(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】健康度ポジショニングマップおよび健康関数を作成する方法、システム、およびプログラム、ならびにそれらの使用方法
(51)【国際特許分類】
G16H 50/30 20180101AFI20240408BHJP
【FI】
G16H50/30
(21)【出願番号】P 2021055727
(22)【出願日】2021-03-29
(62)【分割の表示】P 2020519824の分割
【原出願日】2019-11-01
【審査請求日】2022-10-28
(31)【優先権主張番号】P 2018207611
(32)【優先日】2018-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、研究成果展開事業 世界に誇る地域発研究開発・実証拠点(リサーチコンプレックス)推進プログラム「健康“生き活き”羅針盤リサーチコンプレックス」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】503359821
【氏名又は名称】国立研究開発法人理化学研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 恭良
(72)【発明者】
【氏名】水野 敬
(72)【発明者】
【氏名】久米 慧嗣
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 恭介
(72)【発明者】
【氏名】種石 慶
【審査官】今井 悠太
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-097895(JP,A)
【文献】特開2017-037489(JP,A)
【文献】特開2016-165331(JP,A)
【文献】特開2015-161987(JP,A)
【文献】特開2015-104596(JP,A)
【文献】特開2012-208669(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
健康度ポジショニングマップ上に被験者の健康度をマッピングするための健康関数の作成方法であって、前記作成方法は、プロセッサ部を備えるコンピュータシステムにおいて実行され、前記作成方法は、
前記プロセッサ部が、第1パラメータセットを用いて作成された健康度ポジショニングマップを取得することと、
前記プロセッサ部が、第2パラメータセットに対する第2データセットを取得することであって、前記第2パラメータセットは、前記第1パラメータセットの一部である、ことと、
前記プロセッサ部が、前記第2データセットと、被験者の前記健康度ポジショニングマップ上の位置とを相関させる健康関数を導出することと
を含む、作成方法。
【請求項2】
前記健康度ポジショニングマップは、m次元の第1パラメータセットに対する第1データセットをn次元に次元削減することによって得られた第1データをn次元空間にマッピングすることによって作成されたものである、請求項1に記載の作成方法。
【請求項3】
前記健康度ポジショニングマップは、
a.複数の被験者の各々について、前記第1パラメータセットに対する第1データセットを取得することと、
b.前記第1データセットを処理して、第1データを得ることと、
c.前記複数の被験者の各々について、前記処理された第1データをマッピングすることと、
d.前記第1データがマッピングされたマップにおいて複数の領域を特定することと、
e.前記複数の領域のうちの少なくとも一部を特徴付けることと
を含む方法によって作成されたものである、請求項1~2のいずれか一項に記載の作成方法。
【請求項4】
前記健康度ポジショニングマップは、健康に関する情報で特徴付けられた複数の領域を有するn次元のマップである、請求項1~3のいずれか一項に記載の作成方法。
【請求項5】
前記複数の領域の各領域は、n次元の広がりを有する、請求項3または請求項4に記載の作成方法。
【請求項6】
前記第1パラメータセットは、自律神経パラメータ、生体酸化パラメータ、生体修復エネルギー低下パラメータ、および炎症パラメータを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の作成方法。
【請求項7】
前記第1パラメータセットは、
CRP(C-Reactive Protein)、WBC(白血球数)、アルブミン、赤血球数、インターロイキン-1β、またはインターロイキン-6と、
コエンザイムQ10総量、またはコエンザイムQ10還元型比率と、
平均HR、ln(TP)、ln(LF)、ln(HF)、またはln(LF/HF)とを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の作成方法。
【請求項8】
前記第2パラメータセットは侵襲性検査の結果を含まない、請求項1~7のいずれか一項に記載の作成方法。
【請求項9】
ユーザの健康度を推定する方法であって、前記方法は、プロセッサ部を備えるコンピュータシステムにおいて実行され、前記方法は、
前記プロセッサ部が、請求項1~8のいずれか一項に記載の作成方法によって作成された健康関数を取得することと、
前記プロセッサ部が、前記ユーザの前記第2パラメータセットに対する第1ユーザデータセットを取得することと、
前記プロセッサ部が、前記第1ユーザデータセットを前記健康関数に入力することにより第1出力を得ることと、
前記プロセッサ部が、前記第1出力を前記健康度ポジショニングマップ上にマッピングすることと
を含む方法。
【請求項10】
ユーザの健康状態を向上させるためのアイテムの評価方法であって、前記評価方法は、プロセッサ部を備えるコンピュータシステムにおいて実行され、前記評価方法は、
前記プロセッサ部が、請求項1~8に記載の作成方法によって作成された健康関数を取得することと、
前記プロセッサ部が、前記ユーザの前記第2パラメータセットに対する第1ユーザデータセットを取得することと、
前記プロセッサ部が、前記第1ユーザデータセットを前記健康関数に入力することにより第1出力を得ることと、
前記プロセッサ部が、所定期間経過後に得られた前記ユーザの前記第2パラメータセットに対する第2ユーザデータセットを取得することと、
前記プロセッサ部が、前記第2ユーザデータセットを前記健康関数に入力することにより第2出力を得ることと、
前記プロセッサ部が、前記第1出力と前記第2出力とを比較すること
を含み、前記ユーザは、前記所定期間の間に前記アイテムを使用している、評価方法。
【請求項11】
前記アイテムは、還元型CoQ10を含む、請求項10に記載の評価方法。
【請求項12】
健康度ポジショニングマップ上に被験者の健康度をマッピングするための健康関数を作成するシステムであって、
第1パラメータセットを用いて作成された健康度ポジショニングマップを取得する第1取得手段と、
第2パラメータセットに対する第2データセットを取得する第2取得手段であって、前記第2パラメータセットは、前記第1パラメータセットの一部である、第2取得手段と、
前記第2データセットと、被験者の前記健康度ポジショニングマップ上の位置とを相関させる健康関数を導出する導出手段と
を備えるシステム。
【請求項13】
健康度ポジショニングマップ上に被験者の健康度をマッピングするための健康関数を作成するためのプログラムであって、前記プログラムは、プロセッサ部を備えるコンピュータシステムにおいて実行され、前記プログラムは、
第1パラメータセットを用いて作成された健康度ポジショニングマップを取得することと、
第2パラメータセットに対する第2データセットを取得することであって、前記第2パラメータセットは、前記第1パラメータセットの一部である、ことと、
前記第2データセットと、被験者の前記健康度ポジショニングマップ上の位置とを相関させる健康関数を導出することと
を含む処理を前記プロセッサ部に行わせる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、健康度ポジショニングマップおよび健康関数を作成する方法などに関する。
【背景技術】
【0002】
健康から疾病発症に至る前段階を未病という。超少子高齢化社会における医療費高騰で国の経済破綻が危惧される状況で、疾病発症を未然に防ぐための健康から未病状態を可視化・数値化する技術開発が望まれている。
【0003】
例えば、特許文献1および特許文献2には、複数の被験者についての複数の検査項目のデータを取得し、当該検査項目のうち複数の検査データを変数とする関数を作成することにより、被験者の健康状態を評価する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-230428号公報
【文献】特許第6069598号公報
【文献】特許第5455071号公報
【文献】特許第5491749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のような従来技術では、糖尿病や動脈硬化症などの生活習慣病、がん、認知症、サルコペニア、肝臓疾患、腎臓疾患などの特定の軸に沿って、健康、未病、疾患の道筋に則った計測を行い、リスク評価をしている。そのため、人の健康総体の健康の度合いを評価することはできないという問題がある。
【0006】
本発明の一態様は、人の健康総体の健康度を表すために、様々な健康リスクを評価するための手段(例えば、健康関数を作成することができる健康関数作成方法および健康関数作成装置など)を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る健康関数作成方法は、被験者群の健康関数を作成する健康関数作成方法であって、前記被験者群についての、未来健康診断項目データを含む健康に関する第1データを取得する第1データ取得ステップと、前記第1データを用いて、健康関数を作成する健康関数作成ステップと、を含む。
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る健康関数作成装置は、被験者群の健康関数を作成する健康関数作成装置であって、前記被験者群についての、未来健康診断項目データを含む健康に関する第1データを取得するデータ取得部と、前記第1データを用いて、健康関数を作成する健康関数作成部と、を備える。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
健康度ポジショニングマップの作成方法であって、
複数の被験者の各々について、第1パラメータセットに対する第1データセットを取得することと、
前記第1データセットを処理して、第1データを得ることと、
前記複数の被験者の各々について、前記処理された第1データをマッピングすることと、
前記マッピングされた前記第1データをクラスタリングすることにより、複数の領域を特定することと、
前記複数の領域のうちの少なくとも一部を特徴付けることと
を含む作成方法。
(項目2)
前記第1パラメータセットは、自律神経パラメータ、生体酸化パラメータ、生体修復エネルギー低下パラメータ、および炎症パラメータを含む、項目1に記載の作成方法。
(項目3)
前記第1パラメータセットは基礎的パラメータ、認知機能パラメータおよび主観的パラメータをさらに含む、項目2に記載の作成方法。
(項目4)
前記1データセットの前記処理は、前記第1データセットの次元削減処理を含む、項目1~3のいずれか一項に記載の作成方法。
(項目5)
前記1データセットの前記処理は、前記第1データセットの標準化、および前記標準化されたデータセットの次元削減処理を含む、項目1~4のいずれか一項に記載の作成方法。
(項目6)
前記第1データセットの標準化は、
前記第1データセットを、男性被験者のデータセットと女性被験者のデータセットとに分類することと、
前記男性被験者のデータセットを標準化すること、および/または前記女性被験者のデータセットを標準化することと
を含む、項目5に記載の作成方法。
(項目7)
前記次元削減処理を多次元尺度構成法によって行う、項目4~6のいずれか一項に記載の作成方法。
(項目8)
前記領域を選択することと、
前記領域にマッピングされた前記第1データをサブ第1データとすることと、
前記サブ第1データをクラスタリングすることにより、複数の領域を特定することと、
前記複数の領域のうちの少なくとも一部を特徴付けることと
をさらに含む、項目1~7のいずれか一項に記載の作成方法。
(項目9)
前記健康度ポジショニングマップは、二次元または三次元のマップである、項目1~8のいずれか一項に記載の作成方法。
(項目10)
健康度ポジショニングマップ上に被験者の健康度をマッピングするための健康関数の作成方法であって、
項目1~9のいずれか一項に記載の方法によって作成された健康度ポジショニングマップを用意することと、
前記複数の被験者のうちの少なくとも一部について、第2パラメータセットに対する第2データセットを取得することであって、前記第2パラメータセットは、前記第1パラメータセットの一部であることと、
前記第2データセットと、前記少なくとも一部の被験者の前記健康度ポジショニングマップ上の位置とを相関させる健康関数を導出することと
を含む、作成方法。
(項目11)
前記導出を機械学習によって行う、項目10に記載の作成方法。
(項目12)
前記第2パラメータセットは侵襲性検査の結果を含まない、項目10または11に記載の作成方法。
(項目13)
前記第2パラメータセットは、
(1)年齢
(2)BMI
(3)脂肪率
(4)SOS
(5)収縮期血圧
(6)疲労についての主観的評価
(7)うつについての主観的評価
(8)副交感神経の活動
(9)自律神経系全体の活動
(10)認知機能
を含む、項目12に記載の作成方法。
(項目14)
前記第2パラメータセットは、年齢、疲労についての主観的評価、疲労持続期間、交感神経と副交感神経のバランス、認知機能、脂肪率、血中中性脂肪、血中酸化ストレス指標OSI、および血中CRPを含む、項目10または11に記載の方法。
(項目15)
前記健康関数は、前記第2データセットを独立変数とし、前記少なくとも一部の被験者の前記健康度ポジショニングマップ上の位置を従属変数とする線形回帰モデルまたは非線形回帰モデルである、項目10~14のうちのいずれか一項に記載の方法。
(項目16)
ユーザの健康度を推定する方法であって、
項目10~15のいずれか一項に記載の作成方法によって作成された健康関数を用意することと、
前記ユーザの前記第2パラメータセットに対する第1ユーザデータセットを取得することと、
前記第1ユーザデータセットを前記健康関数に入力することにより第1出力を得ることと、
前記第1出力を前記健康度ポジショニングマップ上にマッピングすることと
を含む方法。
(項目17)
所定期間経過後に、前記ユーザの前記第2パラメータセットに対する第2ユーザデータセットを取得することと、
前記第2ユーザデータセットを前記健康関数に入力することにより第2出力を得ることと、
前記第2出力を前記健康度ポジショニングマップ上にマッピングすることと
を含む、項目16に記載の方法。
(項目18)
健康状態を向上させるためのアイテムの評価方法であって、
項目17に記載の方法における前記第1出力と前記第2出力とを比較すること
を含み、前記ユーザは、前記所定期間の間に前記アイテムを使用していることを特徴とする方法。
(項目19)
健康度ポジショニングマップ上に被験者の健康度をマッピングするための健康関数の作成方法であって、
第1パラメータセットを用いて作成された健康度ポジショニングマップを用意することと、
第2パラメータセットに対する第2データセットを取得することであって、前記第2パラメータセットは、前記第1パラメータセットの一部であることと、
前記第2データセットと、被験者の前記健康度ポジショニングマップ上の位置とを相関させる健康関数を導出することと
を含む、作成方法。
(項目20)
前記第1パラメータセットは、自律神経パラメータ、生体酸化パラメータ、生体修復エネルギー低下パラメータ、および炎症パラメータを含む、項目19に記載の作成方法。
(項目21)
前記導出を機械学習によって行う、項目19または20に記載の作成方法。
(項目22)
前記第2パラメータセットは侵襲性検査の結果を含まない、項目19~21のいずれか一項に記載の作成方法。
(項目23)
前記第2パラメータセットは、
(1)年齢
(2)BMI
(3)脂肪率
(4)SOS
(5)収縮期血圧
(6)疲労についての主観的評価
(7)うつについての主観的評価
(8)副交感神経の活動
(9)自律神経系全体の活動
(10)認知機能
を含む、項目22に記載の作成方法。
(項目24)
前記第2パラメータセットは、年齢、疲労についての主観的評価、疲労持続期間、交感神経と副交感神経のバランス、認知機能、脂肪率、血中中性脂肪、血中酸化ストレス指標OSI、および血中CRPを含む、項目19~21のいずれか一項に記載の方法。
(項目25)
ユーザの健康度を推定する方法であって、
前記ユーザの第2パラメータセットに対する第1ユーザデータセットを取得することと、
前記第1ユーザデータセットを健康関数に入力することにより第1出力を得ることと、
前記第1出力を健康度ポジショニングマップ上にマッピングすることと
を含み、前記健康関数は、前記ユーザデータセットと前記健康度ポジショニングマップ上の位置とを相関させる関数である、方法。
(項目26)
前記第2パラメータセットは侵襲性検査の結果を含まない、項目25に記載の方法。
(項目27)
前記第2パラメータセットは、
(1)年齢
(2)BMI
(3)脂肪率
(4)SOS
(5)収縮期血圧
(6)疲労についての主観的評価
(7)うつについての主観的評価
(8)副交感神経の活動
(9)自律神経系全体の活動
(10)認知機能
を含む、項目26に記載の方法。
(項目28)
前記第2パラメータセットは、年齢、疲労についての主観的評価、疲労持続期間、交感神経と副交感神経のバランス、認知機能、脂肪率、血中中性脂肪、血中酸化ストレス指標OSI、および血中CRPを含む、項目25に記載の方法。
(項目29)
前記健康度ポジショニングマップは、第1パラメータセットを用いて作成されたものであり、前記第1パラメータセットは、自律神経パラメータ、生体酸化パラメータ、生体修復エネルギー低下パラメータ、および炎症パラメータを含む、項目25~28のいずれか一項に記載の方法。
(項目30)
前記第1パラメータセットは基礎的パラメータ、認知機能パラメータおよび主観的パラメータをさらに含む、項目29に記載の方法。
(項目31)
健康度ポジショニングマップを作成するためのシステムであって、
複数の被験者の各々について、第1パラメータセットに対する第1データセットを取得する取得手段と、
第1データを得るように、前記第1データセットを処理する処理手段と、
前記複数の被験者の各々について、前記処理された第1データをマッピングするマッピング手段と、
複数の領域を特定するように、前記マッピングされた前記第1データをクラスタリングするクラスタリング手段と、
前記複数の領域のうちの少なくとも一部を特徴付ける特徴付け手段と
を備えるシステム。
(項目32)
健康度ポジショニングマップ上に被験者の健康度をマッピングするための健康関数を作成するためのシステムであって、
項目31に記載のシステムによって作成された健康度ポジショニングマップを取得する第1取得手段と、
前記複数の被験者のうちの少なくとも一部について、第2パラメータセットに対する第2データセットを取得する第2取得手段であって、前記第2パラメータセットは、前記第1パラメータセットの一部である、第2取得手段と、
前記第2データセットと、前記少なくとも一部の被験者の前記健康度ポジショニングマップ上の位置とを相関させる健康関数を導出する導出手段と
を備えるシステム。
(項目33)
ユーザの健康度を推定するためのシステムであって、
項目32に記載のシステムによって作成された健康関数を取得する第3取得手段と、
前記ユーザの前記第2パラメータセットに対する第1ユーザデータセットを取得する第4取得手段と、
前記第1ユーザデータセットを前記健康関数に入力することにより第1出力を生成する出力生成手段と、
前記第1出力を前記健康度ポジショニングマップ上にマッピングする出力マッピング手段と
を備えるシステム。
(項目34)
健康度ポジショニングマップ上に被験者の健康度をマッピングするための健康関数を作成するためのシステムであって、
第1パラメータセットを用いて作成された健康度ポジショニングマップを取得する第1取得手段と、
第2パラメータセットに対する第2データセットを取得する第2取得手段であって、前記第2パラメータセットは、前記第1パラメータセットの一部である、第2取得手段と、
前記第2データセットと、被験者の前記健康度ポジショニングマップ上の位置とを相関させる健康関数を導出する導出手段と
を備えるシステム。
(項目35)
ユーザの健康度を推定するためのシステムであって、
前記ユーザの第2パラメータセットに対する第1ユーザデータセットを取得する取得手段と、
前記第1ユーザデータセットを健康関数に入力することにより第1出力を生成する出力生成手段と、
前記第1出力を健康度ポジショニングマップ上にマッピングする出力マッピング手段と
を備え、前記健康関数は、前記ユーザデータセットと前記健康度ポジショニングマップ上の位置とを相関させる関数である、システム。
(項目36)
健康度ポジショニングマップを作成するためのプログラムであって、前記プログラムは、プロセッサ部を備えるコンピュータシステムにおいて実行され、前記プログラムは、
複数の被験者の各々について、第1パラメータセットに対する第1データセットを取得することと、
前記第1データセットを処理する処理して、第1データを得ることと、
前記複数の被験者の各々について、前記処理された第1データをマッピングすることと、
前記マッピングされた前記第1データをクラスタリングすることにより、複数の領域を特定することと、
前記複数の領域のうちの少なくとも一部を特徴付けることと
を含む処理を前記プロセッサ部に行わせる、プログラム。
(項目37)
健康度ポジショニングマップ上に被験者の健康度をマッピングするための健康関数を作成するためのプログラムであって、前記プログラムは、プロセッサ部を備えるコンピュータシステムにおいて実行され、前記プログラムは、
項目36に記載のプログラムを実行することによって作成された健康度ポジショニングマップを取得することと、
前記複数の被験者のうちの少なくとも一部について、第2パラメータセットに対する第2データセットを取得することであって、前記第2パラメータセットは、前記第1パラメータセットの一部である、ことと、
前記第2データセットと、前記少なくとも一部の被験者の前記健康度ポジショニングマップ上の位置とを相関させる健康関数を導出することと
を含む処理を前記プロセッサ部に行わせる、プログラム。
(項目38)
ユーザの健康度を推定するためのプログラムであって、前記プログラムは、プロセッサ部を備えるコンピュータシステムにおいて実行され、前記プログラムは、
項目37に記載のプログラムを実行することによって作成された健康関数を取得することと、
前記ユーザの前記第2パラメータセットに対する第1ユーザデータセットを取得することと、
前記第1ユーザデータセットを前記健康関数に入力することにより第1出力を得ることと、
前記第1出力を前記健康度ポジショニングマップ上にマッピングすることと
を含む処理を前記プロセッサ部に行わせる、プログラム。
(項目39)
健康度ポジショニングマップ上に被験者の健康度をマッピングするための健康関数を作成するためのプログラムであって、前記プログラムは、プロセッサ部を備えるコンピュータシステムにおいて実行され、前記プログラムは、
第1パラメータセットを用いて作成された健康度ポジショニングマップを取得することと、
第2パラメータセットに対する第2データセットを取得することであって、前記第2パラメータセットは、前記第1パラメータセットの一部である、ことと、
前記第2データセットと、被験者の前記健康度ポジショニングマップ上の位置とを相関させる健康関数を導出することと
を含む処理を前記プロセッサ部に行わせる、プログラム。
(項目40)
ユーザの健康度を推定するためのプログラムであって、前記プログラムは、プロセッサ部を備えるコンピュータシステムにおいて実行され、前記プログラムは、
前記ユーザの第2パラメータセットに対する第1ユーザデータセットを取得することと、
前記第1ユーザデータセットを健康関数に入力することにより第1出力を得ることと、
前記第1出力を健康度ポジショニングマップ上にマッピングすることと
を含む処理を前記プロセッサ部に行わせ、前記健康関数は、前記ユーザデータセットと前記健康度ポジショニングマップ上の位置とを相関させる関数である、プログラム。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、様々な健康リスクを評価することができる手段(例えば、健康度ポジショニングマップ、健康関数等)を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】ユーザの健康状態を可視化するための新たなサービスのフローの一例を示す図である。
【
図1B】ユーザの健康状態を示す画面1000の一例を示す図である。
【
図2】コンピュータシステム100の構成の一例を示す図である。
【
図3A】一実施形態におけるプロセッサ部120の構成の一例を示す図である。
【
図3B】別の実施形態におけるプロセッサ部130の構成の一例を示す図である。
【
図3C】さらに別の実施形態におけるプロセッサ部140の構成の一例を示す図である。
【
図3D】本発明の一実施形態におけるデータフローの一例を示す図である。
【
図4】データベース部200に格納される第1データセットのデータ構成の一例を示す図である。
【
図5A】コンピュータシステム100における処理の一例を示すフローチャートである。
【
図5B】コンピュータシステム100における処理の別の一例を示すフローチャートである。
【
図6】コンピュータシステム100における処理の別の一例を示すフローチャートである。
【
図7A】コンピュータシステム100における処理の別の一例を示すフローチャートである。
【
図7B】
図7Aに示される処理700の続きの処理の一例を示すフローチャートである。
【
図8】上記健康評価装置によって作成される健康評価マップの一例を示す図である。
【
図9】本実施例においてプロット分布パターンをクラスタリングした結果を示す図である。
【
図10】一実施例において作成した健康度ポジショニングマップを示す図である。
【
図11】50項目の第2パラメータセットによる健康関数、21項目による第2パラメータセットによる健康関数、9項目による第2パラメータセットによる健康関数のそれぞれの、実測値と予測値との相関係数を示す図である。
【
図12】非侵襲15項目の第2パラメータセットによる健康関数の実測値と予測値との相関係数を示す図である。
【
図13】還元型CoQ10を摂取する前と、3か月間摂取した後で、健康度ポジショニングマップ上でのマッピング位置を比較した結果を示す図である。
【
図14】還元型CoQ10を摂取する前と、3か月間摂取した後で、検査項目のパラメータを比較した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。なお、本明細書中において「約」とは、後に続く数値の±10%を意味する。
【0012】
1.ユーザの健康状態を可視化するためのサービス
本発明の発明者は、ユーザの健康状態を可視化するための新たなサービスを開発した。そのサービスとは、ユーザの健康に関する様々なデータを取得し、取得されたデータに基づいて、そのユーザの健康度が健康度ポジショニングマップ上のどの領域に位置付けられるかの情報をユーザに提供するサービスである。ここで、健康度ポジショニングマップとは、健康に関する情報で特徴付けられた複数の領域を有するマップのことをいう。
【0013】
健康度ポジショニングマップの各領域は、例えば、健康度の種々の状態として特徴付けられ得る。例えば、健康度ポジショニングマップの或る領域は、若年・メンタルヘルス疾患リスク群として特徴付けられ得、健康度ポジショニングマップの別の或る領域は、中年-老年・生活習慣病リスク群として特徴付けられ得、健康度ポジショニングマップのさらに別の或る領域は、老年・糖尿病リスク群として特徴付けられ得る。例えば、健康度ポジショニングマップの或る領域は、ある健康状態についての未病群として特徴付けられ得、の別の或る領域は、その健康状態についてのハイリスク群として特徴付けられ得る。なお、これらの特徴付けは一例であり、種々の特徴付けがなされ得る。例えば、後述する
図1Bに示されるように、身体の健康および精神の健康を軸として、健康度A~Cとして特徴づけられるようにしてもよい。このような特徴付けは、シンプルであり、健康度の状態が直感的に理解され得る。健康度ポジショニングマップの各領域の特徴付けは、例えば、各領域内に属する複数の被験者の傾向を分析することによって決定されるようにすることができる。
【0014】
図1Aは、ユーザの健康状態を可視化するための新たなサービスのフローの一例を示す。
【0015】
ステップS1では、ユーザUが、例えば、病院や専門検査施設などの施設Hで検査を受け、検査の結果がサービスプロバイダPに提供される。施設Hでの検査は、例えば、血液検査等の侵襲性検査に加えて、問診および認知機能検査等の非侵襲性検査を含み得る。あるいは、ステップS1では、ユーザUが、例えば、検査施設ではない会社などの施設Cで簡易な検査を受け、検査の結果がサービスプロバイダPに提供される。施設Cでの簡易な検査は、例えば、問診および認知機能検査等の非侵襲性検査のみを含み得る。ステップS1においては、施設Hで行われるような侵襲性検査および非侵襲性検査と、施設Cで行われるような非侵襲性検査の両方を行う必要はなく、施設Hで行われる検査だけでもよいし、施設Cで行われる簡易な検査だけでもよい。なお、本明細書において、「侵襲性検査」とは検査対象の身体を(例えば、注射による血液採取や組織切除によって)傷つける検査をいい、「非侵襲性検査」とは検査対象の身体を何ら傷つけない検査をいう。代表的な侵襲性検査は血液や血漿に含まれる成分量を検出する検査であり、代表的な非侵襲検査は対象の排泄物(尿、呼気、唾液)における成分を検出する検査や、自律神経機能検査、認知機能検査、質問票・VAS(Visual Analogue Scale)などである。本明細書において、「侵襲的パラメータ」とは侵襲性検査によって得られるパラメータをいい、「非侵襲的パラメータ」とは非侵襲性検査によって得られるパラメータをいう。
【0016】
サービスプロバイダPは、提供されたユーザの検査結果に基づいて、そのユーザの健康度が健康度ポジショニングマップ上のどの領域に位置付けられたかの情報を生成することができる。
【0017】
ステップS2では、サービスプロバイダPによって生成された情報が、ユーザに提供される。ユーザは、自身の健康度が位置付けられた健康度ポジショニングマップ上の領域に関連付けられた情報を参照することにより、自身の健康状態を認識することができる。例えば、自身の健康度が、
図1Bに示されるような健康度ポジショニングマップ上の健康度Bとして特徴づけられた領域に属する場合には、ユーザは、自身の健康度が悪くはないが良くもないことを認識することができる。これにより、例えば、ユーザに、自身の健康度が改善されるよう心がけるよう促すことが可能である。例えば、自身の健康度が、健康度ポジショニングマップ上の若年・メンタルヘルス疾患リスク群として特徴付けられた領域に属する場合には、ユーザは、自身にメンタルヘルス疾患リスクがあるとして、自身の健康状態を認識することができる。これにより、例えば、ユーザに、メンタルヘルス疾患リスクに備える措置を講じるように促すことが可能である。
【0018】
さらに、所定期間経過後に、上述したステップS1~ステップS2を繰り返すことにより、ユーザは、自身の健康状態の時系列変化を認識することができる。例えば、ユーザは、健康度ポジショニングマップ上での位置の時系列変化を参照することにより、自身の健康状態が向かう方向を認識することができる。例えば、自身の健康度が、
図1Bに示されるような健康度ポジショニングマップ上の健康度Bとして特徴づけられた領域に属していたところ、所定期間経過後に、自身の健康度が、健康度ポジショニングマップ上の健康度Bとして特徴付けられた領域に属してはいるものの、健康度Cとして特徴付けられた領域に近づいていた場合には、ユーザは、自身の健康状態が健康度Cの方向へ向かっていることを認識し得る。これにより、例えば、ユーザに、自身の健康度が悪化しないように心がけるよう促すことが可能である。例えば、自身の健康度が健康度ポジショニングマップ上の若年・メンタルヘルス疾患リスク群として特徴付けられた領域に属していたところ、所定期間経過後に、自身の健康度が、健康度ポジショニングマップ上の若年・メンタルヘルス疾患リスク群として特徴付けられた領域に属してはいるものの、中年-老年・生活習慣病リスク群として特徴付けられた領域に近づいていた場合には、ユーザは、自身の健康状態が中年-老年・生活習慣病リスクの方向へ向かっていることを認識し得る。これにより、例えば、ユーザに、生活習慣病リスクに備える措置を講じるように促すことが可能である。
【0019】
図1Bは、ユーザの健康状態を示す画面1000の一例を示す。画面1000は、例えば、ユーザの端末装置(例えば、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレット等)の表示画面上に表示されて、ユーザに提供され得る。
【0020】
画面1000は、健康度ポジショニングマップ表示部1100と、レーダーチャート表示部1200とを含む。
【0021】
健康度ポジショニングマップ表示部1100には、健康度ポジショニングマップが表示されている。この健康度ポジショニングマップにおいて、横軸は、身体の健康に関連付けられており、横軸の値が大きいほど、身体の健康が悪いことを示している一方で、縦軸は、精神の健康に関連付けられており、縦軸の値が大きいほど、精神の健康が悪いことを示している。
【0022】
健康度ポジショニングマップ表示部1100に表示された健康度ポジショニングマップは、10個の領域を含んでおり、10個の領域のうち、1つの領域が健康度Aとして特徴付けられており、3つの領域が健康後Bとして特徴付けられており、6個の領域が健康度Cとして特徴づけられている。ここで、健康度Aが、健康度が良好であることを示し、健康度Bが、健康度が普通であることを示し、健康度Cが、健康度が悪く、注意を要することを示している。
【0023】
ユーザは、自身の健康度が、健康度ポジショニングマップ上のどの領域に位置付けられるかに応じて、自身の健康状態を認識することができる。
図1Bに示される例では、ユーザの健康度が星印でプロットされており、ユーザの健康度は、健康度Bとして特徴付けられた領域内に属していることがわかる。
【0024】
レーダーチャート表示部1200には、レーダーチャートが表示されている。このレーダーチャートでは、健康状態が6つの観点(筋骨格運動器系、代謝・メタボ系、自律神経系、睡眠覚醒リズム、メンタルヘルス、疲労)から0~5の6段階で示されている。筋骨格運動器系の観点は、運動に関わる筋力などの状態を示し、代謝・メタボ系の観点は、体内のエネルギー代謝や肥満などの状態を示し、自律神経系の観点は、集中やリラックスに関する神経の調節力の状態を示し、睡眠覚醒リズムの観点は、睡眠や眠気などの状態の観点を示し、メンタルヘルスの観点は、気分の落ち込みなどの状態を示し、疲労の観点は、心や身体の疲れの状態を示している。ユーザは、自身の健康状態がどの観点に起因しているのかを一目で認識することができる。レーダーチャート表示部1200に表示されるレーダーチャートは、各軸が健康に関する情報で特徴付けられており、軸毎にそのユーザの得点がマッピングされていることから、本願明細書では、このようなレーダーチャートも、健康度ポジショニングマップの一種であると見なされ得る。
【0025】
上述したサービスは、例えば、以下に説明する、コンピュータシステム100によって実現され得る。
【0026】
2.コンピュータシステムの構成
図2は、コンピュータシステム100の構成の一例を示す。
【0027】
コンピュータシステム100は、データベース部200に接続されている。また、コンピュータシステム100は、少なくとも1つのユーザ端末装置300にネットワーク400を介して接続されている。
【0028】
ネットワーク400は、任意の種類のネットワークであり得る。ネットワーク400は、例えば、インターネットであってもよいし、LANであってもよい。ネットワーク400は、有線ネットワークであってもよいし、無線ネットワークであってもよい。
【0029】
コンピュータシステム100の一例は、ユーザの健康状態を可視化するための新たなサービスを提供するサービスプロバイダに設置されているコンピュータ(例えば、サーバ装置)であるが、これに限定されない。ユーザ端末装置300の一例は、病院に設置されているコンピュータ(例えば、端末装置)、検査を行うことが可能なオフィスの一室に設置されているコンピュータ(例えば、端末装置)、または、ユーザが保持するコンピュータ(例えば、端末装置)であるが、これに限定されない。ここで、コンピュータ(サーバ装置または端末装置)は、任意のタイプのコンピュータであり得る。例えば、端末装置は、スマートフォン、タブレット、パーソナルコンピュータ、スマートグラス等の任意のタイプの端末装置であり得る。
【0030】
コンピュータシステム100は、インターフェース部110と、プロセッサ部120と、メモリ150部とを備える。
【0031】
インターフェース部110は、コンピュータシステム100の外部と情報のやり取りを行う。コンピュータシステム100のプロセッサ部120は、インターフェース部110を介して、コンピュータシステム100の外部から情報を受信することが可能であり、コンピュータシステム100の外部に情報を送信することが可能である。インターフェース部110は、任意の形式で情報のやり取りを行うことができる。
【0032】
インターフェース部110は、例えば、コンピュータシステム100に情報を入力することを可能にする入力部を備える。入力部が、どのような態様でコンピュータシステム100に情報を入力することを可能にするかは問わない。例えば、入力部がタッチパネルである場合には、ユーザがタッチパネルにタッチすることによって情報を入力するようにしてもよい。あるいは、入力部がマウスである場合には、ユーザがマウスを操作することによって情報を入力するようにしてもよい。あるいは、入力部がキーボードである場合には、ユーザがキーボードのキーを押下することによって情報を入力するようにしてもよい。あるいは、入力部がマイクである場合には、ユーザがマイクに音声を入力することによって情報を入力するようにしてもよい。あるいは、入力部がカメラである場合には、カメラが撮像した情報を入力するようにしてもよい。あるいは、入力部がデータ読み取り装置である場合には、コンピュータシステム100に接続された記憶媒体から情報を読み取ることによって情報を入力するようにしてもよい。あるいは、入力部が受信器である場合、受信器がネットワーク400を介してコンピュータシステム100の外部から情報を受信することにより入力してもよい。
【0033】
インターフェース部110は、例えば、コンピュータシステム100から情報を出力することを可能にする出力部を備える。出力部が、どのような態様でコンピュータシステム100から情報を出力することを可能にするかは問わない。例えば、出力部が表示画面である場合、表示画面に情報を出力するようにしてもよい。あるいは、出力部がスピーカである場合には、スピーカからの音声によって情報を出力するようにしてもよい。あるいは、出力部がデータ書き込み装置である場合、コンピュータシステム100に接続された記憶媒体に情報を書き込むことによって情報を出力するようにしてもよい。あるいは、出力部が送信器である場合、送信器がネットワーク400を介してコンピュータシステム100の外部に情報を送信することにより出力してもよい。この場合、ネットワークの種類は問わない。例えば、送信器は、インターネットを介して情報を送信してもよいし、LANを介して情報を送信してもよい。
【0034】
プロセッサ部120は、コンピュータシステム100の処理を実行し、かつ、コンピュータシステム100全体の動作を制御する。プロセッサ部120は、メモリ部150に格納されているプログラムを読み出し、そのプログラムを実行する。これにより、コンピュータシステム100を所望のステップを実行するシステムとして機能させることが可能である。プロセッサ部120は、単一のプロセッサによって実装されてもよいし、複数のプロセッサによって実装されてもよい。
【0035】
メモリ部150は、コンピュータシステム100の処理を実行するために必要とされるプログラムやそのプログラムの実行に必要とされるデータ等を格納する。メモリ部150は、健康度ポジショニングマップを作成するための処理をプロセッサ部120に行わせるためのプログラム(例えば、後述する
図5A、
図5Bに示される処理を実現するプログラム)、健康関数を作成するための処理をプロセッサ部130に行わせるためのプログラム(例えば、後述する
図6に示される処理を実現するプログラム)、ユーザの健康度を推定するための処理をプロセッサ部140に行わせるためのプログラム(例えば、後述する
図7A、
図7Bに示される処理を実現するプログラム)、を格納してもよい。ここで、プログラムをどのようにしてメモリ部150に格納するかは問わない。例えば、プログラムは、メモリ部150にプリインストールされていてもよい。あるいは、プログラムは、ネットワークを経由してダウンロードされることによってメモリ部150にインストールされるようにしてもよい。この場合、ネットワークの種類は問わない。メモリ部150は、任意の記憶手段によって実装され得る。
【0036】
データベース部200には、例えば、複数の被験者から得られたデータが格納され得る。また、データベース部200には、例えば、コンピュータシステム100によって生成された健康度ポジショニングマップのデータが格納され得る。また、データベース部200には、例えば、コンピュータシステム100によって生成された健康関数が格納され得る。
【0037】
図3Aは、一実施形態におけるプロセッサ部120の構成の一例を示す。プロセッサ部120は、健康度ポジショニングマップを作成する処理のための構成を有し得る。
【0038】
プロセッサ部120は、取得手段121と、処理手段122と、マッピング手段123と、クラスタリング手段124と、特徴付け手段125とを備える。
【0039】
取得手段121は、複数の被験者の各々について、後述する第1パラメータセットに対する第1データセットを取得するように構成されている。例えば、取得手段121は、被験者1人当たりに複数の項目(例えば、或る実施形態では、232項目、)のデータセットを取得する。第1パラメータセットは、例えば、初期パラメータセットのデータセットを取得し、初期パラメータセットのデータセットの各データ間の相関を取り、相関係数が所定の閾値以上のパラメータを抽出することによって得られたパラメータセットであってもよい。このとき、抽出されるパラメータセットには、後述する基本4パラメータを含むように抽出されることができる。
【0040】
取得手段121は、例えば、データベース部200に格納された複数の被験者についてのデータを、インターフェース部110を介して受信し、受信されたデータを取得することができる。取得手段121は、例えば、データベース部200に格納された複数の被験者についてのデータを、検査施設(例えば、病院、研究所等)のコンピュータシステムからインターフェース部110を介して受信し、受信されたデータを取得することができる。取得された第1データセットは、後続の処理のために、処理手段122に渡される。
【0041】
データベース部200には、第1パラメータセットに対する第1データセットが格納され得る。
【0042】
図4は、データベース部200に格納される第1データセットのデータ構成の一例を示す。
【0043】
データベース部200には、複数の被験者の各々について、第1パラメータセットに対する第1データセットが格納されている。複数の被験者の各々には、IDが付与されている。例えば、データベース部200には、年齢、筋肉量、BMI、脂肪率、超音波伝導速度、骨粗鬆症指数・・・等の第1パラメータセットの各パラメータの値のセット(第1データセット)が格納されている。
【0044】
再び
図3Aを参照すると、一実施形態において、取得手段121はさらに、作成された健康度ポジショニングマップに含まれる複数の領域のうちの一部の領域に含まれる第1データを、サブ第1データとして取得するように構成されてもよい。あるいは、取得手段121は、後述するクラスタリング手段124によって特定された複数の領域のうちの一部の領域に含まれる第1データを、サブ第1データとして取得するように構成されてもよい。取得手段121は、例えば、健康度ポジショニングマップ作成者によって選択された領域内の第1データを取得することができる。健康度ポジショニングマップ作成者は、領域の選択を、インターフェース部110を介してコンピュータシステム100に入力することができる。健康度ポジショニングマップ作成者は、例えば、複数の被験者のうちの特定の集団、例えば、男性被験者集団、女性被験者集団、若年層集団(40歳未満の集団)、中年層集団(40歳以上60歳未満の集団)、老年層集団(60歳以上の集団)等にフォーカスした健康度ポジショニングマップを作成するために、それらの集団が属し得る領域を選択することができる。取得されたサブ第1データは、後続の処理のためにクラスタリング手段124に渡され得る。
【0045】
処理手段122は、取得手段121によって取得された第1データセットを処理するように構成されている。処理手段122は、第1データセットを処理することにより、第1データを出力することができる。
【0046】
処理手段122による処理は、出力される第1データをマッピングすることができる限り、任意の処理を含み得る。男女混合データに基づいてポジショニングマップを作成する場合には、性差の補正を行うことが好ましい。
【0047】
処理手段122による処理は、例えば、次元削減処理を含み得る。次元削減処理は、m次元のデータをn次元のデータに変換する処理であり、ここで、m>nである。次元削減処理は、例えば、多次元尺度構成法(MDS:multi-dimensional scaling)、主成分分析、重回帰分析、主成分分析、または機械学習等を用いて行われ得るが、次元削減処理の手段はこれらに限定されない。次元削減処理は、第1データセットを2次元のデータまたは3次元のデータに削減することが好ましい。2次元のデータまたは3次元のデータを、後述するマッピング手段123によってマッピングすると、2次元空間または3次元空間のマップとなり、視覚的に理解しやすいマップを得ることができるからである。次元削減処理は、多次元尺度構成法を用いて行われ得る。多次元尺度構成法によって得られる第1データを、後述するマッピング手段123によってマッピングすると、視覚的に理解しやすいマップを得ることができるからである。
【0048】
処理手段122による処理は、例えば、標準化処理を含み得る。標準化処理は、第1データセットのパラメータ毎のデータのスケールを揃える処理である。標準化処理は、例えば、Zスコアを算出する処理(平均値が0であり、かつ、標準偏差が1であるようにデータを補正する処理)、Tスコアを算出する処理(平均値が50であり、かつ、標準偏差が10であるようにデータを補正する処理)等であり得る。処理手段122は、第1パラメータセットのうちのすべてのパラメータについて、第1データセットのデータの標準化処理を行うようにしてもよいし、特定のパラメータについて、第1データセットのデータの標準化処理を行うようにしてもよい。
【0049】
処理手段122は、複数の被験者の全体の第1データセットについて、標準化処理を行うようにしてもよいし、複数の被験者のうちの特定の母集団の第1データセットについて、標準化処理を行うようにしてもよい。複数の被験者のうちの特定の母集団は、例えば、男性被験者集団、女性被験者集団、若年層集団(40歳未満の集団)、中年層集団(40歳以上60歳未満の集団)、老年層集団(60歳以上の集団)等を含むがこれらに限定されない。処理手段122は、複数の被験者から任意の母集団を形成し、その母集団の第1データセットについて、標準化処理を行うことができる。
【0050】
例えば、処理手段122は、複数の被験者からの第1データセットを、男性被験者のデータセットと、女性被験者のデータセットとに分類し、男性被験者のデータセットを標準化することにより、男性被験者集団についての標準化処理を行うことができ、あるいは、女性被験者のデータセットを標準化することにより、女性被験者集団についての標準化処理を行うことができ、あるいは、これらの両方を行うことができる。このように、男性被験者集団および/または女性被験者集団について標準化処理を行うことは、第1のパラメータセットのうち男女差があるパラメータ(例えば、血液中の中性脂肪濃度等)に対して好ましく、第1のパラメータセットのうち男女差が顕著なパラメータ(例えば、血液中の赤血球数等)に対してより好ましい。これにより、男女差がなくなり、男女差による偏りのない健康度ポジショニングマップを作成することができるようになるからである。
【0051】
処理手段122による処理は、例えば、重み付け処理を含み得る。重み付け処理は、第1データセットのうちの少なくとも一部のデータに重みを付ける処理である。例えば、第1データセットのうちの少なくとも一部のデータに所定数を加算して重みを付けるようにしてもよいし、第1データセットのうちの少なくとも一部のデータに所定数を乗算して重みを付けるようにしてもよい。加算または乗算される所定数は、重み付け処理されるデータ毎に一定であってもよいし、異ならせてもよい。例えば、後述する導出手段133によって導出される健康関数に対する影響が大きいデータに対して、大きくまたは小さく重みを付けるように所定数を変動させることができる。あるいは、例えば、後述する導出手段133によって導出される健康関数に対する影響が小さいデータに対して、大きくまたは小さく重みを付けるように所定数を変動させることができる。
【0052】
処理手段122は、複数の被験者の全体の第1データセットについて、重み付け処理を行うようにしてもよいし、複数の被験者のうちの特定の母集団の第1データセットについて、重み付け処理を行うようにしてもよい。処理手段122は、複数の被験者から任意の母集団を形成し、その母集団の第1データセットについて、重み付け処理を行うことができる。重み付け処理が行われる母集団は、上述した標準化処理が行われる母集団と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0053】
マッピング手段123は、複数の被験者の各々について、処理手段122の出力である第1データをマッピングするように構成されている。マッピング手段123によるマッピングは、n次元の第1データをn次元空間上の位置に関連付ける処理である。マッピング手段123は、第1データをマッピングすることにより、複数の被験者の各々の第1データがマッピングされたマップを出力することができる。例えば、第1データが2次元である場合には、マッピング手段123は、第1データを、2次元空間、すなわち、平面上の位置に関連付けるように、第1データをマッピングすることにより、2次元マップを出力することができる。
図8は、マッピング手段123によるマッピング結果の一例を示す図である。
図8に示すように、マッピング手段123は、複数の被験者について、処理手段122によって得られた第1データによって定められる点を、2次元空間(多次元空間)にプロットすることによりマップを出力する。マッピング手段123は、例えば、n次元の第1データをn個の軸を有するレーダーチャート上にマッピングすることにより、複数の被験者の各々の第1データがマッピングされたマップ(レーダーチャート)を出力するようにしてもよい。
【0054】
クラスタリング手段124は、マッピング手段123によってマッピングされた第1データをクラスタリングするように構成されている。クラスタリング手段124によるクラスタリングは、マッピングされた第1データを複数のクラスターに区分し、複数のクラスターが属するそれぞれの領域を特定する処理である。本明細書において、「領域」は、n次元空間内の或る範囲のことをいい、n次元の広がりを有する。クラスタリング手段124は、マッピングされた第1データを任意の個数のクラスターに区分することができる。例えば、クラスタリング手段124は、マッピングされた第1データを少なくとも3個のクラスターに区分することが好ましい。3個のクラスター(例えば、
図1Bに示されるような、健康度良好、健康度普通、健康度悪い等のクラスター)を用いることにより、ユーザが直感的に理解できるような健康度ポジショニングマップを作成することができるからである。マッピングされた第1データが区分されるクラスターの数は、複数の被験者のN数に依存するようにしてもよい。
図8に示す例では、クラスタリング手段124は、マッピング手段123によってマッピングされた第1データを4つのクラスターに分類している。クラスタリング手段124は、任意の公知の手法を用いて、データをクラスタリングすることができる。例えば、クラスタリング手段124は、非階層クラスタリング法(例えば、k平均法、k平均++法、PAM法等)を用いて、データを複数のクラスターに区分することができる。クラスタリング手段124は、好ましくは、k平均法を用いてデータを複数のクラスターに区分し得る。k平均法を用いたクラスタリングの結果は、他の手法によるクラスタリングの結果に比べて、被験者集団の傾向をよく反映しており、含まれる情報がリッチであったからである。クラスタリング手段124は、例えば、複数のクラスターのそれぞれを区分する境界を画定することによって、複数の領域を特定することができる。境界を画定することは、任意の公知の処理を用いて行われることができる。例えば、上述したレーダーチャートの例では、クラスタリング手段124は、単に、各軸の値を他の軸の値と区分し、複数の軸を複数の領域として特定することができる。
【0055】
一実施形態において、クラスタリング手段124はさらに、取得手段121によって取得されたサブ第1データをクラスタリングするように構成され得る。クラスタリング手段124は、サブ第1データを複数のクラスターに区分し、複数のクラスターが属するそれぞれの領域を特定することができる。クラスタリング手段124は、サブ第1データを任意の個数のクラスターに区分することができる。
【0056】
特徴付け手段125は、クラスタリング手段124によって特定された複数の領域のうちの少なくとも一部を特徴付けるように構成されている。特徴付け手段125は、例えば、健康度ポジショニングマップ作成者によってインターフェース部110を介してコンピュータシステム100に入力された情報に基づいて、複数の領域のうちの少なくとも一部を特徴付けるようにしてもよい。例えば、健康度ポジショニングマップ作成者は、複数の領域のそれぞれに含まれる第1データに対応する被験者の特徴を分析し、分析結果に基づいて、その領域が特徴付けられるべき情報を入力することができる。あるいは、特徴付け手段125は、健康度ポジショニングマップ作成者による入力に依らずに、複数の領域のうちの少なくとも一部を特徴付けるようにしてもよい。例えば、特徴付け手段125は、健康度ポジショニングマップにおける相対位置に基づいて、複数の領域のうちの少なくとも一部を特徴付けてもよいし、機械学習に基づいて、複数の領域のうちの少なくとも一部を特徴付けてもよい。
【0057】
このようにして、複数の領域のうちの少なくとも一部が特徴付けられた健康度ポジショニングマップが作成される。一実施形態において、サブ第1データをクラスタリングすることによって特定された複数の領域のうちの一部が特徴付けられた場合の健康度ポジショニングマップは、複数の被験者のうちの一部の被験者についての健康度ポジショニングマップとなる。
【0058】
プロセッサ部120によって作成された健康度ポジショニングマップは、例えば、インターフェース部110を介してコンピュータシステム100の外部に出力される。健康度ポジショニングマップは、例えば、インターフェース部110を介してデータベース部200に送信され、データベース部200に格納されてもよい。あるいは、健康関数作成のために、後述するプロセッサ部130に送信されてもよい。後述するように、プロセッサ部130は、プロセッサ部120と同じコンピュータシステム100の構成要素であってもよいし、別のコンピュータシステムの構成要素であってもよい。
【0059】
図3Bは、別の実施形態におけるプロセッサ部130の構成の一例を示す。プロセッサ部130は、健康度ポジショニングマップ上に被験者の健康度をマッピングするための健康関数を作成する処理のための構成を有し得る。プロセッサ部130は、上述したプロセッサ部120の代替としてコンピュータシステム100が備えるプロセッサ部であってもよいし、プロセッサ部120に加えてコンピュータシステム100が備えるプロセッサ部であってもよい。プロセッサ部130がプロセッサ部120に加えてコンピュータシステム100が備えるプロセッサ部である場合には、プロセッサ部120およびプロセッサ部130は、同一のプロセッサによって実装されてもよいし、異なるプロセッサによって実装されてもよい。
【0060】
プロセッサ部130は、第1取得手段131と、第2取得手段132と、導出手段133とを備える。
【0061】
第1取得手段131は、健康度ポジショニングマップを取得するように構成されている。取得される健康度ポジショニングマップは、第1パラメータセットを用いて作成されている限り、上述したプロセッサ部120によって作成された健康度ポジショニングマップであってもよいし、別様に作成された健康度ポジショニングマップであってもよい。取得された健康度ポジショニングマップは、後続の処理のために、導出手段133に渡される。
【0062】
第2取得手段132は、複数の被験者のうちの少なくとも一部について、後述する第2パラメータセットに対する第2データセットを取得するように構成されている。第2パラメータセットは、第1パラメータセットの一部である。第2取得手段132は、例えば、データベース部200に格納された複数の被験者の一部についてのデータを、インターフェース部110を介して取得することができる。取得された第2データセットは、後続の処理のために、導出手段133に渡される。
【0063】
導出手段133は、第2取得手段132によって取得された第2データセットと、第1取得手段131によって取得された健康度ポジショニングマップ上の位置とを相関させる健康関数を導出するように構成されている。導出手段133は、例えば、機械学習、決定木分析、ランダムフォレスト回帰、重回帰分析、主成分解析等によって健康関数を導出することができる。健康関数は、例えば、n次元の健康度ポジショニングマップの軸毎に導出され得る。例えば、健康度ポジショニングマップが2次元である場合には、第2データセットと、健康度ポジショニングマップ上のX座標とを相関させる健康関数Xと、2データセットと、健康度ポジショニングマップ上のY座標とを相関させる健康関数Yとを導出することができる。導出手段133は、例えば、健康関数の変数の数を任意に増減させ、同定の精度を有する複数の健康関数、すなわち、健康関数群(以降では、複数パターン健康関数群とも呼称する)を作成してもよい。例えば、導出手段133は、互いに、同程度の精度を持つ、(1)血液検査項目のデータと、他の項目のデータとを変数とする健康関数、並びに、(2)血液検査項目のデータのみを変数とする健康関数を作成してもよい。また、導出手段133は、複数パターン健康関数群として、血液検査項目のデータ以外の項目のデータ群から選択されるデータを変数とする健康関数群を作成してもよい。
【0064】
健康関数は、例えば、回帰モデルであり得る。回帰モデルは、線形回帰モデルであってもよいし、非線形回帰モデルであってもよい。導出手段133は、複数の被験者のうちの少なくとも一部の各被験者について、第2データセットを独立変数とし、その被験者の健康度ポジショニングマップ上の座標を従属変数として機械学習することにより、回帰モデルの各係数を導出することができる。このような機械学習済の回帰モデルの独立変数に被験者から得られた第2データセットを入力すると、その被験者の健康度ポジショニングマップ上の座標が出力される。出力された座標を用いて、その被験者の健康度を健康度ポジショニングマップ上にマッピングすることができる。
【0065】
健康関数は、例えば、ニューラルネットワークモデルであり得る。ニューラルネットワークモデルは、入力層と、少なくとも1つの隠れ層と、出力層とを有する。ニューラルネットワークモデルの入力層のノード数は、入力されるデータの次元数に対応する。すなわち、入力数のノード数は、第2パラメータセットのパラメータ数に対応している。ニューラルネットワークモデルの隠れ層は、任意の数のノードを含むことができる。ニューラルネットワークモデルの出力層のノード数は、出力されるデータの次元数に対応する。すなわち、ニューラルネットワークモデルから健康度ポジショニングマップ上のX座標を出力する場合には、出力層のノード数は1となる。例えば、ニューラルネットワークモデルからn次元の健康度ポジショニングマップ上のn個の座標を出力する場合には、出力層のノード数はnとなる。導出手段133は、複数の被験者のうちの少なくとも一部の各被験者について、第2データセットを入力用教師データとし、その被験者の健康度ポジショニングマップ上の位置を出力用教師データとして機械学習することにより、各ノードの重み係数を導出することができる。
【0066】
例えば、機械学習のための(入力用教師データ,出力用教師データ)の組は、(第1の被験者についての第2パラメータセットに対する第2データセット,第1の被験者の健康度ポジショニングマップ上の座標)、(第2の被験者についての第2パラメータセットに対する第2データセット,第2の被験者の健康度ポジショニングマップ上の座標)、・・・(第iの被験者についての第2パラメータセットに対する第2データセット,第iの被験者の健康度ポジショニングマップ上の座標)、・・・等であり得る。このような機械学習済のニューラルネットワークモデルの入力層に被験者から得られた第2データセットを入力すると、その被験者の健康度ポジショニングマップ上の座標が出力層に出力される。出力された座標を用いて、その被験者の健康度を健康度ポジショニングマップ上にマッピングすることができる。
【0067】
プロセッサ部130によって作成された健康関数は、例えば、インターフェース部110を介してコンピュータシステム100の外部に出力される。健康関数は、例えば、インターフェース部110を介してデータベース部200に送信され、データベース部200に格納されてもよい。あるいは、ユーザの健康度を推定する処理のために、後述するプロセッサ部140に送信されてもよい。後述するように、プロセッサ部140は、プロセッサ部130と同じコンピュータシステム100の構成要素であってもよいし、別のコンピュータシステムの構成要素であってもよい。
【0068】
図3Cは、さらに別の実施形態におけるプロセッサ部140の構成の一例を示す。プロセッサ部140は、ユーザの健康度を推定する処理のための構成を有し得る。プロセッサ部140による処理では、ユーザの健康度が健康度ポジショニングマップ上のどの領域に位置するかを推定することにより、ユーザの健康度を推定することができる。プロセッサ部140は、上述したプロセッサ部120およびプロセッサ部130の代替としてコンピュータシステム100が備えるプロセッサ部であってもよいし、上述したプロセッサ部120および/またはプロセッサ部130に加えてコンピュータシステム100が備えるプロセッサ部であってもよい。プロセッサ部140がプロセッサ部120および/またはプロセッサ部130に加えてコンピュータシステム100が備えるプロセッサ部である場合には、プロセッサ部120、プロセッサ部130、およびプロセッサ部140は、すべてが同一のプロセッサによって実装されてもよいし、すべてが異なるプロセッサによって実装されてもよいし、プロセッサ部120、プロセッサ部130、およびプロセッサ部140のうちの2つが同一のプロセッサによって実装されてもよい。
【0069】
プロセッサ部140は、第3取得手段141と、第4取得手段142と、出力生成手段143と、出力マッピング手段144とを備える。
【0070】
第3取得手段141は、健康関数を取得するように構成されている。健康関数は、上述した第2パラメータセットに対するデータセットと、健康度ポジショニングマップ上の位置とを相関させる関数である。取得される健康関数は、ユーザデータセットと健康度ポジショニングマップ上の位置とを相関させることができる限り、上述したプロセッサ部130によって作成された健康関数であってもよいし、別様に作成された健康関数であってもよい。健康度ポジショニングマップは、第1パラメータセットを用いて作成されている限り、上述したプロセッサ部120によって作成された健康度ポジショニングマップであってもよいし、別様に作成された健康度ポジショニングマップであってもよい。取得された健康関数は、後続の処理のために、出力生成手段143に渡される。
【0071】
第4取得手段142は、ユーザの第2パラメータセットに対するユーザデータセットを取得するように構成されている。第4取得手段142は、例えば、データベース部200に格納されたユーザデータセットを、インターフェース部110を介して取得することができる。あるいは、第4取得手段142は、例えば、ユーザデータセットを、ユーザの端末装置からインターフェース部110を介して取得することができる。取得されたユーザデータセットは、後続の処理のために、出力生成手段143に渡される。
【0072】
出力生成手段143は、健康関数から出力を生成するように構成されている。出力生成手段143は、第4取得手段142によって取得されたユーザデータセットを、第3取得手段141によって取得された健康関数に入力することにより、健康関数から出力を生成する。
【0073】
例えば、健康関数が上述したような回帰モデルである場合、ユーザデータセットを回帰モデルの独立変数に入力することにより、健康度ポジショニングマップ上の座標が出力される。
【0074】
例えば、健康関数が上述したようなニューラルネットワークモデルである場合、ユーザデータセットをニューラルネットワークモデルの入力層に入力することにより、健康度ポジショニングマップ上の座標が出力される。
【0075】
出力マッピング手段144は、出力生成手段143によって生成された出力を健康度ポジショニングマップ上にマッピングするように構成されている。出力生成手段143によって生成された出力が座標であるため、出力マッピング手段144は、健康度ポジショニングマップのn次元空間内にその座標をマッピングすることができる。
【0076】
プロセッサ部140によって健康度ポジショニングマップ上にマッピングされた出力は、例えば、インターフェース部110を介してコンピュータシステム100の外部に出力される。出力は、例えば、インターフェース部110を介してユーザの端末装置に送信され得る。
【0077】
なお、上述したコンピュータシステム100の各構成要素は、単一のハードウェア部品で構成されていてもよいし、複数のハードウェア部品で構成されていてもよい。複数のハードウェア部品で構成される場合は、各ハードウェア部品が接続される態様は問わない。各ハードウェア部品は、無線で接続されてもよいし、有線で接続されてもよい。本発明のコンピュータシステム100は、特定のハードウェア構成には限定されない。プロセッサ部120、130、140をデジタル回路ではなくアナログ回路によって構成することも本発明の範囲内である。本発明のコンピュータシステム100の構成は、その機能を実現できる限りにおいて上述したものに限定されない。
【0078】
図3Dは、一実施形態におけるコンピュータシステム100によるデータフロー1の一例を示す図である。
図3Dに示すように、データフロー1は、データ取得ステップ10と、データ処理ステップ20と、健康評価マップ作成ステップ30と、クラスタリングマップ作成ステップ40と、健康関数値算出ステップ50と、ポジショニングマップ作成ステップ60と、出力ステップ70とを含む。例えば、データ取得ステップ10、データ処理ステップ20、健康評価マップ作成ステップ30、クラスタリングマップ作成ステップ40は、健康度ポジショニングマップ作成装置としての機能を有し、例えば、上述したプロセッサ部120を備えるコンピュータシステム100によって実装され得る。また、データ取得ステップ10、および健康関数値算出ステップ50は、健康関数値算出装置としての機能を有し、例えば、上述したプロセッサ部140を備えるコンピュータシステム100によって実装され得る。出力ステップ70では、データ処理ステップ20、健康評価マップ作成ステップ30、クラスタリングマップ作成ステップ40、健康関数値算出ステップ50、またはポジショニングマップ作成ステップ60において生成されたデータを出力し、例えば、表示装置(例えば、液晶ディスプレイ)によって出力される。
【0079】
データ取得ステップ10で取得されたデータセットは、データ処理ステップ20に送られる。
【0080】
データ処理ステップ20は、例えば、
図3Dに示すように、補正21、および次元削減22を行う。データ処理ステップ20は、例えば、上述したプロセッサ部120の処理手段122によって実装され得る。
【0081】
補正21は、データ取得ステップ10で取得されたデータを補正することである。具体的には、補正21は、例えば、データ取得ステップ10で取得されたデータの値が所定の範囲の値(例えば、平均値が0であり、かつ、標準偏差が1)となるように、データ取得ステップ10で取得された各データを補正する。補正されたデータは、次元削減22に送られる。
【0082】
次元削減22は、データ取得ステップ10または補正ステップ21から渡された複数のデータの次元を削減する。具体的には、次元削減22は、重回帰分析、多次元尺度法、主成分分析、または機械学習を用いて、データ取得ステップ10または補正ステップ21から渡された複数のデータ(多次元データ)の次元を任意の次元(本実施形態では、2次元)にする。次元削減されたデータは、例えば、関数の形式であってもよい。例えば、この関数は、健康に関する指標を算出するための関数である。関数は、例えば、第1データに含まれる一部またはすべてのデータを変数とする関数であり、様々な病気の因子のうち特に影響が大きいデータに対してより大きな重みづけを行うことにより作成される関数である。本実施形態における関数は、第1データに含まれる一部またはすべてのデータを線形または非線形モデルを用いて作成される。一実施形態において、2次元の関数(本実施形態では、横軸の関数X(以降では、第1関数と呼称する)、および、縦軸の関数Y(以降では、第2関数と呼称する)によって構成される)が作成される。作成された関数は、健康評価マップ作成ステップ30および出力ステップ70に渡される。
【0083】
本実施形態では、次元削減22は、上述したように、多次元データを2次元まで下げることにより2次元の関数を作成する。第1関数および第2関数は、データ取得ステップ10または補正ステップ21から渡された複数のデータの全部または一部を変数とする関数であり、重回帰分析、多次元尺度法、主成分分析、または機械学習で算出された関数である。本発明では、「機械学習」は、深層学習を含む機械学習、または、深層学習を含まない機械学習のいずれかを意味する。第1関数と第2関数とは、構成する変数が完全に同一または完全に異なっていてもよいし、一部の変数が互いに重複していてもよい。
【0084】
健康評価マップ作成ステップ30は、例えば、上述したプロセッサ部120のマッピング手段123によって実装され得る。健康評価マップ作成ステップ30では、例えば、データ処理ステップ20によって処理されたデータを用いて、より具体的には、次元削減によって作成された関数を用いて、健康を評価するマップ(以降では、健康評価マップと呼称する)が作成される。本実施形態では、関数が2次元であるため、健康評価マップは、2次元のマップとなる。
図8は、健康評価マップの一例を示す図である。
図8に示すように、健康評価マップ作成ステップ30では、複数の被験者について、第1関数および第2関数によって定められる点を、2次元空間(多次元空間)にプロットすることにより健康評価マップが作成される。
【0085】
クラスタリングマップ作成ステップ40は、例えば、上述したプロセッサ部120のクラスタリング手段124および特徴付け手段125によって実装され得る。クラスタリングマップ作成ステップ40では、例えば、健康評価マップ作成ステップ30で作成された健康評価マップにプロットされた複数の点をいくつかのクラスターにクラスタリングし、複数の領域を特徴付けたマップ(以降では、健康度ポジショニングマップと呼称する)が作成される。本実施形態におけるクラスタリングマップ作成ステップ40では、非階層クラスタリング法(本実施形態では、k平均法)を用いて、プロットされた複数の点を任意の数のクラスターにクラスタリングする。
図8に示す例では、4つのクラスターに分類している。この4つの領域の少なくとも1つを健康に関する情報で特徴付けることによって、健康度ポジショニングマップが作成される。
【0086】
作成された健康度ポジショニングマップは、出力ステップ70において出力されてもよいし、健康関数値算出ステップ50に渡されてもよいし、健康予測ポジショニングマップ作成ステップ60に渡されてもよい。
【0087】
健康関数値算出ステップ50および健康予測ポジショニングマップ作成ステップ60は、例えば、上述したプロセッサ部130およびプロセッサ部140によって実装され得る。健康関数値算出ステップ50では、まず、健康度ポジショニングマップに基づいて、健康関数が作成される。なお、健康関数の変数の数を任意に増減させ、同定の精度を有する複数の健康関数、すなわち、健康関数群を作成してもよい。次いで、健康関数を作成するために第1データセットを取得した被験者とは異なる被験者の健康関数の値を算出する。具体的には、データ取得ステップ10により取得された対象となる被験者のデータ(新規に取得されたデータ)に対して、作成された健康関数を適用することにより、当該被験者の健康関数の値を算出する。なお、健康関数が多次元関数であるので、健康関数値も当然ながら多次元の値である。
【0088】
健康予測ポジショニングマップ作成ステップ60は、健康関数値算出ステップ50によって算出された被験者の健康関数の値を、健康評価マップ作成ステップ30によって作成された健康評価マップまたは、クラスタリングマップ作成ステップ40によって作成された健康度ポジショニングマップ上にプロットし、健康予測ポジショニングマップを作成する。これにより、新規にデータを測定した被験者の健康状態を予測することができる。
【0089】
また、健康予測ポジショニングマップ作成ステップ60は、単一の被験者について、時間間隔をおいて取得されたデータを用いて健康関数値算出ステップ50で算出された健康関数の値を、上記健康評価マップまたは上記健康度ポジショニングマップ上にプロットし、健康予測ポジショニングマップを作成してもよい。これにより、当該被験者の健康状態の変化の程度を評価することができる。
【0090】
また、新規の被験者から取得したデータは、健康関数をアップデート(更新)するためのデータとしても用いることができる。健康関数値算出ステップ50では、新規の被験者から取得したデータ、または、当該データを用いて補正ステップ21から出力されたデータをさらに用いることにより、健康関数のアップデートを行うことが可能である。これにより、より様々な健康リスクの評価を可能としたり、健康リスク評価の精度を高めたりすることができる。
【0091】
データフロー1の各ステップ(特に、データ処理ステップ20、健康評価マップ作成ステップ30、クラスタリングマップ作成ステップ40、健康関数値算出ステップ50、および健康予測ポジショニングマップ作成ステップ60)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。後者の場合、健康評価装置1は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータを備えている。このコンピュータは、例えば1つ以上のプロセッサを備えていると共に、上記プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えている。そして、上記コンピュータにおいて、上記プロセッサが上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記プロセッサとしては、例えばCPU(Central Processing Unit)を用い
ることができる。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などをさらに備えていてもよい。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0092】
上記のデータフローによれば、様々なデータを用いて健康度ポジショニングマップおよび/または健康関数を作成することができる。すなわち、既存の個別の疾患に関する健康指標ではなく、被験者の健康度を総合的に算出することができる健康度ポジショニングマップおよび/または健康関数を作成することができる。したがって、様々な健康リスクを評価することができる(すなわち、被験者の健康総体の健康度を評価できる)健康度ポジショニングマップおよび/または健康関数を作成することができる。
【0093】
また、データ取得ステップ10で測定した様々なデータを組み合わせることにより健康度ポジショニングマップおよび/または健康関数を柔軟に作製することができる。すなわち、データ取得ステップ10で測定する項目の選定の融通性が非常に高い。
【0094】
また、一実施形態では、第2データセットを入力データとする機械学習によって、健康関数を作成する。これにより、より正確に被験者の健康状態の指標を作製できる健康関数を作成することができる。
【0095】
また、一実施形態では、第1データセットで健康度ポジショニングマップを作成する前に、性別間のデータの補正を行う。これにより、いずれの性別にも対応できる健康度ポジショニングマップを作成することができる。
【0096】
また、本発明の一態様では、第1データが、非侵襲測定によって取得されるデータのみを含む態様であってもよい。上記の構成によれば、血液検査など被験者を傷つけることなく、データを取得することができる。
【0097】
また、一実施形態では、データ処理ステップ20によって作成された関数を用いて健康を評価するマップを作成することができる。具体的には、関数が多次元ベクトルである場合に、複数の被験者について関数によって定められる点を、多次元空間にプロットすることにより健康を評価するマップを作成する。これにより、被験者がどのような健康状態であるかを視覚的に確認することができる。
【0098】
また、一実施形態1では、多次元空間にプロットされた点をクラスタリングする。そしてクラスタリングされた各クラスターに属する被験者のデータを参照することにより、それぞれのクラスターがどのような被験者の集団であるかを特定し、それらのクラスターを特徴付けることができる。その結果、新規に測定された被験者のデータを健康度ポジショニングマップマップ上にプロットすることによって、測定した被験者の健康状態を予測することができるようになる。
【0099】
図2に示される例では、データベース部200は、コンピュータシステム100の外部に設けられているが、本発明はこれに限定されない。データベース部200の少なくとも一部をコンピュータシステム100の内部に設けることも可能である。このとき、データベース部200の少なくとも一部は、メモリ部150を実装する記憶手段と同一の記憶手段によって実装されてもよいし、メモリ部150を実装する記憶手段とは別の記憶手段によって実装されてもよい。いずれにせよ、データベース部200の少なくとも一部は、コンピュータシステム100のための格納部として構成される。データベース部200の構成は、特定のハードウェア構成に限定されない。例えば、データベース部200は、単一のハードウェア部品で構成されてもよいし、複数のハードウェア部品で構成されてもよい。例えば、データベース部200は、コンピュータシステム100の外付けハードディスク装置として構成されてもよいし、ネットワーク400を介して接続されるクラウド上のストレージとして構成されてもよい。
【0100】
3.第1パラメータセット
本発明者らは、対象者の総合的な健康度を評価するために、健康脆弱化および慢性疲労に共通する生理学的または生化学的メカニズムに着目した。理論に拘束されることを意図しないが、これまでの疲労医学研究および健康脆弱化追跡研究に基づくと、疲労~慢性疲労、健康脆弱化、老化、および疾患発症には共通のメカニズムが存在し得る。それは、
(1)生体酸化の進行と抗酸化能の低下を示す「生体酸化(さび付き)」、
(2)上記の生体酸化の解除が遅延することを示す「修復エネルギー低下」、
(3)酸化(さび付き)細胞が検知されていることを示す「炎症」、および
(4)上記の(1)~(3)を感知し、調整する機能を示す「自律神経機能」
である。この(1)~(4)のパラメータを総合的に評価することにより、疾患に至っていない健康脆弱化状態(すなわち、「未病」)を判定することが可能になる。
【0101】
上記の理論に基づき、代表的な実施形態においては、本発明における第1データセットを得るための第1パラメータセットは、「生体酸化パラメータ」、「修復エネルギー低下パラメータ」、「炎症パラメータ」および「自律神経機能パラメータ」を含み得る。本明細書中では以下、(1)「生体酸化パラメータ」、(2)「修復エネルギー低下パラメータ」、(3)「炎症パラメータ」、および(4)「自律神経機能パラメータ」の4つのパラメータを合わせて、基本4パラメータと称することがある。
【0102】
(生体酸化パラメータ)
活性酸素種(Reactive Oxygen Species:ROS)は、生体内においてDNA、脂質、蛋白質、酵素などの細胞を構成する多くの生体高分子を酸化変性し、細胞機能に障害を与える。活性酸素種による酸化変性は、様々な疾患や老化につながると考えられている。
【0103】
他方、生体内には、活性酸素種による細胞機能障害を防ぐために、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)やカタラーゼなどの抗酸化酵素や、コエンザイムQ10、ビタミンC、ビタミンEなどの抗酸化物質が存在している。
【0104】
したがって、本発明における「生体酸化パラメータ」の測定は、活性酸素種による酸化損傷の測定、抗酸化能の測定、または酸化損傷と抗酸化能のバランスの測定を含み得る。活性酸素種による酸化損傷の測定は、活性酸素種の量を直接測定することによって行われてもよいし、タンパク質、脂質または核酸の酸化損傷を測定することによって行われてもよい。
【0105】
酸化損傷の測定方法は当該分野では周知であり、当業者は適宜測定対象を選択し、測定することが可能である。本発明において、活性酸素種による酸化損傷の指標とする具体的なマーカーは、例えば、血液中の活性酸素種量を直接測定するd-ROMs(Derivatives of Reactive Oxygen Metabolites)、タンパク質の酸化損傷の指標であるカルボニル化タンパク質量(PCC;Protein Carbonyl Content)、脂質の酸化損傷の指標である4-ヒドロキシノネナールやイソプラスタン、核酸の酸化損傷の指標である8-OHdG(8-ヒドロキシーデオキシグアノシン)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0106】
抗酸化能の測定方法は当該分野では周知であり、当業者は適宜測定対象を選択し、測定することが可能である。本発明において、抗酸化能の指標とする具体的なマーカーは、鉄への還元力を数値化したBAP(Biological Antioxidant Potential)、血清チオールステータス、グルタチオン測定、ビタミンC量測定、コエンザイムQ10総量、コエンザイムQ10還元型比率などが挙げられるが、これらに限定されない。コエンザイムQ10総量やコエンザイムQ10還元型比率は、例えば、LC-MS/MSを用いて測定することができる(具体的には、例えば、多重反応モニタリングにより検出する還元型および酸化型コエンザイムQ10の濃度から算出し得る。)。
【0107】
本発明において、酸化損傷と抗酸化能のバランスの指標となるマーカーは、OSI(酸化ストレス指標;Oxidation Stress Index)であるが、これに限定されない。なお、本発明におけるOSIは、d-ROMs/BAPである。
【0108】
本発明における好ましい生体酸化パラメータは、BAP、コエンザイムQ10総量、コエンザイムQ10還元型比率、OSIを含む。
【0109】
典型的には、生体酸化パラメータは、非侵襲性検査によって測定され得るパラメータである。
【0110】
(修復エネルギー低下パラメータ)
生体組織が酸化による損傷を受けたとしても、生体はその損傷した組織を修復する機構を備えている。生体における組織損傷には、ATPが必要である。しかしながら、ATP産生が低下すると、損傷した組織の修復が遅延することになる。ATP産生の低下は、疲労回復遅延にもつながる。本発明における「修復エネルギー低下パラメータ」は、ATP産生が低下していることを示す任意のパラメータである。
【0111】
ATPは、解糖系、TCA回路および電子伝達系を経て産生されるが、最後の電子伝達系において最も多くのATPが産生される。コエンザイムQ10は電子伝達系を担う重要な補酵素である。したがって、本発明における「修復エネルギー低下パラメータ」は、コエンザイムQ10総量、コエンザイムQ10還元型比率や、解糖系・TCA回路の代謝物(例えば、ピルビン酸、乳酸、クエン酸、イソクエン酸、コハク酸、フマル酸,リンゴ酸など)が挙げられるが、これらに限定されない。コエンザイムQ10総量、およびコエンザイムQ10還元型比率は、抗酸化能を有するために「生体酸化パラメータ」であると同時に、ATP産生に寄与するため「修復エネルギー低下パラメータ」でもある点に留意されたい。本発明における好ましい本発明における「修復エネルギー低下パラメータ」は、コエンザイムQ10総量およびコエンザイムQ10還元型比率を含み得る。
【0112】
コエンザイムQ10総量やコエンザイムQ10還元型比率の測定方法は上記のとおりである。解糖系やクエン酸回路の代謝物は、メタボローム解析から、解糖系やクエン酸回路を反映する化合物を抽出することによって測定することができる。
【0113】
典型的には、修復エネルギー低下パラメータは、非侵襲性検査によって測定され得るパラメータである。
【0114】
(炎症パラメータ)
生体において酸化により損傷を受けた組織が多く発生すると、免疫応答によって多量の局所炎症が発生する。炎症パラメータの種類および測定方法は当該分野で周知であり、当業者は適切に炎症パラメータを選択し、測定することができる。
【0115】
本発明における炎症パラメータは、CRP(C-Reactive Protein)、WBC(白血球数)、アルブミン、赤血球数、インターロイキン-1β、インターロイキン-6などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0116】
典型的には、炎症パラメータは、非侵襲性検査によって測定され得るパラメータである。
【0117】
(自律神経機能パラメータ)
健康脆弱化を時系列的に精査すると、まず最初に自律神経機能(特に副交感神経機能)の低下が起こり、次いで、睡眠の質が低下し、次いで疲労が蓄積し、そして意欲低下、抑うつ傾向、アレルギー等の免疫系不調、月経不全などの内分泌系異常、消化器系の異常などが観察される。したがって、自律神経機能の異常は、健康脆弱化の初期段階を把握するための重要なパラメータである。
【0118】
本発明においては、自律神経機能を、心拍パラメータから評価する。具体的には、本発明において使用される心拍パラメータは以下を含むが、これらに限定されない。
・平均HR
5分間の全心拍数の平均値をいう。
・自律神経系全体の活動;TP(Total Power=ms2)
5分間測定における周波数0~0.4Hz(VLF、LF、HF)のパワースペクトルのトータルパワーの計算値。この値は交感神経活動が主に占める自律神経系の活動を総体的に反映し、疲労に関係した数値と言われている。
・交感神経機能の全体的活動;VLF(超低周波 ms2)
約0.0033~0.04Hzの周波数帯のパワースペクトルである。一般的に、このパラメータは交感神経機能の非常にゆっくりとしたメカニズムの全体的活動を示すものと言われている。
・交感神経の活動;LF(低周波 ms2)
約0.004~0.15Hzの周波数帯のパワースペクトルであり、この値は主に(血管運動性)交感神経の活動を反映している。
・副交感神経の活動;HF(高周波 ms2)
約0.15~0.4Hzの周波帯のパワースペクトルであり、この値は副交感神経(迷走神経)の活動を反映している。
・交感神経と副交感神経のバランス;LF/HF比
LF(低周波)とHF(高周波)のパワーの比率であり、この値は、交感神経と副交感神経の全体のバランスを表している。一般的に、数値が高いと交感神経優位を、低い場合は副交感神経優位を示している。
【0119】
自律神経機能を現す上記心拍パラメータは、当該分野で公知の方法で測定し得るが、心電波と指尖脈波とを同時に計測し心拍変動解析を行う正確な方法論によって測定することもできる(特許第5455071号公報、特許第5491749号公報を参照のこと。これらの文献は、参照により本明細書に援用される。)。例えば、心電図と脈波が同時に計測できる簡易型自律神経系計測装置FMCC-VSM301(株式会社疲労科学研究所、大阪、日本)を用いて、本発明の自律神経機能パラメータを測定してもよい。
【0120】
本発明における好ましい「自律神経機能パラメータ」は、平均HR、TP、LF、HF、LF/HFなどであり得るが、これらに限定されない。なお、HFおよびLFの値は分散が大きく、正規分布にならないため、上記パラメータのうちHFやLFが関係するTP、LF、HFおよびLF/HFについては、対数変換をして評価することが好ましい。したがって、本発明におけるより好ましい「自律神経機能パラメータ」は、本発明における好ましい「自律神経機能パラメータ」は、平均HR、ln(TP)、ln(LF)、ln(HF)、およびln(LF/HF)を含む。
【0121】
典型的には、自律神経機能パラメータは、非侵襲性検査によって測定され得るパラメータである。
【0122】
(さらなる第1パラメータセット)
本発明の第1パラメータセットは、より適切に対象者の総合的な健康度を評価するポジショニングマップを作成するために、以下のパラメータの1または複数を含み得る。
【0123】
・基礎的パラメータ
基礎的パラメータとしては、対象者の身体の状態や健康状態を現す公知のパラメータを含む。本発明の基礎的パラメータは、年齢、身長、体重、腹囲、体組成、骨密度、血圧、筋力などを含むが、これらに限定されない。
【0124】
体組成としては、筋肉量、BMI(体重/身長=Body Mass Index)、脂肪率などを含むが、これらに限定されない。
【0125】
骨密度は、手の骨をX線で撮影して写真から測定するMD法、超音波を使って踵の骨を測定する超音波法、CTスキャンを用いたQCT法、X線およびコンピューターを使ったDEXA法(Dual energy X-ray absorptiometry)などの測定方法が知られており、本発明ではそれらのいずれの測定方法で得られたパラメータも使用され得る。
【0126】
本発明における骨密度パラメータは、超音波伝導速度(SOS=Speed of Sound)、骨粗鬆症評価(Osteoporosis Index;例えば、OSIRIS(Osteoporosis Index of Risk))、若年成人比較%(YAM=Young Adult Mean;若年齢の平均BMD(Bone Mineral Density);骨密度=骨量÷面積(単位g/cm2))値(基準値)を100%として、被験者BMD値と比べた%)、Tスコア(若年齢の平均BMD値(基準値)を0として、標準偏差を1SDとして指標を規定した値)などが挙げられるが、これらに限定されない。これらの基礎的パラメータの測定方法は、当該分野で周知である。
【0127】
血圧は、当該分野では慣習的に測定されており、本発明の基礎的パラメータとしては収縮期血圧を使用し得る。
【0128】
筋力は、当該分野では慣習的に測定されており、本発明の基礎的パラメータとしては、筋肉量および握力左右平均を使用し得る。
【0129】
本発明の基礎的パラメータは、好ましくは、年齢、筋肉量、BMI、脂肪率、SOS、OI、収縮期血圧、および握力左右平均を含み得る。
【0130】
基礎的パラメータは、非侵襲性検査によって測定され得るパラメータである。
【0131】
・血液パラメータ
上記の生体酸化パラメータ以外に、対象の腎排泄・肝胆膵・解毒機能系を評価するために、一般的に使用されている血液パラメータが、さらに第1パラメータセットに含まれることが好ましい。
【0132】
この血液パラメータとしては、HbA1c(ヘモグロビンA1c;ヘモグロビンにグルコースが結合した糖化タンパク質)、ALP(アルカリホスファターゼ)、ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)、AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)、BS(血糖値)、BUN(血中尿素窒素)、CK(クレアチンキナーゼ;運動・骨格・筋肉機能系評価に使用し得る血漿中筋肉細胞酵素)、G-GT(ガンマ・グルタミール・トランスペプチターゼ)、HDL-C(HDL-コレステロール)、HGB(ヘモグロビン)、LD(乳酸脱水素酵素)、LDL-C(LDLコレステロール)、TG(トリグリセリド;中性脂肪)、T-P(総タンパク質)、UA(尿酸)、アミラーゼ、アルブミン、カリウム、クレアチニン、クロール、コルチゾル、ナトリウム、eGFR、ビタミン類(例えば、ビタミンB1)、ミネラル(鉄、銅、カルシウムなど)量などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0133】
典型的には、血液パラメータは、侵襲性検査によって測定され得るパラメータである。
【0134】
・認知機能パラメータ
本発明者らの研究によると、疲労が蓄積すると、認知機能が低下する。したがって、本発明の第1パラメータは、認知機能パラメータをさらに含み得る。
【0135】
本発明の認知機能パラメータは、1枚の紙に書かれた1から25までの数字などの指標を順に鉛筆でなぞるという簡易な認知機能検査であるTMT(Trail Making
Test)、タッチパネルにおいてTMTを行うATMT(Advanced Trail Making Test)、本発明者らが開発したmodified ATMT(K.Mizuno e al.Brain & Development 33 (2011) 412-420)などによって得ることができる。TMT、ATMT、modi
fied ATMTは方法論に差異はあるものの、測定する対象は共通しており、それらは全て、本発明の認知機能パラメータである。
【0136】
本発明者らは、modified ATMTとして、例えば、認知機能の種々の要素を評価するための5つの課題を用意しており、これらを単独または組み合わせて使用することができる。また、これらの各認知課題の評価は、総反応時間によって行ってもよいし、総正答数によって行ってもよい。
【0137】
認知機能パラメータは、非侵襲性検査によって測定され得るパラメータである。
【0138】
・血管および皮膚パラメータ
本発明者らの研究によると、疲労が蓄積すると、血管および皮膚に影響が出ることがある。したがって、好ましくは、本発明の第1パラメータセットは、血管および皮膚パラメータも含み得る。
【0139】
血管パラメータは、例えば、血管年齢、毛細血管長平均値、血管濁り、血管本数などが挙げられるがこれらに限定されない。毛細血管長平均値、血管濁り、および血管本数は、好ましくは、手指爪床の毛細血管走行を画像処理することによって簡便に測定することができる。毛細血管走行の画像処理およびこれらのパラメータの測定は、例えば、あっと株式会社(大阪、日本)製の毛細血管スコープによって測定し得る。
皮膚パラメータは、例えば、腕の肌の水分量、水分蒸散量、光沢などが挙げられるが、これらに限定されない。腕の肌の水分量、水分蒸散量、および光沢の測定方法は、当該分野では周知である。
【0140】
血管および皮膚パラメータは、非侵襲性検査によって測定され得るパラメータである。
【0141】
・主観的評価パラメータ
本発明の第1パラメータセットは、上記のような測定によって得られる客観的パラメータに加えて、対象の主観的評価パラメータも含み得る。各種測定値による客観的パラメータに加えて主観的評価をパラメータセットに加えることにより、各種成分の測定からは把握し切れない対象の身体、疲労および精神状態などの状況を健康度ポジショニングマップに反映することができる。
【0142】
1つの実施形態においては、本発明における主観的評価パラメータは、疲労、睡眠、精神状態などの主観的評価を含み得る。
【0143】
疲労の主観的評価は、疲労持続期間の主観的評価、疲労による障害に関する質問、疲労VAS(Visual Analogue Scale)、チャルダー疲労指標(Chalder Farigue Scale;CFQ)、CFQのうち11項目を用いて算出する疲労症状スコア(CFQ11)(Tanaka M et al.,Psychol
Rep_2010,106,2、567-575)、プレゼンティズムに関する質問票またはVAS、および疲労に関する質問票の1または複数を含み得る。「疲労による障害に関する質問」とは、疲労と何らかの障害との因果関係の有無について対象者の主観的評価を確認するものをいう。「疲労による障害に関する質問」とは、例えば、疲労によって仕事、家事または学業に支障があると感じているかどうか、疲労の原因と考えられる疾病の質問などであり得る。「疲労に関する質問票」とは、疲労の任意の症状について自覚があるかどうかを質問するものであり、例えば、倦怠感を感じるかどうか、一晩寝ても疲れが取れないと感じるかどうかなどであり得る。プレゼンティズムの質問票としては、例えばWHOのHealth and Work Performance Questionnaire(HPQ)や、Work Limitations Questionnaire(WLQ)などを使用してもよい。
【0144】
睡眠の主観的評価は、睡眠(入眠および起床)の時刻、平均睡眠時間、眠気に関するVAS、および睡眠の質に関する質問票の1または複数を含み得る。
【0145】
精神状態の主観的評価は、うつに関するVASおよび質問票、意欲に関するVASおよび質問票のうちの1または複数を含み得る。「うつに関する質問票」とは、うつの任意の症状に関する質問をいい、ゆううつだと感じているかどうか、他者との付き合いが億劫に感じているかどうかなどを含み得、例えばK6合計(Kesslerらによって開発された精神的な問題を現すものとして一般的に使用されている指標)が1つの例である。
【0146】
上記において「質問票」は、特定の質問に対する回答で評価してもよいし、多数の質問に対する回答をスコアにして評価してもよい。
【0147】
主観的パラメータは、非侵襲性検査によって測定され得るパラメータである。
【0148】
・生活状況パラメータ
本発明の第1パラメータセットは、客観的パラメータおよび主観的評価パラメータに加えて、生活状況パラメータを含んでもよい。本発明における生活状況パラメータは、対象の生活状況についての事実であり、例えば、教育年数、婚姻期間、同居の有無、喫煙状況(有無、頻度および/または量)、飲酒状況(有無、頻度および/または量)、労働時間、運動(有無、頻度および/または量)、食事状況(食べる頻度が早いと感じるかどうか、夕食後の間食頻度、朝食を取らない頻度、等)、既往歴、服薬状況、サプリメント摂取状況などを含み得る。
【0149】
生活状況パラメータは、非侵襲性検査によって測定され得るパラメータである。
【0150】
・さらなるパラメータ
本発明の第1パラメータセットは、脳機能・精神神経系評価、循環器・呼吸器機能系評価、腎排泄・肝胆膵・解毒機能系評価に関するデータに基づくパラメータを含んでもよい。
【0151】
例えば、脳機能・精神神経系評価に関するデータは、上述したものの他に、コミュニケーション機能、活動量(日中、睡眠中)、MRI(Magnetic Resonance Imaging)による脳形態計測(脳組織の収縮した部位に応じた機能の低下を計測することができる)、安静時fMRI、および、神経線維束走行異方性(神経線維束のサイズや頑強さ)などのデータを含み得る。
【0152】
循環器・呼吸器機能系評価に関するデータは、上述したものの他に、血流量(例えば、ドップラー血流計により測定し得る)、呼気ガス成分分析(NO(ぜんそく)、アセトン(糖尿病)など)などを含み得る。呼気ガス成分分析に関するデータは、質量分析やイオン移動度分析装置で分析することによって測定することができる。
【0153】
腎排泄・肝胆膵・解毒機能系評価に関するデータは、上述したものの他に、皮膚ガス成分分析などのデータを含み得る。皮膚ガス成分分析に関するデータは、質量分析や高感度可変レーザー検出装置によって測定することができる。
【0154】
(好ましい第1パラメータセット)
1つの実施形態において、本発明の第1パラメータセットは、生体酸化パラメータ、修復エネルギー低下パラメータ、炎症パラメータ、および自律神経パラメータ(基本4パラメータ)を含み得る。この基本4パラメータを含む第1パラメータセットについてのデータに基づいて健康度ポジショニングマップを作成することにより、当該健康度ポジショニングマップによって、疾患に至っていない健康脆弱化状態(すなわち、「未病」)を判定することが可能になる。
【0155】
別の実施形態において、本発明の第1パラメータセットは、基本4パラメータ、基礎的パラメータ、認知機能パラメータ、および主観的パラメータを含み得る。理論に束縛されることを意図しないが、基本4パラメータに加えて、基礎的パラメータ、認知機能パラメータおよび主観的パラメータを追加することによって、疲労や精神状態について広範に評価することができると考えられる。好ましくは、主観的パラメータは、疲労、睡眠、および精神状態の1または複数についての評価を含み、より好ましくは、疲労についての評価を少なくとも含む。
【0156】
さらに別の実施形態において、本発明の第1パラメータセットは、基本4パラメータ、基礎的パラメータ、認知機能パラメータ、主観的パラメータ、および血液パラメータを含み得る。理論に束縛されることを意図しないが、基本4パラメータと、疲労や精神状態を評価するための基礎的パラメータ、認知機能パラメータ、主観的パラメータとに加えてさらに、内分泌系の機能を正確に評価できる血液パラメータを第1パラメータセットに追加することによって、さらに異なる観点を含む広範な健康度の評価が可能になる。
【0157】
さらに別の好ましい実施形態において、本発明の第1パラメータセットは、基本4パラメータ、基礎的パラメータ、認知機能パラメータ、主観的パラメータ、血液パラメータ、血管および皮膚パラメータ、および生活状況パラメータを含み得る。
【0158】
本発明の第1パラメータセットは、典型的には、侵襲的パラメータと非侵襲的パラメータとの双方を含む。これによって、後述する第2パラメータセットを非侵襲的パラメータのみで構成する場合にも、評価のベースとなるポジショニングマップには侵襲的パラメータの情報が反映されていることになる。その結果、非侵襲的パラメータのみの検査によって、侵襲性検査によってしか得られないパラメータの影響も含んだ評価を行うことができる。これは、本願発明の1つの顕著な効果である。
【0159】
4.第2パラメータセット
1つの実施形態において、第2パラメータセットは、以下を含むものであり得る。
(1)年齢
(2)脂肪率
(3)中性脂肪(TG)
(4)CRP
(5)OSI
(6)疲労についての主観的評価
(7)自律神経バランス(例えば、LF/HFや、その対数)
(8)認知機能
【0160】
本発明の好ましい実施形態において、第2パラメータセットは、非侵襲的パラメータのみから構成され得る。しかしながら、この第2パラメータセットを評価するためのポジショニングマップは侵襲的パラメータも含んで作成されたものであり得るため、非侵襲的パラメータのみから構成される第2パラメータセットを用いて対象の総合的な健康を評価することによって、侵襲的パラメータの影響をも本質的に含んだ評価を行うことができる。これは本発明の顕著な効果の1つである。また、このような侵襲検査結果を含まないパラメータセットからユーザの健康度を推定することは、ユーザが、検査の場所を問わずに、手軽に自身の健康度を知ることを可能にする。ユーザは、例えば、病院以外にも、会社、薬局、公民館、カフェ、自宅等で簡易な検査から自身の健康度を知ることができるようになる。
【0161】
非侵襲的パラメータのみから構成される第2パラメータセットは、以下を含み得る。
(1)年齢
(2)BMI
(3)脂肪率
(4)SOS
(5)収縮期血圧
(6)疲労についての主観的評価
(7)うつについての主観的評価
(8)副交感神経の活動(例えば、HFや、その対数)
(9)自律神経系全体の活動(例えば、TPや、その対数)
(10)認知機能
【0162】
5.コンピュータシステムによる処理
図5Aは、コンピュータシステム100における処理の一例を示す。処理500は、健康度ポジショニングマップを作成する処理である。処理500は、コンピュータシステム100のプロセッサ部120において実行される。
【0163】
ステップS501では、プロセッサ部120の取得手段121が、複数の被験者の各々について、第1パラメータセットに対する第1データセットを取得する。取得手段121は、例えば、データベース部200に格納された複数の被験者についてのデータを、インターフェース部110を介して受信し、受信されたデータを取得することができる。取得手段121は、例えば、データベース部200に格納された複数の被験者についてのデータを、検査施設(例えば、病院、研究所等)のコンピュータシステムからインターフェース部110を介して受信し、受信されたデータを取得することができる。
【0164】
ステップS502では、プロセッサ部120の処理手段122が、ステップS501で取得された第1データセットを処理して、第1データを得る。処理手段122による処理は、例えば、第1データセットに対する次元削減処理、標準化処理、および重み付け処理のうちの少なくとも1つを含み得る。
【0165】
好ましくは、処理手段122による処理は、第1データセットに対する次元削減処理を含む。これにより、多次元で複雑な第1データセットの次元を削減し、より理解しやすいデータ、ひいては健康度ポジショニングマップを作成することができるからである。このとき、次元削減処理は、第1データセットを2次元のデータまたは3次元のデータに削減することが好ましい。2次元のデータまたは3次元のデータから作成された健康度ポジショニングマップは、2次元空間または3次元空間のマップとなり、視覚的に理解しやすいからである。次元削減処理により、(1)健康度ポジショニングマップの各軸の値への各測定項目の寄与を求めることができ、さらには(2)健康度ポジショニングマップの各軸の値には大きく関わらない測定項目のデータを除いて、健康度ポジショニングマップ上のデータをより明確に理解できるようになる。
【0166】
より好ましくは、処理手段122による処理は、第1データセットに対する標準化処理と、標準化されたデータセットに対する次元削減処理とを含む。これにより、第1データセットのパラメータ間のスケール差がなくなり、第1データセットの各パラメータの健康度ポジショニングマップに対する影響が均等に考慮されることになり、精度が高くかつ理解しやすい健康度ポジショニングマップを作成することができるからである。特に、例えば、男女の性差に起因するパラメータに対して標準化処理を行うことで、男性被験者から得られたデータおよび女性被験者から得られたデータの両方を同じ健康度ポジショニングマップ上で評価できるようになる。
【0167】
さらに好ましくは、処理手段122による処理は、第1データセットに対する重み付け処理と、重みが付けられたデータセットに対する標準化処理と、標準化されたデータセットに対する次元削減処理とを含む。これにより、第1データセットの各パラメータの健康度ポジショニングマップに対する影響の大小を強調し、精度がさらに高くかつ理解しやすい健康度ポジショニングマップを作成することができるからである。
【0168】
処理手段122による標準化処理は、例えば、第1パラメータセットのうちのすべてのパラメータについて行われるようにしてもよいし、特定のパラメータについて行われるようにしてもよい。処理手段122による重み付け処理は、例えば、複数の被験者の全体の第1データセットについて行われるようにしてもよいし、複数の被験者の特定の母集団の第1データセットについて行われるようにしてもよい。
【0169】
ステップS503では、プロセッサ部120のマッピング手段123が、複数の被験者の各々について、ステップS502で得られた第1データをマッピングする。マッピング手段123は、n次元の第1データをn次元空間上にマッピングする。マッピング手段123は、複数の被験者の各々について第1データをマッピングすることにより、複数の被験者の各々の第1データがマッピングされたマップを出力することができる。例えば、第1データが2次元である場合には、マッピング手段123は、第1データを、2次元空間、すなわち、平面上の位置にマッピングすることにより、2次元マップを出力することができる。
【0170】
ステップS504では、プロセッサ部120のクラスタリング手段124が、ステップS503でマッピングされた第1データをクラスタリングすることにより、複数の領域を特定する。クラスタリング手段124は、マッピングされた第1データを任意の個数のクラスターに区分することにより、任意の個数の領域を特定することができる。
【0171】
ステップS505では、プロセッサ部120の特徴付け手段125が、ステップS504で特定された複数の領域のうちの少なくとも一部を特徴付ける。特徴付け手段125は、例えば、コンピュータシステム100に入力された情報に基づいて、複数の領域のうちの少なくとも一部を特徴付けるようにしてもよいし、入力に依らずに、複数の領域のうちの少なくとも一部を自動的に特徴付けるようにしてもよい。例えば、特徴付け手段125は、健康度ポジショニングマップにおける相対位置に基づいて、複数の領域のうちの少なくとも一部を特徴付けてもよいし、機械学習に基づいて、複数の領域のうちの少なくとも一部を特徴付けてもよい。
【0172】
上述した処理500によって、複数の領域のうちの少なくとも一部が特徴付けられた健康度ポジショニングマップが作成される。作成された健康度ポジショニングマップは、後述する処理510、処理600、処理700において利用され得る。
【0173】
図5Bは、コンピュータシステム100における処理の別の一例を示す。処理510は、処理500で作成された健康度ポジショニングマップのうちの一部の領域に含まれるデータについて健康度ポジショニングマップを作成する処理である。処理510は、コンピュータシステム100のプロセッサ部120において実行される。
【0174】
ステップS511では、プロセッサ部120が、処理500で作成された健康度ポジショニングマップの複数の領域のうちの一部を選択する入力を受信する。複数の領域のうちの一部を選択する入力は、例えば、コンピュータシステム100の外部からインターフェース部110を介して入力される。
【0175】
ステップS512では、プロセッサ部120の取得手段121が、選択された領域にマッピングされた第1データを取得する。取得された第1データは、サブ第1データと呼ばれ得る。
【0176】
ステップS513では、プロセッサ部120のクラスタリング手段124が、ステップS512で取得されたサブ第1データをクラスタリングすることにより、複数の領域を特定する。ステップS513における処理は、ステップS504における処理と同様の処理であり得る。
【0177】
ステップS514では、プロセッサ部120の特徴付け手段125が、ステップS513で特定された複数の領域のうちの少なくとも一部を特徴付ける。ステップS514における処理は、ステップS505における処理と同様の処理であり得る。
【0178】
上述した処理510によって、複数の被験者のうちの一部の被験者についての健康度ポジショニングマップが作成される。複数の被験者のうちの一部の被験者についての健康度ポジショニングマップは、例えば、複数の被験者のうちの特定の集団、例えば、男性被験者集団、女性被験者集団、若年層集団(40歳未満の集団)、中年層集団(40歳以上60歳未満の集団)、老年層集団(60歳以上の集団)等にフォーカスした健康度ポジショニングマップであり得る。特定の集団にフォーカスした健康度ポジショニングマップの複数の領域は、複数の被験者の全体の健康度ポジショニングマップの複数の領域とは異なる特徴付けを有することができ、異なる観点での健康状態の分析を行うために利用されることができる。
【0179】
図6は、コンピュータシステム100における処理の別の一例を示す。処理600は、健康関数を作成する処理である。処理600は、コンピュータシステム100のプロセッサ部130において実行される。
【0180】
ステップS601では、プロセッサ部130が、健康度ポジショニングマップを用意する。例えば、プロセッサ部130は、プロセッサ部130の第1取得手段によって健康度ポジショニングマップを取得することによって、健康度ポジショニングマップを用意することができる。健康度ポジショニングマップは、複数の被験者についての上述した第1パラメータセットに対する第1データセットに基づいて作成されている。用意される健康度ポジショニングマップは、第1パラメータセットを用いて作成されている限り、処理500または処理510によって作成された健康度ポジショニングマップであってもよいし、別様に作成された健康度ポジショニングマップであってもよい。
【0181】
ステップS602では、プロセッサ部130の第2取得手段132が、複数の被験者のうちの少なくとも一部について、第2パラメータセットに対する第2データセットを取得する。第2パラメータセットは、第1パラメータセットの一部である。第2取得手段132は、例えば、データベース部200に格納された複数の被験者の一部についてのデータを、インターフェース部110を介して取得することができる。
【0182】
ステップS603では、プロセッサ部130の導出手段133が、ステップS602で取得された複数の被験者のうちの少なくとも一部の被験者の第2データセットと、複数の被験者のうちの少なくとも一部の被験者の健康度ポジショニングマップ上の位置とを相関させる健康関数を導出する。導出手段133は、例えば、機械学習によって健康関数を導出することができる。健康関数は、例えば、n次元の健康度ポジショニングマップの軸毎に導出され得る。
【0183】
健康関数は、例えば、回帰モデルであってもよいし、ニューラルネットワークモデルであってもよい。健康関数が回帰モデルである場合、導出手段133は、複数の被験者のうちの少なくとも一部の各被験者について、第2データセットを独立変数とし、その被験者の健康度ポジショニングマップ上の座標を従属変数として機械学習することにより、回帰モデルの各係数を導出することができる。健康関数がニューラルネットワークモデルである場合、導出手段133は、複数の被験者のうちの少なくとも一部の各被験者について、第2データセットを入力用教師データとし、その被験者の健康度ポジショニングマップ上の位置を出力用教師データとして機械学習することにより、各ノードの重み係数を導出することができる。
【0184】
上述した処理600によって、健康度ポジショニングマップ上に被験者の健康度をマッピングするための健康関数が作成される。作成された健康関数は、後述する処理700において利用され得る。健康関数を作成する際に、第2パラメータセットに侵襲検査結果を含めないようにすることで、結果として得られる健康関数は、侵襲検査結果を含まないパラメータセットのデータから健康度ポジショニングマップ上の位置を特定し、ユーザの健康度を推定することができるようになる。このような侵襲検査結果を含まないパラメータセットからユーザの健康度を推定することは、ユーザが、検査の場所を問わずに、自身の健康度を知ることを可能にする。ユーザは、例えば、病院以外にも、会社、薬局、公民館、カフェ、自宅等で簡易な検査から自身の健康度を知ることができるようになる。
【0185】
図7Aは、コンピュータシステム100における処理の別の一例を示す。処理700は、ユーザの健康度を推定する処理である。処理700は、コンピュータシステム100のプロセッサ部140において実行される。
【0186】
ステップS701では、プロセッサ部140が、健康関数を用意する。例えば、プロセッサ部140は、プロセッサ部140の第3取得手段141によって健康関数を取得することによって、健康関数を用意することができる。健康関数は、第2パラメータセットに対するデータセットと、健康度ポジショニングマップ上の位置とを相関させる関数である。取得される健康関数は、ユーザデータセットと健康度ポジショニングマップ上の位置とを相関させることができるである限り、処理600によって作成された健康関数であってもよいし、別様に作成された健康関数であってもよい。健康度ポジショニングマップは、第1パラメータセットを用いて作成されているである限り、処理500または処理510によって作成された健康度ポジショニングマップであってもよいし、別様に作成された健康度ポジショニングマップであってもよい。
【0187】
ステップS702では、プロセッサ部140の第4取得手段142が、ユーザの第2パラメータセットに対する第1ユーザデータセットを取得する。第4取得手段142は、例えば、データベース部200に格納された第1ユーザデータセットを、インターフェース部110を介して取得することができる。あるいは、第4取得手段142は、例えば、第1ユーザデータセットを、ユーザの端末装置からインターフェース部110を介して取得することができる。
【0188】
ステップS703では、プロセッサ部140の出力生成手段143が、第1ユーザデータセットを健康関数に入力することにより、第1出力を得る。例えば、健康関数が回帰モデルである場合、第1ユーザデータセットを回帰モデルの独立変数に入力することにより、健康度ポジショニングマップ上の座標が第1出力として出力される。例えば、健康関数がニューラルネットワークモデルである場合、第1ユーザデータセットをニューラルネットワークモデルの入力層に入力することにより、健康度ポジショニングマップ上の座標が第1出力として出力される。
【0189】
ステップS704では、プロセッサ部140の出力マッピング手段144が、第1出力を健康度ポジショニングマップ上にマッピングする。ステップS703で得られた出力が健康度ポジショニングマップ上の座標であるため、出力マッピング手段144は、健康度ポジショニングマップのn次元空間内にその座標をマッピングすることができる。
【0190】
上述した処理700によって、ユーザの健康度を健康度ポジショニングマップ上にマッピングすることにより、ユーザの健康度がマッピングされた領域の特徴付けから、ユーザの健康状態がどのようであるかを推定することができる。例えば、第2パラメータセットに侵襲検査結果を含まない健康関数を用いることで、侵襲検査結果を含まないパラメータセットのデータから健康度ポジショニングマップ上の位置を特定し、ユーザの健康度を推定することができる。このような侵襲検査結果を含まないパラメータセットからユーザの健康度を推定することは、ユーザが、検査の場所を問わずに、自身の健康度を知ることを可能にする。ユーザは、例えば、病院以外にも、会社、薬局、公民館、カフェ、自宅等で簡易な検査から自身の健康度を知ることができるようになる。
【0191】
図7Bは、
図7Aに示される処理700の続きの処理の一例を示す。
図7Bに示される処理は、所定期間経過後のユーザの健康度を推定するための処理である。
【0192】
ステップS705では、プロセッサ部140の第4取得手段142が、ユーザの第2パラメータセットに対する第2ユーザデータセットを取得する。ステップS705は、少なくとも、ステップS702から所定期間経過した後に行われる。第4取得手段142は、例えば、データベース部200に格納された第2ユーザデータセットを、インターフェース部110を介して取得することができる。あるいは、第4取得手段142は、例えば、第2ユーザデータセットを、ユーザの端末装置からインターフェース部110を介して取得することができる。
【0193】
ステップS706では、プロセッサ部140の出力生成手段143が、第2ユーザデータセットを健康関数に入力することにより、第2出力を得る。例えば、健康関数が回帰モデルである場合、第2ユーザデータセットを回帰モデルの独立変数に入力することにより、健康度ポジショニングマップ上の座標が第2出力として出力される。例えば、健康関数がニューラルネットワークモデルである場合、第2ユーザデータセットをニューラルネットワークモデルの入力層に入力することにより、健康度ポジショニングマップ上の座標が第2出力として出力される。
【0194】
ステップS707では、プロセッサ部140の出力マッピング手段144が、第2出力を健康度ポジショニングマップ上にマッピングする。ステップS706で得られた出力が健康度ポジショニングマップ上の座標であるため、出力マッピング手段144は、健康度ポジショニングマップのn次元空間内にその座標をマッピングすることができる。
【0195】
ステップS705~S707によって、所定期間後のユーザの健康状態がどのようであるかを推定することができる。例えば、ステップS701~ステップS704で推定された健康状態と、ステップS705~ステップS707によって推定された健康状態とを比較することにより、健康状態の時系列変化を特定することができる。
【0196】
さらには、健康度ポジショニングマップ上での時系列変化の方向に基づいて、将来の健康状態を予測することも可能である。例えば、第1出力をマッピングした結果、健康度が健康度ポジショニングマップ上の健康体として特徴付けられた領域に属し、所定期間経過後の第2出力をマッピングした結果、健康度が、健康体として特徴付けられた領域に属するものの、生活習慣病リスク群として特徴付けられた領域に近づいていた場合には、健康状態が生活習慣病リスクの方向へ向かっていることを予測することができる。
【0197】
一実施形態において、処理700は、健康状態を向上させるためのアイテムを評価するために利用され得る。例えば、所定期間の間、ユーザに健康状態を向上させるためのアイテムを使用させ、所定期間前の第1出力と、所定期間経過後の第2出力とを比較することにより、健康度ポジショニングマップ上での時系列変化を特定することができる。健康状態を向上させるためのアイテムの使用による健康度ポジショニングマップ上での時系列変化は、健康状態を向上させるためのアイテムの効果が反映されており、健康状態を向上させるためのアイテムを使用しなかった場合の健康度ポジショニングマップ上での時系列変化と対照することにより、健康状態を向上させるためのアイテムの効果の優劣を評価することができる。
【0198】
さらには、健康状態を向上させるためのアイテムの使用による健康度ポジショニングマップ上での時系列変化の方向に基づいて、ユーザに、健康状態を向上させるためのアイテムをリコメンドすることもできる。例えば、健康状態を向上させるためのアイテムは、概して、健康状態を向上させるためのアイテムの使用による健康度ポジショニングマップ上での時系列変化の方向とは逆方向の健康度ポジショニングマップ上での時系列変化を有するユーザに効果的である。従って、ステップS701~ステップS707の処理によって特定されたユーザの健康度ポジショニングマップ上での時系列変化とは反対方向の時系列変化を有するアイテムをユーザにリコメンドすることができる。
【0199】
図5A、
図5B、
図6、
図7A、
図7Bを参照して上述した例では、特定の順序で処理が行われることを説明したが、各処理の順序は説明されたものに限定されず、論理的に可能な任意の順序で行われ得る。
【0200】
図5A、
図5B、
図6、
図7A、
図7Bを参照して上述した例では、
図5A、
図5B、
図6、
図7A、
図7Bに示される各ステップの処理は、プロセッサ部120、プロセッサ部130、またはプロセッサ部140とメモリ部150に格納されたプログラムとによって実現することが説明されたが、本発明はこれに限定されない。
図5A、
図5B、
図6、
図7A、
図7Bに示される各ステップの処理のうちの少なくとも1つは、制御回路などのハードウェア構成によって実現されてもよい。
【0201】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0202】
(実施例1.健康度ポジショニングマップの作成)
本実施例では、まず、720名の被験者について、健康に関する232項目の初期データを取得した。この初期データの取得は、神戸理研IIB棟において実施された。この232項目は、侵襲性検査および非侵襲性検査の両方を含んだ。次に、平均値が0であり、かつ、標準偏差が1となるように、取得した初期データの値を補正した。次に、補正したデータのうち、データ間の相関度が所定の値(具体的には、相関係数が0.9)よりも高いデータが存在する場合に当該データの1つのみを抽出する方法用いて一部のデータを抽出した。この一部のデータは、基本4パラメータについてのデータを含んでいた。なお、本実施例では、相関係数が0.9よりも高いデータが存在する場合に1つのデータを抽出していたが、本発明はこれに限定されるものではなく、相関係数の値は適宜変更することができる。なお、相関係数が0.9以上とすることにより、より総合的に被験者の健康度を算出することができる健康関数を作成することができる。
【0203】
抽出の結果、81項目が抽出された。この81項目が、本発明における「第1パラメータセット」に該当する。この81項目は、基本4パラメータ、基礎的パラメータ、認知機能パラメータ、主観的パラメータ、血液パラメータ、血管および皮膚パラメータ、および生活状況パラメータを含んでいた。
【0204】
次に、多次元尺度法により、多次元データ(すなわち、81次元のデータ)を2次元まで下げ、2次元上に、720名のうちデータが完全にそろっていた692名分のデータをプロットした。2次元上にプロットされた692個のプロットのプロット分布パターンについて、k平均法によるクラスタリングを行い、10個のクラスターにクラスタリングした(
図9)。各クラスターに、健康に関する情報を特徴づけ、本発明の健康度ポジショニングマップを作成した。
図10は、本実施例において作成した健康度ポジショニングマップを示す図である。なお、
図10は実際のプロットも表示しているが、本発明の健康度ポジショニングマップは、その基となったプロットを含んでいる必要はなく、プロットのクラスタリングによって特定される領域と、その領域に関連付けられる健康に関する情報とを含んでいればよい点に留意されたい。
【0205】
(実施例2.健康関数の作成)
第1パラメータセットよりも少ない数の検査項目(第2パラメータセット)によって、実施例1において作成した健康度ポジショニングマップに適切な配置ができるような関数(健康関数)を、機械学習によって特定した。
【0206】
上記のとおり
図10は、本実施例における健康度ポジショニングマップである。各プロットに対応する被験者を分析したところ、
図10に示すように、
図10の図において左側(すなわち、-X軸側)のプロットは、相対的に年齢が若い被験者のプロットであり、右側(すなわち、+X軸側)のプロットは、相対的に年齢が高い被験者のプロットであった。
図10のグループG1に含まれる被験者群は、年齢が若く、うつや不安の程度が高く、自律神経調整力が低く、また、認知課題においてエラー数が高い被験者群であった。したがって、新規にデータを測定された被験者がグループG1に属する場合、当該被験者は、メンタルヘルス疾患の未病である可能性が高い被験者であることがわかる。
【0207】
また、グループG2に含まれる被験者群は、年齢が高く、血中γ-GTP・血中ALT・血中中性脂肪・血中HbA1c・血中高感度CRP値が高い被験者群であった。したがって、新規にデータを測定された被験者がグループG2に属する場合、当該被験者は、生活習慣病の未病である可能性が高い被験者であることがわかる。
【0208】
また、グループG3に含まれる被験者群は、年齢が高く、血糖値が高い被験者群であった。したがって、新規にデータを測定された被験者がグループG3に属する場合、当該被験者は、糖尿病の未病である可能性が高い被験者であることがわかる。
第1関数X≦約4かつ第2関数Y≦約2の領域は概ね健康状態に問題がない健康群を示している。
【0209】
以上のグループG1~G3は、本発明の健康評価装置によって評価できる数例であって、その他にもさまざまな健康リスクを評価することができる。
【0210】
(実施例3.第2パラメータセットの検討)
さらに別の第2パラメータセットによって、健康度ポジショニングマップに適切な配置ができるような関数を、機械学習によって特定することを試みた。
【0211】
実施例1にさらに被験者の数を加え、965名の被験者のデータから、76項目の第1パラメータセットを用いて健康度ポジショニングマップを作成した。実施例2と同様に、半数の被験者のデータを教師データに、残りの半数の被験者のデータを得られた関数の評価用に用いた。
【0212】
その結果、50項目の第2パラメータセットによる健康関数(X軸のR
2=0.9595;Y軸のR
2=0.9615)、21項目による第2パラメータセットによる健康関数(X軸のR
2=0.9601;Y軸のR
2=0.8706)、9項目による第2パラメータセットによる健康関数(X軸のR
2=0.8889;Y軸のR
2=0.8207)を特定した(
図11)。特に、9項目という少ない数のパラメータで健康状態を評価することができるのは、予想外であった。
【0213】
この9項目は、年齢、疲労質問票スコア、疲労持続期間、ln(LF+HF)、認知機能、脂肪率、血中中性脂肪、OSIおよびCRPであった。
【0214】
また、非侵襲性検査によるデータのみで健康を評価できれば、検査の場所を問わずに、手軽に自身の健康度を知ることが可能になる。そこで、非侵襲的パラメータのみから構成される第2パラメータセットの特定を試みた。その結果、以下の14項目のパラメータが特定され、これらのパラメータセットによる健康関数を特定した(
図12)(X軸のR
2=0.8879;Y軸のR
2=0.8801)。
・年齢
・BMI
・脂肪率
・SOS
・収縮期血圧
・うつに関する主観的評価
・プレゼンティズム
・疲労に関する主観的評価
・副交感神経の活動(ln(HF))
・自律神経系全体の活動(ln(TP))
・認知課題
【0215】
したがって、本発明の健康度ポジショニングマップと上記非侵襲14パラメータとを用いることによって、手軽に自身の健康度を知ることが可能である。
(実施例4.健康度ポジショニングマップを用いた健康状態の変化の観察)
【0216】
実施例1で作成した健康度ポジショニングマップを用いて、被験者の健康状態の変化を観察できるかどうか検討した。還元型CoQ10を摂取する前と、3か月間摂取した後で、健康度ポジショニングマップ上でのマッピング位置を比較した。結果を
図13に示す。
【0217】
図13から明らかなように、比較を行った被験者において、メンタルヘルスリスク群であるグループG1から健康群へ変化している様子が観察できた。この被験者の各検査項目を精査したところ、血中CoQ10総量は増加し、疲労やうつに関するパラメータ疲労VAS、うつVAS、ChaTF11G、PSが減少していることが分かった(
図14)。この結果から、還元型CoQ10が疲労解消やメンタルヘルス状態の改善に効果があり得ることが示唆されるとともに、本発明の健康度ポジショニングマップおよびそれを用いた健康評価方法によって、被験者の健康状態を追跡することができることが確認された。
【符号の説明】
【0218】
100 コンピュータシステム
110 インターフェース部
120、130、140 プロセッサ部
150 メモリ部
200 データベース部
300 ユーザ端末装置
400 ネットワーク