(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】回路構成体
(51)【国際特許分類】
H01H 45/12 20060101AFI20240408BHJP
H01H 45/04 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
H01H45/12
H01H45/04 H
(21)【出願番号】P 2021101830
(22)【出願日】2021-06-18
【審査請求日】2023-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】弁理士法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【氏名又は名称】中根 美枝
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【氏名又は名称】笠井 美孝
(72)【発明者】
【氏名】柳田 泰次
(72)【発明者】
【氏名】下田 洋樹
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-87265(JP,A)
【文献】特開2021-82682(JP,A)
【文献】特開2020-184564(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 45/00 - 45/14
H01H 50/00 - 59/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リレーと、
前記リレーを収容するケースと、
前記リレーの接続部に締結される締結部と、外部の放熱対象に熱伝導可能に接触する伝熱部と、を有するバスバーと、を備え、
前記リレーは、前記リレーの側面に設けられて前記接続部と反対方向に開口する励磁用コネクタ部を有し、
前記バスバーの前記締結部は、前記ケースの底壁側に配置された前記伝熱部から90°よりも大きい角度で傾斜して上方に突出しており、
前記バスバーの前記締結部に前記接続部が接続された前記リレーの前記励磁用コネクタ部が、斜め上方に開口している、
回路構成体。
【請求項2】
前記ケースは、前記励磁用コネクタ部を外部に露出する開口部を有する、請求項1に記載の回路構成体。
【請求項3】
前記ケースは、前記バスバーが収容されるロアケースと、前記ロアケースの開口部を覆うアッパケースとを有し、
前記アッパケースは、前記リレーが固定される固定部を有する、請求項1または請求項2に記載の回路構成体。
【請求項4】
前記アッパケースは、前記リレーの上面と平行に広がる傾斜面を有し、前記傾斜面に前記固定部が突設されている、請求項3に記載の回路構成体。
【請求項5】
前記ロアケースは、底壁と側壁を有し、前記側壁の上端の少なくとも一部が、前記リレーの前記接続部よりも上方に位置している、請求項3または請求項4に記載の回路構成体。
【請求項6】
前記バスバーの前記伝熱部は、柔軟性を有する第一熱伝導部材を介して前記ケースの接触部に接触している、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の回路構成体。
【請求項7】
前記ケースの前記接触部は、柔軟性を有する第二熱伝導部材を介して前記放熱対象に接触している、請求項6に記載の回路構成体。
【請求項8】
前記バスバーの前記伝熱部と前記リレーの底面との隙間が、柔軟性を有する第三熱伝導部材で充填されている、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の回路構成体。
【請求項9】
前記バスバーの前記伝熱部は、前記ケースに設けられた突出部によって前記第一熱伝導部材に接触した状態に保持されている、請求項6または請求項7に記載の回路構成体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回路構成体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、通電により発熱するリレーを備えた回路構成体においては、リレーの熱を放熱するための放熱構造が設けられる場合がある。例えば、特許文献1には、ケース内に収容されたリレーの接続部に接続されたバスバーに伝熱部を設け、リレーの底面側に配置した伝熱部を、ケースを介して外部の放熱対象(電池パックの筐体等)に熱伝導可能に接触する放熱構造が提案されている。これにより、リレーの熱を、接続部からバスバーの伝熱部に伝熱し、さらに、伝熱部が熱的に接触する放熱対象へと放熱することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、リレーには、励磁用の電線が接続される励磁用コネクタ部が設けられている。例えば、励磁用コネクタ部がリレーの側方に開口している場合には、リレーの周囲にロアケースや他部材が近接して配置されているため、励磁用コネクタ部に励磁用の電線の端末に設けられた端子を接続するための十分な作業スペースが確保できない場合がある。それゆえ、リレーの励磁用コネクタ部に予め中継用の電線の一方の端部を接続しておき、中継用の電線の他端部を作業スペースが確保できる部位まで取り回して配置しておく等の対応をする必要があった。
【0005】
そのため、中継用の電線が別途必要となることから、回路構成体の部品点数の増加やコストアップが避けられないという問題を内在していた。これに対して、リレーの配設位置を高くして、励磁用コネクタ部をロアケースより上方に配置することで、作業スペースを確保することも考えられる。しかしながら、リレーの接続部からバスバーの伝熱部までの距離が長くなり、リレーの放熱性が低下を招くおそれがあり、好ましい対策とは言い難かった。
【0006】
そこで、リレーの放熱性の低下を抑制しつつ、部品点数の削減や低コスト化を図ることができる、回路構成体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の回路構成体は、リレーと、前記リレーを収容するケースと、前記リレーの接続部に締結される締結部と、外部の放熱対象に熱伝導可能に接触する伝熱部と、を有するバスバーと、を備え、前記リレーは、前記リレーの側面に設けられて前記接続部と反対方向に開口する励磁用コネクタ部を有し、前記バスバーの前記締結部は、前記ケースの底壁側に配置された前記伝熱部から90°よりも大きい角度で傾斜して上方に突出しており、前記バスバーの前記締結部に前記接続部が接続された前記リレーの前記励磁用コネクタ部が、斜め上方に開口している、回路構成体である。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、リレーの放熱性の低下を抑制しつつ、部品点数の削減や低コスト化を図ることが可能な回路構成体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態1にかかる回路構成体の代表的な構成例を説明する斜視図である。
【
図7】
図7は、
図4に示すアッパケースの底面側から見た拡大斜視図である。
【
図8】
図8は、
図4に示すリレーに関連する代表的な構成部品の分解斜視図である。
【
図9】
図9は、実施形態2にかかる回路構成体の代表的な構成例を説明する断面拡大図であって、
図5に相当する図である。
【
図10】
図10は、実施形態3にかかる回路構成体の代表的な構成例を説明する断面拡大図であって、
図5に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<本開示の実施形態の説明>
最初に、本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示の回路構成体は、
(1)リレーと、前記リレーを収容するケースと、前記リレーの接続部に締結される締結部と、外部の放熱対象に熱伝導可能に接触する伝熱部と、を有するバスバーと、を備え、前記リレーは、前記リレーの側面に設けられて前記接続部と反対方向に開口する励磁用コネクタ部を有し、前記バスバーの前記締結部は、前記ケースの底壁側に配置された前記伝熱部から90°よりも大きい角度で傾斜して上方に突出しており、前記バスバーの前記締結部に前記接続部が接続された前記リレーの前記励磁用コネクタ部が、斜め上方に開口している、回路構成体である。
【0011】
この構造によれば、リレーの接続部に締結されるバスバーが、接続部に締結される締結部と外部の放熱対象に熱伝導可能に接触する伝熱部とを有している。それゆえ、リレーの接続部から締結部に吸熱した熱を、伝熱部を介して外部の放熱対象に放熱する放熱経路を構築できる。しかも、バスバーの締結部が、ケースの底壁側に配置された伝熱部から90°よりも大きい角度で傾斜して上方に突出している。その結果、バスバーの締結部に接続部が締結されたリレーでは、接続部と反対方向に開口する励磁用コネクタ部を斜め上方に開口させることができる。その結果、たとえ、リレーの周辺にケースや他部材が近接した状態でも、励磁用コネクタ部が斜め上方に向かって開口していることから、励磁用コネクタ部に対して、励磁用の電線の端末に設けられた端子を接続するために十分な作業スペースを確保することができる。その結果、リレーの励磁用コネクタ部に対して、励磁用電線の端末に設けられた端子をダイレクトに接続することができ、従来構造のようにリレーの励磁用コネクタ部に予め中継用の電線を接続しておく必要がない。それゆえ、回路構成体の部品点数の削減や低コスト化を図ることができる。
【0012】
加えて、バスバーの締結部の伝熱部からの突出方向を傾斜させるだけでよいことから、伝熱部のリレーの接続部からの距離を大きくする必要もなく、リレーの放熱性が低下することも抑制できる。なお、バスバーの伝熱部と締結部のなす角は、リレーの励磁用コネクタ部を斜め上方に開口させることが可能であればよく、90°よりも大きく180°よりも小さければよいが、100°~135°の範囲が好ましい。100°よりも小さいと、励磁用コネクタ部へのアクセス性の改善が不十分であり、135°よりも大きいと、リレーの上方への突出量が多くなり、回路構成体の大型化を招くからである。
【0013】
(2)前記ケースは、前記励磁用コネクタ部を外部に露出する開口部を有する、ことが好ましい。開口部を通して、ケース内に励磁用コネクタ部に接続される励磁用の外部コネクタを容易に挿入することができるからである。さらに、開口部からリレーの励磁用コネクタ部付近に伝熱された熱を外部に放熱し得る。
【0014】
(3)前記ケースは、前記バスバーが収容されるロアケースと、前記ロアケースの開口部を覆うアッパケースとを有し、前記アッパケースは、前記リレーが固定される固定部を有する、ことが好ましい。バスバーの伝熱部に対して傾斜した状態でバスバーの締結部に締結されるリレーを、アッパケース側で固定することができ、リレーの安定した保持が可能となる。しかも、回路構成体の組立時には、アッパケース側に予めリレーを取り付けておくことができるため、作業性の向上を図ることができる。
【0015】
(4)前記アッパケースは、前記リレーの上面と平行に広がる傾斜面を有し、前記傾斜面に前記固定部が突設されている、ことが好ましい。アッパケースに、傾斜配置されるリレーの上面と平行に広がる傾斜面が設けられ、そこに、リレーが固定される固定部が突設されることから、ケースや回路構成体の小型化を図りつつ、省スペースにリレーの固定部をアッパケースに設けることができる。しかも、リレーの傾斜方向と平行に広がる傾斜面でリレーを保持できることから、一層安定したリレーの保持が可能となる。
【0016】
(5)前記ロアケースは、底壁と側壁を有し、前記側壁の上端の少なくとも一部が、前記リレーの前記接続部よりも上方に位置している、ことが好ましい。ロアケースの側壁の上端の少なくとも一部が、リレーの接続部よりも上方に位置していることから、回路構成体の防水性を有利に確保することができる。そのような場合でも、リレーの励磁用コネクタ部が、斜め上方に開口していることから、励磁用の電線の端末に設けられた端子をダイレクトに励磁用コネクタ部に接続することが可能となる。
【0017】
(6)前記バスバーの前記伝熱部は、柔軟性を有する第一熱伝導部材を介して前記ケースの接触部に接触している、ことが好ましい。バスバーの伝熱部とケースの接触部との隙間を柔軟性を有する熱伝導部材で埋めることができ、放熱経路の熱伝導性の向上を図ることができる。
【0018】
(7)前記ケースの前記接触部は、柔軟性を有する第二熱伝導部材を介して前記放熱対象に接触している、ことが好ましい。ケースの接触部と放熱対象との隙間を柔軟性を有する熱伝導部材で埋めることができ、放熱経路の熱伝導性の向上を図ることができる。
【0019】
(8)前記バスバーの前記伝熱部と前記リレーの底面との隙間が、柔軟性を有する第三熱伝導部材で充填されている、ことが好ましい。リレーの底面と伝熱部を柔軟性を有する第三熱伝導部材で熱接触させることができ、さらなる放熱経路を構成して、放熱性の向上を図ることができる。
【0020】
(9)前記バスバーの前記伝熱部は、前記ケースに設けられた突出部によって前記第一熱伝導部材に接触した状態に保持されている、ことが好ましい。バスバーの伝熱部が第一熱伝導部材から浮いてしまうことを有利に防止することができる。
【0021】
<本開示の実施形態の詳細>
本開示の回路構成体の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0022】
<実施形態1>
本明細書に開示された技術を回路構成体10に適用した実施形態1について、
図1から
図7を参照しつつ説明する。回路構成体10は、例えば電気自動車やハイブリッド自動車等の車両(図示せず)に搭載され、バッテリー等の電源(図示せず)からモータ等の負荷(図示せず)への電力の供給、制御を行う。回路構成体10は、任意の向きで配置することができるが、以下では、上下方向,左右方向,前後方向を、図中に示す上下方向,左右方向および前後方向を基準として説明する。また、複数の同一部材については、一部の部材にのみ符号を付し、他の部材については符号を省略する場合がある。
【0023】
図4に示すように、回路構成体10は、リレー12と、リレー12を収容するケース14と、リレー12を電源やモータ等の図示しない外部機器に接続するバスバー(後述する第1通電用バスバー42および第2通電用バスバー48)と、を備えている。
【0024】
<リレー12>
図5および
図7に示すように、リレー12は、直方体形状の本体18の内部に図示しない接点部およびコイル部を有する、いわゆる機械式の電気部品である。本体18の前面には、右側に設けられた第1接続部20(接続部の一例)と、左側に設けられた第2接続部22(接続部の一例)とが左右方向に並んで設けられている。第1接続部20と第2接続部22に電流が流れると、接点部およびコイル部で熱が発生する。接点部は、第1接続部20と第2接続部22に近接する側に設けられ、コイル部は、第1接続部20と第2接続部22から離隔する側に設けられ、本体18全体が発熱する。第1接続部20と第2接続部22には、それぞれ前後方向に延びるボルト孔24が形成されている。第1接続部20には、ボルト孔24にボルト26を螺合することにより後述する第1通電用バスバー42の締結部42aが接続され、熱伝導可能に接触されている。また、第2接続部22には、ボルト孔24にボルト26を螺合することにより、後述する第2通電用バスバー48の締結部48aが接続され、熱伝導可能に接触されている。なお、本体18の前面において、第1接続部20と第2接続部22との間には、第1接続部20と第2接続部22を仕切る絶縁板28が設けられている。
【0025】
図4に示すように、リレー12の本体18における上端部の2箇所には、上方から見て略矩形平板状をなす脚部30が外方に向かって突設されている。より詳細には、1つの脚部30は、本体18の前方側の上端部から左方に向かって突設されており、もう1つの脚部30は、本体18の後方側の上端部から右方に向かって突設されている。脚部30にはボルト26が挿通されるボルト挿通孔32が貫設されている。
【0026】
図4に示すように、さらにリレー12は、リレー12の本体18の左側面に励磁用コネクタ部34を有している。励磁用コネクタ部34は、第1接続部20と第2接続部22のボルト孔24とは反対方向(後方)に向かって開口する外部コネクタ収容部36を有している。すなわち、励磁用コネクタ部34の外部コネクタ収容部36に対して、後方から図示しない外部機器に接続された電線38の端末に設けられた外部コネクタ40を挿入し嵌合する。これにより、励磁用コネクタ部34が外部機器に対して接続されて、リレー12のオンオフ動作が可能となっている。
【0027】
<第1通電用バスバー42>
第1通電用バスバー42は、金属板材を所定の形状にプレス加工してなる。第1通電用バスバー42を構成する金属としては、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等の熱伝導性が高く、電気抵抗の低い金属を適宜に選択することができる。
図7に示すように、第1通電用バスバー42は、リレー12の本体18の前面に形成された第1接続部20に対してボルト締結されて前面に沿って斜め下方に向かって延出する締結部42aを有している。第1通電用バスバー42は、締結部42aの延出先端部において後方に向かってL字状に屈曲されて、後述するロアケース50の底壁56に沿って延びて底壁56の接触部88に第一熱伝導部材82を介して熱伝導可能に接触する伝熱部42bを有している。すなわち、第1通電用バスバー42は、ロアケース50の底壁56に載置された伝熱部42bから90°よりも大きい角度で傾斜して上方に突出する締結部42aを有している。また、第1通電用バスバー42は、締結部42aの延出基端部の右側から上方に向かって突出後に前方側に向かってL字状に屈曲された外部接続部42cを有している。外部接続部42cは、例えばバッテリー等の図示しない外部機器に接続されるようになっている。なお、締結部42aと外部接続部42cには、それぞれボルト挿通孔44,46が形成されている。
【0028】
<第2通電用バスバー48>
第2通電用バスバー48は、金属板材を所定の形状にプレス加工してなる。第2通電用バスバー48を構成する金属としては、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等の熱伝導性が高く、電気抵抗の低い金属を適宜に選択することができる。
図7に示すように、第2通電用バスバー48は、リレー12の本体18の前面に形成された第2接続部22に対してボルト締結されて前面に沿って斜め下方に向かって延出する締結部48aを有している。第2通電用バスバー48は、締結部48aの延出先端部において後方に向かってL字状に屈曲されて、後述するロアケース50の底壁56に沿って延びて底壁56の接触部88に第一熱伝導部材82を介して接触する伝熱部48bを有している。すなわち、第2通電用バスバー48は、ロアケース50の底壁56に載置された伝熱部48bから90°よりも大きい角度で傾斜して上方に突出する締結部48aを有している。また、第2通電用バスバー48は、伝熱部48bの左端部から上方に向かって突出後に左方側に向かってL字状に屈曲された外部接続部48cを有している。外部接続部48cは、例えばモータ等の図示しない外部機器に接続されるようになっている。なお、締結部48aと外部接続部48cには、それぞれボルト挿通孔44,46が形成されている。
【0029】
<ケース14>
ケース14は、例えば
図4に示すように、車両搭載時において下方に位置するロアケース50と上方に位置するアッパケース52を備えており、ロアケース50とアッパケース52によってケース14が構成されている。例えば
図5に示すように、ケース14は、ロアケース50側にバスバー(第1通電用バスバー42および第2通電用バスバー48)が収容されており、ロアケース50の開口部である上方開口部54をアッパケース52が覆うようになっている。
【0030】
<ロアケース50>
ロアケース50は、絶縁性の合成樹脂を所定の形状に射出成型してなる。ロアケース50を構成する合成樹脂は、ガラスファイバー等のフィラーを含んでいてもよい。ロアケース50は、全体として上方および左右方向に向かって開口する樋形状をなしている。
図4に示すように、ロアケース50は、矩形平板状の底壁56と、底壁56の前後両端部から上方に向かって突出する一対の側壁58,58を有している。なお、底壁56の前端部の左側は、U字状に切欠かれている。この結果、U字状に切欠かれた部分では、側壁58もU字断面形状で突出している。また、底壁56の前方右側における側壁58の内側には、矩形ブロック状の外部接続部固定部60が上方に向かって側壁58のおよそ2倍の突出寸法で突設されている。外部接続部固定部60の突出先端部にはナット62を収容する収容凹所が形成されている。
【0031】
<アッパケース52>
アッパケース52は、絶縁性の合成樹脂を所定の形状に射出成型してなる。アッパケース52を構成する合成樹脂は、ガラスファイバー等のフィラーを含んでいてもよい。アッパケース52は、
図4および
図6に示すように、全体として下方および左右方向に向かって開口する樋形状をなしている。アッパケース52は、上壁64と、上壁64の前後両端部から下方に向かって突出する一対の側壁66,66を有している。なお、上壁64の前端部の左側は、U字状に切欠かれている。この結果、U字状に切欠かれた部分では、側壁66もU字断面形状で突出している。側壁66の突出先端部には、ボルト挿通孔68を有する底部70が形成されている。また、例えば
図4に示すように、前方の側壁66の左右方向中央部分が、前後方向および下方に向かって開口するように切欠かれて、後述するように工具が挿通可能な挿通孔71が貫設されている。さらに、例えば
図2に示すように、上壁64の前方右側が平面視で矩形状に切欠かれることにより、外部接続部挿通孔72が貫設されている。加えて、例えば
図4に示すように、上壁64の中央部の左側には、矩形ブロック状の外部接続部固定部74が下方に向かって突設されている。外部接続部固定部74の突出先端部にはナット62を収容する収容凹所が形成されている。
【0032】
上壁64の中央部は、例えば
図1に示すように、上方に向かって逆V字状に突出している。その結果、
図5に示すように、上壁64の中央部には、後方斜め上方に向かって延びる傾斜面76が形成されている。組み立てられた状態の回路構成体10において、傾斜面76はリレー12の本体18の上面に対して平行に広がるように形成されている。
図4および
図6に示すように、傾斜面76の前方側の左端部と後方側に右端部には、後述するようにリレー12の脚部30を固定する固定部78が下方に向かって突設されている。固定部78にはナット62を収容する収容凹所が形成されている。また、上壁64の後端部の左側は、例えば
図1から
図3に示すように、矩形状に切欠かれており、切欠かれた部分によって励磁用コネクタ部34を外部に露出する開口部79が形成されている。開口部79を通して、励磁用コネクタ部34に接続される励磁用の外部コネクタ40をケース14内に容易に挿入することができるようになっている。さらに、開口部79からリレー12の励磁用コネクタ部34付近に伝熱された熱を外部に放熱し得る。
【0033】
加えて、上壁64の右端部側には、
図7に示すように、下方に向かって突出する第一突出部80が設けられている。第一突出部80は、中空の筒体を左右方向に連結した形状を有している。また、上壁64の左端部側には、下方に向かって突出する第二突出部81が設けられている。第二突出部81は、H字断面を前後方向に連結した断面形状を有している。
【0034】
<回路構成体10の組み付け工程>
続いて、回路構成体10の組み付け工程の一例について説明する。回路構成体10の組み付け工程は、以下の記載に限定されない。
【0035】
まず、アッパケース52を準備する。次に、アッパケース52を裏返して上方に向かって開口するように載置する。続いてリレー12を準備する。次に、リレー12の脚部30を、ナット62が収容されたアッパケース52の固定部78に位置決め後、ボルト26を用いてボルト締結する。続いて、第1通電用バスバー42と第2通電用バスバー48を準備し、第1通電用バスバー42の伝熱部42bと第2通電用バスバー48の伝熱部48bに対してそれぞれ第一熱伝導部材82を接着剤等により固着する。ここで、第一熱伝導部材82は、絶縁性を有して下方に偏平なシート状をなしている。このように構成された第1通電用バスバー42の締結部42aおよび第2通電用バスバー48の締結部48aのボルト挿通孔44を、リレー12の第1接続部20および第2接続部22のボルト孔24に対して位置合わせ後、ボルト26を用いてボルト締結する。なお、ボルト締結の際には、アッパケース52の挿通孔71より工具を挿入して作業を行うことが可能となっている。そして、第2通電用バスバー48の外部接続部48cのボルト挿通孔46を、アッパケース52の外部接続部固定部74内に収容されたナット62のボルト挿通孔に位置決め後、ボルト26を用いてボルト締結する。
【0036】
次に、ロアケース50を準備し、上方に開口するように載置する。上述のようにして構成されたアッパケース52を、上壁64が上に来るように配向した状態で、このロアケース50に対して組み付ける。この結果、ロアケース50の一対の側壁58,58が、アッパケース52の一対の側壁66,66によって囲まれた状態で嵌合され相互に固定される。また、
図6に示すように、第一突出部80の突出端面によって第1通電用バスバー42の伝熱部42bが第一熱伝導部材82に接触した状態に保持されている。これにより、伝熱部42bは第一熱伝導部材82を圧縮する方向に押圧されて伝熱部42bが第一熱伝導部材82の反力に負けて浮いてしまうことが有利に防止されており、両者間の接触面積を安定して維持できる。さらに、第二突出部81の突出端面によって第2通電用バスバー48の伝熱部48bが第一熱伝導部材82に接触した状態に保持されている。これにより、伝熱部48bは第一熱伝導部材82を圧縮する方向に押圧されて伝熱部48bが第一熱伝導部材82の反力に負けて浮いてしまうことが有利に防止されており、両者間の接触面積を安定して維持できる。なお、突出部の形状は、第一突出部80や第二突出部81の形状に限定されない。最後に、アッパケース52の外部接続部挿通孔72から露出した第1通電用バスバー42の外部接続部42cのボルト挿通孔46に対して、ロアケース50の外部接続部固定部60内に収容されたナット62のボルト挿通孔に位置決め後、ボルト26を用いてボルト締結する。以上の結果、回路構成体10の組み付け工程が完了する。なお、リレー12の励磁用コネクタ部34の外部コネクタ収容部36には、アッパケース52の開口部79を挿通して適時外部コネクタ40が嵌合可能である。
【0037】
このように構成された回路構成体10は、アッパケース52の底部70のボルト挿通孔68にボルトを挿通することにより、
図8に示すように、外部の放熱対象である電池パックの金属製の筐体84に対して第二熱伝導部材86を介して熱伝導可能に接触するようになっている。ここで、第一熱伝導部材82と第二熱伝導部材86は、何れも絶縁性を有しており、上下方向に扁平なシート状をなしており、空気よりも熱伝導率の大きな合成樹脂からなる。具体的には、シリコーン系の樹脂や非シリコーン系のアクリル系樹脂やセラミック系樹脂等が利用できる。より詳細には、例えば、シリコーン系の樹脂からなる、放熱ギャップフィラーや熱伝導グリースや熱伝導性シリコーンゴム等が挙げられる。第一熱伝導部材82と第二熱伝導部材86は柔軟性を有しており、上下方向に加えられる力に応じて、厚さ寸法が変化できるようになっている。それゆえ、第1通電用バスバー42と第2通電用バスバー48の伝熱部42b,48bとロアケース50の接触部88との隙間や、ロアケース50の接触部88と筐体84との隙間を柔軟性を有する第一熱伝導部材82および第二熱伝導部材86で埋めることができ、放熱経路の熱伝導性の向上を図ることができる(
図5参照)。なお、本実施形態では、第一熱伝導部材82と第二熱伝導部材86は、何れもシート状をなしているが、これに限定されず任意の形状が採用可能である。したがって、第1通電用バスバー42と第2通電用バスバー48の伝熱部42b,48bは、柔軟性を有する第一熱伝導部材82を介してロアケース50の接触部88に接触している。さらに、ロアケース50の接触部88は、柔軟性を有する第二熱伝導部材86を介して筐体84に接触している。その結果、伝熱部42b,48bは、外部の放熱対象である筐体84に熱伝導可能に接触している。
【0038】
このように構成された回路構成体10では、第1通電用バスバー42と第2通電用バスバー48の締結部42a,48aは、伝熱部42b,48bに対して同じ傾斜角度:αで突出している。そえゆえ、以下の説明では、
図5に示す第2通電用バスバー48で詳述することで、同様の構造の第1通電用バスバー42の説明を省略する。
図5に示すように、第2通電用バスバー48の締結部48aが、ロアケース50の底壁56側に配置された伝熱部48bの前端部から傾斜角度:αで傾斜して上方に突出している。なお、本実施形態では、傾斜角度:αはおよそ110°となっている。ここで、傾斜角度:αは、リレー12の励磁用コネクタ部34を斜め上方に開口させることが可能であればよく、90°よりも大きく180°よりも小さければよいが、100°~135°の範囲が好ましい。100°よりも小さいと、励磁用コネクタ部34へのアクセス性の改善が不十分であり、135°よりも大きいと、リレー12の上方への突出量が多くなり、回路構成体10の大型化を招くからである。また、例えば
図4に示すように、第2通電用バスバー48の締結部48aに第2接続部22が接続されたリレー12の励磁用コネクタ部34の外部コネクタ収容部36が、斜め上方に開口している。加えて、ロアケース50は、例えば
図5に示すように、側壁58の上端が、リレー12の第2接続部22よりも上方に位置している。これにより、回路構成体10の防水性を有利に確保することができる。しかもリレー12の励磁用コネクタ部34が、斜め上方に開口していることから、電線38の端末に設けられた励磁用コネクタをダイレクトに励磁用コネクタ部34に接続することが可能となっている。
【0039】
続いて、本実施形態の作用効果について説明する。本実施形態によれば、例えば
図5に示すように、リレー12の第2接続部22に締結される第2通電用バスバー48が、ロアケース50の底壁56の接触部88に第一熱伝導部材82を介して接触する伝熱部42bを有している。さらに、ロアケース50底壁56の接触部88は、第二熱伝導部材86を介して筐体84に接触している。それゆえ、リレー12で発生した熱を第2接続部22,第2通電用バスバー48の締結部48aおよび伝熱部48b,第一熱伝導部材82を介してロアケース50に伝熱し、さらに第二熱伝導部材86を介して筐体84に放熱する放熱経路を構築できる。しかも、締結部48aが、ロアケース50の底壁56側に配置された伝熱部48bから90°よりも大きい角度(本実施形態では、傾斜角度:αはおよそ110°)で傾斜して上方に突出している。それゆえ、締結部48aに第2接続部22が締結されたリレー12においては、第2接続部22と反対方向である後方に開口する励磁用コネクタ部34を斜め上方に開口させることができる。したがって、たとえ、リレー12の周辺にケース14や筐体84が近接した状態でも、励磁用コネクタ部34に対して励磁用の電線38の端末に設けられた外部コネクタ40を接続するために十分な作業スペースを確保することができる。以上のことから、従来構造のようにリレーの励磁用コネクタ部に予め中継用の電線を接続しておく必要がなく、回路構成体10の部品点数の削減や低コスト化を図ることができる。また、外部コネクタ40の接続のための作業スペースを確保するために、第2通電用バスバー48の締結部48aを傾斜させるだけでよいことから、伝熱部48bとリレー12の第2接続部22間の距離を大きくする必要もない。それゆえ、リレー12の第2接続部22から伝熱部48bまでの距離が長くなることが回避され、リレー12の放熱性が低下することも抑制できる。なお、ここでは、バスバーとして第2通電用バスバー48を例にとって説明を行ったが、第1通電用バスバー42についても同様である。
【0040】
アッパケース52に、傾斜配置されるリレー12の本体18の上面と平行に広がる傾斜面76が設けられ、傾斜面76にはリレー12の脚部30が固定される固定部78が突設されている。これにより、ケース14および回路構成体10の小型化を図りつつ、傾斜面76形成に伴う無駄スペースの発生を抑制し、省スペースにリレー12の固定部78をアッパケース52に設けることができる。しかも、リレー12の本体18の上面と傾斜方向と平行に広がる傾斜面76が設けられていることから、傾斜面76によって一層安定したリレー12の保持が可能となる。また、第2通電用バスバー48の伝熱部48bに対して傾斜した状態で第2通電用バスバー48の締結部48aに締結されるリレー12を、アッパケース52側で固定することができることから、リレー12の安定した保持が可能となっている。しかも、回路構成体10の組立時には、アッパケース52側に予めリレー12を取り付けておくことができるため、作業性の向上を図ることができる。
【0041】
<他の実施形態>
本明細書に記載された技術は上記記述および図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本明細書に記載された技術の技術的範囲に含まれる。
【0042】
(1)上記実施形態1では、例えば
図5に示すように、第2通電用バスバー48の伝熱部48bとリレー12の本体18の底面との隙間には何も充填されていなかったが、
図8に示す実施形態2の回路構成体90のように、柔軟性を有する第三熱伝導部材92で充填されていてもよい。これにより、リレー12の本体18の底面と伝熱部48bを柔軟性を有する第三熱伝導部材92で熱接触させることができることから、さらなる放熱経路を構成して、放熱性の向上を図ることができる。
【0043】
(2)上記実施形態では、例えば
図5に示すように、第1通電用バスバー42および第2通電用バスバー48は、通電と放熱を兼ねていたが、これに限定されない。
図9に示す実施形態3の回路構成体94のように、第2通電用バスバー96が通電専用バスバー96aと伝熱専用バスバー96bに分かれて別体とされていてもよい。
【0044】
(3)上記実施形態では、例えば
図5に示すように、第2通電用バスバー48の伝熱部48bは第一熱伝導部材82を介してロアケース50に接触し、さらに第二熱伝導部材86を介して筐体84に接触していたが、これに限定されない。第一熱伝導部材82は必ずしも必要ではない。同様に第二熱伝導部材86も必ずしも必要ではない。すなわち、いずれか一方を省略してもよいし、両方を省略してもよい。さらに、ロアケース50の接触部88が切り取られて開口されて、伝熱部48bが直接あるいは第二熱伝導部材86を介して筐体84に接触してもよい。第1通電用バスバー42の伝熱部42bについても同様である。
【0045】
(4)上記実施形態では、回路構成体10は、電池パック内に搭載される回路構成体(JB)を例にとって説明を行ったが、これに限定されない。エンジンルーム内に搭載される回路構成体等、リレーを有する回路構成体であれば、いずれのものにも適用できる。
【0046】
(5)励磁用コネクタ部34の形状は、上記実施形態で例示した形状に限定されず、相手方の形状に応じて任意の形状が採用され得る。例えば、励磁用コネクタ部は、ボルト締結によって外部コネクタと接続されるようになっていてもよい。
【0047】
(6)ロアケース50の側壁58の上端がリレー12の第2接続部22よりも上方に位置している形状に限定されず、ロアケース50の側壁58の上端の少なくとも一部がリレー12の第2接続部22よりも上方に位置している形状も採用され得る。
【0048】
(7)第一熱伝導部材82と第二熱伝導部材86は、柔軟性を有する合成樹脂により構成されていたが、これに限定されない。第一熱伝導部材82と第二熱伝導部材86は、硬化型の放熱ギャップフィラーのような硬化型の接着剤によって構成されていてもよい。この場合でも、第1通電用バスバー42の伝熱部42bと第2通電用バスバー48の伝熱部48bは、第一突出部80と第二突出部81により、第一熱伝導部材82と第二熱伝導部材86にそれぞれ接触した状態に保持される。それゆえ、第1通電用バスバー42と第2通電用バスバー48の伝熱部42b,48bとロアケース50の接触部88との隙間や、ロアケース50の接触部88と筐体84との隙間を上記接着剤で埋めることができ、放熱経路の熱伝導性の向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0049】
10 回路構成体(実施形態1)
12 リレー
14 ケース
18 本体
20 第1接続部(接続部)
22 第2接続部(接続部)
24 ボルト孔
26 ボルト
28 絶縁板
30 脚部
32 ボルト挿通孔
34 励磁用コネクタ部
36 外部コネクタ収容部
38 電線
40 外部コネクタ
42 第1通電用バスバー(バスバー)
42a 締結部
42b 伝熱部
42c 外部接続部
44 ボルト挿通孔
46 ボルト挿通孔
48 第2通電用バスバー(バスバー)
48a 締結部
48b 伝熱部
48c 外部接続部
50 ロアケース
52 アッパケース
54 上方開口部(開口部)
56 底壁
58 側壁
60 外部接続部固定部
62 ナット
64 上壁
66 側壁
68 ボルト挿通孔
70 底部
71 挿通孔
72 外部接続部挿通孔
74 外部接続部固定部
76 傾斜面
78 固定部
79 開口部
80 第一突出部(突出部)
81 第二突出部(突出部)
82 第一熱伝導部材
84 筐体(放熱対象)
86 第二熱伝導部材
88 接触部
90 回路構成体(実施形態2)
92 第三熱伝導部材
94 回路構成体(実施形態3)
96 第2通電用バスバー(バスバー)
96a 通電専用バスバー
96b 伝熱専用バスバー