対して一方側と反対側の他方側に位置決めされる。
このように構成された本発明の一実施形態によれば、可動体の非係合側姿勢は、可動体の重心が回転軸を通る鉛直線に対して一方側に位置している姿勢であるので、可動体が、非係合側姿勢を自身の重さにより保持しやすくできる。また、可動体の係合側姿勢は、可動体の重心が鉛直線に対して一方側と反対側の他方側に位置している姿勢であるので、可動体が、係合側姿勢を自身の重さにより保持しやすくできる。よって、可動体は、非係合側姿勢及び係合側姿勢のいずれにおいても、自身の姿勢を自身の重さにより保持しやすくでき、可動体の動作をより安定させることができる。
【0009】
本発明の一実施形態において、好ましくは、上記可動体は、上記排水弁に向けて下降する上記ロッドが、上記可動体のうち上記回転軸よりも上記係合側姿勢側の部分に当接することにより、上記非係合側姿勢から上記係合側姿勢に回転動作により切り替えるように構成される。
このように構成された本発明の一実施形態によれば、可動体は、上記排水弁に向けて下降する上記ロッドが、上記可動体のうち上記回転軸よりも上記係合側姿勢側の部分に当接することにより、上記非係合側姿勢から上記係合側姿勢に回転動作により切り替えるように構成される。これにより、より確実に可動体を回転動作させ、非係合側姿勢から上記係合側姿勢に切り替えることができる。
【0010】
本発明の一実施形態において、好ましくは、上記回転軸の軸線の延びる方向から見た側面視で、上記ロッドの先端は、曲面を形成している。
このように構成された本発明の一実施形態によれば、上記回転軸の軸線の延びる方向から見た側面視で、上記ロッドの先端は、曲面を形成している。これにより、ロッドの先端が可動体に当接する際に可動体の回転動作が阻害されにくくなり、可動体の係合側姿勢から引上時姿勢への動作をよりスムーズに行うことができる。
【0011】
本発明の一実施形態において、好ましくは、上記可動体の上記当接部は、頂部側に斜めの傾斜面を備え、上記傾斜面の法線は、上記可動体が上記係合側姿勢であるとき、上記回転軸を通る鉛直線に対して上記非係合側姿勢側の領域に向けて延び、上記可動体が下降後に上記係合側姿勢となった場合に、上記ロッドが上記排水弁に向けて下降するとき、上記ロッドが上記当接部の上記傾斜面に当接することにより、上記可動体の上記非係合側姿勢への回動が生じ、上記可動体が上記係合側姿勢から上記非係合側姿勢に切り替えられる。
このように構成された本発明の一実施形態によれば、上記可動体が上記係合側姿勢となってしまった場合においても、上記ロッドが上記排水弁に向けて下降するとき、上記ロッドが上記当接部の上記傾斜面に当接することにより、上記ロッドが上記当接部の上記傾斜面を押して上記可動体の上記非係合側姿勢への回動が生じ、上記可動体が上記係合側姿勢から上記非係合側姿勢に切り替えられる。これにより、可動体が係合側姿勢を維持したまま、ロッドが当接部に当接しながらさらに下降することによるロッドの引っ掛かりや乗り越え不良等を抑制でき、ロッドがさらに下降されたときに可動体が非係合側姿勢から係合側姿勢に切り替えられる動作が安定して実行でき、洗浄水タンク装置の動作をより安定化できる。
【0012】
本発明の一実施形態において、好ましくは、上記排水弁は、上記排水弁の下降終了後に、上記可動体の回転動作を一定の範囲内に規制する規制部を備えている。
このように構成された本発明の一実施形態によれば、排水弁は、上記排水弁の下降終了後に、可動体の回転動作を一定の範囲内に規制する規制部を備えている。これにより、排水弁の下降終了後に、可動体が不要な回転をすることを抑制でき、洗浄水タンク装置の動作をより安定化できる。
【0013】
本発明の一実施形態において、好ましくは、上記排水弁引き上げ部は、供給された水道水の給水圧を利用して、上記排水弁を駆動する排水弁水圧駆動部により構成され、上記可動体が、上記排水弁の下降終了後に、上記係合側姿勢に切り替えられた後、上記当接部と、上記当接部より下方に位置する上記ロッドの引上部との間に隙間が形成される。
このように構成された本発明の一実施形態によれば、排水弁水圧駆動部への給水の初期において給水による引き上げ力が比較的弱く且つ不安定であるとき、当接部と、引上部との間に隙間が形成されているので、このような引き上げ力が可動体に伝達されず、排水弁水圧駆動部への給水が安定し、給水による引き上げ力が比較的強く且つ安定してから、引上部が当接部を比較的安定して引き上げることができる。よって、排水弁水圧駆動部への給水が緩やかに開始されるような場合にも、引上部が当接部を比較的安定して引き上げることができる。
【0014】
また、本発明の一実施形態は、水洗便器装置であって、水洗便器と、ロッドが当接部と当接しながら乗り越えるように下降することによるロッドの引っ掛かりや乗り越え不良等を抑制でき、可動体の動作及び排水弁の動作を安定させやすくできる洗浄水タンク装置と、を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、クラッチ機構の可動体の動作及び排水弁の動作を安定させやすくできる洗浄水タンク装置、及びそれを備えた水洗便器装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置を備えた水洗便器装置全体を示す斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置の概略構成を示す断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置の排水弁水圧駆動部、クラッチ機構及び排水弁が、待機状態で貯水タンク内に配置されている様子を示す側面図である。
【
図4】
図3のIV-IV線に沿って切った正面断面図である。
【
図5】
図4のV-V線に沿って切った前後方向断面図である。
【
図6】本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置のクラッチ機構を分解して示す分解斜視図である。
【
図7】
図6のクラッチ機構を分解した状態を回転体の回転軸の軸線の延びる方向と直交する方向から見た分解正面図である。
【
図8】
図6のクラッチ機構を分解した状態を回転体の回転軸の軸線の延びる方向から見た側面視で示す分解側面図である。
【
図9】
図6のクラッチ機構の回転体が係合側姿勢を取っている状態を回転軸の軸線の延びる方向から見た側面視で示す側面図である。
【
図10】
図6のクラッチ機構の回転体が非係合側姿勢を取っている状態を回転軸の軸線の延びる方向から見た側面視で示す側面図である。
【
図11】
図6のクラッチ機構の回転体が引上時姿勢を取っている状態を回転軸の軸線の延びる方向から見た側面視で示す側面図である。
【
図12】本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置のクラッチ機構の待機状態における回転体と、ロッドとの関係を示す側面図である。
【
図13】
図12のXIII-XIII線に沿って切った断面図である。
【
図14】
図12のXIV-XIV線に沿って切った断面図である。
【
図15】本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置のクラッチ機構の可動体が待機状態から引上状態となるまでの動作において回転体と、ロッドとの関係を、
図12のXIII-XIII線に沿って切った断面と同様の断面により示す断面図である。
【
図16】本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置のクラッチ機構の可動体が待機状態から引上状態となるまでの動作において回転体と、ロッドとの関係を、
図12のXIII-XIII線に沿って切った断面と同様の断面により示す断面図である。
【
図17】
図5の洗浄水タンク装置において、可動体が引き上げられる引上時状態を示す断面図である。
【
図18】
図5の洗浄水タンク装置において、クラッチ機構30の切断時の動作を示す断面図である。
【
図19】
図5の洗浄水タンク装置において、可動体のベースプレートの一端が規制部と接触し、クラッチ機構が切断される動作を示す断面図である。
【
図20】
図5の洗浄水タンク装置において、可動体のベースプレートの一端が規制部と接触し、クラッチ機構が切断される動作を示す断面図である。
【
図21】
図5の洗浄水タンク装置において、クラッチ機構が切断されて可動体が下降する動作を示す断面図である。
【
図22】
図5の洗浄水タンク装置において、クラッチ機構が切断されて可動体が下降する動作を示す断面図である。
【
図23】
図5の洗浄水タンク装置において、可動体が下降動作を終了した状態を示す断面図である。
【
図24】
図5の洗浄水タンク装置において、可動体の下降停止後の可動体の非係合側姿勢から係合姿勢への姿勢切換動作を示す断面図である。
【
図25】
図5の洗浄水タンク装置において、可動体の下降停止後の可動体の非係合側姿勢から係合姿勢への姿勢切換動作を示す断面図である。
【
図26】
図5の洗浄水タンク装置において、可動体の下降停止後の可動体の非係合側姿勢から係合姿勢への姿勢切換動作を示す断面図である。
【
図27】
図5の洗浄水タンク装置において、可動体の下降停止後の可動体の非係合側姿勢から係合姿勢への姿勢切換動作を示す断面図である。
【
図28】
図5の洗浄水タンク装置において、イレギュラーな事象として、可動体が衝撃等の何らかの理由により下降終了時点において係合側姿勢を取ってしまった場合に可動体の係合側姿勢から非係合側姿勢への姿勢切換動作を示す断面図である。
【
図29】
図5の洗浄水タンク装置において、イレギュラーな事象として、可動体が衝撃等の何らかの理由により下降終了時点において係合側姿勢を取ってしまった場合に可動体の係合側姿勢から非係合側姿勢への姿勢切換動作を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、添付図面を参照して、本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置を備えた水洗便器装置を説明する。
図1は、本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置を備えた水洗便器装置全体を示す斜視図であり、
図2は、本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置の概略構成を示す断面図であり、
図3は、本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置の排水弁水圧駆動部、クラッチ機構及び排水弁が、待機状態で貯水タンク内に配置されている様子を示す側面図であり、
図4は、
図3のIV-IV線に沿って切った正面断面図であり、
図5は、
図4のV-V線に沿って切った前後方向断面図である。
【0018】
図1に示すように、本発明の一実施形態による水洗便器装置1は、水洗便器である水洗便器本体2と、この水洗便器本体2の後部に載置された、本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置4から構成されている。水洗便器本体2は洗浄水タンク装置4から供給される洗浄水により洗浄される。本実施形態の水洗便器装置1は、使用後に、壁面に取り付けられたリモコン装置6を操作するか、便座に設けられた人感センサ8が使用者の離座を検知した後、所定時間経過することにより、水洗便器本体2のボウル部2aの洗浄が行われるように構成されている。本実施形態による洗浄水タンク装置4は、リモコン装置6又は人感センサ8からの指示信号に基づいて、内部に貯留されている洗浄水を水洗便器本体2に排出し、この洗浄水によりボウル部2aを洗浄するように構成されている。
【0019】
また、ボウル部2aを洗浄するための便器洗浄動作は、使用者がリモコン装置6の押しボタン6aを押すことにより実行される。なお、本実施形態では人感センサ8は便座に設けられているが、本発明はこの形態に限るものではなく、使用者の着座、離座や接近、離脱、手をかざす動作を検知できる位置に設けられていればよく、例えば、水洗便器本体2や洗浄水タンク装置4に設けることもできる。また、人感センサ8は、使用者の着座、離座や接近、離脱、手をかざす動作を検知できるものであればよく、例えば、赤外線センサやマイクロ波センサを人感センサ8として使用することができる。また、リモコン装置6は、後述する第1制御弁16及び第2制御弁22の開閉を機械的に制御できるような構造を有する操作レバー装置、操作ボタン装置に変更されてもよい。
【0020】
図2に示すように、洗浄水タンク装置4は、水洗便器本体2に供給すべき洗浄水を貯留する貯水タンク10と、この貯水タンク10に設けられた排水口10aを開閉するための排水弁12と、この排水弁12を引き上げる排水弁引き上げ部である排水弁水圧駆動部14と、を備える。また、洗浄水タンク装置4は、水道からの排水弁水圧駆動部14への給水を制御する給水制御装置である第1制御弁16と、第1制御弁16に取り付けられた電磁弁18と、を内部に有する。さらに、洗浄水タンク装置4は、貯水タンク10に洗浄水を供給するための第2制御弁22と、第2制御弁22に取り付けられた電磁弁24と、を内部に有する。また、洗浄水タンク装置4は、引き上げられた排水弁12を所定の位置に保持するための、弁制御部であると共にタイミング制御機構であるフロート装置26を有する。フロート装置26は排水弁12が降下して、排水口10aが閉塞されるタイミングを制御するための弁制御部である。さらに、洗浄水タンク装置4はクラッチ機構30を備えている。このクラッチ機構30は、排水弁12と排水弁水圧駆動部14から延びるロッド32とを連結して、排水弁12を排水弁水圧駆動部14のロッド32の動作により引き上げると共に、所定のタイミングで切断され、排水弁12を降下させる。排水弁12の上方にはケーシング13が形成され、ケーシング13は下方側が開口された円筒形状に形成されている。ケーシング13は排水弁水圧駆動部14と接続され且つ固定されている。
【0021】
貯水タンク10は、水洗便器本体2に供給すべき洗浄水を貯留するように構成されたタンクであり、その底部には貯留した洗浄水を水洗便器本体2へ排出するための排水口10aが形成されている。また、貯水タンク10内において、排水口10aの下流側にはオーバーフロー管10bが接続されている。このオーバーフロー管10bは、排水口10aの近傍から垂直に立ち上がり、貯水タンク10内に貯留されている洗浄水の満水水位WLよりも上方まで延びている。従って、オーバーフロー管10bの上端から流入した洗浄水は、排水口10aをバイパスして、水洗便器本体2へ直接流出する。
【0022】
排水弁12は、排水口10aを開閉するように配置された弁体装置であり、排水弁12が上方に引き上げられることにより開弁され、貯水タンク10内の洗浄水が水洗便器本体2に排出されて、ボウル部2aが洗浄される。また、排水弁12が排水口10aを閉止することにより水洗便器本体2への洗浄水の供給の停止が行われる。排水弁12は、円形の外形を有すると共に排水口10aを開閉する弁体部12bと、弁体部12bから上方に延びると共に弁体部12bと連動する弁軸フレーム体12aと、C形状に形成され回転軸66を受け入れる支持部12d(
図6参照)と、弁軸フレーム体12aの頂部に設けられ可動体の回転動作を規制する規制部である第1規制部12e(
図13参照)と、弁軸フレーム体12aの頂部に設けられ可動体の回転動作を規制する規制部である第2規制部12fと、を備えている。排水弁12は、弁軸フレーム体12aを鉛直方向に上下動させることにより弁体部12bを鉛直方向に上下動させ排水口10aを開閉させる直動式の排水弁装置を構成している。また、排水弁12は、排水弁水圧駆動部14の駆動力により引き上げられ、所定の高さまで引き上げられると、クラッチ機構30が切断され、自重により降下する。排水弁12が降下する際、排水弁12はフロート装置26によって所定時間保持され、排水弁12が排水口10aに着座するまでの時間が調整される。
第1規制部12eは、排水弁12の下降終了後に、回転軸66の軸線方向から見て、可動体60の反時計回りの回転範囲を規制し、可動体60を一定の範囲内で回転させるように可動体60の回転動作を規制する。第1規制部12eは、第2規制部12fより低い位置に位置する。
第2規制部12fは、排水弁12の下降終了後に、回転軸66の軸線方向から見て、可動体60の時計回りの回転範囲を規制し、可動体60を一定の範囲内で回転させるように可動体60の回転動作を規制する。
【0023】
排水弁水圧駆動部14は、水道から供給された水道水の給水圧を利用して、給水圧のかけられた水道水を洗浄水として受け入れ、排水弁12を駆動するように構成されている。具体的には、排水弁水圧駆動部14は、第1制御弁16から供給された洗浄水が流入するシリンダ14aと、このシリンダ14a内に摺動可能に配置されたピストン14bと、シリンダ14aの下端中央を貫通して下方に延びると共に排水弁12を駆動するようになっているロッド32と、を有する。
【0024】
さらに、シリンダ14aの内部にはスプリング14cが配置されており、ピストン14bを下方に向けて付勢している。また、ピストン14bにはU形状のパッキン14eが取り付けられ、シリンダ14aの内壁面とピストン14bの間の水密性が確保されている。さらに、ロッド32の下端にはクラッチ機構30が設けられており、このクラッチ機構30により、ロッド32と排水弁12の弁軸フレーム体12aが連結・解除される。
【0025】
シリンダ14aは円筒形の部材であり、その軸線を鉛直方向に向けて配置されると共に、内部にピストン14bを摺動可能に受け入れている。また、シリンダ14aの下端部には、駆動部給水路34aが接続されており、第1制御弁16から流出した洗浄水がシリンダ14a内に流入するようになっている。このため、シリンダ14a内のピストン14bは、シリンダ14aに流入した洗浄水により、スプリング14cの付勢力に抗して押し上げられる。すなわち、ピストン14bは、シリンダに流入した洗浄水の圧力により上方に移動される。
【0026】
一方、シリンダ14aの中部には流出孔が設けられ、駆動部排水路34bは、この流出孔を介してシリンダ14aの内部と連通している。従って、シリンダ14a下部に接続された駆動部給水路34aからシリンダ14a内に洗浄水が流入すると、ピストン14bは、第1の位置であるシリンダ14aの下部から上方へ押し上げられる。そして、ピストン14bが、流出孔よりも上方の第2の位置まで押し上げられると、シリンダ14aに流入した水は流出孔から駆動部排水路34bを通って流出する。即ち、駆動部給水路34aと駆動部排水路34bは、ピストン14bが第2の位置まで移動されると、シリンダ14aの内部を介して連通される。シリンダ14aから延びる駆動部排水路34bの先端部には吐出部54が形成されている。このように、駆動部排水路34bは、吐出部54まで延びる流路を形成している。吐出部54は、貯水タンク10内に水を流出させる。従って、シリンダ14aから流出した水は、全量が貯水タンク10内に貯留される。
【0027】
ロッド32は、ピストン14bから下方に延びる棒状の部材を形成する。ロッド32は、ピストン14bと一体に形成されているが、別体により形成されピストン14bと固定されていてもよい。ロッド32は、排水弁12に向けて下方に延びる。ロッド32は、シリンダ14aの底面中央に形成された貫通孔14fを通って、シリンダ14aの中から下方に突出するように延びている。また、シリンダ14aの下方から突出するロッド32と、シリンダ14aの貫通孔14fの内壁との間には、隙間14dが設けられ、シリンダ14aに流入した洗浄水の一部は、この隙間14dから流出する。隙間14dから流出した水は、貯水タンク10内に流入する。なお、この隙間14dは比較的狭く、流路抵抗が大きいため、隙間14dから水が流出する状態であっても、駆動部給水路34aからシリンダ14aに流入する洗浄水によりシリンダ14a内の圧力が上昇し、スプリング14cの付勢力に抗してピストン14bが押し上げられる。
図4に示すように、ロッド32の中心軸線32bは鉛直線に沿っている。ロッド32の中心軸線32bと排水弁12の中心軸線12cとは概ね同一軸線上に位置する。排水弁水圧駆動部14は水圧により駆動されて排水弁を引き上げる排水弁引き上げ部を構成しているが、排水弁水圧駆動部14は手動操作により駆動されて排水弁を引き上げる排水弁引き上げ部であってもよい。また、排水弁水圧駆動部14はモーター等の駆動部により駆動されて排水弁を引き上げる排水弁引き上げ部であってもよい。
【0028】
次に、第1制御弁16は、電磁弁18の作動に基づいて排水弁水圧駆動部14への給水を制御すると共に、吐出部54への給水、停止を制御するように構成されている。即ち、第1制御弁16は、主弁体16aと、この主弁体16aによって開閉される主弁口16bと、主弁体16aを移動させるための圧力室16cと、この圧力室16c内の圧力を切り替えるパイロット弁16dと、を備えている。
【0029】
主弁体16aは、第1制御弁16の主弁口16bを開閉するように構成され、主弁口16bが開弁されると、給水管38から供給された水道水が排水弁水圧駆動部14に流入する。圧力室16cは、第1制御弁16の筐体内に、主弁体16aに隣接して設けられている。この圧力室16cには、給水管38から供給された水道水の一部が流入し、内部の圧力が上昇するように構成されている。圧力室16c内の圧力が上昇すると、主弁体16aが主弁口16bに向けて移動され、主弁口16bが閉弁される。
【0030】
パイロット弁16dは、圧力室16cに設けられたパイロット弁口(図示せず)を開閉するように構成されている。パイロット弁によってパイロット弁口(図示せず)が開弁されると圧力室16c内の水が流出して内部の圧力が低下する。圧力室16c内の圧力が低下すると主弁体16aが主弁口16bから離座し、第1制御弁16が開弁される。また、パイロット弁16dが閉弁されたとき、圧力室16c内の圧力が上昇し、第1制御弁16が閉弁される。
【0031】
パイロット弁16dは、パイロット弁16dに取り付けられた電磁弁18により移動され、パイロット弁口(図示せず)を開閉する。電磁弁18はコントローラ40に電気的に接続され、コントローラ40からの指令信号に基づいてパイロット弁16dを移動させる。具体的には、リモコン装置6や人感センサ8からの信号をコントローラ40が受信し、コントローラ40は電磁弁18に電気信号を送り、これを作動させる。
【0032】
また、第1制御弁16と排水弁水圧駆動部14の間の駆動部給水路34aには、バキュームブレーカ36が設けられている。このバキュームブレーカ36により、第1制御弁16側が負圧になった場合には、第1制御弁16側への水の逆流が防止される。
【0033】
次に、第2制御弁22は、電磁弁24の作動に基づいて貯水タンク10への給水、停止を制御するように構成されている。この第2制御弁22は、第1制御弁16を介して給水管38に接続されているが、第1制御弁16の開閉に関わらず、給水管38から供給された水道水は常に第2制御弁22に流入するようになっている。また、第2制御弁22には、主弁体22a、圧力室22b、及びパイロット弁22cが備えられ、電磁弁24によりパイロット弁22cが開閉される。電磁弁24によりパイロット弁22cが開弁されると、第2制御弁22の主弁体22aが開弁され、給水管38から流入した水道水が貯水タンク10内又はオーバーフロー管10bに供給される。また、電磁弁24はコントローラ40に電気的に接続され、コントローラ40からの指令信号に基づいてパイロット弁22cを移動させる。具体的には、リモコン装置6の操作に基づいてコントローラ40は電磁弁24に電気信号を送り、これを作動させる。なお、電磁弁24は省略されてもよく、電磁弁24が省略された場合には、後述するようにパイロット弁22cはフロートスイッチ42により制御される。
【0034】
一方、パイロット弁22cには、フロートスイッチ42が接続されている。フロートスイッチ42は、貯水タンク10内の水位に基づいてパイロット弁22cを制御し、パイロット弁口(図示せず)を開閉するように構成されている。即ち、フロートスイッチ42は、貯水タンク10内の水位が所定の水位に到達するとパイロット弁22cに信号を送り、パイロット弁口(図示せず)を閉弁させる。即ち、フロートスイッチ42は、貯水タンク10内の貯水水位を止水水位である所定の満水水位WLに設定するように構成されている。フロートスイッチ42は貯水タンク10内に配置されており、貯水タンク10の水位が満水水位WLまで上昇すると、第1制御弁16から排水弁水圧駆動部14への給水を停止させるように構成されている。なお、フロートスイッチ42は、ボールタップ機構に変更可能である。このボールタップ機構は、水位に応じて上下動するボールタップ用フロートと、ボールタップ用フロートに接続されると共にパイロット弁22cに作用する支持アームとを備えている。これにより、ボールタップ機構は、貯水タンク10の水位が満水水位WLまで上昇すると、ボールタップ用フロートが上昇し、ボールタップ用フロートに接続された支持アームが上方に回動され、機械的にパイロット弁22cのパイロット弁口(図示せず)を閉弁させる。ボールタップ機構は、貯水タンク10の水位が満水水位WLより下降すると、ボールタップ用フロートが下降し、ボールタップ用フロートに接続された支持アームが下方に回動され、機械的にパイロット弁22cのパイロット弁口(図示せず)を開弁させる。
【0035】
また、第2制御弁22から延びる給水路50には給水路分岐部50aが設けられている。給水路分岐部50aにおいて分岐した給水路50の一方は貯水タンク10内に水を流出させ、他方がオーバーフロー管10bの中に水を流出させるように構成されている。従って、第2制御弁22から供給された洗浄水の一部は、オーバーフロー管10bを通って水洗便器本体2に排出され、残りは貯水タンク10内に貯留される。
【0036】
また、給水路50には、バキュームブレーカ44が設けられている。このバキュームブレーカ44により、第2制御弁22側が負圧になった場合には、第2制御弁22側への水の逆流が防止される。
【0037】
また、水道から供給された水は、貯水タンク10の外側に配置された止水栓38a、この止水栓38aの下流側の、貯水タンク10の中に配置された定流量弁38bを介して第1制御弁16及び第2制御弁22に夫々供給される。止水栓38aは、メンテナンス時等に洗浄水タンク装置4への水の供給を停止させるために設けられており、通常は開栓された状態で使用される。定流量弁38bは、水道から供給された水を、所定流量で第1制御弁16、第2制御弁22に流入させるために設けられており、水洗便器装置1の設置環境に関わらず一定流量の水が供給されるように構成されている。
【0038】
コントローラ40は、CPU及びメモリ等を内蔵し、メモリ等に記録された所定の制御プログラムに基づいて後述する大洗浄モード及び小洗浄モードを実行するように接続された機器を制御する。コントローラ40は、リモコン装置6、人感センサ8、電磁弁18及び電磁弁24等と電気的に接続されている。
【0039】
次に、フロート装置26を説明する。フロート装置26は、排水弁12の近傍に設けられている。フロート装置26は、弁軸フレーム体12aが所定距離吊り上げられ、クラッチ機構30により弁軸フレーム体12aが切り離された後、排水弁12の弁軸フレーム体12aが降下して、排水口10aを閉弁させるのを遅延させるように構成されている。具体的には、フロート装置26は、フロート部26aと、このフロート部26aと連動した係合部26bと、を有する。一方、排水弁12の弁軸フレーム体12aの基端部には、係合部26bと係合可能に形成された保持爪12gが形成されている。
【0040】
係合部26bは、クラッチ機構30により切り離されて降下してきた弁軸フレーム体12aの保持爪12gと係合し、弁軸フレーム体12a及び排水弁12が降下して、排水口10aに着座するのを阻止するように構成されている。次いで、貯水タンク10内の水位低下と共にフロート部26aが下降し、貯水タンク10内の水位が所定水位まで低下すると、フロート部26aが係合部26bを回動させて、係合部26bと保持爪12gの係合が解除される。係合が解除されることにより、弁軸フレーム体12a及び排水弁12は降下して、排水口10aに着座する。これにより、排水弁12の閉弁が遅延され、適正量の洗浄水が、排水口10aから排出されるようになっている。
【0041】
次に、
図3乃至
図12を参照して、クラッチ機構30の構成及び作用を説明する。
まず、
図4に示すように、クラッチ機構30は、排水弁水圧駆動部14から下方に延びるロッド32の下端に設けられ、ロッド32の下端と、排水弁12の弁軸フレーム体12aの上端を連結・解除するように構成されている。
図6に示すように、クラッチ機構30は、排水弁12と排水弁水圧駆動部14との連結の切断をするように可動する可動体60と、ロッド32の薄肉部33と、ロッド32の引上部35と、ロッド32の外側においてシリンダ14aの底面から下方に垂下する規制部37(
図5参照)と、を備えている。クラッチ機構30は、このような構造により、ばねを備えたばね式のクラッチ機構ではなく、重力により可動体の姿勢を調整する重力式のクラッチ機構を実現している。クラッチ機構30が、ばねの構造を省略できることにより、クラッチ機構の製造コスト及び組立工数を削減することができる。
【0042】
可動体60は排水弁12の弁軸フレーム体12aに設けられている。可動体60は弁軸フレーム体12aの支持部12dに回動可能に取付けられている。可動体60は支持部12dに取付けられた状態で排水弁側で動作する可動機構を形成する。可動体60は、後述する係合側姿勢と非係合側姿勢とを回転動作により切り換えるように構成されている回転体である。
【0043】
可動体60は、横向きに延びるベースプレート62と、ベースプレートの側方の両側から縦方向に立ち上がるアーム64と、可動体60の回転動作の中心となる回転軸66と、排水弁水圧駆動部14のロッド32が排水弁12を引き上げようとするときに排水弁水圧駆動部14のロッド32が当接される当接部68とを備えている。
【0044】
ベースプレート62は、横向きに板状に延びている。回転軸66の軸線の延びる方向から見た側面視で、ベースプレート62のうち回転軸66に対して係合側姿勢の当接部68が位置する側を係合側部分62e(
図9参照)とし、回転軸66に対して非係合側姿勢の当接部68が位置する側を非係合側部分62f(
図10参照)とする。
アーム64は、上面視で、ロッド32の外側に配置され、ベースプレート62の外側から上方に向けて延びている。
【0045】
回転軸66は、ベースプレート62の中央近傍に設けられており、ベースプレート62を横断するように設けられている。回転軸66は、その配置されている部分においてベースプレート62と一体化されて形成されている。すなわち、回転軸66は、ベースプレート62の左右両側に突出するように形成されている。回転軸66は、水平方向に向けて延び、可動体60を回動可能に支持している。ベースプレート62上に回転軸66が設けられ、ベースプレート62より上方にアーム64が延びているような構造により可動体60は形成されている。よって、可動体60の重心は、回転軸66よりも上側に位置する。例えば、
図9乃至
図11に示すように、可動体60の重心Hは、当接部68の位置に位置している。
【0046】
当接部68は、回転軸66よりも上側に位置している。当接部68は、アーム64の上部において内側向きに突出するように形成されている。当接部68は、回転軸66と平行な方向から見た場合に(回転軸66の軸線の延びる方向から見た側面視で)、涙形状に形成されている。当接部68の下面は、回転軸66と平行な方向から見た場合に、円弧状の曲面に形成されている。当接部68は、頂部側に斜めの傾斜面70を備え、傾斜面70の法線D(
図28参照)は、可動体60が係合側姿勢であるとき、回転軸66を通る鉛直線Cに対して非係合側姿勢の当接部68が位置する側の領域に向けて延びている。ロッド32が当接部68を引き上げているとき、可動体60の回転の中心軸の延びる方向から見た側面視で、当接部68はロッド32の中心軸線32b(
図4参照)と排水弁12の中心軸線12c(
図4参照)と同一軸線上に位置する。なお、本実施形態においては、回転軸66も中心軸線12cと同一軸線上に位置しているが、回転軸66は中心軸線12cと同一軸線上に配置されていなくてもよい。
【0047】
次に、
図9乃至
図11を参照して、可動体60の取る係合側姿勢、非係合側姿勢及び引上時姿勢について説明する。
可動体60は、回転軸66を中心として回動可能に構成され、可動体60は、上述のような構造に基づいて係合側姿勢、非係合側姿勢及び引上時姿勢をとることができるように構成されている。
図9乃至
図11においては、可動体60の取りうる姿勢を説明するため、回転軸の軸線の延びる方向から見た側面視で、可動体60のベースプレート62、当接部68、回転軸66との関係が示されている。可動体60の係合側姿勢は、当接部68が引き上げ時のロッド32と当接される位置に位置決めされて待機するときの姿勢である。可動体60の非係合側姿勢は、当接部68が下降時又は引き上げ時のロッド32と当接しない位置に位置決めされる姿勢である。可動体60の引上時姿勢は、当接部68が引き上げ時のロッド32と当接して引き上げられる最中の姿勢である。可動体60の非係合側姿勢においては、可動体60の重心Hは回転軸66を通る鉛直線Cに対して一方側(非係合姿勢側であり、
図10の紙面の左側)に位置決めされる。非係合側姿勢から切り換えられる係合側姿勢においては、可動体60の重心Hが鉛直線Cに対して一方側と反対側の他方側(係合姿勢側であり、
図9の紙面の右側)に位置決めされる。
【0048】
図12乃至
図14に示すように、ロッド32には、その先端側においてロッド32の外形を上部よりも細く形成した薄肉部33と、薄肉部33の下端において再び拡径された引上部35とが形成されている。
薄肉部33は、ロッド32の一定の高さから他の一定の高さまでのロッド32の側面部分が両側面から内側に削り取られて形成されている。側面視で四角形状に側面部分が削られている。よって、
図13に示すように、ロッド32と当接部68とが当接していない状態において、上面視で、
図13に示すように当接部68はロッド32の外径よりも内側まで延びることができる。また、上面視で、ロッド32と当接部68との当接部分は、ロッド32の外径よりも内側に位置している。
【0049】
引上部35は、上向きの平坦な平面を形成している。引上部35の上面はほぼ水平に延びている。引上部35は、当接部68が薄肉部33に対応する位置に存在する場合(待機状態の場合)に、当接部68と、当接部68より下方に位置する引上部35との間に隙間が形成されるようになっている。
【0050】
次に、
図2、
図3等を参照して、本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置4、及びそれを備えた水洗便器装置1の一連の洗浄動作を説明する。
まず、
図2に示す便器洗浄の待機状態においては、貯水タンク10内の水位は所定の満水水位WLにあり、この状態では、第1制御弁16及び第2制御弁22は何れも閉弁されている。また、フロート装置26は、待機状態にされている。次に、使用者がリモコン装置6(
図1)の洗浄ボタンを押すと、リモコン装置6は、便器洗浄の指示信号をコントローラ40(
図2)に送信する。なお、本実施形態の水洗便器装置1においては、人感センサ8(
図1)によって使用者の離座が検知された後、リモコン装置6の洗浄ボタンが押されることなく、所定時間経過した場合にも、便器洗浄の指示信号がコントローラ40に送信される。
【0051】
便器洗浄をすべき指示信号を受信すると、コントローラ40は、第1制御弁16に備えられた電磁弁18(
図2)を作動させ、電磁弁側のパイロット弁16dをパイロット弁口から離座させる。これにより、圧力室16c内の圧力が低下し、主弁体16aが主弁口16bから離座して、主弁口16bが開弁される。第1制御弁16が開弁されると、給水管38から流入した洗浄水が、第1制御弁16を介して排水弁水圧駆動部14に供給される。これにより、排水弁水圧駆動部14のピストン14bが押し上げられ、ロッド32を介して排水弁12が引き上げられ、貯水タンク10内の洗浄水が排水口10aから水洗便器本体2へ排出される。
【0052】
排水弁12が引き上げられる際、排水弁12の弁軸フレーム体12aに設けられた保持爪12gがフロート装置26の係合部26bを押し上げて回動させ、保持爪12gは係合部26bを越えて上昇する。次に、更に排水弁12が引き上げられると、クラッチ機構30が切断される。即ち、排水弁12が所定の高さに到達すると、クラッチ機構30のベースプレート62が、規制部37に当たり、クラッチ機構30が切断される(
図17等参照)。
【0053】
クラッチ機構30が切断されると、排水弁12は、自重により排水口10aに向けて降下し始める。降下してきた排水弁12の保持爪12gが、フロート装置26の係合部26bと係合し、排水弁12は係合部26bによって所定の高さに保持される。排水弁12が係合部26bによって保持されることにより、排水口10aは開弁状態に維持され、貯水タンク10内の洗浄水の水洗便器本体2への排出が維持される。このとき、パイロット弁16dは依然として開状態であり、給水管38から流入した洗浄水が、第1制御弁16を介して排水弁水圧駆動部14に供給される。ピストン14bが第2の位置まで上昇され、駆動部給水路34aと駆動部排水路34bとが、シリンダ14aの内部を介して連通されるので、洗浄水が吐出部54から貯水タンク10内に吐出される。
【0054】
次いで、貯水タンク10内の水位が低下すると、貯水タンク10内の水位を検出しているフロートスイッチ42がオフになる。フロートスイッチ42がオフになると、第2制御弁22に備えられたパイロット弁22cが開弁される。よって、第2制御弁22から給水路50を介して洗浄水が貯水タンク10内に供給される。コントローラ40は大洗浄モードが選択されている場合、コントローラ40は電磁弁18の開弁から所定時間経過した時点で電磁弁18を閉弁させ、電磁弁側のパイロット弁16dを閉弁させる。第1制御弁16の主弁体16aは、パイロット弁16dが閉弁されたとき、閉弁される。電磁弁側のパイロット弁16dが閉弁された後も、第2制御弁22の開弁状態は維持され、貯水タンク10への給水は継続される。第1制御弁16が閉弁されるので、洗浄水の排水弁水圧駆動部14及び吐出部54への供給が停止される。
【0055】
また、貯水タンク10内の水位が、所定水位WL1まで低下すると、フロート装置26のフロート部26aが下降し、これが係合部26bを移動させる。これにより、弁軸フレーム体12aと係合部26bとの係合が解除され、弁軸フレーム体12a及び排水弁12は再び降下し始める。
【0056】
これにより、排水弁12が排水口10aに着座し、排水口10aが閉塞される。一方、フロートスイッチ42は依然としてオフ状態であるため、第2制御弁22の開弁状態が維持され、貯水タンク10への給水が継続される。給水路50を介して供給される洗浄水は、給水路分岐部50aへ至り、給水路分岐部50aにおいて分岐された洗浄水の一部がオーバーフロー管10bに流入し、残りが貯水タンク10内に貯留される。オーバーフロー管10bに流入した洗浄水は、水洗便器本体2に流入し、ボウル部2aのリフィルに使用される。排水弁12が閉弁された状態で、貯水タンク10内に洗浄水が流入することにより、貯水タンク10内の水位が上昇する。
【0057】
貯水タンク10内の水位が所定の満水水位WLまで上昇すると、フロートスイッチ42がオンになる。フロートスイッチ42がオンにされると、フロートスイッチ側のパイロット弁22cが閉弁される。これにより、パイロット弁22cが閉弁された状態となるので、圧力室22b内の圧力が上昇し、第2制御弁22の主弁体22aが閉弁され、給水が停止される。
【0058】
第1制御弁16が閉弁され、排水弁水圧駆動部14への給水が停止された後、排水弁水圧駆動部14のシリンダ14a内の洗浄水が徐々に隙間14dから流出すると共に、ピストン14bがスプリング14cの付勢力により押し下げられ、これと共にロッド32が低下する。これにより、ロッド32の先端部32aがベースプレート62に当接し、可動体60は、弁軸フレーム体12aと、ロッド32との間で挟まれて停止され、便器洗浄が開始される前の待機状態に復帰する。
【0059】
次に、
図5、
図12乃至
図29を参照して、水洗便器装置1の一連の洗浄動作のうちクラッチ機構30の動作についてより詳細に説明する。
先ず、
図5及び
図12乃至
図14を参照して、待機状態のクラッチ機構30について説明する。排水弁12は排水口10aに着座しており、排水口10aは閉塞されている。排水弁12は最も下降され且つ停止した状態となっている。クラッチ機構30の可動体60は、排水弁12の弁軸フレーム体12aと、排水弁水圧駆動部14のロッド32との間で挟まれて停止されている。排水弁水圧駆動部14のピストン14bが最も下降された位置となっており、排水弁水圧駆動部14のロッド32も、最も下降された位置となっている。
【0060】
待機状態におけるクラッチ機構30の可動体60、排水弁12の弁軸フレーム体12a、排水弁水圧駆動部14のロッド32との位置関係について、より拡大した図により説明する。
図14に示すように、ロッド32の中心部分の断面においては、ロッド32の先端部(下端部)32aは、可動体60のベースプレート62の当接部側部分62aに当接すると共に下方に向けて押圧している。回転軸66の軸線の延びる方向から見た側面視で、先端部32aは、下向きに突出する曲面を形成している。また、ベースプレート62の当接部側部分62aの下側部分62bは弁軸フレーム体12aと当接している。よって、可動体60は、弁軸フレーム体12aと、ロッド32との間で挟まれて停止されている。
このとき、
図13に示すように、ロッド32の中心部分よりずれた位置の断面においては、当接部68が、薄肉部33に対応する位置に位置し、当接部68と、当接部68より下方に位置する引上部35との間に隙間が形成されている。なお、後述するように可動体60が、排水弁12の下降終了後に、係合側姿勢に切り替えられた後、上記に示すような待機状態となり、当接部68が、薄肉部33に対応する位置に位置し、当接部68と、当接部68より下方に位置する引上部35との間に隙間が形成されている。
【0061】
次に、
図13、
図15乃至
図17を参照して、排水弁水圧駆動部14のピストン14bが上昇を開始し、可動体60が待機状態の係合側姿勢から引上状態の引上時姿勢となるまでの動作を説明する。
排水弁水圧駆動部14に洗浄水が供給されると、ピストン14bが上方へ移動し、ロッド32が上昇を開始する。このとき、
図13に示すような待機状態からロッド32が僅かずつ上昇を開始する。当接部68と、当接部68より下方に位置する引上部35との間に隙間Bが形成されているので、ロッド32の上昇開始直後には、引上部35が当接部68の下面に当接せず、給水による引き上げ力が比較的強く且つ安定してから、引上部35の当接部側部分62aが当接部68を比較的安定して引き上げることができる。
図15に示すように、ロッド32が上昇し、引上部35が当接部68に当接する。このとき、当接部68は、回転軸66の真上(鉛直線C上)よりもやや係合側姿勢側の重心方向に寄った位置に位置している。このとき、当接部68の下面は円弧状の曲面(例えば半円形状断面)に形成されているので、ロッド32の上昇の上昇に合わせて回転され、
図16に示すような回転軸66の真上の位置まで転がりながら位置修正される。
図16に示すように、可動体60は引上時姿勢をとっている。以後ロッド32が上昇するときには、引上部35が回転軸66の真上において当接部68に当接し、可動体60を引き上げる。このとき、回転軸66の軸線の延びる方向から見た側面視で、可動体60の重心Hは、回転軸66の真上に位置している。これにより、ロッド32の上昇に対し、ロッド32の中心軸線と可動体60の重心とが一致した状態で可動体60が他の方向へのモーメントや重心のずれによるねじれ力のモーメントを生じることなく鉛直方向上方に引き上げられる。さらに、ロッド32の中心軸線と、排水弁12の軸線とが一致しているので、排水弁12も他の方向へのモーメント等を生じることなく鉛直方向上方に引き上げられる。よって、
図16に示すように、排水弁12がロッド32によって安定した姿勢で引き上げられる。
【0062】
図16及に示すように、可動体60が引き上げられている引上状態においては、引上部35が回転軸66の真上において当接部68に当接している。可動体60のベースプレート62はほぼ水平向きに延びている。
図17に示すように排水弁12が可動体60と共に引き上げられる。
【0063】
次に、
図18乃至
図21を参照して、クラッチ機構30の切断時の動作を説明する。
図19及び
図20においては、分かりやすく説明するため、重心Hの位置を×印により例示すると共に、当接部68の回動可能な範囲の軌跡を点線Aにより仮想的に例示している。
図18及び
図19に示すように、排水弁水圧駆動部14に洗浄水がさらに供給され、排水弁12が所定位置まで引き上げられると、可動体60のベースプレート62の一端が規制部37と接触し、クラッチ機構30が切断される。
【0064】
図19に示すように、当接部68が引上部35上に位置し且つ回転軸66の真上に位置している状態で、ロッド32により可動体60が引き上げられている。このとき、ベースプレート62はほぼ水平向きに延びている。可動体60の重心Hは、例えば×印で示すように、当接部68の位置に位置している。ベースプレート62の非係合側姿勢端部62cが規制部37に当接すると、
図20に示すように、ベースプレート62の非係合側姿勢端部62cが上昇を妨げられ、可動体60が回転軸66を中心に回動される。よって、当接部68が引上部35から外れるように非係合姿勢側に向けて移動される。このとき可動体60の重心Hは、例えば×印で示すように、非係合姿勢側に向けて移動されている。このように、可動体60の重心Hが回転軸66の鉛直線C上から一方側に移動され、可動体60は
図20及び
図21に示すような非係合側姿勢で安定しやすくなる。非係合側姿勢は、可動体60の重心Hが回転軸66の真上よりもやや非係合側姿勢端部62c側に寄った状態で、可動体60の当接部68が回転軸66の真上よりも引上部35から外れる(離れる)側に位置する姿勢である。
【0065】
図21に示すように、当接部68が引上部35から外れるまで移動されると、当接部68及び可動体60が自由落下により下降を開始する。このようにして、クラッチ機構30の切断が実行される。
【0066】
次に、
図21乃至
図23を参照して、クラッチ機構30の切断後の可動体60の下降動作について説明する。
図21に示すように、クラッチ機構30の切断後、可動体60は可動体60の重心Hが回転軸66の真上よりもやや非係合側姿勢側に寄った結果、非係合姿勢をとっている状態で降下する。可動体60の重心Hが非係合姿勢側に移動しているので、可動体60の非係合側姿勢が安定する。
図21及び
図22に示すように、可動体60は、ロッド32と当接部68との当接が外れて下降する下降時において、非係合側姿勢を維持しながら下降する。可動体60は、下降開始時点から下降終了時点(弁体部12bが排水口10aを閉止する時点)までの下降中において非係合側姿勢を維持している。前述するように、降下した排水弁12は、排水口10aに着座する前に、フロート装置26等によって、一時的に所定の高さに保持されるが、この間も可動体60は、非係合側姿勢を維持している。
【0067】
図23に示すように、可動体60は、下降終了時点においても非係合側姿勢を維持している。可動体60の重心Hは、回転軸66に対し、非係合側姿勢を維持しようとする側にずれており、可動体60に姿勢を変更させにくく、むしろ、非係合側姿勢を維持しやすくしている。
【0068】
次に、
図24乃至
図27を参照して、可動体60の下降停止後の可動体60の非係合側姿勢から係合側姿勢への姿勢切換動作について説明する。
図24乃至
図27において、分かりやすく説明するため、重心Hの位置を×印により例示すると共に、当接部68の回動可能な範囲の軌跡を点線Aにより仮想的に例示している。
図24に示すように、可動体60は、下降終了後においても非係合側姿勢を維持している。ベースプレート62の非係合側姿勢端部62c側の下側部分62dは第1規制部12eと当接し停止されている。
【0069】
図24に示すように、排水弁水圧駆動部14に供給されている洗浄水が停止されると、スプリング14cの付勢力により、ロッド32が降下する。よって、可動体60に対してロッド32が降下する。可動体60は、非係合側姿勢を取り、当接部68は、先端部32a及び引上部35の真下よりも非係合側姿勢側にずれた位置に位置している。
図25に示すように、ロッド32の先端部32a及び引上部35は、当接部68に当接することなく当接部68より下方側まで下降される。ロッド32の先端部32aがベースプレート62の係合姿勢側の当接部側部分62aに当接することによりベースプレート62が回転軸66を中心として時計回りに回動される。可動体60は、排水弁12に向けて下降するロッド32が、可動体60のうち回転軸66よりも当接部側部分62a側の部分に当接することにより、可動体60が非係合側姿勢から係合側姿勢に回転動作により切り替えるように構成されている。このとき可動体60の重心Hが非係合姿勢側から回転軸66の鉛直方向上方に向けて移動される。また、
図25乃至
図27に示すように、ロッド32の先端部32aが当接部側部分62aを押圧するにつれて、可動体60の重心Hが回転軸66の鉛直方向上方から係合側姿勢側に向けて移動される。このように、可動体60は、排水弁12の下降終了後に、排水弁12に向けて下降するロッド32が可動体60のうち当接部68以外の部分に当接することにより非係合側姿勢から係合側姿勢に切り替えられる。
【0070】
図27に示すように、ベースプレート62の当接部側部分62aの下側部分62bは弁軸フレーム体12aの第2規制部12fと当接し、ベースプレート62の回転は停止されている。ロッド32の先端部32aがベースプレート62と当接している。可動体60は、弁軸フレーム体12aと、ロッド32との間で挟まれて停止されている。このとき可動体60が、排水弁12の下降終了後に、係合側姿勢に切り替えられた後、当接部68と、当接部68より下方に位置するロッド32の引上部35との間に隙間Bが形成される。このようにして、可動体60は、洗浄開始前の待機状態に戻る。
【0071】
次に、
図28及び
図29を参照して、イレギュラーな事象として、可動体60が衝撃等の何らかの理由により下降終了時点において係合側姿勢を取ってしまった場合の可動体60及びロッド32の下降動作について説明する。
図22及び
図23に示すような、可動体60の下降動作において、
図28に示すように、可動体60が衝撃等の何らかの理由により下降終了時点において係合側姿勢を取ってしまう可能性がある。このとき、ベースプレート62の下側部分62bが第2規制部12fと当接し、可動体60の回動は停止されている。当接部68は、回転軸66を通る鉛直線Cよりも係合側姿勢側にややずれた位置に位置している。
図28に示すように、排水弁水圧駆動部14に供給されている洗浄水が停止され、ロッド32の先端部32aが下方に向けて下降するとき、ロッド32の先端部32aが当接部68の上向きの傾斜面70に当接する。傾斜面70の法線Dは、回転軸66を通る鉛直線Cに対して非係合側姿勢側の領域に向けて延びているので、当接部68の傾斜面70は矢印Eの向き(法線Dの延びる向き)に回動されるような力を受ける。よって、可動体60が下降後に係合側姿勢となった場合に、ロッド32が排水弁12に向けて下降するとき、ロッド32が当接部68の傾斜面70に当接することにより、可動体60の非係合側姿勢への回動が生じ、可動体60が係合側姿勢から非係合側姿勢に切り替えられる。よって、可動体60を、
図29に示すように、係合側姿勢から非係合側姿勢に誘導することができる。その後、ロッド32がさらに下降する場合においては、
図24乃至
図27に示すものと同様の動作により、可動体60が非係合側姿勢から係合側姿勢に切り替えられて待機状態とされる。
【0072】
上述した本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置4によれば、排水弁12と排水弁水圧駆動部14から延びるロッド32との連結を切断可能なクラッチ機構30を備え、排水弁水圧駆動部14から排水弁12を安定した動作で下降させ、排水弁12の安定した動作を実現することができる。また、本実施形態によれば、クラッチ機構30において可動する可動体60は、ロッド32と当接部68との当接が外れて下降する下降時において、非係合側姿勢を維持しながら下降することができ、また、可動体60は、排水弁12の下降終了後に、排水弁12に向けて下降するロッド32が可動体60のうち当接部68以外の部分に当接することにより非係合側姿勢から係合側姿勢に切り替えられることができる。これにより、排水弁12に向けて下降するロッド32が、当接部68に当接しながら乗り越えるようにして下降することなく、可動体60は、ロッド32が下降されて当接部68以外の部分に当接することにより非係合側姿勢から係合側姿勢に切り替えられることができる。よって、ロッド32が当接部68と当接しながら乗り越えるように下降することによるロッド32の引っ掛かりや乗り越え不良等を抑制でき、可動体60の動作及び排水弁12の動作を安定させやすくできる。
【0073】
さらに、本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置4によれば、クラッチ機構30の可動体60は、係合側姿勢と非係合側姿勢とを回転動作により切り替えることができるので、可動体60の動作範囲を比較的小さくでき、他のスライド動作をするような作動機構に比べて可動体60の構造がコンパクトに形成できる。また、可動体60の重心Hは、回転軸66よりも上側に位置するので、可動体60の重心が回転軸66に対して一方側又は他方側にずれた状態においては、可動体60が、可動体60の重心が回転軸66に対してずれた側において自身の姿勢を自身の重さにより保持しやすくできる。
【0074】
さらに、本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置4によれば、可動体60の非係合側姿勢は、可動体60の重心が回転軸66を通る鉛直線Cに対して一方側に位置している姿勢であるので、可動体60が、非係合側姿勢を自身の重さにより保持しやすくできる。また、可動体60の係合側姿勢は、可動体60の重心Hが鉛直線Cに対して一方側と反対側の他方側に位置している姿勢であるので、可動体60が、係合側姿勢を自身の重さにより保持しやすくできる。よって、可動体60は、非係合側姿勢及び係合側姿勢のいずれにおいても、自身の姿勢を自身の重さにより保持しやすくでき、可動体60の動作をより安定させることができる。
【0075】
さらに、本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置4によれば、可動体60は、排水弁12に向けて下降するロッド32が、可動体60のうち回転軸66よりも係合側姿勢側の部分に当接することにより、非係合側姿勢から係合側姿勢に回転動作により切り替えるように構成される。これにより、より確実に可動体60を回転動作させ、非係合側姿勢から係合側姿勢に切り替えることができる。
【0076】
さらに、本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置4によれば、回転軸66の軸線の延びる方向から見た側面視で、ロッド32の先端は、曲面を形成している。これにより、ロッド32の先端が可動体60に当接する際に可動体60の回転動作が阻害されにくくなり、可動体60の係合側姿勢から引上時姿勢への動作をよりスムーズに行うことができる。
【0077】
さらに、本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置4によれば、可動体60が係合側姿勢となってしまった場合においても、ロッド32が排水弁12に向けて下降するとき、ロッド32が当接部68の傾斜面70に当接することにより、ロッド32が当接部68の傾斜面70を押して可動体60の非係合側姿勢への回動が生じ、可動体60が係合側姿勢から非係合側姿勢に切り替えられる。これにより、可動体60が係合側姿勢を維持したまま、ロッド32が当接部68に当接しながらさらに乗り越えるように下降することによるロッド32の引っ掛かりや乗り越え不良等を抑制でき、ロッド32がさらに下降されたときに可動体60が非係合側姿勢から係合側姿勢に切り替えられる動作が安定して実行でき、可動体60の動作及び排水弁12の動作をより安定させやすくできる。
【0078】
さらに、本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置4によれば、排水弁12は、排水弁12の下降終了後に、可動体60の回転動作を一定の範囲内に規制する第1規制部12e及び第2規制部12fを備えている。これにより、排水弁12の下降終了後に、可動体60が不要な回転をすることを抑制でき、可動体60の動作及び排水弁12の動作をより安定させやすくできる。
【0079】
さらに、本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置4によれば、排水弁水圧駆動部14への給水の初期において給水による引き上げ力が比較的弱く且つ不安定であるとき、当接部68と、引上部35との間に隙間が形成されているので、このような引き上げ力が可動体60に伝達されず、排水弁水圧駆動部14への給水が安定し、給水による引き上げ力が比較的強く且つ安定してから、引上部35が当接部68を比較的安定して引き上げることができる。よって、排水弁水圧駆動部14への給水が緩やかに開始されるような場合にも、引上部35が当接部68を比較的安定して引き上げることができる。
【0080】
さらに、本発明の一実施形態は、水洗便器装置1であって、水洗便器本体2と、ロッド32が当接部68と当接しながら乗り越えるように下降することによるロッド32の引っ掛かりや乗り越え不良等を抑制でき、可動体60の動作及び排水弁12の動作を安定させやすくできる洗浄水タンク装置4と、を有することを特徴としている。
【符号の説明】
【0081】
1 水洗便器装置
2 水洗便器本体
4 洗浄水タンク装置
10 貯水タンク
10a 排水口
12 排水弁
14 排水弁水圧駆動部
14d 隙間
30 クラッチ機構
32 ロッド
35 引上部
37 規制部
60 可動体
66 回転軸
68 当接部
70 傾斜面
B 隙間
C 鉛直線
D 法線
H 重心