(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】広帯域通過型フィルタ
(51)【国際特許分類】
H01P 1/205 20060101AFI20240408BHJP
H03H 7/075 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
H01P1/205 C
H03H7/075 A
(21)【出願番号】P 2020083640
(22)【出願日】2020-05-12
【審査請求日】2023-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000227892
【氏名又は名称】日本アンテナ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102635
【氏名又は名称】浅見 保男
(74)【代理人】
【識別番号】100199820
【氏名又は名称】西脇 博志
(72)【発明者】
【氏名】新井 敏夫
(72)【発明者】
【氏名】星 宏幸
【審査官】白井 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-013706(JP,A)
【文献】特開2010-288179(JP,A)
【文献】特開平11-239072(JP,A)
【文献】特開2011-250160(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0290767(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 1/205
H03H 7/075
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力端子と出力端子との間に接続された複数の集中定数の共振回路と、
該複数の集中定数の共振回路
の前記入力端子側あるいは前記出力端子側に開放端が接続され短絡端がアースに接続されている
複数のショートスタブとを備え、
前記共振回路は、インダクタンスLsとキャパシタンスCsからなる直列共振回路と、該直列共振回路にキャパシタンスCpが並列に接続された並列共振回路とを組み合わせた直並列共振回路とされ、使用周波数帯域の中心周波数をFoとし、Foの波長をλとした時に、前記直列共振回路の共振周波数がFoに設定され、前記並列共振回路の共振周波数がFoの所定倍に設定され、前記ショートスタブの電気長が約λ/4に設定されて
おり、 前記共振回路の数と前記ショートスタブの数の合計が奇数とされて、前記共振回路と前記ショートスタブとが交互に接続されており、前記共振回路の数が前記ショートスタブの数より1つ多いT型接続とされていることを特徴とする広帯域通過型フィルタ。
【請求項2】
入力端子と出力端子との間に接続された複数の集中定数の共振回路と、
該複数の集中定数の共振回路
の前記入力端子側あるいは前記出力端子側に開放端が接続され短絡端がアースに接続されている
複数のショートスタブとを備え、
前記共振回路は、インダクタンスLsとキャパシタンスCsからなる直列共振回路と、該直列共振回路にキャパシタンスCpが並列に接続された並列共振回路とを組み合わせた直並列共振回路とされ、使用周波数帯域の中心周波数をFoとし、Foの波長をλとした時に、前記直列共振回路の共振周波数がFoに設定され、前記並列共振回路の共振周波数がFoの所定倍に設定され、前記ショートスタブの電気長が約λ/4に設定されて
おり、
前記共振回路の数と前記ショートスタブの数の合計が奇数とされて、前記共振回路と前記ショートスタブとが交互に接続されており、前記ショートスタブの数が前記共振回路の数より1つ多いπ型接続とされていることを特徴とする広帯域通過型フィルタ。
【請求項3】
前記直列共振回路の共振周波数をFLとし、前記並列共振回路の共振周波数をFHとした時に、FH/FLが約√5となるように前記キャパシタンスCpの値が設定されていることを特徴とする請求項1
または2に記載の広帯域通過型フィルタ。
【請求項4】
前記直列共振回路を構成するキャパシタンスCsに対し、前記並列共振回路の前記キャパシタンスCpの値が、前記キャパシタンスCsの静電容量の1/4を中心値とし、1/5より大きく1/3より小さい範囲の静電容量に設定されていることを特徴とする請求項1
または2に記載の広帯域通過型フィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、UHF帯に好適な広帯域通過型フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
地上波デジタルテレビ放送の周波数は470MHz~710MHzとされ、その周波数帯域は240MHzの広帯域とされ、中心周波数Foは590MHzとなる。中心周波数590MHzを基準とした地上波デジタルテレビ放送の比帯域は、約40%と広いことが知られている。すると、地上波デジタル放送の周波数帯域を通過周波数帯域とするバンドパスフィルタは広帯域通過型フィルタとなる。470MHz~710MHzはUHF帯であるから、対応するバンドパスフィルタとしては半同軸型が一般的である。
【0003】
特許文献1に示す従来のUHF帯に使用される半同軸型バンドパスフィルタの構成を
図18に示す。以下の説明においては、バンドパスフィルタをBPFと称することとする。第18図に示す半同軸型BPF100は、外導体となる直方体状の筐体111を備え、この筐体111の内部は仕切板112,113により3つの部屋に分割されており、各部屋に電気長が約λ/4の棒状の共振素子114,115,116がそれぞれ配設されている。仕切板112,113にはそれぞれ共振素子114,115,116間に適当な結合度を与えるために結合窓117,118がそれぞれ設けられている。また、入力接栓119には結合プローブ121が設けられており、結合プローブ121は共振素子114に結合しており、出力接栓120には結合プローブ122が設けられており、結合プローブ122は共振素子116に結合している。
第18図に示す半同軸型BPF100の周波数特性は、共振素子114,115,116の共振周波数の(2n+1)倍(n=1,2,3,…)毎に高次共振が存在し、通過域が発生する。従来の半同軸型BPF100を送信機出力端側に挿入すると、送信機の高調波出力成分のうち上記共振周波数の2n倍の高調波出力成分が除去され、(2n+1)倍の高調波出力成分が通過するようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の半同軸型BPF100においては、共振器間の電磁気的結合を大きくすることにより広帯域特性を実現することになるが、比帯域が約40%と広くなると、電磁気的結合が大きくなり過ぎて半同軸型BPFを設計することが不能となり、このような広帯域特性を実現するのは技術的に極めて困難となる。
また、広帯域通過型フィルタとして広く知られているリングフィルタを用いることが考えられる。しかしながら、UHF帯用のバンドパスフィルタとしてリングフィルタを採用するには、リングの一周が1波長必要であるため形状が大型化するなどの問題点があった。
【0006】
そこで、本発明は、広帯域化しても小型化することが可能な分布定数の共振素子と集中定数の共振回路とを組み合わせた広帯域通過型フィルタを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の広帯域通過型フィルタは、入力端子と出力端子との間に接続された複数の集中定数の共振回路と、該複数の集中定数の共振回路間に開放端が接続され短絡端がアースに接続されているショートスタブとを備え、前記共振回路は、インダクタンスLsとキャパシタンスCsからなる直列共振回路と、該直列共振回路にキャパシタンスCpが並列に接続された並列共振回路とを組み合わせた直並列共振回路とされ、使用周波数帯域の中心周波数をFoとし、Foの波長をλとした時に、前記直列共振回路の共振周波数がFoに設定され、前記並列共振回路の共振周波数がFoの所定倍に設定され、前記ショートスタブの電気長が約λ/4に設定されていることを最も主要な特徴としている。
【0008】
本発明の広帯域通過型フィルタにおいて、前記直列共振回路の共振周波数をFLとし、前記並列共振回路の共振周波数をFHとした時に、FH/FLが約√5となるように前記キャパシタンスCpの値が設定されている。
また、本発明の広帯域通過型フィルタにおいて、前記直列共振回路を構成するキャパシタンスCsに対し、前記並列共振回路の前記キャパシタンスCpの値が、前記キャパシタンスCsの静電容量の1/4を中心値とし、1/5より大きく1/3より小さい範囲の静電容量に設定されている。
さらに、本発明の広帯域通過型フィルタにおいて、前記共振回路の数と前記ショートスタブの数の合計が奇数とされて、前記共振回路と前記ショートスタブとが交互に接続されており、前記共振回路の数が前記ショートスタブの数より1つ多いT型接続とされていてもよい。
さらにまた、本発明の広帯域通過型フィルタにおいて、前記共振回路の数と前記ショートスタブの数の合計が奇数とされて、前記共振回路と前記ショートスタブとが交互に接続されており、前記ショートスタブの数が前記共振回路の数より1つ多いπ型接続とされていてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の広帯域通過型フィルタは、複数の集中定数の共振回路と、該複数の集中定数の共振回路間に開放端が接続され短絡端がアースに接続されているショートスタブとを組み合わせた広帯域通過型フィルタとしたことから、広帯域化しても小型化することを可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1実施例の広帯域通過型フィルタの回路構成を示す図である。
【
図2】本発明の第1実施例の広帯域通過型フィルタにおける挿入損失・減衰量およびリターンロスの周波数特性を示す図である。
【
図3】本発明の第2実施例の広帯域通過型フィルタの回路構成を示す図である。
【
図4】本発明の第2実施例の広帯域通過型フィルタにおける挿入損失・減衰量およびリターンロスの周波数特性を示す図である。
【
図5】本発明の第1実施例の広帯域通過型フィルタを説明する直列共振回路の構成を示す図である。
【
図6】
図5に示す直列共振回路の挿入損失・減衰量およびリターンロスの周波数特性を示す図である。
【
図7】本発明の第1実施例の広帯域通過型フィルタを説明するショートスタブの構成を示す図である。
【
図8】
図7に示すショートスタブの挿入損失・減衰量およびリターンロスの周波数特性を示す図である。
【
図9】通過周波数を中心に拡大した
図7に示すショートスタブの挿入損失・減衰量およびリターンロスの周波数特性を示す図である。
【
図10】通過周波数を中心に拡大した
図5に示す直列共振回路の挿入損失・減衰量およびリターンロスの周波数特性を示す図である。
【
図11】本発明の第1実施例の広帯域通過型フィルタを説明する直並列共振回路の構成を示す図である。
【
図12】
図11に示す直並列共振回路の挿入損失・減衰量およびリターンロスの周波数特性を示す図である。
【
図13】
図11に示す直並列共振回路の挿入損失・減衰量およびリターンロスの周波数特性を示す他の図である。
【
図14】本発明の第3実施例の広帯域通過型フィルタの回路構成を示す図である。
【
図15】本発明の第3実施例の広帯域通過型フィルタの挿入損失・減衰量およびリターンロスの周波数特性を示す図である。
【
図16】本発明の第4実施例の広帯域通過型フィルタの回路構成を示す図である。
【
図17】本発明の第4実施例の広帯域通過型フィルタの挿入損失・減衰量およびリターンロスの周波数特性を示す図である。
【
図18】従来の半同軸型BPFの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<本発明の第1実施例>
本発明にかかる第1実施例の広帯域通過型フィルタ1の回路構成を
図1に示す。
図1に示す本発明の第1実施例の広帯域通過型フィルタ1は、入力端子INと出力端子OUTとの間に直並列共振回路SP1と、直並列共振回路SP2と、直並列共振回路SP3と、直並列共振回路SP4とが縦続に接続され、SP1とSP2との接続点に開放端が接続されアースに短絡端が接続されたショートスタブSS1が設けられ、SP2とSP3との接続点に開放端が接続されアースに短絡端が接続されたショートスタブSS2が設けられ、SP3とSP4との接続点に開放端が接続されアースに短絡端が接続されたショートスタブSS3が設けられている。
図1に示す広帯域通過型フィルタ1の回路は、直並列共振回路SP1~SP4の数が、ショートスタブSS1~SS3の数より1つ多いことから、T型接続と称することとする。
入力端子INと出力端子OUTとのインピーダンスをZoとして、使用周波数帯域の中心周波数をFoとする。直並列共振回路SP1は、インダクタンスLs1とキャパシタンスCs1との直列共振回路と、この直列共振回路にキャパシタンスCp1を並列に接続した並列共振回路とを組み合わせて構成されている。また、直並列共振回路SP2は、インダクタンスLs2とキャパシタンスCs2との直列共振回路と、この直列共振回路にキャパシタンスCp2を並列に接続した並列共振回路とを組み合わせて構成されている。さらに、直並列共振回路SP3は直並列共振回路SP2と同じ構成とされ、直並列共振回路SP4は直並列共振回路SP1と同じ構成とされている。さらにまた、ショートスタブSS1のインピーダンスはW1とされ、ショートスタブSS2のインピーダンスはW2とされ、ショートスタブSS3のインピーダンスはSS1と同じW1とされている。
【0012】
直並列共振回路SP1~SP4における直列共振回路の共振周波数はFoに設定されており、直並列共振回路SP1~SP4の通過周波数はFoとされている。入力端子INと出力端子OUTのインピーダンスZoは75Ωとされて、テレビ受信機器に適用するに好適とされている。ショートスタブSS1ないしショートスタブSS3の電気長H1は、Foの1波長をλoとしたとき、λo/4の電気長とされている。Foは、例えば地上波デジタルテレビ放送の周波数帯域の中心周波数である590MHzとされている。
図1に示す広帯域通過型フィルタ1の回路は、4つの直並列共振回路SP1~SP4と、3つのショートスタブSS1~SS3の合計7素子から構成されることから、通過帯域内にリターンロスの極が7個存在する所謂チェビシェフ特性の7次のバンドパスフィルタとなる。
図1に示す広帯域通過型フィルタ1において、通過周波数Foが590MHzとなり、入力端子INと出力端子OUTのインピーダンスZoが75Ωとされる回路定数について説明する。ショートスタブSS1,SS3の特性インピーダンスW1は約18.657Ω、ショートスタブSS2の特性インピーダンスW2は約15.92Ωとされる。直並列共振回路SP1,SP4における直列共振用のインダクタンスLs1は約36.788nHとされ、キャパシタンスCs1は約1.978pFとされて、Ls1とCs1はFoで直列共振することから、Foにおける合成リアクタンスは0Ωとなる。また、この直列共振回路に並列に接続される並列共振用のキャパシタンスCp1は約0.495pFとされている。並列共振用のキャパシタンスの静電容量をどのように設定するかについては後述する。また、直並列共振回路SP2,SP3における直列共振用のインダクタンスLs2は約80.405nHとされ、キャパシタンスCs2は約0.905pFとされて、Ls2とCs2はFoで直列共振することから、Foにおける合成リアクタンスは0Ωとなる。この直列共振回路に並列に接続される並列共振用のキャパシタンスCp2は約0.226pFとされる。
【0013】
図1に示す広帯域通過型フィルタ1の挿入損失・減衰量およびリターンロスの周波数特性を
図2に示す。
図2において、横軸は90MHz~1090MHzの周波数とされ、縦軸は挿入損失・減衰量[dB]とリターンロス[dB]とされている。広帯域通過型フィルタ1の設計上の通過周波数帯域幅BWは、地上波デジタルテレビ放送の周波数帯域幅とされる240MHzに、1チャンネル分の占有周波数帯域幅6MHzを低域端と高域端との各々に設計上の冗長分として設定した252MHzとしている。
図2を参照すると、リターンロスが約26dB得られる周波数帯域を基準とした時の通過周波数帯域幅は約250MHzが得られており、設計上の通過周波数帯域幅BWをほぼ満足していることが分かる。なお、ショートスタブSS1~SS3は同軸線路で図示されているが、マイクロストリップ線路や誘電体を用いた同軸構造と同様のTEMモードの分布定数線路としても良い。また、地上波デジタルテレビ放送の周波数帯に対しての妨害波となる恐れのある携帯電話システムの周波数として、運用低限周波数である770MHzが考えられるが、
図2を参照すると、770MHzにおける減衰量は約25dBが得られており、上記周波数による妨害を極力受けないようになる。
【0014】
ところで、
図1に示す第1実施例の広帯域通過型フィルタ1の回路では、ショートスタブSS1~SS3の電気長は特性インピーダンスに関係なく、λo/4の電気長に固定されている。従来の半同軸型バンドパスフィルタにおける同軸共振部の電気長は、共振器間の電磁気的な結合の影響を受けて1/4波長より短縮することになり、その短縮率は設定される伝送特性の差異によって変化する。一般に、通過帯域が広帯域化されると、この電磁気的な結合度が増大し、同軸長の短縮率が増加して短くなることから特性劣化を招き、最終的に実現不能に至る。このことが、通常の半同軸型バンドパスフィルタの広帯域通過を困難にしている主因である。これに対して、本発明にかかる広帯域通過型フィルタ1においては、共振素子として使用するショートスタブSS1~SS3の電気長をλo/4の電気長に固定しても、上記したように設計上の通過周波数帯域幅BWを実現することができる。
【0015】
第1実施例の広帯域通過型フィルタ1において設計上の通過周波数帯域幅BWを実現できるのは、次の理由によっている。まず、λo/4のショートスタブSS1~SS3はFoにおいて、その開放端からみたアースに対するインピーダンスが∞になるから、Foが通過周波数となる。また、直並列共振回路SP1~SP4における直列共振回路も前述したように、Foでの合成リアクタンスが0Ωになるように定数設定されているから、Foが通過周波数となる。そして、直並列共振回路SP1~SP4において、直列共振回路と並列にキャパシタンスを接続して並列共振回路を形成し、全体で直並列共振回路としていることで、第1実施例の広帯域通過型フィルタ1では設計上の通過周波数帯域幅BWを実現できるのである。
【0016】
ここで、直並列共振回路SP1~SP4における並列共振用のキャパシタンスの静電容量をどのように設定するかについて次に説明する。
インダクタンスLとキャパシタンスCからなる直列共振回路を
図5に示す。
図5に示す直列共振回路において、入力端子T1と出力端子T2の入出力インピーダンスZoを75Ωとし、インダクタンスLを約36.383nHとしキャパシタンスCを約2pFとした時の周波数特性を
図6に示す。
図6において、横軸は0~2.5GHzの周波数軸とされ、縦軸は挿入損失・減衰量[dB]とリターンロス[dB]とされている。
図6を参照すると、直列共振回路は通過周波数590MHzで共振して挿入損失0dBの通過周波数は約590MHzとなっているが、590MHzより低域側の減衰量の増加が急峻であるのに比べ、高域側の減衰量の変化は極端に緩やかとなっていることが分かる。
【0017】
次に、1波長をλとしたとき、590MHzでλ/4の電気長HのショートスタブSSが入出力端子間でアースに対して並列接続された回路を
図7に示している。
図7に示す回路において、入力端子T3と出力端子T4の入出力インピーダンスZoを75Ωとし、ショートスタブSSの特性インピーダンスWを約33Ωとした時の周波数特性を
図8に示す。
図8において、横軸は0~2.5GHzの周波数軸とされ、縦軸は挿入損失・減衰量[dB]とリターンロス[dB]とされている。
図8を参照すると、
図7に示す回路は590MHzが通過周波数となる周波数特性となることが分かる。ショートスタブSSは分布定数線路であるから、590MHzの2倍の1180MHzで減衰極を持ち、3倍の1770MHzで再び通過特性となるような繰り返しの伝送特性となっていることが分かる。
【0018】
図8に示す周波数特性において、通過周波数を中心に拡大した周波数特性を
図9に示す。
図9において、横軸は440MHz~740MHzの周波数軸とされ、縦軸は挿入損失・減衰量[dB]とリターンロス[dB]とされている。
図9を参照すると、通過周波数590MHzの低域と高域の伝送特性が対称となっていることが分かる。
一方、
図6に示す周波数特性において、通過周波数を中心に拡大した周波数特性を
図10に示す。
図10において、横軸は440MHz~740MHzの周波数軸とされ、縦軸は挿入損失・減衰量[dB]とリターンロス[dB]とされている。
図10を参照すると、通過周波数590MHzの低域と高域の伝送特性が非対称となっていることが分かる。そうすると、
図5に示す集中定数の直列共振回路と
図7に示す分布定数のショートスタブSSとを組み合わせた回路の周波数特性は、それぞれの通過周波数の低域と高域での伝送量の変化分に差異があることから、通過周波数の低域と高域の伝送特性を対称にすることが困難になる。
【0019】
図10に示した周波数特性を参照すると、通過周波数の低域より高域において挿入損失・減衰量が劣化している。そこで、
図5に示す直列共振回路に、通過周波数の高域で共振する並列共振回路を並列に接続すると、通過周波数の高域において周波数特性を改善できることになる。そこで、直列共振回路に並列共振回路を並列に接続した直並列共振回路の構成を
図11に示す。
図11に示す直並列共振回路において、入力端子T5と出力端子T6の入出力インピーダンスZoを75Ωとし、直列共振回路のインダクタンスLsを約36.383nHとしキャパシタンスCsを約2pFとする。そして、この直列共振回路に並列に接続されるキャパシタンスCpを約0.5pFとした時の周波数特性を
図12に示す。直列共振回路は、通過周波数590MHzで共振している。
図12において、横軸は440MHz~740MHzの周波数軸とされ、縦軸は挿入損失・減衰量[dB]とリターンロス[dB]とされている。
図12を参照すると、通過周波数590MHzの低域と高域で概ね対称に補正されていることが分かる。そして、直列共振回路のキャパシタンスCsに対し並列接続されるキャパシタンスCpを約Cs/4の静電容量とすればよいことが分かった。
【0020】
直列共振回路のキャパシタンスCsに対し並列接続されるキャパシタンスCpを約Cs/4の静電容量とすればよいことについて以下に説明する。
図11に示す直並列共振回路において、インダクタンスLsとキャパシタンスCsとの直列共振回路の直列共振周波数をFLとし、直列共振回路にキャパシタンスCpを並列に接続した並列共振回路の並列共振周波数をFHとする。ここで、直列共振周波数FL=150MHz、入出力インピーダンスZo=50Ω、Ls=93.815nH、Cs=12.0pFとする。そして、並列共振周波数FHが直列共振周波数FLの√4倍(=2倍),√5倍,√6倍の3通りの並列キャパシタンスCpの静電容量を計算すると、次の様になる。
(FH/FL)=√4の場合:Cp=Cs/3=4.0pF
(FH/FL)=√5の場合:Cp=Cs/4=3.0pF
(FH/FL)=√6の場合:Cp=Cs/5=2.4pF
【0021】
FH/FLを√4に設定した場合の伝送特性とリターンロスの周波数特性を
図13(a)に示し、FH/FLを√5に設定した場合の伝送特性とリターンロスの周波数特性を
図13(b)に示し、FH/FLを√6に設定した場合の伝送特性とリターンロスの周波数特性を
図13(c)に示す。
図13(a)(b)(c)において、横軸は100MHz~200MHzの周波数軸とされ、縦軸は伝送特性(MAG)[dB]とリターンロス(RL)[dB]とされている。
図13(a)を参照すると、通過周波数150MHzの低域である100MHzの伝送特性は約0.71dBとなり、高域である200MHzの伝送特性は約0.85dBとなっており周波数特性は非対称となっている。また、
図13(b)を参照すると、通過周波数150MHzの低域である100MHzの伝送特性は約0.75dBとなり、高域である200MHzの伝送特性も約0.75dBとなっており周波数特性は対称となっている。さらに、
図13(c)を参照すると、通過周波数150MHzの低域である100MHzの伝送特性は約0.79dBとなり、高域である200MHzの伝送特性は約0.69dBとなっており周波数特性は非対称となっている。このように、FL/FHを約√5に設定すると通過周波数の低域から高域の伝送特性における周波数対称性が最も優れている。このとき、Cp=Cs/4となることから、直列共振回路のキャパシタンスCsに対し並列接続されるキャパシタンスCpを約Cs/4の静電容量とすればよいことになる。なお、直列共振周波数を維持しながらインダクタンスLsとキャパシタンスCpの値を変化させた場合でも、FL/FHを約√5に設定すると通過周波数の低域から高域の伝送特性における周波数対称性が優れていることが確認できた。
【0022】
上記したように、本発明の第1実施例の広帯域通過型フィルタ1は、通過周波数帯域の中心周波数Foで1/4波長の分布定数からなるショートスタブSSをシャント接続素子とし、Foで通過周波数となるインダクタンスLsとキャパシタンスCsとが直列に接続された直列共振回路と、この直列共振回路に並列にキャパシタンスCsの約1/4の静電容量を持つキャパシタンスCpを接続した直並列共振回路をブリッジ接続素子として組み合わせた回路となる。そして、上記したように本発明の第1実施例の広帯域通過型フィルタ1は、比帯域が約40%と広帯域とされた通過周波数帯域幅を実現することができる。
【0023】
<本発明の第2実施例>
本発明にかかる第2実施例の広帯域通過型フィルタ2の回路構成を
図3に示す。
図3に示す本発明の第2実施例の広帯域通過型フィルタ2は、入力端子INaと出力端子OUTaとの間に直並列共振回路SPa1と、直並列共振回路SPa2と、直並列共振回路SPa3とが縦続に接続され、INaとSPa1との接続点に開放端が接続されアースに短絡端が接続されたショートスタブSSa1が設けられ、SPa1とSPa2との接続点に開放端が接続されアースに短絡端が接続されたショートスタブSSa2が設けられ、SPa2とSPa3との接続点に開放端が接続されアースに短絡端が接続されたショートスタブSSa3が設けられ、SPa3とOUTaとの接続点に開放端が接続されアースに短絡端が接続されたショートスタブSSa4が設けられている。
図3に示す広帯域通過型フィルタ2の回路は、ショートスタブSSa1~SSa4の数が、直並列共振回路SPa1~SPa3の数より1つ多いことから、π型接続と称することとする。
入力端子INaと出力端子OUTaとのインピーダンスをZoとして、使用周波数帯域の中心周波数をFoとする。直並列共振回路SPa1は、インダクタンスLsa1とキャパシタンスCsa1との直列共振回路と、この直列共振回路にキャパシタンスCpa1を並列に接続した並列共振回路とを組み合わせて構成されている。また、直並列共振回路SPa2は、インダクタンスLsa2とキャパシタンスCsa2との直列共振回路と、この直列共振回路にキャパシタンスCpa2を並列に接続した並列共振回路とを組み合わせて構成されている。さらに、直並列共振回路SPa3は直並列共振回路SPa1と同じ構成とされている。さらにまた、ショートスタブSSa1のインピーダンスはWa1とされ、ショートスタブSSa2のインピーダンスはWa2とされ、ショートスタブSSa3のインピーダンスはSSa2と同じWa2とされ、ショートスタブSSa4のインピーダンスはSSa1と同じWa1とされている。
【0024】
直並列共振回路SPa1~SPa3における直列共振回路の共振周波数はFoに設定されており、直並列共振回路SPa1~SPa3の通過周波数はFoとされている。入力端子INaと出力端子OUTaのインピーダンスZoは75Ωとされて、テレビ受信機器に適用するに好適とされている。ショートスタブSSa1ないしショートスタブSSa4の電気長H2は、Foの1波長をλoとしたとき、λo/4の電気長とされている。Foは、例えば地上波デジタルテレビ放送の周波数帯域の中心周波数である590MHzとされている。
図3に示す第2実施例の広帯域通過型フィルタ2の回路は、3つの直並列共振回路SPa1~SPa3と、4つのショートスタブSSa1~SSa4の合計7素子から構成されることから、通過帯域内にリターンロスの極が7個存在する所謂チェビシェフ特性の7次のバンドパスフィルタとなる。
図3に示す第2実施例の広帯域通過型フィルタ2において、通過周波数Foが590MHzとなり、入力端子INaと出力端子OUTaのインピーダンスZoが75Ωとされる回路定数について説明する。ショートスタブSSa1,SSa4の特性インピーダンスWa1は約32.32Ω、ショートスタブSSa2,SSa3の特性インピーダンスWa2は約14.85Ωとされる。また、直並列共振回路SPa1,SPa3における直列共振用のインダクタンスLsa1は約63.83nHとされ、キャパシタンスCsa1は約1.14pFとされて、Lsa1とCsa1はFoで直列共振することから、Foにおける合成リアクタンスは0Ωとなる。また、この直列共振回路に並列に接続される並列共振用のキャパシタンスCpa1は約0.285pFとされている。また、直並列共振回路SPa2における直列共振用のインダクタンスLsa2は約74.633nHとされ、キャパシタンスCsa2は約0.975pFとされて、Lsa2とCsa2はFoで直列共振することから、Foにおける合成リアクタンスは0Ωとなる。また、この直列共振回路に並列に接続される並列共振用のキャパシタンスCpa2は約0.244pFとされている。
なお、直列共振回路に並列に接続される並列共振用のキャパシタンスCpa1,Cpa2の静電容量は、第1実施例の広帯域通過型フィルタ1と同様とされており、直列共振回路のキャパシタンスCsa1,Csa2に対し並列接続されるキャパシタンスCpa1,Cpa2の静電容量は、それぞれ1/4とされている。
【0025】
図3に示す第2実施例の広帯域通過型フィルタ2の挿入損失・減衰量およびリターンロスの周波数特性を
図4に示す。
図4において、横軸は90MHz~1090MHzの周波数軸とされ、縦軸は挿入損失・減衰量[dB]とリターンロス[dB]とされている。第2実施例の広帯域通過型フィルタ2の設計上の通過周波数帯域幅BWは、地上波デジタルテレビ放送の周波数帯域幅とされる240MHzに、1チャンネル分の占有周波数帯域幅6MHzを低域端と高域端との各々に設計上の冗長分として設定した252MHzとしている。
図4を参照すると、
図2に示す周波数特性とほぼ同様の周波数特性となり、リターンロスが約26dB得られる周波数帯域を基準とした時の通過周波数帯域幅は約250MHzが得られている。すなわち、設計上の通過周波数帯域幅BWをほぼ満足していることが分かる。また、地上波デジタルテレビ放送の周波数帯に対しての妨害波となる恐れのある携帯電話システムの周波数として、運用低限周波数である770MHzが考えられるが、
図4を参照すると、770MHzにおける減衰量は約25dBが得られており、上記周波数による妨害を極力受けないようになる。
そして、上記したように本発明の第2実施例の広帯域通過型フィルタ2は、比帯域が約40%と広帯域とされた通過周波数帯域幅を実現することができる。
【0026】
上記したように、本発明にかかる広帯域通過型フィルタでは、次数と設定条件が同じであれば、T型接続とπ型接続のいずれの場合でも同等の伝送特性が得られることが分かる。ただし、第2実施例の広帯域通過型フィルタ2では、直流ではショートスタブSSa1,SSa4によって入力端子INaと出力端子OUTaとのインピーダンスが0Ω(ショート)になるが、第1実施例の広帯域通過型フィルタ1では直並列共振回路SP1,SP4のキャパシタンスによって直流はブロックされるので、入力端子INと出力端子OUTとのインピーダンスは∞(オープン)になるから、インピーダンス特性は同一にはならない。しかし、挿入損失・減衰量およびリターンロスの周波数特性に関しては同等の電気的特性となる。また、π型接続の広帯域通過型フィルタ2は直流ショート回路になるので避雷効果を期待する場合には有効であり、T型接続の広帯域通過型フィルタ1は直流オープン回路になるので信号に直流が重畳されている場合に用いても短絡事故を回避できる。このように、用途によって接続方式を選択するのが好適とされる。
なお、ショートスタブSSa1~SSa4は同軸線路で図示されているが、マイクロストリップ線路や誘電体を用いた同軸構造と同様のTEMモードの分布定数線路としても良い。
【0027】
<本発明の第3実施例>
本発明にかかる第3実施例の広帯域通過型フィルタ3の回路構成を
図14に示す。
図14に示す本発明の第3実施例の広帯域通過型フィルタ3は、入力端子INbと出力端子OUTbとの間に直並列共振回路SPb1と、直並列共振回路SPb2と、直並列共振回路SPb3とが縦続に接続され、SPb1とSPb2との接続点に開放端が接続されアースに短絡端が接続されたショートスタブSSb1が設けられ、SPb2とSPb3との接続点に開放端が接続されアースに短絡端が接続されたショートスタブSSb2が設けられている。
図14に示す第3実施例の広帯域通過型フィルタ3の回路は、直並列共振回路SPb1~SPb3の数が、ショートスタブSSb1,SSb2の数より1つ多いT型接続とされている。
入力端子INbと出力端子OUTbとのインピーダンスをZoとして、使用周波数帯域の中心周波数をFoとする。直並列共振回路SPb1は、インダクタンスLsb1とキャパシタンスCsb1との直列共振回路と、この直列共振回路にキャパシタンスCpb1を並列に接続した並列共振回路とを組み合わせて構成されている。また、直並列共振回路SPb2は、インダクタンスLsb2とキャパシタンスCsb2との直列共振回路と、この直列共振回路にキャパシタンスCpb2を並列に接続した並列共振回路とを組み合わせて構成されている。さらに、直並列共振回路SPb3は直並列共振回路SPb1と同じ構成とされている。さらにまた、ショートスタブSSb1のインピーダンスはWbとされ、ショートスタブSSb2のインピーダンスはSSb1と同じWbとされている。
【0028】
直並列共振回路SPb1~SPb3における直列共振回路の共振周波数はFoに設定されており、直並列共振回路SPb1~SPb3の通過周波数はFoとされている。入力端子INbと出力端子OUTbのインピーダンスZoは50Ωとされている。Foは、例えば150MHzとされている。ショートスタブSSb1およびショートスタブSSb2の電気長Hbは、Foの1波長をλbとしたとき、λb/4の電気長とされている。
図14に示す第3実施例の広帯域通過型フィルタ3の回路は、3つの直並列共振回路SPb1~SPb3と、2つのショートスタブSSb1,SSb2の合計5素子から構成されることから、通過帯域内にリターンロスの極が5個存在する所謂チェビシェフ特性の5次のバンドパスフィルタとなる。
図14に示す第3実施例の広帯域通過型フィルタ3において、通過周波数Foが150MHzとなり、入力端子INと出力端子OUTのインピーダンスZoが50Ωとされる回路定数について説明する。ショートスタブSSb1,SSb2の特性インピーダンスWbは約13Ωとされる。また、直並列共振回路SPb1,SPb3における直列共振用のインダクタンスLsb1は約112.579nHとされ、キャパシタンスCsb1は約10pFとされて、Lsb1とCsb1はFoで直列共振することから、Foにおける合成リアクタンスは0Ωとなる。また、この直列共振回路に並列に接続される並列共振用のキャパシタンスCpb1は約2.5pFとされている。また、直並列共振回路SPb2における直列共振用のインダクタンスLsb2は約210.035nHとされ、キャパシタンスCsb2は約5.36pFとされて、Lsb2とCsb2はFoで直列共振することから、Foにおける合成リアクタンスは0Ωとなる。また、この直列共振回路に並列に接続される並列共振用のキャパシタンスCpb2は約1.34pFとされている。
なお、直列共振回路に並列に接続される並列共振用のキャパシタンスCpb1,Cpb2の静電容量は、第1実施例の広帯域通過型フィルタ1と同様とされており、直列共振回路のキャパシタンスCsb1,Csb2に対し並列接続されるキャパシタンスCpb1,Cpb2の静電容量は、それぞれ1/4とされている。
【0029】
図14に示す第3実施例の広帯域通過型フィルタ3の挿入損失・減衰量およびリターンロスの周波数特性を
図15に示す。
図15において、横軸は50MHz~250MHzの周波数軸とされ、縦軸は挿入損失・減衰量[dB]とリターンロス[dB]とされている。第3実施例の広帯域通過型フィルタ3の設計上の通過周波数帯域幅BWbは、65.5MHzとしている。
図15を参照すると、リターンロスが約20dB得られる周波数帯域を基準とした時の通過周波数帯域幅は約66MHzが得られている。すなわち、設計上の通過周波数帯域幅BWbを満足していることが分かる。
そして、上記したように本発明の第3実施例の広帯域通過型フィルタ3は、比帯域が約40%と広帯域とされた通過周波数帯域幅を実現することができる。
第3実施例の広帯域通過型フィルタ3は、第1実施例の広帯域通過型フィルタ1と比較し、次数,Zo,Fo,基準のリターンロスおよび通過周波数帯域幅の各パラメータが全て異なっているが、比帯域が約40%と広帯域とされた、通過帯域内にリターンロスの極が5個存在する5次のバンドパスフィルタ特性が実現されている。このように、本発明にかかる広帯域通過型フィルタは、設計条件(Zo,Fo,基準のリターンロスおよび通過周波数帯域幅)を変えても比帯域が約40%と広帯域とされた広帯域通過型フィルタを実現することができる。
【0030】
<本発明の第4実施例>
本発明にかかる第4実施例の広帯域通過型フィルタ4の回路構成を
図16に示す。
図16に示す本発明の第4実施例の広帯域通過型フィルタ4は、入力端子INcと出力端子OUTcとの間に直並列共振回路SPc1と、直並列共振回路SPc2と、直並列共振回路SPc3と、直並列共振回路SPc4と、直並列共振回路SPc5とが縦続に接続され、SPc1とSPc2との接続点に開放端が接続されアースに短絡端が接続されたショートスタブSSc1が設けられ、SPc2とSPc3との接続点に開放端が接続されアースに短絡端が接続されたショートスタブSSc2が設けられ、SPc3とSPc4との接続点に開放端が接続されアースに短絡端が接続されたショートスタブSSc3が設けられ、SPc4とSPc5との接続点に開放端が接続されアースに短絡端が接続されたショートスタブSSc4が設けられている。
図16に示す第4実施例の広帯域通過型フィルタ4の回路は、直並列共振回路SPc1~SPc5の数が、ショートスタブSSc1~SSc4の数より1つ多いT型接続とされている。
入力端子INcと出力端子OUTcとのインピーダンスをZoとして、使用周波数帯域の中心周波数をFoとする。直並列共振回路SPc1は、インダクタンスLsc1とキャパシタンスCsc1との直列共振回路と、この直列共振回路にキャパシタンスCpc1を並列に接続した並列共振回路とを組み合わせて構成されている。また、直並列共振回路SPc2は、インダクタンスLsc2とキャパシタンスCsc2との直列共振回路と、この直列共振回路にキャパシタンスCpc2を並列に接続した並列共振回路とを組み合わせて構成されている。さらに、直並列共振回路SPc3は、インダクタンスLsc3とキャパシタンスCsc3との直列共振回路と、この直列共振回路にキャパシタンスCpc3を並列に接続した並列共振回路とを組み合わせて構成されている。さらにまた、直並列共振回路SPc4は、直並列共振回路SPc2と同じ構成とされ、直並列共振回路SPc5は、直並列共振回路SPc1と同じ構成とされている。さらにまた、ショートスタブSSc1,SSc4のインピーダンスはWc1とされ、ショートスタブSSc2,SSc3のインピーダンスはWc2とされている。
【0031】
直並列共振回路SPc1~SPc5における直列共振回路の共振周波数はFoに設定されており、直並列共振回路SPc1~SPc5の通過周波数はFoとされている。入力端子INcと出力端子OUTcのインピーダンスZoは75Ωとされて、テレビ受信機器に適用するに好適とされている。Foは、例えば590MHzとされている。ショートスタブSSc1ないしショートスタブSSc4の電気長Hcは、Foの1波長をλcとしたとき、λc/4の電気長とされている。
図16に示す第4実施例の広帯域通過型フィルタ4の回路は、5つの直並列共振回路SPc1~SPc5と、4つのショートスタブSSc1~SSc4の合計9素子から構成されることから、通過帯域内にリターンロスの極が9個存在する所謂チェビシェフ特性の9次のバンドパスフィルタとなる。
図16に示す第4実施例の広帯域通過型フィルタ4において、通過周波数Foが590MHzとなり、入力端子INcと出力端子OUTcのインピーダンスZoが75Ωとされる回路定数について説明する。ショートスタブSSc1,SSc4の特性インピーダンスWc1は約18.15Ωとされ、ショートスタブSSc2,SSc3の特性インピーダンスWc2は約15.15Ωとされている。また、直並列共振回路SPc1,SPc5における直列共振用のインダクタンスLsc1は約37.47nHとされ、キャパシタンスCsc1は約1.942pFとされて、Lsc1とCsc1はFoで直列共振することから、Foにおける合成リアクタンスは0Ωとなる。また、この直列共振回路に並列に接続される並列共振用のキャパシタンスCpc1は約0.486pFとされている。また、直並列共振回路SPc2,SPc4における直列共振用のインダクタンスLsc2は約82.784nHとされ、キャパシタンスCsc2は約0.879pFとされて、Lsc2とCsc2はFoで直列共振することから、Foにおける合成リアクタンスは0Ωとなる。また、この直列共振回路に並列に接続される並列共振用のキャパシタンスCpc2は約0.22pFとされている。さらに、直並列共振回路SPc3における直列共振用のインダクタンスLsc3は約87.46nHとされ、キャパシタンスCsc3は約0.832pFとされて、Lsc3とCsc3はFoで直列共振することから、Foにおける合成リアクタンスは0Ωとなる。また、この直列共振回路に並列に接続される並列共振用のキャパシタンスCpc3は約0.208pFとされている。
なお、直列共振回路に並列に接続される並列共振用のキャパシタンスCpc1,Cpc2,Cpc3の静電容量は、第1実施例の広帯域通過型フィルタ1と同様とされており、直列共振回路のキャパシタンスCsc1,Csc2,Csc3に対し並列接続されるキャパシタンスCpc1,Cpc2,Cpc3の静電容量は、それぞれ1/4とされている。
【0032】
図16に示す第4実施例の広帯域通過型フィルタ4の挿入損失・減衰量およびリターンロスの周波数特性を
図17に示す。
図17において、横軸は90MHz~1090MHzの周波数軸とされ、縦軸は挿入損失・減衰量[dB]とリターンロス[dB]とされている。第4実施例の広帯域通過型フィルタ4の設計上の通過周波数帯域幅BWcは、地上波デジタルテレビ放送の周波数帯域幅とされる240MHzに、1チャンネル分の占有周波数帯域幅6MHzを低域端と高域端との各々に設計上の冗長分として設定した252MHzとしている。
図17を参照すると、リターンロスが約26dB得られる周波数帯域を基準とした時の通過周波数帯域幅は約250MHzが得られている。すなわち、設計上の通過周波数帯域幅BWcをほぼ満足していることが分かる。また、地上波デジタルテレビ放送の周波数帯に対しての妨害波となる恐れのある携帯電話システムの周波数として、運用低限周波数である770MHzが考えられるが、
図17を参照すると、770MHzにおける減衰量は約42dBが得られており、第1実施例の広帯域通過型フィルタ1や第2実施例の広帯域通過型フィルタ2の7次のバンドパスフィルタに比べて、17dB増加していることが分かる。すなわち、上記周波数による妨害をより受けないようになる。
そして、上記したように本発明の第4実施例の広帯域通過型フィルタ4は、比帯域が約40%と広帯域とされた通過周波数帯域幅を実現することができる。
第4実施例の広帯域通過型フィルタ4は、第1実施例の広帯域通過型フィルタ1と比較し、次数,Zo,Fo,基準のリターンロスおよび通過周波数帯域幅の各パラメータが全て異なっているが、比帯域が約40%と広帯域とされた、通過帯域内にリターンロスの極が9個存在する9次のバンドパスフィルタ特性が実現されている。このように、本発明にかかる広帯域通過型フィルタは、構成素子数を増加すると、より減衰特性が急峻で通過帯域幅の比帯域が約40%と広帯域とされた広帯域通過型フィルタを実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
以上説明した本発明にかかる実施例の広帯域通過型フィルタにおいて、電気定数とされるパラメータ値は、上記記載したパラメータ値に限定されるものではなく、各広帯域通過型フィルタにおいて上記記載した機能および作用と同等の機能および作用を奏することができるパラメータ値とされていれば、上記記載したパラメータ値に限定されるものではない。すなわち、このパラメータ値には、上記記載したパラメータ値の上下に許容範囲があり、この許容範囲は各広帯域通過型フィルタにおいて上記記載した機能および作用と同等の機能および作用を奏する範囲とされている。
以上説明した本発明にかかる実施例の広帯域通過型フィルタは、シャント接続素子が通過帯域の中心周波数Foの1/4波長とされた分布定数である1個のショートスタブからなり、ブリッジ接続素子が集中定数のインダクタンス1個とキャパシタンス1個からなる、通過帯域の中心周波数Foを共振周波数とする直列共振回路に、キャパシタンス1個が並列接続された直並列共振回路で構成され、それらのシャント接続素子とブリッジ接続素子が交互に合計3素子(3次)以上の奇数素子接続されて構成されており、従来の半同軸型バンドパスフィルタでは実現困難な比帯域が約40%と広帯域とされた通過周波数帯域幅を実現することができる。
【0034】
また、本発明にかかる実施例の広帯域通過型フィルタは、ショートスタブのシャント接続素子と直並列共振回路のブリッジ接続素子から構成されているが、シャント接続素子がブリッジ接続素子よりも1素子多いπ型接続であっても、ブリッジ接続素子の方がシャント続素子よりも1素子多いT型接続のいずれの場合でも比帯域が約40%と広帯域とされた通過周波数帯域幅を実現することができる。
さらに、本発明にかかる実施例の広帯域通過型フィルタは、ブリッジ接続素子として機能させる、集中定数のインダクタンスLsとキャパシタンスCsからなる直列共振回路と、それに並列に接続されるキャパシタンスCpを組み合わせて構成される直並列共振回路において、CpはCsの約1/4の静電容量とすることができる。この場合、CpはCsの1/4を中心値とし、1/5より大きく1/3より小さい範囲の静電容量としても、広帯域とされた通過周波数帯域幅を実現することができる。
さらにまた、本発明にかかる実施例の広帯域通過型フィルタは、ブリッジ接続素子はシャント接続素子間を結合しているが、従来の半同軸型バンドパスフィルタの様な周辺素子の影響を受ける電磁界結合とは異なり、通過帯域の中心周波数Foをブリッジ接続素子の通過周波数として、単独の電気特性を保持しながら結合している。また、シャント接続素子であるショートスタブの電気長も、所望する電気特性に関係なく、常に通過帯域の中心周波数Foの1/4波長に固定されている。従って、ブリッジ接続素子およびシャント接続素子を個別の電気特性に適合するように作成してから広帯域通過型フィルタを構成することが可能なので、従来の半同軸型バンドパスフィルタに比べて、製作時の設計定数再現を、機械的かつ容易に行うことができる。
さらにまた、本発明にかかる実施例の広帯域通過型フィルタは、電磁界解析等の高度な手法を用いずとも、汎用の高周波回路シミュレーションで電気定数を確定できるので設計を容易にすることができる。
さらにまた、本発明にかかる実施例の広帯域通過型フィルタは、集中定数回路と1/4波長線路のショートスタブから構成されているため、リングの一周が1波長必要なリングフィルタに比べて小型化することができる。
【符号の説明】
【0035】
1~4 広帯域通過型フィルタ、SP1~SP4 直並列共振回路、SPa1~SPa3 直並列共振回路、SPb1~SPb3 直並列共振回路、SPc1~SPc5 直並列共振回路、SS1~SS3 ショートスタブ、SSa1~SSa4 ショートスタブ、SSb1,SSb2 ショートスタブ、SSc1~SSc4 ショートスタブ、100 半同軸型BPF、111 筐体、112,113 仕切板、114,115,116 共振素子、117,118 結合窓、119 入力接栓、120 出力接栓、121 結合プローブ、122 結合プローブ