(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】ホールソー
(51)【国際特許分類】
B23B 51/04 20060101AFI20240408BHJP
B23B 51/08 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
B23B51/04 S
B23B51/08 C
(21)【出願番号】P 2024012478
(22)【出願日】2024-01-31
【審査請求日】2024-01-31
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】392029683
【氏名又は名称】株式会社ケイ・アイ・ドリル
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100174425
【氏名又は名称】水崎 慎
(74)【代理人】
【識別番号】100203932
【氏名又は名称】高橋 克宗
(72)【発明者】
【氏名】後藤 芳央
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-009618(JP,A)
【文献】実開昭54-006695(JP,U)
【文献】特開2002-192412(JP,A)
【文献】国際公開第2006/097980(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 51/04,51/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円環状の根元部と、
前記根元部から先端方向に向けて伸びた複数の刃部と、
前記根元部の中心において、前記刃部よりも先端方向に伸びた先細りの突状刃部と、
円周方向に隣接した前記刃部同士の間において、前記根元部に形成された溝部と、を有
し、
前記溝部に、
切削対象に形成される孔の縁を面取りするための面取刃部が形成された、
ことを特徴とするホールソー。
【請求項2】
前記
根元部の外面が、前記刃部よりも外側に張り出し、
前記面取刃部が、先端方向に突出すると共に、前記根元部の内側から外側に至っている、
ことを特徴とする請求項1に記載されたホールソー。
【請求項3】
前記
溝部が、
先端方向と反対側に湾曲した第一溝部と、
前記第一溝部と円周方向に隣接して先端方向と反対側に湾曲した第二溝部と、を有し、
前記面取刃部が、前記第一溝部と前記第二溝部との間において先端方向に隆起した、
ことを特徴とする請求項2に記載されたホールソー。
【請求項4】
前記
根元部の外面に、先端方向と反対側に向かうにしたがって外側に広がった斜面部が形成された、
ことを特徴とする請求項
2又は請求項3に記載されたホールソー。
【請求項5】
前記根元部の外面
であって前記斜面部の下方に、前記斜面部よりも外側に張り出したフランジ部が形成された、
ことを特徴とする請求項
4に記載されたホールソー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動ドリルに着脱されるホールソーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電動ドリルに着脱されるホールソーとして、例えば、下記特許文献1に記載された発明がある(以下、特許文献1に記載された発明を、「文献公知1発明」と記す。)。文献公知1発明は、円環状の刃と、この刃の中心に配置されたマグネット部とを有している。文献公知1発明によれば、切断時の切屑が、マグネット部に吸着するため、切屑の飛散や落下が低減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、例えば、切断対象が樹脂製であった場合、切屑や切片はマグネット部に吸着しない。したがって、切片が刃の内側に挟まり、切片を取り除くための煩雑な作業を要する。
【0005】
本発明は、この様な実情に鑑みて提案されたものであり、切片が挟まることのないホールソーの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係るホールソーは、円環状の根元部と、前記根元部から先端方向に向けて伸びた複数の刃部と、前記根元部の中心において、前記刃部よりも先端方向に伸びた先細りの突状刃部と、円周方向に隣接した前記刃部同士の間において、前記根元部に形成された溝部と、を有する、ことを特徴とする。
【0007】
本発明に係るホールソーは、前記溝部に、切削対象に形成される孔の縁を面取りするための面取刃部が形成された、ことを特徴とする。
【0008】
本発明に係るホールソーは、前記根元部の外面が、前記刃部よりも外側に張り出し、前記面取刃部が、先端方向に突出すると共に、前記根元部の内側から外側に至っている、ことを特徴とする。
【0009】
本発明に係るホールソーは、前記溝部が、先端方向と反対側に湾曲した第一溝部と、前記第一溝部と円周方向に隣接して先端方向と反対側に湾曲した第二溝部と、を有し、前記面取刃部が、前記第一溝部と前記第二溝部との間において先端方向に隆起した、ことを特徴とする。
【0010】
本発明に係るホールソーは、前記根元部の外面に、先端方向と反対側に向かうにしたがって外側に広がった斜面部が形成された、ことを特徴とする。
【0011】
本発明に係るホールソーは、前記根元部の外面であって前記斜面部の下方に、前記斜面部よりも外側に張り出したフランジ部が形成された、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るホールソーは、円環状の根元部と、根元部から先端方向に向けて伸びた複数の刃部と、根元部の中心において、刃部よりも先端方向に伸びた先細りの突状刃部と、円周方向に隣接した刃部同士の間において、根元部に形成された溝部とを有している。切削対象に孔が切削される際、切削対象の切片は、刃部同士の内側に挟まるところ、切片は、突状刃部に支持されて刃部から離されるうえ、先細りの形状に沿って先端方向に向かって落下する。よって、切片が刃部同士の内側に挟まることがない。
【0013】
本発明に係るホールソーは、溝部に、切削対象に形成される孔の縁を面取りするための面取刃部が形成されている。よって、切削対象の孔の縁が面取りされる。また、面取刃部が形成された位置が、溝部であることから、面取刃部を形成するための複雑な加工を要しない。
【0014】
本発明に係るホールソーは、根元部の外面が、刃部よりも外側に張り出し、面取刃部が、先端方向に突出すると共に、根元部の内側から外側に至っている。面取刃部は、刃部よりも外側に伸びているため、刃部によって形成された孔の縁が、面取刃部によって面取りされる。
【0015】
本発明に係るホールソーは、溝部が、先端方向と反対側に湾曲した第一溝部と、第一溝部と円周方向に隣接して先端方向と反対側に湾曲した第二溝部とを有し、面取刃部が、第一溝部と第二溝部との間において先端方向に隆起している。面取刃部は、第一溝部と第二溝部との境界として形成されるため、面取刃部の作製が簡便である。
【0016】
本発明に係るホールソーは、根元部の外面に、先端方向と反対側に向かうにしたがって外側に広がった斜面部が形成されている。切削対象の孔の縁が、斜面部によって面取りされることで、孔の縁のエッジが滑らかとなる。
【0017】
本発明に係るホールソーは、根元部の外面であって斜面部の下方に、斜面部よりも外側に張り出したフランジ部が形成されている。フランジ部が切削対象の孔の縁に当たることで、ホールソーは、孔に対する挿入方向への移動が規制される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本発明の第一実施形態に係るホールソーの側面図である。
【
図2】
図2は、本発明の第二実施形態に係るホールソーの側面図である。
【
図3】
図3は、本発明の第二実施形態に係るホールソーの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の第一実施形態に係るホールソーを図面に基づいて説明する。
図1には、第一実施形態に係るホールソー1の側面が示されている。なお、以下では、刃先がある方向を先端方向(Tip)とし、先端方向と反対方向を後方(Back)とする(
図1及び2参照)。
【0020】
図1に示されているとおり、ホールソー1は、シャンク部2と、刃本体部4とから構成されている。刃本体部4は、円盤状の台座部5と、この台座部5の円周縁から先端方向に伸びた円環状の根元部6と、この根元部6から先端方向に向けて伸びた複数の刃部7と、根元部6の中心に配置されて先端方向に伸びた突状刃部11と、円周方向に隣接した刃部7a、7b同士の間において根元部6に形成された溝部12とを有している。なお、刃部7の枚数や形状は任意である。
【0021】
台座部5は、中心に孔が形成され、この孔にシャンク部2の先端突部3が挿入されている(
図3参照)。先端突部3には、突状刃部11が取り付けられている。突状刃部11は、刃部7よりも先端方向に伸びている。突状刃部11は、先細りの三角錐である。根元部6は、円筒状であり、先端方向に伸びた先に刃部7が連接され、刃部7a、7b同士の間に溝部12が形成されている。刃部7の刃先8は、ホールソー1の正回転方向(右回り)に向かうにしたがって徐々に先端方向に突出している。よって、刃部7は、正回転側の端9が、逆回転側(左回り)の端10よりも先端方向に張り出し、刃先8の形状は、逆回転側の端10から正回転側の端9に向けた上り傾斜である。溝部12は、刃部7aの正回転側の端9と、刃部7bの逆回転側の端10との間に渡って、U字状に形成されている。
【0022】
次に、ホールソー1の作用及び効果を説明する。
【0023】
ホールソー1が電動ドリル(図示省略)に取り付けられて回転している状態で、ホールソー1が金属製や樹脂製の切削対象(図示省略)に押し当てられると、切削対象に孔が形成される。はじめに、突状刃部11が切削対象に突き刺さって小孔が形成され、次いで、小孔の周囲が刃部9によって削られることで円形の孔が形成される。その際、切削屑として、孔の形状に相当する円形の切片が切り取られる。切片は、刃部7同士の内側に挟まるところ、切片は、突状刃部11が小孔に通されて支持されることから、刃部7から離される。切片は、突状刃部11の先細りの形状に沿って先端方向に向かってズレ、突状刃部11から外れる(ホールソー1が下に向けられていれば、切片は落下する。)。よって、切片が刃部7同士の内側に挟まることがない。
【0024】
次に、本発明の第二実施形態に係るホールソーを図面に基づいて説明する。
図2には、第二実施形態に係るホールソー201の側面が示され、
図3には、ホールソー201の先端側が示されている。なお、以下では、主に第一実施形態に係るホールソー1と異なる構成について説明され、ホールソー1と同様の構成の説明は省略されている。
【0025】
図2及び3に示されているとおり、ホールソー201の根元部206の外面は、刃部207よりも外側に張り出している。詳説すれば、根元部206の外面は、斜面部220と、この斜面部220の下部に連接されたフランジ部221とを有している。斜面部220は、先端方向と反対側である後方に向かうにしたがって外側に広がった傾斜面であり、根元部206の円周方向に沿った円環状である。フランジ部221は、斜面部220の下方において、斜面部220よりも外側に張り出し、根元部206の円周方向に沿った円環状である。
【0026】
根元部206の溝部212は、フランジ部221に向かって後方に湾曲した第一溝部222及び第二溝部223を有している。第一溝部222と第二溝部223とは、根元部206の円周方向において隣接している。第一溝部222と第二溝部223との境界は、先端方向に隆起したことで面取刃部224が形成されている。面取刃部224は、刃部207の高さに至らない程度に先端方向に突出している。したがって、面取刃部224は、刃部207よりも下方に在る。面取刃部224は、根元部206の内側から外側に至って、刃部207よりも外側に伸びている。換言すれば、根元部206は、斜面部220の分だけ、刃部207よりも厚く、面取刃部224は、根元部206の厚み方向に渡って伸びていることから、面取刃部224は刃先208よりも外側に至っている。
【0027】
次に、ホールソー201の作用及び効果を説明する。
【0028】
回転しているホールソー201が切削対象に押し当てられ、刃部207によって切削対象に円形の孔が形成され、次いで、面取刃部224が孔の縁を削る。特に、面取刃部224は、斜面部220に形成されていることから、孔の縁が滑らかとなる。よって、切削対象の孔の縁が面取りされる。フランジ部221が孔の縁に当たると、ホールソー201は孔に対する挿入方向への移動が規制されるため、それ以上に面取りされることはない。面取刃部224は、溝部212に形成された第一溝部222と第二溝部223との境界として形成されているため、作製が簡便である。
【0029】
以上、本発明の実施形態を詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。そして本発明は、特許請求の範囲に記載された事項を逸脱することがなければ、種々の設計変更を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0030】
1、201 ホールソー
2、202 シャンク部
3 先端突部
4、204 刃本体部
5、205 台座部
6、206 根元部
7、7a~b、207 刃部
8、208 刃先
9 正回転側の端
10 逆回転側の端
11、211 突状刃部
12、212 溝部
220 斜面部
221 フランジ部
222 第一溝部
223 第二溝部
224 面取刃部
【要約】
【課題】切片が挟まることのないホールソーを提供する。
【解決手段】ホールソー1の刃本体部4は、円盤状の台座部5と、この台座部5の円周縁から先端方向に伸びた円環状の根元部6と、この根元部6から先端方向に向けて伸びた複数の刃部7と、根元部6の中心に配置されて刃部7よりも先端方向に伸びた先細りの突状刃部11と、円周方向に隣接した刃部7a、7b同士の間において根元部6に形成された溝部12とを有している。
【選択図】
図1