IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ フジ地中情報株式会社の特許一覧

特許7466969AI地震被害予測システム、AI地震被害予測方法及びAI地震被害予測プログラム
<>
  • 特許-AI地震被害予測システム、AI地震被害予測方法及びAI地震被害予測プログラム 図1
  • 特許-AI地震被害予測システム、AI地震被害予測方法及びAI地震被害予測プログラム 図2
  • 特許-AI地震被害予測システム、AI地震被害予測方法及びAI地震被害予測プログラム 図3
  • 特許-AI地震被害予測システム、AI地震被害予測方法及びAI地震被害予測プログラム 図4
  • 特許-AI地震被害予測システム、AI地震被害予測方法及びAI地震被害予測プログラム 図5
  • 特許-AI地震被害予測システム、AI地震被害予測方法及びAI地震被害予測プログラム 図6
  • 特許-AI地震被害予測システム、AI地震被害予測方法及びAI地震被害予測プログラム 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】AI地震被害予測システム、AI地震被害予測方法及びAI地震被害予測プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01V 1/01 20240101AFI20240408BHJP
   G01M 99/00 20110101ALI20240408BHJP
【FI】
G01V1/01 100
G01M99/00 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023166461
(22)【出願日】2023-09-27
【審査請求日】2023-09-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】391044410
【氏名又は名称】フジ地中情報株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004163
【氏名又は名称】弁理士法人みなとみらい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 寿一
【審査官】岡村 典子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2022/013974(WO,A1)
【文献】特開2015-094665(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106022518(CN,A)
【文献】伊藤 陽,外4名,通信用地下管路の震災時点検結果を基にした機械学習による被害予測モデル検討,土木学会論文集A1(構造・地震工学),日本,Vol.78,No.4,p.I_162-p.I_172
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01V 1/01
G01M 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設管路を含む埋設された設備の地震被害を予測するAI地震被害予測システムであって、
記憶部と、予測部と、を備え、
前記記憶部は、地震被害予測を行うための数理モデル又は前記数理モデルのパラメータ、管路の布設年を含む管路に関する管路属性情報、及び想定される地震の地震指標を含む地震情報、及び地震の発生年を含む複数の地震の履歴である地震履歴を記憶し、
前記数理モデルは、管路属性情報、イベントに対する地震の影響に関する地震影響情報を含むイベント情報、及び過去に発生した地震に関する地震履歴に基づく教師データを利用して学習を行ったモデルであり、
前記教師データは、前記布設年及び前記発生年に基づいて特定される管路の布設からの経験地震数を含み、
前記予測部は、前記数理モデルを用い、管路属性情報及び前記地震情報から生成した予測用データに基づいて特定の地震指標における地震が発生した際の管路の被害予測を行い、予測結果を出力
前記予測用データは、前記布設年及び前記発生年に基づいて特定される管路の布設からの経験地震数を含む、
AI地震被害予測システム。
【請求項2】
イベント情報は、管路に対して行われたイベント調査済の管路及び/又は突発的にイベントが発生した管路に関する情報である、
請求項1に記載のAI地震被害予測システム。
【請求項3】
前記数理モデルは、前記地震影響情報に基づいて特定される地震の影響により発生したイベントに関するイベント情報に基づいて生成された教師データを利用して学習を行ったモデルである、
請求項1に記載のAI地震被害予測システム。
【請求項4】
AI地震被害予測システムは、更に、学習部を備え、
前記記憶部は、過去に発生した地震に関する地震履歴を記憶し、
データ処理部は、前記地震履歴及び前記管路属性情報、前記イベント情報に基づいて教師データを生成し、
前記学習部は、生成された前記教師データを利用して学習を行ったモデルである、
請求項1に記載のAI地震被害予測システム。
【請求項5】
AI地震被害予測システムは、更に受付部と、表示処理部と、を備え、
前記記憶部は、管路の位置に関する位置情報を付与された管路属性情報及び位置情報を含む地図情報を記憶し、
前記受付部は、地震指標の選択を受け付け、
前記表示処理部は、管路の位置情報、前記地図情報及び指定された地震指標における地震被害予測結果に基づいて、地震被害予測結果を示す地図を表示処理する、
請求項1に記載のAI地震被害予測システム。
【請求項6】
前記表示処理部は、地震被害予測結果を示す地図として、地震被害予測結果に基づいて管路の塗りつぶしを行った地図を表示処理する、
請求項5に記載のAI地震被害予測システム。
【請求項7】
AI地震被害予測システムは、更に表示処理部と、受付部を備え、
前記記憶部は、管路の位置情報を付与された管路属性情報と管路が布設された場所の地図を含む地図情報を記憶し、
前記表示処理部は、前記地図情報及び管路の位置情報に基づいて地図上に管路を表示処理し、
前記受付部は、地図上に表示される管路より被害予測を表示する管路の指定を受け付け、
前記表示処理部は、指定された管路の被害予測結果を表示処理する、
請求項1に記載のAI地震被害予測システム。
【請求項8】
既設管路を含む埋設された設備の地震被害を予測するAI地震被害予測方法であって、
震被害予測を行うための数理モデル又は前記数理モデルのパラメータ、管路の布設年を含む管路に関する管路属性情報、及び想定される地震の地震指標を含む地震情報、及び地震の発生年を含む複数の地震の履歴である地震履歴を記憶部に記憶する一又は複数のコンピュータが、
前記数理モデルを用い、管路属性情報及び前記地震情報から生成した予測用データに基づいて特定の地震指標における地震が発生した際の管路の被害予測を行い、 予測結果を出力する予測工程と、
を備え、
前記数理モデルは、管路属性情報、イベントに対する地震の影響に関する地震影響情報を含むイベント情報、及び過去に発生した地震に関する地震履歴に基づく教師データを利用して学習を行ったモデルであり、
前記教師データは、前記布設年及び前記発生年に基づいて特定される管路の布設からの経験地震数を含み、
前記予測用データは、前記布設年及び前記発生年に基づいて特定される管路の布設からの経験地震数を含む、
AI地震被害予測方法。
【請求項9】
既設管路を含む埋設された設備の地震被害を予測するAI地震被害予測プログラムであって、
記憶部に地震被害予測を行うための数理モデル又は前記数理モデルのパラメータ、管路の布設年を含む管路に関する管路属性情報、及び想定される地震の地震指標を含む地震情報、及び地震の発生年を含む複数の地震の履歴である地震履歴を記憶するコンピュータを、予測部として機能させ、
前記数理モデルは、管路属性情報、イベントに対する地震の影響に関する地震影響情報を含むイベント情報、及び過去に発生した地震に関する地震履歴に基づく教師データを利用して学習を行ったモデルであり、
前記教師データは、前記布設年及び前記発生年に基づいて特定される管路の布設からの経験地震数を含み、
前記予測部は、前記数理モデルを用い、管路属性情報及び前記地震情報から生成した予測用データに基づいて特定の地震指標における地震が発生した際の管路の被害予測を行い、予測結果を出力
前記予測用データは、前記布設年及び前記発生年に基づいて特定される管路の布設からの経験地震数を含む、
AI地震被害予測プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、AI地震被害予測システム、AI地震被害予測方法及びAI地震被害予測プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自然災害による脅威が深刻となる中で、水道管・下水道管・ガス管・ファイバーなどの埋設された管路等の設備の耐震化を進める動きが推奨されている。一方で、コスト的な観点で全ての管路に対して耐震化対策を行うことは難しい。そのため、実際に地震が起きたら漏水や破裂につながる可能性が高い管路を特定することができれば効率的かつ効果的に管路の耐震化を進めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許7288229号公報
【0004】
ここで、特許文献1に記載の発明は、地震指標が利用できない状況下でも精度よく管路の脆弱性を推定するための発明であって、既に発生した地震や発生が想定される地震の震度等の地震に関する情報に基づいて容易に被害を予測することができなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、数理モデルを用いて想定される地震が発生した際の管路の地震被害予測を行う新規な技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、既設管路を含む埋設された設備の地震被害を予測するAI地震被害予測システムであって、
記憶部と、予測部と、を備え、
前記記憶部は、管路属性情報及び地震被害予測を行うための数理モデル又は前記数理モデルのパラメータ、管路に関する管路属性情報、及び想定される地震の地震指標を含む地震情報を記憶し、
前記数理モデルは、管路属性情報、イベントに対する地震の影響に関する地震影響情報を含むイベント情報、及び過去に発生した地震に関する地震履歴に基づく教師データを利用して学習を行ったモデルであり、
前記予測部は、前記数理モデルを用い、管路属性情報及び前記地震情報に基づいて特定の地震指標における地震が発生した際の管路の被害予測を行い、予測結果を出力する。
【0007】
このような構成とすることで、想定される震度などの地震指標を含む地震に関する情報を入力することで想定される地震における管路の被害予測を行うことができる。また、腐食劣化や電食漏水等の地震以外の影響を受けて発生した漏水等のイベントに関するイベント情報を取得した場合であっても、地震影響情報に基づいて地震の影響を考慮したイベント情報によって学習を行ったモデルを利用して管路劣化予測を行うことができる。
【0008】
本発明の好ましい形態では、イベント情報は、管路に対して行われたイベント調査済の管路及び/又は突発的にイベントが発生した管路に関する情報である。
【0009】
このような構成とすることで、漏水調査等のイベント調査や突発的に発生したイベントに関するイベント情報を利用して学習を行ったモデルを用いて管路の地震被害予測を行うことができる。
【0010】
本発明の好ましい形態では、前記数理モデルは、前記地震影響情報に基づいて特定される地震の影響により発生したイベントに関するイベント情報に基づいて生成された教師データを利用して学習を行ったモデルである。
【0011】
このような構成とすることで、地震影響情報に基づいて特定される地震以外の原因によって発生したイベントに関するイベント情報を用いず、精度の高い学習を行ったモデルを利用して地震被害予測を行うことができる。
【0012】
本発明の好ましい形態では、AI地震被害予測システムは、更に、学習部を備え、
前記記憶部は、過去に発生した地震に関する地震履歴を記憶し、
データ処理部は、前記地震履歴及び前記管路属性情報、前記イベント情報に基づいて教師データを生成し、
前記学習部は、生成された前記教師データを利用して学習を行ったモデルである。
【0013】
このような構成とすることで、AI地震被害予測システムは、管路属性情報及びイベント情報を含む管路に関する情報と、地震履歴を含む地震に関する情報に基づいて学習を行い、数理モデルの精度を高めていくことができる。
【0014】
本発明の好ましい形態では、AI地震被害予測システムは、更に受付部と、表示処理部と、を備え、
前記記憶部は、管路の位置に関する位置情報を付与された管路属性情報及び位置情報を含む地図情報を記憶し、
前記受付部は、地震指標の選択を受け付け、
前記表示処理部は、管路の位置情報、前記地図情報及び指定された地震指標における地震被害予測結果に基づいて、地震被害予測結果を示す地図を表示処理する。
【0015】
このような構成とすることで、震度等の地震指標が指定されると指定された地震指標における地震被害予測の結果を地図上で容易に確認することができる。
【0016】
本発明の好ましい形態では、前記表示処理部は、地震被害予測結果を示す地図として、地震被害予測結果に基づいて管路の塗りつぶしを行った地図を表示処理する。
【0017】
このような構成とすることで、地図上に表示される管路を地震被害予測結果に基づいて塗りつぶし、地震被害予測の結果を視覚的に容易に確認することができる。
【0018】
本発明の好ましい形態では、AI地震被害予測システムは、更に表示処理部と、受付部を備え、
前記記憶部は、管路の位置情報を付与された管路属性情報と管路が布設された場所の地図を含む地図情報を記憶し、
前記表示処理部は、前記地図情報及び管路の位置情報に基づいて地図上に管路を表示処理し、
前記受付部は、地図上に表示される管路より被害予測を表示する管路の指定を受け付け、
前記表示処理部は、指定された管路の被害予測結果を表示処理する。
【0019】
このような構成とすることで、地図上に表示される管路を指定することで容易に管路の地震被害予測結果を確認することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、数理モデルを用いて想定される地震が発生した際の管路の地震被害予測を行う新規な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】システム全体の構成を示すブロック図
図2】システムのハードウェア構成図
図3】管路属性情報、イベント情報及び地震履歴のデータ構成の例
図4】教師データのデータ構成の例
図5】画面表示例
図6】画面表示例
図7】処理のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照して、本発明をよりに詳細に説明する。図面には好ましい実施形態が示されるが、本発明は、異なる形態で実施されることが可能であり、本明細書に記載される実施形態に限定されない。本実施形態では地震被害予測装置及び学習装置の構成、動作などについて説明するが、装置などにより実行される方法、コンピュータプログラムなどによっても、同様の作用効果を奏することができる。コンピュータプログラムは、コンピュータが読み取り可能な非一過性の記録媒体として提供されてもよい。
【0023】
以下、説明する実施例において、流体の供給を行う管路の地震による被害を予測する当該AI地震被害予測システムは、上水道管などの液体を供給する既設管路の被害予測を行うが、管路に関する被害予測であれば、ガス管などの埋設される施設や管路の地震による被害の予測を行ってもよい。
【0024】
また、AI地震被害予測システムは、管路を管理する自治体等の事業者等によって利用され、その事業者が管理する管路に対する地震被害予測を行うが、被害予測を行う管路の範囲は限定されず、全国に布設される既設管路に対して後述する地震被害予測を行ってもよい。
【0025】
<用語の定義>
本明細書で使用される用語及び語句の定義は次のとおりである。
生データとは、GIS等の管路管理の為のシステムが備えた管路データベース(管路DB)に格納された管路に関するデータを指す。
処理データとは、管路DB等より取得した生データを形式や単位、桁数を整えたり、複数のデータを結合するなど変形されることで生成されたデータであって、予測用データ及び教師データを含む。
予測用データとは、地震被害予測のために地震被害予測装置1に入力されるデータであって、管路属性情報及び想定される地震に関する仮のデータである地震情報に基づいて生成される処理データである。
教師データとは、地震被害予測を行う数理モデルの学習に用いられるデータであって、管路属性情報及び管路に発生したイベントに関するイベント情報、管路が布設された場所に発生した地震の履歴である地震履歴に基づいて生成される処理データである。
【0026】
生データに対しては、システム内で利用可能とする為に、必要に応じて情報の置換、追加、削除等の変換処理を行う場合があるが、例えば、この変換処理が行われたデータが管路に関する処理データとなる。本実施形態において、管路属性情報とイベント情報を含む事業者が管理する管路に関するデータベースである管路DBより取得したデータが生データであり、地震被害予測に利用するため前処理がされた予測用データ及び数理モデルの学習に用いるため前処理をされた教師データが処理データである。なお、加工が不要であれば、生データをそのまま処理データとする。また、本実施形態において、数理モデルの学習で利用するために管路属性情報及びイベント情報を含む各種情報に対して、各種変換処理が行われた処理データを教師データとする。また、数理モデルによる地震被害予測のために、管路属性情報を含む各種情報に対して各種変換処理が行われた処理データを予測用データとする。また、管路属性情報及びイベント情報を含む各種管路に関する情報に対して変換が不要である場合、管路属性情報とイベント情報を結合したデータを教師データとしてもよい。また、管路属性情報及びイベント情報に対して変換が不要な場合、管路属性情報とイベント情報を結合したデータを予測用データとしてもよい。
【0027】
生データは、管路に関するデータであって、管路の特徴(属性)を示す管路属性情報及び管路で発生したイベントに関するイベント情報を含む。本実施形態において、管路に関する管路属性情報と管路に発生した漏水等のイベントに関するイベント情報は、管路属性情報に含まれる一意な管路IDにより管路属性情報に紐づけられる。本実施形態において、当該AI地震被害予測システム0は、特定の自治体の管理する範囲等、特定の事業者の管理する範囲で発生した地震に関する地震履歴及び管路に関する管路属性情報に基づいて付与された地震情報に基づいて学習を行った数理モデルを利用して管路の地震被害予測を行う。
【0028】
<システム構成>
図1は、一実施形態のシステム構成を示すブロック図である。図1に示すように、AI地震被害予測システム0は、地震被害予測装置1及び学習装置2を備える。
【0029】
地震被害予測装置1は、想定される地震による被害の予測である地震被害予測を行うための装置であって、自治体等の管路を管理する事業者の拠点に配置される装置である。
【0030】
また、地震被害予測装置1は、事業者が拠点内の管路に関する情報を管理するためのGIS(Geographic Information System)等の機能を備える装置である。地震被害予測装置1は、管路データベース(管路DB)において、事業者が管理する管路について管路属性情報及びイベント情報を含む管路情報を管理する。なお、管路DBに格納された管路属性情報、若しくは、管路属性情報及びイベント情報を含む管路情報に対しては、住所、座標やEPSGコード等のコード、GeohashやQuadkey等のハッシュ化位置情報、標準地域メッシュ等のメッシュコード等(これらを総称して、位置情報とする)、管路及びイベントの発生した位置を示す位置情報が1又は複数が付加されているものとする。
【0031】
学習装置2は、地震被害予測を行うための数理モデルの学習を行う装置である。本実施形態において、学習装置2は、地震被害予測装置1において管理される管路属性情報とイベント情報を含む管路に関する情報と過去に発生した地震に関する地震履歴に基づいて数理モデルの学習を行う。
【0032】
端末装置3は、管路情報等の生データを地震被害予測装置1に受け渡すなど、情報の入出力に用いられてもよい。端末装置3としては、パーソナルコンピュータやスマートフォン、タブレット端末、パーソナルコンピュータなどの装置を利用することができる。端末装置3は複数台用いられてもよいし、1台であってもよい。
【0033】
本実施形態において、地震被害予測装置1及び学習装置2、端末装置3のうち二者間のデータのやり取りは、扱うデータが流出するリスクなどの観点から、USBメモリやCD-ROMなどの可搬記憶媒体を用いてデータのやり取りを行うものとする。一方で、これら事業者の一部又はすべての事業者に関して、地震被害予測装置1や、学習装置2と接続された端末装置3等と、を図示しないIP(Internet Protocol)ネットワーク上のVPN(Virtual Private Network)など任意のネットワークを介して通信可能に構成し、ネットワーク経由でのデータのやり取りを行ってもよい。
【0034】
<ハードウェア構成>
図2は、ハードウェア構成図である。図2(a)に示すように、情報処理装置10(地震被害予測装置1、端末装置3)は、処理部101、記憶部102、及び通信部103、入力部104、及び出力部105を有し、各部及び各工程の作用発揮に用いられる。また、図2(b)に示すように、学習装置2は、処理部201、記憶部202、通信部203を有し、各部及び各工程の作用発揮に用いられる。
【0035】
地震被害予測装置1及び学習装置2、端末装置3としては、汎用のサーバやパーソナルコンピュータなどのコンピュータ装置を1又は複数利用することができる。また、地震被害予測装置1及び学習装置2は、後述する機能構成を備えているが、地震被害予測装置1及び学習装置2の備えた機能構成の一部が、地震被害予測装置1及び学習装置2と通信可能に構成された別の装置に配置されてもよい。
【0036】
処理部101及び処理部201は、命令セットを実行可能なCPU(Central Processing Unit)などのプロセッサを有し、OS(Operating System)並びに、学習プログラム(学習装置2の場合)、AI地震被害予測プログラム(地震被害予測装置1の場合)、地震被害予測装置利用プログラム又は学習装置利用プログラム(端末装置3の場合)などを実行する。
【0037】
記憶部102及び記憶部202は、命令セットを記憶可能なRAM(Random Access Memory)などの揮発性メモリ、OSなどを記録可能な、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)などの不揮発性の記録媒体を有する。地震被害予測装置1の記憶部102は、学習プログラムを含む地震被害予測プログラム並びに、地震被害予測のための学習済みの数理モデル又は学習済の数理モデルのパラメータを記憶する。また、学習装置2の記憶部202は、学習プログラムを記憶する。端末装置3の、記憶部102は、学習装置利用プログラム又は地震被害予測装置利用プログラムなどを記憶する。また、地震被害予測装置1の記憶部102及び学習装置2の記憶部202は、管路属性情報、イベント情報、地震情報、地震履歴及び地図情報を含む地震被害予測又は数理モデルの学習のために必要な各種データを記憶している。
【0038】
通信部103及び通信部203は、ネットワークに接続するためのインタフェースを有し、ネットワークとの通信制御を実行して、他の情報処理装置10や学習装置2との通信を行う。また、リスク管理等の観点で、ネットワークに接続することが望ましくない場合、情報処理装置10及び学習装置2は、通信部103及び通信部203を備えていなくてもよい。
【0039】
入力部104は、タッチパネルやキーボードなどの入力処理が可能な操作入力デバイス、マイクなどの音声入力が可能な音声入力デバイスなどを有する。出力部105は、ディスプレイなどの表示処理が可能な表示デバイス、スピーカなどの音声出力デバイスを有する。
【0040】
<データ構成>
以下、図3及び図4を用いて、本実施形態において地震被害予測装置1の記憶部102又は学習装置2の記憶部202において記憶されるデータ構成の例を示す。
【0041】
図3(a)において、管路の属性を示す管路属性情報の例を示す。管路属性情報は、管路の特徴(属性)を示す情報であって、管路の管理を行う自治体等の事業者のデータベース(管路DB)より取得した生データであるが、その一部又は全てが外部のデータベース等外部より取得したデータであってもよい。
【0042】
図3(a)に示す管路属性情報は、管路に関する情報であって、管路の布設された年度に関する布設年と、ダクタイル鋳鉄管(DIP)や普通鋳鉄管(CIP)などの管路の材料に関する情報である管種と、管路の口径と、漏水調査が行われたかなどのイベント情報の有無に関する漏水調査の有無と、を含む管路に関する特徴量を管路を特定する一意なIDで紐づけたデータである。
【0043】
また、また、図3(a)において図示されないが、本実施形態において、管路属性情報は、管路の布設される位置における地盤や気候等の環境に関する環境情報を含む。環境情報に含まれる地盤情報は、管路の布設される位置における地盤に関する情報であって、平均S波速度(AVS)や表層地盤増幅率、地形の種類や地質等を含む。管路の布設された場所の環境に関する環境情報は、布設位置の平均気温、平均降水量、主要道路からの距離などの情報を含む。また、管路の劣化に関係する特徴量であれば、管路の設置場所など、その他の情報が管路属性情報として含まれてもよい。
【0044】
図3(b)において、イベント情報の例を示す。イベント情報は、管路に発生した漏水や破損などのイベントに関する情報である。本実施形態において、イベント情報は、管路を管理する事業者により行われた漏水調査等のイベント調査によって発見された漏水等のイベントに関する情報、及び突発的に発生した漏水事故等により判明した管路の漏水に関する情報を含む。本実施形態において、イベント情報は、漏水など、水道管に発生するイベントに関する情報であるが、管路で発生するイベントに関する情報であればガス管の破損や破裂などのその他のイベントに関する情報であってもよい。また、本実施形態においてイベント調査は、特定の事業者が管理する管路に対して行われる漏水調査等の水道管に対する調査であるが、ガス管等、その他の管路に対する調査であってもよい。また、イベント調査済の管路は、漏水調査等のイベント調査が既に行われた管路であって、イベントの発生又は発生していないことが把握されている管路である。
【0045】
また、イベント情報は、管路に発生したイベントに関する情報であるため、一つの管路において複数回のイベントが発生している場合は複数のイベント情報が紐づいている。このように複数のイベント情報が一つの管路に対して紐づいていることでそれぞれの管路に発生したすべてのイベントに関する情報を学習に利用することができる。また、事業者が管路を管理する期間が長くなればなるほどイベント調査の回数や突発的なイベントに関するイベント情報は蓄積されていく。そのため、管路属性情報に対して紐づくイベント情報の数も増えていく。
【0046】
本実施形態では、管路IDを指定してイベント情報を登録することで管路属性情報と紐づけるが、管路属性情報及びイベント情報がそれぞれ位置情報を含む場合は、管路IDを指定することなく、イベント情報を登録してもよい。そのとき、イベント情報は、管路属性情報及びイベント情報に含まれる位置情報に基づいて、イベントが発生した場所の付近に存在する管路の管路属性情報と紐づけて登録されてもよい。突発的に発生した漏水事故により判明した管路の漏水に関する情報がイベント情報として登録されるとき、イベント情報は、管路属性情報と紐づかずに登録されてもよい。また、イベント情報と管路属性情報が紐づかずに登録されている際は、地震被害予測装置1又は学習装置2のデータ処理部12は、管路属性情報及びイベント情報に付加されている位置情報に基づいて管路属性情報とイベント情報とを紐づける処理を行ってもよい。
【0047】
図3(b)に示すイベント情報は、イベントを特定するための一意なIDである漏水データIDと、タイミング情報としてイベントの発生した年度に関するイベント発生年度(漏水年)と、地震の影響の有無に関する地震影響情報と、を含む。タイミング情報は管路においてイベントが発生したタイミングに関する情報である。図3(b)に示すデータでは、タイミング情報としてイベントが発生した年度に関するデータが含まれるが、管路の布設年度とイベント発生年度より取得した、イベント発生までの時間がタイミング情報として含まれていてもよい。また、管路に対して複数回イベントが発生している場合、タイミング情報として前回のイベント発生から今回のイベント発生までの時間がタイミング情報として含まれていてもよい。本実施形態において、イベント情報とタイミング情報とは同じ漏水データIDに紐づいて管理される。また、イベント情報は、水道管における腐食劣化や電食漏水、振動漏水などのイベント種別を含んでいてもよい。
【0048】
また、漏水調査等のイベント調査によって発見される漏水の原因として、電食漏水、振動漏水、腐食劣化等、地震以外の原因が含まれる。地震影響情報は、地震の発生の後すぐ発生した漏水事故や地震の後に行われた漏水調査等のイベント調査によって発見されるなど、明らかに地震の影響を受けて発生したイベントに関するイベント情報を特定するための情報であって、イベントの発生に対する地震の影響に関する情報である。したがって、イベント調査によって発見された漏水等のイベントが発生した管路であっても、電食漏水や腐食劣化等、地震の影響を受けずにイベントが発生した管路であれば、地震による漏水無しの管路として学習が行われる。また、本実施形態において地震影響情報を含むイベント情報は、漏水調査や管路の修繕を行うなど、イベントを発見した水道事業者等によって登録された情報であるが、管路やその周辺に配置されたセンサ等によって取得された情報であってもよい。
【0049】
本実施形態において、管路属性情報と紐づいて登録されるが、漏水等のイベントが発生していない場合、管路に管路属性情報が紐づいていない場合がある。その際、データ処理部12は、漏水無しである旨のイベント情報を管路属性情報に紐づける処理を行う。
【0050】
図3(c)において、管路に影響を与える発生した地震の履歴を示す地震履歴の例を示す。本実施形態において、地震履歴は、特定の自治体等の事業者の管理する範囲(例えば特定の市区町村)において過去に発生した地震に関する履歴であるが、全国で発生した地震の履歴に関する情報であり、地震の発生した位置に関する位置情報等を含んでいてもよい。また、本実施形態において、地震履歴は、所定の震度以上の地震に関する履歴であるが、その他の地震指標に基づいて設定された規模や大きさの範囲における地震の履歴であってもよい。事業者ごとに地震情報又は地震履歴を分割することは難しいため、本実施形態では、事業者ごとに図3(c)に示すような一つの地震情報及び地震履歴が登録される。したがって、自治体など特定の事業者の管理する範囲である各管路セグメントにおけるすべての管路は、当該管路セグメントにおける一つの地震履歴及び地震情報を参照する。
【0051】
図3(c)に示す地震履歴は、地震を示す一意なIDである地震IDと、発生年と、地震の大きさを示す地震指標と、を含む。本実施形態において、地震指標は、取得が比較的容易な震度であるが、震度、マグニチュード、最大加速度(peak ground acceleration)、最大速度(Peak Ground Velocity)、SI値(Spectrum Intensity)等のうち1又は複数を地震指標として用いてもよい。また、地震指標は、公的なデータベースのようなデータベースより取得した震度等の地震指標を利用したものであってもよい。
【0052】
また本実施形態において、発生が想定される地震に関する仮の地震のデータである地震情報を利用して地震被害予測に関する処理を行う。地震情報は、図3(c)に示す地震履歴と同様の発生年と地震指標とを含むデータ構成を有していてもよいが、予測を行った年度における地震被害予測を行う場合など、被害予測を行う年度が固定されている場合は、震度等の地震指標のみであってもよい。地震被害予測装置1は、発生が想定される地震に関する仮のデータである地震情報に基づいて生成された予測用データを利用して管路の地震被害予測を行う。また、地震被害予測に利用される地震情報は、端末装置3において事業者により入力された仮の地震に関するデータであってもよい。また、ユーザが直感的に認識しやすいように本発明は、震度やマグニチュード等の地震指標を用いることが好ましいが、震度やマグニチュード等のユーザになじみの深い地震指標に変換可能な加速度等の地震指標を用いてもよい。
【0053】
図4(a)において、図3に示す管路属性情報、イベント情報及び地震履歴に基づいて生成され、学習処理に利用される教師データの例を示す。図4(a)に示すデータは地震による管路の被害に関するデータであって、管路属性情報、イベント情報及び地震履歴に対して後述するデータ処理部12が前処理を行うことで生成されたデータである。
【0054】
教師データは、数理モデルの学習に用いられるデータであって、本実施形態において、管路ID、布設年、経験地震数、経験震度、地震漏水有無を含む。また、図4において図示されないが、教師データは、管路属性情報に含まれる地盤情報や環境情報を含む。経験地震数は、地震履歴に基づいて特定される管路の布設された範囲に発生した地震の回数である。経験震度は、地震履歴に基づいて特定される、管路の布設された範囲において、被害予測までに発生した地震の震度である。本実施形態では、経験震度は、管路が経験した地震のうち最も大きな震度であるが、管路が経験したすべての地震に関する震度を含んでいてもよい。地震漏水有無は、イベント情報に含まれる地震影響情報に基づいて特定される、地震の影響により管路に発生したイベントの有無である。
【0055】
図4(b)において、管路属性情報及び地震情報に基づいて生成される処理データである予測用データの例を示す。本実施形態において、予測用データは、管路ID、布設年等の管路属性情報と、経験地震数と、地震指標等の地震情報を含み、その形式等を揃えられたデータである。また、本実施形態において、予測用データに含まれる経験地震数は、図3(c)に示す地震履歴と管路属性情報に含まれる布設年に基づいてデータ処理部12により取得される、管路が布設から被害予測を行うまでに経験した地震の回数である。
【0056】
地図情報は、管路の地図に関する情報であって、地図の表示を行う際に利用される画像情報と地図上の位置に関する位置情報を含む。位置情報は、本実施形態では緯度経度であるが、地図における座標情報等であってもよい。本実施形態において、地図情報は、位置情報に基づいて管路属性情報と紐づいている。
【0057】
また、図4(a)及び図4(b)において図示されないが、本実施形態において、教師データ及び予測用データは、管路属性情報に含まれる管路の布設された場所における環境情報や地震による被害に関連性の高い地盤情報を処理したデータを含む。教師データ及び予測用データは、布設位置における平均気温、最低気温、最高気温、平均降水量、交通量、建物密集度、主要道路からの距離等の管路が布設された位置における環境に関するデータを含む。また、教師データ及び予測用データは、平均S波速度(AVS)や表層地盤増幅率、地形の種類や地質、傾斜や標高等の地盤に関するデータを含む。
【0058】
<機能構成>
図1に示すように、地震被害予測装置1は、受付部11と、データ処理部12と、予測部13と、表示処理部14と、を備える。また、学習装置2は、取得部21と、学習部22と、を備える。これは、ソフトウェア(記憶部などに一過的又は非一過的に記憶されたプログラム)による情報処理が、ハードウェア(処理部など)によって具体的に実現されたものである。
【0059】
<地震被害予測装置1の機能構成>
地震被害予測装置1の受付部11は、端末装置3を含む各種情報処理装置より必要な情報を受け付ける処理を行う。本実施形態において、受付部11は、端末装置3より地震情報及び地震履歴を受け付け管路DBより管路属性情報及びイベント情報を含む管路情報を受け付ける。また、受付部11は、端末装置3より管路属性情報及びイベント情報を受け付ける処理を行ってもよい。また、受付部11は、USB等の可搬記憶媒体を介して提供される管路に関するデータを受け付ける処理を行ってもよい。
【0060】
また、受付部11は、地震の被害予測を行う管路や地震被害予測を行う際の想定される地震指標の指定を含む入力部104を介したユーザによる入力を受け付け、地震被害予測装置1の記憶部102に記憶する処理を行う。
【0061】
地震被害予測装置1におけるデータ処理部12は、管路属性情報及び地震情報に基づいて予測用データの生成を行う。データ処理部12により生成される予測用データは、管路属性情報及び地震情報を扱いやすい形に変換することで生成された処理済みのデータである。本実施形態において、予測用データは、生データとして管路DBに格納される属性の一部又は全てであって、管路ID及び布設年を含む管路属性情報と、震度を含む地震情報と、が含まれるデータである。また、予測用データは管路に関するデータであればどのようなデータを含んでいてもよく、本実施形態において、管路属性情報に含まれる環境情報や地盤情報を含む。
【0062】
本実施形態において、データ処理部12は、管路属性情報及び想定される地震に関する地震情報に基づいて予測用データを生成する。本実施形態において、予測用データは、管路属性情報の一部又は全てと地震情報の一部又は全てを組み合わせることで生成したデータであって、形式や単位、桁数等を変換したデータである。また、データ処理部12は、布設年度と地震の発生年度に基づいて布設から地震の発生までの時間を算出する等、管路属性情報や地震情報、地震履歴等の複数の情報より、予測用データの形式に適した値を算出するなどの処理を変換処理として行ってもよい。また、データ処理部12は、管路の布設年と地震履歴及び地震情報に基づいて予測を行うまでに管路が経験した地震回数を算出し、予測用データに含まれる経験地震数とする処理を行ってもよい。
【0063】
データ処理部12は、地震被害予測に利用する各種情報に対して前処理として生データをAI地震被害予測システム0において、形式、桁数、単位等を変換することで扱いやすい処理データに変換する処理を行う。また、本実施形態において、データ処理部12は、地震被害予測装置1及び学習装置2の両方に備えられるが、地震被害予測装置1又は学習装置2の何れか片方に備えられていてもよい。
【0064】
また、管路属性情報やイベント情報などの管路に関する情報は、事業者ごとに形式が異なったり、欠落が発生したりすることが想定される。データ処理部12は、管路属性情報及びイベント情報を含む管路に関する情報を当該AI地震被害予測システムで利用しやすい形にデータの形式を揃えたり、データの補完を行うなどの処理を行ってもよい。
【0065】
予測部13は、データ処理部12により生成された予測用データに基づいて、数理モデルを利用した地震被害予測を行う。本実施形態において、予測部13は、管路属性情報と想定される地震に関する地震情報に基づいて生成された予測用データに基づく管路の地震による被害予測として地震の影響により管路に漏水等のイベントが発生する確率である地震被害発生率を出力する。また、予測部13は、管路に発生する地震に関する地震指標に基づいて管路の地震被害予測を行うが、例えば、震度5、震度6等の想定される複数の地震指標に基づく複数の地震被害予測を一つの管路に対して行ってもよい。
【0066】
予測部13は、地震が発生した場合の管路の被害に関するシミュレーションを行う。本実施形態において、予測部13は、想定される震度の地震に関するダミーのデータである地震情報と管路に関する管路属性情報から生成した予測用データに基づいて管路の地震被害の予測を行い、求めた予測結果を管路属性情報と関連付けて地震被害予測装置1の記憶部102に記憶する。本実施形態において、予測部13は、地震被害の予測結果として管路の特定の震度の地震における破損の確率を算出するが、地震による管路の被害(破損)の程度等であってもよい。また、予測部13は、地震を経験したが漏水が把握できていない管路に関して、地震速報等の発生した地震に関する情報に基づいて登録された地震情報に基づいて既に発生した地震による被害の予測を行ってもよい。
【0067】
本実施形態において、予測部13は、特定の震度における地震被害の予測を行う。本実施形態において、予測部13が利用する地震指標は、データの収集が容易な震度であるが地震の加速度等、その他の地震指標を用いて管路の地震被害の予測を行ってもよい。
【0068】
以下、予測部13において管路の地震被害の予測に利用される数理モデルに関する説明を行う。予測部13において利用される数理モデルは、管路に関する管路属性情報及び管路に発生した地震による被害に関するイベント情報に基づいて生成された予測用データに基づいて管路の地震による被害を予測する学習済みのモデルである。
【0069】
数理モデルは、本実施形態において、勾配ブースティングの手法を利用したモデルであるが、機械学習に関する手法により形成されたモデルであれば、勾配降下法やブースティング、決定木やニューラルネットワーク、ロジスティック回帰やk近傍法など、また、複数の手法を組み合わせるような手法など、どのような手法で構成された数理モデルを利用してもよい。予測部13は、複数の手法を組み合わせたモデルや、それぞれ異なる手法で構成された複数のモデルを利用して管路の地震被害の予測を行ってもよい。
【0070】
表示処理部14は、予測部13による予測結果を含む各種必要な情報を表示処理する。本実施形態において、表示処理部14により表示処理された各種画面は、地震被害予測装置1において表示されるが、端末装置3等の他の装置において表示されてもよい。以下、図面を用いて表示処理部14が表示処理する画面の例を示す。
【0071】
図5において、ユーザにより選択された管路の情報を表示する管路情報表示画面の例を示す。管路情報表示画面は、地図上に表示される管路を押下し、選択することで表示される画面であって、管路属性情報と地震被害予測の結果を含む管路に関する情報を表示する画面である。地図上の管路が押下されることでその位置における位置情報に基づいて紐づいた管路が選択され、受付部11は、地図上における管路の選択を受け付ける。本実施形態において、管路情報表示画面は、選択された管路に関する情報として、管区分、布設年、管種、口径を含む管路属性情報と、それぞれ震度における管路の漏水確率を含む地震被害予測の結果を表示する。図5に示すような管路情報表示画面は、管路に関する地図と同時に表示されてもよいし、異なる画面で表示されてもよい。
【0072】
また、図6において特定の震度における地震被害予測の結果を表示する地図である予測結果地図表示画面を示す。予測結果地図表示画面は、地震被害予測の結果を表示する画面であって、それぞれの管路に所定の地震指標(図6に示す例では震度5強)の地震が発生した際の地震被害予測結果である地震の影響によるイベントの発生確率を示す。図6に示す例では、それぞれの発生確率ごとに地図上の管路が異なる有彩色により色分けして着色される。本実施形態において、地図上に表示される管路は、それぞれ管路ごとのイベントの発生確率に基づいて異なる有彩色で着色されるが、管路ごとのイベントの発生確率を示すような方法であれば、イベントの発生確率に基づいて異なる濃淡の色や異なる模様で管路を塗りつぶす等、図6に示す例とは異なる構成で表示を行ってもよい。また、予測結果地図表示画面に表示される管路を押下し、選択することで、図5に示す管路情報表示画面が表示されてもよい。
【0073】
更に、本実施形態において、地震被害予測装置1は、分類部を備える。本実施形態において、分類部は、予測部13が求めた仮の地震被害予測結果である推定値と管路属性情報に基づいて分類を行い、管路属性情報及び推定値の近い管路を同じ分類に分類するように分類する。
【0074】
地震被害予測装置1が分類部を備えるとき、予測部13は、管路属性情報と数理モデルを用いて地震被害予測を行い、仮の予測結果である推定値を求める。推定値は、管路属性情報に基づく仮の予測結果であって、本実施形態では、地震被害の発生確率であるが、地震被害を受けてから管路が破損するまでの時間等であってもよい。分類部は、予測部13が求めた推定値と管路属性情報に基づいて分類を行う。予測部13は、推定値と分類部による分類結果に基づいて、最終的な予測結果を決定する。本実施形態において、予測部13は、分類結果に基づいて、地震被害予測を行う管路の推定値とその管路と同じ分類に分類される管路の推定値に重みづけを行うことで最終的な地震被害予測結果を決定する。
【0075】
<学習装置2の機能構成>
以下、図1に示す学習装置2の機能構成を示す。学習装置2は、取得部21と、データ処理部12と、学習部22と、を備える。
【0076】
取得部21は、管路属性情報とイベント情報を含む地震被害予測を行うために必要な各種情報を取得する処理を行う。また、取得部21は、地震被害予測装置1において管理される管路属性情報とイベント情報を含む管路に関する各種情報を取得するが、地震被害予測装置1及び学習装置2がセキュリティの観点からネットワークに接続することが望ましくない場合、USB等の可搬記憶媒体を介して受け渡されるデータを取得する処理を行ってもよい。また、取得部21は、取得したデータがそのまま利用することに適さない場合、前処理として取得したデータの形式等を整える処理を行ってもよい。
【0077】
また、取得部21は、APIを利用する等の様々な方法を用いて、ネットワーク等を介して通信可能に接続された気象情報提供システムや地図情報提供システム等の外部システムより直接地震被害予測に必要な情報を取得する処理を行ってもよい。
【0078】
また、取得部21は、数理モデルの学習に利用するために外部システム等の外部より取得したデータを、当該システムで利用可能な形式に変換し、記憶部102に格納するが、取得したデータをそのまま記憶部102に格納してもよい。取得部21における変換する処理とは、外部より取得したデータを所定の桁数や単位に変換したり、データ置換し、地震被害予測装置1又は学習装置2で扱うことが可能な形式に変換する処理である。取得部21は、例えば、外部システムが提供するウェブAPI(Application Programming Interface)等のAPIに対して、位置情報を送信して外部データを収集し、所定の変換を行う。その際、取得部21は、取得したデータを管路属性情報又はイベント情報に紐づける処理を行うが、管路属性情報又はイベント情報に紐づいた位置情報に基づいて紐づける管路を特定し、紐づける処理を行ってもよい。また、地震被害予測装置1の受付部11は、外部データの取得処理など、取得部21と同様の処理を行ってもよい。
【0079】
学習装置2におけるデータ処理部12は、管路属性情報、イベント情報及び地震履歴に基づいて数理モデルの学習に用いられる教師データの生成を行う。
【0080】
本実施形態において、データ処理部12は、図3に示す管路属性情報、イベント情報及び地震履歴に基づいて図4に示す教師データを生成する。データ処理部12は、取得した管路属性情報及びイベント情報を含む生データと地震履歴に基づいて教師データの生成を行う。データ処理部12は、生データの形式や単位、桁数等を変更することで教師データの生成を行うが、布設年と地震履歴に含まれる地震の発生年に基づいて地震被害予測までに管路が経験した地震の回数を算出し、教師データに含まれる経験地震数とするなど、複数のデータより学習に適した単位、桁数のデータを求める処理を行ってもよい。
【0081】
本実施形態において、データ処理部12は、特定の事業者の管理する範囲(例えば特定の市など)における管路に関する管路属性情報及びイベント情報を取得し、特定の事業者の管理する範囲において発生した地震履歴に基づいて教師データの生成を行う。また、データ処理部12は、地震影響情報に基づいてイベントの発生に地震が影響していると判定すると、タイミング情報(イベントの発生年度)及び地震履歴に含まれる地震の発生年に基づいて、イベントの発生に影響を与えた地震を特定し、教師データの生成に利用する。
【0082】
学習部22は、管路属性情報とイベント情報と地震履歴の組み合わせを教師データとして地震被害予測を行うための数理モデルの学習を行う。本実施形態において、学習部22は、図4に示すデータ構成を備える教師データを利用して学習を行う。学習部22は、データ処理部12により前処理をされた処理データを教師データとして利用して数理モデルの学習を行う。
【0083】
本実施形態において、学習部22は、配置される事業者の管理する管路に関する管路属性情報及びイベント情報、事業者の管理する範囲で発生した地震に関する地震履歴に基づいて生成した教師データを利用して学習を行うが、複数の事業者の管路属性情報、イベント情報及びそれぞれの事業者における地震履歴又は全国の地震履歴に基づいて生成した教師データを利用して学習を行ったモデルであってもよい。本実施形態において、管理者の拠点に配置される学習装置2の学習部22は、それぞれの事業者の拠点より、取得した処理データに基づいて学習を行うが、それぞれの事業者の拠点より取得した生データを処理することで生成した処理データを利用して学習を行ってもよい。また、学習部22は、全国の管路に関するデータに基づいて生成された教師データに基づいて学習を行った数理モデルである全国モデルを生成してもよい。また、学習部22は、更に、それぞれの事業者の管理する管路属性情報、イベント情報及び地震履歴に基づいて生成された教師データに基づいて全国モデルの学習を再度行い、それぞれの事業者に適した数理モデルである拠点モデルを生成してもよい。また、学習部22は、一度学習した全国モデルに対して、前回の学習から今回の学習までの取得したデータを用いて再学習を行ってもよい。全国モデルの生成方法は、上記に限定されず、学習部22は、数理モデルのパラメータ等を結合することで取得した複数の数理モデルを統合し、全国モデルを生成する処理を行ってもよい。
【0084】
<処理のフロー>
以下、図面を用いて地震被害予測及び数理モデルの学習に関する処理の流れの例を示す。図7を用いて説明を行う処理の流れは一例であって、処理の順番が異なるなど、後述する流れとは異なる流れで処理が行われてもよい。
【0085】
<地震被害予測の処理のフロー>
図7(a)において地震被害予測の処理のフローを示す。受付部11が想定される地震に関する地震情報を受け付けると(S101)、データ処理部12は、取得した地震情報及び管路属性情報に基づいて予測用データを生成する(S102)。予測部13は、データ処理部12が生成した予測用データと数理モデルを利用して地震被害予測を行う(S103)。
【0086】
<学習に関する処理のフロー>
データ処理部12は、管路属性情報とイベント情報と地震履歴を含む必要な情報に基づいて学習用のデータである教師データの生成を行う(S201)。本実施形態において、データ処理部12は、図3に示す管路属性情報、イベント情報及び地震履歴に基づいて図4に示す教師データを生成する。
【0087】
上記の実施例では、それぞれの事業所の拠点に地震被害予測装置1及び学習装置2が配置される場合の実施例について説明を行ったが、AI地震被害予測システム0の管理者の拠点のみに学習装置2が配置され、管理者の拠点で学習を行った数理モデルがそれぞれの事業者に配布されてもよい。また、その際、管理者の拠点に配置される学習装置2は、事業者の拠点より管路情報と地震履歴を含む必要なデータを取得し、数理モデルの学習を行ってもよい。
【0088】
本実施形態において、AI地震被害予測システム0は、予測した管路の地震被害予測結果を画面に表示するが、CSV(comma separated values)やエクセル等、様々な形式のファイルとして出力してもよい。
【符号の説明】
【0089】
0 AI地震被害予測システム
1 地震被害予測装置
2 学習装置
3 端末装置
【要約】      (修正有)
【課題】本発明は、数理モデルを用いて想定される地震が発生した際の管路の地震被害予測を行う新規な技術を提供することを課題とする。
【解決手段】既設管路を含む埋設された設備の地震被害を予測するAI地震被害予測システムであって、
記憶部と、予測部と、を備え、
前記記憶部は、管路属性情報及び地震被害予測を行うための数理モデル又は前記数理モデルのパラメータ、管路に関する管路属性情報、及び想定される地震の地震指標を含む地震情報を記憶し、
前記数理モデルは、管路属性情報、イベントに対する地震の影響に関する地震影響情報を含むイベント情報、及び過去に発生した地震に関する地震履歴に基づく教師データを利用して学習を行ったモデルであり、
前記予測部は、前記数理モデルを用い、管路属性情報及び前記地震情報に基づいて特定の地震指標における地震が発生した際の管路の被害予測を行い、予測結果を出力する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7