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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】スタンピング装置
(51)【国際特許分類】
   B21J 5/02 20060101AFI20240408BHJP
   B21D 37/20 20060101ALI20240408BHJP
   B21J 13/02 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
B21J5/02 B
B21D37/20 Z
B21J13/02 L
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020077116
(22)【出願日】2020-04-24
(65)【公開番号】P2021171793
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-01-23
(73)【特許権者】
【識別番号】592063401
【氏名又は名称】株式会社ナベヤ
(74)【代理人】
【識別番号】100078190
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 三千雄
(74)【代理人】
【識別番号】100115174
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 正博
(72)【発明者】
【氏名】山田 大介
(72)【発明者】
【氏名】林 武男
【審査官】堀内 亮吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-083682(JP,A)
【文献】特開2002-219626(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21J 5/02
B21D 37/20
B21J 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の加工が施されるワークの対応する二つの側面に対して、それぞれ、一列に配列された複数の成形凸部を有するスタンピング口金を押圧することによって、かかるワークの二つの側面に、それぞれ、一列に配列された複数のワーク挟持用凹部が形成されるようにしたスタンピング装置において、
前記スタンピング口金を、超硬合金からなる複数の口金チップと、それら複数の口金チップを一列に収容して、保持するチップホルダとから構成し、そして該複数の口金チップのそれぞれに、前記複数の成形凸部が分割、配分されて、形成されている一方、該チップホルダの角部に、上辺部の長さが下辺部の長さよりも短くされたコ字型断面形状を呈する収容凹所が形成され、そして該収容凹所内に、前記複数の口金チップが一列に配列されて、収容されていると共に、
前記収容凹所を与える前記上辺部に、それを貫通するネジ孔が形成されており、該ネジ孔に止めネジが螺入されて、該収容凹所内に収容された前記口金チップを押圧することによって、該口金チップが固定せしめられていることを特徴とするスタンピング装置。
【請求項2】
前記口金チップの上面にV字型断面形状の係合溝が形成されており、この係合溝内に前記止めネジが突入せしめられて、該口金チップを押圧していることを特徴とする請求項に記載のスタンピング装置。
【請求項3】
前記止めネジの先端部が、円錐形状乃至は円錐台形状とされていると共に、該止めネジの軸心が前記口金チップに形成された係合溝のV字の角部先端よりも前記収容凹所の奥部側に位置するように構成されていることにより、かかる止めネジの螺入によって、前記先端部の円錐形状乃至は円錐台形状の側面を、該係合溝のV字の前記収容凹所の奥部側に位置する側面に当接させて、該口金チップが、該収容凹所の奥部側に押圧されて、固定せしめられるようにしたことを特徴とする請求項に記載のスタンピング装置。
【請求項4】
前記収容凹所の一方の端部側に位置するように、当てピンが前記チップホルダに配設されている一方、該収容凹所の他方の端部側に位置するように、該収容凹所に収容されて、一列に配列される前記複数の口金チップを、該当てピンとの間に挟持して、固定する固定部材が、前記チップホルダに取り付けられていることを特徴とする請求項乃至請求項の何れか1項に記載のスタンピング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スタンピング装置に係り、特に、高硬度材質のワーク(被加工材)に対するスタンピング加工を効果的に施し得る装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、マシニングセンタ等で機械加工する際には、加工されるべきワーク(被加工材)は、所定のバイスにて固定されることとなるが、かかるワークに高い加工負荷が加わると、ワークがズレてしまうことがある。そこで、バイスにおけるワーク保持力を向上させるべく、実開昭62-174804号公報(特許文献1)や特開2017-164846号公報(特許文献2)等に示される如く、ワークをクランプするバイス口金に、複数の突起を設けて、バイスのクランプ力によって、それら突起を直接にワークに食い込ませるようにした構造が採用されているのであるが、ワークの硬度が高くなると、そのようなバイスのクランプ力にて、口金に設けた複数の突起を食い込ませることが出来なくなる場合があり、また、それら突起の先端が、ワークの硬さにより破損又は変形して、使用することが出来なくなる恐れも、内在している。
【0003】
このため、従来において、高硬度な材質からなるワークを加工するに際しては、ワークの下部にアリ溝加工を施す一方、かかるアリ溝形状に対応する凸部形状を有する口金を用いて、それをバイスに取り付けて、ワークをクランプすることにて、加工負荷に耐えられる、高い保持力を確保するようにした方式が、採用されることとなるのであるが、この場合にあっては、ワークに対してアリ溝加工を実施するためのコストとその加工時間が問題となることに加えて、アリ溝部が設けられたワーク部分は、加工後に切除されることとなるところから、材料ロスが大きくなる等の問題を内在するものであった。
【0004】
一方、米国特許第6530567号明細書(特許文献3)においては、ワークの対応する側面の下部に、小さな係合凹所を多数形成して、それらの係合凹所に、バイスの口金に設けた多数の突起をそれぞれ嵌合せしめて、ワークをしっかりとクランプし得るようにしたクランピング方法及びワークの固定システムが提案され、そこでは、ワークの対応する二つの側面の下部に配設される多数の係合凹所は、スタンピング加工にて形成され得るとされている。しかしながら、高硬度の材質からなるワークに対してスタンピング加工を実施して、多数の係合凹所を形成するに際して、スタンピング用口金を、例えば、そのようなワークの加工に耐え得る材質にて構成したりすると、それによって、スタンピング用口金が著しく高価となる問題に加えて、口金先端部となる成形用突起が、スタンピング加工によって破損乃至は変形した場合にあっては、口金全体を交換する必要が生じ、これによって、ランニングコストが高くなる問題も内在しているのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実開昭62-174804号公報
【文献】特開2017-164846号公報
【文献】米国特許第6530567号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、高硬度材からなるワークに対するワーク挟持用凹部のスタンピング加工に好適に用いられる装置であって、その耐久性を向上せしめつつ、ランニングコストを有利に抑制し得るようにしたスタンピング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そして、本発明は、上記した課題を解決するために、以下に列挙せる如き各種の態様において、好適に実施され得るものであるが、また、以下に記載の各態様は、任意の組み合わせにおいて、採用可能である。なお、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに何等限定されるものではなく、明細書全体の記載や図面から把握される発明思想に基づいて、認識され得るものであることが、理解されるべきである。
【0008】
そこで、本発明は、先ず、前記した課題を解決すべく、所定の加工が施されるワークの対応する二つの側面に対して、それぞれ、一列に配列された複数の成形凸部を有するスタンピング口金を押圧することによって、かかるワークの二つの側面に、それぞれ、一列に配列された複数のワーク挟持用凹部が形成されるようにしたスタンピング装置において、前記スタンピング口金を、超硬合金からなる複数の口金チップと、それら複数の口金チップを一列に収容して、保持するチップホルダとから構成すると共に、該複数の口金チップのそれぞれに、前記複数の成形凸部が分割、配分されて、形成されていることを特徴とするスタンピング装置を、その要旨とするものである。
【0009】
なお、このような本発明に従うスタンピング装置の望ましい態様の一つによれば、前記チップホルダの角部に、上辺部の長さが下辺部の長さよりも短くされたコ字型断面形状を呈する収容凹所が形成されていると共に、該収容凹所内に、前記複数の口金チップが一列に配列されて、収容されている。
【0010】
また、本発明に従うスタンピング装置の他の望ましい態様によれば、前記収容凹所を与える前記上辺部に、それを貫通するネジ孔が形成されており、該ネジ孔に止めネジが螺入されて、該収容凹所内に収容された前記口金チップを押圧することによって、該口金チップが固定せしめられるように構成されている。
【0011】
さらに、本発明にあっては、前記口金チップの上面に、V字型断面形状の係合溝が形成されており、この係合溝内に前記止めネジが突入せしめられて、該口金チップを押圧している構成が、有利に採用されることとなる。
【0012】
加えて、本発明に従うスタンピング装置の別の望ましい態様によれば、前記止めネジの先端部が、円錐形状乃至は円錐台形状とされていると共に、該止めネジの軸心が前記口金チップに形成された係合溝のV字の角部先端よりも前記収容凹所の奥部側に位置するように構成されていることにより、かかる止めネジの螺入によって、前記先端部の円錐形状乃至は円錐台形状の側面を、該係合溝のV字の前記収容凹所の奥部側に位置する側面に当接させて、該口金チップが、該収容凹所の奥部側に押圧されて、固定せしめられるようになっている。
【0013】
そして、本発明にあって、有利には、前記収容凹所の一方の端部側に位置するように、当てピンが前記チップホルダに配設されている一方、該収容凹所の他方の端部側に位置するように、該収容凹所に収容されて、一列に配列される前記複数の口金チップを、該当てピンとの間に挟持して、固定する固定部材が、前記チップホルダに取り付けられている構成を採用することとなる。
【発明の効果】
【0014】
このように、本発明に従うスタンピング装置にあっては、所定の加工が施されるワークに対して、ワーク挟持用凹部を形成するためのスタンピング口金に使用される材料を、鋼材から超硬合金に変更することとしたことにより、高硬度材、例えば、HRC35以上の硬度を有する材料からなるワークのスタンピング加工においても、目的とするワーク挟持用凹部が、有利に且つ耐久性よく形成され得ることとなるのである。
【0015】
しかも、本発明にあっては、ワーク挟持用凹部の成形加工に必要なスタンピング口金の箇所のみを、超硬合金チップにて構成することとして、口金とは別体で、製作されることとなることにより、消耗時の交換を、口金全体ではなく、最低限必要な箇所(チップ)のみで行ない得るようになり、以て、初期コストの低減を図りつつ、長年の使用により成形凸部の先端が変形したり、消耗したりした場合の交換に掛かる費用が、効果的に抑制され得ることとなったのである。
【0016】
従って、マシニングセンタ等の機外で、加工の施されるべきワークに対して、ワーク挟持用凹部を形成する一方、機内においては、その凹部形状に合わせた突起を有する口金を取り付けたバイスを用いて、ワークのクランプを行なうことにより、より高い保持力を実現することが可能となるのであり、そして、この高い保持力が得られることによって、高負荷加工が可能となり、また加工時間の短縮、更には加工コストの低減が可能となるのである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】スタンピング加工の施されてなるワークを示す説明図であって、(a)は、その斜視説明図であり、(b)は、(a)におけるA-A断面拡大部分説明図である。
図2】本発明に従うスタンピング装置の一例を示す正面説明図及びその一部拡大説明図である。
図3図2に示されるスタンピング装置の平面説明図及びその一部拡大説明図である。
図4図2に示されるスタンピング装置の断面やその側面を示す説明図であって、(a)は、図2におけるB-B断面拡大説明図(図3におけるB’-B’断面に相当)であり、(b)は、図2における右側面拡大説明図である。
図5図4(a)におけるC部拡大部分説明図である。
図6図3におけるD-D断面説明図及びその要部拡大説明図である。
図7図2に示されるスタンピング装置に用いられる口金チップの一つを拡大して示す説明図であって、(a)は、その斜視説明図であり、(b)は、その正面説明図であり、(c)は、その平面説明図であり、(d)は、その底面説明図であり、(e)は、その左側面説明図である。
図8図2に示されるスタンピング装置において用いられる、固定側のスタンピング口金である固定口金体を示す斜視説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の構成を更に具体的に明らかにするために、本発明に従うスタンピング装置の実施形態の一例について、図面を参照しつつ、詳細に説明することとする。
【0019】
先ず、図1には、所定の加工が施されるワークであって、その所定部位に、スタンピング加工が施されてなるものの一例が、示されている。この図1において、ワーク2の対応する二つの側面、即ち、一つの側面4とその反対側の側面6の下部には、それぞれ、一列に配列された複数(ここでは15個)のワーク挟持用凹部8が形成されている。そして、かかるワーク挟持用凹部8は、図1(b)に拡大して示されるように、台形形状の断面を与える形状において、形成されている。
【0020】
本発明に従うスタンピング装置は、かくの如きワーク2に対して、ワーク挟持用凹部8を形成するものであって、その一例が、図2図4に概略的に示されている。そこにおいて、スタンピング装置10は、所定の距離を隔てて互いに平行に延びる一対のガイドバー12,12と、それら一対のガイドバー12,12の一方の端部に固定された、一方のスタンピング口金である固定口金体14と、それら一対のガイドバー12,12の他方の端部側に配置されて、それら一対のガイドバー12,12に沿って摺動可能とされた、他方のスタンピング口金である可動口金体16と、この可動口金体16の背部に位置して、それを前進/後退移動せしめる油圧シリンダ18とを含んで、構成されている。
【0021】
具体的には、それぞれスタンピング口金となる固定口金体14と可動口金体16とは、同様な構成からなるものであって、それぞれの口金本体、即ち、固定側チップホルダ20及び可動側チップホルダ22が、図4(a)及び(b)に示される如く、それぞれの両側部に設けられた突起20a,20a;22a,22aが、ぞれぞれ、一対のガイドバー12,12の対向する内面に形成されたガイド溝12a,12aに嵌合されてなる形態において、組み付けられている。そして、固定側チップホルダ20は、図4(a)に示されるように、一対のガイドバー12,12を貫通する固定ボルト24,24の螺入によって、一対のガイドバー12,12に対して固定され、これによって、固定口金体14が位置固定に保持されている。
【0022】
また、可動側チップホルダ22は、前記固定側チップホルダ20の如く、一対のガイドバー12,12に対して固定されておらず、ガイドバー12の案内溝12aに沿って、ガイドバー12の長手方向に摺動せしめられ得るようになっている。この可動側チップホルダ22の背後に位置する油圧シリンダ18は、取付ネジ26,26にて一対のガイドバー12,12に固定せしめられており、かかる油圧シリンダ18への油圧の給排によって、ピストン部材28が前進/後退作動せしめられるようになっている。そして、ピストン部材28の先端部が、可動側チップホルダ22の背部に取り付けられており、この油圧シリンダ18の作動によって、可動側チップホルダ22、ひいては可動口金体16が、ガイドバー12の長手方向に沿って摺動せしめられることとなり、以て、図2に示される如く、加工されるべきワーク2が、固定口金体14と可動口金体16との間において挟圧され得るようになっている。
【0023】
そして、ワーク2の対応する二つの側面4,6に、ぞれぞれ、一列に配列された複数のワーク挟持用凹部8を形成する、固定口金体14及び可動口金体16のワーク2に当接せしめられる側の部位は、同様な構造とされており、ここでは、その一方の固定口金体14について、その詳細が、図2図3図5図6において拡大して示されている。また、図8には、一対のガイドバー12,12から取り外された固定口金体14が、斜視図の形態において、示されている。
【0024】
そこにおいて、固定口金体14は、それらの図から明らかな如く、口金本体となる固定側チップホルダ20と、このチップホルダ20の上部角部に一列に配設された、超硬合金からなる複数(ここでは5個)の口金チップ30とから、構成されている。そして、図2図6の拡大図及び図8から明らかな如く、固定側チップホルダ20の上部角部に、上辺部20bの長さが下辺部20cの長さよりも短くされたコ字型断面形状を呈する収容凹所31が、形成されていると共に、この収容凹所31内に、複数の口金チップ30が一列に配列されて、収容されているのである。
【0025】
また、口金チップ30は、ワーク2が、例えば、HRC35以上となる高硬度材であっても、そのスタンピング成形加工に耐え得るように、超硬合金にて形成されており、図7(a)~(e)に示される如き形状を呈するものである。そこにおいて、口金チップ30は、横長の矩形ブロック形状を有し、その前面となる一つの側面に、台形形状において突出する所定高さの成形凸部32の3個が、横方向に所定距離を隔てて、一体的に形成されていると共に、その上面には、V字型断面形状の係合溝34が、口金チップ30の横方向に形成されている。なお、この口金チップ30に配設される成形凸部32の数は、固定口金体14に必要とされる成形凸部32の総数を、固定側チップホルダ20の収容凹所31に一列に配列される口金チップ30の数にて除してなる数とされ、ここでは、3個の成形凸部32が、口金チップ30に設けられているのである。また、口金チップ30を構成する超硬合金としては、タングステン(W)やクロム(Cr)、モリブデン(Mo)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)等の金属の炭化物を、Fe族(Fe,Co,Ni)金属にて結合してなるサーメット構造の公知の材質のものが、用いられることとなる。
【0026】
そして、かかる口金チップ30の複数が、図2に拡大して示されるように、固定側チップホルダ20の上部角部に設けられた、上辺部20bの前端面よりも前方に、成形凸部32が突出するようにして、図8に示される如く、一列に配列されて収容されている。そして、それら配列された複数の口金チップ30の配列の先端が、収容凹所31の一方の端部側に位置するように、固定側チップホルダ20に立設された当てピン36の側面に当接せしめられる一方、かかる収容凹所31の他方の端部側に位置して、口金チップ30の配列の後端に当接するように、L字形状を呈する固定ブラケット38が、固定側チップホルダ20に対して、止めボルト40にて固定せしめられている。これにより、複数の口金チップ30が、当てピン36と固定ブラケット38にて挟持せしめられることとなり、以て、収容凹所31内において横方向への移動が阻止されるようにして、収容、保持せしめられている。
【0027】
しかも、固定側チップホルダ20の上辺部20bを上下に貫通して設けられた複数のネジ孔42内に、止めネジ44が螺入せしめられることによって、図5図6に示される如く、止めネジ44の先端が、口金チップ30の上面に形成されたV字型断面形状の係合溝34内に突入せしめられて、収容凹所31内に一列に収容保持された複数の口金チップ30の各々に対して当接させられることにより、口金チップ30の抜け出しが阻止され得るようになっている。特に、ここでは、図6に拡大して示される如く、止めネジ44の先端部が、円錐形状乃至は円錐台形状とされている共に、かかる止めネジ44の軸心が、口金チップ30に形成された係合溝34のV字の角部先端よりも収容凹所32の奥部(深部)側に位置するように構成されており、そのために、かかる止めネジ44の螺入によって、止めネジ44先端部の円錐形状乃至は円錐台形状の側面を、係合溝34のV字における収容凹所32の奥部側に位置する側面に当接させて、口金チップ30が収容凹所32の奥部側に押圧されて、効果的に固定せしめられるようになっているのである。
【0028】
従って、かくの如き構成のスタンピング装置10を用いて、加工されるべきワーク2に対してスタンピング加工を施す際には、図2に示される如く、ワーク2を、固定口金体14と可動口金体16との間に配置して、具体的には、それぞれの口金体の上部角部に設けた下辺部の上辺部よりも長さの長い部位上に、ワーク2を載置せしめてなる状態において、油圧シリンダ18を作動させて、ピストン部材28を突出せしめ、可動口金体16の可動側チップホルダ22を背後から押圧して、可動口金体16を固定口金体14側に移動せしめるようにする。これにより、ワーク2の対応する二つの側面の下部に、固定側チップホルダ20や可動側チップホルダ22に保持された複数の口金チップ30のそれぞれに設けられた成形凸部32が食い込まされることとなり、以て、図1に示されるように、複数のワーク挟持用凹部8が、ワーク2の二つの側面4,6の下部に一列に位置するように、効果的に形成されることとなるのである。
【0029】
このように、上述の如き構成のスタンピング装置10にあっては、複数の口金チップ30の何れもが、超硬合金にて形成されているところから、ワーク2が、HRC35以上の高硬度材であっても、所定のワーク挟持用凹部8を有利に形成せしめ得ると共に、加工の耐久性をより一層効果的に高め得たのである。
【0030】
しかも、スタンピング口金となる固定口金体14や可動口金体16の全体を、超硬合金にて形成するものではなく、ワーク挟持用凹部8の成形に必要な箇所のみを、別体(口金チップ30)とし、それを、超硬合金にて製作することとしたことによって、スタンピング口金に使用される材料の量を著しく低減せしめ得て、固定口金体14や可動口金体16の製作コスト、ひいてはスタンピング装置10の初期コストを効果的に抑制し得ることとなったことに加えて、ワーク挟持用凹部8を成形する成形凸部32が消耗したり、或いは破損又は変形したりしても、当該成形凸部32を有する口金チップ30のみの取り替えにて対応することが出来るところから、その補修コスト(ランニングコスト)が有利に低減せしめられ得ることとなるのである。
【0031】
そして、例示の実施形態の如く、固定側チップホルダ20や可動側チップホルダ22に設けたコ字型の収容凹所31内に一列に配列せしめてなる複数の口金チップ30を、当てピン36と固定ブラケット38とによって挟持し、また、止めネジ44によって、各口金チップ30を当接、固定せしめるようにしたりすることによって、口金チップ30は、強固に保持されることとなるのであり、これによって、高硬度なワークに対するスタンピング加工に際しても、口金チップ30の有効な保持を可能ならしめ得るのである。
【0032】
以上、本発明の代表的な実施形態の一つについて詳述してきたが、それは、あくまでも例示に過ぎないものであって、本発明は、そのような実施形態に係る具体的な記述によって、何等限定的に解釈されるものではないことが、理解されるべきである。
【0033】
例えば、上記した実施形態においては、5個の口金チップ30を一列に配列せしめてなる構造が採用されているが、そのような口金チップ30の使用数や口金チップ30の1個当たりの成形凸部32の形成数は、対象とされるワーク2に形成されるワーク挟持用凹部8の数によって、適宜に選択されるところであるが、一般に、口金チップ30の使用数としては10個程度以下、また口金チップ30の1個当たり、2~4個程度の成形凸部32が、形成されることとなる。
【0034】
また、例示の実施形態においては、固定口金体14及び可動口金体16における口金チップ30の配列数や、各口金チップ30における成形凸部32の数が、全て同一とされているが、それらを、異なる数としても何等差し支えなく、更には異なる大きさ、形状とすることも可能である。
【0035】
さらに、固定側チップホルダ20や可動側チップホルダ22に対する複数の口金チップ30の収容構造にあっても、加えて、それら口金チップ30の固定構造にあっても、公知の各種の構造が、適宜に採用され得るところである。
【0036】
なお、本発明に従うスタンピング装置10は、ワーク2として高硬度材料を用いた場合において、特に優れた特徴を発揮するものであるが、それ以外の材料を対象とする場合にあっても、同様な効果を奏するものであることは、勿論である。
【0037】
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施の態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、何れも、本発明の範疇に属するものであることは、言うまでもないところである。
【符号の説明】
【0038】
2 ワーク 8 ワーク挟持用凹部 10 スタンピング装置 12 ガイドバー 14 固定口金体 16 可動口金体 18 油圧シリンダ 20 固定側チップホルダ 22 可動側チップホルダ 28 ピストン部材 30 口金チップ 31 収容凹所 32 成形凸部 34 係合溝 36 当てピン 38 固定ブラケット 40 止めボルト 44 止めネジ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8