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  • 特許-洗浄汚水処理装置及び仮設機材洗浄装置 図1
  • 特許-洗浄汚水処理装置及び仮設機材洗浄装置 図2
  • 特許-洗浄汚水処理装置及び仮設機材洗浄装置 図3A
  • 特許-洗浄汚水処理装置及び仮設機材洗浄装置 図3B
  • 特許-洗浄汚水処理装置及び仮設機材洗浄装置 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】洗浄汚水処理装置及び仮設機材洗浄装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/52 20230101AFI20240408BHJP
   B01D 24/02 20060101ALI20240408BHJP
   B01D 24/46 20060101ALI20240408BHJP
   B01D 29/62 20060101ALI20240408BHJP
   B08B 3/14 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
C02F1/52 B
B01D23/10 A
B01D23/24 Z
B08B3/14
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023133759
(22)【出願日】2023-08-21
【審査請求日】2023-08-21
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和5年1月16日にカセツリース株式会社栃木機材センターにて公開
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】506329155
【氏名又は名称】株式会社ワールドエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】110003535
【氏名又は名称】スプリング弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 和伸
【審査官】大内 康裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-301550(JP,A)
【文献】特許第5777017(JP,B1)
【文献】特開昭63-065995(JP,A)
【文献】特開2002-316148(JP,A)
【文献】特開2022-148534(JP,A)
【文献】特開2008-229437(JP,A)
【文献】特開2006-035073(JP,A)
【文献】登録実用新案第3164513(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 3/00~ 3/14
B01D 29/00~29/48
B01D 21/30
E04G 21/14~21/22
C02F 1/52
B01D 24/02
B01D 24/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧水噴出ガンを用いた仮設機材洗浄装置で仮設機材を洗浄した洗浄汚水を処理して前記仮設機材洗浄装置で再利用可能な処理水を得る洗浄汚水処理装置であって、
前記洗浄汚水を凝集剤で凝集沈殿処理する凝集沈殿装置と、
前記凝集沈殿装置で得られた上澄み水を濾過フィルタで濾過処理する濾過装置と、
前記仮設機材洗浄装置で発生した前記洗浄汚水を前記凝集沈殿装置に供給する供給ラインと、
前記濾過装置で得られた前記処理水を前記仮設機材洗浄装置に戻す戻しラインと、制御手段と、を備え、
前記供給ラインは、前記仮設機材洗浄装置と前記凝集沈殿装置との間に設けられた前記洗浄汚水を貯留するための回収タンクを含み、
前記濾過装置では前記濾過フィルタとしてヤシガラ繊維フィルタと、スポンジフィルタと、を用いて重力濾過され、
前記凝集沈殿装置の沈殿槽内には前記上澄み水を取水する取水配管の取水口が設けられると共に前記濾過装置の濾過槽の下部には前記濾過装置で処理した前記処理水を排出する処理水配管の排出口が設けられ、
前記取水口が前記排出口よりも所定の高低差Lだけ高く位置することによって、前記濾過装置では前記所定の高低差Lによる位置エネルギーを濾過動力として重力濾過が行われ、
前記戻しラインは、
前記濾過装置で得られた前記処理水を貯留する処理水貯留タンクと、
前記濾過装置から前記処理水貯留タンクに前記処理水を送水する送水機構と、を有し、前記送水機構は、
水中ポンプ用タンクと、前記水中ポンプ用タンクに設けられたフロート付き水中ポンプと、前記フロート付き水中ポンプと前記処理水貯留タンクとを繋ぐ水中ポンプ用ホースと、で構成され、
前記凝集沈殿装置、前記濾過装置、前記供給ライン及び前記戻しラインは、前記仮設機材洗浄装置1基に対して複数ライン、並列に配設され、
前記回収タンク、及び、前記処理水貯留タンクの容量は、前記沈殿槽の容量よりも大きく、かつ、同程度とされ、
前記制御手段は、前記仮設機材洗浄装置において発生する前記洗浄汚水の発生速度又は発生量に基づき、並列された前記複数ラインの使用ライン数を変更する、洗浄汚水処理装置。
【請求項2】
前記濾過装置は、
前記上澄み水を前記ヤシガラ繊維フィルタで重力濾過して一次濾過水を得る一次濾過部と、
前記一次濾過水を前記スポンジフィルタで重力濾過して前記処理水を得る二次濾過部と、を備えた請求項1に記載の洗浄汚水処理装置。
【請求項3】
前記一次濾過部には前記ヤシガラ繊維フィルタが複数枚直列に配置されていると共に前記二次濾過部には前記スポンジフィルタが複数枚直列に配置されている請求項2に記載の洗浄汚水処理装置。
【請求項4】
前記濾過装置は、
前記濾過フィルタを積層状態で収容する濾過槽と、
前記濾過槽の上面開口に蓋をすると共に前記凝集沈殿装置で得られた前記上澄み水が前記濾過槽に流入する流入口が形成された着脱自在な蓋部材と、
前記濾過槽内に張設され、前記積層状態で収容された前記濾過フィルタを支持すると共に濾過水が通過可能な支持体と、を備えた請求項1又は2に記載の洗浄汚水処理装置。
【請求項5】
前記濾過装置には、
前記濾過フィルタを逆洗する逆洗機構が設けられる請求項1又は2に記載の洗浄汚水処理装置。
【請求項6】
仮設機材を洗浄するための仮設機材洗浄装置であって、
加圧水を前記仮設機材に向けて噴出する噴出ヘッドと、
前記加圧水を噴出ヘッドに供給するための高圧ポンプと、
前記仮設機材を保持するための架台と、
前記噴出ヘッドから噴出され洗浄に用いられた水を回収し貯留するための洗浄汚水タンクと、
請求項1に記載の洗浄汚水処理装置と、
前記洗浄汚水処理装置で処理された水を前記高圧ポンプに供給するための洗浄水供給手段と、を備えた仮設機材洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄汚水処理装置に係り、特に加圧水噴出ガンを用いた仮設機材洗浄装置で仮設機材を洗浄した洗浄汚水を処理して再び仮設機材洗浄装置で再利用可能な処理水を得るための洗浄汚水処理装置及び洗浄汚水処理装置を備えた仮設機材洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建設物を建設する際には、パイプ製の建枠、板状の足場板、パイプ製の筋交等の建設足場用の仮設機材を用いて足場を建設物の高さに応じて組み立てる。足場を構成するこれらの仮設機材には、コンクリート打設時のコンクリート等の粒子等や外壁塗装時の塗料等の付着物が付着する。したがって、工事完了後に足場を解体した後、次回の工事に備えて付着物を取り除く洗浄作業を行う必要がある。
【0003】
洗浄作業としては、ワイヤの回転ブラシ、ショットブラスト等で付着物を掻き落とす方法と、加圧水噴出ガンから噴出させた加圧水を仮設機材に吹き付けて付着物を洗浄する方法とがあるが、ワイヤブラシ方式は騒音や粉塵等の問題がある。
【0004】
このため、近年、仮設機材洗浄装置には加圧水噴出ガンが一般的に採用されており、加圧水噴出ガンとしては、例えば特許文献1の加圧水噴出ガンがある。
加圧水噴出ガンは、口径の小さな噴出ノズルから30~300MPaの高圧で加圧水をジェット噴出し、このジェット噴出した加圧水を仮設機材に当てることによって、仮設機材に付着した付着物などを剥離して洗浄する。
【0005】
したがって、加圧水噴出ガンに使用する水に粒子や塗料等の不純物が混在すると、加圧水噴出ガンは目詰まりを起こし易いだけでなく、不純物のうちの特に粒子が研磨剤として作用してしまい、仮設機材洗浄装置を構成する部材等が摩耗してしまうという問題がある。このため、仮設機材洗浄装置には、粒子や塗料等の不純物が無い例えば水道水を使用するのが一般的である。
【0006】
そして、水道水で仮設機材を洗浄した洗浄汚水は再利用されることはなく、簡単な汚水処理をした後で排水として河川等に放水されることが通常である。
【0007】
しかしながら、仮設機材を洗浄した洗浄汚水は大量に発生するため、洗浄汚水を再利用可能であれば水道代等の洗浄コスト面において大きなメリットがあるが、実際に行われていないのが実情である。また、環境問題の観点からも仮設機材を洗浄した洗浄汚水は再利用することが望ましい。
【0008】
このように、仮設機材を洗浄した洗浄汚水を再利用することが要望されているが、この場合、洗浄汚水の処理に高い洗浄コストをかけることはできず、仮設機材洗浄装置で再利用可能なまでに如何に安価な洗浄コストで行えるかが、再利用のキーポイントになる。
【0009】
特許文献2の水性塗料洗浄水の固液分離方法及び装置には、水性塗料の調色、塗装用機械器具等の洗浄によって発生する濁った洗浄水に無機系凝集剤と高分子凝集剤を添加して、洗浄水中に懸濁している水性塗料の微粒子を凝集沈殿させ透明な上澄み水と沈殿物に分離することが開示されている。
【0010】
また、特許文献3の濁水処理装置では、濁水を受け入れる原水槽と、原水槽から汲み出した濁水を順に処理する複数の処理槽を有する処理部と、処理部を経由した水を受け入れて貯留する清水貯留槽と、を備えると共に、清水貯留槽内の水を外部に放流する放流手段と、清水貯留槽内の水を再利用するために汲み出す清水ポンプとの少なくとも一方を備え、処理部は、原水槽から汲み出した濁水に凝集剤を含む薬剤を添加する薬剤添加部を有すると共に、処理槽として、薬剤が添加された濁水を受け入れて浮遊物を沈殿分離させる凝集沈殿槽からなる第1処理槽と、第1処理槽より下流に位置し浮遊物を濾過する濾過槽からなる第2処理槽を有することが記載されている。そして、凝集沈殿においてPAC(ポリ塩化アルミニウム)等の凝集剤が使用されることが記載され、濾過においてフィルタ濾過することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特許第5777017号公報
【文献】特開平8-182992号公報
【文献】特開2008-229437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献2や特許文献3に記載された方法や装置は、凝集沈殿によって固液分離することや、凝集沈殿とフィルタ濾過とを組み合わせることによって汚水を再利用可能なまでに浄化できることが記載されているだけであり、汚水の浄化処理に凝集沈殿やフィルタ濾過が使用できることを紹介しているにすぎない。
【0013】
したがって、単に凝集沈殿とフィルタ濾過とを仮設機材の洗浄汚水の処理に採用しても、仮設機材洗浄装置で再利用可能な品質の処理水を得るためにはコスト面における問題がある。
【0014】
即ち、仮設機材洗浄装置で再利用可能な処理水を得るためには、凝集沈殿や高精度なフィルタ濾過を行えば確かに可能ではあるが、濾過に一般的に使用される例えば糸巻きフィルタで仮設機材の洗浄汚水を濾過した場合、フィルタに付着した付着物は洗浄しても除去できず、再利用できないので、短い期間で新品に交換しなくてはならず洗浄コストが高くなってしまう。
【0015】
また、粗濾過の濾過材料として使用される軽石で仮設機材の洗浄汚水を濾過した場合、微細粒子が処理水中に残存してしまい加圧水噴出ガンの詰まりを発生させてしまうだけでなく、軽石に付着した付着物は洗浄しても容易に除去できない。更に、軽石はネット等に収納して濾過槽に沈めても浮いてしまい使い難いという問題もある。
【0016】
このように、仮設機材の洗浄汚水をどのように処理すれば、仮設機材洗浄装置で再利用可能な品質の処理水を、安価な処理コストで得ることができるかが課題であり、現実に仮設機材の洗浄汚水処理装置は実用化していない。
【0017】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、加圧水噴出ガンを用いた仮設機材洗浄装置で仮設機材を洗浄した洗浄汚水を処理して、再び仮設機材洗浄装置で再利用可能な処理水を安価な処理コストで得ることができる洗浄汚水処理装置及びそれを備えた仮設機材洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の洗浄汚水処理装置は前記目的を達成するために、加圧水噴出ガンを用いた仮設機材洗浄装置で仮設機材を洗浄した洗浄汚水を処理して仮設機材洗浄装置で再利用可能な処理水を得る洗浄汚水処理装置であって、洗浄汚水を凝集剤で凝集沈殿処理する凝集沈殿装置と、凝集沈殿装置で得られた上澄み水を濾過フィルタで濾過処理する濾過装置と、仮設機材洗浄装置で発生した洗浄汚水を凝集沈殿装置に供給する供給ラインと、濾過装置で得られた処理水を仮設機材洗浄装置に戻す戻しラインと、を備え、濾過装置では濾過フィルタとしてヤシガラ繊維フィルタと、スポンジフィルタと、を用いて重力濾過することを特徴とする。
【0019】
本発明の洗浄汚水処理装置によれば、仮設機材洗浄装置で仮設機材を洗浄した洗浄汚水を供給ラインで凝集沈殿装置に送って凝集剤を用いた凝集沈殿装置で凝集沈殿処理し、その上澄み水をヤシガラ繊維フィルタとスポンジフィルタとで重力濾過して得た処理水を戻しラインで再び仮設機材洗浄装置に戻すようにした。これにより、仮設機材洗浄装置で仮設機材を洗浄した洗浄汚水のリサイクルラインを構成できる。
【0020】
そして、このリサイクルラインでは、単に凝集沈殿とフィルタ濾過とを組み合わせるのではなく、比較的安価な濾過フィルタとしてヤシガラ繊維フィルタとスポンジフィルタとで重力濾過するようにしたので、加圧水噴出ガンを用いた仮設機材洗浄装置で仮設機材を洗浄した洗浄汚水を処理して、再び仮設機材洗浄装置で再利用可能な処理水を安価な処理コストで得ることができる。
【0021】
本発明の好ましい態様として、濾過装置は、上澄み水をヤシガラ繊維フィルタで重力濾過して一次濾過水を得る一次濾過部と、一次濾過水をスポンジフィルタで重力濾過して処理水を得る二次濾過部と、を備えることが好ましい。
【0022】
本発明は、一次濾過部としてスポンジフィルタを用い、二次濾過部としてヤシガラ繊維フィルタを用いることも可能であるが、一次濾過部としてヤシガラ繊維フィルタを用い、二次濾過部としてスポンジフィルタを用いる方が微細粒子等の不純物の少ない高品質な処理水を得ることができる。
【0023】
本発明の好ましい態様として、一次濾過部にはヤシガラ繊維フィルタが複数枚直列に配置されていると共に二次濾過部にはスポンジフィルタが複数枚直列に配置されていることが好ましい。これにより、洗浄汚水中の微細粒子を捕捉し易くなる。
【0024】
本発明の更に好ましい態様として、凝集沈殿装置の沈殿槽内には上澄み水を取水する取水配管の取水口が設けられると共に濾過装置の濾過槽の下部には濾過装置で処理した処理水を排出する処理水配管の排出口が設けられ、取水口が排出口よりも所定の高低差Lだけ高い位置に位置することによって濾過装置では所定の高低差Lによる位置エネルギーを濾過動力として重力濾過を行うことが好ましい。
【0025】
これにより、凝集沈殿処理後の上澄み水をヤシガラ繊維フィルタ及びスポンジフィルタで重力濾過するための適切な濾過動力を得るための位置エネルギーを極めて簡単な構成で構築することができる。
【0026】
本発明の更に好ましい態様として、濾過装置は、濾過フィルタを積層状態で収容する濾過槽と、濾過槽の上面開口に蓋をすると共に前記凝集沈殿装置で得られた上澄み水が濾過槽に流入する流入口が形成された着脱自在な蓋部材と、濾過槽内に張設され、積層状態で収容された濾過フィルタを支持すると共に濾過水が通過可能な支持体と、を備えることが好ましい。
【0027】
これは、濾過装置の好ましい構造として、濾過フィルタを濾過装置から簡単に取り出したり、取り付けたりできるように構成したものである。これにより、濾過フィルタの交換や洗浄を簡単に行うことができる。
【0028】
本発明の更に好ましい態様として、濾過装置には、濾過フィルタを逆洗する逆洗機構が設けられることが好ましい。濾過フィルタを濾過装置から取り出して手洗い等を行って濾過装置に再度取り付けすることも可能であるが、濾過装置に逆洗機構を設けることで、濾過フィルタを濾過装置から取り出したり取り付けしたりする煩わしさがなくなる。
【0029】
本発明の更に好ましい態様として、戻りラインは、濾過装置で得られた処理水を貯留する処理水貯留タンクと、濾過装置から処理水貯留タンクに処理水を送水する送水機構とを有し、送水機構は、水中ポンプ用タンクと、水中ポンプ用タンクに設けられたフロート付き水中ポンプと、フロート付き水中ポンプと処理水貯留タンクとを繋ぐ水中ポンプ用ホースと、で構成されることが好ましい。
【0030】
これにより、洗浄汚水処理装置の全体を制御する制御系とは独立した形で濾過処理後の処理水の送水機構を駆動させることができるので、濾過装置での重力濾過に悪影響を与えない。
【0031】
本発明の更に好ましい態様として、凝集沈殿装置、濾過装置、供給ライン及び戻しラインは、仮設機材洗浄装置1基に対して複数ライン並列に配設されることが好ましい。
【0032】
洗浄汚水処理装置での洗浄汚水の濾過は重力濾過という濾過速度が遅い濾過方法であり、仮設機材洗浄装置で発生する洗浄汚水量と濾過装置で得られる処理水量とのバランスが取れなくなるおそれがあるが、凝集沈殿装置、濾過装置、供給ライン及び戻しラインは、仮設機材洗浄装置1基に対して複数ライン並列に配設されることで解消できる。
【0033】
本発明の仮設機材洗浄装置は、仮設機材を洗浄するための仮設機材洗浄装置であって、加圧水を前記仮設機材に向けて噴出する噴出ヘッドと、前記加圧水を噴出ヘッドに供給するための高圧ポンプと、前記仮設機材を保持するための架台と、前記噴出ヘッドから噴出され洗浄に用いられた水を回収し貯留するための洗浄汚水タンクと、上記洗浄汚水処理装置と、前記洗浄汚水処理装置で処理された水を前記高圧ポンプに供給するための洗浄水供給手段と、を備えていることが好ましい。
【0034】
これにより、洗浄汚水を浄化してリサイクルすることができ、大幅に水道水の節約をすることができる仮設機材洗浄装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明の洗浄汚水処理装置によれば、加圧水噴出ガンを用いた仮設機材洗浄装置で仮設機材を洗浄した洗浄汚水を処理して、再び仮設機材洗浄装置で再利用可能な処理水を安価な処理コストで得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明の洗浄汚水処理装置の全体構成図である。
図2】本発明の洗浄汚水処理装置における凝集沈殿装置の説明図である。
図3A】濾過装置の全体構成を示す縦断面図である。
図3B】濾過フィルタを構成するヤシガラ繊維フィルタおよびスポンジフィルタの斜視図である。
図4】本発明の洗浄汚水処理装置の濾過装置で重力濾過する重力濾過機構を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、添付図面にしたがって本発明の洗浄汚水処理装置の好ましい実施の形態について説明する。
【0038】
本発明は以下の好ましい実施の形態により説明される。本発明の範囲を逸脱することなく、多くの手法により変更を行うことができ、本実施の形態以外の他の実施の形態を利用することができる。したがって、本発明の範囲内における全ての変更が特許請求の範囲に含まれる。
【0039】
本発明の実施の形態の洗浄汚水処理装置は、仮設機材洗浄装置で発生した洗浄汚水を仮設機材洗浄装置で再利用可能な処理水を得るための装置であり、以下に詳しく説明する。
【0040】
なお、仮設機材洗浄装置は、加圧水噴出ガンを用いて仮設機材を洗浄する装置であるが、本発明の趣旨ではないので説明は省略する。仮設機材洗浄装置の例としては、例えば特許第7028496号公報の「パイプ状部材の洗浄装置」、特開2020-82074号公報の「加圧水洗浄装置」、特許第5777017号公報の「加圧水噴出ガン及びそれを用いた仮設機材洗浄装置」等を設けることができる。
【0041】
[洗浄汚水処理装置の全体構成]
図1に示すように、本発明の実施の形態の洗浄汚水処理装置10は、主として、凝集沈殿装置12と、濾過装置14と、仮設機材洗浄装置16で発生した洗浄汚水を凝集沈殿装置12に供給する供給ライン18と、濾過装置14で得られた処理水を仮設機材洗浄装置16に戻す戻りライン20とで構成される。
【0042】
そして、本発明の実施の形態の洗浄汚水処理装置10では、凝集沈殿装置12、濾過装置14、供給ライン18及び戻りライン20から成るリサイクルラインを、1基の仮設機材洗浄装置16に対して2ライン並列に配設される場合で説明する。
【0043】
なお、本実施の形態の洗浄汚水処理装置10では、1基の仮設機材洗浄装置16に対して2ライン並列に配設された態様で説明するが、仮設機材洗浄装置1基に対して1ライン設けてもよく、2ライン以上でもよい。
【0044】
また、仮設機材洗浄装置16及び洗浄汚水処理装置10は、仮設機材洗浄装置16に設けた制御手段24で制御することができる。制御手段24は、予め搭載されている仮設機材洗浄プログラム及び洗浄汚水処理プログラムによって仮設機材洗浄装置16及び洗浄汚水処理装置10を制御しても良い。
ここで、制御手段24は、仮設機材洗浄装置16ではなく、洗浄汚水処理装置10が備えている構成にすることもできる。
【0045】
(供給ライン)
供給ライン18は、主として、仮設機材洗浄装置16で発生した洗浄汚水を回収する回収タンク26と、仮設機材洗浄装置16に設けられた洗浄汚水タンク28と回収タンク26とを繋ぐ回収配管30と、回収配管30に設けられた回収ポンプ32と、回収タンク26と凝集沈殿装置12とを繋ぐ供給配管34と、供給配管34に設けられた供給ポンプ36とで構成される。
【0046】
回収ポンプ32及び供給ポンプ36のON-OFFは制御手段24によって制御される。なお、「回収タンク26と凝集沈殿装置12とを繋ぐ供給配管34」等において使用される「繋ぐ」とは、配管によって部材同士を完全に連結することを意味するものではなく、配管の一端開口がタンクの上部に延設されている場合等も含む。以下、同様である。
【0047】
回収タンク26には、上限液面と下限液面とを検知するレベル計22が設けられる。そして、レベル計22の信号が制御手段24に送信され、制御手段24が供給ライン18に設けられた回収ポンプ32のON-OFFを制御する。また、回収タンク26の底部には排出管38と電動バルブ40とが設けられ、回収タンク26の底部に溜まった洗浄汚水中の汚泥が定期的に排出される。制御手段24が電動バルブ40の開閉を制御する。
【0048】
(凝集沈殿装置)
凝集沈殿装置12は、図2に示すように、主として撹拌槽42と、撹拌機44と、凝集剤タンク46と、凝集剤タンク46の凝集剤を撹拌槽42に注入する凝集剤注入ライン48とで構成される。撹拌槽42は円筒形な胴体部42Aと逆円錐形な底部42Bとが一体形成された構造を有する。このように、撹拌槽42の胴体部42Aを円筒形にすると共に底部42Bを逆円錐形にすることで、撹拌槽に注入された凝集剤が洗浄汚水に均一に混ざり易くなると共に凝集沈殿物が沈降し易くなる。
【0049】
撹拌機44は撹拌槽42の胴体部42Aの略中央下部に撹拌翼44Aが配置されるように設けられ、撹拌翼44Aは支持棒44Bを介してモータ44Cに連結される。モータ44Cは撹拌槽42の上方に水平方向に張り出された架台50上に設けられたモータ台50Aに固定され、支持棒44Bが架台50に設けられた軸受52に回転自在に支持される。
【0050】
撹拌機44の種類については、撹拌槽42内の洗浄汚水に凝集剤が均一に混合されるものであればどのようなものでもよいが、例えば軸流、放射流、剪断流を発生させ易い傾斜タービン撹拌翼を備えたものが好ましい。
【0051】
また、架台50上には凝集剤タンク46のタンク台54が設けられ、タンク台54に凝集剤タンク46が固定される。凝集剤タンク46には、撹拌機56が設けられ、水道水等で希釈された凝集剤が均一になるように予め撹拌混合される。
【0052】
凝集剤注入ライン48は、凝集剤タンクで希釈された凝集剤溶液を撹拌槽42に送液する凝集剤用配管48Aと、凝集剤用配管48Aに設けられた凝集剤用ポンプ48Bとで構成され、凝集剤用ポンプ48Bはタンク台54上に固定される。
【0053】
仮設機材の洗浄汚水中の凝集物を凝集させる凝集剤としては、例えば高分子凝集剤を好適に使用でき特にポリ塩化アルミニウム(P.A.C)が好ましい。
また、図1及び図2に示すように、撹拌槽42には、上限液面と下限液面とを検知するレベル計58が設けられる。そして、レベル計58の信号が制御手段24に送信され、制御手段24が供給ライン18に設けられた供給ポンプ36のON-OFFを制御する。
【0054】
また、撹拌槽42の逆円錐形な底部42Bの下端には、排出管60と電動バルブ62が設けられ、凝集沈殿処理によって撹拌槽42の底部42Bに沈降した沈降物を含む凝集物液が定期的に排出される。制御手段24が電動バルブ62の開閉を制御する。
【0055】
また、撹拌槽42には、撹拌槽42で凝集沈殿処理されて得られた上澄み水を取水する取水配管64が設けられ、取水配管64のラッパ管状の取水口64Aが撹拌槽42の上部に位置するように設けられる。上澄み水として取水できる取水量は、洗浄汚水の汚れ具合や凝集沈殿処理の処理状態によって異なる。
【0056】
したがって、図示しないが、取水配管64を伸縮可能な構造(例えば蛇腹構造)として取水口64Aの高さを変更できるようにすることが好ましい。これにより、上澄み水として取水できる取水量が変わっても上澄み水を効率的に取水することができる。
【0057】
なお、撹拌槽42の撹拌機44、凝集剤タンク46の撹拌機56、凝集剤用ポンプ48Bも制御手段24によって制御される。
【0058】
(濾過装置)
図3Aは濾過装置14の全体構成を示す縦断面図であり、図3Bは濾過フィルタ66を構成するヤシガラ繊維フィルタ66Aおよびスポンジフィルタ66Bの斜視図である。
【0059】
濾過装置14は、図3Aに示すように、主として、濾過槽68と、蓋部材70と、濾過フィルタ66と、逆洗機構82とで構成され、濾過槽68から濾過フィルタ66を簡単に取り外したり取り付けたりすることが可能なカートリッジ構造に形成される。なお、図1の濾過装置14は、濾過槽68を4基並列に設けた場合であり、濾過槽68の数は濾過装置14での濾過速度(濾過処理量)に応じて設定することが好ましい。
【0060】
濾過槽68は矩形状の容器として形成され、上面全体が開口している。また、濾過槽68の底面には、排出管74と電動バルブ76とが設けられ、濾過槽68から水(洗浄汚水や処理水)を完全に抜くとき等に使用される。制御手段24が電動バルブ76の開閉を制御する。
【0061】
また、濾過槽68の上部と下部とには、1枚以上積層された濾過フィルタ66を支持する共に濾過水が通過可能な支持体78が水平方向に張設される。支持体78は濾過フィルタ66を下から支持する下側支持体78Aと、濾過フィルタ66を上から支持する上側支持体78Bとで構成され、下側支持体78Aと上側支持体78Bとで濾過フィルタ66を挟持する。これにより、上側支持体78Bの上方に濾過槽68に供給された洗浄汚水が溜まる上部空間部68Aが形成され、下側支持体78Aの下方に濾過フィルタ66で濾過された処理水が溜まる下部空間部68Bが形成される。
【0062】
そして、下部空間部68Bに処理水を排出する処理水配管80が繋がれる。処理水配管80には電動バルブ72が設けられる。制御手段24が電動バルブ72の開閉を制御し、通常は開いているが濾過フィルタ66を逆洗する逆洗機構82を運転する場合に閉じる。
【0063】
支持体78としては、例えば金網、パンチングメタル等を使用することができる。この場合、濾過フィルタ66の積層枚数を変更した場合に対応可能なように、上側支持体78Bと下側支持体78Aとの少なくとも一方をスライドさせて離間距離を調整できる調整機構(図示せず)を設けることが好ましい。
【0064】
蓋部材70は濾過槽68の上面の開口に蓋をして濾過槽68内を密閉するものであり、濾過槽68に着脱自在に設けられる。また、蓋部材70には、凝集沈殿装置12で得られた上澄み水が濾過槽68に流入する流入口70Aが形成され、流入口70Aに取水配管64が繋がれる。取水配管64の濾過槽68の近傍には電動バルブ69が設けられる。制御手段24が電動バルブ69の開閉を制御し、通常は開いているが濾過フィルタ66を逆洗する逆洗機構82を運転する場合に閉じる。
【0065】
濾過フィルタ66はヤシガラ繊維フィルタ66Aとスポンジフィルタ66Bとで構成され、ヤシガラ繊維フィルタ66Aとスポンジフィルタ66Bとが積層状態で濾過槽68に収納される。これにより、濾過装置14には、上澄み水をヤシガラ繊維フィルタ66Aで重力濾過して一次濾過水を得る一次濾過部14Aと、一次濾過水をスポンジフィルタ66Bで重力濾過して処理水を得る二次濾過部14Bと、が形成される。
【0066】
本実施の形態では、2枚のスポンジフィルタ66Bを積層した上に2枚のヤシガラ繊維フィルタ66Aを積層した例で示したが、1枚のスポンジフィルタ66Bの上に1枚のヤシガラ繊維フィルタ66Aを積層してもよく、2枚以上のスポンジフィルタ66Bを積層した上に2枚以上のヤシガラ繊維フィルタ66Aを積層することもできる。ヤシガラ繊維フィルタ66Aとスポンジフィルタ66Bとの積層枚数は洗浄汚水の汚れ状況によって適宜変更することができるようにすることが好ましい。
【0067】
したがって、濾過槽68の高さは余裕をもって形成しておくことが好ましい。また、ヤシガラ繊維フィルタ66Aの積層枚数とスポンジフィルタ66Bの積層枚数とは同じ枚数である必要はなく、洗浄汚水の汚れ状況や汚染物質の種類等によって適宜変更することが好ましい。
【0068】
ヤシガラ繊維フィルタ66Aは、特に限定されないが、市販品が使用できる。ヤシガラ繊維フィルタの市販品としては、武蔵野技研株式会社製の「パーム・ロックフィルターS-40G」が挙げられる。サイズも特に限定されないが、一例として、厚み5cm、サイズ50cm×50cmが好ましい。なお、ヤシガラ繊維フィルタ66Aは、2枚積層することが好ましい。また、スポンジフィルタ66Bは、特に限定されないが、市販品が使用できる。スポンジフィルタの市販品としては、富士ゴム産業(株)製の「ウレタンフォーム#1」が挙げられ、厚み5cm、サイズ50cm×50cmが好ましい。また、スポンジフィルタ66Bは、2枚積層することが好ましい。
【0069】
なお、図3Aの濾過装置14では濾過槽68に複数枚のヤシガラ繊維フィルタ66Aと複数枚のスポンジフィルタ66Bを縦方向積層型タイプの場合で示した。しかし、図3Aの濾過装置14を横向きにして、濾過槽68に複数枚のヤシガラ繊維フィルタ66Aと複数枚のスポンジフィルタ66Bを垂直に並べる横積層型タイプにすることもできる。
【0070】
図4は、凝集沈殿装置12で得られた上澄み水を濾過装置14で重力濾過する機構を説明する説明図である。
図4に示すように、凝集沈殿装置12の撹拌槽42内には上澄み水を取水する取水配管64の取水口64A(図2参照)が設けられると共に濾過装置14の濾過槽68の下部空間部68Bには濾過装置14で処理した処理水を排出する処理水配管80の排出口80A(図3A参照)が設けられる。即ち、取水口64Aが排出口80Aよりも所定の高低差Lだけ高く位置している。
【0071】
この高低差Lによる位置エネルギーによって、取水口64Aから取水された上澄み水は、取水配管64を流れて濾過槽68内に流入し、濾過フィルタ66(図3A参照)を介して下部空間部68Bに落流する。これにより、濾過装置14では、濾過フィルタ66を上澄み水がゆっくりと通過しながら濾過を行う重力濾過を行うことができる。仮設機材の洗浄汚水の濾過方法に、濾過フィルタ66としてヤシガラ繊維フィルタ66Aとスポンジフィルタ66Bとを用いて重力濾過することが何故良いかは後述する洗浄汚水処理方法のところで説明する。
【0072】
濾過装置14で長時間濾過を行うと、濾過フィルタ66は目詰まり等により洗浄が必要になる。この場合、濾過槽68から蓋部材70を取り外すと共に上側支持体78Bを外して、ヤシガラ繊維フィルタ66Aとスポンジフィルタ66Bとを濾過槽68から取出す。
【0073】
そして、ヤシガラ繊維フィルタ66Aとスポンジフィルタ66Bを水道水等で手洗いすることで簡単に濾過フィルタに付着した汚れを除くことができ再利用できる。しかし、本発明の実施の形態の洗浄汚水処理装置10のように、濾過装置14に逆洗機構82を設けると更に便利である。
【0074】
逆洗機構82は、図3Aに示すように、主として濾過槽68の下部空間部68Bに繋がれる逆洗配管82Aと、逆洗配管82Aに設けられた逆洗ポンプ82B及び電動バルブ82Eと、上部空間部68Aに繋がれた逆洗排出管82Cと、逆洗排出管82Cに設けられた電動バルブ82Dとで構成される。
【0075】
これにより、濾過装置14で凝集沈殿処理された上澄み水を長時間濾過して、濾過フィルタ66が目詰まり等により洗浄が必要になった場合、逆洗機構82によって、濾過フィルタ66を洗浄することができる。
【0076】
即ち、制御手段24は、3個の電動バルブ69,72,76を閉じると共に2個の電動バルブ82D、82Eを開き、逆洗ポンプ82Bを駆動して水道水を濾過槽68内に供給する。
【0077】
これにより、水道水は濾過フィルタ66を濾過のときとは逆向きに流れて逆洗排出管82Cから排出されるので、濾過によって濾過フィルタ66に付着した付着物を除去することができる。したがって、濾過フィルタ66を濾過槽68に取り付けたままで濾過フィルタ66を洗浄し再利用できるので、手洗いの手間が省けるだけでなく、洗浄汚水処理装置10を効率的に運転することができる。
【0078】
(戻りライン)
図1に示すように、戻りライン20は、主として濾過装置14で得られた処理水を貯留する処理水貯留タンク84と、濾過装置14から処理水貯留タンク84に処理水を送水する送水機構86と、処理水貯留タンク84と仮設機材洗浄装置16とを繋ぐ戻り配管88と、戻り配管88に設けられた戻りポンプ90と、で構成される。
【0079】
処理水貯留タンク84には、上限液面と下限液面とを検知するレベル計91が設けられる。そして、レベル計91の信号が制御手段24に送信され、制御手段24が戻り配管88に設けられた戻りポンプ90のON-OFFを制御する。
【0080】
送水機構86は、処理水配管80に連通する水中ポンプ用タンク92と、水中ポンプ用タンク92に設けられたフロート付き水中ポンプ94と、フロート付き水中ポンプ94と処理水貯留タンク84とを繋ぐ水中ポンプ用ホース96と、で構成される。
【0081】
フロート付き水中ポンプ94には、上限フロートスイッチ(図示せず)と下限フロートスイッチ(図示せず)とが設けられる。この送水機構86に設けられたフロート付き水中ポンプ94は制御手段24の制御系には含まれず、制御手段24とは独立した形で駆動する。
【0082】
次に、上記の如く構成された本発明の実施の形態の洗浄汚水処理装置10によって、仮設機材洗浄装置16で仮設機材を洗浄して発生した洗浄汚水を処理する洗浄汚水処理方法について説明する。
【0083】
[洗浄汚水処理方法]
図1に示すように、仮設機材洗浄装置16で発生して洗浄汚水タンク28に溜まった洗浄汚水は、回収ポンプ32により回収配管30を通って回収タンク26に送水される。この場合、回収タンク26に設けられたレベル計22の信号が制御手段24に送信され、制御手段24はレベル計22が下限であることを検知すると、回収ポンプ32を駆動して回収タンク26の水量がレベル計22の上限になるまで洗浄汚水を回収タンク26に送水する。
【0084】
次に、回収タンク26の洗浄汚水は、供給ポンプ36によって供給配管34を通って一定量が凝集沈殿装置12の撹拌槽42に送水される。この場合、撹拌槽42に設けられたレベル計58によって撹拌槽42の液面が制御手段24に送信され、制御手段24は撹拌槽42が空であることを検知すると、供給ポンプ36を駆動して撹拌槽42の液面がレベル計58の上限になるまで送水する。
【0085】
次に、凝集剤タンク46から凝集剤を溶解した凝集剤液が凝集剤ポンプ48Bによって凝集剤用配管48Aを通って撹拌槽42に所定量注入される。例えば、凝集剤としてポリ塩化アルミニウムを使用する場合、撹拌槽42内の洗浄汚水200Lに対してポリ塩化アルミニウム(凝集剤タンクでの希釈前)を20ccになるように注入することが好ましい。
【0086】
そして、凝集剤を注入した洗浄汚水を撹拌機44によって約10分間(例えば回転数1200rpmで)撹拌した後、撹拌を停止して30分静置することにより凝集沈殿物を沈殿させる。即ち、凝集沈殿装置12での凝集沈殿処理時間は約40分となる。
【0087】
凝集沈殿装置12での凝集沈殿処理が終了すると、制御手段24によって排出管60の電動バルブ62が開けられて撹拌槽42の底部42Bに沈殿した沈殿物を含む沈殿液が撹拌槽42外に排出される。
【0088】
次に、撹拌槽42で凝集沈殿処理して得られた上澄み水は、取水配管64の取水口64Aから取水され取水配管64を通って落流し、濾過槽68に供給される。濾過槽68に供給された上澄み水は上記した位置エネルギーを濾過動力としてヤシガラ繊維フィルタ66Aによって重力濾過され、一次処理水が得られる。
【0089】
引き続き、一次処理水は同様に上記した位置エネルギーを濾過動力としてスポンジフィルタ66Bによって重力濾過されて処理水が得られる。得られた処理水は濾過槽68の下部空間部68Bに落流する。
【0090】
このように、本発明の実施の形態の洗浄汚水処理装置10では、単に凝集沈殿とフィルタ濾過とを組み合わせるのではなく、濾過フィルタ66としてヤシガラ繊維フィルタ66Aとスポンジフィルタ66Bとで重力濾過するようにした。
【0091】
即ち、凝集沈殿装置12までは洗浄汚水の流れは回収ポンプ32や供給ポンプ36により圧送するが、濾過装置14ではヤシガラ繊維フィルタ66Aとスポンジフィルタ66Bのように目の粗い濾過フィルタ66を使用して自然の落差を利用した上澄み水の流れでゆっくりと重力濾過することに特徴がある。本実施の形態における濾過装置14では、一般的に行われる強制濾過(加圧濾過や吸引濾過)は行わない。
【0092】
これにより、加圧水噴出ガンを用いた仮設機材洗浄装置16で再利用可能な品質の処理水を得ることができる。また、ヤシガラ繊維フィルタ66A及びスポンジフィルタ66Bは新品でも低価格であるだけでなく、重力濾過に使用された後も簡単に水洗いで再利用することができるので、安価な洗浄処理コストを実現することができる。
【0093】
したがって、本発明の実施の形態の洗浄汚水処理装置10は、加圧水噴出ガンを用いた仮設機材洗浄装置16で仮設機材を洗浄した洗浄汚水を処理して、再び仮設機材洗浄装置16で再利用可能な処理水を安価な処理コストで得ることができる。
【0094】
この場合、濾過フィルタ66としてヤシガラ繊維フィルタ66Aとスポンジフィルタ66Bとを使用して強制濾過(加圧濾過や吸引濾過)すると、洗浄汚水中の微細粒子(コンクリートの粒子等)が濾過フィルタ66を通過して処理水中に残存してしまうだけでなく、濾過フィルタ66を破損させ易くなり、再利用ができなくなる。
【0095】
次に、濾過槽68の下部空間部68Bに落流した処理水は処理水配管80を通って水中ポンプ用タンク92に送水される。水中ポンプ用タンク92に送水された処理水はフロート付き水中ポンプ94によって水中ポンプ用ホース96を通って処理水貯留タンク84に送水される。この場合、水中ポンプ用タンク92の水位が上がって上限フロートスイッチがONになるとフロート付き水中ポンプ94が起動し、水位が下がって下限フロートスイッチがONになるとフロート付き水中ポンプ94が停止する。
【0096】
したがって、濾過装置14において重力濾過によって得られた処理水が処理水配管80を介して水中ポンプ用タンク92に溜まる水量に応じて処理水を処理水貯留タンク84に送水することができる。
【0097】
また、濾過装置14から処理水貯留タンク84への送水を回分式の送水機構86にすることによって、濾過装置14に濾過速度の遅い重力濾過を採用してもスムーズな水の流れを形成することができる。仮に処理水配管80にポンプを設けて処理水を処理水貯留タンク84に直接送水する送水方法では、ポンプの吸込口側に位置する濾過装置14に吸引力が付与され、重力濾過を達成できない。
【0098】
しかし、本発明の実施の形態における戻りライン20では、濾過装置14と処理水貯留タンク84との間に回分式の送水機構86を設けたので、制御手段24によって送水が制御される制御系から独立した形になる。これにより、濾過装置14に吸引力が働かないようにできるので、濾過装置14での重力濾過を高精度に行うことができる。
【0099】
次に、処理水貯留タンク84に貯留された処理水は、戻りポンプ90によって戻り配管88を通って仮設機材洗浄装置16に送られ使用される。
【0100】
これにより、加圧水噴出ガンを用いた仮設機材洗浄装置16で仮設機材を洗浄した洗浄汚水を処理して仮設機材洗浄装置16で再利用可能な処理水を得ることができる。
【0101】
しかし、本発明の洗浄汚水処理装置には、回分式の凝集沈殿装置12及び濾過速度の遅い重力濾過を行う濾過装置14が組み込まれている。したがって、仮設機材洗浄装置16で発生した洗浄汚水を洗浄汚水処理装置10で処理して処理水を仮設機材洗浄装置16に戻すリサイクルラインを形成する場合、仮設機材洗浄装置16で発生する洗浄汚水の発生速度(又は発生量)と、洗浄汚水処理装置10で処理する処理水の処理速度(処理量)とのアンバランス(発生速度が処理速度より大きい)が発生する可能性がある。
【0102】
したがって、仮設機材洗浄装置16を連続運転するには、このアンバランスを解消することが好ましい。
即ち、供給ライン18に設けられた回収タンク26は、仮設機材洗浄装置16で発生した洗浄汚水を凝集沈殿装置12に送る前のクッションタンクとしての役割があり、アンバランスを吸収する要素の一つを構成する。
【0103】
例えば、凝集沈殿装置12の撹拌槽42の容量を500Lとした場合、回収タンク26の容量は10倍の5000L程度にすることがクッションタンクとしての役割を果たす上で好ましい。
【0104】
また、戻りライン20に設けられた処理水貯留タンク84は、濾過装置14で得られた処理水を仮設機材洗浄装置16に送る前のクッションタンクとしての役割があり、アンバランスを吸収する要素の一つを構成する。例えば、処理水貯留タンク84の容量としては、回収タンクと同様に5000L程度にすることがクッションタンクとしての役割を果たす上で好ましい。
【0105】
しかし、仮設機材洗浄装置16で発生した洗浄汚水の発生量が増加した場合、これら回収タンク26や処理水貯留タンク84だけではアンバランスを吸収することができなくなり、仮設機材洗浄装置16の運転を停止せざるを得なくなるおそれがある。
【0106】
そこで、本発明の実施の形態の洗浄汚水処理装置10では、図1で示したように、1基の仮設機材洗浄装置16に対して2ライン並列に2基の洗浄汚水処理装置10を設け、制御手段24で2ラインを交互に運転したり、同時に運転したりできるようにした。これにより、仮設機材洗浄装置16で発生する洗浄汚水の発生速度(又は発生量)と、洗浄汚水処理装置10で処理する処理水の処理速度(処理量)とのアンバランス(発生速度が処理速度より大きい)を解消することができる。
【0107】
よって、仮設機材洗浄装置16で発生する洗浄汚水量を見積もり、その見積もりに応じてライン数を1ライン又は2ライン以上に変えることで、洗浄汚水処理装置10で処理する処理水の処理速度(処理量)とのアンバランス(発生速度が処理速度より大きい)をより適切に解消することができる。
【0108】
ここで、仮設機材洗浄装置16は、洗浄汚水処理装置10を含んだ構成とし、洗浄汚水処理装置付き仮設機材洗浄装置とすることもできる。この場合、(洗浄汚水処理装置付き)仮設機材洗浄装置は、加圧水を仮設機材に向けて噴出する噴出ヘッド(不図示)と、加圧水を噴出ヘッドに供給するための高圧ポンプ(不図示)と、仮設機材を保持するための架台(不図示)と、洗浄に用いられた水を回収し貯留するための洗浄汚水タンク28と、上述した洗浄汚水処理装置10と、洗浄汚水処理装置10で処理された水を前記高圧ポンプに供給するための洗浄水供給手段(不図示)と、を備えている。
【0109】
これにより、高圧ポンプで加圧された水を噴出ヘッドから仮設機材に噴出することにより、仮設機材にこびりついたペンキ等の塗料の付着物やその他の付着物の汚れを落とすことができる。また、落とした塗料等の付着物の粒子を含んだ洗浄水は、洗浄汚水タンク28に貯留され、洗浄汚水処理装置10によって塗料等の付着物の粒子を除去される。
【0110】
それらの粒子が除去された水は、洗浄水供給手段によって再び高圧ポンプに送られて、仮設機材の洗浄に使用される。
【0111】
このように、洗浄汚水処理装置付き仮設機材洗浄装置は、仮設機材洗浄装置16と洗浄汚水処理装置10とが一体化しているので、洗浄汚水を浄化してリサイクルすることができ、大幅に水道水の節約をすることができる。
【符号の説明】
【0112】
10…洗浄汚水処理装置、12…凝集沈殿装置、14…濾過装置、14A…一次濾過部、14B…二次濾過部、16…仮設機材洗浄装置、18…供給ライン、20…戻りライン、22…レベル計、24…制御手段、26…回収タンク、28…洗浄汚水タンク、30…回収配管、32…回収ポンプ、34…供給配管、36…供給ポンプ、38…排出管、40…電動バルブ、42…撹拌槽、42A…胴体部、42B…底部、44…撹拌機、44A…撹拌翼、44B…支持棒、44C…モータ、46…凝集剤タンク、48…凝集剤注入ライン、48A…凝集剤用配管、48B…凝集剤用ポンプ、50…架台、50A…モータ台、52…軸受、54…タンク台、56…撹拌機、58…レベル計、60…排出管、62…電動バルブ、64…取水配管、64A…取水口、66…濾過フィルタ、66A…ヤシガラ繊維フィルタ、66B…スポンジフィルタ、68…濾過槽、68A…上部空間部、68B…下部空間部、69…電動バルブ、70…蓋部材、70A…流入口、72…電動バルブ、74…排出管、76…電動バルブ、78…支持体、78A…下側支持体、78B…上側支持体、80…処理水配管、80A…排出口、82…逆洗機構、82A…逆洗配管、82B…逆洗ポンプ、82C…逆洗排出管、82D…電動バルブ、82E…電動バルブ、84…処理水貯留タンク、86…送水機構、88…戻り配管、90…戻りポンプ、91…レベル計、92…水中ポンプ用タンク、94…フロート付き水中ポンプ、96…水中ポンプ用ホース

【要約】
【課題】加圧水噴出ガンを用いた仮設機材洗浄装置で仮設機材を洗浄した洗浄汚水を処理して、再び仮設機材洗浄装置で再利用可能な処理水を安価な処理コストで得ることができる洗浄汚水処理装置を提供する。
【解決手段】加圧水噴出ガンを用いた仮設機材洗浄装置16で仮設機材を洗浄した洗浄汚水を処理して仮設機材洗浄装置16で再利用可能な処理水を得る洗浄汚水処理装置10であって、洗浄汚水を凝集剤で凝集沈殿処理する凝集沈殿装置12と、凝集沈殿装置12で得られた上澄み水を濾過フィルタ66で濾過処理する濾過装置14と、仮設機材洗浄装置16で発生した洗浄汚水を凝集沈殿装置に供給する供給ライン18と、濾過装置14で得られた処理水を仮設機材洗浄装置16に戻す戻りライン20と、を備え、濾過装置14では濾過フィルタ66としてヤシガラ繊維フィルタ66Aとスポンジフィルタ66Bとを用いて重力濾過する。
【選択図】図1
図1
図2
図3A
図3B
図4