(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】有機質肥料およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C05G 5/30 20200101AFI20240408BHJP
C05F 11/08 20060101ALI20240408BHJP
C05F 11/00 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
C05G5/30
C05F11/08
C05F11/00
(21)【出願番号】P 2022550770
(86)(22)【出願日】2022-04-29
(86)【国際出願番号】 KR2022006144
(87)【国際公開番号】W WO2022265219
(87)【国際公開日】2022-12-22
【審査請求日】2022-08-23
(31)【優先権主張番号】10-2021-0076598
(32)【優先日】2021-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】519378595
【氏名又は名称】ビーエスエイシー カンパニー インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】BSAC CO., INC.
【住所又は居所原語表記】13-31, Jungheung-ro, Bonggang-myeon, Gwangyang-si, Jeollanam-do, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】パク、グァン ギ
(72)【発明者】
【氏名】パク、フェ ジュン
【審査官】柴田 啓二
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2014-0019992(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0077703(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0007640(KR,A)
【文献】国際公開第2020/102420(WO,A1)
【文献】特開2005-104827(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C05G
C05F
C05B
C05C
C05D
C09K17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ひまし粕60~80重量部および米ぬか1~15重量部を含む有機質肥料において、
前記有機質肥料の表面に少なくとも一部に形成されるコーティング層を含み、前記コーティング層は微生物培養液を噴射、乾燥および冷却させて形成され
、
前記有機質肥料は菜種油粕5~30重量部、パ-ム油粕1~5重量部および加工鶏糞5~20重量部からなる群から選択された少なくとも一つをさらに含み、
前記コーティング層の厚さは10~50μmであり、
前記有機質肥料の平均粒度は1~10mmである
ことを特徴とする微生物がコーティングされた有機質肥料。
【請求項2】
前記微生物培養液はバチルスサブチルス(Bacillus subtilis)培養液、サッカロミケスセレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)培養液、シュードモナスプロテゲンス(Pseudomonas protegens)培養液、アスペルギルスカレステミー(Aspergillus callestemii)培養液、ロドトルラオーランティアカ(Rhodotorula aurantiaca)培養液、バチルスメガテリウム(Bacillus megaterium)培養液、ストレプトマイセスコスタリカヌス(Streptomyces costaricanus)培養液、サーモアスカスサーモフィラス(Thermoascus thermophilus)培養液およびこれらのうち2以上の組み合わせからなる群から選択された一つである
請求項1に記載の微生物がコーティングされた有機質肥料。
【請求項3】
前記有機質肥料はペレットまたはグラニュールの形態である
請求項1に記載の微生物がコーティングされた有機質肥料。
【請求項4】
(a)ひまし粕60~80重量部および米ぬか1~15重量部を混錬および粉砕する段階;
(b)前記(a)段階の混合物をペレットまたはグラニュールの形態に成形して有機質肥料を製造する段階;
(c)前記有機質肥料に微生物培養液を噴射してコーティング層を形成する段階;および、
(d)前記(c)段階の生成物を冷却および乾燥する段階;を含
み、
前記有機質肥料は菜種油粕5~30重量部、パ-ム油粕1~5重量部および加工鶏糞5~20重量部からなる群から選択された少なくとも一つをさらに含み、
前記コーティング層の厚さは10~50μmであり、
前記有機質肥料の平均粒度は1~10mmである
ことを特徴とする微生物がコーティングされた有機質肥料の製造方法。
【請求項5】
前記(c)段階は、
有機質肥料をドラム型コーティング機に内部に投入する段階;および
前記コーティング機の内部に微生物培養液を噴射する段階;を含み、
前記コーティング機の回転とともに、前記微生物培養液が噴射されながら前記有機質肥料のコーティングが遂行される
請求項4に記載の微生物がコーティングされた有機質肥料の製造方法。
【請求項6】
前記(d)段階の冷却および乾燥が温度0~10℃で遂行される
請求項4に記載の微生物がコーティングされた有機質肥料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
機械的物性および品質が向上した微生物がコーティングされた有機質肥料およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
肥料は畑や、水田、土壌をはじめ、果樹または山林の土壌を肥沃にして作物や草木の生育を促進させる栄養物質の総称を意味する。一般的に肥料は、土壌の生産力を維持するか増進させて作物や草木の生長を促進させるために土壌や植物に直接投入する栄養物質とは異なって、直接的に作物の栄養物質にはならずとも土壌の物理化学的性質を改善し、有用な微生物を増進させるか抑制させ、または植物に直接利用され得ない形態で存在する栄養成分を利用可能な形態に変えたり、根部に有毒な物質の毒性を低減させるなどの間接的に作物の生育を助ける物質と定義される。
【0003】
植物のうち高等植物は根から水と養分である無機成分を吸収し、太陽エネルギーを利用して葉で光合成作用をして生育に必須の多様な有機物を合成する。自生植物は一定の場所で養分を吸収して生育し死ぬため、棲息地での土壌中の養分の損失は殆どなく、比較的よく成長することができる。これに対し、農耕地の農作物は土壌根圏に存在する養分を吸収して生育が完了すると収穫物は他所に運搬されるため、吸収した栄養成分が土壌に還元され得ない。したがって、農作物の生育段階で消耗した栄養成分を人為的に適期に供給しなければ作物の生産力は毎年減少傾向を示し得るため、土地の生産性を継続して維持させるか増大させ作物の生産力を維持するためには、作物の種類と土壌の種類に応じた肥培管理が要求される。
【0004】
これに伴い、農作物の生産力増大のために1960年代以降から化学肥料(無機質肥料)の使用が続いてきた。適正量の化学肥料の使用は栽培作物のはやい成長とこれによる収益の増加を担保できるが、過度な施肥によって栽培地土壌の酸性化と塩類集積による塩類障害の問題点が発生し得、最終分解者である微生物の生育抑制により土壌生態系が破壊されて農地の荒廃化を引き起こし得る。
【0005】
これを解決するために化学肥料の代わりに有機質肥料が提案された。有機質肥料は、有機物を微生物で発酵して分解させて植物が使用できる栄養分として提供するものである。有機質肥料が栽培地に施肥される場合には、栽培作物のための栄養分として無機栄養分(N、P、K)および微量要素(Mg、Mn、Cu、B、Moなど)が供給されて生長の促進を刺激するだけでなく、土壌に物理的な孔隙を提供して土壌根圏微生物が定着できるようにアミノ酸、核酸、有機酸、ビタミンなどが供給され得、これに伴い、復元された根圏微生物が分泌する有機酸などで根元周辺の無機塩類が作物に容易に吸収され得るようにイオン化されて作物栽培地の塩類集積を緩和することができる。
【0006】
ただし、有機質肥料の原料となる家畜物の排泄物、有機物を含有する廃棄物または植物性物質などを原料そのまま使う場合、保管および使用が難しいなどの問題点があって固形化された有機質肥料の形態で使っている。一方、有機質肥料に微生物を含んで製造する場合、一般的にわら、破砕した木片、天然鉱物などの坦体に微生物を投入する形態で適用できるが、坦体の形態で微生物を含む場合、有機物の発酵速度が低下したり完全発酵が難しいため土壌改質効果が低下し得、これに伴い、作物生長の促進効果が低下し得る。
【0007】
したがって、有機質肥料が容易に微生物を含むことができながらも、品質の改善および作物の生産性を向上させ得る有機質肥料およびその製造方法に対する技術開発が要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述した従来技術の問題点を解決するためのものであって、植物性および動物性物質を含む有機質肥料の表面のうち、少なくとも一部に液状の微生物をコーティングして機械的物性および品質を向上させることができ、作物の生産性が優秀な有機質肥料およびその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一側面によると、ひまし粕60~80重量部および米ぬか1~15重量部を含む有機質肥料において、前記有機質肥料の表面に少なくとも一部に形成されるコーティング層を含み、前記コーティング層は微生物培養液を噴射、乾燥および冷却させて形成された微生物がコーティングされた有機質肥料が提供される。
【0010】
一実施例において、前記有機質肥料は菜種油粕5~30重量部、パ-ム油粕1~5重量部および加工鶏糞5~20重量部からなる群から選択された少なくとも一つをさらに含むことができる。
【0011】
一実施例において、前記微生物培養液はバチルスサブチルス(Bacillus subtilis)培養液、サッカロミケスセレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)培養液、シュードモナスプロテゲンス(Pseudomonas protegens)培養液、アスペルギルスカレステミイ(Aspergillus callestemii)培養液、ロドトルラオーランティアカ(Rhodotorula aurantiaca)培養液、バチルスメガテリウム(Bacillus megaterium)培養液、ストレプトマイセスコスタリカヌス(Streptomyces costaricanus)培養液、サーモアスカスサーモフィラス(Thermoascus thermophilus)培養液およびこれらのうち2以上の組み合わせからなる群から選択された一つであり得る。
【0012】
一実施例において、前記コーティング層の厚さは10~50μmであり得る。
【0013】
一実施例において、前記有機質肥料の平均粒度は1~10mmであり得る。
【0014】
一実施例において、前記有機質肥料はペレットまたはグラニュールの形態であり得る。
【0015】
さらに他の一側面によると、(a)ひまし粕60~80重量部および米ぬか1~15重量部を混錬および粉砕する段階;(b)前記(a)段階の混合物をペレットまたはグラニュールの形態に成形して有機質肥料を製造する段階;(c)前記有機質肥料に微生物培養液を噴射してコーティング層を形成する段階;および(d)前記(c)段階の生成物を冷却および乾燥する段階;を含む微生物がコーティングされた有機質肥料の製造方法が提供される。
【0016】
一実施例において、前記(a)段階で菜種油粕5~30重量部、パ-ム油粕1~5重量部および加工鶏糞5~20重量部からなる群から選択された少なくとも一つをさらに含んで混錬および粉砕することができる。
【0017】
一実施例において、前記(c)段階は、有機質肥料をドラム型コーティング機に内部に投入する段階;および前記コーティング機の内部に微生物培養液を噴射する段階;を含み、前記コーティング機の回転するとともに、微生物培養液が噴射されながら前記有機質肥料のコーティングが遂行され得る。
【0018】
一実施例において、前記(d)段階の冷却および乾燥が温度0~10℃で遂行され得る。
【発明の効果】
【0019】
一側面に係る微生物がコーティングされた有機質肥料およびその製造方法は、NPK含量が高く、施肥時に雑草の発生が少なく、悪臭が発生しないので使用性が優秀であり得る。また、液状の微生物培養液からコーティング層が形成されることによって、有機質肥料の機械的物性、貯蔵安定性および品質が向上し得る。
【0020】
本明細書の一側面の効果は前記した効果に限定されるものではなく、本明細書の詳細な説明または特許請求の範囲に記載された構成から推論可能なすべての効果を含む。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本明細書の一実施例による微生物がコーティングされた有機質肥料の製造方法を図式化したものである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下では添付した図面を参照して本明細書の一側面を説明することにする。しかし、本明細書の記載事項は多様な異なる形態で具現され得、したがってここで説明する実施例に限定されるものではない。そして、図面で本明細書の一側面を明確に説明するために説明にかかわらない部分は省略し、明細書全体を通じて類似する部分に対しては類似する図面符号を付した。
【0023】
明細書全体で、或る部分が他の部分と「連結」されているとする時、これは「直接的に連結」されている場合だけでなく、その中間に他の部材を挟んで「間接的に連結」されている場合も含む。また、或る部分が何らかの構成要素を「含む」とする時、これは特に反対の記載がない限り他の構成要素を除くものではなく他の構成要素をさらに具備できることを意味する。
【0024】
本明細書で数値的値の範囲が記載された時、この具体的な範囲が別途に記述されない限りその値は有効数字に対する化学での標準規則に沿って提供された有効数字の精密度を有する。例えば、10は5.0~14.9の範囲を含み、数字10.0は9.50~10.49の範囲を含む。
【0025】
微生物がコーティングされた有機質肥料
【0026】
一側面によると、ひまし粕60~80重量部および米ぬか1~15重量部を含む有機質肥料において、前記有機質肥料の表面に少なくとも一部に形成されるコーティング層を含み、前記コーティング層は微生物培養液を噴射、乾燥および冷却させて形成された微生物がコーティングされた有機質肥料が提供される。
【0027】
従来有機質肥料は家畜物の排泄物、有機物を含有する廃棄物または植物性物質などを主原料で含んで使われたが、保管および使用の困難性などの問題で固形で製造して使っている。このうち、家畜物の排泄物、飲食廃棄物などを主原料として製造する場合、製造工程中に人為的な腐熟(発酵)を必ず経なければならない煩わしさがあり、肥料の施肥時に特有の悪臭発生および雑草が頻繁に発生し得る。
【0028】
本明細書の一側面に係る有機質肥料はひまし粕60~80重量部および米ぬか1~15重量部を含むことができる。また適用される土壌の状態や品種により菜種油粕5~30重量部、パ-ム油粕1~5重量部および加工鶏糞5~20重量部からなる群から選択された少なくとも一つをさらに含むことができる。このようにひまし粕、菜種油粕、パ-ム油粕、米ぬかなどの植物性原料を含んで従来の堆肥対比NPK含量を増加させ、加工鶏糞のような動物性原料を含んで有機物含量を増加させることができる。
【0029】
前記ひまし粕、菜種油粕およびパ-ム油粕は、原料となる種子から油脂を抽出した残りの副産物を意味し、前記ひまし粕はひましの実から油をとって残った副産物であり、菜種油粕はアブラナの種子から油をとって残った副産物であり、パ-ム油粕はヤシ類の種子から油を圧搾して残った副産物である。前記ひまし粕、菜種油粕およびパ-ム油粕は動物性原料に比べて相対的に高い窒素含量を含み得る。
【0030】
前記ひまし粕の含量は例えば、60重量部、61重量部、62重量部、63重量部、64重量部、65重量部、66重量部、67重量部、68重量部、69重量部、70重量部、71重量部、72重量部、73重量部、74重量部、75重量部、76重量部、77重量部、78重量部、79重量部または80重量部であり得るが、これに限定されるものではない。ひまし粕の含量が前記範囲を外れると肥料内窒素含量が低下し得る。
【0031】
また、前記菜種油粕の含量は例えば、5重量部、6重量部、7重量部、8重量部、9重量部、10重量部、11重量部、12重量部、13重量部、14重量部、15重量部、16重量部、17重量部、18重量部、19重量部、20重量部、21重量部、22重量部、23重量部、24重量部、25重量部、26重量部、27重量部、28重量部、29重量部または30重量部であり得るが、これに限定されるものではない。また、前記パ-ム油粕の含量は例えば、1重量部、2重量部、3重量部、4重量部または5重量部であり得るが、これに限定されるものではない。
【0032】
菜種油粕またはパ-ム油粕をさらに含む場合、それぞれの含量が前記範囲を外れて投入されると肥料のコーティング性が低下し得る。
【0033】
一方、前記有機質肥料は加工鶏糞をさらに含むことができる。一般的に鶏糞は牛糞と豚糞に比べて窒素、燐酸およびカリウムのような肥料成分の含量が多いため肥料の原料として価値が高く、飼料の成分がおおむね一定であるため鶏糞の成分の差が大きくない。ただし原料自体が水分が多いため、肥料として適用するために一般的に発酵過程や乾燥過程を経て有機質肥料として適用することができる。鶏糞を乾燥した乾鶏糞、一定期間の発酵過程を経た加工鶏糞および発酵過程を経て腐熟が完了した腐熟堆肥などの形態で製造することができる。特に、加工鶏糞は一定の醗酵期間を経るため乾鶏糞に比べて作物の生育に安定的であり得、腐熟堆肥に比べて醗酵機間が短いため養分の損失が少ない長所がある。
【0034】
前記加工鶏糞は原料である鶏糞におがくずを混合して発酵工程を経て製造され得、鶏糞およびおがくずが70~90:10~30の重量比で混合されたものであり得る。前記鶏糞におがくずを混合することによって、鶏糞の水分を調節および悪臭が低減されて取り扱いが容易であり得、有機質肥料への適用が容易であり得る。前記加工鶏糞は前述された植物性原料であるひまし粕、菜種油粕およびパ-ム油粕と配合されて前記有機質肥料の性能を向上させることができ、これに伴い、作物の生産性が向上し得る。
【0035】
前記加工鶏糞の含量は例えば、5重量部、6重量部、7重量部、8重量部、9重量部、10重量部、11重量部、12重量部、13重量部、14重量部、15重量部、16重量部、17重量部、18重量部、19重量部または20重量部であり得るが、これに限定されるものではない。
【0036】
前記米ぬかは玄米を白米に搗精する時に発生する副産物であり、燐酸の含量が高いので飼料、堆肥または親環境資材の用途で使われ得る。前記米ぬかは油成分を含んでおり、有機質肥料のそれぞれの原料が混合される時に均一に混合され得るように潤滑剤の役割を遂行できる。前記それぞれの原料が均一に混合されることによって、前記原料間の結合力が向上し得る。前記米ぬかの含量は例えば、1重量部、2重量部、3重量部、4重量部、5重量部、6重量部、7重量部、8重量部、9重量部、10重量部、11重量部、12重量部、13重量部、14重量部または15重量部であり得るが、これに限定されるものではない。米ぬかの含量が前記範囲を外れると前述した潤滑剤としての効果が不足したり、肥料の固形化が困難であり得る。
【0037】
一方、前記微生物がコーティングされた有機質肥料は前記有機質肥料の表面のうち少なくとも一部に形成されるコーティング層を含み、前記コーティング層は微生物培養液を噴射、乾燥および冷却させて形成されたものであり得る。
【0038】
前記コーティング層は微生物粉末存在下で有機質肥料を回転させたり、微生物培養液に有機質肥料を担持させる方法などでも形成され得るが、噴射、乾燥および冷却させる方法を利用すると、有機質肥料の特性と微生物肥料の特性を同時に発現しながらも機械的強度を向上させて貯蔵安定性を改善できる。
【0039】
油粕、加工鶏糞、米ぬかなどの有機物成分を主原料として製造される有機質肥料の場合、すでに発酵過程を経たか、人為的な腐熟が必須的に要求される成分ではないが、土壌に施肥された後に土壌の微生物と発酵過程を経て土壌の栄養成分を供給することができる。ただし発酵される速度が家畜の糞の堆肥に比べて遅く、土壌の荒廃化による微生物の供給が円滑でない場合に有機質肥料の土壌改質効果が顕著に低減し得る。
【0040】
前記コーティング層は前記有機質肥料の表面のうち少なくとも一部に形成されるものの、前記有機質肥料の中心部への浸透量が極めて少ないか、浸透しないものであり得る。コーティング層に含まれる微生物は液状で適用されることによって、コーティング時に前記有機質肥料の中心(0%)から75%を超過する地点である表面部に一定量が吸収され得、前記有機質肥料の材料間の結合力が強くなって前記微生物がコーティングされた有機質肥料の機械的物性が向上し得る。また、有機質肥料の米ぬかはコーティング層との結合力を強化させることができる。反面、有機質肥料の中心から75%以下の地点である中心部に微生物培養液が浸透する場合、乾燥および冷却工程で微生物がコーティングされた有機質肥料が破損する可能性がある。従来の化学肥料とは異なり、有機質肥料は相対的に結合力が不足している可能性があるが、コーティング層を表面部にのみ形成させることによって機械的強度と貯蔵安定性を改善できる。
【0041】
前記微生物培養液はバチルスサブチルス(Bacillus subtilis)培養液、サッカロミケスセレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)培養液、シュードモナスプロテゲンス(Pseudomonas protegens)培養液、アスペルギルスカレステミー(Aspergillus callestemii)培養液、ロドトルラオーランティアカ(Rhodotorula aurantiaca)培養液、バチルスメガテリウム(Bacillus megaterium)培養液、ストレプトマイセスコスタリカヌス(Streptomyces costaricanus)培養液、サーモアスカスサーモフィラス(Thermoascus thermophilus)培養液およびこれらのうち2以上の組み合わせからなる群から選択された一つであり得、前記微生物培養液は1x106~7cfu/gの微生物粉末を精製水に300~500倍希釈したものであり得るが、これに限定されるものではない。
【0042】
一方、前記コーティング層の厚さは10~50μmであり得、例えば、10μm、11μm、12μm、13μm、14μm、15μm、16μm、17μm、18μm、19μm、20μm、21μm、22μm、23μm、24μm、25μm、26μm、27μm、28μm、29μm、30μm、31μm、32μm、33μm、34μm、35μm、36μm、37μm、38μm、39μm、40μm、41μm、42μm、43μm、44μm、45μm、46μm、47μm、48μm、49μmまたは50μmであり得るが、これに限定されるものではない。前記コーティング層の厚さが10μm未満であると前記有機質肥料の品質が低下したり機械的強度の改善効果が不充分であり得、50μmを超過すると必要以上のコーティング層が形成されて前記有機質肥料の肥効速度が低下するか、内部に培養液が過度に浸透して機械的物性が低下し得る。
【0043】
一方、前記有機質肥料の平均粒度は1~10mmであり得、例えば、1mm、2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mmまたは10mmであり得るが、これに限定されるものではない。前記有機質肥料の平均粒度が1mm未満であると前記有機質肥料の流失の危険性が増加し得、10mmを超過すると前記有機質肥料の機械的物性が低下し得る。
【0044】
一方、前記有機質肥料はペレットまたはグラニュールの形態であり得る。具体的には、前記有機質肥料はペレットまたはグラニュールの固形粒子で製造されて肥料の運搬時に粉塵の発生が最小化し得、施肥時に均一に散布され得るため使用の便宜性が向上し得る。
【0045】
微生物がコーティングされた有機質肥料の製造方法
【0046】
図1は、一実施例に係る有機質肥料の製造方法を図式化したものである。
【0047】
図1を参照すると、(a)ひまし粕60~80重量部および米ぬか1~15重量部を混錬および粉砕する段階;(b)前記(a)段階の混合物をペレットまたはグラニュールの形態に成形して有機質肥料を製造する段階;(c)前記有機質肥料に微生物培養液を噴射してコーティング層を形成する段階;および(d)前記(c)段階の生成物を冷却および乾燥する段階;を含む微生物がコーティングされた有機質肥料の製造方法が提供される。
【0048】
まず、(a)段階でひまし粕60~80重量部および米ぬか1~15重量部を混錬および粉砕して混合物を製造するか、菜種油粕5~30重量部、パ-ム油粕1~5重量部および加工鶏糞5~20重量部からなる群から選択された少なくとも一つをさらに含んで混錬および粉砕して混合物を製造することができる。前記各原料に対する物性、含量およびこれに伴う具体的な効果は前述した通りである。
【0049】
前記(a)段階の混合物は(b)段階でペレットまたはグラニュールの形態に成形して有機質肥料が製造され得る。具体的には、前記(a)段階の混合物は成形機に投入されてペレットまたはグラニュールの形態で固形化されて成形され得、前記(b)段階は有機質肥料の成形温度が300~500℃、例えば、300℃、325℃、350℃、375℃、400℃、425℃、450℃、475℃、500℃またはこれらのうち両値の間の値で遂行され得る。前記成形温度が300℃未満であると有機質肥料の成形性が低下し得、500℃を超過すると成形温度が過度に高いため有機質肥料が破壊され得る。
【0050】
前記(c)段階で前記有機質肥料に微生物培養液を噴射してコーティング層を形成させることができる。具体的には、前記(c)段階は、前記(b)段階で成形された有機質肥料をドラム型コーティング機に内部に投入する段階;および前記コーティング機の内部に微生物培養液を噴射する段階;を含み、前記コーティング機の回転とともに、微生物培養液が噴射されながら前記有機質肥料のコーティングが遂行され得、これに伴い、前記有機質肥料の表面に均一にコーティング層が形成され得る。前記コーティング層は微生物培養液を含むことによって、前記微生物培養液の一部が前記有機質肥料に吸収されて前記有機質肥料の結合力を堅固に増加させることができ、これに伴い、有機質肥料の機械的物性が向上し得る。また、前記微生物培養液が直接前記有機質肥料にコーティングされることによって前記有機質肥料の肥効速度が向上し得るため作物の生産性を向上させることができる。また、前記コーティング層が回転式噴射によって形成されながら培養液の過度な浸透を防ぎ、機械的物性と貯蔵安定性を改善できる。
【0051】
前記ドラム型コーティング機は、有機質肥料の特性と形成しようとするコーティング層の厚さによってドラムの回転速度と培養液の噴射量を調節することができる。例えば、ドラムの回転速度は5~25rpmであり得、培養液の噴射量は有機質肥料100体積部に対して0.1~20体積部であり得る。ドラムの回転速度が増加するか培養液の噴射量が減少すればコーティング層の厚さが減少し、ドラムの回転速度が減少するか培養液の噴射量が増加すればコーティング層の厚さが増加し得る。
【0052】
前記(d)段階で前記(c)段階の生成物を冷却および乾燥させることができる。前記(d)段階の冷却および乾燥が温度0~10℃で遂行され得、冷却および乾燥温度が前記範囲を満足すれば過度に冷却および乾燥して機械的物性が低下したり有機質肥料およびコーティング層間の結合力が低下する問題点を防止することができる。
【0053】
一方、前記コーティング層の厚さは10~50μmであり得、例えば、10μm、11μm、12μm、13μm、14μm、15μm、16μm、17μm、18μm、19μm、20μm、21μm、22μm、23μm、24μm、25μm、26μm、27μm、28μm、29μm、30μm、31μm、32μm、33μm、34μm、35μm、36μm、37μm、38μm、39μm、40μm、41μm、42μm、43μm、44μm、45μm、46μm、47μm、48μm、49μmまたは50μmであり得るが、これに限定されるものではない。前記コーティング層の厚さが10μm未満であると前記有機質肥料の品質および機械的物性が低下し得、50μmを超過すると必要以上のコーティング層が形成されて前記有機質肥料の肥効速度が低下し得る。
【0054】
一方、前記有機質肥料の平均粒度は1~10mmであり得、例えば、1mm、2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mmまたは10mmであり得るが、これに限定されるものではない。前記有機質肥料の平均粒度が1mm未満であると前記有機質肥料の流失の危険性が増加し得、10mmを超過すると前記有機質肥料の機械的物性が低下し得る。
【0055】
以下、本明細書の実施例についてさらに詳細に説明することにする。ただし、以下の実験結果は前記実施例のうち代表的な実験結果のみを記載したものであり、実施例などによって本明細書の範囲と内容が縮小または制限されて解釈され得ない。以下で明示的に提示していない本明細書の多様な具現例のそれぞれの効果は、該当部分で具体的に記載することにする。
【0056】
実施例1
【0057】
粉砕機にひまし粕80重量部、菜種油粕10重量部、パ-ム油粕5重量部および米ぬか5重量部を投入して混錬および粉砕して混合物を製造した。
【0058】
製造された混合物に粒状成形機に投入して400℃で押し出してペレット形態の有機質肥料を成形した。成形された有機質肥料をドラム型コーティング機に投入して回転させると同時に、バチルスメガテリウム培養液を噴射させて有機質肥料の表面に30μmの厚さでコーティングした後、冷却機で5℃の温度で2時間の間冷却および乾燥して平均粒度が5mmである微生物がコーティングされた有機質肥料を製造した。
【0059】
実施例2
【0060】
粉砕機にひまし粕70重量部、鶏糞およびおがくずが80:20の重量比で混合された加工鶏糞20重量部および米ぬか10重量部を投入して混錬および粉砕して混合物を製造した。
【0061】
製造された混合物に粒状成形機に投入して400℃で押し出してグラニュール形態の有機質肥料を成形した。成形された有機質肥料をドラム型コーティング機に投入して回転させると同時に、バチルスメガテリウム培養液を噴射させて有機質肥料の表面に30μmの厚さでコーティングした後、冷却機で5℃の温度で2時間の間冷却および乾燥して平均粒度が5mmである微生物がコーティングされた有機質肥料を製造した。
【0062】
実施例3
【0063】
粉砕機にひまし粕60重量部、菜種油粕30重量部および米ぬか10重量部を投入して混錬および粉砕して混合物を製造した。
【0064】
製造された混合物に粒状成形機に投入して400℃で押し出してグラニュール形態の有機質肥料を成形した。成形された有機質肥料をドラム型コーティング機に投入して回転させると同時に、バチルスサブチルス培養液を噴射させて有機質肥料の表面に30μmの厚さでコーティングした後、冷却機で5℃の温度で2時間の間冷却および乾燥して平均粒度が5mmである微生物がコーティングされた有機質肥料を製造した。
【0065】
実施例4
【0066】
ドラム回転速度を増加させ、培養液噴射量を減少させてコーティング層の厚さが15μmとなるようにコーティングしたことを除いては実施例1と同一の方法で微生物がコーティングされた有機質肥料を製造した。
【0067】
実施例5
【0068】
培養液噴射量を増加させてコーティング層の厚さが45μmとなるようにコーティングしたことを除いては実施例1と同一の方法で微生物がコーティングされた有機質肥料を製造した。
【0069】
比較例1
【0070】
従来家畜物の排泄物を主原料として製造された有機質肥料を比較例1にした。
【0071】
比較例2
【0072】
微生物培養液を含むコーティング層を形成しないことを除いては実施例1と同一の方法で有機質肥料を製造した。
【0073】
比較例3
【0074】
成形された有機質肥料を微生物粉末と回転式撹はんしてコーティング層を形成したことを除いては実施例1と同一の方法で微生物がコーティングされた有機質肥料を製造した。微生物粉末が有機質肥料に不均質にコーティングされてコーティング層の厚さ測定が不可能であった。
【0075】
比較例4
【0076】
成形された有機質肥料を微生物培養液に30秒の間担持させた後、冷却および乾燥してコーティング層を形成したことを除いては実施例1と同一の方法で微生物がコーティングされた有機質肥料を製造した。コーティング層の厚さは約80μmに形成されたし、微生物培養液が成形された有機質肥料の内部に浸透して冷却および乾燥時に微生物がコーティングされた有機質肥料が破損する比率が30%を超過して歩留まりが悪かった。
【0077】
比較例5
【0078】
ドラム回転速度を増加させ、微生物培養液の噴射量を減少させてコーティング層の厚さを5μmに調節したことを除いては実施例1と同一の方法で有機質肥料を製造した。
【0079】
比較例6
【0080】
微生物培養液の噴射量を増加させてコーティング層の厚さを75μmに調節したことを除いては実施例1と同一の方法で有機質肥料を製造した。微生物培養液が成形された有機質肥料の内部に浸透して冷却および乾燥時に微生物がコーティングされた有機質肥料の一部が破損する現象が発生した。微生物がコーティングされた有機質肥料が破損して直径の約15%が失われたという点で、微生物培養液が過度に浸透する場合、このような破損が発生量が増加するものと予想される。
【0081】
実験例1:有機質肥料の成分評価
【0082】
実施例および比較例で製造された有機質肥料の成分評価のために、それぞれの有機質肥料のpH、OM(有機質)、T-N(総窒素、P2O5(リン)、K2O(カリウム)、CaO(カルシウム)、MgO(マグネシウム)、Na2O(ナトリウム)および水分含量を測定して、その結果を表1に示した。
【0083】
【0084】
前記表1を参照すると、従来家畜の糞の堆肥である比較例1を除いた有機質肥料は微差が存在するが有機質成分が75%以上を満足したし、特に実施例1および2の有機質肥料成分のうち最も有効な成分である窒素(N)、リン(P)、カリウム(K)の含量が最も高い数値を示すことを確認できるため、施肥時に土壌の品質を改善でき、作物の生産性が向上するものと予想できる。これに反し、コーティング層を含んでいないか(比較例2)、培養液に有機質肥料を担持させてコーティング層を形成する場合(比較例4)の有機質肥料はNPK成分が多少低下することを確認することができる。
【0085】
実験例2:有機質肥料の機械的物性評価
【0086】
実施例および比較例で製造された有機質肥料の機械的物性を確認するために、衝撃強度および引張強度を測定したし、その結果を表2に示した。
【0087】
-衝撃強度(1/8″、kg・cm/cm):ASTM D256方法に基づいて測定した。(Notched-Izod Impact)
【0088】
-引張強度(kg・cm/cm):ASTM D638方法に基づいて測定した。
【0089】
【0090】
表2を参照すると、実施例の微生物がコーティングされた有機質肥料の衝撃強度および引張強度を参照すると、機械的物性が優秀であることを確認でき、これに伴い、実施例の微生物がコーティングされた有機質肥料を施肥時に破損および流失することなく散布することができ、これに伴い、前記有機質肥料の使用対比肥効が優秀であるため作物の生産性が向上するものと予想することができる。
【0091】
これに反し、従来家畜物の堆肥の場合(比較例1)多量の水分を含有して衝撃強度および引張強度が顕著に低下することを確認でき、コーティング層を含んでいないか(比較例2)、微生物粉末を利用してコーティング層を形成時(比較例3)に衝撃強度および引張強度が低い値を示した。微生物培養液に担持させてコーティング層を形成した場合(比較例4)微生物がコーティングされた有機質肥料内部に培養液が過度に浸透して衝撃強度および引張強度が低下した。また、培養液を噴射させてコーティングを遂行してもコーティング層の厚さが過度に薄い場合(比較例5)、有機質肥料の結合力が低下して強度改善効果が不十分であったし、コーティング層の厚さが過度に厚い場合(比較例6)、培養液が内部に過度に浸透して機械的強度が低下したことを確認することができる。
【0092】
前述した本明細書の説明は例示のためのものであり、本明細書の一側面が属する技術分野の通常の知識を有する者は本明細書に記載された技術的思想や必須の特徴を変更することなく他の具体的な形態に容易に変形可能である。したがって以上で記述した実施例はすべての面で例示的なものであり限定的ではない。例えば、単一型で説明されている各構成要素は分散されて実施されてもよく、同様に分散されたもので説明されている構成要素も結合された形態で実施され得る。
【0093】
本明細書の範囲は後述する特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の意味および範囲そして、その均等概念から導き出されるすべての変更または変形された形態は本明細書の範囲に含まれる。