(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】衣服
(51)【国際特許分類】
A41D 31/02 20190101AFI20240408BHJP
A41D 31/18 20190101ALI20240408BHJP
A41D 31/00 20190101ALI20240408BHJP
A41D 31/04 20190101ALI20240408BHJP
【FI】
A41D31/02 A
A41D31/18
A41D31/00 502A
A41D31/00 502K
A41D31/04 Z
A41D31/00 502F
(21)【出願番号】P 2020530936
(86)(22)【出願日】2019-06-12
(86)【国際出願番号】 JP2019023314
(87)【国際公開番号】W WO2020017194
(87)【国際公開日】2020-01-23
【審査請求日】2022-03-02
(31)【優先権主張番号】P 2018135328
(32)【優先日】2018-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】399042487
【氏名又は名称】株式会社アン・ドゥー
(74)【代理人】
【識別番号】110003085
【氏名又は名称】弁理士法人森特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 二郎
【審査官】横山 綾子
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-243151(JP,A)
【文献】特開2016-023372(JP,A)
【文献】米国特許第05204156(US,A)
【文献】中国特許出願公開第103300515(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108116012(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 31/00-31/32
B32B 5/00-5/02
B32B 27/00-27/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮性を有する表地と、裏地と、表地と裏地との間に配される防風シートとを有する衣服であって、
防風シートは、厚さが13μm以下であり、非多孔質の弾性膜であり、
裏地は、伸縮性を有する基布と、基布に配された起毛とを有しており、起毛の毛足の長さは4.0mm以下であり、
裏地は、ベース糸と、複数の繊維から構成される起毛用糸との複合糸を含み、起毛用糸は起毛された状態であり、ベース糸の繊度は58デニール以下であり、
裏地は、ベース糸と、複数の繊維から構成される起毛用糸との複合糸を含み、起毛用糸を構成する繊維の数は150本以上であり、起毛用糸は起毛された状態であり、裏地の質量に対して起毛
用糸の質量が占める割合は、50質量%以上である衣服。
【請求項2】
起毛の厚みで基布の厚みを除して求めた割合は、15%以下である請求項1に記載の衣服。
【請求項3】
表地と防風シート、又は裏地と防風シートとは、湿気で硬化するウレタン樹脂を含有するホットメルト接着剤で接着されている請求項1又は2に記載の衣服。
【請求項4】
ベース糸はポリウレタンからなる合成繊維であり、起毛用糸はポリエステル製のマルチフィラメントである請求項1又は2に記載の衣服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸縮性を有する表地と、裏地と、表地と裏地との間に配される防風シートとを有する衣服に関する。
【背景技術】
【0002】
防寒性能を向上させる目的で防風シートを生地の裏面に貼着した衣服が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、軟質ポリウレタンフィルムをポリウレタン系接着剤でデニム基布の裏面に貼着し、前記フィルムの裏に水溶性接着剤により裏地を仮止めして、縫い合わせたジーンズ用積層布地が記載されている。
【0004】
また、例えば、特許文献2には、水膨潤性ウレタン樹脂を含有するフィルムを湿気硬化型ホットメルト樹脂で布帛と接着して構成した保温透湿防水布が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平5-31854号公報
【文献】特開2002-370335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、生地の内側に起毛を設けて、防寒性を向上させることが記載されている。フィルムが露出していると容易にフィルムが破損するため、特許文献2の保温透湿防水布もまた、何らかの裏地を貼着して使用に供されると思われる。特許文献1のジーンズ用積層布地では、軟質ポリウレタンフィルムをデニム基布に貼着することによって、防風性能が付与されるとされている。特許文献2の保温透湿防水布では、水膨潤性透湿ポリウレタンフィルムを基布に貼着することによって、透湿性、防水性及び保温性が付与されるとされている。
【0007】
上記のように布の裏面にフィルムを貼着した布では、フィルムの影響によって生地の厚みが大きくなる。生地の裏面に起毛層を設けた場合は、生地の厚みがさらに大きくなる。そして、そのような生地で縫製した衣服では、着心地が損なわれることがあった。
【0008】
本発明は、防風シートと起毛生地と表地とを有する衣服でありながらも、生地の厚さが大きくなることを防いで、軟らかく伸縮しやすい生地を有する衣服を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
伸縮性を有する表地と、裏地と、表地と裏地との間に配される防風シートとを有する衣服であって、防風シートは、厚さが13μm以下であり、防風性能を有する弾性膜であり、裏地は、伸縮性を有する基布と、基布に配された起毛とを有しており、起毛の毛足の長さは4.0mm以下である衣服により、上記の課題を解決する。
【0010】
上記の衣服において、裏地は、ベース糸と、複数の繊維から構成される起毛用糸との複合糸を含み、起毛用糸は起毛された状態であり、ベース糸の繊度は58デニール以下であることが好ましい。上記の衣服において、裏地は、ベース糸と、複数の繊維から構成される起毛用糸との複合糸を含み、起毛用糸を構成する繊維の数は150本以上であり、起毛用糸は起毛された状態であることが好ましい。裏地の質量に対して起毛の質量が占める割合は、50質量%以上であることが好ましい。起毛の厚みで基布の厚みを除して求めた割合は、15%以下であることが好ましい。表地と防風シート、又は裏地と防風シートとは、湿気で硬化するウレタン樹脂を含有するホットメルト接着剤で接着されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、防風シートと起毛生地と表地とを有する衣服でありながらも、生地の厚さが大きくなることを防いで、軟らかく伸縮しやすい生地を有する衣服を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】衣服を縫製するために使用する生地の一例を示す分解斜視図である。
【
図3】ベース糸に対して起毛用糸を巻回した糸の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、発明を実施するための一実施形態について説明する。
【0014】
図1に、本実施形態の衣服を縫製するために使用する生地の構成を模式的に示す。
図1に示したように、この生地11は、伸縮性を有する表地14と、着用者の体に接する側に配される裏地12と、表地14と裏地12との間に配される防風シート13とを有する。
【0015】
防風シート13は、生地11で衣服を構成した際に吹き付けた風が生地11を透過することを妨げることが可能であり、弾性を有する膜を使用すればよく、厚さが13μm以下のものを使用すればよい。防風シートの厚みの下限値は、0μmよりも大きければよく、例えば、1.0μm以上のものが成形しやすい。防風シートは、9.0μm以下であることがより好ましい。
【0016】
防風シート13は、例えば、熱可塑性エラストマーから構成されるものを使用すれば、シート状に成形することが容易であり、弾性も有しているので好ましい。熱可塑性エラストマーとしては、ソフトセグメントとハードセグメントを有しており、プラスチックの成形特性とゴムの弾性とを兼ね備えるポリウレタン系の合成樹脂が挙げられる。
【0017】
防風シート13は、衣服を着用した際の蒸れを防止する観点から、水蒸気の透過性を有するものを使用することが好ましい。微小な貫通孔を有する多孔質の膜であれば、水蒸気の透過性を付与することができるが、防風性能が損なわれる。水蒸気の透過性を付与するには、防風シート13を非多孔質の親水性の素材で構成することが好ましい。親水性の素材で防風シート13を構成すれば、防風シート13が含湿し、防風シート13に含侵された液分を蒸発させることで、透湿性を得ることができる。
【0018】
表地14は、伸縮性を有するものであればよい。表地としては、例えば、編地、又はスパンデックス糸などの伸縮性を有する糸により伸縮性を持たせた織編布などの布地などが挙げられる。
【0019】
裏地12は、例えば、
図2に示したように、伸縮性を有する基布24と、基布24に配された起毛22を有し、毛足の長さが4.0mm以下のものを使用する。基布は、例えば、編地で構成したり、スパンデックス糸などの伸縮性を有する糸で編地又は織物を構成したりすることにより、基布に伸縮性を付与することができる。起毛の基端部は基布に接続され、起毛の一端部は自由端とする。
【0020】
裏地12は、ベース糸と複数の繊維から構成される起毛用糸との複合糸で構成することが好ましい。例えば、基布を構成するベース糸をスパンデックス糸などの伸縮性を有する糸とすることで裏地12に伸縮性を付与することができるし、ベース糸で編地など伸縮性を有する生地を構成することにより、基布に伸縮性を付与することができる。また、ベース糸を伸縮性を有する糸とし、このベース糸で編地などの伸縮性を有する生地を構成することにより、基布にさらなる伸縮性を付与することが可能になる。
【0021】
裏地12をベース糸と起毛用糸との複合糸で構成することで、例えば、伸縮性又は引張強度に優れる糸をベース糸に使用し、耐摩耗性に優れる糸を起毛用糸に使用するといった使い分けが可能になる。例えば、
図3に示したように、ベース糸21に対して起毛用糸22を巻回した糸23で基布24を織編成することで、ベース糸21と起毛用糸22とを含む裏地を得ることができる。
【0022】
ベース糸21を使用する場合において、ベース糸21は、起毛の土台となる基布を構成する。ベース糸21は、58デニール以下のものを使用することが好ましい。このような細めのベース糸を使用することによって、基布の厚みと、裏地の重量に占めるベース糸の重量とを小さくすることができる。ベース糸21の繊度の下限値は、特に限定されないが、10デニール以上とすることが好ましい。ベース糸は、40デニール以下とすることがより好ましく、32デニール以下とすることがより好ましい。
【0023】
起毛用糸22を使用する場合においては、起毛用糸22は、
図2に示したように、ベース糸21を土台として、起毛された状態とされる。起毛するには、例えば、裏地の表面に摩擦を加えて、ベース糸21に巻回された起毛用糸22を起毛させる。起毛22の毛足の長さは、起毛された状態で4.0mm以下とする。これにより、裏地の厚みを薄くすることができる。毛足の長さは、起毛の基端から先端までの長さをいう。毛足の長さは、2.5mm以下であることがより好ましく、1.8mm以下であることがより好ましい。毛足の長さの下限値は、例えば、0.5mm以上とすることが好ましい。毛足の長さは、例えば、起毛用糸を構成する繊維を起毛させた後に起毛を刈り込むことによって調節することができる。
【0024】
起毛の毛足を短くすると、裏地の厚みを小さくすることができる。しかしながら、毛足が短いと生地の肌触り、質感、保温性が悪化することがある。そこで、起毛用糸を構成する繊維の数を150本以上にすることが好ましい。このようにすることで、起毛用糸を構成する繊維の太さを細くし、起毛を触った際にさらさらとした滑らかな肌触りを裏地に付与することが可能になる。また、これに加えて、起毛の密度を高めて、起毛に光沢を与えて、高級な質感を裏地に付与することができる。起毛用糸を構成する繊維の数は、180~300本であることがより好ましい。
【0025】
上述の通り、ベース糸21を使用する場合は、ベース糸21の繊度は58デニール以下とし、ベース糸の太さを細くすることが好ましい。裏地の厚みが一定の場合においては、ベース糸21の太さを細くすることによって基布24の厚みが小さくなるので、その分だけ起毛22の量を増やすことができる。例えば、裏地の質量に対して起毛の質量が占める割合を50質量%以上とすることができる。これによって、裏地の厚みを増加させずに、起毛の量を多くして、生地の保温性、肌触り、質感を向上させることが可能になる。上記割合は、60質量%以上とすることがより好ましく、88質量%以上とすることがさらに好ましい。上限については99質量%以下とすることが好ましい。
【0026】
上述の通り、裏地にベース糸21を使用する場合はベース糸の繊度は58デニール以下であり、ベース糸の太さは細くすることが好ましい。この場合は、ベース糸21の太さが細いため、例えば、起毛の厚みの値で、ベース糸21から構成される基布の厚みの値を除して、これに100を乗じて求めた割合を、15%以下にすることができる。これによって、裏地の厚みをできるだけ小さくしながらも、毛足の長さをできるだけ大きくして、生地の保温性、肌触り、質感を向上させることが可能になる。
【0027】
ベース糸21から構成される基布24は、経編布から構成することが好ましい。経編布とすることで、裏地に伸縮性を付与することができる。これにより、表地と裏地とを重ねて構成した起毛生地にもかかわらず、衣服を着用した際に身体が動きやすくすることができる。また、経編布は横編布よりも緻密な組織となる。このため、起毛生地を経編布から構成し、起毛用糸を起毛させることで、起毛の密度を上昇させることができる。これによって、起毛の毛足を短くしたにもかかわらず、裏地の肌触りを滑らかにすることができる。
【0028】
横編布は、損傷すると、糸が際限なくほどけてしまい、最終的には布地の破損に至る。経編布の場合は、万が一、起毛生地の裏地が損傷しても、際限なく糸がほどけることを防ぐことが可能である。これにより、起毛生地の耐久性を向上させることができる。
【0029】
ベース糸は、例えば、ポリエステル、ナイロン、アクリル、及びポリウレタンからなる群より選ばれる少なくとも1種の合成繊維、又は綿、ウール、及びシルクからなる群より選ばれる天然繊維から構成することができる。
【0030】
起毛用糸は、例えば、ポリエステル、ナイロン、及びアクリルからなる群より選ばれる少なくとも1種の合成繊維;又は綿、ウール、及びシルクからなる群より選ばれる天然繊維から構成することができる。中でも、起毛したときに毛玉ができにくく繊維が切れにくいポリエステルを使用することが好ましい。起毛用糸の繊度は、40~98デニールであることが好ましく、50~80デニールであることがより好ましく、60~75デニールであることが特に好ましい。
【0031】
上述の表地14と、防風シート13と、裏地12とから構成される生地11は、公知の方法によって縫製することで上衣、下衣、又はワンピースやつなぎ服などの上衣と下衣とが一体に構成された衣服などを構成することができる。本実施形態の起毛生地は、表地と裏地とを重ねた積層生地でありながらも厚みが小さいため、縫製の際にごわつかず縫製しやすい。
【0032】
衣服を構成する生地は、JIS L 1096B法に準拠して求めた伸長率が40%以上であることが好ましい。伸長率の上限については、特に限定されないが、100%以下であることが好ましい。
【実施例】
【0033】
以下、実施例を挙げてより具体的に説明する。
【0034】
[実施例1]
30デニールのポリウレタン製のモノフィラメント(スパンデックス糸)で構成されたベース糸に75デニールのポリエステル製のマルチフィラメント糸(フィラメント数288本)を起毛用糸として巻回した。このようにして得た複合糸で編機を使用して経編地を編成した。
【0035】
上記の経編地の表面に摩擦を加える起毛処理を施して、毛足の長さが1.5mmとなるように起毛をカットして起毛された裏地を得た。なお、ベース糸に起毛処理を加える際には、経編地が破断しないように摩擦力を調節して行った。
【0036】
インジゴで染色された綿糸を経糸として使用し、伸縮性を有するポリウレタン繊維と綿繊維を含む弾性糸を緯糸として使用して、綾織組織からなるデニム地を得た。このデニム地を表地として、デニム地の裏面に対して、厚み8.0μmであり、親水性であり、非多孔質のポリウレタンフィルム(嘉興南雄高分子有限公司、品番DTTM008)を防風シートとして貼り付けた。そして、ポリウレタンフィルムの裏面に、上記で得た裏地を貼り付けた。ポリウレタンフィルムとデニム地と接着する際には、ポリウレタン接着剤(浙江多邦化工有限公司製、品番DB-2757)を使用した。ポリウレタンフィルム(嘉興南雄高分子有限公司、品番DTTM008)と裏地とを接着する際にも同様にポリウレタン接着剤(浙江多邦化工有限公司製、品番DB-2757)を使用した。
【0037】
上記の製造方法で得た三層構造のデニム地を使用してデニムパンツを縫製した。これを使用して表1に記載した各項目について評価を行った。柔軟性及びストレッチ性の評価は、官能評価によって行い、伸長率と伸長回復率については、JIS L 1096B法に準拠して、横方向の伸長率と伸長回復率とを測定した。結果を表1に示す。
【0038】
[実施例2]
実施例1で使用したポリウレタン接着剤(浙江多邦化工有限公司製、品番DB-2757)に替えて湿気硬化型ポリウレタンホットメルト接着剤(上海安寧化工新材料有限公司、品番AM9600)を使用して、デニム地及びポリウレタンフィルム並びにポリウレタンフィルム及び裏地を貼着した点以外は、実施例1と同様にして、デニムパンツを作製した。作成したデニムパンツについて、上記と同様にして、表1に記載した各物性と、裏地の肌触り、質感、及び保温性について評価を行った。結果を表1に示す。
【0039】
[比較例1]
防風シートの厚みを40μmの広東中山博鋭斯新材料股▲フン▼(株式)有限公司から市販されているポリウレタンフィルムに変更した点以外は、実施例2と同様にして、デニムパンツを作製した。作成したデニムパンツについて、上記と同様にして、表1に記載した各物性等について評価を行った。結果を表1に示す。
【0040】
[比較例2]
防風シートの厚みを40μmの広東中山博鋭斯新材料股▲フン▼(株式)有限公司のポリウレタンフィルムに変更した点以外は、実施例1と同様にして、デニムパンツを作製した。作成したデニムパンツについて、上記と同様にして、表1に記載した各物性等について評価を行った。結果を表1に示す。
【0041】
[比較例3]
防風シートの厚みを40μmの広東中山博鋭斯新材料股▲フン▼(株式)有限公司から市販されているポリウレタンフィルムに変更し;ベース糸の繊度が60デニールであり、毛足の長さが6.0mmであり、起毛用糸として75デニールのポリエステル製のマルチフィラメント糸(フィラメント数100本)を使用した裏地を使用した点以外は、実施例1と同様にして、デニムパンツを作製した。これについて、上記と同様にして、表1に記載した各物性等について評価を行った。結果を表1に示す。
【0042】
【0043】
表1における柔軟性とは、デニムパンツを構成する生地を手で揉んだ際の軟らかさを示すものであり、二重丸、丸、三角、バツのうち、先に記載したものほど軟らかい触り心地で加えた力に追従して生地が曲がりやすかったものであり、後に記載したものほど硬い触り心地で曲がりにくいものであったことを示す。
【0044】
表1におけるストレッチ性とは、デニムパンツを構成する生地を、生地の横方向、つまりデニムパンツの幅方向に対して引っ張った際に伸びる量と伸ばす際の抵抗力を示すものである。二重丸、丸、バツのうち、先に記載したものほど伸び量が大きくそして伸ばす際の抵抗値が小さく、後に記載したものほど伸び量が小さくそして伸ばす際の抵抗値が大きかったことを示す。
【0045】
表1に示したように、実施例2のデニムパンツが柔軟性、ストレッチ性、及び伸長率において、最も優れていた。実施例1及び2のデニムパンツにおいては、防風シートを備えるにもかかわらず、伸長率が40%以上であった。次いで実施例1のデニムパンツが柔軟性、ストレッチ性、及び伸長率において優れていた。実施例1及び実施例2のデニムパンツは、外観においては、通常のデニムパンツと遜色がなく、厚ぼったい感じのないすっきりとした印象であった。実施例1及び実施例2のデニムパンツは、裏地における起毛された繊維の密度が高く、微細な繊維による光の反射に起因する独特の光沢による質感があり、裏地の肌触りはなめらかなパウダータッチであった。さらに、実施例1及び実施例2のデニムパンツは、保温性においても優れていた。
【0046】
比較例1及び比較例2のデニムパンツは、柔軟性、ストレッチ性、及び伸長率において、実施例1及び実施例2のものよりも劣るものであった。比較例3のデニムパンツは、比較例2のものよりもストレッチ性、及び柔軟性においてさらに劣るものであったため、伸長率は測定しなかった。比較例3のデニムパンツは、ベース糸が比較的に太く、毛足も比較的に長いため、デニムパンツの外観が、通常のデニムパンツに比べて、膨らんだような厚ぼったい印象であった。また、比較例3のデニムパンツは、裏地における起毛された繊維の密度が低く、裏地の表面の触り心地が荒く、実施例1のような光沢がある質感ではなく、保温性においても実施例1及び実施例2のデニムパンツよりも劣るものであった。
【0047】
実施例1及び実施例2のデニムパンツでは、裏地の質量に対する起毛用糸の質量が占める割合は、90質量%であった。なお、裏地の質量に対する起毛用糸の質量が占める割合は、次式で求めた。
Y=[A÷(A+B)]×100
ただし、Yは、裏地の質量に対する起毛用糸の質量が占める割合(質量%)であり、
Aは、起毛用糸の質量(g)であり、
Bは、ベース糸の質量(g)である。
【0048】
実施例1及び実施例2のデニムパンツでは、起毛された起毛用糸の厚みの値(起毛された糸の層の厚み)で、ベース糸から構成される基布の厚みの値を除して、100を乗じて求めた割合は、5%であった。
【0049】
実施例1及び実施例2のデニムパンツでは、起毛された起毛用糸が裏地のほとんどを占めており、基布を構成するベース糸が少なく、裏地の保温性、裏地の肌触り、裏地の質感の全ての項目において優れるものであった。
【符号の説明】
【0050】
11 生地
12 裏地
13 防風シート
14 表地