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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】巻線の検査方法、検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/952 20060101AFI20240408BHJP
【FI】
G01N21/952
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021159881
(22)【出願日】2021-09-29
(65)【公開番号】P2023049875
(43)【公開日】2023-04-10
【審査請求日】2023-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】591009705
【氏名又は名称】株式会社 東京ウエルズ
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100217836
【弁理士】
【氏名又は名称】合田 幸平
(72)【発明者】
【氏名】秋本 孝之
【審査官】小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-128811(JP,A)
【文献】特開平06-167460(JP,A)
【文献】特開平07-239309(JP,A)
【文献】特開2015-203613(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84 - G01N 21/958
G01M 11/00 - G01M 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻線を含む検査対象を載置板に載置する工程と、
前記載置板の板面の法線方向からの観察において前記巻線の巻き軸に対して45°以上の角度をなす第1方向から第1波長を含む光を前記検査対象に照射する工程と、
前記載置板の板面の法線方向からの観察において前記巻線の巻き軸に対して45°未満の角度をなす第2方向から前記第1波長と異なる第2波長を含む光を前記検査対象に照射する工程と、
前記第1方向及び前記第2方向とは非平行な第3方向から前記検査対象を撮像して、前記第1波長の光に基づいた第1画像と、前記第2波長の光に基づいた第2画像と、を得る工程と、
前記第1画像及び前記第2画像に基づいて、前記巻線の状態を検査する工程と、を備える、巻線の検査方法。
【請求項2】
前記第1画像と前記第2画像とを比較して比較画像を得る工程をさらに備え、
前記巻線の状態を検査する工程は、前記第1画像及び前記比較画像から、前記巻線の線傷及び断線の少なくとも1つを検出する工程を含む、請求項1に記載の巻線の検査方法。
【請求項3】
前記第2画像を処理した処理画像を得る工程をさらに備え、
前記巻線の状態を検査する工程は、前記第2画像及び前記処理画像から、前記巻線の異物及び重なりの少なくとも1つを検出する工程を含む、請求項1または2に記載の巻線の検査方法。
【請求項4】
前記第2画像を処理した処理画像を得る工程をさらに備え、
前記巻線の状態を検査する工程は、前記処理画像から、前記巻線の線の間隔及び巻数の少なくとも1つを検出する工程を含む、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の巻線の検査方法。
【請求項5】
前記第1方向とは異なる方向から前記第1波長を含む光を前記検査対象に照射する工程と、
前記第2方向とは異なる方向から前記第2波長を含む光を前記検査対象に照射する工程と、
前記第3方向とは異なる方向から前記検査対象を撮像して、前記第1波長の光に基づいた画像と、前記第2波長の光に基づいた画像と、を得る工程と、をさらに備える、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の巻線の検査方法。
【請求項6】
前記第1波長は、300nm以上550nm未満である、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の巻線の検査方法。
【請求項7】
前記第2波長は、550nm以上1000nm以下である、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の巻線の検査方法。
【請求項8】
巻線の状態を検査する検査装置であって、
前記巻線を含む検査対象が載置される載置板と、
前記載置板の板面の法線方向からの観察において前記巻線の巻き軸に対して45°以上の角度をなす第1方向から第1波長を含む光を前記検査対象に照射する第1照射装置と、
前記載置板の板面の法線方向からの観察において前記巻線の巻き軸に対して45°未満の角度をなす方向であって前記第1方向とは非平行な第2方向から前記第1波長と異なる第2波長を含む光を前記検査対象に照射する第2照射装置と、
前記第1方向及び前記第2方向とは非平行な第3方向から前記検査対象を撮像する撮像装置と、
前記撮像装置によって撮像された画像を処理する画像処理装置と、を備える、検査装置。
【請求項9】
前記載置板は、回転可能であり、
前記検査対象は、前記載置板の回転軸からずれた位置に載置される、請求項8に記載の検査装置。
【請求項10】
前記第1波長は、300nm以上550nm未満である、請求項8または9に記載の検査装置。
【請求項11】
前記第2波長は、550nm以上1000nm以下である、請求項8乃至10のいずれか一項に記載の検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻線の検査方法及び巻線を検査する検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気回路に用いられるコイルや機械部品として用いられる巻きばね等の巻線を含む部材が知られている。特許文献1には、コイルの巻線の外観から、巻線に塗布された塗布材のむらを検査する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-356098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
巻線に塗布された塗布材のむらよりも、巻線の線傷や断線、巻線への異物の付着、巻線同士の重なり、巻線の線の間隔や巻き数等の巻線の状態を検査することが求められている。例えば、コイルの巻線に断線が生じていると、コイルが機能しない。異常のある巻線を識別するために、巻線の状態を検査することが求められる。
【0005】
本発明は、巻線の状態を精度良く検査することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の巻線の検査方法は、
巻線を含む検査対象を載置板に載置する工程と、
前記載置板の板面の法線方向からの観察において前記巻線の巻き軸に対して45°以上の角度をなす第1方向から第1波長の光を前記検査対象に照射する工程と、
前記載置板の板面の法線方向からの観察において前記巻線の巻き軸に対して45°未満の角度をなす第2方向から前記第1波長と異なる第2波長の光を前記検査対象に照射する工程と、
前記第1方向及び前記第2方向とは非平行な第3方向から前記検査対象を撮像して、前記第1波長の光に基づいた第1画像と、前記第2波長の光に基づいた第2画像と、を得る工程と、
前記第1画像及び前記第2画像に基づいて、前記巻線の状態を検査する工程と、を備える。
【0007】
本発明の巻線の検査方法は、前記第1画像と前記第2画像とを比較して比較画像を得る工程をさらに備え、
前記巻線の状態を検査する工程は、前記第1画像及び前記比較画像から、前記巻線の線傷及び断線の少なくとも1つを検出する工程を含んでもよい。
【0008】
本発明の巻線の検査方法は、前記第2画像を処理した処理画像を得る工程をさらに備え、
前記巻線の状態を検査する工程は、前記第2画像及び前記処理画像から、前記巻線の異物及び重なりの少なくとも1つを検出する工程を含んでもよい。
【0009】
本発明の巻線の検査方法は、前記第2画像を処理した処理画像を得る工程をさらに備え、
前記巻線の状態を検査する工程は、前記処理画像から、前記巻線の線の間隔及び巻数の少なくとも1つを検出する工程を含んでもよい。
【0010】
本発明の巻線の検査方法は、
前記第1方向とは異なる方向から前記第1波長の光を前記検査対象に照射する工程と、
前記第2方向とは異なる方向から前記第2波長の光を前記検査対象に照射する工程と、
前記第3方向とは異なる方向から前記検査対象を撮像して、前記第1波長の光に基づいた画像と、前記第2波長の光に基づいた画像と、を得る工程と、をさらに備えてもよい。
【0011】
本発明の巻線の検査方法において、前記第1波長は、300nm以上550nm未満であってもよい。
【0012】
本発明の巻線の検査方法において、前記第2波長は、550nm以上1000nm以下であってもよい。
【0013】
本発明の検査装置は、巻線の状態を検査する検査装置であって、
前記巻線を含む検査対象が載置される載置板と、
第1方向から第1波長の光を前記検査対象に照射する第1照射装置と、
前記第1方向とは非平行な第2方向から前記第1波長と異なる第2波長の光を前記検査対象に照射する第2照射装置と、
前記第1方向及び前記第2方向とは非平行な第3方向から前記検査対象を撮像する撮像装置と、
前記撮像装置によって撮像された画像を処理する画像処理装置と、を備える。
【0014】
本発明の検査装置において、
前記載置板は、回転可能であり、
前記検査対象は、前記載置板の回転軸からずれた位置に載置されてもよい。
【0015】
本発明の検査装置において、前記第1波長は、300nm以上550nm未満であってもよい。
【0016】
本発明の検査装置において、前記第2波長は、550nm以上1000nm以下であってもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、巻線の状態を精度良く検査できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、検査される検査対象の一例を示す図である。
図2図2は、載置板の板面の法線方向から観察した検査装置の上面図である。
図3図3は、検査装置の側面図である。
図4図4は、検査対象を撮像して得られた第1画像の一例を示す図である。
図5図5は、検査対象を撮像して得られた第2画像の一例を示す図である。
図6図6は、第1画像と第2画像の比較から得られる比較画像の一例を示す図である。
図7図7は、第2画像を処理して得られる処理画像の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。本明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺及び縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
【0020】
本明細書において、「板面」とは、対象となる板状の部材を全体的かつ大局的に見た場合において対象となる板状部材の平面方向と一致する面のことを指す。
【0021】
本明細書において用いる、形状や幾何学的条件ならびにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈されるよう意図されている。
【0022】
図1には、本実施の形態の検査方法及び検査装置で検査される検査対象1が示されている。検査対象1は、例えばコイル、インダクタ、巻きばね等である。図1に示すように、検査対象1は、線状の部材が巻き軸axを軸に螺旋状に巻かれた巻線3を含んでいる。本実施の形態の検査方法及び検査装置では、検査対象1が含んでいる巻線3の状態が検査される。巻線3は、例えば金属からなる。巻線3は、検査対象1となる部材が所望の機能を奏するため、所定の間隔や巻き数で巻かれている。巻線3の間隔とは、巻き軸axの方向に隣り合う巻線3の間の距離である。巻線3の巻き数とは、巻き軸axの回りに巻き付けられている巻線3の周回の数である。
【0023】
図1に示されているように、巻線3に異常5がある場合がある。異常5とは、例えば、巻線の断線や線傷、巻線への異物の付着、巻線同士の重なり、巻線の線の間隔や巻き数が所定の値より大きいこと等である。このような異常5は、巻線3が奏するべき機能を阻害し得る。例えば、コイルの巻線が断線している場合、コイルの巻線に電圧を加えても磁場を発生させない。巻線3における異常5を検出することで、巻線3を含む部材の歩留まりを向上させることができる。巻線3における異常5の有無を検査するための検査装置10及び巻線の検査方法について、以下に説明する。
【0024】
検査装置10は、巻線3の外観から、検査対象1が含む巻線3の状態を検査する。巻線3の状態とは、巻線3における異常5の有無である。図2には、検査装置10の上面図が示されており、図3には、検査装置10の側面図が示されている。図2及び図3に示されているように、検査装置10は、載置板11と、第1照射装置13と、第2照射装置15と、撮像装置17と、画像処理装置20と、を有している。図2は、載置板11の板面の法線方向から観察した検査装置10である。図2では、撮像装置17及び画像処理装置20が省略されている。
【0025】
載置板11は、検査対象1が載置される。載置板11は、透明である。図2に示されている例では、載置板11は、円形であり、円形の中心における載置板11の法線を軸として回転可能である。図2に示す例では、検査対象1は、載置板11の中心からずれた位置、言い換えると載置板11の回転軸からずれた位置に載置されている。載置板11は、任意の形状であり、任意の軸を中心として回転可能であってもよい。載置板11は、例えばガラスからなる。
【0026】
「透明」とは、分光光度計((株)島津製作所製「UV-3100PC」、JIS K 0115準拠品)を用いて測定波長380nm~780nmの範囲内で測定したときの、各波長における透過率の平均値として特定される可視光透過率が、50%以上、好ましくは80%以上であることを意味する。
【0027】
第1照射装置13は、第1方向d1から載置板11に載置された検査対象1に光L1を照射する。第1方向d1は、載置板11の板面の法線方向からの観察において検査対象1が含む巻線3の巻き軸axに対して45°以上の角度をなす。好ましくは、第1方向d1は、載置板11の板面の法線方向からの観察において巻線3の巻き軸axに垂直な方向である。言い換えると、第1方向d1は、載置板11の板面の法線方向からの観察において巻線3の延びる方向と略平行である。第1照射装置13が照射する光L1は、第1波長の光を含んでいる。第1波長は、300nm以上550nm未満である。第1照射装置13は、第1波長のみの単一波長の光を照射してもよいし、第1波長を含む複数の波長の光を照射してもよい。第1照射装置13は、例えばLEDライトである。
【0028】
第2照射装置15は、第2方向d2から載置板11に載置された検査対象1に光L2を照射する。第2方向d2は、第1方向d1とは非平行な方向である。第2方向d2は、好ましくは第1方向d1と直交する方向である。第2方向d2は、載置板11の板面の法線方向からの観察において検査対象1が含む巻線3の巻き軸axに対して45°未満の角度をなす。好ましくは、第2方向d2は、載置板11の板面の法線方向からの観察において巻線3の巻き軸axに平行な方向である。言い換えると、第2方向d2は、載置板11の板面の法線方向からの観察において巻線3の延びる方向とは交差しており、好ましくは、巻線3の延びる方向に略直交している。第2照射装置15が照射する光L2は、第2波長の光を含んでいる。第2波長は、第1波長とは異なる。好ましくは、第2波長は、第1波長より長い。第2波長は、550nm以上1000nm以下である。第2照射装置15は、第2波長のみの単一波長の光を照射してもよいし、第2波長を含む複数の波長の光を照射してもよい。第2照射装置15が照射する光L2は、第1照射装置13が照射する波長の光、特に第1波長の光を含んでいない。第2照射装置15は、例えばLEDライトである。
【0029】
撮像装置17は、第3方向d3から検査対象1を撮像する。第3方向d3は、第1方向d1及び第2方向d2とは非平行な方向である。第3方向d3は、好ましくは第1方向d1及び第2方向d2と直交する方向である。図3に示されているように、撮像装置17は、検査対象1の上方に位置している。特に、撮像装置17は、第1照射装置13からの光L1及び第2照射装置15からの光l2が検査対象1で反射した光によって、検査対象1を撮像する。撮像装置17が撮像する検査対象1の画像は、少なくとも第1波長の光と第2波長の光とに基づいている。撮像装置17は、フルカラーの画像を撮像できてもよい。撮像装置17は、例えばCCD(Charge Coupled Device)カメラやCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)カメラである。
【0030】
画像処理装置20は、撮像装置17と電気的に接続している。画像処理装置20は、撮像装置17が撮像した画像のデータを受け取る。画像処理装置20は、受け取った画像のデータを処理する。
【0031】
画像処理装置20は、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等のプロセッサを含んでもよい。画像処理装置20は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等のメモリを更に含んでもよい。画像処理装置20は、メモリに記録されたプログラムを実行することにより、画像のデータを処理してもよい。
【0032】
画像処理装置20は、撮像装置17が撮像した画像のデータから、第1波長の光からなるデータと第2波長の光からなるデータとを分離する。図4及び図5に例示するような第1の波長の光からなるデータに基づいた第1画像21と、第2の波長の光からなるデータに基づいた第2画像22と、が得られる。第1画像21において、第1波長の光が強く撮像された部分ほど明るくなっている。同様に、第2画像22において、第2波長の光が強く撮像された部分ほど明るくなっている。画像処理装置20は、第1画像21と第2画像22とを比較する。この処理により、図6に示すような比較画像23が得られる。一例として、比較画像23は、第1画像21の明るくなっている部分から第2画像22の明るくなっている部分を引いた画像である。第2画像22を処理することにより、処理画像24が得られる。一例として、第2画像22の明るくなっている部分を巻線3の延びる方向に膨張させた後、明るくなっている部分を膨張させたのと同じ割合で巻線3の延びる方向に収縮させるという、いわゆるクロージング処理により、処理画像24が得られる。
【0033】
画像処理装置20は、撮像装置17が撮像した画像のデータから第1画像21及び第2画像22を得る処理、第1画像21及び第2画像22から比較画像23を得る処理、及び、第2画像22から処理画像24を得る処理のそれぞれ別個に行うための複数の処理手段を有していてもよい。1つの処理手段が、上述した処理の2つ以上を行ってもよい。
【0034】
検査装置10による巻線の検査方法について説明する。
【0035】
巻線3を含む検査対象1を、検査装置10の載置板11に載置する。検査対象1は、載置板11の板面の法線方向からの観察において、第1方向d1が巻線3の巻き軸axに対して45°以上の角度をなし、且つ第2方向d2が巻線3の巻き軸axに対して45°未満の角度をなすように配置される。あるいは、検査対象1が載置された載置板11を回転させて、載置板11の板面の法線方向からの観察において、第1方向d1が巻線3の巻き軸axに対して45°以上の角度をなし、且つ第2方向d2が巻線3の巻き軸axに対して45°未満の角度をなす検査位置に位置するように、検査対象1を搬送する。
【0036】
第1照射装置13が、第1方向d1から載置板11に載置された検査対象1に光L1を照射する。第1照射装置13が照射する光L1は、第1波長の光を含む。第1照射装置13から検査対象1に光L1を照射しながら、第2照射装置15が、第2方向d2から載置板11に載置された検査対象1に光L2を照射する。第2照射装置15が照射する光L2は、第2波長の光を含む。
【0037】
検査対象1に第1照射装置13からの光L1及び第2照射装置15からの光L2が照射された状態で、第3方向d3から検査対象1を撮像装置17で撮像する。撮像される画像のデータは、第1照射装置13からの光L1及び第2照射装置15からの光L2が検査対象1で反射した光を含む。撮像される画像のデータは、第1波長の光と第2波長の光とを含んでいる。
【0038】
第1方向d1が巻線3の延びる方向と略平行なため、第1方向d1から照射された光L1は、検査対象1が含む巻線3で反射すると、撮像装置17に向かいにくい。第2方向d2が巻線3の延びる方向とは交差する方向であるため、第2方向d2から照射された光L2は、検査対象1が含む巻線3で反射すると、撮像装置17に向かいやすい。
【0039】
検査対象1が含む巻線3に異常5があると、光は、異常5において異常が無い部分とは異なる角度で反射する。第1方向d1から照射された光L1は、異常5において反射すると、異常が無い部分に比べて、撮像装置17に向かいやすい。特に異常5が巻線3の線傷や巻線3の断線である場合、線傷や巻線3の断面で光が乱反射するので、撮像装置17に向かいやすい。第2方向d2から照射された光L2は、異常5において反射すると、異常が無い部分に比べて、撮像装置17に向かいにくい。特に異常5が巻線3に付着した異物や巻線3の重なりである場合、光は異物や巻線3の重なりで異常が無い部分とは異なる方向に反射するので、撮像装置17に向かいにくい。撮像装置17は、第1方向d1から照射された光L1に基づくと、異常5を異常が無い部分に比べて異常5を明るく撮像し、第2方向d2から照射された光L2に基づくと、異常5が無い部分に比べて異常5を暗く撮像する。
【0040】
撮像装置17で撮像された画像のデータは、画像処理装置20に送られる。画像処理装置20は、画像のデータから、第1波長の光と第2波長の光とを分離する。第1波長が300nm以上550nm未満であり、第2波長が550nm以上1000nm以下であると、第1波長の光と第2波長の光とを容易に分離できる。第1波長の光は第1方向d1から照射される光L1に含まれるため、第1波長の光では、異常が無い部分が暗く、異常5が明るくなっている。第2波長の光は第2方向d2から照射される光L2に含まれるため、第2波長の光では、異常が無い部分が明るく、異常5が暗くなっている。分離された第1波長第1波長の光に基づいて、図4に示すような第1画像21が得られる。第1画像21は、第1方向d1からの光に基づくことになる。分離された第2波長の光に基づいて、図5に示すような第2画像22が得られる。第2画像22は、第2方向d2からの光に基づくことになる。
【0041】
画像処理装置20は、第1画像21及び第2画像22に基づいて、巻線3の状態を検査する。具体的な検査方法のいくつかの例について、以下に説明する。画像処理装置20は、以下に説明する検査方法の例を単独で行ってもよいし、検査方法の例の複数を同時に行ってもよい。以下に説明する例に限らず、任意の方法により、第1画像21及び第2画像22に基づいて、巻線3の状態を検査してもよい。
【0042】
検査方法の第1例について説明する。画像処理装置20は、第1画像21から第2画像22の明部を引くことで、図6に示すような比較画像23を得る。比較画像23では、異常5が明るくなっている第1画像21から、異常の無い部分が明るくなっている第2画像22を引いているため、異常5が特に明るくなっている。第1画像21及び比較画像23で明るくなっている異常5は、巻線3の線傷や巻線3の断線に由来する。第1画像21及び比較画像23を二値化処理することで、比較画像23において明るくなっている部分がより明確になる。画像処理装置20が二値化処理された第1画像21または比較画像23の明るい部分を異常5として判定することで、巻線3における線傷や巻線3の断線を検出できる。以上の方法により、第1画像21及び比較画像23から、巻線3の線傷及び断線の少なくとも1つを検出できる。
【0043】
二値化処理とは、例えば、画像の最も明るい部分を100%、最も暗い部分を0%とし、その他の部分の明るさを0~100%で規定し、明るさが0%以上50%未満の部分を暗部、50以上100%以下の部分を明部とする処理である。
【0044】
検査方法の第2例について説明する。画像処理装置20は、第2画像22をクロージング処理して、図7に示すような処理画像24を得る。処理画像24は、異常が無いと想定される仮想的な巻線の画像である。処理画像24から第2画像の明るくなっている部分を引くことで、異常5のある部分が明るくなった画像が得られる。第2画像22の暗くなっている部分は、巻線3に付着した異物や巻線3の重なりに由来する。処理画像24から第2画像の明るい部分を引いた画像を二値化処理することで、当該画像において明るくなっている部分がより明確になる。画像処理装置20が二値化処理された当該画像の明るくなっている部分を異常5として判定することで、巻線3に付着した異物や巻線3の重なりを検出できる。以上の方法により、第2画像22及び処理画像24から、巻線3に付着した異物や巻線3の重なりの少なくとも1つを検出できる。
【0045】
検査方法の第3例について説明する。画像処理装置20は、第2例と同様に、第2画像22をクロージング処理して、図7に示すような処理画像24を得る。処理画像24は、異常が無いと想定される仮想的な巻線の画像である。処理画像24から、異常がない巻線3の状態を知ることができる。以上の方法により、処理画像24から、例えば巻線3の線の間隔や巻数の少なくとも1つを検出できる。特に、巻線3に異常5があっても、巻線3の線の間隔や巻数を精度よく検出できる。
【0046】
巻線の検査方法は、以下の工程をさらに有していてもよい。検査対象1を撮像した後、第1照射装置13とは異なる照射装置が第1方向d1とは異なる方向から第1波長の光を含む光L1を検査対象1に照射し、第2照射装置15とは異なる照射装置が第2方向d2とは異なる方向から第2波長の光を含む光L2を検査対象1に照射する。この状態で、撮像装置17とは異なる撮像装置で第3方向とは異なる方向から検査対象1を撮像する。撮像された画像のデータは、画像処理装置20に送られる。画像処理装置20は、画像のデータから、第1の波長の光に基づいた画像と、第2の波長の光に基づいた画像と、を得る。得られた2つの画像に基づいて、上述した例のような巻線3の状態を検査する。
【0047】
各照射装置と撮像装置とは対応した位置関係にあり、検査対象1に光を照射している照射装置に対応した撮像装置で、検査対象1を撮像する。検査対象1は、透明な載置板11を介して撮像されてもよい。
【0048】
異なる方向から光を照射した状態で異なる方向から検査対象1を撮像することで、検査対象1の巻線3におけるある方向における異常の有無だけでなく、異なる方向における異常の有無を検査できる。異なる方向から光を照射した状態で異なる方向からの撮像を繰り返すことで、異なる方向における巻線3の状態を精度よく検査できる。例えば異なる方向から光を照射した状態で互いに略直交する3方向の一側及び他側から撮像することで、巻線3の全体の状態を検査できる。
【0049】
検査対象1は、巻線3の全体の状態を検査された後、載置板11が回転することで搬送されて回収される。
【0050】
特許文献1に記載されているような方法では、巻線に塗布された塗布材のむらしか検査できない。巻線を含む部材の歩留まりを向上させるためには、巻線の状態を精度良く検査することが求められる。
【0051】
本実施の形態の検査装置10は、撮像装置17と、第1照射装置13と、第2照射装置15と、画像処理装置20と、を有している。第1照射装置13が第1波長の光を含む光L1を検査対象1に照射する。第2照射装置15が第2波長の光を含む光L2を検査対象1に照射する。この状態で、撮像装置17は、検査対象1を撮像する。撮像された画像のデータは、画像処理装置20に送られる。画像処理装置20が画像を処理することで、検査対象1が含む巻線3の状態を検査できる。特に、第1波長の光に基づいた第1画像21と第2波長の光に基づいた第2画像22とに基づいて画像処理装置20が画像を処理できるため、巻線3の状態を精度良く検査できる。
【0052】
載置板11は、回転可能である。検査対象1は、載置板11の回転軸からずれた位置に載置されている。このため、載置板11を回転させることで、載置板11に載置された検査対象1を搬送できる。検査対象1を搬送することで、検査対象1を容易に検査位置に位置させることができる。また、検査後に検査対象1を容易に回収できる。
【0053】
本実施の形態の巻線の検査方法は、巻線3を含む検査対象1を載置板11に載置する工程と、載置板11の板面の法線方向からの観察において巻線3の巻き軸axに対して45°以上の角度をなす第1方向d1から第1波長の光を検査対象1に照射する工程と、載置板11の板面の法線方向からの観察において巻線3の巻き軸axに対して45°未満の角度をなす第2方向d2から第1波長と異なる第2波長の光を検査対象1に照射する工程と、第1方向d1及び第2方向d2とは非平行な第3方向d3から検査対象1を撮像して、第1波長の光に基づいた第1画像21と、第2波長の光に基づいた第2画像22と、を得る工程と、第1画像21及び第2画像22に基づいて、巻線3の状態を検査する工程と、を備える。このような巻線の検査方法によれば、巻線3の状態を精度良く検査できる。
【0054】
本発明の態様は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、当業者が想到しうる種々の変形も含むものであり、本発明の効果も上述した実施の形態に係る内容に限定されない。すなわち、特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で、種々の追加、変更および部分的削除が可能である。
【符号の説明】
【0055】
1 検査対象
3 巻線
5 異常
10 検査装置
11 載置板
13 第1照射装置
15 第2照射装置
17 撮像装置
20 画像処理装置
21 第1画像
22 第2画像
23 比較画像
24 処理画像
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7