IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 有限会社グローバルアーツの特許一覧

<>
  • 特許-糊付け器 図1
  • 特許-糊付け器 図2
  • 特許-糊付け器 図3
  • 特許-糊付け器 図4
  • 特許-糊付け器 図5
  • 特許-糊付け器 図6
  • 特許-糊付け器 図7
  • 特許-糊付け器 図8
  • 特許-糊付け器 図9
  • 特許-糊付け器 図10
  • 特許-糊付け器 図11
  • 特許-糊付け器 図12
  • 特許-糊付け器 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】糊付け器
(51)【国際特許分類】
   E04F 21/18 20060101AFI20240408BHJP
【FI】
E04F21/18 G
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021002242
(22)【出願日】2021-01-08
(65)【公開番号】P2022107352
(43)【公開日】2022-07-21
【審査請求日】2023-02-06
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 有限会社グローバルアーツは、2020年12月13日、動画投稿サイト(https://youtu.be/4vFnx0CYfbg)において、本願発明を公開した。
(73)【特許権者】
【識別番号】504119262
【氏名又は名称】有限会社グローバルアーツ
(74)【代理人】
【識別番号】100165755
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 典彦
(72)【発明者】
【氏名】中島 真良
(72)【発明者】
【氏名】吉見 弘美
【審査官】菅原 奈津子
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3179045(JP,U)
【文献】特開2009-215811(JP,A)
【文献】特開2000-070803(JP,A)
【文献】特開2007-268399(JP,A)
【文献】実開昭59-010432(JP,U)
【文献】中国実用新案第211707297(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 21/10
E04F 21/18
B05C 1/00- 3/20
B05C 7/00-21/00
B05D 1/00- 7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造体の塗布面に糊材を塗布して被覆材を貼り付けるため、中央の塊拡散部分の両側に平面付着部分を有するように糊材を塗布することが可能な糊付け器であって、
前記糊材を貯留する箱状の本体と、複数の円盤と、前記複数の円盤を同心で回転可能に支持して前記本体に取り付ける支持軸と、前記支持軸を保持する軸保持部とからなり、
前記円盤は、外周縁の一部を切り欠いた切欠き部を複数形成して、前記切欠き部と突出部分とを連続して形成し、
前記突出部分と前記切欠き部の外周面は、前記円盤の厚みとなる幅方向の中央に前記糊材を保持する円盤溝と、前記円盤溝の両側に配する当接面と、を有し、
各々の前記当接面の幅長さは、前記円盤溝の幅長さよりも長く形成され、
前記円盤溝の深さは、前記切欠き部の切欠き深さよりも深いことを特徴とする糊付け器。
【請求項2】
本体は、少なくとも上面の一部を開放した上面開放部と、少なくとも前面の一部を開放した前面開放部と、を有し、
軸保持部は、回転する円盤の突出部分により本体の上面側から塗布可能な位置に配する第1軸保持部と、回転する円盤の突出部分により本体の前面側から塗布可能な位置に配する第2軸保持部と、を有することを特徴とする請求項に記載の糊付け器。
【請求項3】
本体の側面部の上面に、上下方向を軸方向に回転するガイドローラを着脱自在に配し、
前記ガイドローラの配置位置と、前記本体の上面側から突出した円盤の突出部分とが同一高さを有することを特徴とする請求項に記載の糊付け器。
【請求項4】
本体の底面部から前方に突出するガイド片を着脱自在に配したことを特徴とする請求項またはに記載の糊付け器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造体の天井や壁面等の塗布面に糊材を塗布して岩綿吸音板、石膏ボード材、壁紙、パネル材等の被覆材を張り付けるための糊付け器に係る発明である。
【背景技術】
【0002】
建物の内装は、岩綿吸音板、石膏ボード材、壁紙、パネル材、内装建材やシート材、天井部材等の被覆材を、糊材を介して天井や壁に貼り付けて、良好な内装面を形成していた。この貼り付けは、各々の被覆材に糊材を塗布し、被覆材を持ち上げて貼り付けて設置するといった糊材塗布行為と被覆材設置行為とを何度も繰り返して行わなければならなかった。そのため、実際は、予め構造体の被塗布面に糊材を塗布してから、張り付けることが行われていた。
【0003】
この糊材の塗布は、特に関西地方において、「団子張り」と呼ばれる手法が用いられていた。「団子張り」とは、糊材を所定間隔ごとに一定の塊となる団子状(大福餅形状)に盛り付けて行う手法であり、被覆材の貼り付け時に団子状の糊材が広がって接着面を確保しつつ、糊材のみの接着も確保する手法であった。糊材は天井や壁体に貼り付けることから、被覆材の貼り付けまでに所定の時間を要し、その間に糊材が垂れ落ちることを防止していた。
【0004】
一方、壁材や天井に糊材を塗布する先行技術として特許文献1に係る考案が存在する。特許文献1に係る考案は、糊を貯留した箱型の容器と、この容器に回転自在に支持した複数の糊塗布用円板とからなり、円板が回転することにより糊を天井に付着させる天井用糊塗布器を開示している。円板は外周縁に円周方向にそれぞれ複数の突部と凹部とを交互に形成し、各突部に糊貯留用溝を形成して、突部により破線状に糊を塗布して、糊の消費量を抑えていた。さらに糊掻取り部材により円板外周面の糊を掻き取ることで、過剰な糊を容器に戻していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】登録実用新案第3179045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の天井用糊塗布器に係る円板は、外周縁の突部に形成される糊貯留用溝により破線状に糊を塗布するものである。この糊塗布器は、糊を器内に貯めて塗布することは可能であるが、塗布した糊が破線状に形成されることから、付着した糊が剥がれやすいという致命的な欠点があった。塗布位置は天井や壁面に塗布するものであるため、剥がれた糊が垂れ落ちると特に天井では致命的な欠陥となる。また、塗布された糊が破線状に形成されるため、被覆材を貼り付けた際に、糊が広がらず、しっかり貼り付けることができない欠点もあった。
【0007】
そこで、本発明は、団子張りの手法を鑑み、糊材を安定して接着面に塗布し、付着させ、被覆材を安定して貼り付けることができる糊付け器を提供することを目的とし、併せて天井や壁面に整然と付着させる糊付け器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の糊付け器は、構造体の塗布面に糊材を塗布して被覆材を貼り付けるため、中央の塊拡散部分の両側に平面付着部分を有するように糊材を塗布することが可能な糊付け器であって、
前記糊材を貯留する箱状の本体と、複数の円盤と、前記複数の円盤を同心で回転可能に支持して前記本体に取り付ける支持軸と、前記支持軸を保持する軸保持部とからなり、
前記円盤は、外周縁の一部を切り欠いた切欠き部を複数形成して、前記切欠き部と突出部分とを連続して形成し、
前記突出部分と前記切欠き部の外周面は、前記円盤の厚みとなる幅方向の中央に前記糊材を保持する円盤溝と、前記円盤溝の両側に配する当接面と、有し、
各々の前記当接面の幅長さは、前記円盤溝の幅長さよりも長く形成されることを特徴とする糊付け器。
【0011】
また、本体は、少なくとも上面の一部を開放した上面開放部と、少なくとも前面の一部を開放した前面開放部と、を有し、軸保持部は、回転する円盤の突出部分により本体の上面側から塗布可能な位置に配する第1軸保持部と、回転する円盤の突出部分により本体の前面側から塗布可能な位置に配する第2軸保持部と、を有することが好ましい。
【0012】
また、本体の側面部の上面に、上下方向を軸方向に回転するガイドローラを着脱自在に配し、前記ガイドローラの配置位置と、前記本体の上面側から突出した円盤の突出部分とが同一高さを有することが好ましい。
【0013】
また、本体の底面部から前方に突出するガイド片を着脱自在に配したことが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明により、円盤の回転により当接面と円盤溝とに付着していた糊材を塗布面に塗布することができる。この塗布において、当接面に付着していた糊材は塗布面に塗布されつつ当接面で押圧された状態で平面付着部分として強固に貼り付き、平面付着部分で塗布、付着した糊材により引っ張られるように円盤溝に保持された糊材が塊状に塗布されて塊拡散部分となる。このように請求項1に記載の発明により、両側の平面付着部分と中央の塊拡散部分とを有する断面凸状の塗布が可能になる。この塗布状態により、貼り付けた糊材が剥がれ落ちることなく、安定した糊材の塗布が可能になるとともに、中央の塊拡散部分により団子張りのように被覆材の貼付に際して糊材が拡散して安定した貼付けも可能になる。さらに、円盤が切欠き部と突出部分とが存在するため、団子張りのような順々に配して糊材を塗布し、糊材を節約して使用することができる。
【0015】
また、当接面による平面付着部分の付着を安定させるために、当接面の幅長さを円盤溝の幅長さより長くし、平面付着部分でしっかりと糊材を塗布面に押さえつけて付着させることが可能になる。平面付着部分がしっかりと付着することで円盤溝の糊材を十分に引っ張り出して、塊拡散部分を十分に形成することを可能にしている。
【0016】
さらに、円盤溝の溝深さを切欠き部の底位置よりも深くして十分な溝深さを有することで、平面付着部分により引っ張り出される塊拡散部分となる糊材を十分に配することが可能になる。また、切欠き部に形成される円盤溝にも毛細管現象により糊材を保持することが可能なスペースをもち、安定的に塊拡散部分に配する糊材を保持することが可能になる。
【0017】
請求項に記載の発明により、本体の上側と前側の位置から糊材を塗布可能にしつつ、前側から塗布する場合に、上側を塗布する位置と異なる位置に支持軸を配するための軸保持部を有することで、上側で塗布する場合に前側から糊材が滴り落ちることがないようにして、安定的な塗布を可能にしている。
【0018】
請求項に記載の発明により、先に張り付けた被覆材の側辺や壁にガイドローラを当てることにより、この被覆材や壁面に沿うように本体を移動することができ、この被覆材の側辺や壁に平行して真直ぐに糊を塗布することができる。
【0019】
請求項に記載の発明により、糊材を前面側から塗布する場合に箱外に滴り落ちることを防ぐため、突出部分を前面部よりも内側にしたとしても、ガイド片により本体を所定の傾き角度に規制することで安定的な塗布を可能にしている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の糊付け器の一例を示す全体斜視図である。
図2】本発明の複数の円盤が支持軸に軸支された状態を示す斜視図である。
図3】本発明の円盤を示すものであって、(a)が本体の側面部側からの側面図、(b)が本体の前面部側からの正面図である。
図4図1のA-A線断面図であり、上面開放部側で塗布面に塗布している状態を示すものである。
図5図4において円盤による塗布状態を示す拡大図であり、(a)が正面側から当接面と塗布面との当接状態を示す塗布拡大正面図、(b)が塗布後の平面付着部分と塊拡散部分を示すものである。
図6図1のA-A線断面図で円盤と支持軸を取り除いた状態を示す断面図であって、円盤の突出部分が回転する軌道を、軸保持部により異なる状態を示すものである。
図7】ガイド片を示すものであって、(a)がガイド片の斜視図、(b)がガイド収容部を示す斜視図である。
図8図1のA-A線断面図であって、さらにガイド片を前側に取り付け、本体を傾斜させて前面開放部側から塗布する状態を示すものである。
図9】ガイドローラの斜視図である。
図10】ガイドローラを取り付けた状態の全体斜視図であって、支持軸に支持された複数の円盤を取り除いた状態を示す。
図11】ガイドローラの取り付け状態を示す図10の一部拡大斜視図である。
図12図4の状態からさらにガイドローラによりガイドしながら上面側で塗布する状態を示すものである。
図13】本体にカバーを取り付けた状態の全体斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る糊付け器の実施形態を添付の図面に基づいて説明する。本発明は、以下の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲で種々の変形、付加等が可能である。本実施形態において、図1の左手前を前、右奥を後とし、開放されている側を上とする上下方向、両取っ手2、2を有する方向を左右、側方、幅方向として説明するが、これらは実施形態を説明する便宜上用いたものに過ぎず、本発明の使用姿勢などを限定するものではない。
【0022】
本実施形態の糊付け器1は、主に建築物の構造体の内面(部屋)の天井や壁面を糊材Nの塗布面Dとし、この塗布面Dに、糊材Nを塗布、付着させて、岩綿吸音板、石膏ボード材、壁紙、パネル材、内装建材やシート材、天井部材等といった被覆材を貼り付けるために用いるものである。なお、以下の説明において塗布面Dは図4図8を参照されたい。
【0023】
糊付け器1は、図1に示すように、内部に糊材Nを貯留可能にした箱状の本体10と、回転により糊材Nを塗布面Dに塗布、付着させる複数の円盤20、20と、複数の円盤20、20を支持し、本体10に回転自在に取り付ける支持軸30と、支持軸30を本体10に着脱自在に保持する軸保持部31と、を基本的な構成要素とする。
【0024】
糊付け器1は、使用者が取っ手2を把持して塗布面Dに円盤20、20を接触させ、円盤20、20を接触させつつ使用者が移動して糊付け器1を上下若しくは前後に移動させることで円盤20、20を回転させる。このときに、回転した円盤20、20に本体10に貯留された糊材Nを付着させ、接触する塗布面Dに塗布、付着させて使用する。
【0025】
図1に示すように、本体10は、矩形の箱形状に形成し、箱内部に糊材Nを貯留可能としている。本体10は、長方形状の底面部11と、底面部11の後方から立ち上がる後面部12と、底面部11の前方から立ち上がる前面部13と、前側上方を切り欠いた左右の側面部14、14と、を有する箱形状物である。本体10を構成する底面部11、後面部12、前面部13、側面部14、14は、糊材Nの残量を視認可能とするため透明なものであり、本実施形態では無色透明の樹脂製の板材により形成している。図1に貯留する糊材Nを図示していないが、貯留する糊材Nは、前面部13の上端よりも低い位置にまで貯留が可能である。
【0026】
本体10の上面は開放された上面開放部15を有しているが、上面の後面部12側には上面遮蔽部40が配されている。上面遮蔽部40は、側面部14、14の上側の後面部12側に遮蔽保持部50、50が配置され、本体10の内方に向かって一段下がった第1段差51(図11参照)に取り付けられている。上面遮蔽部40は、有色の樹脂製素材により形成され、後面部12の上縁付近から前側にかけて前後長さの約3分の1程度の前後長さを有し、幅方向(両側面部14、14間の方向)を遮蔽している。上面遮蔽部40の前側は完全に開放された上面開放部15となる。上面開放部15は、前後長さの中央よりもやや後方から前面部13に至るまで、具体的には前後寸法の約3分の2を開放している。上面遮蔽部40には上面開放部15側の縁から所定長さの上面切除部41、41が複数形成され、回転する円盤20、20の突出部分21、21(図2参照)が上面切除部41、41を通り、上面遮蔽部40よりも上方に露出するようにしている。
【0027】
前面部13は、底面部11の前側辺より立ち上がるものであるが、後面部12の上下長さの約3分の1程度の高さであり、その上方を開放した前面開放部13aを有する。前面開放部13aは、上下長さの中央よりやや下方から、具体的には上下寸法の約3分の2を開放している。前面部13の内側には底面部11より立ち上がり側面部14、14の傾斜辺14b、14bと同じ角度に傾斜した略くの字状の前面遮蔽部42が配され、前面遮蔽部42の上縁から所定長さの前面切除部43、43が複数形成される。前面切除部43、43は、回転する円盤20、20の突出部分21、21(図2参照)が通るようにしている。なお、上面切除部41、41と前面切除部43、43の個数について、本実施形態では5つずつ配している。これは円盤20、20が4つのものと3つのものの両方を用いることができる形態であるが、その個数は4つ、3つ等のその他の個数でもよい。
【0028】
両側の2つの側面部14、14は、外面側に平板状の取っ手2、2を配したもので、下辺は底面部11の前後方向と略同じとしているが、上辺14a、14aは、上面遮蔽部40の前後長さより長く、上面開放部15において一部が完全に露出した状態となる。上辺14a、14aの前端から下方に傾斜する傾斜辺14b、14bを有して、前面部13の上縁付近に至る。
【0029】
本実施形態の本体10の前後方向の寸法は、左右方向の寸法より短く、上下方向の寸法より長くしている。本実施形態における本体10の具体的寸法は、前後方向の寸法を150mm、前面部13側の上下寸法を50mm、後面部12側の上下寸法を130mm、左右寸法を300mmとし、これら寸法(外寸)から樹脂製板の各板厚を除した寸法を内寸(箱内部の寸法)とし、樹脂製板の板厚を3mmとしている。
【0030】
糊材Nを塗布する複数の円盤20、20について、図2図3図4図5により説明する。円盤20、20は、図2に示すように、支持軸30に等間隔に配されている。複数の円盤20、20が支持軸30により支持されており、単一の円盤20が塗布面Dに当接しながら本体1を移動させて回転させると他の円盤20も支持軸30を介して回転するようにしている。本実施形態では4つの円盤20、20が配されるが、5つ、3つや2つなどのその他の個数であってもよい。円満に塗布して貼り合わせを行うため、複数の円盤は等間隔に並べることが好適である。
【0031】
図3(a)、(b)に示すように、各々の円盤20は、側面視において、支持軸30の挿入位置を円中心とする円周、外周から半月状に一部切欠いた切欠き部22、22を有し、この切欠き部22、22により切り欠かれて残った部分を当接面23、23がある突出部分21、21としている。全体として4つの切欠き部22、22と4つの突出部分21、21が各々連続する略十字型の形態となる。本実施形態の切欠き部22、22は、当該位置の円周部分を逆側・内側に凸となるような湾曲面に切欠いたものであるが、この切欠き形態に限定されない。
【0032】
図3(a)に示すように、円盤20、20の外周面は、切欠き部22、22により切り欠かれているが、当接面23、23がある突出部分21、21と切欠き部22、22との外周長さC1、C2の比率は、概ね突出部分21を1とした場合、切欠き部22が2となる。なお、円盤20、20の切欠き形態としては、本実施形態に示す4つの切欠き、外周長さの比率、を有するもの以外のものでもよい。
【0033】
円盤20の外周面は、突出部分の円周方向に沿って2つの当接面23、23が並列し、その間に円盤溝24が配される。図4に示すように、この円盤溝24は、突出した当接面23、23がある外周面と中心軸との間の距離の約5分の2に至るまで溝深さが形成され、切欠き部22、22の最も切り欠かれた位置よりも深い位置まで、切り欠かれた位置と中心軸との間の距離の約4分の1に至るまで溝深さが形成される。このような円盤20の形態は、外周付近では当接面23、23を外周面に有する2枚の板体を合わせたようなものとなり、円盤溝24の幅寸法を毛細管現象により糊材Nを吸い上げて内部に保持可能な寸法としている。円盤20が支持軸30により回転して本体10内に貯留された糊材Nを円盤溝24内に吸い上げて、糊材Nを保持している。このように、円盤20は、最も切り欠かれた位置よりも深い円盤溝24が形成されることにより、糊材Nを突出部分21、21のみでなく切欠き部22、22の位置でも溝内に保有することができ、安定的な塗布が可能になる。
【0034】
図5に示すように、円盤20の外周面は、2つの当接面23、23と、その間に位置する円盤溝24が形成されている。各々の当接面23、23の幅長さは、円盤溝24の幅長さ(2つの当接面23、23の間の長さ)よりも長い。具体的には円盤溝24の幅長さを2mm、各々の当接面23、23の幅長さを各々3mmとしている。本実施形態では、円盤溝24の幅長さに対して各々当接面23、23の幅長さを1.5倍としているが、2倍や1.2倍とするなど、円盤溝24の幅長さよりも当接面23、23の幅長さが長いことが好適である。円盤溝24の幅長さより、当接面23、23の幅長さを長くしていることで、円盤溝24により供給される糊材Nを当接面23、23で両側をしっかりと押さえつけて垂れ落ちることなく塗布することができる平面付着部分N2、N2とすることができる(図5(b)参照)。
【0035】
本実施形態の円盤20、20を用いた糊材Nの塗布について、図5(a)、(b)により、説明する。本体10の箱内に貯留された糊材Nは、本体10内で支持軸30により回転可能に配された円盤20、20の当接面23、23に付着するとともに両側の当接面23、23間の円盤溝24内に入り込む。さらに、天井や壁面の塗布面Dに回転する円盤20、20を当接するように使用したとき、当接面23、23に付着した糊材Nが円盤20、20の回転により押さえ付けられて塗布される平面付着部分N2、N2となり、両側の当接面23、23の間に位置する円盤溝24内の糊材Nが平面付着部分N2、N2で塗布された糊材Nの粘性により引き出されるように中央に塗布されて塊状の塊拡散部分N3となる。このように、本実施形態の円盤20、20の当接面23、23と円盤溝24の形態によるため、平面付着部分N2、N2の間に塊拡散部分N3が配される断面T字状の塗布状態とすることができる。
【0036】
平面付着部分N2とは、糊材Nを塗布する部分のうち円盤20、20の当接面23、23により塗布面Dに平面状に押圧して塗布状態を付着、固定する部分である。また、塊拡散部分N3とは、所定の塊状に糊材Nを塗布して団子張りのように被覆材を貼り付ける際に拡散して貼付けを安定的に行う部分である。押さえ付けられて平面状に押圧塗布される平面付着部分N2、N2を両側に有し、中央に塊状の塊拡散部分N3を有する糊材塗布状態とすることにより、平面付着部分N2、N2を円盤20、20の当接面23、23でしっかりと押圧するので、糊材塗布状態から糊材Nが剥がれ落ちることがない。従来技術の破線状の塗布は、平面付着部分N2、N2がないために塗布された糊材Nが剥がれ落ちることがあったが、本実施形態の糊材塗布状態であればそのような事態が生じ得ない。また、塊拡散部分N3に所定の糊材Nが突起状、塊状に配されるところ、被覆材を貼り付ける際に、当該塊拡散部分N3の糊材Nが拡散し、所定範囲を接着することができる。このようにすると、従来から行われてきた団子張りのように所定間隔に一定の糊材Nを盛って貼り付けることが可能になり、安定的な接着が可能になる。
【0037】
次に、円盤20、20を回転可能に支持する支持軸30と軸保持部31について説明する。支持軸30は、図2に示すように、複数の円盤20、20の中心の貫通孔に回転可能に挿入して支持しており、本体10の両側の側面部14、14の内面側に配される軸保持部31、31により保持される。支持軸30に支持された複数の円盤20、20は、各々の突出部分21が同じ向きにしてもよいが、突出部分21、21をずらして並ぶようにしてもよい。図2に示す実施形態では、隣り合う円盤20、20を円周方向に90度ずらして配置している。この場合、糊材Nを塗布すると市松模様状、千鳥格子状に塗布することができ、より安定的な接着が可能になる。
【0038】
軸保持部31、31は、図6及び図10に示すように、上側を開放して縦溝を2つ配列する倒E字状の形態であり、後面部12側の縦溝が第1軸保持部である天井用保持溝32、前面部13側の縦溝が第2軸保持部である壁用保持溝33となる。天井用保持溝32、壁用保持溝33は、いずれも上方に開口した縦長の溝形状とし、前後方向の寸法を支持軸30の直径と同じとし、底が半円形状となって支持軸30を回転自在に保持可能としている。
【0039】
第1軸保持部である天井用保持溝32で支持軸30を保持した場合、回転する円盤20、20の突出部分21、21が側面部14、14の上辺14a、14aよりも上方に出るようにしている(図6の一点鎖線軌道A1)。また、壁用保持溝33で支持軸30を保持した場合、回転する円盤20、20の突出部分21、21が前面部13よりも前方に出るようにしてもよいが、本実施形態では塗布時の過剰な糊材Nの垂れを箱内に収めるために、前面部13よりも若干内側に位置するようにしている(図6の一点鎖線軌道A2)。
【0040】
使用状態、使用方法について詳細に説明すると、支持軸30を天井用保持溝32若しくは壁用保持溝33で保持し、円盤20、20を回転させると、突出部分21、21が上面遮蔽部40に形成された上面切除部41を通り、上面遮蔽部40より上方に回転しながら露出、突出し、前面遮蔽部42に形成された前面切除部43を通り、箱内に戻る。円盤20、20を逆回転させた場合には、その逆に円盤20、20の突出部分21、21が前面切除部43を通過後に露出し、突出し、上面切除部41を通過して箱内に戻る。そのため、図4及び図12に示すように塗布面Dが構造体の天井である場合、使用者が取っ手2をもち、糊付け器1を持ち上げて上方に向いた突出部分21、21と天井の塗布面Dの一端とを接触させた状態で、他端まで歩くと円盤20、20が回転して順次塗布される。なお、上面切除部41、41、前面切除部43、43は、切除幅を円盤20、20の幅長さと略同じ寸法としているため、当接面23、23と当接せず、円盤20、20の左右両方の側面と当接して、円盤20、20の回転により円盤20、20の側面に付着した糊材Nをそぎ落としている。
【0041】
垂直壁等の壁面を塗布面Dとする場合、図8に示すように壁側保持溝33に支持軸30を保持させ、使用者が取っ手2をもって糊付け器1を前上方に傾けて、前面部13の上方の前面開放部13aから露出した円盤20、20の突出部分21、21を壁面の塗布面Dに接触させて使用する。壁面の下側から塗布する場合には、使用者が接触状態から糊付け器1を上方に押し上げ、壁面の上側から塗布する場合には糊付け器1を下方に押し下げて、円盤20、20を回転させて、糊材Nを壁面の塗布面Dに塗布する。
【0042】
壁面を塗布面Dとする場合、糊付け器1を傾けて使用するため、本実施形態では緩衝材70とガイド片71、71を配している。緩衝材70は、前面部13の外側面上縁に一方の側面から他方の側面に至るまで直線状の緩衝部材を配されるものであって、本実施形態では樹脂製素材を用いている。ガイド片71,71は、図7図8に示すように、ガイド差し込み部72、72が糊付け器1の底面部11の両側に備えられている。ガイド差し込み部72、72は、後方にガイド片71、71を収容できる収容凹所72a、72aがあり、前方に収容凹所72a、72aよりも長手方向長さ(前後方向長さ)が短い使用凹所72b、72bが形成される。通常時にガイド片71、71が収容凹所72a、72aに収容されているが、壁面を塗布面Dとする場合、ガイド片71、71を抜き取り、使用凹所72b、72bに差し込むと、所定長さが露出する。図8に示すように、ガイド片71、71を使用凹所72b、72bを差し込んだ先端位置と、緩衝材70を塗布面Dに沿わせると使用に適した角度で糊付け器1を使用することができる。
【0043】
次に、天井を塗布面Dとした場合に、整然と塗布するためのガイドローラ80について説明する。ガイドローラ80、80は、図9に示すように、断面略コの字状の差込本体81と、差込本体81の上平面の前後端には、差込方向を軸方向として同軸を中心に回転するローラ部82、82が配されている。ガイドローラ80、80は、図10に示すように、差込本体81を側面部14、14の上辺14a、14aに差し込んで使用する。
【0044】
図10図11に示すように、本実施形態の側面部14、14は、内面側に遮蔽保持部50が配され、上記のとおり遮蔽保持部50の第1段部51に上面遮蔽部40が配される。この第1段部51は、上側にも段部が形成されており、本体中央から側方にかけて凹む溝となって上面遮蔽部40を後方に向けて挿入することができ、前側にはストッパーとなる凹みが形成されている。なお、この溝は後面部12にも形成されており、上側遮蔽部40の後面部側を挿入して固定する。また、遮蔽保持部50は、下方内面側の保持部当接面52で側面部14、14の内面に当接固定しており、保持部当接面52の上側に第2段部53を有している。この第2段部53により、側面部14、14の上辺14a、14a付近では遮蔽保持部50と側面部14、14との間に隙間(スリット)が生じている。この隙間を有することで、側面部14、14の上辺14a、14aに断面略コの字状の差込本体81を差し込むことで、ガイドローラ80、80を取り付けることができる。
【0045】
図12に示すように、ガイドローラ80、80は、天井を塗布面Dとした場合に、正確に直線状に糊材Nを塗布するためのガイドとなる。まず、天井のうち、最も壁側を塗布するために、ガイドローラ80、80を壁に沿わせ、ローラ部82、82を壁に接触させて回転させるようにして糊付け器1を使用する。そして、糊材Nを一列に塗布した状態で、当該塗布部分に被覆材を貼り付ける。そして、貼り付けた被覆材の側面Pにガイドローラ80、80を沿わせて糊付け器1を使用し、次の被覆材を張り付ける。これを順次繰り返すことにより、整然、整列した糊材Nの塗布が可能となる。
【0046】
また、糊材Nの整然、整列した塗布につき、垂直壁に塗布する場合、上述したガイド片71、71を用いることができる。ガイド片71、71は、底面部11の両側端に使用凹所72b、72bが形成されている。塗布面Dの壁面の端に使用状態のガイド片71を沿わせて、糊付け器1を使用して糊材Nを塗布する。そして、塗布した部分に被覆材を貼り付け、当該被覆材の側面にガイド片71を沿わせて糊付け器1を使用することで、壁面を塗布面Dとする場合でも、整然、整列した糊材Nの塗布が可能となる。
【0047】
カバー体90は、図13に示すように、上方から本体1を覆う箱蓋形状とし、本体10から着脱自在としている。カバー体90は本体1と同様に透明な樹脂製板により形成している。カバー体90は、取っ手2、2に係合する凹所が形成され、所定の位置で本体10の開口部分を遮蔽し、残存する糊材Nが落ちないようにしている。なお、取っ手2、2は、軸保持部31、31と同じ位置(高さ、前後位置)で、側面部14、14の外側に備え付けられている。取っ手2、2を把持した使用者が移動しながら糊材を塗布するに際し、円盤20,20の回転を取っ手2、2の位置で感触を感じながら塗布することが可能になり、安定的な塗布が可能になる。
【符号の説明】
【0048】
1…糊付け器、10…本体、13a…前面開放部、15…上面開放部、20…円盤、21…突出部分、22…切欠き部、23…当接面、24…円盤溝、30…支持軸、31…軸保持部、32…第1軸保持部(天井用保持溝)、33…第2軸保持部(壁用保持溝)、3…円盤、71…ガイド片、80…ガイドローラ、D…塗布面、N…糊材、N2…平面付着部分、N3…塊拡散部分。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13