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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】連結具及び施工方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/24 20060101AFI20240408BHJP
   E04B 1/58 20060101ALI20240408BHJP
   E04B 7/02 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
E04B1/24 Q
E04B1/58 509N
E04B7/02 521D
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023087504
(22)【出願日】2023-05-29
【審査請求日】2023-05-29
(73)【特許権者】
【識別番号】323005500
【氏名又は名称】西田 大
(74)【代理人】
【識別番号】100111095
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 光男
(72)【発明者】
【氏名】西田 大
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】実開昭52-49511(JP,U)
【文献】実開昭47-17410(JP,U)
【文献】実開平6-54805(JP,U)
【文献】実開平3-15932(JP,U)
【文献】実開昭58-89503(JP,U)
【文献】特開2012-87570(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/24
E04B 1/58
E04B 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1鉄骨と、第2鉄骨とを用いる鉄骨工事に際して用いられ、
前記第1鉄骨と前記第2鉄骨とを所定距離離隔させた状態で連結させるための連結具であって、
前記連結具は、金属板製の距離確保部材と、金属板製の補強部材とを備え、
前記距離確保部材の上部には、板厚方向に貫通するボルト用の孔部が設けられているとともに、前記孔部よりも下方には、板厚方向に貫通し、上下方向に長く延びる長孔部が設けられ、
前記補強部材は、補強部材本体と、該補強部材本体から側方に突出する第1突出部、及び、該第1突出部の先端から上方、又は、下方に突出する第2突出部を有する鉤状の挿入部とを具備し、
前記第2突出部、及び、前記第1突出部が前記長孔部に挿入させられることで、前記挿入部が前記長孔部に係合され、前記補強部材が、前記距離確保部材に対し、相互に直交した状態で仮取付状態とされ、且つ、前記距離確保部材と前記補強部材との下面同士が面一となることを特徴とする連結具。
【請求項2】
前記第2突出部は、先端部側ほど前記補強部材本体との隙間が大きくなるよう傾斜していることを特徴とする請求項1に記載の連結具。
【請求項3】
前記補強部材本体の側部のうち、前記挿入部とは反対側の上部には、テーパー部、又は、切り欠き部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の連結具。
【請求項4】
前記長孔部、及び、前記挿入部は、それぞれ複数設けられていることを特徴とする請求項1に記載の連結具。
【請求項5】
前記長孔部は、幅方向中央部に設けられ、
前記孔部は、幅方向中央部とは異なる位置に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の連結具。
【請求項6】
前記第1鉄骨は、H型鋼であり、
前記第2鉄骨は、C型鋼であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の連結具。
【請求項7】
前記H型鋼は、梁であり、
前記C型鋼は、母屋であることを特徴とする請求項6に記載の連結具。
【請求項8】
第1鉄骨と、第2鉄骨とを用いる鉄骨工事に際して、
前記第1鉄骨と前記第2鉄骨とを所定距離離隔させた状態で連結させるための施工方法であって、
前記仮取付状態にある請求項1に記載の連結具の下面に相当する部位と、前記第1鉄骨の所定の位置とを合致させた状態で、互いを溶接することで、前記連結具、及び、前記第1鉄骨を連結状態とする第1連結工程と、
前記距離確保部材の前記孔部と、前記第2鉄骨に対し予め形成された取付孔との位置を合致させた状態とし、ボルト及びナットで締結することで、前記連結具、及び、前記第2鉄骨を連結状態とする第2連結工程とを備えていることを特徴とする施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄骨工事に際して用いられる連結具及び施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅や店舗等の建物の施工に際し、主たる建設材料として「鉄骨」が用いられることがある。鉄骨を用いた建築工法にあっては、天井部(屋根裏)の工事に際して、屋根の下地になる母屋(もや)が複数箇所に設けられる。一般的に、母屋としては、C型鋼や角形鋼管等(例えば、STKR)が採択される場合が多い。また、母屋の設置後には、各母屋に対して、垂木や折板屋根等の屋根材が張られることによって、屋根が完成することとなる。
【0003】
また、各母屋の下方には、建物に強度を持たせるため、大型の梁が複数箇所に設けられている。一般的に、梁としては、H型鋼等が採択される場合が多い。
【0004】
ところで、各母屋を所定の位置(屋根材が張れる位置)に配置するべく、梁と、母屋との間に、連結具を介在させることがある。この場合、梁と母屋とが所定距離離隔させられた状態で、連結具によって連結させられる。連結具の態様は多種多様であるが、通常、鋼製等の板状部材が用いられ、溶接やボルト・ナット等の締結部材によって、梁と母屋との間が連結させられる(例えば、特許文献1等参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-152673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術においては、母屋としてZ型鋼を用いる必要があり、汎用性が低い。
【0007】
また、梁と母屋との距離が比較的長い場合、板状部材もその分だけ上下に長いものとなり、たわみ易く、その結果、耐久性の低下といった懸念が生じる。そこで、板状部材に対して補強部材等(例えば、板状部材の板表面に対して、交差する方向に延在する新たな板状部材)を、別途設けることも考えられる。
【0008】
ところが、該補強部材を別途設ける場合、板状部材と補強部材とを連結させるべく、両者を互いに溶接させる必要がある。そのため、溶接に係る歩掛の増加、及び、作業性の低下等が懸念され、その結果、作業時間やコストの増大を招くおそれが生じる。
【0009】
尚、上述した課題は、壁の下地になる胴縁(どうぶち)の施工に際し、柱と胴縁との間に連結具を介在させるような場合においても、内在するものである。
【0010】
本発明は上記例示した問題点等を解決するためになされたものであって、その目的は、汎用性に優れ、且つ、作業時間やコストの増大を招くことなく、所定の位置に鉄骨を設置することができる連結具及び施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以下、上記目的等を解決するのに適した各手段につき項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果等を付記する。
【0012】
手段1.第1鉄骨と、第2鉄骨とを用いる鉄骨工事に際して用いられ、
前記第1鉄骨と前記第2鉄骨とを所定距離離隔させた状態で連結させるための連結具であって、
前記連結具は、金属板製の距離確保部材と、金属板製の補強部材とを備え、
前記距離確保部材の上部には、板厚方向に貫通するボルト用の孔部が設けられているとともに、前記孔部よりも下方には、板厚方向に貫通し、上下方向に長く延びる長孔部が設けられ、
前記補強部材は、補強部材本体と、該補強部材本体から側方に突出する第1突出部、及び、該第1突出部の先端から上方、又は、下方に突出する第2突出部を有する鉤状の挿入部とを具備し、
前記第2突出部、及び、前記第1突出部が前記長孔部に挿入させられることで、前記挿入部が前記長孔部に係合され、前記補強部材が、前記距離確保部材に対し、相互に直交した状態で仮取付状態とされ、且つ、前記距離確保部材と前記補強部材との下面同士が面一となることを特徴とする連結具。
【0013】
手段1によれば、距離確保部材の長孔部に対し、補強部材の挿入部を挿入させることで連結具を仮取付状態とすることが可能である。
【0014】
その後、例えば、該仮取付状態とされた連結具の下面と、水平方向に延びる第1鉄骨の所定の位置とを合致させた状態で、互いを溶接するだけで、連結具、及び、第1鉄骨を連結状態とすることが可能となる。その際、仮取付状態であった連結具は、該溶接により、完全に固定された取付状態となる。
【0015】
また、距離確保部材の孔部と、第2鉄骨に対し予め形成された取付孔との位置を合致させた状態とし、ボルト及びナットで締結することで、連結具、及び、第2鉄骨を連結状態とすることが可能となる。
【0016】
尚、上述した第1鉄骨と第2鉄骨とが、それぞれ逆の態様で用いられることとしてもよいし、連結具の下面に相当する部位を、例えば上下方向に延びる第1鉄骨の一側面(縦面)に対し溶接することとしてもよい。
【0017】
本手段によれば、連結具と第1鉄骨との溶接を行う前に、距離確保部材と補強部材とを仮取付状態とすることができる。そのため、距離確保部材と、補強部材とを強固に取着する作業、例えば、溶接作業が不要となる。従って、本手段では、1回の溶接(最小限の回数)を行うだけで、連結具と第1鉄骨とを連結状態とすることができる。その結果、作業者の作業負担を著しく軽減でき、作業コスト(溶接に係る歩掛)の低減を図ることができるとともに、作業時間の飛躍的な短縮を図ることができる。
【0018】
また、本手段の連結具は、金属板製の距離確保部材と、金属板製の補強部材とから構成されるシンプルな構成である。そのため、第1鉄骨、又は、第2鉄骨のうち、一方には連結具を溶接する所定のスペースが、他方には取付孔が設けられていることを前提として、多岐に亘る各種の鉄骨を用いることができる。この点、本手段の連結具は、Z型鋼を用いる必要のある従来技術と比較して、非常に汎用性に優れているといえる。
【0019】
さらに、連結具を仮取付状態とさせる作業は、単純な「組立て」であり、「溶接」等の作業は不要であることから、個人の溶接スキル等の外的要因によって、施工品質に影響が及ぶといった事態を抑制することができ、この点において施工品質の向上を図ることができる。
【0020】
また、仮取付状態においては、前述した逆の手順を踏めば、距離確保部材から補強部材を容易に取り外すことが可能である。従って、例えば、形状や長さ等が異なる連結具を2種類以上用意した場合において、異なる種類の距離確保部材と補強部材とを誤って仮取付状態とさせてしまった場合であっても、一旦取り外して、再度仮取付作業を行うことが可能となる。そのため、ユーザーフレンドリーであるとともに、誤った部材同士で仮取付状態にさせてしまった連結具を、破棄等するといった事態を防止することができる。
【0021】
手段2.前記第2突出部は、先端部側ほど前記補強部材本体との隙間が大きくなるよう傾斜していることを特徴とする手段1に記載の連結具。
【0022】
手段2によれば、距離確保部材の板厚等に、多少の誤差が発生した場合であっても、第2突出部の先端部側ほど隙間が大きくなるよう傾斜していることから、余裕をもって挿入部を挿入させることができ、連結具をより確実に仮係合状態とすることが可能となる。
【0023】
また、その後の溶接により、距離確保部材と補強部材とを一挙に取付けることができるため、多少のガタつき等があったとしても問題はない。
【0024】
手段3.前記補強部材本体の側部のうち、前記挿入部とは反対側の上部には、テーパー部、又は、切り欠き部が設けられていることを特徴とする手段1に記載の連結具。
【0025】
手段3によれば、テーパー部、又は、切り欠き部が設けられていることで、補強部材ひいては連結具の軽量化を図ることが可能となる。その結果、作業者の作業負担を軽減できるとともに、製造コストの低減を図ることが可能となる。加えて、作業者が、該テーパー部を握り、安定した状態で、補強部材を運ぶことも可能になる。
【0026】
手段4.前記長孔部、及び、前記挿入部は、それぞれ複数設けられていることを特徴とする手段1に記載の連結具。
【0027】
手段4によれば、係合箇所が複数設けられることから、応力を分散させることができ、連結具の耐久性をさらに向上させることが可能となる。
【0028】
手段5.前記長孔部は、幅方向中央部に設けられ、
前記孔部は、幅方向中央部とは異なる位置に設けられていることを特徴とする手段1に記載の連結具。
【0029】
手段5によれば、距離確保部材の幅方向の位置が、長孔部と孔部とで異なることで、長孔部にかかる応力と、孔部にかかる応力とを、幅方向1箇所に集中させることなく、幅方向において適度に分散させることができる。そのため、連結具の耐久性をさらに向上させることが可能となる。
【0030】
手段6.前記第1鉄骨は、H型鋼であり、
前記第2鉄骨は、C型鋼であることを特徴とする手段1乃至5のいずれかに記載の連結具。
【0031】
手段7.前記H型鋼は、梁であり、
前記C型鋼は、母屋であることを特徴とする手段6に記載の連結具。
【0032】
上記手段6、7のように構成することも可能である。
【0033】
手段8.第1鉄骨と、第2鉄骨とを用いる鉄骨工事に際して、
前記第1鉄骨と前記第2鉄骨とを所定距離離隔させた状態で連結させるための施工方法であって、
前記仮取付状態にある手段1に記載の連結具の下面に相当する部位と、前記第1鉄骨の所定の位置とを合致させた状態で、互いを溶接することで、前記連結具、及び、前記第1鉄骨を連結状態とする第1連結工程と、
前記距離確保部材の前記孔部と、前記第2鉄骨に対し予め形成された取付孔との位置を合致させた状態とし、ボルト及びナットで締結することで、前記連結具、及び、前記第2鉄骨を連結状態とする第2連結工程とを備えていることを特徴とする施工方法。
【0034】
手段8によれば、第1連結工程においては、仮取付状態とされた連結具の下面に相当する部位と、第1鉄骨の所定の位置とが合致させられた状態で、互いに溶接される。これにより、それまで仮取付状態であった連結具は、第1鉄骨に対し完全に固定された取付状態となる。従って、距離確保部材と補強部材とを溶接等せずとも、連結具を強固に固定させることができる。
【0035】
次に、第2連結工程においては、距離確保部材の孔部と、第2鉄骨に対し予め形成された取付孔との位置が合致させられ、ボルト及びナットで締結することで、連結具、及び、第2鉄骨が連結状態とさせられる。これら一連の工程が行われることで、第1鉄骨と第2鉄骨とが所定距離離隔された状態で、強固に連結させられる。また、連結具は補強部材によって十分に補強されることとなり、第1鉄骨と第2鉄骨との連結状態の強化が十分に図られることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】梁と母屋との間に介在された連結具を示す斜視図である。
図2】連結具を示す斜視図である。
図3】連結具を示す分解斜視図である。
図4】連結具を仮取付状態とする際の手順を示す断面模式図である。
図5】第1連結工程の態様を示す斜視図である。
図6】第2連結工程の態様を示す斜視図である。
図7】別の実施形態における連結具を示す分解斜視図である。
図8】別の実施形態における連結具を示す分解斜視図である。
図9】別の実施形態における補強部材を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。尚、各図面においての寸法、縮尺は、便宜上、簡略化等している部分があるため、実際の寸法、縮尺と必ずしも一致するわけではない。
【0038】
図1に示すように、本実施形態の連結具1は、第1鉄骨(H型鋼)としての梁2と、第2鉄骨(C型鋼)としての母屋3とを用いる鉄骨工事に際して、梁2と母屋3とを所定距離離隔させた状態で連結させるために使用されるものである。
【0039】
図2、及び、図3に示すように、連結具1は、鉄製板状の距離確保部材11と、補強部材21とを備えている。連結具1は、距離確保部材11に対し、補強部材21が取付けられることで、仮取付状態とされる(詳細については後述する)。
【0040】
距離確保部材11は、正面長方形状をなし、その上部には、板厚方向に貫通するボルト用の孔部12が左右2箇所に設けられている。また、孔部12よりも下方、且つ、幅方向中央部には、板厚方向に貫通し、上下方向に長く延びる長孔部13が上下2箇所に設けられている。
【0041】
補強部材21は、補強部材本体22と、該補強部材本体22から側方に突出する第1突出部23、及び、該第1突出部23の先端から上方に突出する第2突出部24を有する鉤状の挿入部25とを備えている。尚、第2突出部24は、先端部側(上方側)ほど補強部材本体22との隙間が大きくなるよう傾斜している。また、補強部材本体22の側部のうち、挿入部25とは反対側の側部にはテーパー部26が設けられており、上部ほど幅狭となっている。
【0042】
連結具1に関し、寸法等について特に制限はないが、一例として挙げると、距離確保部材11は、その高さが約325mm、幅が約100mm、厚さが約6mmとなっている。また、各孔部12の径の大きさが約15mmとなっており、各長孔部13の高さが約36mm、幅が約6mmとなっている。さらに、補強部材21の補強部材本体22は、高さが約240mm、幅が約60mm、厚さが約6mmとなっている。尚、前述したように、第2突出部24は傾斜しており、第2突出部24の先端部と、補強部材本体22との隙間(距離)は、6.2mmとなっており、第2突出部24及び第1突出部23の境界の最上部と、補強部材本体22との隙間(距離)は、6.0mmとなっている。
【0043】
次に、連結具1を仮取付状態とする際の手順を、図4を用いて説明する。まず図4(a)に示すように、水平方向において、距離確保部材11の各長孔部13の位置と、補強部材21の各挿入部25の位置とを、対応させておく。次に、図4(b)に示すように、各挿入部25を、各長孔部13に挿入する。その後、図4(c)に示すように、各長孔部13の上縁部と、各第1突出部23の上面部とが当接するまで、補強部材21を上方に相対移動させる。該移動により、各挿入部25が各長孔部13に係合され、補強部材21が、距離確保部材11に対し、相互に直交した状態の仮取付状態となる。該仮取付状態にあっては、距離確保部材11と補強部材21との下面同士が面一となる。
【0044】
次に、連結具1を用いた施工方法について説明する。
【0045】
まず、図5に示すように、仮取付状態にある連結具1の下面に相当する部位と、予め設置されている梁2の所定の位置とを合致させた状態にする。そして、溶接トーチ31等を用いて、互いを溶接する(例えば、MIG溶接やCO2溶接等)。該溶接により、連結具1と、梁2とが連結状態となる。加えて、仮取付状態であった連結具1は、完全に固定された取付状態となる。
【0046】
その後、図6に示すように、距離確保部材11の孔部12と、母屋3に対し予め形成された取付孔32との位置とを合致(対応)させた状態にする。そして、ボルト33及びナット34を用いて、互いを締結する。該締結により、連結具1と、母屋3とが連結状態となる。ここまでの手順を踏むことで、図1に示すように、連結具1を、梁2と、母屋3との間に介在させる、すなわち、梁2に対し、母屋3を所定距離離隔させて設置するといった施工が完了する。
【0047】
以上詳述したように、本実施形態によれば、距離確保部材11の長孔部13に対し、補強部材21の挿入部25を挿入させることで連結具1を仮取付状態とすることが可能である。
【0048】
その後、該仮取付状態とされた連結具1の下面と、水平方向に延びる梁2の所定の位置とを合致させた状態で、互いを溶接するだけで、連結具1、及び、梁2を連結状態とすることが可能となる。その際、仮取付状態であった連結具1は、梁2に対し完全に固定された取付状態となる。従って、距離確保部材11と補強部材21とを溶接等せずとも、連結具1を強固に固定させることができる。
【0049】
また、距離確保部材11の孔部12と、母屋3に対し予め形成された取付孔32との位置を合致させた状態とし、ボルト33及びナット34で締結することで、連結具1、及び、母屋3を連結状態とすることが可能となる。従って、梁2と母屋3とが所定距離離隔された状態で、強固に連結させられることとなる。また、連結具1は補強部材21によって十分に補強されることとなり、梁2と母屋3との連結状態の強化が十分に図られることとなる。
【0050】
本実施形態によれば、連結具1と梁2との溶接を行う前に、距離確保部材11と補強部材21とを仮取付状態とすることができる。そのため、距離確保部材11と、補強部材21とを強固に取着する作業、例えば、溶接作業が不要となる。従って、本実施形態では、1回の溶接(最小限の回数)を行うだけで、連結具1と梁2とを連結状態とすることができる。その結果、作業者の作業負担を著しく軽減でき、作業コスト(溶接に係る歩掛)の低減を図ることができるとともに、作業時間の飛躍的な短縮を図ることができる。
【0051】
また、本実施形態の連結具1は、鉄製板状の距離確保部材11と、補強部材21とから構成されるシンプルな構成である。そのため、梁2、又は、母屋3のうち、一方には連結具1を溶接する所定のスペースが、他方には取付孔32が設けられていることを前提として、多岐に亘る各種の鉄骨を用いることができる。この点、本実施形態の連結具1は、Z型鋼を用いる必要のある従来技術と比較して、非常に汎用性に優れているといえる。
【0052】
さらに、連結具1を仮取付状態とさせる作業は、単純な「組立て」であり、「溶接」等の作業は不要であることから、個人の溶接スキル等の外的要因によって、施工品質に影響が及ぶといった事態を抑制することができ、この点において施工品質の向上を図ることができる。
【0053】
また、仮取付状態においては、前述した逆の手順を踏めば、距離確保部材11から補強部材21を容易に取り外すことが可能である。従って、例えば、形状や長さ等が異なる連結具1を2種類以上用意した場合において、異なる種類の距離確保部材11と補強部材21とを誤って仮取付状態とさせてしまった場合であっても、一旦取り外して、再度仮取付作業を行うことが可能となる。そのため、ユーザーフレンドリーであるとともに、誤った部材同士で仮取付状態にさせてしまった連結具1を、破棄等するといった事態を防止することができる。
【0054】
さらに、距離確保部材11の板厚等に、多少の誤差(例えば+0.1mm等)が発生した場合であっても、第2突出部24の先端部側ほど隙間が大きくなるよう傾斜していることから、余裕をもって挿入部25を挿入させることができ、連結具1をより確実に仮係合状態とすることが可能となる。
【0055】
また、その後の溶接により、距離確保部材11と補強部材21とを一挙に取付けることができるため、多少のガタつき等があったとしても問題はない。
【0056】
さらに、補強部材21にテーパー部26が設けられていることで、該補強部材21ひいては連結具1の軽量化を図ることが可能となる。その結果、作業者の作業負担を軽減できるとともに、製造コストの低減を図ることが可能となる。加えて、作業者が、該テーパー部26を握り、安定した状態で、補強部材21を運ぶことも可能になる。
【0057】
また、長孔部13や挿入部25(係合箇所)が複数設けられることから、応力を分散させることができ、連結具1の耐久性をさらに向上させることが可能となる。
【0058】
加えて、距離確保部材11の幅方向の位置が、長孔部13と孔部12とで異なることで、長孔部13にかかる応力と、孔部12にかかる応力とを、幅方向1箇所に集中させることなく、幅方向において適度に分散させることができる。そのため、連結具1の耐久性をさらに向上させることが可能となる。
【0059】
なお、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0060】
(a)上記実施形態では、連結具1における寸法や孔数等について言及しているが、該寸法や孔数等は特に限定されるものではない。すなわち、環境条件等(例えば、梁2と母屋3との所定距離の長さや、梁2のうち連結具1を溶接する所定のスペースの大きさ)に応じて、適宜、寸法や孔数等を設定することとしてもよい。
【0061】
例えば、梁2のうち、連結具1を溶接する所定のスペースが比較的広い場合等は、図7に示すように、幅広の距離確保部材11を具備する連結具1等を用いることが好ましい。
【0062】
また、反対に、連結具1を溶接する所定のスペースが比較的狭く、且つ、梁2と母屋3との所定距離の長さが短い場合等は、例えば図8に示すように、高さが低く、且つ、長孔部13と挿入部25とがそれぞれ1箇所のみの連結具1等を用いることとしてもよい。
【0063】
(b)上記実施形態では、補強部材21にテーパー部26が設けられているが、例えば図9(a)に示すように、特にテーパー部26を設けることなく長方形状の補強部材本体22としてもよいし、図9(b)に示すように、テーパー部26の代わりに、段差状の切り欠き部35を設けることとしてもよい。
【0064】
(c)上記実施形態では、連結具1の距離確保部材11、及び、補強部材21の材質は、共に鉄製であるが、該各部材11、21の材質は特に限定されるものではなく、他の金属、例えば、銅製であってもステンレス製であってもよい。
【0065】
(d)上記実施形態では、梁2としてH型鋼が用いられ、母屋3としてC型鋼が用いられているが、各鉄骨の形状等は、特に限定されるものではない。例えば、梁2としてZ型鋼等の他の鉄骨が、母屋3としてI型鋼等の他の鉄骨が用いられることとしてもよい。
【0066】
(e)上記実施形態では、いわゆる屋根の下地の施工に際して、連結具1を用いるケースについて説明したが、例えば、壁の下地になる胴縁(どうぶち)の施工に際して、連結具1を用いることとしてもよい。その場合、第1鉄骨、又は、第2鉄骨として、柱や胴縁が用いられ、該柱と該胴縁との間に連結具1を介在させることとなり、連結具1の下面に相当する部位を、上下方向に延びる柱又は胴縁の一側面(縦面)に対し溶接することとなる。
【0067】
(f)上記実施形態では、補強部材21の第2突出部24は、第1突出部23の先端から上方に突出しているが、下方に突出することとしても良い。その場合、長孔部13の下縁部と、第1突出部23の下面部とが当接するまで、補強部材21を下方に移動させることで、挿入部25が長孔部13に係合される(仮取付状態とされる)こととなる。
【符号の説明】
【0068】
1…連結具、2…第1鉄骨(H型鋼)としての梁2、3…第2鉄骨(C型鋼)としての母屋3、11…距離確保部材、12…孔部、13…長孔部、21…補強部材、22…補強部材本体、23…第1突出部、24…第2突出部、25…挿入部、26…テーパー部、32…取付孔、33…ボルト、34…ナット、35…切り欠き部。
【要約】
【課題】汎用性に優れ、且つ、作業時間やコストの増大を招くことなく、所定の位置に鉄骨を設置することができる連結具及び施工方法を提供する。
【解決手段】連結具1は、梁2と、母屋3とを所定距離離隔させた状態で連結させるためのものである。連結具1は、長孔部を有する距離確保部材11と、挿入部を有する補強部材21とを備え、該挿入部が該長孔部に挿入されることで、距離確保部材11と補強部材21とが仮取付状態となる。連結具1を用いた施工では、まず、仮取付状態にある連結具1の下面と、梁2の所定の位置とを合致させた状態にし、互いを溶接する。該溶接により、連結具1と、梁2とが連結状態となる。その後、孔部12と、母屋3の取付孔32との位置を合致させた状態にし、ボルト33とナット34とを用いて、互いを締結する。該締結により、連結具1と、梁2と、母屋3とが連結状態となり、施工が完了する。
【選択図】 図6
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9