(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】医用情報処理装置、医用情報処理プログラム、医用情報処理システム
(51)【国際特許分類】
A61B 6/46 20240101AFI20240408BHJP
【FI】
A61B6/46 536Z
(21)【出願番号】P 2018191548
(22)【出願日】2018-10-10
【審査請求日】2021-08-30
【審判番号】
【審判請求日】2023-04-04
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】西岡 昂彦
(72)【発明者】
【氏名】石井 秀明
【合議体】
【審判長】樋口 宗彦
【審判官】伊藤 幸仙
【審判官】櫃本 研太郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0095292(US,A1)
【文献】特表2018-534970(JP,A)
【文献】特開2014-100540(JP,A)
【文献】特表2018-503419(JP,A)
【文献】特表2016-511682(JP,A)
【文献】特開2017-70742(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0113450(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 - 6/58
A61B 10/00
A61B 5/026
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
最大充血状態又は安静状態での冠動脈における血管血流量を流体解析によって取得し、
前記血管血流量の取得時と同一の状態での前記冠動脈によって血液が供給される心筋領域における心筋血流量をパーフュージョン解析によって取得する取得部と、
前記血管血流量と前記心筋血流量と
の比較に基づいて、前記心筋領域に対して前記血液を供給する毛細血管における毛細血管抵抗量を示す指標を算出する算出部と、
を備える、医用情報処理装置。
【請求項2】
前記取得部は、複数本の冠動脈における複数の血管血流量と、前記複数本の冠動脈によって血液がそれぞれ供給される複数の心筋領域における複数の心筋血流量をまとめた単一の心筋血流量とを取得し、
前記算出部は、前記複数の血管血流量と前記単一の心筋血流量とを組み合わせて前記指標を算出する、請求項1に記載の医用情報処理装置。
【請求項3】
前記取得部は、心筋領域に対して血液を供給する冠動脈の範囲の上流側端部における血管血流量及び下流側端部における血管血流量と、前記心筋領域における心筋血流量とを取得し、
前記算出部は、前記上流側端部における血管血流量と前記下流側端部における血管血流量との差分と、前記心筋領域における心筋血流量とを組み合わせて前記指標を算出する、請求項1に記載の医用情報処理装置。
【請求項4】
前記取得部は、前記冠動脈及び前記冠動脈によって血液が供給される心筋領域を複数の範囲に分割し、分割した範囲ごとに、範囲の上流側端部における血管血流量及び下流側端部における血管血流量と、当該範囲に対応する心筋領域における心筋血流量とをそれぞれ取得し、
前記算出部は、前記上流側端部における血管血流量と前記下流側端部における血管血流量との差分と、前記範囲に対応する心筋領域における心筋血流量とを組み合わせて、前記分割した範囲ごとに前記指標をそれぞれ算出する、請求項1に記載の医用情報処理装置。
【請求項5】
前記心筋領域及び前記冠動脈の少なくとも一方を含む医用画像上に前記算出部によって算出された前記指標に関する情報を示した表示画像を表示させるように制御する表示制御部をさらに備える、請求項1~4のいずれか1つに記載の医用情報処理装置。
【請求項6】
前記分割した範囲ごとにそれぞれ算出された前記指標を色で示し、前記心筋領域又は前記冠動脈を示す3次元画像上に割り当てたカラー画像を表示させるように制御する表示制御部をさらに備える、請求項4に記載の医用情報処理装置。
【請求項7】
前記冠動脈を長軸方向に沿って2次元平面上に示した表示画像と、当該冠動脈の各範囲で算出された前記指標の変化を示すグラフとを、前記表示画像における位置と前記グラフにおける位置とを対応付けて表示させるように制御する表示制御部をさらに備える、請求項4に記載の医用情報処理装置。
【請求項8】
前記表示制御部は、前記表示画像に心筋パーフュージョンの結果を表示させるように制御する、請求項7に記載の医用情報処理装置。
【請求項9】
心筋を極座標表示させた表示画像上で、前記冠動脈及び前記心筋領域を識別可能に表示させ、前記分割した範囲ごとにそれぞれ算出された前記指標を色で示したカラー画像を表示させるように制御する表示制御部をさらに備える、請求項4に記載の医用情報処理装置。
【請求項10】
前記分割した範囲ごとにそれぞれ算出された前記指標を色で示し、前記心筋領域又は前記冠動脈を示す3次元画像上に割り当てた第1のカラー画像、前記冠動脈を長軸方向に沿って2次元平面上に示した表示画像及び当該冠動脈の各範囲で算出された前記指標の変化を示すグラフ、及び、心筋を極座標表示させた表示画像上で、前記冠動脈及び前記心筋領域を識別可能に表示させ、前記分割した範囲ごとにそれぞれ算出された前記指標を色で示した第2のカラー画像のうち少なくとも2つを表示させるように制御する表示制御部をさらに備え、
前記表示制御部は、表示させた前記第1のカラー画像、前記表示画像及び前記グラフ、及び、前記第2のカラー画像のうち少なくとも2つに対して、略同一位置を指示するマーカを配置して表示させるように制御する、請求項4に記載の医用情報処理装置。
【請求項11】
前記表示制御部は、前記冠動脈に対して前記マーカを配置した際に、配置した位置における冠動脈の短軸断面画像をさらに表示させるように制御する、請求項10に記載の医用情報処理装置。
【請求項12】
前記冠動脈を示す3次元画像と、前記心筋領域を示す3次元画像上に前記範囲ごとの指標を色で示したカラー画像とを重畳表示させ、前記冠動脈における位置を指示するマーカと、当該マーカの位置における冠血流予備量比とをさらに表示させるように制御する表示制御部をさらに備える、請求項4に記載の医用情報処理装置。
【請求項13】
前記冠動脈を示す3次元画像と、前記冠動脈における位置を指示するマーカと、当該マーカの位置における前記指標及び冠血流予備量比とを表示させるように制御する表示制御部をさらに備える、請求項4に記載の医用情報処理装置。
【請求項14】
心筋を極座標表示させた表示画像上に心筋パーフュージョンの結果を表示させるとともに、当該表示画像に含まれる前記心筋領域において前記指標が閾値より低い領域を識別可能に表示させるように制御する表示制御部をさらに備える、請求項4に記載の医用情報処理装置。
【請求項15】
心筋を示す3次元画像上に心筋パーフュージョンの結果を表示させるとともに、当該3次元画像に含まれる前記心筋領域において前記指標が閾値より低い領域を識別可能に表示させるように制御する表示制御部をさらに備える、請求項4に記載の医用情報処理装置。
【請求項16】
前記冠動脈を示す3次元画像を表示させ、前記3次元画像に対する前記冠動脈における位置を指定する指定操作を受け付けた場合に、受け付けた位置における冠血流予備量比、前記受け付けた位置の冠動脈によって血液が供給される心筋領域における心筋パーフュージョンの結果、前記受け付けた位置における前記指標、及び、前記受け付けた位置の画素値に基づく値を並べて表示させるように制御する表示制御部をさらに備える、請求項4に記載の医用情報処理装置。
【請求項17】
心筋を示す3次元画像を表示させ、前記3次元画像に対する心筋領域を指定する指定操作を受け付けた場合に、受け付けた心筋領域に対して血液を供給する冠動脈における冠血流予備量比、前記受け付けた心筋領域における心筋パーフュージョンの結果、及び、前記受け付けた心筋領域における前記指標を並べて表示させるように制御する表示制御部をさらに備える、請求項4に記載の医用情報処理装置。
【請求項18】
前記表示制御部は、並べて表示させた各表示項目と、表示項目ごとに設定された閾値との比較結果に基づいて、受け付けた位置及び受け付けた心筋領域の少なくとも一方に対する推奨の治療方針を表示させる、請求項16又は17に記載の医用情報処理装置。
【請求項19】
前記算出部は、前記血管血流量と前記心筋血流量との比率に基づく前記指標を算出する、請求項1~18のいずれか1つに記載の医用情報処理装置。
【請求項20】
最大充血状態又は安静状態での冠動脈における血管血流量を流体解析によって取得し、
前記血管血流量の取得時と同一の状態での前記冠動脈によって血液が供給される心筋領域における心筋血流量をパーフュージョン解析によって取得し、
前記血管血流量と前記心筋血流量と
の比較に基づいて、前記心筋領域に対して前記血液を供給する毛細血管における毛細血管抵抗量を示す指標を算出する、
各処理をコンピュータに実行させる、医用情報処理プログラム。
【請求項21】
最大充血状態又は安静状態での冠動脈における血管血流量を流体解析によって取得し、
前記血管血流量の取得時と同一の状態での前記冠動脈によって血液が供給される心筋領域における心筋血流量をパーフュージョン解析によって取得する取得部と、
前記血管血流量と前記心筋血流量と
の比較に基づいて、前記心筋領域に対して前記血液を供給する毛細血管における毛細血管抵抗量を示す指標を算出する算出部と、
を備える、医用情報処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、医用情報処理装置、医用情報処理プログラム、医用情報処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、心筋の虚血の状態を評価する場合に、冠動脈の血流量及び心筋の血流量に加えて、心筋における毛細血管の血管抵抗(微小循環抵抗)を評価することが重要であると知られている。ここで、微小循環抵抗を評価する方法としては、指先などにレーザー光を当てて、指などの毛細血管における血流の評価を行う方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、毛細血管における抵抗を評価することができる指標を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る医用情報処理装置は、取得部と、算出部とを備える。取得部は、冠動脈における血管血流量と、前記冠動脈によって血液が供給される心筋領域における心筋血流量とを取得する。算出部は、前記血管血流量と前記心筋血流量とを組み合わせて、前記心筋領域に対して前記血液を供給する毛細血管における毛細血管抵抗量を示す指標を算出する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る医用情報処理装置の構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係る医用情報処理装置による毛細血管抵抗指標の算出の一例を説明するための図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態に係る医用情報処理装置による毛細血管抵抗指標の算出の一例を説明するための図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態に係る医用情報処理装置による毛細血管抵抗指標の算出の一例を説明するための図である。
【
図5A】
図5Aは、第1の実施形態に係る医用情報処理装置による毛細血管抵抗指標の算出の一例を説明するための図である。
【
図5B】
図5Bは、第1の実施形態に係る医用情報処理装置による毛細血管抵抗指標の算出の一例を説明するための図である。
【
図6】
図6は、第1の実施形態に係る毛細血管抵抗指標の表示形態の例を示す図である。
【
図7A】
図7Aは、第1の実施形態に係る毛細血管抵抗指標の表示形態の例を示す図である。
【
図7B】
図7Bは、第1の実施形態に係る毛細血管抵抗指標の表示形態の例を示す図である。
【
図8A】
図8Aは、第1の実施形態に係る毛細血管抵抗指標の表示形態の例を示す図である。
【
図8B】
図8Bは、第1の実施形態に係る毛細血管抵抗指標の表示形態の例を示す図である。
【
図9】
図9は、第1の実施形態に係る毛細血管抵抗指標の表示形態の例を示す図である。
【
図10】
図10は、第1の実施形態に係る毛細血管抵抗指標の表示形態の例を示す図である。
【
図11】
図11は、第1の実施形態に係る毛細血管抵抗指標の表示形態の例を示す図である。
【
図12】
図12は、第1の実施形態に係る毛細血管抵抗指標の表示形態の例を示す図である。
【
図13】
図13は、第1の実施形態に係る毛細血管抵抗指標の表示形態の例を示す図である。
【
図14】
図14は、第1の実施形態に係る毛細血管抵抗指標の表示形態の例を示す図である。
【
図15】
図15は、第1の実施形態に係る毛細血管抵抗指標の表示形態の例を示す図である。
【
図16】
図16は、第1の実施形態に係る毛細血管抵抗指標の表示形態の例を示す図である。
【
図17】
図17は、第1の実施形態に係る治療方針を判定するための判定基準の一例を説明するための図である。
【
図18】
図18は、第1の実施形態に係る医用情報処理装置による処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に添付図面を参照して、本願に係る医用情報処理装置、医用情報処理プログラム、医用情報処理システムの実施形態を詳細に説明する。なお、本願に係る医用情報処理装置、医用情報処理プログラム、医用情報処理システムは、以下に示す実施形態によって限定されるものではない。
【0008】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る医用情報処理装置300の構成の一例を示す図である。
図1に示すように、第1の実施形態に係る医用情報処理装置300は、ネットワーク400を介して、医用画像診断装置100と、サーバ装置200に接続される。なお、
図1に示す例は、あくまでも一例であり、ネットワーク400にその他種々の装置(例えば、端末装置等)が接続される場合であってもよい。
【0009】
医用画像診断装置100は、X線診断装置、X線CT(Computed Tomography)装置、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置、超音波診断装置、SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)装置、PET(Positron Emission computed Tomography)装置、SPECT装置とX線CT装置とが一体化されたSPECT-CT装置、PET装置とX線CT装置とが一体化されたPET-CT装置、又はこれらの装置群等である。また、第1の実施形態に係る医用画像診断装置100は、3次元の医用画像データ(ボリュームデータ)を生成可能である。
【0010】
ここで、医用画像診断装置100は、冠動脈の血流量又は心筋の血流量を定量することが可能な医用画像データを収集する。例えば、医用画像診断装置100であるX線CT装置は、造影剤を投与した被検体の心臓を略中心にX線管及びX線検出器を旋回移動させ、被検体を透過したX線を検出して投影データを収集する。そして、X線CT装置は、収集した投影データに基づいて、時系列の3次元のCT画像データ(ボリュームデータ)を生成する。一例を挙げると、X線CT装置は、流体解析によって冠動脈の血流量を算出するための冠動脈造影CT画像データや、パーフュージョン解析によって心筋の血流量を算出するための心筋造影CT画像データを収集する。
【0011】
そして、医用画像診断装置100は、医用情報処理装置300からの要求に応じて、収集した医用画像データを医用情報処理装置300に送信する。また、医用画像診断装置100は、収集した医用画像データに対して各種解析を行った結果を、医用情報処理装置300に送信することもできる。
【0012】
サーバ装置200は、医用画像診断装置によって収集された医用画像データ(例えば、X線CT装置によって収集されたCT画像データ及びCT画像等)や、各種検査情報(例えば、プレッシャーワイヤによって計測された血管内圧力の情報等)等を記憶したり、医用画像データに対して各種画像処理を行ったりする装置である。ここで、サーバ装置200は、ネットワーク400を介して医用画像診断装置100から取得した医用画像データや、各種検査情報等を装置内又は装置外に設けられた記憶回路に記憶させる。そして、サーバ装置200は、医用情報処理装置300からの要求に応じて、記憶回路に記憶させた医用画像データや、各種検査情報等を医用情報処理装置300に送信する。
【0013】
医用情報処理装置300は、ネットワーク400を介して医用画像診断装置100やサーバ装置200から医用画像データを取得し、取得した画像データを処理する。また、医用情報処理装置300は、ネットワーク400を介してサーバ装置200から各種検査情報を取得し、取得した検査情報を用いて各種処理を実行する。例えば、医用情報処理装置300は、ワークステーション等のコンピュータ機器によって実現される。
【0014】
例えば、
図1に示すように、医用情報処理装置300は、通信インターフェース310と、記憶回路320と、入力インターフェース330と、ディスプレイ340と、処理回路350とを有する。
【0015】
通信インターフェース310は、処理回路350に接続され、ネットワーク400を介して接続された医用画像診断装置100又はサーバ装置200との間で行われる各種データの伝送及び通信を制御する。例えば、通信インターフェース310は、ネットワークカードやネットワークアダプタ、NIC(Network Interface Controller)等によって実現される。一例を挙げると、通信インターフェース310は、医用画像診断装置100又はサーバ装置200から医用画像データや、検査情報を受信し、受信した医用画像データや検査情報を処理回路350に出力する。
【0016】
記憶回路320は、処理回路350に接続され、各種データを記憶する。また、記憶回路320は、処理回路350の処理に用いられる種々の情報や、処理回路350による処理結果、処理回路350が読み出して実行することで各種機能を実現するための種々のプログラム等を記憶する。例えば、記憶回路320は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子や、ハードディスク、光ディスク等によって実現される。本実施形態では、記憶回路320は、医用画像診断装置100又はサーバ装置200から受信した医用画像データや検査情報等を記憶する。
【0017】
入力インターフェース330は、処理回路350に接続されており、操作者から受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路350に出力する。なお、本明細書において入力インターフェース330は、マウス、キーボードなどの物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を制御回路へ出力する電気信号の処理回路も入力インターフェースの例に含まれる。
【0018】
ディスプレイ340は、処理回路350に接続され、処理回路350から出力される各種情報及び各種画像を表示する。例えば、ディスプレイ340は、液晶モニタやCRT(Cathode Ray Tube)モニタ、タッチパネル等によって実現される。例えば、ディスプレイ340は、操作者の指示を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)や、種々の表示画像、処理回路350による種々の処理結果を表示する。
【0019】
処理回路350は、入力インターフェース330を介して操作者から受け付けた入力操作に応じて、医用情報処理装置300が有する各構成要素を制御する。例えば、処理回路350は、プロセッサによって実現される。本実施形態では、処理回路350は、通信インターフェース310から出力される医用画像データや、検査情報等を記憶回路320に記憶させる。また、処理回路350は、記憶回路320から医用画像データや、検査情報を読み出して各種処理を実行し、処理結果をディスプレイ340に表示させる。
【0020】
このような構成のもと、本実施形態に係る医用情報処理装置300は、毛細血管における抵抗を評価することができる指標を提供することを可能にする。具体的には、医用情報処理装置300は、冠動脈における血管血流量と心筋における心筋血流量とを用いて、冠動脈から流入した血液を心筋に供給する毛細血管における抵抗(微小循環抵抗)を評価するための毛細血管抵抗指標を算出する。
【0021】
本実施形態に係る処理回路350は、
図1に示すように、制御機能351と、取得機能352と、画像生成機能353と、算出機能354と、判定機能355とを実行する。ここで、制御機能351は、表示制御部の一例である。また、取得機能352は、取得部の一例である。また、算出機能354は、算出部の一例である。
【0022】
制御機能351は、医用情報処理装置300の全体制御を実行する。具体的には、制御機能351は、入力インターフェース330を介して入力された各種要求に応じた処理を実行するように制御する。例えば、制御機能351は、通信インターフェース310を介した医用画像データ等の送受信、記憶回路320への情報の格納、ディスプレイ340への情報(例えば、表示画像や、解析結果)の表示などを制御する。
【0023】
取得機能352は、冠動脈における血管血流量と、冠動脈によって血液が供給される心筋領域における心筋血流量とを取得する。具体的には、取得機能352は、医用画像診断装置100や、サーバ装置200から取得された医用画像データや、検査情報に基づいて、冠動脈における血管血流量と、冠動脈によって血液が供給される心筋領域における心筋血流量とを取得する。
【0024】
例えば、取得機能352は、医用画像診断装置100であるX線CT装置、或いは、サーバ装置200から取得した冠動脈造影CT画像データに対して流体解析を実行することにより、冠動脈における血管血流量を取得する。また、取得機能352は、流体解析による血管血流量の取得以外にも、プレッシャーワイヤによって計測されたFFR(Fractional Flow Reserve)や、瞬時FFR、冠動脈造影MR画像データに対する流体解析等を用いることにより、冠動脈における血管血流量を取得することができる。以下、冠動脈造影CT画像データに対して流体解析を実行することにより、冠動脈における血管血流量を取得する場合を一例に挙げて説明する。
【0025】
なお、FFR及び瞬時FFRは、血流の阻害の程度を推測する指標であり、血管の岐始部側の血流量と末梢側の血流量との比で定義されるものである。ここで、実際のFFRの計測においては、血管内の血流量と圧力との関係を比例関係にすることで、血流量を圧力に置き換えて計測される。例えば、FFRの計測においては、アデノシンを投与して最大充血状態(ストレス状態)とすることによって血管内の血流量と圧力との関係を比例関係にし、FFRを定義する血流量を圧力に置き換える。また、例えば、瞬時FFRの計測においては、アデノシンを投与せず、安静状態で血管内の血流量と圧力との関係が比例関係となる時相を用いることで、瞬時FFRを定義する血流量を圧力に置き換える。そこで、取得機能352は、プレッシャーワイヤによって計測された圧力の値を血流量の値に変換することで、冠動脈における血管血流量を取得する。
【0026】
冠動脈造影CT画像データに基づく流体解析を実行して血管血流量を取得する場合、取得機能352は、記憶回路320から経時的に収集された複数時相の冠動脈造影CT画像データを読み出し、読み出した複数時相の冠動脈造影CT画像データに対して画像処理を行うことで、時系列の血管形状データを抽出する。
【0027】
ここで、取得機能352は、冠動脈造影CT画像データに含まれる血管領域に指標値を算出する対象領域を設定する。具体的には、取得機能352は、操作者による入力インターフェース330を介した指示又は画像処理によって、血管領域に対象領域を設定する。なお、対象領域の設定の詳細については、後に詳述する。そして、取得機能352は、設定した対象領域の血管形状データとして、例えば、血管の芯線(芯線の座標情報)、芯線に垂直な断面での血管及び内腔の断面積、芯線に垂直な断面での円柱方向の、芯線から内壁までの距離及び芯線から外壁までの距離などを冠動脈造影CT画像データから抽出する。
【0028】
さらに、取得機能352は、流体解析の解析条件を設定する。具体的には、取得機能352は、解析条件として、血液の物性値、反復計算の条件、解析の初期値などを設定する。例えば、取得機能352は、血液の物性値として、血液の粘性、密度などを設定する。また、取得機能352は、反復計算の条件として、反復計算における最大反復回数、緩和係数、残差の許容値などを設定する。また、取得機能352は、解析の初期値として、血流量、圧力、流体抵抗、圧力境界の初期値などを設定する。なお、取得機能352によって用いられる各種値は、システムに予め組み込んでおいてもよいし、操作者が対話的に定義してもよい。
【0029】
そして、取得機能352は、冠動脈造影CT画像データを用いた流体解析により血管の血流に関する指標値を算出する。具体的には、取得機能352は、血管形状データと解析条件とを用いた流体解析を実行し、血管の対象領域における血流に関する指標値を算出する。例えば、取得機能352は、血管の内腔や外壁の輪郭、血管の断面積及び芯線などの血管形状データと、血液の物性値、反復計算の条件及び解析の初期値などの設定条件に基づいて、血管の所定の位置ごとに、圧力、血流量、血液の流速、ベクトル及びせん断応力などの指標値を算出する。これにより、取得機能352は、冠動脈の位置ごとの血流量を取得することができる。
【0030】
また、例えば、取得機能352は、医用画像診断装置100であるX線CT装置、或いは、サーバ装置200から取得した心筋造影CT画像データに対してパーフュージョン解析を実行することにより、心筋における心筋血流量を取得する。なお、取得機能352は、心筋造影CT画像データに基づくパーフュージョン解析による心筋血流量の取得以外にも、SPECT装置を用いた心筋シンチグラフィや、PET装置を用いた心筋血流量の定量、心筋造影MR画像データに対するパーフュージョン解析等を用いることにより、心筋における心筋血流量を取得することができる。以下、心筋造影CT画像データに対してパーフュージョン解析を実行することにより、心筋における心筋血流量を取得する場合を一例に挙げて説明する。
【0031】
心筋造影CT画像データに基づくパーフュージョン解析を実行して心筋血流量を取得する場合、取得機能352は、記憶回路320から複数心拍分の期間において経時的に収集された複数時相の心筋造影CT画像データを読み出し、読み出した複数時相の心筋造影CT画像データに対して画像処理を行うことで心筋血流量を算出する。例えば、取得機能352は、複数心拍分の期間において経時的に収集された複数時相の心筋造影CT画像データに基づいて、左心室内腔(或いは、大動脈)及び心筋に含まれる画素ごとのTDC(Time Density Curve)を算出する。そして、取得機能352は、算出した左心室内腔(或いは、大動脈)におけるTDC(Time Density Curve)に対する心筋の画素ごとのTDCの対応に基づいて、心筋の画素ごとの心筋血流量を算出する。これにより、取得機能352は、心筋の位置ごとの血流量を取得することができる。なお、取得機能352は、心筋における所定の領域に含まれる画素群の心筋血流量の平均値を所定の領域における心筋血流量として算出することもできる。
【0032】
上述したように、取得機能352は、CT画像データを用いて血管血流量及び心筋血流量を算出することで、冠動脈の位置ごとの血管血流量及び心筋の位置ごとの心筋血流量をそれぞれ取得することができる。ここで、取得機能352は、操作者によって指定された位置の血管血流量及び心筋血流量を取得する。具体的には、取得機能352は、毛細血管抵抗指標を算出する対象領域に対応する冠動脈位置の血管血流量及び心筋領域の心筋血流量を取得する。例えば、取得機能352は、狭窄が認められる冠動脈の末端領域や、虚血が認められる心筋領域、或いは、診療の対象となる心筋領域などを、毛細血管抵抗指標を算出する対象領域として、対応する位置の血管血流量及び心筋血流量を取得する。
【0033】
一例を挙げると、取得機能352は、画像生成機能353によって生成された表示画像に含まれる冠動脈のうち、操作者によって選択された冠動脈における血管血流量を取得する。そして、取得機能352は、選択された冠動脈によって血液が供給される心筋領域を特定し、特定した心筋領域の心筋血流量を取得する。ここで、操作者は、冠動脈において血管血流量を取得する位置を指定することもできる。すなわち、操作者は、血管血流量を取得する冠動脈を選択するとともに、選択した血管のうち血管血流量を算出する位置をさらに指定することできる。
【0034】
なお、血管血流量の取得する位置が指定されていない場合(冠動脈が選択されただけの場合)、取得機能352は、選択された冠動脈の岐始部の血管血流量を算出するようにしてもよい。また、選択された冠動脈の支配領域は、例えば、ボロノイ法によって特定される。すなわち、取得機能352は、選択された冠動脈の形状に基づいた領域拡張を行うことにより、選択された冠動脈の支配領域を特定する。
【0035】
また、例えば、操作者によって心筋領域が指定される場合、取得機能352は、まず、操作者によって指定された心筋領域に血液を供給する冠動脈を特定する。一例を挙げると、取得機能352は、冠動脈と心筋との形態的な位置関係に基づいて、指定された心筋領域に血液を供給する冠動脈を特定する。ここで、取得機能352は、指定された心筋領域に血液を供給する冠動脈の範囲をさらに特定することができる。そして、取得機能352は、特定した冠動脈の形状に基づいた領域拡張を行うことにより、選択された冠動脈の支配領域をさらに特定し、特定した支配領域における心筋血流量を取得する。
【0036】
なお、指定された心筋領域に血液を供給する冠動脈が特定された場合、取得機能352は、例えば、特定された冠動脈の岐始部の血管血流量を算出する。また、指定された心筋領域に血液を供給する冠動脈の範囲がさらに特定された場合、取得機能352は、例えば、特定された冠動脈の範囲における岐始部側の端部の血管血流量を算出する。
【0037】
画像生成機能353は、記憶回路320によって記憶された医用画像データを読み出し、読み出した医用画像データから表示画像を生成する。例えば、画像生成機能353は、CT画像データを読み出し、読み出したCT画像データに対して種々の画像処理を施すことにより、心臓全体や、冠動脈、部分的な心筋領域を示す表示画像を生成する。一例を挙げると、画像生成機能353は、CT画像データに対して画像処理を施すことにより、ボリュームレンダリング画像や、CPR(Curved Multi Planer Reconstruction)画像、MPR(Multi Planer Reconstruction)画像、SPR(Stretched Multi Planer Reconstruction)画像、ポーラーマップ(Polar Map)などを生成する。
【0038】
また、画像生成機能353は、取得機能352によって取得された血管血流量や心筋血流量、FFR等の検査結果、算出機能354によって算出された毛細血管抵抗指標などを用いた表示情報を生成する。例えば、画像生成機能353は、心筋血流量を示すパーフュージョン画像や、毛細血管抵抗指標を示すグラフなどを生成する。
【0039】
算出機能354は、血管血流量と心筋血流量とを組み合わせて、心筋領域に対して血液を供給する毛細血管における毛細血管抵抗量を示す毛細血管抵抗指標を算出する。例えば、算出機能354は、血管血流量と心筋血流量との比率に基づく毛細血管抵抗指標を算出する。
図2は、第1の実施形態に係る医用情報処理装置300による毛細血管抵抗指標の算出の一例を説明するための図である。
【0040】
ここで、
図2においては、冠動脈の位置P1における血管血流量と、心筋の領域R1における心筋血流量が取得された場合について示す。なお、上述したように、位置P1及び領域R1は、操作者によって冠動脈が指定されることにより決定される場合であってもよく、或いは、操作者によって心筋領域が指定されることによって決定される場合であってもよい。
【0041】
算出機能354は、冠動脈の位置P1における血管血流量と、心筋の領域R1における心筋血流量を用いて、冠動脈の位置P1及び心筋領域R1に対応する毛細血管抵抗指標を算出する。例えば、算出機能354は、以下の式により毛細血管抵抗指標を算出する。
【0042】
毛細血管抵抗指標=心筋血流量(Qmyo)/血管血流量(Qvessel)
【0043】
すなわち、算出機能354は、冠動脈の血管血流量と、当該冠動脈に支配された心筋領域の心筋血流量との比率を算出することで、冠動脈から心筋領域への血液の供給能(冠動脈と心筋との間にある毛細血管における血液の流れの阻害度合い)を算出することができる。ここで、例えば、毛細血管抵抗が高い場合には冠動脈から心筋領域への血液の供給が減少するため、毛細血管抵抗指標が「1」よりも小さくなる。一方、毛細血管抵抗が低い場合には冠動脈から心筋領域への血液の供給が減少しないため、毛細血管抵抗指標が「1」に近づくこととなる。
【0044】
例えば、算出機能354は、取得機能352によって取得された位置P1における「血管血流量(Qvessel)」と心筋領域R1における「心筋血流量(Qmyo)」とから、上記した式に基づいて、位置P1及び心筋領域R1に対応する毛細血管抵抗指標を算出する。
【0045】
上述した実施形態では、単一の冠動脈及び領域を対象に毛細血管抵抗指標を算出する場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、医用情報処理装置300は、複数の冠動脈によって支配される心筋領域を対象に毛細血管抵抗指標を算出することもできる。かかる場合には、例えば、取得機能352は、複数本の冠動脈における複数の血管血流量と、複数本の冠動脈によって血液がそれぞれ供給される複数の心筋領域における複数の心筋血流量をまとめた単一の心筋血流量とを取得する。そして、算出機能354は、複数の血管血流量と単一の心筋血流量とを組み合わせて毛細血管抵抗指標を算出する。
【0046】
図3は、第1の実施形態に係る医用情報処理装置300による毛細血管抵抗指標の算出の一例を説明するための図である。ここで、
図3においては、2本の冠動脈によって支配される心筋領域の毛細血管抵抗指標を算出する場合を示す。例えば、
図3の例では、毛細血管抵抗指標を算出する対象領域が指定されたことにより、取得機能352が、指定された対象領域に対して血液を供給する2本の冠動脈の範囲を特定する。そして、取得機能352は、特定した2本の冠動脈の範囲それぞれにおいて、岐始部側の端部の位置P2の血管血流量「Q
vessel1」及び位置P3における血管血流量「Q
vessel2」を取得する。
【0047】
さらに、取得機能352は、特定した2本の冠動脈の範囲それぞれの支配領域をボロノイ法によってそれぞれ特定し、特定した支配領域をまとめた単一の領域R2を抽出する。そして、取得機能352は、抽出した領域R2における心筋血流量「Qmyo」を取得する。なお、上述した位置P2、位置P3及び領域R2の決定はあくまでも一例であり、例えば、操作者によって位置P2及び位置P3が指定され、取得機能352が、指定された位置P2及び位置P3に基づいて、領域R2を特定する場合でもよい。
【0048】
上述したように、取得機能352が、位置P2の血管血流量「Qvessel1」及び位置P3における血管血流量「Qvessel2」と、領域R2における心筋血流量「Qmyo」とを取得すると、算出機能354は、例えば、「心筋血流量(Qmyo)/(血管血流量(Qvessel1)+血管血流量(Qvessel2))により、領域R2における毛細血管抵抗指標を算出する。
【0049】
上述した例では、心筋領域に血液を供給する範囲を特定する際に、岐始部側の端部のみを特定する場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、岐始部側の端部及び末梢側の端部を特定する場合であってもよい。かかる場合には、取得機能352は、心筋領域に対して血液を供給する冠動脈の範囲の上流側端部における血管血流量及び下流側端部における血管血流量と、指定された心筋領域における心筋血流量とを取得する。そして、算出機能354は、上流側端部における血管血流量と下流側端部における血管血流量との差分と、指定された心筋領域における心筋血流量とを組み合わせて指標を算出する。
【0050】
図4は、第1の実施形態に係る医用情報処理装置300による毛細血管抵抗指標の算出の一例を説明するための図である。ここで、
図4においては、1本の冠動脈における所定の範囲によって支配される心筋領域の毛細血管抵抗指標を算出する場合を示す。例えば、
図4の例では、毛細血管抵抗指標を算出する対象領域が、1本の冠動脈における所定の範囲内に指定されたことにより、取得機能352が、指定された対象領域に対して血液を供給する冠動脈の範囲(冠動脈の岐始部側の端部及び末梢側の端部)を特定する。そして、取得機能352は、特定した冠動脈の範囲それぞれにおいて、岐始部側の端部の位置P4の血管血流量「Q
vessel3」及び位置P5における血管血流量「Q
vessel4」を取得する。さらに、取得機能352は、位置P4から位置P5までの冠動脈における血管血流量として、「Q
vessel3-Q
vessel4」を算出する。
【0051】
そして、取得機能352は、特定した冠動脈の範囲に支配された心筋領域R3をボロノイ法によって特定する。そして、取得機能352は、特定した領域R3における心筋血流量「Qmyo」を取得する。なお、上述した位置P4、位置P5及び領域R3の決定はあくまでも一例であり、例えば、操作者によって位置P4及び位置P5が指定され、取得機能352が、指定された位置P4及び位置P5に基づいて、領域R3を特定する場合でもよい。
【0052】
上述したように、取得機能352が、位置P4から位置P5までの冠動脈における血管血流量「Qvessel3-Qvessel4」と、領域R3における心筋血流量「Qmyo」とを取得すると、算出機能354は、例えば、「領域R3における心筋血流量(Qmyo)/(血管血流量(Qvessel3)-血管血流量(Qvessel4))により、位置P4から位置P5までの冠動脈及び領域R3に対応する毛細血管抵抗指標を算出する。
【0053】
上述した例では、単一の心筋領域を対象に毛細血管抵抗指標を算出する場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、心筋領域を部分領域に分割し、分割した各部分領域における毛細血管抵抗指標を算出する場合であってもよい。かかる場合には、取得機能352は、冠動脈及び冠動脈によって血液が供給される心筋領域を複数の範囲に分割し、分割した範囲ごとに、範囲の上流側端部における血管血流量及び下流側端部における血管血流量と、当該範囲に対応する心筋領域における心筋血流量とをそれぞれ取得する。そして、算出機能354は、上流側端部における血管血流量と下流側端部における血管血流量との差分と、範囲に対応する心筋領域における心筋血流量とを組み合わせて、分割した範囲ごとに毛細血管抵抗指標をそれぞれ算出する。
【0054】
図5Aは、第1の実施形態に係る医用情報処理装置300による毛細血管抵抗指標の算出の一例を説明するための図である。ここで、
図5Aにおいては、冠動脈によって支配される心筋領域を複数の部分領域に分割し、部分領域ごとの毛細血管抵抗指標を算出する場合を示す。例えば、
図5Aの例では、毛細血管抵抗指標を算出する対象領域が指定されたことにより、取得機能352が、指定された対象領域に対して血液を供給する冠動脈の範囲(冠動脈の岐始部側の端部の位置P6)を特定する。そして、取得機能352は、特定した冠動脈の範囲によって支配された心筋領域R4をボロノイ法によって特定する。
【0055】
その後、取得機能352は、特定した範囲の冠動脈の芯線を取得して、芯線に直交する方向で冠動脈及び心筋領域R4を複数の範囲に分割する。一例を挙げると、取得機能352は、冠動脈の芯線に直交し、位置P61を通過する線分によって、領域R4から部分領域R411及び部分領域R412を分割する。すなわち、取得機能352は、位置P61を通過する線分によって、位置P6から位置P61までの冠動脈の領域と、部分領域R411及び部分領域R412とを含む範囲を、冠動脈及び領域R4から分割する。
【0056】
また、取得機能352は、冠動脈の芯線に直交し、位置P62を通過する線分によって、領域R4から部分領域R421及び部分領域R422を分割し、かつ、冠動脈から位置P61から位置P62までの領域を分割する。同様に、取得機能352は、位置P63~P610を通過する各線分によって、部分領域R431~R492及び部分領域R42を分割する。
【0057】
そして、取得機能352は、分割した範囲それぞれについて、血管血流量と心筋血流量とを取得する。一例を挙げると、取得機能352は、位置P6から位置P61までの冠動脈の領域と、部分領域R411及び部分領域R412とを含む範囲について、血管血流量と心筋血流量とを取得する。例えば、取得機能352は、位置P6の血管血流量「Qvessel6」及び位置P61における血管血流量「Qvessel61」を取得する。さらに、取得機能352は、位置P6から位置P61までの冠動脈における血管血流量として、「Qvessel6-Qvessel61」を算出する。また、取得機能352は、部分領域R411における心筋血流量「Qmyo411」と、部分領域R421における心筋血流量「Qmyo421」とを取得する。
【0058】
同様に、取得機能352は、位置P61から位置P62までの冠動脈の領域と、部分領域R421及び部分領域R422とを含む範囲~位置P610から冠動脈末端までの冠動脈の領域と、部分領域R42とを含む範囲までの各範囲について、血管血流量と心筋血流量とをそれぞれ取得する。
【0059】
算出機能354は、取得機能352によって取得された範囲ごとの血管血流量及び部分領域における心筋血流量を用いて、部分領域ごとの毛細血管抵抗指標を算出する。例えば、算出機能354は、部分領域R411における毛細血管抵抗指標として、「Qmyo411/(Qvessel6-Qvessel61)」を算出する。また、算出機能354は、部分領域R421における毛細血管抵抗指標として、「Qmyo421/(Qvessel6-Qvessel61)」を算出する。なお、算出機能354は、位置P6から位置P61までの冠動脈に対応する毛細血管抵抗指標として、例えば、部分領域R411における毛細血管抵抗指標と部分領域R421における毛細血管抵抗指標との平均を算出する場合でもよい。
【0060】
同様に、算出機能354は、位置P61から位置P62までの冠動脈の領域と、部分領域R421及び部分領域R422とを含む範囲~位置P610から冠動脈末端までの冠動脈の領域と、部分領域R42とを含む範囲までの各範囲について、部分領域ごとの毛細血管抵抗指標をそれぞれ算出する。なお、位置P610から冠動脈末端までの冠動脈の領域と、部分領域R42とを含む範囲については、位置P610から冠動脈末端までの冠動脈の領域における心筋血流量と、部分領域R42における心筋血流量とから、1つの毛細血管抵抗指標が算出される。
【0061】
ここで、
図5Aに示す分割の例はあくまでも一例であり、実施形態はこれに限定されるものではない。すなわち、領域R4を分割する際の部分領域の数は、
図5Aに図示される数に限定されるものではなく、例えば、
図5Aに示す数以上の部分領域に分割される場合でもよく、或いは、
図5Aに示す数以下の部分領域に分割される場合でもよい。
【0062】
上述した例では、1本の冠動脈における支配領域を分割する場合について説明した。以下では、冠動脈が分枝する領域の支配領域を分割する場合について説明する。
図5Bは、第1の実施形態に係る医用情報処理装置300による毛細血管抵抗指標の算出の一例を説明するための図である。ここで、
図5Bにおいては、冠動脈が分枝する領域について拡大したものを示す。すなわち、
図5Bに示す場合にも、実際には、
図5Aと同様に、冠動脈の範囲と、その範囲の冠動脈によって支配される心筋領域が特定されている。
【0063】
例えば、
図5Bの例では、取得機能352は、まず、位置P71から位置P72までの冠動脈の領域と、部分領域R511及び部分領域R512とを含む範囲、及び、位置P72から位置P73までの冠動脈の領域と、部分領域R521及び部分領域R522とを含む範囲などを分割する。そして、取得機能352は、分枝が含まれる部分領域R522について、さらに複数の範囲に分割する。例えば、取得機能352は、部分領域R522から、位置P721から位置P722までの冠動脈の領域と、部分領域R5221及び部分領域R5222とを含む範囲を分割する。同様に、取得機能352は、分枝が含まれる部分領域R522から複数の範囲を分割する。
【0064】
上述したように分割を行うと、取得機能352は、各範囲について、血管血流量と心筋血流量とをそれぞれ取得する。すなわち、取得機能352は、分割した範囲ごとに、冠動脈の血管血流量と、部分領域ごとの心筋血流量を取得する。例えば、取得機能352は、位置P71から位置P72までの冠動脈の領域と、部分領域R511及び部分領域R512とを含む範囲については、
図5Aでの説明と同様に、血管血流量と心筋血流量とを取得する。
【0065】
また、取得機能352は、位置P72から位置P73までの冠動脈の領域と、部分領域R521及び分枝を含む部分領域R522とを含む範囲については、例えば、以下のように、各領域の血流量を取得する。まず、分枝を含まない部分領域R521における毛細血管抵抗指標を算出するための血流量として、取得機能352は、
図5Aでの説明と同様に、位置P72の血管血流量「Q
vessel72」及び位置P73における血管血流量「Q
vessel73」を取得する。さらに、取得機能352は、位置P72から位置P73までの冠動脈における血管血流量として、「Q
vessel72-Q
vessel73」を算出する。また、取得機能352は、部分領域R521における心筋血流量「Q
myo521」を取得する。
【0066】
一方、分枝を含む部分領域R522における毛細血管抵抗指標を算出するための血流量として、取得機能352は、位置P72の血管血流量「Qvessel72」と、分枝位置P721における血管血流量「Qvessel721」と、位置P73における血管血流量「Qvessel73」と、位置P722における血管血流量「Qvessel722」と、位置P723における血管血流量「Qvessel723」と、位置P724における血管血流量「Qvessel724」とを取得する。そして、取得機能352は、位置P72から位置P721までの冠動脈における血管血流量「Qvessel72-Qvessel721」、位置P721から位置P73までの冠動脈における血管血流量「Qvessel721-Qvessel73」、位置P721から位置P722までの冠動脈における血管血流量「Qvessel721-Qvessel722」、位置P722から位置P723までの冠動脈における血管血流量「Qvessel722-Qvessel723」、位置P723から位置P724までの冠動脈における血管血流量「Qvessel723-Qvessel724」を算出する。
【0067】
さらに、取得機能352は、部分領域R5221における心筋血流量「Qmyo5221」及び部分領域R5221における心筋血流量「Qmyo5221」を含む部分領域R522から分割された各部分領域における心筋血流量をそれぞれ取得する。
【0068】
上述したように、各領域における血流量が取得されると、算出機能354は、各血流量を用いて、分割された範囲ごとに、毛細血管抵抗指標を算出する。例えば、算出機能354は、位置P71から位置P72までの冠動脈の領域と、部分領域R511及び部分領域R512とを含む範囲については、
図5Aでの説明と同様に、毛細血管抵抗指標を算出する。
【0069】
一方、分枝を含む部分領域R522を含む範囲については、算出機能354は、例えば、以下のように、毛細血管抵抗指標を算出する。まず、分枝を含まない部分領域R521における毛細血管抵抗指標については、算出機能354は、
図5Aでの説明と同様に、「Q
myo521/(Q
vessel72-Q
vessel73)」を算出する。
【0070】
そして、分枝を含む部分領域R522に含まれる各部分領域における毛細血管抵抗指標については、算出機能354は、例えば、部分領域R5221における毛細血管抵抗指標として、「Qmyo5221/((Qvessel72-Qvessel721)+(Qvessel721-Qvessel722))」を算出する。すなわち、算出機能354は、位置P72から位置P721までの冠動脈からの血液の供給と、位置P721から位置P722までの冠動脈からの血液の供給とを考慮した毛細血管抵抗指標を算出する。
【0071】
同様に、算出機能354は、例えば、部分領域R5222における毛細血管抵抗指標として、位置P721から位置P73までの冠動脈からの血液の供給と、位置P721から位置P722までの冠動脈からの血液の供給とを考慮した毛細血管抵抗指標「Qmyo5222/((Qvessel721-Qvessel73)+(Qvessel721-Qvessel722))」を算出する。なお、それ以降の範囲については、上記と同様に算出される。すなわち、算出機能354は、例えば、位置P722から位置P723までの範囲については、両脇の部分領域の心筋血流量に対する、位置P722から位置P723までの冠動脈における血管血流量「Qvessel722-Qvessel723」をそれぞれ算出することで、両脇の部分領域ごとの毛細血管抵抗指標を算出する。
【0072】
なお、
図5Bに示す分割の例はあくまでも一例であり、実施形態はこれに限定されるものではない。すなわち、分割する際の部分領域の数は、
図5Bに図示される数に限定されるものではなく、例えば、
図5Bに示す数以上の部分領域に分割される場合でもよく、或いは、
図5Bに示す数以下の部分領域に分割される場合でもよい。
【0073】
上述したように、本実施形態に係る取得機能352及び算出機能354は、冠動脈における血管血流量と心筋における心筋血流量から毛細血管抵抗指標を算出する。ここで、上述した毛細血管抵抗指標の算出は、心臓全体に対して適用することができる。すなわち、取得機能352及び算出機能354は、心臓全体の心筋と、分枝される全ての血管を含む右冠動脈(Right coronary artery:RCA)、左冠動脈前下行枝(Left anterior descending coronary artery:LAD)及び左冠動脈回旋枝(Left circumflex coronary artery:LCX)とを対象として、毛細血管抵抗指標を算出することができる。
【0074】
なお、毛細血管抵抗指標を算出する対象領域の設定及び、対象領域を分割するか否か、分割する場合の分割数などは、操作者によって任意に設定することができる。例えば、毛細血管抵抗指標を算出するごとに、任意に設定することができる。また、毛細血管抵抗指標を算出する対象領域ごとに条件が予め設定される場合であってもよい。かかる場合、例えば、心尖部における心筋領域を対象領域として設定された場合、RCA、LAD及びLCXの3本の血管における血管血流量を用いて毛細血管抵抗指標を算出するように、予め設定されている場合でもよい。
【0075】
また、上述した血管血流量及び心筋血流量は、ストレス状態及び安静状態のいずれの状態で取得される場合であってもよい。すなわち、本実施形態に係る取得機能352及び算出機能354は、ストレス状態での毛細血管抵抗指標及び安静状態での毛細血管抵抗指標を算出することができる。
【0076】
図1に戻って、判定機能355は、算出機能354によって算出された毛細血管抵抗指標に基づいて、対象領域の状態を判定する。例えば、判定機能355は、算出された毛細血管抵抗指標値と閾値とを比較することによって、心筋に対する血液の供給において微小循環が十分に保たれているか否かを判定する。一例を挙げると、判定機能355は、毛細血管抵抗指標値が所定の閾値よりも低い場合、毛細血管において血液の供給が阻害されていると判定する。
【0077】
また、例えば、判定機能355は、ストレス状態及び安静状態で算出した毛細血管抵抗指標を比較して、対象領域の状態を判定することもできる。一例を挙げると、判定機能355は、虚血が生じている領域におけるストレス状態及び安静状態で算出した毛細血管抵抗指標を比較して両者に違いがない場合には、冠動脈に障害が生じていると判定する。
【0078】
また、例えば、判定機能355は、毛細血管抵抗指標と、他の検査情報とを用いて、治療方針を判定することもできる。なお、治療方針の判定については、後に詳述する。
【0079】
上述したように、本実施形態に係る医用情報処理装置300は、心臓全体について、毛細血管抵抗指標を算出することができる。さらに、医用情報処理装置300は、算出した毛細血管抵抗指標を種々の形態で表示させることができる。すなわち、制御機能351が、算出機能354によって算出された毛細血管抵抗指標に関する情報をディスプレイ340にて表示させることができる。以下、
図6~
図16を用いて、本実施形態に係る毛細血管抵抗指標の表示形態の例を説明する。
図6~
図16は、第1の実施形態に係る毛細血管抵抗指標の表示形態の例を示す図である。
【0080】
例えば、制御機能351は、心筋領域及び冠動脈の少なくとも一方を含む医用画像上に算出機能354によって算出された毛細血管抵抗指標に関する情報を示した表示画像を表示させるように制御する。一例を挙げると、制御機能351は、
図6に示すように、心臓全体を示すボリュームレンダリング画像上の領域R1を、算出された毛細血管抵抗指標の値に応じた色で示したカラー画像を表示させる。
【0081】
かかる場合には、画像生成機能353が、例えば、取得されたCT画像データから心臓全体のボリュームレンダリング画像を生成する。制御機能351は、生成されたボリュームレンダリング画像の領域R1を、算出された毛細血管抵抗指標の値に応じた色で示したカラー画像を表示させる。なお、毛細血管抵抗指標に対する色の割り当ては任意に行うことができる。なお、
図6に示した例はあくまでも一例であり、表示画像としてその他種々の画像を用いることができる。例えば、サーフェスレンダリング画像が用いられる場合でもよい。
【0082】
また、制御機能351は、分割した範囲ごとにそれぞれ算出された毛細血管抵抗指標を色で示し、心筋領域又は冠動脈を示す3次元画像上に割り当てたカラー画像を表示させるように制御する。例えば、対象領域が部分領域に分割され、部分領域ごとの毛細血管抵抗指標が算出されと、制御機能351は、
図7Aに示すように、心筋を示すボリュームレンダリング画像上の領域R1について、分割された部分領域ごとに算出された毛細血管抵抗指標の値に応じた色で各部分領域を示したカラー画像を表示させる。
【0083】
また、例えば、対象領域が部分領域に分割され、部分領域ごとの毛細血管抵抗指標が算出されと、制御機能351は、
図7Bに示すように、冠動脈を示すボリュームレンダリング画像上の冠動脈の各範囲に対応する領域について、毛細血管抵抗指標の値に応じた色で各領域を示したカラー画像を表示させる。かかる場合には、画像生成機能353が、例えば、取得されたCT画像データから冠動脈のボリュームレンダリング画像を生成する。制御機能351は、生成されたボリュームレンダリング画像における冠動脈の各領域を、毛細血管抵抗指標の値に応じた色で示したカラー画像を表示させる。
【0084】
ここで、複数の部分領域を含む範囲を対象とする場合(例えば、
図5Aにおける部分領域R411及び部分領域R412を含む範囲を対象とする場合)、当該範囲における冠動脈の領域(例えば、
図5Aにおける位置P1から位置P61までの領域)に対して割り当てる毛細血管抵抗指標の値は、各部分領域における毛細血管抵抗指標の平均であってもよく、或いは、部分領域ごとの毛細血管抵抗指標のうち最も低い毛細血管抵抗指標であってもよい。
【0085】
また、細かい分割によって冠動脈に沿った複数の毛細血管抵抗指標が細かく算出された場合、制御機能351は、冠動脈の位置ごとの毛細血管抵抗指標を示すグラフを表示させることができる。例えば、制御機能351は、冠動脈を長軸方向に沿って2次元平面上に示した表示画像と、当該冠動脈の各範囲で算出された指標の変化を示すグラフとを、表示画像における位置とグラフにおける位置とを対応付けて表示させるように制御する。
【0086】
一例を挙げると、制御機能351は、
図8Aに示すように、縦軸に毛細血管抵抗指標を示し、横軸に冠動脈の位置を示したグラフを表示させる。さらに、制御機能351は、横軸の冠動脈の位置を合わせたSPR画像をグラフに対応付けて表示させる。かかる場合には、画像生成機能353が、例えば、毛細血管抵抗指標が算出された冠動脈のSPR画像をCT画像データから生成する。さらに、画像生成機能353は、生成したSPR画像の冠動脈における位置と、グラフの横軸における位置とが対応づく縮尺で毛細血管抵抗指標のグラフを生成する。制御機能351は、画像生成機能353によって生成されたグラフ及びSPR画像を、
図8Aに示すように対応付けて表示させる。
【0087】
また、さらに、制御機能351は、表示画像に心筋パーフュージョンの結果を表示させるように制御することもできる。例えば、制御機能351は、
図8Bに示すように、SPR画像の心筋領域を、取得機能352が算出した心筋血流量の結果に対応する色で示したカラー画像を表示させる。
【0088】
また、医用情報処理装置300は、心筋全体を表示させるために、ポーラーマップを用いることができる。例えば、制御機能351は、心筋を極座標表示させた表示画像上で、冠動脈及び心筋領域を識別可能に表示させ、分割した範囲ごとにそれぞれ算出された指標を色で示したカラー画像を表示させるように制御する。一例を挙げると、制御機能351は、
図9に示すように、心筋全体を極座標表示させたポーラーマップに対して冠動脈と毛細血管抵抗指標を算出した対象領域とを重畳させた表示画像を表示させる。
【0089】
かかる場合には、画像生成機能353が、ポーラーマップ上の位置に合わせた形状の冠動脈の画像と対象領域の画像とを生成する。そして、制御機能351が、生成された冠動脈の画像と対象領域の画像とを、ポーラーマップ上の対応する位置に重畳させて表示させる。ここで、制御機能351は、
図9に示すように、対象領域における各部分領域を、算出機能354によって算出された毛細血管抵抗指標の値に応じた色で示すことで、カラー画像を表示させる。
【0090】
上述したように、制御機能351は、毛細血管抵抗指標を種々の表示形態で表示させることできる。ここで、制御機能351は、上述した種々の形態の表示画像を適宜組み合わせて表示させることができる。例えば、制御機能351は、
図6~
図9に示す各表示画像全てを並べて表示させたり、各表示画像から選択された複数の表示画像を並べて表示させたりすることができる。
【0091】
ここで、制御機能351は、複数の表示画像を並べて表示させる場合、画像間での位置関係を示すマーカを表示させることができる。例えば、制御機能351は、カラー画像や、グラフ及びSPR画像、ポーラーマップなどを並べて表示させる際に、それら画像に対して略同一位置を指示するマーカを配置して表示させる。
【0092】
一例を挙げると、制御機能351は、
図10に示すように、縦軸に毛細血管抵抗指標を示し、横軸に冠動脈の位置を示したグラフ及び横軸の冠動脈の位置を合わせたSPR画像と、冠動脈のボリュームレンダリング画像を用いたカラー画像とを表示させる際に、冠動脈上の略同一位置を示すマーカM1及びマーカM2を表示させる。
【0093】
すなわち、制御機能351は、画像生成機能353によるSPR画像及びボリュームレンダリング画像の生成時の座標情報に基づいて、グラフ(SPR画像)の横軸の位置と、ボリュームレンダリング画像内の冠動脈の位置との位置関係の情報を取得する。そして、制御機能351は、取得した位置関係の情報に基づいて、冠動脈上の略同一位置を示すマーカM1をグラフ(或いは、SPR画像)の横軸に配置し、マーカM2をボリュームレンダリング画像における冠動脈に配置する。
【0094】
ここで、マーカの表示は、複数の表示画像が表示されると同時に開始される場合でもよく、或いは、入力インターフェース330を介した操作者によるマーカの表示開始指示に応じて開始される場合でもよい。また、マーカは、入力インターフェース330を介した操作者による移動指示に応じて移動される。すなわち、制御機能351は、入力インターフェース330を介したマーカの移動操作に応じた位置にマーカを移動させて表示させる。このとき、制御機能351は、各表示画像に配置された複数のマーカを連動して移動させる。例えば、操作者がマーカM1を移動させる操作を実行した場合に、制御機能351は、マーカM2も連動して移動させる。
【0095】
さらに、制御機能351は、冠動脈において指定された位置の短軸断面画像を表示させることもできる。例えば、制御機能351は、冠動脈に対してマーカを配置した際に、配置した位置における冠動脈の短軸断面画像をさらに表示させるように制御する。一例を挙げると、
図10に示すように、冠動脈におけるマーカM1が配置されると、まず、画像生成機能353が、マーカM1が配置された位置のクロスカット画像(芯線に直交する断面画像)を生成する。制御機能351は、SPR画像(或いは、グラフ)の横軸においてマーカM1に対応する位置に、生成された短軸断面画像を表示させる。
【0096】
上述した例では、毛細血管抵抗指標を種々の表示形態で表示させる場合について説明した。しかしながら、医用情報処理装置300は、毛細血管抵抗指標以外の指標値をさらに表示させることができる。
【0097】
例えば、制御機能351は、冠動脈を示す3次元画像と、心筋領域を示す3次元画像上に範囲ごとの指標を色で示したカラー画像とを重畳表示させ、冠動脈における位置を指示するマーカと、当該マーカの位置における冠血流予備量比とをさらに表示させるように制御する。一例を挙げると、制御機能351は、
図11に示すように、冠動脈を示すボリュームレンダリング画像と毛細血管抵抗指標を算出した領域R6のボリュームレンダリング画像とを重畳した重畳画像にマーカM3を表示させる。そして、制御機能351は、マーカM3におけるFFRの値「0.8」をさらに表示させる。
【0098】
すなわち、制御機能351は、取得機能352による流体解析の結果からマーカM3の位置におけるFFRの値を取得して、重畳画像のマーカM3の位置に表示させる。ここで、マーカM3の位置は、入力インターフェース330を介した操作者による移動操作によって移動される。制御機能351は、移動操作によってマーカM3が移動されるごとに、移動後のマーカM3の位置のFFRの値を取得して、重畳画像のマーカM3の位置に表示させる。
【0099】
また、例えば、制御機能351は、冠動脈を示す3次元画像と、冠動脈における位置を指示するマーカと、当該マーカの位置における毛細血管抵抗指標及び冠血流予備量比とを表示させるように制御する。一例を挙げると、制御機能351は、
図12に示すように、冠動脈を示すボリュームレンダリング画像にマーカM3とマーカM4とを表示させる。そして、制御機能351は、マーカM3におけるFFRの値「0.8」とマーカM4における毛細血管抵抗指標に値「0.9」をさらに表示させる。
【0100】
ここで、マーカM3及びマーカM4の位置は、入力インターフェース330を介した操作者による移動操作によって移動される。制御機能351は、移動操作によってマーカM3が移動されるごとに、移動後のマーカM3の位置のFFRの値を取得して、ボリュームレンダリング画像のマーカM3の位置に表示させる。また、制御機能351は、移動操作によってマーカM4が移動されるごとに、移動後のマーカM4の位置の毛細血管抵抗指標の値、ボリュームレンダリング画像のマーカM4の位置に表示させる。なお、マーカM3及びマーカM4は、どちらか一方の移動操作に連動して他方も移動するように制御させることが可能である。すなわち、マーカM3及びマーカM4は、それぞれ別々に移動させることができるとともに、連動して移動させることもできる。
【0101】
また、例えば、制御機能351は、心筋を極座標表示させた表示画像上に心筋パーフュージョンの結果を表示させるとともに、当該表示画像に含まれる心筋領域において毛細血管抵抗指標が閾値より低い領域を識別可能に表示させるように制御する。一例を挙げると、制御機能351は、
図13に示すように、心筋パーフュージョンによって得られた心筋血流量の値に応じた色をポーラーマップに割り当て、さらに、毛細血管抵抗指標が閾値より低い領域を識別可能に表示させる。ここで、制御機能351は、例えば、閾値より低い領域を枠で囲んだり、別の色でマスクしたりすることによって、識別可能に表示させる。
【0102】
また、例えば、制御機能351は、心筋を示す3次元画像上に心筋パーフュージョンの結果を表示させるとともに、当該3次元画像に含まれる心筋領域において指標が閾値より低い領域を識別可能に表示させるように制御する。一例を挙げると、制御機能351は、
図14に示すように、心筋パーフュージョンによって得られた心筋血流量の値に応じた色をポーラーマップに割り当て、さらに、毛細血管抵抗指標が閾値より低い領域を識別可能に表示させる。ここで、制御機能351は、例えば、閾値より低い領域を枠で囲んだり、別の色でマスクしたりすることによって、識別可能に表示させる。
【0103】
また、例えば、制御機能351は、冠動脈を示す3次元画像を表示させ、3次元画像に対する冠動脈における位置を指定する指定操作を受け付けた場合に、受け付けた位置における冠血流予備量比、受け付けた位置の冠動脈によって血液が供給される心筋領域における心筋パーフュージョンの結果、受け付けた位置における毛細血管抵抗指標、及び、受け付けた位置の画素値に基づく値を並べて表示させるように制御する。すなわち、制御機能351は、冠動脈上で位置が指定された場合に、種々の指標を同時に表示させることができる。
【0104】
一例を挙げると、制御機能351は、
図15に示すように、冠動脈のボリュームレンダリング画像内の冠動脈に対して、冠動脈における位置を指定するためのマーカM5を配置して表示する。そして、制御機能351は、マーカM5の位置における「FFR:aaa」、「MBF:bbb」、「毛細血管抵抗指標:ccc」及び「TAG:ddd」を並べて表示させる。
【0105】
なお、MBF(Myocardial Blood Flow)は、心筋血流量であり、マーカM5の位置に隣接する心筋における心筋血流量が表示される。また、TAG(Transluminal Attenuation Gradient)は、冠動脈における画素値(HU値)に基づく値であり、冠動脈の芯線に沿った上流側から下流側への距離を横軸にとり、各距離におけるHU値を縦軸にとったグラフにおける傾き(HU値の空間的な変化率)である。
【0106】
例えば、造影剤が注入されて冠動脈上の2点間の距離を造影剤が移動する際に血流が遅いほど時間がかかるため、病変によって血流が低下している血管の方が造影効果の差が大きくなり、血流が遅いほどTAGが大きくなる。なお、TAGは、冠動脈造影CT画像データを用いて、取得機能352によって算出される。
【0107】
また、例えば、制御機能351は、心筋を示す3次元画像を表示させ、3次元画像に対する心筋領域を指定する指定操作を受け付けた場合に、受け付けた心筋領域に対して血液を供給する冠動脈における冠血流予備量比、受け付けた心筋領域における心筋パーフュージョンの結果、及び、受け付けた心筋領域における毛細血管抵抗指標を並べて表示させるように制御する。
【0108】
一例を挙げると、制御機能351は、
図16に示すように、心臓のボリュームレンダリング画像内の心筋に対して毛細血管抵抗指標を算出する領域R1が指定された場合、領域R1に血液を供給する冠動脈の位置P1における「FFR:eee」、領域R1における「MBF:fff」及び領域R1における「毛細血管抵抗指標:ggg」を並べて表示させる。
【0109】
また、例えば、制御機能351は、並べて表示させた各表示項目と、表示項目ごとに設定された閾値との比較結果に基づいて、受け付けた位置及び受け付けた心筋領域の少なくとも一方に対する推奨の治療方針を表示させる。例えば、制御機能351は、
図15や、
図16に示すように、複数の表示項目(FFRや、MBFなど)を並べて表示させた際に、推奨の治療方針を表示させることができる。
【0110】
かかる場合には、まず、判定機能355が、各表示項目をそれぞれ閾値と比較することで、推奨の治療方針を判定する。例えば、判定機能355は、
図17に示す判定基準に基づいて、推奨の治療方針を判定する。
図17は、第1の実施形態に係る治療方針を判定するための判定基準の一例を説明するための図である。ここで、
図17においては、FFRと、MBFと、毛細血管抵抗指標とを用いた治療方針の判定に用いられる判定基準を示す。また、
図17における上向き矢印(↑)は閾値よりも高いことを示し、下向き矢印(↓)は閾値よりも低いことを示す。
【0111】
なお、
図17に示すような判定基準は、予め設定されて記憶回路320に記憶される。すなわち、判定機能355は、判定に際して、記憶回路320に記憶された判定基準を参照して判定を行う。また、各表示項目の判定に用いられる各閾値は、操作者などによって予め設定される。
【0112】
例えば、判定機能355は、
図17に示すように、「FFR:↓、MBF:↓、毛細血管抵抗指標:↑」である場合、「推奨治療」として「カテーテル治療」を判定する。また、判定機能355は、
図17に示すように、「FFR:↑、MBF:↓、毛細血管抵抗指標:↓」である場合、「推奨治療」として「薬物治療」を判定する。また、判定機能355は、
図17に示すように、「FFR:↓、MBF:↑、毛細血管抵抗指標:↑」である場合、「推奨治療」として「治療不要」を判定する。また、判定機能355は、
図17に示すように、「FFR:↓、MBF:↓、毛細血管抵抗指標:↓」である場合、「推奨治療」として「カテーテル治療」及び「薬物治療」を判定する。
【0113】
制御機能351は、判定機能355によって判定された結果(推奨治療)を、表示画像における各表示項目にさらに対応付けて表示させる。上述した推奨治療の判定は、冠動脈の位置ごと、或いは、心筋領域ごとに実行することができる。すなわち、操作者が、入力インターフェース330を用いてマーカM5を移動させたり、毛細血管抵抗指標を算出する対象領域を指定したりするごとに、判定機能355が、移動後の位置ごとに推奨の治療方針を判定し、制御機能351が、判定結果を表示させる。
【0114】
なお、
図17に示す判定基準はあくまでも一例であり、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、閾値と比較する項目としてTAGや、その他の指標が用いられる場合でもよい。
【0115】
次に、第1の実施形態に係る医用情報処理装置300による処理の手順について説明する。
図18は、第1の実施形態に係る医用情報処理装置300による処理手順を示すフローチャートである。ここで、
図18におけるステップS101、ステップS111は、例えば、処理回路350が制御機能351に対応するプログラムを記憶回路320から呼び出して実行することにより実現される。また、ステップS103~ステップS108は、例えば、処理回路350が取得機能352に対応するプログラムを記憶回路320から呼び出して実行することにより実現される。また、ステップS109は、例えば、処理回路350が算出機能354に対応するプログラムを記憶回路320から呼び出して実行することにより実現される。また、ステップS102、ステップS110は、例えば、処理回路350が制御機能351及び画像生成機能353に対応するプログラムを記憶回路320から呼び出して実行することにより実現される。
【0116】
本実施形態に係る医用情報処理装置300では、まず、処理回路350が、CT画像データを取得する(ステップS101)。そして、処理回路350が、CT画像データから心臓の画像を生成して表示する(ステップS102)。そして、処理回路350は、冠動脈に対する位置の指定を受け付けたか否かを判定する(ステップS103)。ここで、冠動脈に対する位置の指定を受け付けた場合(ステップS103肯定)、処理回路350は、指定された冠動脈が血液を供給する心筋領域を特定し(ステップS104)、指定された冠動脈における血管血流量及び特定した心筋領域における心筋血流量を算出する(ステップS105)。
【0117】
一方、ステップS103において、冠動脈に対する位置の指定を受けていない場合(ステップS103否定)、処理回路350は、心筋に対する領域の指定を受け付けたか否かを判定する(ステップS106)。ここで、心筋に対する領域の指定を受け付けた場合(ステップS106肯定)、処理回路350は、指定された心筋領域に対して血液を供給する冠動脈を特定し(ステップS107)、指定された心筋領域における心筋血流量及び特定した冠動脈における血管血流量を算出する(ステップS108)。なお、ステップS106において、心筋に対する領域の指定を受け付けていない場合(ステップS106否定)、処理回路350は、ステップS103に戻って、判定を継続する。
【0118】
ステップS105又はステップS108において、血管血流量及び心筋血流量を算出すると、処理回路350は、血管血流量及び心筋血流量を用いて毛細血管抵抗指標を算出する(ステップS109)。そして、処理回路350は、算出した毛細血管抵抗指標に関する情報を生成して、表示する(ステップS110)。その後、処理回路350は、毛細血管抵抗指標の算出が終了されたか否かを判定して(ステップS111)、終了された場合に(ステップS111肯定)、処理を終了する。一方、終了されていない場合(ステップS111否定)、処理回路350は、ステップS103に戻って、判定を継続する。
【0119】
上述したように、第1の実施形態によれば、取得機能352は、冠動脈における血管血流量と、冠動脈によって血液が供給される心筋領域における心筋血流量とを取得する。算出機能354は、血管血流量と心筋血流量とを組み合わせて、心筋領域に対して血液を供給する毛細血管における毛細血管抵抗量を示す指標を算出する。従って、第1の実施形態に係る医用情報処理装置300は、冠動脈から心筋領域への血液の供給能(冠動脈と心筋との間にある毛細血管における血液の流れの阻害度合い)を算出することができ、毛細血管における抵抗を評価することができる指標を提供することを可能にする。
【0120】
例えば、心筋虚血を診断するための指標として、CFR(Coronary Flow Reserve)が知られている。本願にかかる毛細血管抵抗指標は、臨床的にこのCFRと似た意味合いをもつものである。しかしながら、CFRは、ストレス状態の心筋血流量と安静状態の心筋血流量との比であるため、CT画像データからこれらを算出するためには、ストレス状態と安静状態で2回の撮影を行うこととなり、被ばく量が多くなる。また、CFRを算出するためには、血管をストレス状態とするために血管拡張剤を用いるため、被検体に対して負担がかかる。
【0121】
これに対して、本願にかかる毛細血管抵抗指標は、複数心拍分の複数時相のCT画像データを取得することで、算出させることができ、被ばく量を抑制することができる。また、本願にかかる毛細血管抵抗指標は、安静状態で算出することができるため、被検体に対して薬物投与の負担をかけずに済む。すなわち、本願に係る毛細血管抵抗指標は、血管拡張剤を投与することができない被検体でも算出することができる。
【0122】
また、本願にかかる毛細血管抵抗指標は、種々の手法によって算出することができる冠動脈の血管血流量と心筋血流量とを用いるため、様々な被検体において算出させることができる。
【0123】
また、第1の実施形態によれば、取得機能352は、複数本の冠動脈における複数の血管血流量と、複数本の冠動脈によって血液がそれぞれ供給される複数の心筋領域における複数の心筋血流量をまとめた単一の心筋血流量とを取得する。算出機能354は、複数の血管血流量と単一の心筋血流量とを組み合わせて毛細血管抵抗指標を算出する。従って、第1の実施形態に係る医用情報処理装置300は、冠動脈から心筋への血液の供給をより正確に反映させた毛細血管抵抗指標を提供することを可能にする。
【0124】
また、第1の実施形態によれば、取得機能352は、心筋領域に対して血液を供給する冠動脈の範囲の上流側端部における血管血流量及び下流側端部における血管血流量と、指定された心筋領域における心筋血流量とを取得する。算出機能354は、上流側端部における血管血流量と下流側端部における血管血流量との差分と、指定された心筋領域における心筋血流量とを組み合わせて毛細血管抵抗指標を算出する。従って、第1の実施形態に係る医用情報処理装置300は、より精度の高い毛細血管抵抗指標を提供することを可能にする。
【0125】
また、第1の実施形態によれば、取得機能352は、冠動脈及び冠動脈によって血液が供給される心筋領域を複数の範囲に分割し、分割した範囲ごとに、範囲の上流側端部における血管血流量及び下流側端部における血管血流量と、当該範囲に対応する心筋領域における心筋血流量とをそれぞれ取得する。算出機能354は、上流側端部における血管血流量と下流側端部における血管血流量との差分と、範囲に対応する心筋領域における心筋血流量とを組み合わせて、分割した範囲ごとに毛細血管抵抗指標をそれぞれ算出する。従って、第1の実施形態に係る医用情報処理装置300は、より細かい領域について毛細血管抵抗指標を提供することを可能にする。
【0126】
また、第1の実施形態によれば、制御機能351は、心筋領域及び冠動脈の少なくとも一方を含む医用画像上に算出機能354によって算出された毛細血管抵抗指標に関する情報を示した表示画像を表示させるように制御する。従って、第1の実施形態に係る医用情報処理装置300は、毛細血管抵抗指標について、よりわかりやすい情報を提供することを可能にする。
【0127】
また、第1の実施形態によれば、制御機能351は、分割した範囲ごとにそれぞれ算出された毛細血管抵抗指標を色で示し、心筋領域又は冠動脈を示す3次元画像上に割り当てたカラー画像を表示させるように制御する。従って、第1の実施形態に係る医用情報処理装置300は、各領域における毛細血管抵抗指標について、よりわかりやすい情報を提供することを可能にする。
【0128】
また、第1の実施形態によれば、制御機能351は、冠動脈を長軸方向に沿って2次元平面上に示した表示画像と、当該冠動脈の各範囲で算出された毛細血管抵抗指標の変化を示すグラフとを、表示画像における位置とグラフにおける位置とを対応付けて表示させるように制御する。従って、第1の実施形態に係る医用情報処理装置300は、心筋の性状と毛細血管抵抗指標との関係をよりわかりやすく表示させることを可能にする。
【0129】
また、第1の実施形態によれば、制御機能351は、表示画像に心筋パーフュージョンの結果を表示させるように制御する。従って、第1の実施形態に係る医用情報処理装置300は、心筋血流量と毛細血管抵抗指標との関係について、よりわかりやすい情報を提供することを可能にする。
【0130】
また、第1の実施形態によれば、制御機能351は、心筋を極座標表示させた表示画像上で、冠動脈及び心筋領域を識別可能に表示させ、分割した範囲ごとにそれぞれ算出された指標を色で示したカラー画像を表示させるように制御する。従って、第1の実施形態に係る医用情報処理装置300は、心筋全体を把握させながら、対象領域の毛細血管抵抗指標について、よりわかりやすい情報を提供することを可能にする。
【0131】
また、第1の実施形態によれば、制御機能351は、分割した範囲ごとにそれぞれ算出された毛細血管抵抗指標を色で示し、心筋領域又は冠動脈を示す3次元画像上に割り当てた第1のカラー画像、冠動脈を長軸方向に沿って2次元平面上に示した表示画像及び当該冠動脈の各範囲で算出された毛細血管抵抗指標の変化を示すグラフ、及び、心筋を極座標表示させた表示画像上で、冠動脈及び心筋領域を識別可能に表示させ、分割した範囲ごとにそれぞれ算出された毛細血管抵抗指標を色で示した第2のカラー画像のうち少なくとも2つを表示させるように制御する。さらに、制御機能351は、表示させた第1のカラー画像、表示画像及びグラフ、及び、第2のカラー画像のうち少なくとも2つに対して、略同一位置を指示するマーカを配置して表示させるように制御する。従って、第1の実施形態に係る医用情報処理装置300は、複数の表示画像を比較して診断することができるとともに、複数の画像間において位置関係を明瞭にすることを可能にする。また、心筋と冠動脈の形態と毛細血管抵抗指標とを比較して観察することができるため、虚血と心筋梗塞とを見極めて治療方針を決定することを可能にする。
【0132】
また、第1の実施形態によれば、制御機能351は、冠動脈に対してマーカを配置した際に、配置した位置における冠動脈の短軸断面画像をさらに表示させるように制御する。従って、第1の実施形態に係る医用情報処理装置300は、より詳細な形態情報を提供することを可能にする。
【0133】
また、第1の実施形態によれば、制御機能351は、冠動脈を示す3次元画像と、心筋領域を示す3次元画像上に範囲ごとの毛細血管抵抗指標を色で示したカラー画像とを重畳表示させ、冠動脈における位置を指示するマーカと、当該マーカの位置における冠血流予備量比とをさらに表示させるように制御する。従って、第1の実施形態に係る医用情報処理装置300は、毛細血管抵抗指標とFFRの値とを比較して観察することを可能にする。
【0134】
また、第1の実施形態によれば、制御機能351は、冠動脈を示す3次元画像と、冠動脈における位置を指示するマーカと、当該マーカの位置における毛細血管抵抗指標及び冠血流予備量比とを表示させるように制御する。従って、第1の実施形態に係る医用情報処理装置300は、毛細血管抵抗指標とFFRの値とを比較して観察することを可能にする。
【0135】
また、第1の実施形態によれば、制御機能351は、心筋を極座標表示させた表示画像上に心筋パーフュージョンの結果を表示させるとともに、当該表示画像に含まれる心筋領域において毛細血管抵抗指標が閾値より低い領域を識別可能に表示させるように制御する。また、制御機能351は、心筋を示す3次元画像上に心筋パーフュージョンの結果を表示させるとともに、当該3次元画像に含まれる心筋領域において毛細血管抵抗指標が閾値より低い領域を識別可能に表示させるように制御する。従って、第1の実施形態に係る医用情報処理装置300は、心筋血流量の結果と、毛細血管抵抗指標とを比較観察できるため、再灌流によって復活する心筋領域を特定して治療方針を決定することを可能にする。
【0136】
また、第1の実施形態によれば、制御機能351は、冠動脈を示す3次元画像を表示させ、3次元画像に対する冠動脈における位置を指定する指定操作を受け付けた場合に、受け付けた位置における冠血流予備量比、受け付けた位置の冠動脈によって血液が供給される心筋領域における心筋パーフュージョンの結果、受け付けた位置における毛細血管抵抗指標、及び、受け付けた位置の画素値に基づく値を並べて表示させるように制御する。また、制御機能351は、心筋を示す3次元画像を表示させ、3次元画像に対する心筋領域を指定する指定操作を受け付けた場合に、受け付けた心筋領域に対して血液を供給する冠動脈における冠血流予備量比、受け付けた心筋領域における心筋パーフュージョンの結果、及び、受け付けた心筋領域における指標を並べて表示させるように制御する。従って、第1の実施形態に係る医用情報処理装置300は、特定の指標だけでは判断することが難しい虚血の原因を特定し、治療方針を決定することを可能にする。
【0137】
また、第1の実施形態によれば、制御機能351は、並べて表示させた各表示項目と、表示項目ごとに設定された閾値との比較結果に基づいて、受け付けた位置及び受け付けた心筋領域の少なくとも一方に対する推奨の治療方針を表示させる。従って、第1の実施形態に係る医用情報処理装置300は、治療方針の決定を支援することを可能にする。
【0138】
また、第1の実施形態によれば、算出機能354は、血管血流量と心筋血流量との比率に基づく毛細血管抵抗指標を算出する。従って、第1の実施形態に係る医用情報処理装置300は、毛細血管の抵抗を評価するための指標を容易に提供することを可能にする。
【0139】
(第2の実施形態)
さて、これまで第1の実施形態について説明したが、上述した第1の実施形態以外にも、種々の異なる形態にて実施されてよいものである。
【0140】
上述した実施形態では、血管血流量と心筋血流量との比率に基づいて毛細血管抵抗指標を算出する場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、対数比をとる、分母や分子に係数を加算・乗算するなど、2つの値を使用して算出するものであればよい。
【0141】
一例を挙げると、血液の流速や、血液の粘性、心臓全体の駆出率・駆出量などを補正係数として掛けあわせてもよい。かかる場合には、算出機能354は、取得機能352による流体解析の結果から流速や粘性の情報を取得する。また、算出機能354は、1心拍以上における複数時相で収集された経時的なCT画像データに基づいて、心臓全体の駆出率・駆出量を算出する。
【0142】
ここで、算出機能354は、血液の流速を用いる場合、例えば、流速が速い場合に毛細血管抵抗指標が低くなるように、血液の流速を補正係数として用いる。また、算出機能354は、血液の粘性を用いる場合、例えば、粘性が高い場合に毛細血管抵抗指標が低くなるように、血液の粘性を補正係数として用いる。ここで、補正係数として血液の粘性を用いた場合、例えば、生活習慣病の改善などによって血液の粘性が低くなった場合の心筋血流量の変化も計算することができる。また、算出機能354は、心臓全体の駆出率・駆出量を用いる場合、例えば、心臓全体の駆出率・駆出量の変化に伴って毛細血管抵抗指標が規則的に変化するように、心臓全体の駆出率・駆出量を補正係数として用いる。
【0143】
また、上述した実施形態では、毛細血管抵抗指標をそのまま用いた情報を表示する場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、毛細血管抵抗指標に対して他の係数などを掛けた値を用いる場合でもよい。一例を挙げると、算出機能354は、算出した毛細血管抵抗指標に対して「細胞間の血液の伝わりやすさ」を示す指標値を掛けた値を用いて、上述した種々の表示情報を表示してもよい。これにより、医用情報処理装置300は、心筋梗塞領域とその進行具合を示す情報を提供することを可能にする。
【0144】
また、上述した実施形態では、SPR画像やポーラーマップに対して心筋パーフュージョンの結果を用いる場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、代わりに心筋の機能指標を示す他の値を用いる場合でもよい。例えば、心臓を超音波撮像することによって心筋の局所的な動きを抽出し、動きの大きさを心筋パーフュージョンの結果の代わりに用いる場合でもよい。
【0145】
また、本願に係る医用情報処理装置300は、算出した血管血流量及び心筋血流量を用いて機械学習を行うこともできる。例えば、医用情報処理装置300は、血管血流量及び心筋血流量と、対象領域におけるCFRの値との関係を機械学習することにより、識別器を構築する。構築された識別器は、新たな血管血流量及び心筋血流量の入力に対して、CFRの値を出力する。これにより、血管血流量及び心筋血流量からCFRを推測することを可能にする。すなわち、被ばく量の増大や、血管拡張剤の投与を回避しつつ、CFRの値を取得することを可能にする。なお、上述した機械学習では、CFRの代わりに、毛細血管抵抗試験などによって計測された値が用いられる場合でもよい。
【0146】
また、上述した実施形態では、医用情報処理装置300単体で各種処理を実行する場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではなく、例えば、処理回路350は、ネットワークを介して接続された外部装置のプロセッサを利用して、機能を実現することとしてもよい。例えば、処理回路350は、記憶回路320から各機能に対応するプログラムを読み出して実行するとともに、医用情報処理装置300とネットワークを介して接続されたサーバ群(クラウド)を計算資源として利用することにより、
図1に示す各機能を実現する。また、例えば、記憶回路320は、医用情報処理装置300とネットワークを介して接続されたサーバ群(クラウド)により実現されることとしてもよい。
【0147】
上述した実施形態では、単一の処理回路(処理回路350)によって各処理機能が実現される場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、処理回路350は、複数の独立したプロセッサを組み合わせて構成され、各プロセッサが各プログラムを実行することにより各処理機能を実現するものとしても構わない。また、処理回路350が有する各処理機能は、単一又は複数の処理回路に適宜に分散又は統合されて実現されてもよい。
【0148】
また、上述した各実施形態の説明で用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。ここで、記憶回路にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むように構成しても構わない。この場合には、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。また、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて一つのプロセッサとして構成され、その機能を実現するようにしてもよい。
【0149】
ここで、プロセッサによって実行されるプログラムは、ROM(Read Only Memory)や記憶回路等に予め組み込まれて提供される。なお、このプログラムは、これらの装置にインストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD(Compact Disk)-ROM、FD(Flexible Disk)、CD-R(Recordable)、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記録されて提供されてもよい。また、このプログラムは、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納され、ネットワーク経由でダウンロードされることにより提供又は配布されてもよい。例えば、このプログラムは、後述する各機能部を含むモジュールで構成される。実際のハードウェアとしては、CPUが、ROM等の記憶媒体からプログラムを読み出して実行することにより、各モジュールが主記憶装置上にロードされて、主記憶装置上に生成される。
【0150】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、毛細血管における抵抗を評価することができる指標を提供することができる。
【0151】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0152】
300 医用情報処理装置
351 制御機能
352 取得機能
353 画像生成機能
354 算出機能
355 判定機能