(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】バリア性キャップ
(51)【国際特許分類】
B65D 47/12 20060101AFI20240408BHJP
B65D 47/36 20060101ALI20240408BHJP
B29C 45/13 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
B65D47/12
B65D47/36 210
B65D47/36 310
B29C45/13
(21)【出願番号】P 2020033794
(22)【出願日】2020-02-28
【審査請求日】2022-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100186358
【氏名又は名称】齋藤 信人
(74)【代理人】
【氏名又は名称】佐野 整博
(72)【発明者】
【氏名】山本 学
【審査官】田中 一正
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-124550(JP,A)
【文献】特開2017-013833(JP,A)
【文献】特開2008-184202(JP,A)
【文献】特表2013-531084(JP,A)
【文献】米国特許第07021478(US,B1)
【文献】実開平07-028852(JP,U)
【文献】特開2018-052619(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 47/12
B65D 47/36
B29C 45/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体の口部に装着されるキャップ本体と、該キャップ本体に開閉可能に装着される外蓋とからなるバリア性キャップにおいて、
キャップ本体は、基本樹脂からなる基材層に対し、ガスバリア性の樹脂
に着色剤マスターバッチを
加えて混錬することで着色されたバリア層が内層化され
、外観からバリア層の形成位置が確認できることを特徴とするバリア性キャップ。
【請求項2】
バリア層は、バリア性樹脂に基本樹脂をブレンドしたものであることを特徴とする請求項1に記載のバリア性キャップ。
【請求項3】
バリア層は、バリア性樹脂に、基材層に対し接着性を有する接着樹脂をブレンドしたものであることを特徴とする請求項1に記載のバリア性キャップ。
【請求項4】
キャップ本体は、基材層と着色されたバリア層との間にさらに接着樹脂からなる接着層を設けることを特徴とする請求項1に記載のバリア性キャップ。
【請求項5】
着色されたバリア層は、遮光性を有することを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のバリア性キャップ。
【請求項6】
回転動作で破断してキャップ本体から外蓋に移行する移行栓体を有するバリア性キャップであることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載のバリア性キャップ。
【請求項7】
キャップ本体は、容器本体に装着される装着部と、ねじ壁部と、注出筒と、注出筒の内周面に、薄肉弱化部を介して連設される移行栓体とを有し、
着色されたバリア層は、少なくとも、装着部、ねじ壁部、注出筒、薄肉弱化部および移行栓体に設けられていることを特徴とする請求項6に記載のバリア性キャップ。
【請求項8】
プルリングで破断して抜栓されるバリア性キャップであることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載のバリア性キャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色されたバリア層を有するバリア性キャップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ドレッシングや調味料などを収容する食品容器には、開封時まで容器内を密封状態にしておくために、容器口部に装着されたキャップ本体に、弱化部により画成された除去壁部を形成した隔壁を設け、除去壁部に設けられたプルリングを引き上げて該除去壁部を引きちぎって注出口を開栓する抜栓キャップが広く用いられている。
【0003】
また、内容物風味を維持するため、容器外部の空気に含まれる酸素等を遮断するガスバリア性に優れた容器が提案されており、それに対応するキャップについてもガスバリア性を有するキャップが従来から知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1記載のキャップは、バリア層の形成位置が外観だけでは確認することができないため、キャップの生産時にバリア層が所定位置に形成されているかどうかの検査確認ができないという問題があった。
また、今までのバリア層は、酸素バリア性や香味を保持することができるが、遮光することができないため、保存性において十分でないという問題もあった。
【0006】
本発明は、上記問題を解決することを課題とし、外観からバリア層の形成位置を確認することが可能となり、さらに、ガスバリア性とともに遮光性にも優れたバリア性キャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するため、バリア性キャップとして、容器本体の口部に装着されるキャップ本体と、該キャップ本体に開閉可能に装着される外蓋とからなるバリア性キャップにおいて、キャップ本体は、基本樹脂からなる基材層に対し、ガスバリア性の樹脂に着色剤マスターバッチを加えて混錬することで着色されたバリア層が内層化され、外観からバリア層の形成位置が確認できることを特徴とする構成を採用する。
【0008】
バリア性キャップの実施形態として、バリア層は、バリア性樹脂に基本樹脂をブレンドしたものであることを特徴とする構成、バリア層は、バリア性樹脂に、基材層に対し接着性を有する接着樹脂をブレンドしたものであることを特徴とする構成、キャップ本体は、基材層と着色されたバリア層との間にさらに接着樹脂からなる接着層を設けることを特徴とする構成、また、着色されたバリア層は、遮光性を有することを特徴とする構成を採用する。
【0009】
バリア性キャップのさらなる実施形態として、回転動作で破断してキャップ本体から外蓋に移行する移行栓体を有するバリア性キャップであることを特徴とする構成、キャップ本体は、容器本体に装着される装着部と、ねじ壁部と、注出筒と、注出筒の内周面に、薄肉弱化部を介して連設される移行栓体とを有し、着色されたバリア層は、少なくとも、装着部、ねじ壁部、注出筒、薄肉弱化部および移行栓体に設けられていることを特徴とする構成、また、プルリングで破断して抜栓されるバリア性キャップであることを特徴とする構成を採用する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のバリア性キャップは、バリア層がガスバリア性の樹脂に着色剤マスターバッチを加えて混錬することで着色されているため、外観からバリア層の形成位置が容易に確認することができるとともに、着色されたバリア層が遮光性を有する場合には、ガスバリア性とともに遮光性を付与することができ、保存性がさらに改良される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施例のバリア性キャップのキャップ本体の半断面側面図である。
【
図2】本実施例のバリア性キャップのキャップ本体に外蓋を螺合して閉蓋した状態を示す断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明のバリア性キャップについて、ラチェット機構を使用して回動動作によって開栓することができるキャップとして具体化した実施例を示した図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0013】
図2において、Aは容器本体、Bは容器本体Aに装着されるキャップ本体、Cはキャップ本体Bに螺合して装着される外蓋である。
【0014】
図2に示すように、容器本体Aの口部1は、キャップ本体Bに嵌着して抜け止め保持する係止突条2を備えている。
また、
図1に示すように、キャップ本体Bは、外周側の外筒5、内周側の内筒6、口部1の天面側に位置する上壁7とからなり、口部1が嵌入する環状溝を形成する装着部4と、上壁7に連設して立設されたねじ壁部8と、ねじ壁部8の上端に段部9を介して連設された注出筒10とからなっている。
【0015】
注出筒10は容器本体A内に収容された内容物を注出する注出口を形成し、円筒状の基部11と、基部11の上部に拡径して外側に湾曲するリップ部12とを有する。
注出筒10の基部11の内周面には、全周にわたって形成された薄肉弱化部15を介して移行栓体16が一体に連設されている。
移行栓体16は、上部に円筒状の筒状壁17が立設され、下部は底壁14が薄肉弱化部15とともに注出口を封鎖している。
【0016】
筒状壁17は、外周にラチェット機構の一方の第1歯部を構成する係合突起18が周方向に突設され、内周上部には第1係合突部19が環状に突設されている。
係合突起18は、後述する外蓋Cのラチェット機構のもう一方の第2歯部52と係合する。
【0017】
底壁14は、筒状壁17の外周側に下面から所定の高さを有する拡径部22と、拡径部22の外周側に連設され、外側に向けて漸次肉薄になるとともに薄肉弱化部15に連設するフランジ部23とを有している。
ねじ壁部8は、注出筒10の下部に内周縁で連設した段部9の外周縁から垂設され、外周面にはねじ部(雄ねじ)24が設けられている。
ねじ部(雄ねじ)24の下方のねじ壁部8の外周には、キャップ本体Bの軸方向にわずかに隆起して延びる突条の縦リブ25が周方向複数個所に設けられている。
また、ねじ壁部8の内周面には、上部を段部9に連設し軸方向に延びる補強リブ26が突設されている。
【0018】
装着部4は、上壁7が内周縁でねじ壁部8の下部で連設し、上壁7の下部には外筒5と内筒6が垂設されている。
外筒5と内筒6の間には、容器本体Aの口部1が嵌入する嵌合溝が形成され、外筒5の内周には、係止突条2に係合して口部1を抜け止めする係止縮径部27が設けられている。
上壁7の上面には、周方向複数個所にストッパー28が設けられ、その螺脱方向には略垂直な第1当接面28aが形成され、螺着方向には第1傾斜面28bが形成されている。
本実施例では、ストッパー28の第1傾斜面28bに近接して縦リブ25がストッパー28と同数配設されている。
また、本実施例では、段部9の外周には、外蓋Cをキャップ本体Bに螺合する際にその終了を知らせるための音出し突部13が設けられている。
【0019】
キャップ本体B内には、キャップ本体Bの基材層に対し、
図1および
図3に示すように、着色されたバリア層Dが共射出成形によって中間層として設けられている。
本実施例では、キャップ本体Bの装着部4(外筒5、内筒6、上壁7)、ねじ壁部8、段部9と移行栓体16の底壁14の部分に着色されたバリア層Dが設けられている。
なお、キャップ本体Bの注出筒10や外筒5内には着色されたバリア層Dはなくても構わない。
【0020】
キャップ本体Bの基材層となる基本樹脂として、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)などのポリオレフィン樹脂、PET等の公知の樹脂が用いられる。
基材層は、着色されたバリア層Dのみを確認するものであるから、基本的に着色する必要はないが、バリア層Dの着色された色を明りょうにするものであれば、着色があっても構わない。
また、着色されたバリア層Dとなるバリア性樹脂としては、それぞれバリアの目的に応じて、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)や、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリアミド(PA)、MXナイロン(MXD6等)等の公知のガスバリア性の樹脂が用いられる。
中でも、酸素に対するバリア性や風味および香気に対するバリア性からみて、エチレンビニルアルコール共重合体が好ましい。
【0021】
バリア層Dを着色する方法としては、着色されたペレット状あるいは粒子状の着色剤マスターバッチを使用することによって着色することができる。
着色剤マスターバッチは、樹脂中に高濃度の顔料を加え、よく混練して均一に着色されており、バリア層Dとなるバリア性樹脂に着色剤マスターバッチを加えて混練することで着色することができる。
その場合、着色剤マスターバッチの加える量によって着色を薄くも濃くすることも可能である。
また、着色剤マスターバッチには、機能性を持たせることも可能であり、遮光性を有する着色剤マスターバッチを使用すれば、バリア性樹脂による酸素バリア性、保香性などの他に遮光性が加えることができ、さらに、容器内の内容物の保存性を改良することができる。
【0022】
また、バリア層Dには、基本樹脂からなる基材層との接着性の改良のために基本樹脂や、基材層に対し接着性を有する接着樹脂を加えることができる。
接着樹脂としては、基本樹脂がポリオレフィンで、バリア性樹脂がエチレンビニルアルコール共重合体の場合には、ポリオレフィンに官能基を導入して接着性を付与した変性ポリオレフィンを使用することができる。
接着樹脂となる変性ポリオレフィンとしては、三菱ケミカル株式会社の接着樹脂モディック(登録商標)や三井化学株式会社のアドマー(登録商標)などが挙げられる。
【0023】
本実施例のように、薄肉弱化部15にも、バリア層Dを設けた場合には、キャップ本体Bの基材層となる基本樹脂とバリア層Dのバリア性樹脂とは接着性が乏しいため、薄肉弱化部15の基材層部分が破断しても、バリア層Dが分離してしまいバリア層Dの破断が不十分となり、開封できない場合があり、基本樹脂や接着樹脂をバリア性樹脂に加えてバリア層Dとすることによって、基材層とバリア層Dとの接着性が改善され、バリア層Dを容易に破断することができ、開封性が改善される。
また、基材層とバリア層Dとの間に接着樹脂による接着層を設けることによっても、基材層とバリア層Dとの接着が強固になり、バリア層Dの破断が改善される。
なお、基材層とバリア層Dとの接着性の改善には、基材層となる基本樹脂に、バリア性樹脂を加えたり、接着樹脂を加えることによっても可能であり、同様に開封性も改善することができる。
【0024】
基本樹脂をバリア性樹脂に加えて接着性の改良されたバリア層Dを着色する場合には、両者をブレンドする際に、着色剤マスターバッチも同時に加えてブレンドすればよい。
ただ、その場合に着色ムラなど着色がうまくいかない場合には、ブレンドする前の基本樹脂あるいはバリア性樹脂のいずれか一方に着色剤マスターバッチを加えて均一に混練して着色しておき、それをもう一方の樹脂とブレンドする方法を採用することができる。
また、接着樹脂をバリア性樹脂に加えた場合も同様であり、接着樹脂とバリア性樹脂をブレンドする際に同時に着色剤マスターバッチを加えればよく、また、接着樹脂あるいはバリア性樹脂のいずれか一方に着色剤マスターバッチを加えて着色しておき、それをもう一方とブレンドすることで着色することも可能である。
なお、その場合、少量成分となる基本樹脂や接着樹脂に先に着色剤マスターバッチで着色してからバリア性樹脂にブレンドするほうが着色性はよくなることが多い。
【0025】
基本樹脂をバリア性樹脂に加えて接着性を改良する場合の適当な配合率については、バリア層Dのバリア性樹脂あるいは基材層となる基本樹脂としてどのようなものを選択するかによって、それぞれ相違したものとなる。
ただし、基本樹脂の配合量が増えるに従って、バリア性樹脂の配合量が相対的に減ることになり、バリア層Dのバリア性能が落ちていくことが考えられるため、バリア性能を維持するためには、接着性が改良され、破断可能となる最低の配合率でブレンドすることが好ましい。
接着樹脂をバリア性樹脂に加えて接着性を改良する場合の接着樹脂の適当な配合率についても同様であり、接着性が改良され破断可能な最低の配合率となるように接着樹脂を加えることが好ましい。
【0026】
本実施例では、基材層の基本樹脂として直鎖状低密度ポリエチレンLLDPE(プライムポリマー社製 25200J)を用い、バリア層Dのバリア性樹脂としてエチレンビニルアルコール共重合体EVOH(クラレ社製 C109B)を用いた。
また、バリア層Dには、基本樹脂であるLLDPEに白色MB(マスターバッチ)を20:1でブレンドして白色に着色されたLLDPEをバリア性樹脂のEVOHに混練して着色をおこなった。
【0027】
基本樹脂のLLDPEの配合率は、10%以上のLLDPEの配合率で薄肉弱化部15の破断による開封可能となるとともに、バリア層Dの着色も十分なものとなるので好ましい。
ただし、LLDPEを多くすると、バリア性樹脂が相対的に少なくなり、バリア性能が落ちてしまうため、10~25%のLLDPEの配合率でブレンドすることが好ましい。
【0028】
外筒5は、外周面に下方が切り欠かれた縮径凹面に連設する環状の切欠き段部29が設けられ、さらにその下方には、キャップ本体Bを容器本体Aから分離して分別廃棄可能とする分別機構が設けられている。
外筒5の下部外周面の所定円弧範囲にわたって軸方向に形成されたスリット30を介して把持部31が設けられ、把持部31は、縦切断部32によって外筒5から切り離され外方に展開可能になっている。
把持部31の縦切断部32には、上部に指先を入れて引っ掛けるための引っ掛け凹部32aが形成され、縦切断部32に近接する側の把持部31内周面には手指で把持する把持凹部が設けられており、スリット30は、縦切断部32より把持部31と反対方向に延び、終端部で把持部31が外筒5と一体となる。
【0029】
外筒5の内周側に破断可能な薄肉の周方向切断部37が形成され、本実施例では、スリット30は約110°の円弧範囲にわたって形成されている。
【0030】
本実施例のキャップ本体Bに螺合できる外蓋Cとして、
図2のものが例示される。
外蓋Cは、天板部に設けられた頂壁40と、頂壁40の外周縁から垂設された外周壁41とを有している。
なお、外周壁41の下端には、破断可能な弱化連結部で連結された封緘リングを設けることが可能であり、封緘リングは未使用であることを示し、最初に使用する際に取り外される。
頂壁40の内面には、中央付近に垂設された係着部45から外側へ順に、切断筒部46,ねじ筒部47が頂壁40と一体に垂設されている。
【0031】
本実施例では、切断筒部46とねじ筒部47の間に音出し部材48が垂設されており、音出し部材48は先端部に振動片が設けられ、外蓋Cがキャップ本体Bの締め込む際に、キャップ本体Bの音出し突部13に振動片が触れて音を発するため、それによって外蓋Cの締め込みの終了を知ることができる。
【0032】
係着部45には、キャップ本体Bの第1係合突部19を乗り越えて筒状壁17の内周面に緊密に嵌合する環状の第2係合突部50が先端外周に形成されている。
切断筒部46の内周には、第1歯部を構成する係合突起18に係合する第2歯部を構成する係合腕52が係合突起18と同数で設けられ、切断筒部46の先端外周には、注出筒10の内周面に当接して注出口を密閉するシール部が形成されている。
切断筒部46の長さは、シール部が注出筒10の基部11に当接し、先端部が移行栓体16の拡径部22の外周面とわずかな隙間をもって嵌入するところまで延びている。
【0033】
係合腕52は、薄肉弱化部15を破断可能な回転力を伝えることができる程度の強度と、外蓋Cの締め込み時に係合突起18を乗り越えることができる程度の可撓性を有する部材からなっている。
【0034】
ねじ筒部47には、内周にキャップ本体Bのねじ部(雄ねじ)24に螺合するねじ部(雌ねじ)58が設けられている。
次に、本実施例の使用態様と作用効果について説明する。
【0035】
まず、本実施例のバリア性キャップのキャップ本体Bは、キャップ本体Bの基本樹脂LLDPEからなる基材層に対し、バリア性樹脂EVOHに、白色MB(マスターバッチ)で着色したLLDPEを加えて着色されたバリア層Dが中間層となるように共射出成形することによって製造する。
バリア層Dが着色されているので、外観から容易に形成位置を確認することができた。
【0036】
本実施例のバリア性キャップを容器本体Aに装着するには、上記のキャップ本体Bに外蓋Cを螺合して締め込み、キャップ本体Bと外蓋Cを組み立ててから容器本体Aの口部1にキャップ本体Bの装着部4をあてがって上部から打栓する。
キャップ本体Bのねじ部(雄ねじ)24に外蓋Cのねじ部(雌ねじ)58を螺合して締め込む際には、ラチェット機構によって、係合腕52は係合突起18を乗り越え、外蓋Cの回転を許容する。
また、外蓋Cの音出し部材48の先端部の振動片が、キャップ本体Bの音出し突部13に触れて音を発することで外蓋Cの締め込みが終了したことを知ることができる。
【0037】
次に、本実施例のバリア性キャップが打栓され装着された容器を使用するには、外蓋Cを螺脱方向に回転させ、外蓋Cの回動開始時は、なめらかに回転が始まり、続いて切断筒部46の係合腕52が筒状壁17の係合突起18に当接して係合するようになると、ラチェット機構が働き、外蓋Cの回転力がラチェット機構を介して移行栓体16に加わるようになる。
【0038】
このとき、係着部45の第2係合突部50が筒状壁17の第1係合突部19を乗り越えた内周面に緊密に嵌合しているので、筒状壁17を内側から補強して外蓋Cの回転力がラチェット機構を介して移行栓体16に伝わりやすくなっているとともに、ねじの回転に伴って移行栓体16を上方に引き上げる力を発生させる。
外蓋Cの回転が進むと、移行栓体16に加わる回転力と引き上げ力により、ついには薄肉弱化部15が破断して注出口が開栓され、注出筒10から分離された移行栓体16は筒状壁17に係合する係着部45によって引き上げられて外蓋Cとともに上昇していく。
【0039】
切断筒部46のシール部が注出筒10の内周面から離れ、ねじ部(雌ねじ)58がねじ部(雄ねじ)24から螺脱して外蓋Cをキャップ本体Bから離脱すれば、外蓋Cとともに移行栓体16が除去された注出筒10の開口から容器内の内容物を注出することができる。
【0040】
容器を使用した後、再度外蓋Cをキャップ本体Bに装着する際には、移行栓体16のフランジ部23および破断した薄肉弱化部15の残片によって、注出筒10の内周面に付着した内容物が掻き落とされ、注出筒10の内周面を清潔に保つことができる。
また、切断筒部46は、シール部が注出筒10に当接して容器内を密封する。
【0041】
本実施例のバリア性キャップは、容器を使用した後に廃棄する際に、簡単な操作で容器本体Aから分離し、分別して廃棄することができる。
まず、縦切断部32の引っ掛け凹部32aに手指を掛けて把持部31を手前に引っ張ると、縦切断部32が破断し、把持部31が外方に展開する。
さらに把持部31を引っ張ると、スリット30の終端部に隣接して設けられた図示しない薄肉始断部が破断し、さらに薄肉始断部の終端に連続する薄肉の径方向切断部を経由して周方向切断部37へと破断が進んでいく。
【0042】
周方向切断部37が破断したところでは、係止縮径部27の係止突条2への係合が解除されるので、破断終端部近くまで破断が進むと、係止縮径部27による口部1への拘束が解除され、把持部31を引き上げると、キャップ本体Bを容器本体Aから離脱させ分別廃棄することができる。
【実施例2】
【0043】
次に、遮光MB(マスターバッチ)をバリア層Dに使用した第2実施例について説明する。
以下、第1実施例と同一部分には、第一の符号を付し、相違点を中心に説明する。
【0044】
本実施例のバリア性キャップは、形状、構造については実施例1と同じである。
本実施例の基本樹脂は直鎖状低密度ポリエチレンLLDPE(プライムポリマー社製 25200J)であり、バリア性樹脂はエチレン含有量32モル%のエチレンビニルアルコール共重合体EVOHであり、また、遮光MBとして酸化チタンベースのトーヨーカラー社製 TET1TA538を使用した。
本実施例のバリア層Dには、基本樹脂のLLDPEに上記遮光MBを10:1でブレンドして得た材料(遮光材)をバリア性樹脂のEVOHに85:15(EVOH:遮光材)で混練して、遮光性を有する着色を行った。
【0045】
次に、本実施例の実施態様と作用効果について説明する。
本実施例のキャップ本体Bは、無着色のLLDPEからなる基材層に対し、上記のEVOHと遮光材からなる着色されたバリア層Dが中間層となるように共射出成形で製造され、第1実施例と同様に外蓋Cと組み立てられ、得られたバリア性キャップを、同様に容器本体Aに装着した。
得られたバリア性キャップは、外観からバリア層Dが適正であることが確認できるとともに、酸素バリア性および遮光性を有するものとなった。
その他の構成および作用効果については、第1実施例と同じである。
【0046】
本実施例のバリア性キャップは、上記に示すように、ラチェット機構を介する回転動作によって薄肉弱化部を破断し、移行栓体を外蓋に移行させるものであるが、キャップ本体内に着色されたバリア層を設け、回転動作で薄肉弱化部を破断するものであればどのようなものであっても構わない。
また、プルリングを使用して薄肉弱化部の破断するバリア性キャップとすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明のバリア性キャップは、バリア層が着色されているため、外観からバリア層が容易に形成位置を確認することができるとともに、遮光性も付与することができる。
高いガスバリア性を有するとともに、有効成分の飛散を防止することができ、保存性も改良されるので、飲食品や調味料の他、化粧料等などのガスバリア性の容器用として好適である。
【符号の説明】
【0048】
A 容器本体
B キャップ本体
C 外蓋
D バリア層
1 口部
2 係止突条
4 装着部
5 外筒
6 内筒
7 上壁
8 ねじ壁部
9 段部
10 注出筒
11 基部
12 リップ部
13 音出し突部
14 底壁
15 薄肉弱化部
16 移行栓体
17 筒状壁
18 係合突起(第1歯部)
19 第1係合突部
22 拡径部
23 フランジ部
24 ねじ部(雄ねじ)
25 縦リブ
26 補強リブ
27 係止縮径部
28 ストッパー
28a 第1当接面
28b 第1傾斜面
29 切欠き段部
30 スリット
31 把持部
32 縦切断部
32a 引っ掛け凹部
37 周方向切断部
40 頂壁(天板部)
41 外周壁
45 係着部
46 切断筒部
47 ねじ筒部
48 音出し部材
50 第2係合突部
52 係合腕(第2歯部)
58 ねじ部(雌ねじ)