(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】ポリアミド系高密度編地
(51)【国際特許分類】
D04B 21/00 20060101AFI20240408BHJP
【FI】
D04B21/00 B
(21)【出願番号】P 2019081681
(22)【出願日】2019-04-23
【審査請求日】2022-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】305037123
【氏名又は名称】KBセーレン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】▲神▼田 彬史
(72)【発明者】
【氏名】吉田 和広
【審査官】印出 亮太
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-256727(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 13/00 - 13/12
A41D 20/00
A41D 31/00 - 31/32
D04B 1/00 - 1/28
D04B 21/00 - 21/20
D06B 1/00 - 23/30
D06C 3/00 - 29/00
D06G 1/00 - 5/00
D06H 1/00 - 7/24
D06J 1/00 - 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド系繊維としてポリエステルとポリアミドの分割型複合繊維とナイロン6からなる繊維を用いた経編物
であって、下記物性を同時に満足することを特徴とするポリアミド系高密度編物。
(1)JIS L 1096 8.26.1 A法(フラジール形法)による通気度が、20cc/cm
2・秒以下
(2)JIS L 1092 7.1.1 A法に(低水圧法)よる耐水度が、250mmH
2O/cm
2以上
(3)JIS L 1099 7.1.1 A―1法(塩化カルシウム法)による透湿度が、6000g/m
2・24h以上
(4)JIS L 1096 8.16.1の伸び率A法による伸長率が、タテ方向・ヨコ方向ともに5%以上である
【請求項2】
JIS L 1096 8.21.1 A法(45°カンチレバー法)による剛軟度が、タテ方向・ヨコ方向ともに10~80mmであることを特徴とする請求項1記載のポリアミド系高密度編物。
【請求項3】
編目密度が、4000個/inch
2((2.54cm)
2)以上であることを特徴とする請求項1又は2記載のポリアミド系高密度編物。
【請求項4】
樹脂コーティング加工及びラミネート加工をしない請求項1~3いずれか1項に記載のポリアミド系高密度編物。
【請求項5】
ポリエステルとポリアミドの分割型複合繊維とナイロン6からなる繊維を用いて28ゲージ以上のハイゲージ編機を使用して経編に編成して経編物を得た後、得られた経編物に膨潤剤を付与し、熱を加えることで、膨潤・収縮加工を行う請求項1~4いずれか1項に記載のポリアミド系高密度編物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣料用素材に適したポリアミド系高密度編地に関する。
【背景技術】
【0002】
衣料用素材は年々市場のニーズと素材の組み合わせが非常に複雑になってきている分野である。なかでもアウター用衣料に関しては古くから歴史があり、防風性を重視したラミネート素材や樹脂コーティング素材が広く知られ、高密度繊維構造物で透湿性や防風性に感性も重視する素材へと発展している。
例えば、ポリアミド系繊維を用いた平織物を10%以上収縮させて、防水・透湿性を有する高密度繊維構造物が提案されている(特許文献1参照)。また、単糸繊度の異なるマルチフィラメントからなる複合糸を用いた、防風機能・撥水機能を兼ね備えた高密度編地が提案されている(特許文献2参照)。また、編地に樹脂コートすることにより、ダウンの吹き出しを防止するとともに、防風性能を兼ね備えたストレッチコート編地が提案されている(特許文献3参照)。
また、近年は着用時の快適性や取扱いの容易さからストレッチ性を有する素材が非常に注目されており、スポーツなどの体を動かす分野以外にも大きな広がりを見せている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平3-14648号公報
【文献】特許第2936759号公報
【文献】特開2012-7273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、アウター素材に関しては、防風性や耐水性の観点から緻密な構造が求められるため、上記のような、ラミネート素材や樹脂コーティング素材の2次加工素材や高密度化した織物が中心であり、編物ではまだ満足のいく素材が得られていない。その理由は、1つは編物の基本構造がループ構造であるからである。編物はこのループ構造が3次元的に重なり形成しているため、直線構造が基本である織物のように緻密な高密度素材とするのが難しい。一部には高密度化した編物も存在するが、高密度化により防風性や耐水性は得られるものの、ストレッチ性のない布帛となる。現在編地単体でストレッチ性と高密度化が両立された素材は非常に難しく、ラミネート加工や樹脂コーティング加工の2次加工を含んだものづくりが中心である(特許文献3参照)。
したがって、本発明は、上記のような問題を解消し、防風性、耐水性、透湿性に優れながら、ストレッチ性を有する衣料用素材に適したポリアミド系高密度編地を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の目的は、ポリアミド系繊維を用いた経編物であり、下記物性を同時に満足することを特徴とするポリアミド系高密度編物によって達成される。
(1)通気度が、20cc/cm2・秒以下
(2)耐水度が、250mmH2O/cm2以上
(3)透湿度が、6000g/m2・24h以上
(4)伸長率が、タテ方向・ヨコ方向ともに5%以上である
【0006】
また、本発明は、剛軟度が、タテ方向・ヨコ方向ともに10~80mmであることが好ましい。
また、本発明は、編目密度が、4000個/inch2((2.54cm)2)以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明のポリアミド系高密度編物は、防風性、耐水性、透湿性に優れながら、ストレッチ性のある衣料用素材に適した高密度編物である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のポリアミド系高密度編地は、ポリアミド系繊維を用いて編成された経編地であり、特定の通気度、耐水度、透湿度及び伸長率を有する。本発明のポリアミド系高密度編地は、編地に含まれるポリアミド系繊維への膨潤・収縮処理を行い、必要に応じて撥水加工を施した編地である。
【0009】
本発明に用いるポリアミド系繊維は、ポリアミド繊維または複合繊維が挙げられる。
ポリアミド繊維とは主鎖の繰り返し単位中にアミド結合を有する重合体で、熱可塑性樹脂であるものをさす。ここでポリアミド繊維としては、例えば、ナイロン4、ナイロン6、ナイロン7、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66、ナイロン6.10、ポリメタキシレンアジパミド、ポリパラキシリレンデカンアミド、ポリビスシクロヘキシルメタンデカンアミド等及びそれらを成分とするコポリアミド等のポリマーからなる繊維が挙げられる。好ましくは、6ナイロンや66ナイロン繊維がよい。また、風合いや緻密性を求める点からハイマルチのフィラメントであることが望ましい。
さらに、単糸繊度についても風合いや緻密性を求める点から好ましくは2.5dtex以下であり、さらに好ましくは1.5dtex以下である。
また、総繊度は、11~110dtexが好ましい。総繊度が細いと生地の強度が低下する恐れがあり、総繊度が太いと編立時に編針への負荷が大きく操業性を阻害する恐れがある。さらに好ましくは22~84dtexである。
【0010】
本発明に用いる複合繊維は、コンジュゲートファイバ(JIS用語にも記載)をさす。詳しくは性質の異なる2種類以上のポリマーを口金で複合した繊維である。本発明においては、ポリアミド系複合繊維として、ポリアミドとポリエステルとの組合せからなるポリアミド系複合繊維が好適である。
ポリアミドとしては、前記ポリマーが挙げられ、ポリエステルとしては、後記ポリエステル繊維に使用されるポリマーが挙げられる。なお、ポリエステルは、水またはアルカリ溶液により溶解しないポリマーが好ましい。
【0011】
具体的にはポリアミド及びポリエステルが、単一フィラメントの横断面において一方の成分が他方の成分を完全に包囲しない形状で、単一フィラメントの長手方向に沿って接合されているものをいい、具体的には横断面が、サイドバイサイド型の複合繊維、サイドバイサイド繰り返し型の複合繊維、放射型の形状を有する成分と該放射部を補完する形状を有する他の成分からなる複合繊維、放射型の形状を有する成分と該放射部を補完し且つ中心方向に向いたV字型の凹部のある形状を有する他の成分と該凹部を補完するV字型の形状を有する成分と同じ成分からなる複合繊維、中空部分のあるサイドバイサイド繰り返し型複合繊維等が挙げられる。これらの複合繊維のうち、単糸繊度が0.5dtex以下の極細フィブリルが得易いという点から、中空部分のある又はないサイドバイサイド繰り返し型の横断面を有する複合繊維、及び横断面が放射型の形状を有する成分のある複合繊維が好適であり、複合繊維製造面では両者の内、繊維断面形態の安定性の点から横断面が放射型の形状を有する成分のある複合繊維が有利である。
【0012】
前記の通り、ポリアミド系複合繊維は、フィブリル化後の単糸繊度が、0.5dtex以下であることが好ましい。
また、総繊度は、11~110dtexが好ましい。総繊度が細いと生地の強度が低下する恐れがあり、総繊度が太いと編立時に編針への負荷が大きく操業性を阻害する恐れがある。さらに好ましくは33~84dtexである。
【0013】
前記ポリアミド繊維や複合繊維は長繊維が好適である。合成繊維を短繊維にすることはコストがかかり、編地編成時に風綿の懸念もあるため、長繊維であることが望ましい。
【0014】
本発明の高密度編物に含まれるポリアミド系繊維の混率は15質量%以上とする事が好ましい。本発明では編地を編成したのち、ポリアミド系繊維への膨潤・収縮処理を行う。ここで編地に対しポリアミド系繊維の混率が15質量%未満の場合には、ポリアミド系繊維の膨潤・収縮処理による高密度化が低下する恐れがある。一方でポリアミド系繊維が高混率の場合は、ポリアミド系繊維への膨潤・収縮処理を行うと非常に高密度化した布帛が得られやすくなる。ポリアミド系繊維の混率に関し、好ましくは25質量%以上であり、さらに好ましくは50質量%以上、ストレッチ性が維持されるのであれば100質量%でも問題はない。
【0015】
ポリアミド系繊維の混率が15質量%以上の高密度編物とするにあたって、使用するポリアミド系繊維は、ポリアミド繊維のみまたはポリアミド系複合繊維のみ、またはこれらを組合せてもよく、特に、両者を組合せると、編地の長さ方向・幅方向・厚み方向にポリアミド系繊維が配置された編地が形成されるため、より安定した高密度編物を得やすくなる点で好適である。
【0016】
また、本発明の目的を損なわない範囲で、ポリアミド系繊維に、ポリエステル系繊維を組合せてもよい。本発明に用いるポリエステル系繊維は、主鎖の繰り返し単位中にエステル結合を有する重合体で、熱可塑性樹脂であるものをさす。ここでポリエステル系繊維としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリエチレンオキシベンゾェート、ポリ1,4-ジメチルシクロヘキサンテレフタレート、ポリピバロラクトン等及びこれらを成分とするコポリエステル等のポリマーからなる繊維が挙げられる。
【0017】
その形態は、単成分繊維、複合繊維等いずれでもよい。また、その形態は、短繊維、長繊維のいずれでもよい。前記のポリアミド系繊維の場合と同様に、合成繊維で短繊維にすることはコストがかかり、編地編成時に風綿の懸念もあるため、長繊維であることが望ましい。
【0018】
本発明のポリアミド系高密度編地は、経編地である。編物はループの連結によって形成された生地であり、編目を形成する方向の違いから経編と緯編に区分することができる。同一糸で見た場合、経編では編目がタテ方向(生地の長さ方向)に形成され、緯編は編目がヨコ方向(生地の幅方向)に形成される。さらに詳しくは、経編では編目を形成する際にタテ方向に移動すると同時にヨコ方向(生地の幅方向)にも編目位置を移動することが可能であるのに対し、緯編(特に丸編)では編目形成はヨコ方向がメインとなる。緯編(特に丸編)でもタック編を利用することでタテ方向(生地の長さ方向)へ同一糸を移動させ生地を形成するは可能であるが、構成される糸の繊度や編機設備により組織の制限があり、また形成する編地の表面感に凹凸が生まれやすい。生地の品位や機能性である防風性、耐水性、透湿性、ストレッチ性を得るには、編地を形成する段階でループの連結をしながら糸同士が3次元的に絡み合う構造を取っていることが望ましく、緯編地よりも経編地の方が優れている。
【0019】
また、編機については、28ゲージ以上のハイゲージ編機を使用し、編成することが好ましい。これは目標の編地の諸物性が向上するためである。すなわち28ゲージ未満の編機を使用して編み立てた場合には、生機の編目密度が小さくなり、ポリアミド系高密度編地を得ることが困難となる。具体的には目標とする通気度やストレッチ性が得られない。このため、好ましくは28ゲージ以上、さらに好ましくは32ゲージ以上で編立を行う事が好ましい。
【0020】
本発明で用いるポリアミドの膨潤剤としては、ベンジルアルコール、フェノール、ギ酸、酢酸、ジメチルホルムアミド、キシレン等のエマルジョンが挙げられ、特にベンジルアルコールのエマルジョンが好ましい。また安定したエマルジョンを維持するため乳化剤を併用するのが好ましい。
【0021】
また、本発明で行うポリアミド系繊維への膨潤・収縮加工については、100℃以下で行う事が好ましい。膨潤・収縮加工ではポリアミド系繊維に対し、膨潤剤を付与することでポリアミド系繊維は膨潤し、熱が加えられることで繊維自体が収縮する。この際、同一濃度の膨潤剤を使用した場合、温度が高くなるに従い、膨潤と収縮の度合いが大きくなり、高密度化しやすくなる。一方でポリアミド系繊維が溶解するため、従来備えていた繊維としての強度や伸度が低下する。そのため高密度化させながらも繊維としての諸物性を維持することが必要であり、温度が100℃以下で行う事が望ましく、好ましくは90℃以下であり、さらに好ましくは80℃以下である。
【0022】
ポリアミド系繊維への膨潤・収縮加工後、染色後の最終段階で撥水加工を行う事が望ましい。編地に撥水加工を施す方法としてはディップニップ方式がよく、撥水剤と合わせ、架橋剤、触媒、撥水剤安定剤及び浸透剤を合わせた混合溶液を用いることが好ましい。これらの混合溶液を用いることで、加工後の編地の撥水性能や耐久性の向上が見られるためである。本発明では混合溶液を付与したのち、ドライキュアリングを行う。
【0023】
本発明のポリアミド系高密度編地は、通気度が20cc/cm2/sec以下であることが必要である。通気度は生地の表側と裏側で空気が通りやすいかを示す指標である。通気度は高いと空気が通りやすい状態であることを示し、外気を遮ることができておらずアウター素材としての使用は好ましくない。好ましくは通気度が15cc/cm2/sec以下であり、さらに好ましくは10cc/cm2/sec以下である。
【0024】
本発明のポリアミド系高密度編地は、耐水度が250mmH2O/cm2以上であることが必要である。耐水度は生地表面がどれだけの水圧に対し裏面に漏れ出さずに耐えうるかを示す指標である。耐水度が低いと外着として使用した際に、雨により内部へ浸み込みが発生する。好ましくは250mmH2O/cm2以上であり、さらに好ましくは300mmH2O/cm2以上である。
【0025】
本発明のポリアミド系高密度編地は、透湿度が6000g/m2/24h以上であることが必要である。透湿度は水蒸気を外に出す性能のことである。透湿度が低いと衣服内で発生した水蒸気が外に逃げず、衣服内は蒸れ感を感じやすい状態となる。好ましくは6000g/m2/24h以上である。
【0026】
本発明のポリアミド系高密度編地は、タテ方向の伸長率が5%以上、ヨコ方向の伸長率が5%以上、一方のみではなく両方ともにあることが必要である。ストレッチ性は衣服着用時のつっぱり感を軽減させることが目的である。タテ方向、ヨコ方向ともに10%以上であることが好ましい。さらに25%以上であると非常にドレープ性に優れた繊維構造物が得られるため良い。
【0027】
本発明のポリアミド系高密度編地は、剛軟度がタテ方向・ヨコ方向ともに10~80mmとする事が好ましい。剛軟度は生地のハリコシを示す指標であり、数値が小さいとよりハリコシ性の少ない素材となる。より好ましくはタテ方向・ヨコ方向ともに15mm以上である。
【0028】
本発明のポリアミド系高密度編地は、編目密度が4000個/inch2((2.54cm)2)以上である事が好ましい。編目密度は一定範囲内でのループ数であり、高密度化を示す指標となる。より好ましくは4500個/inch2((2.54cm)2)以上である。
【0029】
本発明のポリアミド系高密度編地の優れている点は、編物でありながら防風性、耐水性、透湿性及びストレッチ性の4つを備えていることである。一般的に編物はループ構造が基本骨格としてあり、織物に比べ密な構造を得にくい素材である。本発明ではポリアミド系繊維を用いて高密度化を行っているが、ポリアミド系膨潤・収縮処理の条件が強いと高密度化した繊維構造物は得られても従来の編物が有するストレッチ性は残らない。これはポリアミド系繊維が膨潤・収縮処理により繊維自身のフィブリル化が進み、従来持っていた諸物性、特に強度や伸度が失われるためである。そこで本発明では、編組織や編条件、ポリアミド系繊維の膨潤・収縮処理に関する研究を重ね、問題解決を行った。すなわち、編地のストレッチ性を残しながら防風性、耐水性、透湿性が得られるよう、編地形成段階において構成する糸同士が3次元に重なる編地構造を構築することにした。具体的には経編地を採用し、構成する糸もフロント糸、バック糸共にポリアミド系繊維が含まれる設計とした。これにより、目標とする防風性、耐水性、透湿性を得るためのポリアミド系繊維の膨潤・収縮処理条件を緩和することが可能となり、ポリアミド系繊維の強度や伸度が維持できるようになった。
【0030】
本発明のポリアミド系高密度編地に関して、編成した生機の状態での目付が40~200g/m2、最終加工後の高密度編地の状態で100~360g/m2であることが望ましい。これは生機での目付が低いと、防風性や、耐水性、透湿性を得るために行うポリアミド系繊維の膨潤・収縮処理条件を強くする必要があるためである。ポリアミド系繊維の膨潤・収縮条件を強くすることは、ポリアミド系繊維自身の溶解がより進み、従来の繊維の強度や伸度が低下する恐れがあるため、できるだけポリアミド系繊維の膨潤・収縮処理は条件が抑えることが望ましい。これにより生機の状態での目付は好ましくは50~180g/m2であり、さらに好ましくは60~160g/m2である。また最終加工後の高密度編地の状態で好ましくは115~345g/m2であり、さらに好ましくは130~330g/m2である。
【0031】
樹脂コーティング加工やラミネート加工は、従来生地自体では得ることができない機能性や素材感を付与するために行うものである。本発明の高密度編地は樹脂コーティングやラミネート加工といった2次加工をせずとも、防風性・耐水性・透湿性・ストレッチ性を有する優れたポリアミド系高密度編地である。
【実施例】
【0032】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。なお、本発明は以下に述べる実施例に限定されるものではない。尚、実施例における各性能評価は次の方法により行った。
〔編目密度の測定方法〕
JIS L 1096 8.6.2の編物の密度に準拠して、測定した。
〔目付の測定方法〕
JIS L 1096 8.3.2の標準状態における単位面積当たりの質量に準拠して、測定した。
〔厚みの測定方法〕
JIS L 1096 8.4の厚さA法(JIS法)に準拠して、測定した。
〔通気度の測定方法〕
JIS L 1096 8.26.1の通気度A法(フラジール形法)に準拠して、測定した。
〔耐水度の測定方法〕
JIS L 1092 7.1.1の耐水度A法(低水圧法)に準拠して、測定した。
〔透湿度の測定方法〕
JIS L 1099 7.1.1の透湿度A-1法(塩化カルシウム法)に準拠して、測定した。
〔伸長率の測定方法〕
JIS L 1096 8.16.1の伸び率A法(定速伸長法)に準拠して、測定試料の巾は5cmとして、14.7N荷重時の伸長率を評価した。
〔剛軟度の測定方法〕
JIS L 1096 8.21.1の剛軟度A法(45°カンチレバー法)に準拠して、測定した。
〔破裂強度の測定方法〕
JIS L 1096 8.18.1の破裂強さA法(ミューレン形法)に準拠して、測定した。
【0033】
〔実施例1〕
ポリアミド系繊維として、KBセーレン(株)製ベリーマ(登録商標)X(ポリエステルとポリアミドの分割型複合繊維)56dtex/25フィラメントと、東レ(株)6ナイロンブライト糸33dtex/34フィラメントを使用して、トリコット編機(32G、カールマイヤー社製)でダブルデンビ組織、目付78g/m2、ポリアミド混率が編地全体の57.4質量%となるように編成し、生機を作成した。
出来上がった生機をベンジルアルコールとアルコール含有の乳化剤からなるポリアミド系繊維の膨潤・収縮処理液を含む水の中へ入れて、処理液を付与し、生地を動かしながら温度を加え、60℃にてポリアミド系繊維の膨潤・収縮処理を行い、高密度布帛を得た。続いて、ポリエステルとポリアミドの染色を行った。すなわち、分散染料、均染剤、pH調整剤を用い、ポリエステルサイドを染色したのち、還元剤、pH調整剤、洗浄剤を用いて還元洗浄を行った。次いで、酸性染料、pH調整剤を用いポリアミドサイドを染色したのち、タンニン酸含有の堅牢度増進剤、タンニン酸用固着剤、アニオン性界面活性剤含有のスカム防止剤、pH調整剤を用いて染料の固着を行った。その後脱水を行い、乾燥後に撥水加工を行った。撥水加工ではディップニップ方式により、撥水剤「アサヒガードAG-E082」を6.0質量%、架橋剤、触媒、撥水剤安定剤、浸透剤の混合液を付与させ、ドライ、キュアリングを120℃で行った。
仕上げ密度61ウェール/インチ(2.54cm)(以下、WPIと記す)、101コース/インチ(2.54cm)(以下、CPIと記す)、目付187g/m2、通気度4.2cc/cm2/sec、耐水度350mmH2O/cm2、透湿度8238g/m2/24h、タテ方向の伸長率が14.0%、ヨコ方向の伸長率が25.5%であり、風合いにも優れたポリアミド系高密度編物を得ることが出来た。評価結果を表1に示す。
【0034】
〔実施例2〕
ポリアミド系繊維として、KBセーレン(株)製ベリーマ(登録商標)X(ポリエステルとポリアミドの分割型複合繊維)56dtex/25フィラメントと、東レ(株)6ナイロンブライト糸33dtex/34フィラメントを使用して、トリコット編機(32G、カールマイヤー社製)でバックハーフ組織、目付89g/m2、ポリアミド混率が編地全体の61.0質量%となるように編成し、生機を作成した。
出来上がった生機にポリアミド系繊維の膨潤・収縮処理液を付与し、高密度布帛を得たのち、続いて染色、脱水を行い、乾燥後に撥水加工を行った。ポリアミド系繊維の膨潤・収縮処理、染色処理、撥水加工処理は実施例1と同様の方法で行った。
仕上げ密度61WPI、99CPI、目付200g/m2、通気度1.8cc/cm2/sec、耐水度340mmH2O/cm2、透湿度9682g/m2/24h、タテ方向の伸長率が13.5%、ヨコ方向の伸長率が20.5%であり、風合いにも優れたポリアミド系高密度編物を得ることが出来た。評価結果を表1に示す。
【0035】
〔実施例3〕
ポリアミド系繊維として、KBセーレン(株)製ベリーマ(登録商標)X(ポリエステルとポリアミドの分割型複合繊維)56dtex/25フィラメントと、東レ(株)6ナイロンブライト糸33dtex/34フィラメントを使用して、トリコット編機(36G、カールマイヤー社製)ダブルデンビ組織、目付82g/m2、ポリアミド混率が編地全体の58.0質量%となるように編成し、生機を作成した。
出来上がった生機にポリアミド系繊維の膨潤・収縮処理液を付与し、高密度布帛を得たのち、続いて染色、脱水を行い、乾燥後に撥水加工を行った。ポリアミド系繊維の膨潤・収縮処理、染色処理、撥水加工処理は実施例1と同様の方法で行った。
仕上げ密度65WPI、112CPI、目付203g/m2、通気度3.7cc/cm2/sec、耐水度400mmH2O/cm2、透湿度8578g/m2/24h、タテ方向の伸長率が10.0%、ヨコ方向の伸長率が14.5%であり、風合いにも優れたポリアミド系高密度編物を得ることが出来た。評価結果を表1に示す。
【0036】
〔実施例4〕
ポリアミド系繊維として、KBセーレン(株)製ベリーマ(登録商標)X(ポリエステルとポリアミドの分割型複合繊維)56dtex/25フィラメントと、東レ(株)6ナイロンブライト糸33dtex/34フィラメントを使用して、トリコット編機(36G、カールマイヤー社製)バックハーフ組織、目付97g/m2、ポリアミド混率が編地全体の61.5質量%となるように編成し、生機を作成した。
出来上がった生機にポリアミド系繊維の膨潤・収縮処理液を付与し、高密度布帛を得たのち、続いて染色、脱水を行い、乾燥後に撥水加工を行った。ポリアミド系繊維の膨潤・収縮処理、染色処理、撥水加工処理は実施例1と同様の方法で行った。
仕上げ密度65WPI、97CPI、目付207g/m2、通気度1.7cc/cm2/sec、耐水度410mmH2O/cm2、透湿度7898g/m2/24h、タテ方向の伸長率が11.0%、ヨコ方向の伸長率が18.5%であり、風合いにも優れたポリアミド系高密度編物を得ることが出来た。評価結果を表1に示す。
【0037】
〔実施例5〕
ポリアミド系繊維として、KBセーレン(株)製ベリーマ(登録商標)X(ポリエステルとポリアミドの分割型複合繊維)56dtex/25フィラメントと、東レ(株)6ナイロンブライト糸33dtex/34フィラメントを使用して、トリコット編機(32G、カールマイヤー社製)でダブルデンビ組織、目付78g/m2、ポリアミド混率が編地全体の57.4質量%となるように編成し、生機を作成した。
出来上がった生機をベンジルアルコールとアルコール含有の乳化剤からなるポリアミド系繊維の膨潤・収縮処理液含む水の中で入れ、処理液を付与し、生地を動かしながら温度を加え、80℃にてポリアミド系繊維の膨潤・収縮処理を行い、高密度布帛を得た。続いて染色、脱水を行い、乾燥後に撥水加工を行った。染色処理、撥水加工処理は実施例1と同様の方法で行った。
仕上げ密度67WPI、111CPI、目付218g/m2、通気度1.2cc/cm2/sec、耐水度390mmH2O/cm2、透湿度7559g/m2/24h、タテ方向の伸長率が8.4%、ヨコ方向の伸長率が18.0%であり、風合いにも優れたポリアミド系高密度編物を得ることが出来た。評価結果を表1に示す。
【0038】
〔実施例6〕
ポリアミド系繊維として、KBセーレン(株)製ベリーマ(登録商標)X(ポリエステルとポリアミドの分割型複合繊維)56dtex/25フィラメントと、東レ(株)6ナイロンブライト糸33dtex/34フィラメントを使用して、トリコット編機(32G、カールマイヤー社製)でバックハーフ組織、目付89g/m2、ポリアミド混率が編地全体の61.0質量%となるように編成し、生機を作成した。
出来上がった生機にポリアミド系繊維の膨潤・収縮処理液を付与し、高密度布帛を得たのち、続いて染色、脱水を行い、乾燥後に撥水加工を行った。ポリアミド系繊維の膨潤・収縮処理、染色処理、撥水加工処理は実施例5と同様の方法で行った。
仕上げ密度66WPI、106CPI、目付235g/m2、通気度0.9cc/cm2/sec、耐水度470mmH2O/cm2、透湿度6879g/m2/24h、タテ方向の伸長率が10.0%、ヨコ方向の伸長率が14.0%であり、風合いにも優れたポリアミド系高密度編物を得ることが出来た。評価結果を表1に示す。
【0039】
〔実施例7〕
ポリアミド系繊維として、KBセーレン(株)製ベリーマ(登録商標)X(ポリエステルとポリアミドの分割型複合繊維)56dtex/25フィラメントと、東レ(株)6ナイロンブライト糸33dtex/34フィラメントを使用して、トリコット機(36G、カールマイヤー社製)ダブルデンビ組織、目付82g/m2、ポリアミド混率が編地全体の58.0質量%となるように編成し、生機を作成した。
出来上がった生機にポリアミド系繊維の膨潤・収縮処理液を付与し、高密度布帛を得たのち、続いて染色、脱水を行い、乾燥後に撥水加工を行った。ポリアミド系繊維の膨潤・収縮処理、染色処理、撥水加工処理は実施例5と同様の方法で行った。
仕上げ密度67WPI、119CPI、目付224g/m2、通気度1.9cc/cm2/sec、耐水度360mmH2O/cm2、透湿度7644g/m2/24h、タテ方向の伸長率が8.5%、ヨコ方向の伸長率が10.0%であり、風合いにも優れたポリアミド系高密度編物を得ることが出来た。評価結果を表1に示す。
【0040】
〔実施例8〕
ポリアミド系繊維として、KBセーレン(株)製ベリーマ(登録商標)X(ポリエステルとポリアミドの分割型複合繊維)56dtex/25フィラメントと、東レ(株)6ナイロンブライト糸33dtex/34フィラメントを使用して、トリコット機(36G、カールマイヤー社製)バックハーフ組織、目付97g/m2、ポリアミド混率が編地全体の61.5質量%となるように編成し、生機を作成した。
出来上がった生機にポリアミド系繊維の膨潤・収縮処理液を付与し、高密度布帛を得たのち、続いて染色、脱水を行い、乾燥後に撥水加工を行った。ポリアミド系繊維の膨潤・収縮処理、染色処理、撥水加工処理は実施例5と同様の方法で行った。
仕上げ密度70WPI、104CPI、目付240g/m2、通気度0.6cc/cm2/sec、耐水度430mmH2O/cm2、透湿度8663g/m2/24h、タテ方向の伸長率が9.0%、ヨコ方向の伸長率が12.5%であり、風合いにも優れたポリアミド系高密度編物を得ることが出来た。評価結果を表1に示す。
【0041】
〔比較例1〕
ポリエチレンレテフタレートフルダル糸56dtex/36フィラメントとポリエチレンテレフタレートフルダル加工糸56dtex/72フィラメントを使用して、トリコット編機(32G、カールマイヤー社製)バックハーフ組織、目付99g/m2、ポリアミド混率が編地全体の0.0質量%となるように編成し、生機を作成した。
出来上がった生機に高密度処理を行い、続いて染色、脱水を行い、乾燥後に仕上げ加工を行った。
得られた編物は、仕上げ密度46WPI、67CPI、目付142g/m2、通気度90.0cc/cm2/sec、透湿9172g/m2/24h、タテ方向の伸長率が23.5%、ヨコ方向の伸長率が38.0%であったが、耐水度は得られなかった。評価結果を表1に示す。
【0042】
〔比較例2〕
ポリエチレンレテフタレートフルダル糸56dtex/36フィラメントとポリエチレンレテフタレートフルダル加工糸56dtex/72フィラメントを使用して、トリコット編機(32G、カールマイヤー製)バックハーフ組織、目付99g/m2、ポリアミド混率が編地全体の0.0質量%となるように編成し、生機を作成した。
出来上がった生機に高密度処理を行い、続いて染色、脱水を行い、乾燥後に仕上げ加工を行った。
得られた編地は、仕上げ密度45WPI、67CPI、目付144g/m2、通気度90.0cc/cm2/sec、透湿9682g/m2/24h、タテ方向の伸長率が28.0%、ヨコ方向の伸長率が47.5%であったが、耐水度は得られなかった。評価結果を表1に示す。
【0043】
【0044】
上記より、実施例1~8のポリアミド系高密度編物は、防風性、耐水性、透湿性、ストレッチ性のいずれにも優れた高密度編物であったが、比較例1,2の編物は、透湿性、ストレッチ性はあったものの、防風性、耐水性に劣る編物であった。