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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】画像処理装置および画像処理方法
(51)【国際特許分類】
   B60R 1/20 20220101AFI20240408BHJP
   B60R 11/02 20060101ALI20240408BHJP
   H04N 7/18 20060101ALI20240408BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20240408BHJP
   B60R 1/26 20220101ALI20240408BHJP
【FI】
B60R1/20 100
B60R11/02 C
H04N7/18 J
G06T1/00 330
B60R1/26 100
B60R1/26 200
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020126400
(22)【出願日】2020-07-27
(65)【公開番号】P2022023452
(43)【公開日】2022-02-08
【審査請求日】2023-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 克志
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【弁理士】
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 彰洋
【審査官】久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-097896(JP,A)
【文献】特開2009-234435(JP,A)
【文献】特開2016-094140(JP,A)
【文献】特開2015-074436(JP,A)
【文献】特開2020-088415(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0148062(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102014200963(DE,A1)
【文献】中国特許出願公開第111186376(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 1/20
B60R 1/26
B60R 11/02
H04N 7/18
G06T 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の側面部に設けられ、撮影範囲に前記車両のサイドドアのウインドウを含む車体の側面の一部が含まれた状態で前記車両の後方に向かって撮影を行うサイドカメラの撮影結果に基づくサイド撮影画像、および、前記車両の後部に設けられ、前記サイドカメラの撮影範のうち前記車体により死角となる範囲を少なくとも撮影可能なリアカメラの撮影結果に基づくリア撮影画像を取得する画像取得部と、
前記画像取得部により取得された前記サイド撮影画像および前記リア撮影画像に基づいて、前記サイド撮影画像に基づく動画像の領域のうち前記サイドカメラの死角に対応する死角領域を、前記リア撮影画像に基づく動画像で補った合成動画像を表示装置に表示させる画像処理部と
開状態の前記ウインドウから物体が突出したこと、または、物体が開状態の前記ウインドウの近傍に位置したことを検出する突出検出部とを備え、
前記画像処理部は、
前記合成動画像の表示に際し、物体が前記ウインドウから突出したこと、または、物体が前記ウインドウの近傍に位置したことが前記突出検出部により検出された場合、少なくとも前記死角領域におけるその物体の領域について、前記サイド撮影画像に基づく動画像を視認可能な状態とする
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記画像処理部は、物体が前記ウインドウから突出したこと、または、物体が前記ウインドウの近傍に位置したことが前記突出検出部により検出された場合、前記死角領域におけるその物体の領域のみを前記サイド撮影画像に基づく動画像が視認可能な状態とすることを特徴とする請求項に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記画像処理部は、前記ウインドウから突出し、または、前記ウインドウの近傍に位置する物体の領域にマーキングすることを特徴とする請求項またはに記載の画像処理装置。
【請求項4】
車両の側面部に設けられ、撮影範囲に前記車両のサイドドアのウインドウを含む車体の側面の一部が含まれた状態で前記車両の後方に向かって撮影を行うサイドカメラの撮影結果に基づくサイド撮影画像、および、前記車両の後部に設けられ、前記サイドカメラの撮影範囲のうち前記車体により死角となる範囲を少なくとも撮影可能なリアカメラの撮影結果に基づくリア撮影画像を取得する画像取得部と、
前記画像取得部により取得された前記サイド撮影画像および前記リア撮影画像に基づいて、前記サイド撮影画像に基づく動画像の領域のうち前記サイドカメラの死角に対応する死角領域を、前記リア撮影画像に基づく動画像で補った合成動画像を表示装置に表示させる画像処理部と、
前記ウインドウが開状態であることを検出する特定状態検出部とを備え、
前記画像処理部は、前記特定状態検出部により前記ウインドウが開状態であることが検出された場合、少なくとも前記死角領域における前記ウインドウの領域について、前記サイド撮影画像に基づく動画像を視認可能な状態とする
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項5】
前記サイドカメラの撮影画像には更に、前記車両の車体の側面に形成された給油口が含まれ、
前記特定状態検出部は更に、前記給油口が開状態であることを検出し、
前記画像処理部は、前記特定状態検出部により前記給油口が開状態であることが検出された場合、少なくとも前記死角領域における前記給油口の領域について、前記サイド撮影画像に基づく動画像を視認可能な状態とすることを特徴とする請求項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
車両の側面部に設けられ、撮影範囲に前記車両の車体の側面に形成された給油口を含む前記車体の側面の一部が含まれた状態で前記車両の後方に向かって撮影を行うサイドカメラの撮影結果に基づくサイド撮影画像、および、前記車両の後部に設けられ、前記サイドカメラの撮影範囲のうち前記車体により死角となる範囲を少なくとも撮影可能なリアカメラの撮影結果に基づくリア撮影画像を取得する画像取得部と、
前記画像取得部により取得された前記サイド撮影画像および前記リア撮影画像に基づいて、前記サイド撮影画像に基づく動画像の領域のうち前記サイドカメラの死角に対応する死角領域を、前記リア撮影画像に基づく動画像で補った合成動画像を表示装置に表示させる画像処理部と、
前記給油口が開状態であることを検出する特定状態検出部とを備え、
前記画像処理部は、前記特定状態検出部により前記給油口が開状態であることが検出された場合、少なくとも前記死角領域における前記給油口の領域について、前記サイド撮影画像に基づく動画像を視認可能な状態とする
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項7】
車両の側面部に設けられ、撮影範囲に前記車両の車体の側面に形成された給油口を含む前記車体の側面の一部が含まれた状態で前記車両の後方に向かって撮影を行うサイドカメラの撮影結果に基づくサイド撮影画像、および、前記車両の後部に設けられ、前記サイドカメラの撮影範囲のうち前記車体により死角となる範囲を少なくとも撮影可能なリアカメラの撮影結果に基づくリア撮影画像を取得する画像取得部と、
前記画像取得部により取得された前記サイド撮影画像および前記リア撮影画像に基づいて、前記サイド撮影画像に基づく動画像の領域のうち前記サイドカメラの死角に対応する死角領域を、前記リア撮影画像に基づく動画像で補った合成動画像を表示装置に表示させる画像処理部とを備え、
前記画像処理部は、前記死角領域における前記給油口の領域について継続して、前記サイド撮影画像に基づく動画像を視認可能な状態とする
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項8】
前記サイドカメラの撮影範囲には更に、前記車両のサイドドアのウインドウが含まれ、
前記画像処理部は更に、前記死角領域における前記ウインドウの領域または前記ウインドウの上部の領域について継続して、前記サイド撮影画像に基づく動画像を視認可能な状態とすることを特徴とする請求項に記載の画像処理装置。
【請求項9】
画像処理装置の画像取得部が、車両の側面部に設けられ、撮影範囲にサイドドアのウインドウを含む車体の側面の一部が含まれた状態で前記車両の後方に向かって撮影を行うサイドカメラの撮影結果に基づくサイド撮影画像、および、前記車両の後部に設けられ、前記サイドカメラの撮影範のうち前記車体により死角となる範囲を少なくとも撮影可能なリアカメラの撮影結果に基づくリア撮影画像を取得する第1ステップと、
前記画像処理装置の画像処理部が、前記画像取得部により取得された前記サイド撮影画像および前記リア撮影画像に基づいて、前記サイド撮影画像に基づく動画像の領域のうち前記サイドカメラの死角に対応する死角領域を、前記リア撮影画像に基づく動画像で補った合成動画像を表示装置に表示させる第2ステップとを含み、
前記画像処理部は、前記第2ステップにおける前記合成動画像の表示に際し、開状態の前記ウインドウから物体が突出したこと、または、物体が開状態の前記ウインドウの近傍に位置したことを検出する突出検出部により物体が前記ウインドウから突出したこと、または、物体が前記ウインドウの近傍に位置したことが検出された場合、少なくとも前記死角領域におけるその物体の領域について、前記サイド撮影画像に基づく動画像を視認可能な状態とする
ことを特徴とする画像処理方法。
【請求項10】
画像処理装置の画像取得部が、車両の側面部に設けられ、撮影範囲にサイドドアのウインドウを含む車体の側面の一部が含まれた状態で前記車両の後方に向かって撮影を行うサイドカメラの撮影結果に基づくサイド撮影画像、および、前記車両の後部に設けられ、前記サイドカメラの撮影範囲のうち前記車体により死角となる範囲を少なくとも撮影可能なリアカメラの撮影結果に基づくリア撮影画像を取得する第1ステップと、
前記画像処理装置の画像処理部が、前記画像取得部により取得された前記サイド撮影画像および前記リア撮影画像に基づいて、前記サイド撮影画像に基づく動画像の領域のうち前記サイドカメラの死角に対応する死角領域を、前記リア撮影画像に基づく動画像で補った合成動画像を表示装置に表示させる第2ステップとを含み、
前記第2ステップにおいて前記画像処理部は、前記ウインドウが開状態であることを検出する特定状態検出部により前記ウインドウが開状態であることが検出された場合、少なくとも前記死角領域における前記ウインドウの領域について、前記サイド撮影画像に基づく動画像を視認可能な状態とする
ことを特徴とする画像処理方法。
【請求項11】
画像処理装置の画像取得部が、車両の側面部に設けられ、撮影範囲に前記車両の車体の側面に形成された給油口を含む前記車体の側面の一部が含まれた状態で前記車両の後方に向かって撮影を行うサイドカメラの撮影結果に基づくサイド撮影画像、および、前記車両の後部に設けられ、前記サイドカメラの撮影範囲のうち前記車体により死角となる範囲を少なくとも撮影可能なリアカメラの撮影結果に基づくリア撮影画像を取得する第1ステップと、
前記画像処理装置の画像処理部が、前記画像取得部により取得された前記サイド撮影画像および前記リア撮影画像に基づいて、前記サイド撮影画像に基づく動画像の領域のうち前記サイドカメラの死角に対応する死角領域を、前記リア撮影画像に基づく動画像で補った合成動画像を表示装置に表示させる第2ステップとを含み、
前記第2ステップにおいて前記画像処理部は、前記給油口が開状態であることを検出する特定状態検出部により前記給油口が開状態であることが検出された場合、少なくとも前記死角領域における前記給油口の領域について、前記サイド撮影画像に基づく動画像を視認可能な状態とする
ことを特徴とする画像処理方法。
【請求項12】
画像処理装置の画像取得部が、車両の側面部に設けられ、撮影範囲に前記車両の車体の側面に形成された給油口を含む前記車体の側面の一部が含まれた状態で前記車両の後方に向かって撮影を行うサイドカメラの撮影結果に基づくサイド撮影画像、および、前記車両の後部に設けられ、前記サイドカメラの撮影範囲のうち前記車体により死角となる範囲を少なくとも撮影可能なリアカメラの撮影結果に基づくリア撮影画像を取得する第1ステップと、
前記画像処理装置の画像処理部が、前記画像取得部により取得された前記サイド撮影画像および前記リア撮影画像に基づいて、前記サイド撮影画像に基づく動画像の領域のうち前記サイドカメラの死角に対応する死角領域を、前記リア撮影画像に基づく動画像で補った合成動画像を表示装置に表示させる第2ステップとを含み、
前記第2ステップにおいて前記画像処理部は、前記死角領域における前記給油口の領域について継続して、前記サイド撮影画像に基づく動画像を視認可能な状態とする
ことを特徴とする画像処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置および画像処理方法に関し、特に、サイドカメラとリアカメラとの撮影画像を合成して表示する画像処理装置、および、当該画像処理装置による画像処理方法に用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に設けられたサイドカメラの撮影画像に基づく動画を表示する画像処理装置において、当該動画において車体により死角となる領域(以下「死角領域」という)にリアカメラの撮影画像に基づく動画を重畳し、あたかも車体が透けて車両の後方が撮影されているかのような動画を提供する画像処理装置が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-74436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の画像処理装置では、リアカメラの撮影画像に基づく動画像が死角領域に表示されるため、死角領域ついて、サイドカメラの撮影結果が全く提供されないことになる。このため、死角領域において、ユーザが認識すべき何らかの事物がサイドカメラに撮影されている場合であっても、ユーザは、画像処理装置により提供される動画像からはその事物を認識できないという問題があった。
【0005】
本発明は、このような問題を解決するために成されたものであり、死角領域においてサイドカメラにより撮影された所定の事物について、提供される動画像からユーザが認識できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決するために、本発明は、サイドカメラの撮影画像に基づく動画像の領域のうちサイドカメラの死角に対応する死角領域を、リアカメラの撮影画像に基づく動画像で補った合成動画像の表示に際し、合成動画像の死角領域の一部を部分的にサイドカメラの撮影画像に基づく動画像が視認可能な状態とするか、または、所定の条件が成立したときに死角領域の一部ないし全部を一時的にサイドカメラの撮影画像に基づく動画像を視認可能な状態とできるようにしている。
【発明の効果】
【0007】
上記のように構成した本発明によれば、死角領域の全域にリアカメラの撮影画像に基づく動画像が表示された状態が例外なく継続するのではなく、死角領域について部分的或いは一時的にサイドカメラの撮影画像に基づく動画像が視認可能な状態とすることができるため、死角領域においてサイドカメラにより撮影された所定の事物を動画像に含ませることができ、提供される動画像に基づいて当該所定の事物をユーザが認識できるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1実施形態に係る画像処理装置の機能構成例を示すブロック図である。
図2】リアカメラおよび右サイドカメラの設置位置および撮影範囲を示す図である。
図3】リア撮影画像の一例を示す図である。
図4】右サイド撮影画像の一例を示す図である。
図5】通常モードに係る右側合成画像の一例を示す図である。
図6】特殊モードに係る右側合成画像の一例を示す図である。
図7】本発明の第1実施形態に係る画像処理部の動作例を示すフローチャートである。
図8】右モニタに表示される映像の一例を示す図である。
図9】本発明の第2実施形態に係る画像処理装置の機能構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態に係る画像処理装置1の機能構成例を示すブロック図である。画像処理装置1は、ユーザが車両の右サイドミラーMRまたは左サイドミラーML(図2)を視認したときに確認できる風景と同等の風景を、これらミラーを視認したときには車体により遮蔽されて確認できない部分も含めて表示することが可能な装置である。以下、画像処理装置1が搭載された車両を「自車両」という。
【0010】
図1で示すように、画像処理装置1には、右モニタ2R、左モニタ2L、リアカメラ3、右サイドカメラ4Rおよび左サイドカメラ4Lが接続されている。右モニタ2Rは、自車両のダッシュボードの右端部(車内において右サイドミラーMRに近い位置)に設けられた表示パネル(例えば、液晶表示パネルや、有機EL表示パネル等)である。左モニタ2Lは、自車両のダッシュボードの左端部に設けられた表示パネルである。右モニタ2Rおよび左モニタ2Lは、特許請求の範囲の「表示装置」に相当する。以下、右モニタ2Rと左モニタ2Lとを区別しない場合は「モニタ2」と表現する。モニタ2は運転手以外の者も当然、視認可能であるが、説明の便宜のため、本実施形態ではモニタ2を見るのは運転手であるものとする。リアカメラ3は、自車両の後部に設けられた撮影装置である。右サイドカメラ4Rは、自車両の前部座席の右サイドドアの右サイドミラーMRに設けられた撮影装置である。左サイドカメラ4Lは、自車両の前部座席の左サイドドアの左サイドミラーMLに設けられた撮影装置である。
【0011】
図2は、リアカメラ3および右サイドカメラ4Rの設置位置および撮影範囲を説明するための図である。以下の説明では、右サイドカメラ4Rと左サイドカメラ4Lとを区別しない場合は「サイドカメラ4」と表現する。また以下の説明において、自車両の車体との関係で前後左右と表現するときは、図2の矢印で示す前後左右に従っているものとする。
【0012】
図2で示すように、リアカメラ3は、自車両の後端部において、自車両の幅方向の中央に設けられており、自車両の後方に向かう向きを光軸の向きとして撮影を実行する。図2において、符号HBは、リアカメラ3の撮影範囲を模式的に示している。以下、リアカメラ3の撮影範囲を「リアカメラ撮影範囲HB」という。リアカメラ3は、魚眼レンズを有する魚眼カメラにより構成されている。リアカメラ3は、所定周期で撮影を実行して撮影画像を生成し、出力する。以下、リアカメラ3が生成し、出力する撮影画像を「リア撮影画像」という。図3は、リア撮影画像の一例を示している。
【0013】
図2で示すように、右サイドカメラ4Rは、車両の後方に対して、後方に向かうに従って右側に向かうように少しだけ傾いた向きを光軸の向きとして撮影を実行する。図2において、符号HRは、右サイドカメラ4Rの撮影範囲を模式的に示している。右サイドカメラ4Rは、標準レンズにより撮影を実行する撮影装置であり、その撮影範囲の水平画角は、リアカメラ撮影範囲HBの水平画角よりも小さい。以下、右サイドカメラ4Rの撮影範囲を「右サイドカメラ撮影範囲HR」という。
【0014】
図2で示すように、右サイドカメラ4Rの右サイドカメラ撮影範囲HRには、自車両の車体に遮蔽された死角範囲DH(特許請求の範囲の「車体により死角となる範囲」に相当)が形成される。死角範囲DHについては、車体が遮蔽物となり、風景が撮影されない。リアカメラ3のリアカメラ撮影範囲HBには、死角範囲DHが含まれている。つまり、リアカメラ3は、死角範囲DHの風景を撮影可能である。右サイドカメラ4Rは、所定周期で撮影を実行して撮影画像を生成し、出力する。以下、右サイドカメラ4Rが生成し、出力する撮影画像を「右サイド撮影画像」という。
【0015】
図4は、図3のリア撮影画像が生成されたときの環境と同じ環境で右サイドカメラ4Rが生成する右サイド撮影画像の一例を示している。図4で示すように、右サイドカメラ撮影画像の左側には、自車両の車体の画像が記録された死角領域DRが形成されている。死角領域DRは、右サイドカメラ4Rの右サイドカメラ撮影範囲HRの死角範囲DH(図2)に対応する領域である。右サイドカメラ4Rは、車両の特定の位置に固定的に設けられるため、右サイドカメラ撮影画像の全領域における死角領域DRの態様(位置、形状)は一定である。なお図4で示すように、本実施形態の自車両の車体の右側の側面の所定の位置には、給油口5が設けられている。給油口5は第2実施形態の説明に利用する。
【0016】
左サイドカメラ4Lは、右サイドカメラ4Rと同一の性能の撮影装置であり、前部座席の左サイドドアに取り付けられた左サイドミラーMLに、右サイドカメラ4Rと同様の態様で設置されている。左サイドカメラ4Lは、所定周期で撮影を実行して撮影画像を生成し、出力する。以下、左サイドカメラ4Lが生成し、出力する撮影画像を「左サイド撮影画像」といい、右サイド撮影画像および左サイド撮影画像を総称して「サイド撮影画像」という。
【0017】
以上の通りサイドカメラ4は、車両の側面部に設けられ、撮影範囲に自車両の車体の側面の一部が含まれた状態で車両の後方に向かって撮影を行い、撮影結果に基づくサイド撮影画像を出力する。またリアカメラ3は、車両の後部に設けられ、サイドカメラ4の撮影範囲のうち車体により死角となる範囲を少なくとも撮影可能であり、撮影結果に基づくリア撮影画像を出力する。
【0018】
なお、図2で示すように本実施形態に係る自車両は、前部および後部の左右にそれぞれサイドドアが設けられており、各サイドドアにはウインドウ6が形成されている。
【0019】
図1で示すように、画像処理装置1は機能構成として、画像取得部10、突出検出部11および画像処理部12を備えている。上記各機能ブロック10~12は、ハードウェア、DSP(Digital Signal Processor)、ソフトウェアの何れによっても構成することが可能である。例えばソフトウェアによって構成する場合、上記各機能ブロック10~12は、実際にはコンピュータのCPU、RAM、ROM等を備えて構成され、RAMやROM、ハードディスクまたは半導体メモリ等の記録媒体に記憶されたプログラムが動作することによって実現される。
【0020】
画像取得部10は、リアカメラ3からリア撮影画像を所定周期で入力し、取得する。また画像取得部10は、右サイドカメラ4Rから右サイド撮影画像を所定周期で入力し、取得する。また画像取得部10は、左サイドカメラ4Lから左サイド撮影画像を所定周期で入力し、取得する。画像取得部10は、右サイド撮影画像および左サイド撮影画像を所定周期で突出検出部11に出力すると共に、リア撮影画像、右サイド撮影画像および左サイド撮影画像を所定周期で画像処理部12に出力する。
【0021】
突出検出部11は、画像取得部10から所定周期で右サイド撮影画像および左サイド撮影画像を入力し、入力した右サイド撮影画像および左サイド撮影画像に基づいて、サイドドアのウインドウ6から物体が突出した状態(以下「突出状態」という)であることを検出する。なお、「物体がウインドウ6から突出する」とは、何らかの物体がウインドウ6を介して車内から車外へ飛び出していることを意味する。以下、右側の後部のサイドドアに形成されたウインドウ6(以下「右後部ウインドウ6」という)を対象として突出検出部11が実行する処理について説明する。
【0022】
突出検出部11は、右後部ウインドウ6が開状態か否かを継続して監視する。右後部ウインドウ6が開状態とは、右後部ウインドウ6のウインドウガラスが開いている状態をいう。突出検出部11は、自車両の各種機構の状態を監視する車両システムと通信することによって右後部ウインドウ6が開状態か否かを監視する。ただし監視の方法はどのような方法であってもよく、一例として、右後部ウインドウ6の状態によって異なる検出値を出力する光学的或いは機械的センサからの入力に基づいて監視する構成としてもよい。
【0023】
右後部ウインドウ6が開状態ではない場合、右後部ウインドウ6から物体が突出することはないため、突出検出部11は、突出状態ではないと判定する。一方、右後部ウインドウ6が開状態の場合、突出検出部11は、所定周期で入力する右サイド撮影画像を分析し、右後部ウインドウ6から物体が突出したか否かを判定する。なお右後部ウインドウ6から突出する物体としては、自車両の後部座席に搭乗する搭乗者の体の一部(顔や手等)や、搭乗者が把持する物体等が考えられる。
【0024】
右後部ウインドウ6から物体が突出したか否かの判定に際し、突出検出部11は、以下の処理を実行する。すなわち右サイド撮影画像に写る空間について、予め3次元座標系が定義され、当該空間に存在する物体が、この3次元座標系の3次元的な領域として定義可能な状態とされている。更に3次元座標系における右後部ウインドウ6の3次元的な領域が事前に設定されている。そして突出検出部11は、所定周期で入力する右サイド撮影画像を継続して分析し、右後部ウインドウ6の3次元的な領域を介して車内から車外へ飛び出した物体が存在するか否かを監視する。当該監視は、既存の物体認識技術および位置認識技術により、3次元座標系における物体の3次元的な領域が特定された上で、当該物体の3次元的な領域と、右後部ウインドウ6の3次元的な領域とのが比較されることによって行われる。
【0025】
突出検出部11は、右後部ウインドウ6から物体が突出している場合、突出状態であることを検出し、突出していない場合、突出状態でないことを検出する。通常、突出状態が検出される期間は、複数の周期を跨ぐまとまった時間となる。以上、右後部ウインドウ6を対象として突出検出部11が実行する処理について説明したが、突出検出部11は、他のウインドウ6についても同様の処理を実行し、各ウインドウ6について突出状態となった場合、そのことを検出する。
【0026】
画像処理部12は、所定周期で画像取得部10からリア撮影画像、右サイド撮影画像および左サイド撮影画像を入力し、これら画像に基づく動画像をモニタ2に表示させる。動画像の表示に際し、画像処理部12は、突出検出部11により突出状態が検出されている間は通常モードで動画像を表示させ、突出状態が検出されていない間は特殊モードで動画像を表示させる。以下、通常モードおよび特殊モードのそれぞれにおける画像処理部12の処理について説明する。以下の説明では、画像処理部12がモニタ2に動画像を表示させることを「画像処理部12が動画像を表示する」のように表現する場合がある。
【0027】
<通常モード>
まず通常モードにおける画像処理部12の処理について説明する。上述の通り、画像処理部12は、突出検出部11により突出状態が検出されていない間(=物体がウインドウ6から突出していない間)、通常モードで動画像を表示する。通常モードにおいて、画像処理部12は、画像取得部10により取得されたサイド撮影画像およびリア撮影画像に基づいて、サイド撮影画像に基づく動画像(以下「サイド動画像」という)の領域のうち、サイドカメラ4の死角に対応する死角領域DR(図4)を、リア撮影画像に基づく動画像(以下「リア動画像」という)の一部で補った合成動画像をモニタ2に表示させる。以下、右サイドカメラ4Rの右サイド撮影画像およびリアカメラ3のリア撮影画像に基づいて、合成動画像を右モニタ2Rに表示させる場合を例にして通常モードにおける画像処理部12の処理について説明する。
【0028】
画像処理部12は、所定周期でリア撮影画像および右サイド撮影画像を入力する度に、入力したこれらの撮影画像に基づいて、右側合成画像を生成するための合成画像生成処理を実行する。図5は、図3のリア撮影画像と図4の右サイド撮影画像とに基づいて合成画像生成処理により生成される右側合成画像の一例を示している。図5では、説明の便宜のため、死角領域DRとそうではない領域との境目に破線を引いている。図3~5を参照し、合成画像生成処理により生成される右側合成画像は、サイド撮影画像(本例では右サイド撮影画像)の死角領域DRが、リア撮影画像に基づく画像(後述する補完画像)により補われた画像であり、合成画像生成処理は、各周期において、このような右側合成画像を生成する処理である。
【0029】
合成画像生成処理において、まず、画像処理部12は、図示しない記憶部に記憶された右側ルックアップテーブルを用いて、入力したリア撮影画像を補完画像に変換する。右側ルックアップテーブルとは、リア撮影画像を、「右側仮想カメラが、車体を透過した状態で死角範囲DHを仮想的に撮影することによって生成される撮影画像」に変換するために用いられるマッピングテーブルである。右側仮想カメラとは、右サイドカメラ4と同じ撮影方向、撮影範囲の仮想的な撮影装置のことであり、所定の撮影画像を、右サイドカメラ4の視点に視点変換する際に概念的に用いられる。
【0030】
右側ルックアップテーブルは、右側仮想カメラの仮想的な撮影画像の死角領域DRを構成する全てのドットのドット位置と、リア撮影画像の対応する各ドットのドット位置とが一対一で対応付けられた対応関係情報を有する。なお右サイド撮影画像の全領域における死角領域DRの態様(位置、形状)は一定であり、右側仮想カメラの仮想的な撮影画像の死角領域DRを構成する全てのドットのドット位置は事前に特定されている。
【0031】
右側ルックアップテーブルの対応関係情報は、リアカメラ3の視点を右側仮想カメラの視点に変換するという観点の下、車両座標系におけるリアカメラ3および右側仮想カメラの配置位置および配置角度、リアカメラ3の仕様(投影方法や、画角、ディストーション(レンズの歪み)、解像度等)、右側仮想カメラの仕様、視点変換に用いる投影面の態様、その他の要素を反映して事前に適切に設定されている。画像処理部12は、右側ルックアップテーブルを用いて、右側仮想カメラの仮想的な撮影画像の死角領域DRを構成するドットの画素値が、リア撮影画像の対応するドットの画素値によって置き換えられた補完画像を生成する。
【0032】
補完画像の生成後、画像処理部12は、マスク情報を生成する。マスク情報とは、補完画像を構成するドットのそれぞれについて、右サイド撮影画像の死角領域DRに補完画像を重畳するときの透過率を定義した情報である。本実施形態では、透過率は、「0」から「1」までの範囲で値をとる。右サイド撮影画像の一のドットの画素値をRとし、当該一のドットに重畳(ブレンド)される補完画像のドットの画像値をHとし、重畳後のドットの画素値をXとし、透過率をαとすると、「X=(1-α)*H+α*R」が成り立つ。式に示す通り、透過率が「1」の場合、重畳後のドットの画素値は、右サイド撮影画像の対応するドットの画素値となり、逆に、透過率が「0」の場合、重畳後のドットの画素値は、補完画像の対応するドットの画素値となる。
【0033】
通常モードでは、画像処理部12は、補完画像を構成する全てのドットについての透過率が「0」であるマスク情報を生成する。マスク情報を生成した後、画像処理部12は、マスク情報に基づいて、右サイド撮影画像の死角領域DRを構成する各ドットに、補完画像の各ドットを対応する透過率で重畳し、右側合成画像を生成する。通常モードでは、全てのドットについて透過率は「0」のため、右側合成画像は、右サイド撮影画像の死角領域DRが補完画像により置き換わった画像となる(図5参照)。
【0034】
以上の処理が、右サイド撮影画像およびリア撮影画像の入力に応じて所定周期で実行される合成画像生成処理である。画像処理部12は、所定周期で右側合成画像をVRAM等の画像バッファに展開し、右モニタ2Rに表示させる。この結果、右モニタ2Rには、右サイド撮影画像に基づく動画像(サイド動画像)の死角領域DRがリア撮影画像に基づく動画像(リア動画像)によって補われた状態で、リアカメラ3および右サイドカメラ4Rの撮影結果がリアルタイムに反映された動画像(合成動画像)が表示される。
【0035】
以上、通常モードにおいて右モニタ2Rに合成動画像を表示するときの画像処理部12の動作について説明したが、画像処理部12は、左モニタ2Lについても、左サイド撮影画像およびリア撮影画像に基づいて同様の処理を行って合成動画像を表示する。
【0036】
<特殊モード>
次に特殊モードにおける画像処理部12の処理について説明する。上述の通り、画像処理部12は、突出検出部11により突出状態が検出されている間(=物体がウインドウ6から突出している間)、特殊モードで動画像を表示する。
【0037】
特殊モードにおいて画像処理部12は、通常モードと異なる方法で合成画像生成処理を実行する。すなわち合成画像生成処理において、画像処理部12は、通常モードと同様の方法で補完画像を生成する一方、マスク情報については、全てのドットについての透過率を「1」とする。この結果、モニタ2に表示される合成動画像は、その死角領域DRがリア動画像によって補われることなく、サイド動画像が表示された状態となる。図6は、特殊モードで右モニタ2Rに表示された合成動画像の映像の一例を示している。図6で例示する合成動画像では、右後部ウインドウ6から手が突出した状態である。
【0038】
以上の通り、本実施形態に係る画像処理装置1は、合成動画像の表示に際し、所定の条件が成立したときに死角領域DRの全部を一時的にサイド撮影画像に基づく動画像を視認可能な状態とする機能を有している。このような機能を有していることにより、死角領域DRの全域にリア動画像が表示された状態が例外なく継続するのではなく、死角領域DRについて一時的にサイド動画像が視認可能な状態とすることができるため、死角領域DRにおいてサイドカメラ4により撮影された所定の事物を動画像に含ませることができ、提供される動画像に基づいて当該所定の事物をユーザが認識できるようにすることができる。
【0039】
特に本実施形態では、画像処理装置1は、突出検出部11によりウインドウ6から物体が突出したことが検出された場合に、突出したことが検出されている間、死角領域DRにサイド動画像を表示する。ここで運転手は、ウインドウ6から物体が突出している場合には、そのことを認識したいと考えることが想定される。ウインドウ6から物体が突出しているという状態に対して何らかの対策をとることが可能となるからである。例えば後部座席に座る子供が誤って手を出しているようなときには注意することが可能となる。
【0040】
一方で、仮にモニタ2に表示される動画像の死角領域DRについて、常にリア動画像が表示されるならば、運転手は、モニタ2に表示された動画像からは、基本的にはウインドウ6から物体が突出していることを認識できないことになる。ただしウインドウ6から突出した物体の画像が死角領域DRを超えて延在している場合は、死角領域DRを超えた部分については、物体の画像が表示されることになる。しかし、このような状況の場合、表示されるのは、ウインドウ6から突出した部分のうち先端の一部だけであり、また、既に相当量、物体がウインドウ6を超えて飛び出している状態であり、ウインドウ6から物体が突出していることを迅速かつ的確に認識できるわけではない。
【0041】
これを踏まえ本実施形態の構成によれば、ウインドウ6から物体が突出している場合には、モニタ2に表示される動画像において、死角領域DRにサイド動画像が表示された状態、つまり、サイドカメラ4により撮影された死角範囲DHが表示された状態となるため、運転手は、モニタ2に表示された動画像を通して、ウインドウ6から物体が突出していることを迅速かつ的確に認識することが可能である。特に本実施形態の構成によれば、特殊モードでモニタ2に動画像が表示されるのは、ウインドウ6から物体が突出している期間(=突出検出部11により突出状態が検出されている期間)に限定されるため、不必要に長期間に亘って特殊モードで動画像が表示されてしまいユーザの利便性が損なわれる、ということがない。
【0042】
次に、本実施形態に係る画像処理装置1の動作例についてフローチャートを用いて説明する。図7は、画像処理装置1の動作を示すフローチャートである。図7で示すように、画像処理装置1の画像取得部10は、サイド撮影画像、および、リア撮影画像を取得する(ステップSA1)。次いで画像処理部12は、画像取得部10により取得されたサイド撮影画像およびリア撮影画像に基づいて、サイド動画像の領域のうち死角領域DRを、リア動画像で補った合成動画像をモニタ2に表示させる(ステップSA2)。上述したように画像処理部12は、ステップSA2における合成動画像の表示に際し、突出検出部11により突出状態が検出されたとき(所定の条件が成立しとき)に死角領域DRの全部を一時的にサイド動画像が視認可能な状態とする機能を有している。
【0043】
<第1実施形態の第1変形例>
次に第1実施形態の変形例について説明する。第1実施形態では、突出検出部11は、ウインドウ6から物体が突出した状態であることを検出した。一方、本変形例に係る突出検出部11は、物体が開状態のウインドウ6の近傍に位置したことを検出し、画像処理部12は、開状態のウインドウ6の近傍に物体が位置したことが突出検出部11により検出されたときに、特殊モードで動画像をモニタ2に表示する。なお、開状態のウインドウ6の近傍に物体が位置したことは、第1実施形態において物体が突出したことを検出する方法と同様の方法により検出可能である。
【0044】
ここで運転手は、ウインドウ6から物体が突出していなくても、物体が開状態のウインドウ6に近づき、突出する可能性のある状態となった場合には、そのことを認識したいと考えることが想定される。事前に必要な対策、措置をとることができるからである。物体が開状態のウインドウ6に近づき、突出する可能性のある状態とは、一例として、後部座席に座る子供が、開状態のウインドウ6に顔を近づけた状態である。そして上記変形例の構成によれば、運転手は、モニタ2に表示された動画像を通して、物体が開状態のウインドウ6に近づいたこと、および、その物体を認識することができる。
【0045】
<第1実施形態の第2変形例>
次に第1実施形態の第2変形例について説明する。第1実施形態では、特殊モードにおいて、画像処理部12は、マスク情報における補完画像の各ドットの透過率を「0」とした。この点に関し、本変形例に係る画像処理部12は、特殊モードにおいて、マスク情報における補完画像の各ドットの透過率を、死角領域DRに補完画像を重畳したときに、サイド撮影画像および補完画像の双方が視認できるような透過率(例えば、「0.5」)とする。本変形例の構成であっても、突出状態のときに死角領域DRについて、サイド動画像が視認可能な状態となり、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。更に本変形例によれば、運転手は、特殊モードで動画像が表示されているときに、死角領域DRについて、リア動画像の内容も確認することができる。
【0046】
<第1実施形態の第3変形例>
次に第1実施形態の第3変形例について説明する。本変形例において、画像処理部12は、突出検出部11により突出状態が検出されており、特殊モードで合成動画像を表示するときに、合成動画像のうちウインドウ6から突出している物体の画像にマーキングする。マーキングは、例えば、物体を囲む矩形の枠の画像を表示したり、物体の外縁に沿った線の画像を表示したり、注意を促すようなマークを表示したりすることによって行われる。本変形例の構成によれば、運転手は、モニタ2に表示される動画像を見ることによって、ウインドウ6から物体が突出していることを確実かつ即座に認識できる。
【0047】
<第1実施形態の第4変形例>
次に第1実施形態の第4変形例について説明する。第1実施形態では、特殊モードにおいて、画像処理部12は、死角領域DRの全域にサイド撮影画像に基づく動画像を表示した。この点に関し、本変形例に係る画像処理部12は、以下の処理を実行する。以下、右モニタ2Rに合成動画像を表示する場合を例にして本変形例に係る画像処理部12の処理について説明する。
【0048】
突出検出部11により突出状態が検出されており、特殊モードで動画像を表示する場合、合成画像を生成する合成画像生成処理において、本変形例に係る画像処理部12は、以下の処理を実行する。すなわち画像処理部12は、右サイド撮影画像の領域のうち、ウインドウ6から突出する物体(以下「突出物体」という)の画像の領域を特定する。本実施形態では、画像処理部12は、突出物体のうち、ウインドウ6を超えて車外に突出した部分の領域を特定する。ただし突出物体についてどのような領域を特定するのかはこれに限定されず、例えば、突出物体のうち車外に突出した部分と、この部分に連続し、車内に延在する部分を特定するようにしてもよい。以下、画像処理部12が特定した領域を「突出物体領域」という。
【0049】
次いで画像処理部12は、補完画像を生成すると共に、生成した補完画像のうち、突出物体領域に対応する領域を特定する。次いで画像処理部12は、マスク情報について、補完画像の突出物体領域に対応する領域に属する各画素の透過率を「1」とし、当該領域を除く領域の透過率を「0」とする。次いで画像処理部12は、マスク情報に従って補完画像と右サイド撮影画像とを合成することによって右側合成画像を生成する。ここで合成された右側合成画像は、その死角領域DRにおいて、突出物体領域(サイド撮影画像において突出物体の画像が延在する領域)についてはサイド撮影画像が表示され、それ以外の領域については補完画像が表示された状態となる。以上の処理が本変形例に係る合成画像生成処理である。モニタ2には、このようにして生成された合成画像に基づく合成動画像が表示される。図8は、図6の状況と同じ状況において、右モニタ2Rに表示される映像の一例を示している。
【0050】
以上の通り、本変形例では、モニタ2に表示される動画像の死角領域DRにおいて、突出物体の領域については、サイド動画像が視認可能な状態で表示されるため、運転手は、モニタ2に表示された動画像に基づいて、ウインドウ6から物体が突出していることを認識できる。特に本変形例では、死角領域DRの全域について、サイド撮影画像に基づく動画像が表示されるのではなく、突出物体の領域についてのみサイド動画像が表示されるため、不必要に広い領域についてリア動画像の表示が停止されてしまうことを防止できる。
【0051】
なお本変形例について、第1変形例を応用し、突出検出部11が、物体が開状態のウインドウ6の近傍に位置したことを検出する構成としてもよい。また第2変形例を応用し、画像処理部12が、マスク情報について、突出物体領域の各画素の透過率を「1」としたところを、サイド動画像とリア動画像との双方が視認可能となるような透過率(例えば「0.5」)とするようにしてもよい。また第3変形例を応用し、画像処理部12が、動画像における突出物体の領域にマーキングする構成としてもよい。
【0052】
<第1実施形態のその他の変形例>
第1実施形態では、突出検出部11は、サイド撮影画像を分析することによって突出状態を検出したが、第1実施形態で例示した方法以外の方法で突出状態を検出する構成でもよい。一例としてウインドウ6を物体が通過したことを検出する透過型或いは反射型の光センサを自車両に設け、突出検出部11が、この光センサの検出値に基づいて突出状態を検出するようにしてもよい。また第1実施形態では、画像処理部12は、特殊モードで動画像を表示する際に、補完画像を重畳するときの透過率を調整することによって、死角領域DRにリア動画像が表示されるようにしたが、この点に関し、補完画像を重畳するときの透過率を調整するのではなく、補完画像を重畳しないようにしてもよい。
【0053】
<第2実施形態>
次に第2実施形態について説明する。以下の第2実施形態の説明において、第1実施形態の要素と同一の要素については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。図9は、本実施形態に係る画像処理装置1Aの機能構成例を示すブロック図である。図9図1との比較で明らかな通り、本実施形態に係る画像処理装置1Aは、画像取得部10に代えて画像取得部10Aを、突出検出部11に代えて特定状態検出部15を、画像処理部12に代えて画像処理部12Aを備えている。
【0054】
特定状態検出部15は、4つのウインドウ6のそれぞれについて、開状態であるか閉状態であるかを検出する。更に特定状態検出部15は、給油口5が開状態であるか閉状態であるかを検出する。給油口5が開状態とは給油口5を塞ぐ蓋体が開いている状態であることをいう。特定状態検出部15は、上述した車両システムと通信し、各ウインドウ6および給油口5の開状態/閉状態を検出する。ただし、検出方法はどのような方法であってもよく、例えば、特定状態検出部15が各種センサを利用して検出する構成でもよく、またサイドカメラ撮影画像を分析して検出する構成でもよい。
【0055】
画像処理部12Aは、特定状態検出部15によりウインドウ6が開状態であることが検出された場合、または、給油口5が開状態であることが検出された場合、特殊モードで動画像を表示する。より具体的には、右側の2つのウインドウ6および給油口5(上述したように、自車両について、給油口5は右側の側面に設けられている)について、1つでも開状態のものがある場合、画像処理部12Aは、特殊モードで動画像を右モニタ2Rに表示する。また画像処理部12Aは、左側の2つのウインドウ6について、1つでも開状態のものがある場合、画像処理部12Aは、特殊モードで動画像を左モニタ2Lに表示する。この結果、例えば、右後部ウインドウ6が開状態の場合、右モニタ2Rには特殊モードで動画像が表示され、動画像の死角領域DRについてはサイド動画像が表示される。
【0056】
本実施形態の構成によれば、以下の効果を奏する。すなわち、ウインドウ6が開状態の場合、ウインドウ6から物体が突出し得る状態であり、ウインドウ6近辺の状況を絶えず確認できるようにしておきたいと考えることが想定される。これを踏まえ本実施形態によれば、ウインドウ6が開状態のとき、モニタ2を通して運転手がウインドウ6付近の状況を絶えず確認できるようにすることができる。また、給油口5は通常、閉状態とされるべきものであり、給油口5が開状態の場合、運転手にそのことを認識させた方が良いと言える。そして本実施形態によれば、給油口5が開状態のときは、特殊モードで動画像が表示されるため、給油口5が開いた様子が映像として表示されることになり、運転手は、動画像から給油口5が開状態であることを即座に認識できる。
【0057】
次に本実施形態に係る画像処理装置2Aの動作例について図7のフローチャートを延焼して説明する。図7で示すように、画像処理装置1Aの画像取得部10Aは、サイド撮影画像、および、リア撮影画像を取得する(ステップSA1)。次いで画像処理部12Aは、画像取得部10Aにより取得されたサイド撮影画像およびリア撮影画像に基づいて、サイド動画像の領域のうち死角領域DRを、リア動画像で補った合成動画像をモニタ2に表示させる(ステップSA2)。上述したように本実施形態に係る画像処理部12Aは、ステップSA2における合成動画像の表示に際し、特定状態検出部15によりウインドウ6が開状態であること或いは給油口5が開状態であることが検出されたとき(所定の条件が成立しとき)に死角領域DRの全部を一時的にサイド動画像が視認可能な状態とする機能を有している。
【0058】
<第2実施形態の第1変形例>
次に、第2実施形態の第1変形例について説明する。第2実施形態では、画像処理装置1Aは、特定状態検出部15を備えていない。そして動画像の表示に際し、画像処理部12Aは、以下の処理を実行する。すなわち、ウインドウ6および給油口5の状態によらず、動画像の死角領域DRのうち、ウインドウ6および給油口5の領域について、サイド動画像を継続して表示する。なお、サイド撮影画像におけるウインドウ6の領域および給油口5の領域は一定であるため、画像処理部12Aは、合成画像生成処理において補完画像を重畳する際に、ウインドウ6の領域および給油口5の領域の透過率を「1」にすることにより、ウインドウ6および給油口5の領域にサイド動画像を継続して表示する。
【0059】
本変形例の構成によれば、運転手は、モニタ2に表示された動画像を視認することにより、常に、ウインドウ6付近の状況および給油口5の状態を確認することが可能である。なお、本変形例について、第1実施形態の第2変形例を応用し、画像処理部12Aが、ウインドウ6の領域および給油口5の領域の透過率を「1」とするのではなく、サイド動画像とリア動画像との双方が視認可能となるような透過率(例えば「0.5」)とするようにしてもよい。
【0060】
<第2実施形態のその他の変形例>
第2実施形態について、画像処理部12Aが、特殊モードで動画像を表示するときに、死角領域DRの全域にサイド動画像を表示するのではなく、開状態の部材の領域にのみサイド動画像を表示する構成でもよい。例えば、右モニタ2Rに動画像を表示する際に、右後部ウインドウ6が開状態であり、前部の右側のウインドウ6および給油口5が閉状態の場合、画像処理部12Aが、右後部ウインドウ6の領域にのみサイド動画像を表示する構成としてもよい。
【0061】
また第2実施形態では、特定状態検出部15が状態を監視する対象は、全てのウインドウ6および給油口5であったが、当該対象はこの例に限られない。例えば、当該対象は、ウインドウ6のみ(給油口5を対象としない)であってもよく、一部のウインドウ6であってもよい。また当該対象は、ウインドウ6および給油口5以外の部材(例えば、車体に設けられたアンテナ)であってもよい。
【0062】
また第2実施形態と第1実施形態とを組み合わせる構成でもよい。すなわち、画像処理装置1Aが、更に第1実施形態に係る突出検出部11を備える構成とし、画像処理部12Aが、特定状態検出部15に特定の部材が特定の状態であることが検出されている場合のみならず、突出検出部11により突出状態が検出されている場合に、死角領域DRについてサイド動画像を視認可能な状態とする構成としてもよい。
【0063】
以上、本発明の実施形態(変形例を含む)を説明したが、上記各実施形態は、本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、または、その主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【0064】
例えば、上記各実施形態では、リアカメラ3が魚眼カメラにより構成され、サイドカメラ4が標準カメラにより構成されていたが、リアカメラ3やサイドカメラ4のどのようなカメラにより構成するかは、上記実施形態の例に限定されない。
【0065】
また、上記各実施形態では、合成画像を表示する表示装置は、右モニタ2Rおよび左モニタ2Lであった。しかしながら、動画像を表示する表示装置は、右モニタ2Rおよび左モニタ2Lに限らず、自車両のダッシュボードの中央やセンターコンソール等に設けられた表示パネルや、右サイドミラーMRおよび左サイドミラーMLに設けられた表示パネル、バックミラーに設けられた表示パネル等であってもよい。表示装置は、携帯端末であってもよい。
【0066】
また、サイドカメラ4の自車両における設置位置は、上記各実施形態で例示した位置に限られない。例えば、サイドカメラ4は、車両の側面であって、車両の前端に近い位置に設けられてもよい。
【符号の説明】
【0067】
1、1A 画像処理装置
2L 左モニタ(表示装置)
2R 右モニタ(表示装置)
3 リアカメラ
4L 左サイドカメラ(サイドカメラ)
4R 右サイドカメラ(サイドカメラ)
5 給油口
6 ウインドウ
10、10A 画像取得部
11 突出検出部
12,12A 画像処理部
15 特定状態検出部
DH 死角範囲
DR 死角領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9