(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】診療情報処理装置
(51)【国際特許分類】
G16H 50/50 20180101AFI20240408BHJP
【FI】
G16H50/50
(21)【出願番号】P 2019108388
(22)【出願日】2019-06-11
【審査請求日】2022-04-12
(31)【優先権主張番号】P 2018127879
(32)【優先日】2018-07-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】狩野 佑介
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 杏莉
【審査官】鹿谷 真紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-105795(JP,A)
【文献】特開2009-095550(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に関する診療データのうち、前記被検体の所定の状態変化の発生時点から所定期間だけ遡った時点以前の特定の期間内の診療データと、前記被検体ごとに決められた基準期間内の診療データとを取得する取得部と、
前記特定の期間内の診療データ及び前記基準期間内の診療データそれぞれから統計的特徴量を算出し、前記特定の期間内の診療データから算出された統計的特徴量と前記基準期間内の診療データから算出された統計的特徴量との相対値を算出し、算出され
た相対値に基づいて、予測対象の被検体に関する診療の実施時点以前の前記特定の期間内の診療データから算出された統計的特徴量と前記基準期間内の診療データから算出された統計的特徴量との相対値の入力を受け付けて当該実施時点から前記所定期間後における当該被検体の前記所定の状態変化の発生に関する情報を出力する学習済みモデルを生成するための学習用データを生成する生成部と
を備える、診療情報処理装置。
【請求項2】
前記取得部は、前記被検体に関する前記所定の状態変化の有無を示す急変情報をさらに取得し、
前記生成部は、前記特定の期間内の診療データから算出された統計的特徴量と前記基準期間内の診療データから算出された統計的特徴量との相対値及び前記急変情報を含むデータを、前記学習用データとして生成する、
請求項1に記載の診療情報処理装置。
【請求項3】
前記特定の期間は、前記所定の状態変化の発生日から所定日数だけ遡った日に含まれる一定期間である、
請求項1又は2に記載の診療情報処理装置。
【請求項4】
前記特定の期間は、前記所定の状態変化の発生日から所定日数だけ遡った日以前の複数の異なる期間であり、各期間が、前記遡った日に含まれる一定期間を含むように設定されている、
請求項1又は2に記載の診療情報処理装置。
【請求項5】
前記特定の期間は、前記所定の状態変化の発生日から所定日数だけ遡った日以前の複数の異なる期間の中から前記診療データに関する情報に応じて選択された期間である、
請求項1又は2に記載の診療情報処理装置。
【請求項6】
被検体に関する診療の実施時点以前の特定の期間内の診療データと、前記被検体ごとに決められた基準期間内の診療データとを取得する取得部と、
前記特定の期間内の診療データ及び前記基準期間内の診療データそれぞれから統計的特徴量を算出し、前記特定の期間内の診療データから算出された統計的特徴量と前記基準期間内の診療データから算出された統計的特徴量との相対値を算出し、予測対象の被検体に関する診療の実施時点以前の前記特定の期間内の診療データから算出された統計的特徴量と前記基準期間内の診療データから算出された統計的特徴量との相対値の入力を受け付けて当該実施時点から所定期間後における当該被検体の所定の状態変化の発生に関する情報を出力する学習済みモデルに対して、前記算出された相対値を入力することで、前記被検体に関する診療の実施時点から前記所定期間後における当該被検体の前記所定の状態変化の発生に関する情報を出力させるように制御する制御部と
を備える、診療情報処理装置。
【請求項7】
被検体に関する診療の実施時点以前の前記特定の期間内の診療データから算出された統計的特徴量と前記基準期間内の診療データから算出された統計的特徴量との相対値及び当該被検体に関する前記所定の状態変化の発生に関する情報を学習用データとした機械学習によって、前記学習済みモデルを生成する学習部をさらに備える、
請求項6に記載の診療情報処理装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記学習済みモデルから出力された情報に対して前記状態変化が実際に発生したか否かを入力する操作を操作者から受け付け、入力された結果を前記所定の状態変化の発生に関する情報にフィードバックする、
請求項7に記載の診療情報処理装置。
【請求項9】
被検体に関する診療の実施時点以前の特定の期間内の診療データ及び前記被検体ごとに決められた基準期間内の診療データそれぞれから統計的特徴量を算出し、前記特定の期間内の診療データから算出された統計的特徴量と前記基準期間内の診療データから算出された統計的特徴量との相対値を算出し、算出された相対値と、予測対象の被検体に関する診療の実施時点以前の前記特定の期間内の診療データから算出された統計的特徴量と前記基準期間内の診療データから算出された統計的特徴量との相対値の入力を受け付けて当該実施時点から所定期間後における当該被検体の所定の状態変化の発生に関する情報を出力する学習済みモデルに対して前記算出された相対値を入力することによって取得された、前記被検体に関する診療の実施時点から前記所定期間後における当該被検体の所定の状態変化の発生に関する情報とをディスプレイに表示する制御部
を備える、診療情報処理装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記所定の状態変化の発生に関する情報の根拠となった診療データに関する情報を前記ディスプレイに表示する、
請求項9に記載の診療情報処理装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記所定の状態変化の発生に関する情報の根拠となった診療データに関する情報の経時的な推移を示す情報を前記ディスプレイに表示する、
請求項10に記載の診療情報処理装置。
【請求項12】
前記所定の状態変化の発生に関する情報は、前記所定の状態変化が発生する確率、前記所定の状態変化の有無を示す情報、又は、前記所定の状態変化が発生する確かさの度合いを示すスコアである、
請求項1~11のいずれか一つに記載の診療情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、診療情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療の現場では、心不全等の突発的な病状急変が患者に発生することがある。例えば、患者が先天性心疾患患児である場合には、予期せぬ突発的な病状急変に遭遇することは稀ではない。このような病状急変は、後から病状やカルテを振り返ればその前兆が認められることもあるが、実際の診断時点では気付けないことも多い。
【0003】
この原因としては、例えば、小児の診療データが、基準値の高さや月齢及び年齢によるベースラインの違いによって、生データの観察では変化が見えづらいことが挙げられる。また、例えば、小児の診療データは、体動や啼泣の影響をセンサが拾いやすいためにデータの外れ値が多く、単純な閾値等での病状悪化の検出では誤検出が多く発生するという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、病状急変の前兆をより正確に予測することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る診療情報処理装置は、取得部と、生成部とを備える。取得部は、被検体に関する診療データのうち、前記被検体の所定の状態変化の発生時点から所定期間だけ遡った時点以前の特定の期間内の診療データを取得する。生成部は、前記特定の期間内の診療データに関する情報に基づいて、予測対象の被検体に関する診療の実施時点から前記所定期間後における当該被検体の前記所定の状態変化の発生に関する情報を出力する学習済みモデルを生成するための学習用データを生成する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る診療情報処理装置の構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係る処理回路によって行われる学習時及び運用時の処理を示す図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態に係る診療データの一例として用いられるNEWSを示す図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態に係る診療データの一例として用いられる管理図の異常判定ルールの一例を示す図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態に係る処理回路によって行われる学習時の処理に関する第1の例を示す図である。
【
図6】
図6は、第1の実施形態に係る処理回路によって行われる学習時の処理に関する第2の例を示す図である。
【
図7】
図7は、第1の実施形態に係る処理回路によって行われる学習時の処理に関する第3の例を示す図である。
【
図8】
図8は、第1の実施形態に係る制御機能によってディスプレイに表示される画面の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、第1の実施形態に係る診療情報処理装置によって行われる学習時の処理の処理手順を示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、第1の実施形態に係る診療情報処理装置によって行われる運用時の処理の処理手順を示すフローチャートである。
【
図11】
図11は、第2の実施形態に係る処理回路によって行われる学習時及び運用時の処理を示す図である。
【
図12】
図12は、第2の実施形態に係る処理回路によって行われる学習時の処理に関する例を示す図である。
【
図13】
図13は、第2の実施形態に係る処理回路によって行われる学習時の処理に関する例を示す図である。
【
図14】
図14は、第2の実施形態に係る診療情報処理装置によって行われる学習時の処理の処理手順を示すフローチャートである。
【
図15】
図15は、第2の実施形態に係る診療情報処理装置によって行われる運用時の処理の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、診療情報処理装置の実施形態について詳細に説明する。なお、以下の実施形態では、被検体が患者である場合の例を説明する。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る診療情報処理装置の構成例を示す図である。
【0010】
例えば、
図1に示すように、本実施形態に係る診療情報処理装置100は、ネットワーク200を介して、電子カルテシステム300や放射線部門システム400、検体検査システム500等と通信可能に接続される。例えば、診療情報処理装置100及び各システムは病院等に設置され、院内LAN等のネットワーク200によって相互に接続される。
【0011】
電子カルテシステム300は、患者に対して実施された処方や看護記録等に関する診療データを生成して管理するシステムである。放射線部門システム400は、患者に対して実施されたバイタルや画像検査等に関する診療データを生成して管理するシステムである。検体検査システム500は、患者に対して実施された検体検査等に関する診療データを生成して管理するシステムである。ここで、各システムは、患者に対して診療が行われるごとに、新しい診療データを生成し、生成した診療データを診療情報処理装置100に送信する。例えば、各システムは、新しい診療データを生成するごとに、診療情報処理装置100からの要求に応じて、又は、自発的に、生成した診療データを診療情報処理装置100に送信する。
【0012】
診療情報処理装置100は、ネットワーク200を介して、電子カルテシステム300、放射線部門システム400、及び検体検査システム500から各種の診療データを取得し、取得した診療データを用いて各種の情報処理を行う。例えば、診療情報処理装置100は、ワークステーションやパーソナルコンピュータ、タブレット端末等のコンピュータ機器によって実現される。
【0013】
具体的には、診療情報処理装置100は、NW(network)インタフェース110と、記憶回路120と、入力インタフェース130と、ディスプレイ140と、処理回路150とを有する。
【0014】
NWインタフェース110は、処理回路150に接続されており、診療情報処理装置100と各システムとの間で行われる各種データの伝送及び通信を制御する。具体的には、NWインタフェース110は、各システムから診療データを受信し、受信した診療データを処理回路150に出力する。例えば、NWインタフェース110は、ネットワークカードやネットワークアダプタ、NIC(Network Interface Controller)等によって実現される。
【0015】
記憶回路120は、処理回路150に接続されており、各種データを記憶する。具体的には、記憶回路120は、各システムから受信した診療データを記憶する。例えば、記憶回路120は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子や、ハードディスク、光ディスク等によって実現される。
【0016】
入力インタフェース130は、処理回路150に接続されており、操作者から各種指示及び各種情報の入力操作を受け付ける。具体的には、入力インタフェース130は、操作者から受け付けた入力操作を電気信号へ変換して処理回路150に出力する。例えば、入力インタフェース130は、トラックボール、スイッチボタン、マウス、キーボード、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力回路、及び音声入力回路等によって実現される。なお、本明細書において、入力インタフェース130は、マウス、キーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を制御回路へ出力する電気信号の処理回路も入力インタフェース130の例に含まれる。
【0017】
ディスプレイ140は、処理回路150に接続されており、各種情報及び各種画像を表示する。具体的には、ディスプレイ140は、処理回路150から送られる各種情報及び各種画像のデータを表示用の電気信号に変換して出力する。例えば、ディスプレイ140は、液晶モニタやCRT(Cathode Ray Tube)モニタ、タッチパネル等によって実現される。なお、ディスプレイ140は、表示部の実現手段の一例である。
【0018】
処理回路150は、入力インタフェース130を介して操作者から受け付けた入力操作に応じて、診療情報処理装置100の構成要素を制御する。具体的には、処理回路150は、NWインタフェース110から出力される診療データを記憶回路120に記憶させる。また、処理回路150は、記憶回路120から診療データを読み出し、ディスプレイ140に表示する。
【0019】
以上、本実施形態に係る診療情報処理装置100の全体構成について説明した。このような構成のもと、本実施形態に係る診療情報処理装置100は、患者に発生する所定の状態変化の前兆を予測するための機能を有している。ここでいう所定の状態変化は、例えば、診療上の好ましくない状態変化や望ましくない状態変化であり、具体的な例として、例えば、病状急変や、治療の副作用発生、術後感染のような治療対象の疾患とは直接関係のない理由での状態悪化等が含まれる。
【0020】
例えば、このような機能の一例として、血行動態悪化の自動モニタリングにおいて、誤検出によるアラート疲れを防ぐために、過去の所定の時間内のバイタルサイン不安定指標(VIX)からその患者のVIX閾値を計算し、VIX閾値が所定の割合を超える場合に、患者が悪化していると判定する技術が提案されている。この技術では、VIXを計算するモデルは、例えば、ロジスティック回帰モデル等であり、異なる患者部分母集団から、異なるパラメータに基づいて導出される。
【0021】
しかしながら、このような病状悪化を予測するモデルは、バイタルサインや検体検査データなどをそのまま入力としているため、例えば、小児の診療データのように外れ値が多い診療データが用いられる場合には、誤検出が生じることがあり得る。また、このような病状悪化を予測するモデルは、病状悪化を判定するための閾値を過去の時間から計算しているが、閾値を計算しているデータが正常時のデータなのかを考慮していないため、正しく病状悪化が判定できないこともあり得る。
【0022】
このようなことから、本実施形態に係る診療情報処理装置100は、患者の所定の状態変化の前兆をより正確に予測することができるように構成されている。なお、本実施形態では、所定の状態変化を、病状急変とした場合の例を説明する。
【0023】
具体的には、診療情報処理装置100は、予測対象の患者に関する診療の実施時点以前の診療データに関する情報の入力を受け付けて当該実施時点から所定期間後における当該患者の病状急変の発生に関する情報を出力する学習済みモデルを用いて、病状急変の前兆を予測する。
【0024】
本実施形態では、診療情報処理装置100は、予測対象の患者に関する診療の実施時点以前の特定の期間内の診療データに関する情報の入力を受け付けて当該患者に病状急変が発生する確率を出力する学習済みモデル(予測モデル)を構築する。そして、診療情報処理装置100は、患者に対する診療が行われるごとに、構築した学習済みモデルを用いて、当該患者の病状急変の発生を予測する。ここで、本実施形態では、学習済みモデルに入力される情報は、上記特定の期間内の診療データから算出された統計的特徴量である。
【0025】
このような構成によれば、本実施形態では、特定の期間内の診療データから算出された統計的特徴量を用いることで、例えば、小児の診療データのように外れ値が多いデータが用いられる場合でも、心不全等の病状急変の前兆をより正確に予測することができる。以下、このような診療情報処理装置100の構成について詳細に説明する。
【0026】
なお、本実施形態では、診療情報処理装置100が、日単位で患者の病状急変の発生を予測する場合の例を説明する。すなわち、本実施形態では、学習済みモデルが、予測対象の患者に関する診療の実施日又は当該実施日以前の対象期間内の診療データに関する情報の入力を受け付けて、当該実施日から所定日数後における当該患者の病状急変の発生に関する情報を出力する場合の例を説明する。また、本実施形態では、病状急変の発生に関する情報が、病状急変が発生する確率である場合の例を説明する。
【0027】
まず、本実施形態では、記憶回路120が、予測対象の患者に関する診療の実施日又は当該実施日以前の対象期間内の統計的特徴量の入力を受け付けて当該実施日から所定日数後に当該患者に病状急変が発生する確率を出力するように機能付けられた学習済みモデルを記憶する。なお、記憶回路120は、記憶部の一例である。
【0028】
また、本実施形態では、処理回路150が、第1の取得機能151と、第2の取得機能152と、生成機能153と、学習機能154と、制御機能155とを有する。なお、第1の取得機能151は、第1の取得部の一例である。また、第2の取得機能152は、第2の取得部及び取得部の一例である。また、生成機能153は、生成部の一例である。また、学習機能154は、学習部の一例である。また、制御機能155は、制御部の一例である。
【0029】
第1の取得機能151は、患者に関する診療データを取得する。
【0030】
具体的には、第1の取得機能151は、電子カルテシステム300、放射線部門システム400、及び検体検査システム500によって新しい診療データが生成されるごとに、生成された診療データを各システムから取得し、記憶回路120に記憶させる。これにより、電子カルテシステム300、放射線部門システム400、及び検体検査システム500によって生成された診療データが、記憶回路120に随時追加され、蓄積される。
【0031】
そして、本実施形態では、処理回路150は、上述した学習済みモデルを生成する学習時の処理と、生成された学習済みモデルを利用する運用時の処理とを行う。ここで、例えば、処理回路150は、予め決められたタイミング(例えば、予め決められた時間間隔で定期的に)又は操作者から学習開始の指示を受け付けたタイミングで、学習時の処理を行う。また、例えば、処理回路150は、電子カルテシステム300、放射線部門システム400、及び検体検査システム500から新しい診療データを取得したタイミングで、運用時の処理を行う。
【0032】
図2は、第1の実施形態に係る処理回路150によって行われる学習時及び運用時の処理を示す図である。
【0033】
まず、学習時の処理について説明する。
【0034】
学習時には、第2の取得機能152が、患者に関する診療データのうち、病状急変の発生時点から所定期間だけ遡った時点以前の特定の期間内の診療データを取得する。
【0035】
例えば、
図2の上側に示すように、学習時には、第2の取得機能152は、患者に関する病状急変の有無を示す急変情報と、患者に関する診療データのうち、病状急変の発生日から所定日数だけ遡った日又は当該遡った日以前の対象期間内の診療データとを取得する。
【0036】
具体的には、第2の取得機能152は、予め決められたタイミング又は操作者から学習開始の指示を受け付けたタイミングで、記憶回路120に蓄積されている複数の患者の診療データを取得し、さらに、診療データを取得した患者に関する病状急変の有無を示す急変情報を取得する。ここで、急変情報は、記憶回路120に患者ごとに記憶されており、各患者に病状急変が発生した際に、後述する制御機能155によって更新される。
【0037】
そして、生成機能153が、第2の取得機能152によって取得された特定の期間内の診療データに関する情報に基づいて、予測対象の患者に関する診療の実施時点以前の特定の期間内の診療データに関する情報の入力を受け付けて当該実施時点から所定期間後における当該患者の病状急変の発生に関する情報を出力する学習済みモデルを生成するための学習用データを生成する。
【0038】
例えば、生成機能153は、対象期間内の診療データから算出された統計的特徴量及び急変情報を含むデータを、予測対象の患者に関する診療の実施日又は当該実施日以前の対象期間内の統計的特徴量の入力を受け付けて当該実施日から所定日数後に当該患者に病状急変が発生する確率を出力する学習済みモデルを生成するための学習用データとして生成する。
【0039】
具体的には、生成機能153は、第2の取得機能152によって取得された対象期間内の各種の診療データ(
図2に示す診療データA、B、C等)から、診療データごとに、各種の統計的特徴量(
図2に示す統計的特徴量a、b、c等)を算出する。そして、生成機能153は、算出した各種の統計的特徴量と、第2の取得機能152によって取得された急変情報とを患者ごとに対応付けたデータを学習用データとして生成する。
【0040】
ここで、診療データは、例えば、バイタルサインの計測値や、観察項目の計測値、検体検査の計測値、画像計測値等である。ここで、バイタルサインの計測値は、例えば、脈拍、血圧(収縮期血圧、拡張期血圧、平均血圧)、呼吸数、体温、SpO2(動脈血酸素飽和度)等である。また、観察項目の計測値は、体重、尿量、In/Outバランス(水分摂取量、水分排泄量、又は両者の差分)等である。また、検体検査の計測値は、例えば、Hb(ヘモグロビン)、BNP(brain natriuretic peptide:ヒト脳性ナトリウム利尿ペプチド)、NTproBNP(N-terminal pro-brain natriuretic peptide:ヒト脳性ナトリウム利尿ペプチド前駆体N末端フラグメント)、HANP(human atrial natriuretic peptide:ヒト心房性ナトリウム利尿ペプチド)、BUN(尿素窒素)、Cre(血清クレアチニン)、Lac(ラクテート)、BE(base excess:ベースエクセス)、pO2(酸素分圧)、pCO2(二酸化炭素分圧)、pH(水素イオン濃度)等である。また、画像計測値は、例えば、胸部レントゲンの心胸郭比(CTR:cardio-thoracic ratio)、心エコーの左室駆出率(LVEF:left ventricular ejection fraction)等である。
【0041】
なお、例えば、数値以外で表される診療データが、機械学習で用いられるカテゴリ変数として、学習データにさらに加えられてもよい。例えば、数値以外で表される診療データは、患者背景や、介入実施状況、スコア、ルールに関する情報である。ここで、患者背景に関する情報は、例えば、年齢、性別、病名等である。また、介入実施状況に関する情報は、例えば、投薬、呼吸管理等である。また、スコアに関する情報は、例えば、National Early Warning Score(NEWS)等である。また、ルールに関する情報は、例えば、品質管理等で用いられる管理図の異常判定ルール等である。
【0042】
図3は、第1の実施形態に係る診療データの一例として用いられるNEWSを示す図である。
【0043】
例えば、
図3に示すように、NEWSは、患者に発生しているリスクのレベルを示すスコアであり、呼吸数(Respiration Rate)、酸素飽和度(Oxygen Saturations)、酸素投与(Any Supplemental Oxygen)、体温(Temperature)、収縮期血圧(Systolic BP(blood pressure))、心拍数(Heart Rate)、意識レベル(Level of Consciousness)の7種類の生理学的パラメータ(PHYSIOLOGICAL PARAMETERS)の値に応じて0~3の4段階に定義されている。
【0044】
図4は、第1の実施形態に係る診療データの一例として用いられる管理図の異常判定ルールの一例を示す図である。
【0045】
例えば、
図4に示すように、管理図の異常判定ルールは、連続する複数のデータ値における異常を判定するためのルールであり、異常とみなされるデータ値の分布を表す複数のパターンがそれぞれルールとして定義される。
【0046】
例えば、
図4に示す例では、ルール1は、1個のデータ値が領域Aを越えている(管理外れ)パターンであり、ルール2は、9個のデータ値が中心線に対して同じ側にある(連)パターンである。また、ルール3は、6個のデータ値が増加、又は減少している(上昇傾向/下降傾向)パターンであり、ルール4は、14個のデータ値が交互に増減しているパターンである。また、ルール5は、連続する3個のデータ値中、2個のデータ値が領域A又はそれを超えた領域にある(管理境界線に接近している)パターンであり、ルール6は、連続する5点中、4点が領域B又はそれを超えた領域にある(中心化傾向)パターンである。また、ルール7は、連続する15点が領域Cに存在する(中心化傾向)パターンであり、ルール8は、連続する8点が領域Cを超えた領域にあるパターンである。管理図の異常判定ルールでは、このような複数のパターンのうちのいずれかにデータ値の分布が合致した場合に、異常であると判定される。
【0047】
また、上述した各種の診療データから算出される統計的特徴量は、例えば、平均値、中心値、最頻値のような中心的傾向を表す特徴量や、最大値、最小値等である。また、例えば、統計的特徴量は、分散、標準偏差、四分位範囲、外れ値を除いた場合のデータの分布を箱ひげ図で表した場合にひげの長さで示される範囲、変動係数のようなバラつきを表す特徴量である。また、例えば、統計的特徴量は、尖度、歪度のような分布を表す特徴量である。また、例えば、統計的特徴量は、共分散、相関係数、自己相関のようなデータ間の関係性を表す統計量である。また、例えば、統計的特徴量は、パワースペクトルの特定周波数成分のような周波数に関する特徴量である。また、例えば、統計的特徴量は、患者の体調の良し悪しを段階的に定義したレベルのような看護記録に関するものでもよい。
【0048】
なお、統計的特徴量は、上述した特徴量に基づいて計算される特徴量であってもよい。例えば、統計的特徴量は、変化量、変化率、二階差分のような時間的変化を表す特徴量である。また、例えば、統計的特徴量は、単純移動平均、加重移動平均、指数移動平均のような時間的変化のトレンドを表す特徴量である。
【0049】
そして、学習機能154が、患者に関する診療の実施時点以前の診療データに関する情報及び当該患者に関する所定の状態変化の発生に関する情報を学習用データとした機械学習によって、前述した学習済みモデルを生成する。
【0050】
例えば、学習機能154は、患者に関する対象期間内の診療データから算出された統計的特徴量及び当該患者に関する病状急変の有無を示す急変情報を学習用データとした機械学習によって、前述した学習済みモデルを生成する。
【0051】
具体的には、学習機能154は、生成機能153によって生成された学習用データを用いて、ロジスティック回帰、Neural Network等のアルゴリズムに基づく機械学習を行うことによって、学習済みモデルを生成する。そして、学習機能154は、生成した学習済みモデルを記憶回路120に記憶させる。このとき、学習機能154は、以前に作成した学習済みモデルが既に記憶回路120に記憶されていた場合には、記憶されている学習済みモデルを新しく作成した学習済みモデルで置き換える。
【0052】
ここで、本実施形態に係る処理回路150によって行われる学習時の処理に関する具体的な例を説明する。なお、ここでは、前述した所定日数を6日とし、病状急変が発生する確率を当該病状急変の6日前に予測する場合の例を説明する。この場合には、学習機能154によって、予測対象の患者に関する診療の実施日から6日後に当該患者に病状急変が発生する確率を出力するように機能付けられた学習モデルが生成される。
【0053】
図5は、第1の実施形態に係る処理回路150によって行われる学習時の処理に関する第1の例を示す図である。
【0054】
ここで、第1の例は、対象期間を、病状急変の発生日から6日だけ遡った日に含まれる一定期間とした場合の例である。なお、ここでは、一定期間を1日間とした場合の例を説明するが、一定期間は1日間に限られず、例えば、12時間や1週間であってもよい。
【0055】
この場合には、例えば、
図5に示すように、第2の取得機能152は、患者に関する診療データA及び診療データBそれぞれについて、病状急変の発生日から6日だけ遡った日の1日間の診療データと、当該患者に関する病状急変の有無を示す急変情報とを取得する。
【0056】
そして、生成機能153は、診療データA及び診療データBそれぞれについて、第2の取得機能152によって取得された1日間の診療データから、中央値、四分位範囲等の各種の統計的特徴量を算出する。また、生成機能153は、算出した統計的特徴量と、第2の取得機能152によって取得された急変情報とを患者ごとに対応付けたデータを学習用データとして生成する。
【0057】
そして、学習機能154は、生成機能153によって生成された学習用データを用いて、ロジスティック回帰、Neural Network等のアルゴリズムに基づく機械学習を行うことによって、学習済みモデルを生成する。
【0058】
これにより、第1の例では、予測対象の患者に関する診療の実施日の1日間の統計的特徴量の入力を受け付けて当該実施日から6日後に当該患者に病状急変が発生する確率を出力する学習済みモデルが生成される。
【0059】
図6は、第1の実施形態に係る処理回路150によって行われる学習時の処理に関する第2の例を示す図である。
【0060】
ここで、第2の例は、対象期間を、病状急変の発生日から6日だけ遡った日以前の異なる期間とし、各期間を、病状急変の発生日から6日だけ遡った日の一定期間を含むように設定した場合の例である。なお、ここでは、一定期間を1日間とした場合の例を説明するが、一定期間は1日間に限られず、例えば、12時間や1週間であってもよい。
【0061】
この場合には、例えば、
図6に示すように、第2の取得機能152は、患者に関する診療データA及び診療データBそれぞれについて、病状急変の発生日から6日だけ遡った日の1日間の診療データと、6日だけ遡った日及びその前日の2日間の診療データと、6日だけ遡った日、その前日及び前々日の3日間の診療データと、当該患者に関する病状急変の有無を示す急変情報とを取得する。
【0062】
そして、生成機能153は、診療データA及び診療データBそれぞれについて、第2の取得機能152によって取得された1日間の診療データ、2日間の診療データ、及び3日間の診療データそれぞれから、中央値、四分位範囲等の各種の統計的特徴量を算出する。また、生成機能153は、算出した統計的特徴量と、第2の取得機能152によって取得された急変情報とを患者ごとに対応付けたデータを学習用データとして生成する。
【0063】
そして、学習機能154は、生成機能153によって生成された学習用データを用いて、ロジスティック回帰、Neural Network等のアルゴリズムに基づく機械学習を行うことによって、学習済みモデルを生成する。
【0064】
これにより、第2の例では、予測対象の患者に関する診療の実施日の1日間の統計的特徴量、その前日を含む2日間の統計的特徴量、及び、さらに前々日を含む3日間の統計的特徴量の入力を受け付けて当該実施日から6日後に当該患者に病状急変が発生する確率を出力する学習済みモデルが生成される。
【0065】
図7は、第1の実施形態に係る処理回路150によって行われる学習時の処理に関する第3の例を示す図である。
【0066】
ここで、第3の例は、対象期間を、病状急変の発生日から6日だけ遡った日以前の複数の異なる期間の中から統計的特徴量に応じて選択された期間とした場合の例である。なお、ここでは、各期間を1日間とした場合の例を説明するが、各期間は1日間に限られず、例えば、12時間や1週間であってもよい。
【0067】
この場合には、例えば、
図7に示すように、第2の取得機能152は、患者に関する診療データA及び診療データBそれぞれについて、病状急変の発生日から6日だけ遡った日の1日間の診療データと、7日だけ遡った日の1日間の診療データと、8日だけ遡った日の1日間の診療データと、当該患者に関する病状急変の有無を示す急変情報とを取得する。なお、ここでは、連続した3日間の診療データを取得する場合の例を説明するが、診療データを取得する期間は必ずしも連続している必要はなく、不連続な期間であってもよい。
【0068】
そして、生成機能153は、診療データA及び診療データBそれぞれについて、第2の取得機能152によって取得された6日前の1日間の診療データ、7日前の1日間の診療データ、及び8日前の1日間の診療データそれぞれから、中央値、四分位範囲等の各種の統計的特徴量を算出する。その後、生成機能153は、算出された各種の統計的特徴量ごとに、3つの期間のうちのいずれかの期間を選択する。例えば、生成機能153は、3つの期間のうち、統計的特徴量の値が最も大きい期間を、選択する期間として決定する。また、生成機能153は、選択した期間の統計的特徴量と、第2の取得機能152によって取得された急変情報とを患者ごとに対応付けたデータを学習用データとして生成する。
【0069】
そして、学習機能154は、生成機能153によって生成された学習用データを用いて、ロジスティック回帰、Neural Network等のアルゴリズムに基づく機械学習を行うことによって、学習済みモデルを生成する。
【0070】
これにより、第3の例では、予測対象の患者に関する診療の実施日の1日間、その前日の1日間、及び前々日の1日間の中から統計的特徴量に応じて選択された期間の統計的特徴量の入力を受け付けて当該実施日から6日後に当該患者に病状急変が発生する確率を出力する学習済みモデルが生成される。
【0071】
図2に戻って、次に、運用時の処理について説明する。
【0072】
運用時には、第2の取得機能152が、患者に関する診療の実施時点以前の診療データを取得する。具体的には、運用時には、第2の取得機能152は、患者に関する診療の実施時点以前の特定の期間内の診療データを取得する。
【0073】
例えば、
図2の下側に示すように、運用時には、第2の取得機能152は、患者に関する診療の実施日又は当該実施日以前の対象期間内の診療データを取得する。
【0074】
具体的には、第2の取得機能152は、第1の取得機能151によって新しい診療データが取得された場合に、記憶回路120に記憶されている当該新しい診療データの患者に関する診療データのうち、当該新しい診療データの診療の実施日又は当該実施日以前の対象期間内の診療データを取得する。
【0075】
そして、制御機能155が、前述した学習済みモデルに対して、第2の取得機能152によって取得された診療データに関する情報を入力することで、当該実施時点から所定期間後における当該患者の病状急変の発生に関する情報を出力させるように制御する。
【0076】
例えば、制御機能155は、患者に関する診療の実施日又は当該実施日以前の対象期間内の診療データから算出された統計的特徴量を前述した学習済みモデルに入力することで、当該実施日から所定日数後に当該患者に病状急変が発生する確率を出力させるように制御する。
【0077】
具体的には、制御機能155は、第2の取得機能152によって取得された対象期間内の各種の診療データから、診療データごとに、各種の統計的特徴量を算出する。その後、制御機能155は、算出した統計的特徴量を記憶回路120に記憶されている学習済みモデルに入力することで、新しい診療データの診療の実施日から所定日数後に当該新しい診療データの患者に病状急変が発生する確率を出力させる。そして、制御機能155は、学習済みモデルから出力された確率を予測結果として記憶回路120に記憶させる。
【0078】
例えば、
図5に示した第1の例のように、予測対象の患者に関する診療の実施日の1日間の統計的特徴量の入力を受け付ける学習済みモデルが生成されている場合には、第2の取得機能152が、新しい診療データに関する診療の実施日の1日間の診療データを取得する。この場合に、制御機能155は、第2の取得機能152によって取得された1日間の診療データから、中央値、四分位範囲等の各種の統計的特徴量を算出し、算出した統計的特徴量を学習済みモデルに入力することで、病状急変が発生する確率を出力させる。
【0079】
また、例えば、
図6に示した第2の例のように、予測対象の患者に関する診療の実施日の1日間の統計的特徴量、その前日を含む2日間の統計的特徴量、及び、さらに前々日を含む3日間の統計的特徴量の入力を受け付ける学習済みモデルが生成されている場合には、第2の取得機能152が、新しい診療データに関する診療の実施日の1日間の診療データ、その前日を含む2日間の診療データ、及び、さらに前々日を含む3日間の診療データを取得する。この場合に、生成機能153は、第2の取得機能152によって取得された1日間の診療データ、2日間の診療データ、及び3日間の診療データそれぞれから、中央値、四分位範囲等の各種の統計的特徴量を算出し、算出した統計的特徴量を学習済みモデルに入力することで、病状急変が発生する確率を出力させる。
【0080】
また、例えば、
図7に示した第3の例のように、予測対象の患者に関する診療の実施日の1日間、その前日の1日間、及び前々日の1日間の中から統計的特徴量に応じて選択された期間の統計的特徴量の入力を受け付ける学習済みモデルが生成されている場合には、第2の取得機能152が、新しい診療データに関する診療の実施日の1日間の診療データ、その前日の1日間の診療データ、及び前々日の1日間の診療データを取得する。この場合に、生成機能153は、第2の取得機能152によって取得された6日前の1日間の診療データ、7日前の1日間の診療データ、及び8日前の1日間の診療データそれぞれから、中央値、四分位範囲等の各種の統計的特徴量を算出し、算出した統計的特徴量に応じて選択した期間の統計的特徴量を学習済みモデルに入力することで、病状急変が発生する確率を出力させる。
【0081】
そして、制御機能155は、患者に関する診療の実施時点以前の診療データに関する情報と、当該実施時点から所定期間後における当該患者の病状急変の発生に関する情報とをディスプレイ140に表示する。
【0082】
例えば、制御機能155は、患者に関する診療の実施日又は当該実施日以前の対象期間内の診療データから算出された統計的特徴量と、当該実施日から所定日数後に当該患者に病状急変が発生する確率を示す情報とディスプレイ140に表示する。
【0083】
具体的には、制御機能155は、統計的特徴量を学習済みモデルに入力した結果、病状急変が発生する確率が学習済みモデルから出力されると、当該確率を示す情報と、当該確率の根拠となった対象期間内の統計的特徴量に関する情報とをディスプレイ140に表示する。
【0084】
図8は、第1の実施形態に係る制御機能155によってディスプレイ140に表示される画面の一例を示す図である。
【0085】
例えば、
図8に示すように、制御機能155は、病状急変が発生する確率を示す情報(
図8に示す「発生確率 85%」)と、当該確率の根拠となった対象期間内の統計的特徴量(
図8に示す心拍数(Pulse)、呼吸数(Respiration))の経時的な推移を示す情報(
図8に示す黒い点をプロットした折れ線グラフ)をディスプレイ140に表示する。このとき、例えば、
図7に示した第3の例のように、統計的特徴量に応じて期間が選択される場合には、統計的特徴量ごとに期間が異なることもある。そのような場合には、例えば、制御機能155は、各統計的特徴量を、表示される期間が合うように位置をずらして重ねて表示する。
【0086】
なお、
図8では、病状急変が発生する確率の根拠となった統計的特徴量について、対象期間内だけでなく、対象期間以外の期間についても経時的な推移を示す情報を表示した場合の例を示している。この場合には、例えば、制御機能155は、表示した情報の中で、対象期間内の統計的特徴量に関する情報を強調して表示する。
【0087】
また、
図8では、統計的特徴量が中央値であり、統計的特徴量の経時的な変化を示す情報として、当該中央値を示す折れ線グラフを表示する場合の例を示しているが、例えば、統計的特徴量が中央値でない場合には、折れ線グラフで表現できないこともあり得る。そのような場合には、統計的特徴量の経時的な変化を示す情報は、折れ線グラフ以外の形態で表示されてもよい。例えば、
図8に折れ線グラフと一緒に示しているような箱ひげ図の箱で、統計的特徴量を表示してもよい。
【0088】
また、制御機能155は、記憶回路120に記憶されている予測結果を参照して、病状急変が発生する確率の経時的な推移を示す情報(
図8に示す白い点をプロットした折れ線グラフ)を表示する。ここで、例えば、制御機能155は、記憶回路120に記憶されている予測結果を参照して、当日から所定日数後に病状急変が発生する確率を示す情報を表示する。または、制御機能155は、当日に病状急変が発生する確率を示す情報を表示してもよい。そして、例えば、制御機能155は、最新の確率が所定の閾値を超えていた場合には、その確率を強調表示する。
【0089】
さらに、制御機能155は、学習済みモデルから出力された確率に対して当該病状急変が実際に発生したか否かを入力する操作を操作者から受け付け、入力された結果を急変情報にフィードバックする。
【0090】
例えば、制御機能155は、病状急変が発生する確率を示す情報とともに、当該病状急変が発生したことを受け付けるためのボタン(
図8に示す「発生」)と、当該病状急変が発生しなかったことを受け付けるためのボタン(
図8に示す「未発生」)を表示し、各ボタンを選択する操作を操作者から受け付ける。そして、制御機能155は、受け付けた結果を、記憶回路120に記憶されている急変情報に反映する。
【0091】
なお、例えば、制御機能155は、患者の診療データに基づいて、病状急変が実際に発生したか否かを判別し、判別した結果を急変情報にフィードバックしてもよい。例えば、制御機能155は、記憶回路120に記憶されている診療データを参照して、患者に治療介入の予定や緊急の処置(手術等)が行われたことを特定した場合に、病状急変が実際に発生したと判別する。
【0092】
ここで、例えば、制御機能155は、複数の患者について、
図8に示した画面に含まれる情報を簡略した情報を並べて一覧表示し、表示した一覧の中でいずれかの患者を指定する操作を操作者から受け付けた場合に、指定された患者について、
図8に示した画面を表示する。この場合に、例えば、制御機能155は、簡略化した情報については、病状急変の確率が閾値以上となっている患者の情報のみを絞り込んで表示してもよいし、全ての患者の情報を表示しつつ、病状急変の確率が閾値以上となっている患者の情報が強調されるように、当該患者の情報にフラグ等を付けて表示してもよい。
【0093】
以上、処理回路150が有する各処理機能について説明した。例えば、処理回路150は、プロセッサによって実現される。この場合に、処理回路150が有する処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路120に記憶されている。そして、処理回路150は、記憶回路120から各プログラムを読み出して実行することで、各プログラムに対応する機能を実現する。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路150は、
図1の処理回路150に示された各機能を有することとなる。なお、
図1では、単一のプロセッサによって各処理機能が実現されるものとして説明したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより機能を実現するものとしても構わない。また、処理回路150が有する処理機能は、単一又は複数の処理回路に適宜に分散又は統合されて実現されてもよい。また、
図1に示す例では、単一の記憶回路120が各処理機能に対応するプログラムを記憶するものとして説明したが、複数の記憶回路を分散して配置して、処理回路が個別の記憶回路から対応するプログラムを読み出す構成としても構わない。
【0094】
例えば、第1の取得機能151が電子カルテシステム300、放射線部門システム400、及び検体検査システム500から診療データを取得する処理は、例えば、処理回路150が第1の取得機能151に対応する所定のプログラムを記憶回路120から読み出して実行することにより実現される。
【0095】
また、例えば、第2の取得機能152、生成機能153、学習機能154、及び制御機能155によって行われる学習時の処理及び運用時の処理は、以下のように実現される。
【0096】
図9は、第1の実施形態に係る診療情報処理装置100によって行われる学習時の処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0097】
例えば、
図9に示すように、学習時には、第2の取得機能152が、予め決められたタイミング又は操作者から学習開始の指示を受け付けたタイミングで(ステップS111,Yes)、記憶回路120を参照して、複数の患者について、急変情報と、対象期間内の診療データとを取得する(ステップS112)。
【0098】
その後、生成機能153が、第2の取得機能152によって取得された対象期間内の診療データから統計的特徴量を算出し(ステップS113)、当該統計的特徴量と急変情報とを患者ごとに対応付けたデータを学習用データとして生成する(ステップS114)。
【0099】
そして、学習機能154が、生成機能153によって生成された学習用データを用いた機械学習によって、学習済みモデルを生成する(ステップS115)。
【0100】
ここで、上述したステップS111及びS112の処理は、例えば、処理回路150が第2の取得機能152に対応する所定のプログラムを記憶回路120から読み出して実行することにより実現される。また、上述したステップS113及びS114の処理は、例えば、処理回路150が生成機能153に対応する所定のプログラムを記憶回路120から読み出して実行することにより実現される。また、上述したステップS115の処理は、例えば、処理回路150が学習機能154に対応する所定のプログラムを記憶回路120から読み出して実行することにより実現される。
【0101】
図10は、第1の実施形態に係る診療情報処理装置100によって行われる運用時の処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0102】
例えば、
図10に示すように、運用時には、第2の取得機能152が、第1の取得機能151によって新しい診療データが取得された場合に(ステップS121,Yes)、記憶回路120を参照して、当該新しい診療データの患者について、対象期間内の診療データを取得する(ステップS122)。
【0103】
その後、制御機能155が、第2の取得機能152によって取得された対象期間内の診療データから統計的特徴量を算出し(ステップS123)、当該統計的特徴量を記憶回路120に記憶されている学習済みモデルに入力することで、病状急変が発生する確率を出力させる(ステップS124)。
【0104】
そして、制御機能155は、統計的特徴量の推移を示す情報と、学習済みモデルから出力された病状急変の発生確率を示す情報とをディスプレイ140に表示する(ステップS125)。
【0105】
ここで、上述したステップS121及びS122の処理は、例えば、処理回路150が第2の取得機能152に対応する所定のプログラムを記憶回路120から読み出して実行することにより実現される。また、上述したステップS123~S125の処理は、例えば、処理回路150が制御機能155に対応する所定のプログラムを記憶回路120から読み出して実行することにより実現される。
【0106】
上述したように、第1の実施形態では、第1の取得機能151が、患者に関する診療データを取得する。
【0107】
そして、学習時には、第2の取得機能152が、患者に関する病状急変の有無を示す急変情報と、患者に関する診療データのうち、病状急変の発生日から所定日数だけ遡った日又は当該遡った日以前の対象期間内の診療データとを取得する。また、生成機能153が、対象期間内の診療データから算出された統計的特徴量及び急変情報を含むデータを、予測対象の患者に関する診療の実施日又は当該実施日以前の対象期間内の統計的特徴量の入力を受け付けて当該実施日から所定日数後に当該患者に病状急変が発生する確率を出力する学習済みモデルを生成するための学習用データとして生成する。また、学習機能154が、患者に関する対象期間内の診療データから算出された統計的特徴量及び当該患者に関する病状急変の有無を示す急変情報を学習用データとした機械学習によって、前述した学習済みモデルを生成する。
【0108】
一方、運用時には、第2の取得機能152が、患者に関する病状急変の有無を示す急変情報と、患者に関する診療データのうち、病状急変の発生日から所定日数だけ遡った日又は当該遡った日以前の対象期間内の診療データとを取得する。また、制御機能155が、患者に関する診療の実施日又は当該実施日以前の対象期間内の診療データから算出された統計的特徴量を前述した学習済みモデルに入力することで、当該実施日から所定日数後に当該患者に病状急変が発生する確率を出力させるように制御する。また、制御機能155は、患者に関する診療の実施日又は当該実施日以前の対象期間内の診療データから算出された統計的特徴量と、当該実施日から所定日数後に当該患者に病状急変が発生する確率を示す情報とディスプレイ140に表示する。
【0109】
したがって、第1の実施形態によれば、特定の対象期間内の診療データから算出された統計的特徴量を用いることで、例えば、小児の診療データのように外れ値が多いデータが用いられる場合でも、心不全等の病状急変の前兆をより正確に予測することができる。
【0110】
(第2の実施形態)
なお、上述した第1の実施形態では、学習済みモデルに入力される情報が、患者に関する診療の実施時点以前の特定の期間内の診療データから算出された統計的特徴量である場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。
【0111】
例えば、学習済みモデルに入力される情報は、患者に関する診療の実施時点以前の特定の期間内の診療データから算出された統計的特徴量と、患者ごとに決められた基準期間内の診療データから算出された統計的特徴量との相対値であってもよい。
【0112】
例えば、学習済みモデルに入力される情報は、対象期間内の診療データから算出された統計的特徴量と、患者ごとに決められた基準期間内の診療データから算出された統計的特徴量との相対値であってもよい。以下では、このような場合の例を第2の実施形態として説明する。なお、第2の実施形態では、第1の実施形態と異なる点を主に説明することとし、第1の実施形態と共通する内容については詳細な説明を省略する。
【0113】
図11は、第2の実施形態に係る処理回路150によって行われる学習時及び運用時の処理を示す図である。
【0114】
まず、学習時の処理について説明する。
【0115】
例えば、
図11の上側に示すように、学習時には、第2の取得機能152が、第1の実施形態と同様に、患者に関する病状急変の有無を示す急変情報と、患者に関する診療データのうち、病状急変の発生日から所定日数だけ遡った日又は当該遡った日以前の対象期間内の診療データとを取得する。
【0116】
ここで、本実施形態では、第2の取得機能152は、さらに、患者に関する診療データのうち、患者ごとに決められた基準期間内の診療データを取得する。
【0117】
具体的には、第2の取得機能152は、記憶回路120に蓄積されている診療データに基づいて、患者ごとに特有の基準値(ベースライン値)に相当する診療データの期間を基準期間として決定し、決定した基準期間内の診療データを取得する。
【0118】
そして、生成機能153が、対象期間内の診療データから算出された統計的特徴量と、基準期間内の診療データから算出された統計的特徴量との相対値、及び急変情報を含むデータを、予測対象の患者に関する診療の実施日又は当該実施日以前の対象期間内の統計的特徴量の入力を受け付けて当該実施日から所定日数後に当該患者に病状急変が発生する確率を出力する学習済みモデルを生成するための学習用データとして生成する。
【0119】
具体的には、生成機能153は、第2の取得機能152によって取得された対象期間内の各種の診療データ(
図11に示す診療データA、B、C等)から、診療データごとに、各種の統計的特徴量(
図11に示す統計的特徴量a、b、c等)を算出する。さらに、生成機能153は、第2の取得機能152によって取得された基準期間内の各種の診療データ(
図11に示す診療データA、B、C等)から、診療データごとに、各種の統計的特徴量(
図11に示す統計的特徴量a、b、c等)を算出する。そして、生成機能153は、各統計的特徴量について、対象期間の統計的特徴量と基準期間の統計的特徴量との相対値を算出し、算出した相対値と、第2の取得機能152によって取得された急変情報とを患者ごとに対応付けたデータを学習用データとして生成する。
【0120】
そして、学習機能154が、患者に関する対象期間内の診療データから算出された統計的特徴量と、基準期間内の診療データから算出された統計的特徴量との相対値、及び当該患者に関する病状急変の有無を示す急変情報を学習用データとした機械学習によって、前述した学習済みモデルを生成する。
【0121】
ここで、本実施形態に係る処理回路150によって行われる学習時の処理に関する具体的な例を説明する。なお、ここでは、前述した所定日数を6日とし、病状急変が発生する確率を当該病状急変の6日前に予測する場合の例を説明する。この場合には、学習機能154によって、予測対象の患者に関する診療の実施日から6日後に当該患者に病状急変が発生する確率を出力するように機能付けられた学習モデルが生成される。
【0122】
図12及び13は、第2の実施形態に係る処理回路150によって行われる学習時の処理に関する例を示す図である。
【0123】
ここで、本例は、対象期間を、病状急変の発生日から6日だけ遡った日に含まれる一定期間とした場合の例である。なお、ここでは、一定期間を1日間とした場合の例を説明するが、一定期間は1日間に限られず、例えば、12時間や1週間であってもよい。
【0124】
この場合には、例えば、
図12に示すように、第2の取得機能152は、患者に関する診療データAについて、病状急変の発生日から6日だけ遡った日の1日間の診療データと、当該患者に関する病状急変の有無を示す急変情報とを取得する。
【0125】
また、第2の取得機能152は、さらに、患者に関する診療データAについて、患者ごとに、基準期間を決定し、決定した基準期間内の診療データを取得する。
【0126】
ここで、例えば、基準期間は、
図13に示すように、現在から遡って、一定期間内で診療データの値が最も安定している期間である(
図13に示す破線で囲んだ期間)。例えば、基準期間は、平均値や中央値等のトレンドを表す特徴量の変動が最も小さくなる期間や、分散や四分位範囲等のバラつきを表す特徴量が最も小さくなる期間等である。なお、例えば、基準期間は、患者の前回の入院期間の退院直前の期間や、入院直後の期間等であってもよい。また、例えば、基準期間は、診療データの長期の変化にトレンドがある場合には、トレンドに基づいて予測された外挿値を含む期間であってもよい。
【0127】
そして、生成機能153は、診療データAについて、第2の取得機能152によって取得された対象期間の診療データ及び基準期間の診療データそれぞれから、中央値、四分位範囲等の各種の統計的特徴量を算出する。その後、生成機能153は、対象期間内の診療データから算出された統計的特徴量と、基準期間内の診療データから算出された統計的特徴量との相対値を算出する。例えば、生成機能153は、引き算や割り算等の計算によって、相対値を算出する。また、生成機能153は、算出した相対値と、第2の取得機能152によって取得された急変情報とを患者ごとに対応付けたデータを学習用データとして生成する。
【0128】
そして、学習機能154は、生成機能153によって生成された学習用データを用いて、ロジスティック回帰、Neural Network等のアルゴリズムに基づく機械学習を行うことによって、学習済みモデルを生成する。
【0129】
これにより、本例では、予測対象の患者に関する診療の実施日の1日間の統計的特徴量と、患者ごとに決められた基準期間内の診療データから算出された統計的特徴量との相対値の入力を受け付けて当該実施日から6日後に当該患者に病状急変が発生する確率を出力する学習済みモデルが生成される。
【0130】
図11に戻って、次に、運用時の処理について説明する。
【0131】
例えば、
図11の下側に示すように、運用時には、第2の取得機能152が、第1の実施形態と同様に、患者に関する診療の実施日又は当該実施日以前の対象期間内の診療データを取得する。
【0132】
ここで、本実施形態では、第2の取得機能152は、さらに、患者に関する診療データのうち、患者ごとに決められた基準期間内の診療データを取得する。
【0133】
そして、制御機能155が、患者に関する診療の実施日又は当該実施日以前の対象期間内の診療データから算出された統計的特徴量と、基準期間内の診療データから算出された統計的特徴量との相対値を前述した学習済みモデルに入力することで、当該実施日から所定日数後に当該患者に病状急変が発生する確率を出力させるように制御する。
【0134】
具体的には、制御機能155は、第2の取得機能152によって取得された対象期間内の各種の診療データ及び基準期間内の診療データそれぞれから、診療データごとに、各種の統計的特徴量を算出する。その後、制御機能155は、対象期間の統計的特徴量と基準期間の統計的特徴量との相対値を算出し、算出した相対値を記憶回路120に記憶されている学習済みモデルに入力することで、新しい診療データの診療の実施日から所定日数後に当該新しい診療データの患者に病状急変が発生する確率を出力させる。そして、制御機能155は、学習済みモデルから出力された確率を予測結果として記憶回路120に記憶させる。
【0135】
例えば、
図12に示した例のように、予測対象の患者に関する診療の実施日の1日間の統計的特徴量と、患者ごとに決められた基準期間内の診療データから算出された統計的特徴量との相対値の入力を受け付ける学習済みモデルが生成されている場合には、第2の取得機能152が、新しい診療データに関する診療の実施日の1日間の診療データと、患者ごとに決められた基準期間内の診療データとを取得する。この場合に、制御機能155は、第2の取得機能152によって取得された1日間の診療データ及び基準期間の診療データそれぞれから、中央値、四分位範囲等の各種の統計的特徴量を算出し、さらに、それぞれの特徴量の相対値を算出し、算出した相対値を学習済みモデルに入力することで、病状急変が発生する確率を出力させる。
【0136】
そして、制御機能155は、第1の実施形態と同様に、患者に関する診療の実施日又は当該実施日以前の対象期間内の診療データから算出された相対値と、当該実施日から所定日数後に当該患者に病状急変が発生する確率を示す情報とディスプレイ140に表示する。
【0137】
例えば、上述した第2の取得機能152、生成機能153、学習機能154、及び制御機能155によって行われる学習時の処理及び運用時の処理は、以下のように実現される。
【0138】
図14は、第2の実施形態に係る診療情報処理装置100によって行われる学習時の処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0139】
例えば、
図14に示すように、学習時には、第2の取得機能152が、予め決められたタイミング又は操作者から学習開始の指示を受け付けたタイミングで(ステップS211,Yes)、記憶回路120を参照して、複数の患者について、急変情報と、対象期間内の診療データとを取得する(ステップS212)。
【0140】
さらに、第2の取得機能152は、患者ごとに、診療データに基づいて基準期間を決定し、基準期間内の診療データを取得する(ステップS213)。
【0141】
その後、生成機能153が、第2の取得機能152によって取得された対象期間内の診療データから統計的特徴量を算出し(ステップS214)、さらに、基準期間内の診療データから統計的特徴量を算出する(ステップS215)。
【0142】
その後、生成機能153は、対象期間の統計的特徴量と基準期間の統計的特徴量との相対値を算出し(ステップS216)、算出した相対値と急変情報とを患者ごとに対応付けたデータを学習用データとして生成する(ステップS217)。
【0143】
そして、学習機能154が、生成機能153によって生成された学習用データを用いた機械学習によって、学習済みモデルを生成する(ステップS218)。
【0144】
ここで、上述したステップS211~S213の処理は、例えば、処理回路150が第2の取得機能152に対応する所定のプログラムを記憶回路120から読み出して実行することにより実現される。また、上述したステップS214~S217の処理は、例えば、処理回路150が生成機能153に対応する所定のプログラムを記憶回路120から読み出して実行することにより実現される。また、上述したステップS218の処理は、例えば、処理回路150が学習機能154に対応する所定のプログラムを記憶回路120から読み出して実行することにより実現される。
【0145】
図15は、第2の実施形態に係る診療情報処理装置100によって行われる運用時の処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0146】
例えば、
図15に示すように、運用時には、第2の取得機能152が、第1の取得機能151によって新しい診療データが取得された場合に(ステップS221,Yes)、記憶回路120を参照して、当該新しい診療データの患者について、対象期間内の診療データを取得する(ステップS222)。
【0147】
さらに、第2の取得機能152は、当該新しい診療データの患者について、診療データに基づいて基準期間を決定し、基準期間内の診療データを取得する(ステップS223)。
【0148】
その後、制御機能155が、第2の取得機能152によって取得された対象期間内の診療データから統計的特徴量を算出し(ステップS224)、さらに、基準期間内の診療データから統計的特徴量を算出する(ステップS225)。
【0149】
その後、制御機能155は、対象期間の統計的特徴量と基準期間の統計的特徴量との相対値を算出し(ステップS226)、算出した相対値を記憶回路120に記憶されている学習済みモデルに入力することで、病状急変が発生する確率を出力させる(ステップS227)。
【0150】
そして、制御機能155は、統計的特徴量の推移を示す情報と、学習済みモデルから出力された病状急変の発生確率を示す情報とをディスプレイ140に表示する(ステップS228)。
【0151】
ここで、上述したステップS221~S223の処理は、例えば、処理回路150が第2の取得機能152に対応する所定のプログラムを記憶回路120から読み出して実行することにより実現される。また、上述したステップS224~S228の処理は、例えば、処理回路150が制御機能155に対応する所定のプログラムを記憶回路120から読み出して実行することにより実現される。
【0152】
上述したように、第2の実施形態では、学習済みモデルに入力される情報を、対象期間内の診療データから算出された統計的特徴量と、患者ごとに決められた基準期間内の診療データから算出された統計的特徴量との相対値としている。
【0153】
したがって、第2の実施形態によれば、患者ごとに基準値が異なるような場合でも、心不全等の病状急変の前兆をより正確に予測することができる。
【0154】
(他の実施形態)
なお、上述した各実施形態では、診療情報処理装置100が、日単位で患者の病状急変の発生を予測する場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、診療情報処理装置100は、時単位で患者の病状急変の発生を予測してもよい。
【0155】
その場合には、例えば、学習済みモデルは、予測対象の患者に関する診療の実施時点以前の診療データとして、時間で表される特定の期間内の診療データを入力し、当該実施時点から所定時間後における患者の病状急変の発生に関する情報を出力する。
【0156】
また、第2の取得機能152は、学習時には、病状急変の発生時点から所定時間だけ遡った時点以前の特定の期間内の診療データを取得し、運用時には、患者に関する診療の実施時点以前の診療データとして、時間で表される特定の期間内の診療データを取得する。
【0157】
この場合に、例えば、診療情報処理装置100は、運用時に、病状急変の予測に用いる診療データの期間を一部が重複するようにずらしながら、当該期間よりも短い時間間隔で患者の病状急変の発生を予測するようにしてもよい。
【0158】
具体的には、この場合には、制御機能155が、第2の取得機能152が診療データを取得する特定の期間よりも短い時間間隔で、患者の病状急変に関する情報を学習済みモデルに出力させることによって病状急変を予測する。例えば、制御機能155は、8時間ごとに、患者の病状急変に関する情報を学習済みモデルに出力させる。
【0159】
また、第2の取得機能152が、制御機能155が病状急変を予測するごとに、診療データを取得する期間を一部が重複するようにずらしながら、診療データを取得する。例えば、第2の取得機能152は、制御機能155が8時間ごとに病状急変を予測する場合には、24時間分の診療データを取得することで、16時間分の診療データを重複させながら、診療データを取得する。
【0160】
また、上述した各実施形態では、病状急変の発生に関する情報が、病状急変が発生する確率である場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。
【0161】
例えば、病状急変の発生に関する情報は、病状急変の有無を示す情報であってもよい。
【0162】
この場合には、例えば、学習済みモデルが、入力された診療データに基づいて病状急変が発生する確率を導出した後に、導出した確率の大きさに応じて病状急変の有無を判定し、判定結果を出力する。そして、制御機能155が、学習済みモデルから出力された判定結果に基づいて、病状急変の有無を示す情報をディスプレイ140に表示する。
【0163】
または、例えば、学習済みモデルは上述した各実施形態と同様に病状急変が発生する確率を出力し、制御機能155が、学習済みモデルから出力された確率の大きさに応じて病状急変の有無を判定し、その判定結果に基づいて、病状急変の有無を示す情報をディスプレイ140に表示してもよい。
【0164】
この場合に、例えば、学習済みモデル又は制御機能155は、導出した確率が所定の閾値(例えば、10%等)未満である場合は、病状急変が無いと判定し、導出した確率が当該閾値以上である場合は、病状急変が有ると判定する。
【0165】
または、例えば、病状急変の発生に関する情報は、病状急変が発生する確かさの度合いを示すスコアであってもよい。
【0166】
この場合には、例えば、学習済みモデルが、入力された診療データに基づいて病状急変が発生する確率を導出した後に、導出した確率の大きさを示すスコアを算出して出力する。そして、制御機能155が、学習済みモデルから出力されたスコアを示す情報をディスプレイ140に表示する。
【0167】
または、例えば、学習済みモデルは上述した各実施形態と同様に病状急変が発生する確率を出力し、制御機能155が、学習済みモデルから出力された確率の大きさを示すスコアを算出し、算出したスコアを示す情報をディスプレイ140に表示してもよい。
【0168】
または、例えば、確率からスコアを算出するのではなく、初めから病状急変をスコアで学習するようにしてもよい。その場合には、学習機能154が、スコアを学習用データに含めた機械学習を行うことによって、スコアを病状急変の発生に関する情報として出力する学習済みモデルを生成してもよい。
【0169】
なお、例えば、学習済みモデル又は制御機能155は、スコアの代わりに、高/中/低のような複数の度合いを用いて、確率の大きさを示すようにしてもよい。
【0170】
また、上述した各実施形態では、運用時に、制御機能155が、1つの時点で学習済みモデルから出力された病状急変の発生に関する情報をディスプレイ140に表示させる場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。
【0171】
例えば、制御機能155は、1つの時点で学習済みモデルから出力された情報に加えて、その直前の複数の時点で学習済みモデルから出力された情報に基づいて、病状急変の発生に関する情報をディスプレイ140に表示させてもよい。すなわち、制御機能155は、1つの時点における予測結果だけでなく、その直前の複数の時点における予測結果も加味して、病状急変の発生を予測する。
【0172】
この場合に、例えば、制御機能155は、1つの時点で学習済みモデルから出力された確率を、その直前の複数の時点で学習済みモデルから出力された確率に基づいて補正して、ディスプレイ140に表示させる。
【0173】
例えば、制御機能155は、1つの時点で学習済みモデルから出力された確率と、その直前の複数の時点で学習済みモデルから出力された確率との平均値を算出して、ディスプレイ140に表示させる。このとき、制御機能155は、複数の時点に基づく平均値のみを表示させてもよいし、1つの時点における確率と、複数の時点に基づく平均値とを同時に表示させてもよい。
【0174】
または、例えば、制御機能155は、前述したように、病状急変の発生に関する情報として、病状急変の有無を示す情報を表示させる場合に、1つの時点における確率だけではなく、その直前の複数の時点における確率を加味して、病状急変の有無を判定するようにしてもよい。
【0175】
この場合に、例えば、制御機能155は、1つの時点における確率と、その直前の複数の時点における確率とに基づいて、複数の確率が連続して所定の閾値(例えば、10%等)以上となっていた場合に、病状急変が有ると判定し、それ以外の場合に、病状急変が無いと判定する。または、例えば、制御機能155は、複数の確率が連続して増加していた場合に病状急変が有ると判定し、それ以外の場合に病状急変が無いと判定してもよい。
【0176】
ここで、例えば、制御機能155は、前述したように、複数の患者について、
図8に示した画面に含まれる情報を簡略した情報を並べて一覧表示する場合には、病状急変が有ると判定した患者を一覧上で強調して表示するようにしてもよい。
【0177】
また、上述した各実施形態では、学習済みモデルに入力される診療データに関する情報が、統計的特徴量又は統計的特徴量の相対値である場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、学習済みモデルに入力される診療データに関する情報は、診療データ自体であってもよい。すなわち、この場合には、学習モデルが、入力された診療データから統計的特徴量を算出するようにさらに機能付けられていている。そして、この場合には、制御機能155が、診療データを学習モデルに入力することで、病状急変が発生する確率を出力させる。
【0178】
また、上述した各実施形態では、1つの診療情報処理装置100で学習と運用とを行う場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、学習済みモデルを生成する学習時の処理は、診療情報処理装置100とは別の装置(以下、モデル生成装置と呼ぶ)で行うようにしてもよい。例えば、モデル生成装置は、電子カルテシステム300、放射線部門システム400、及び検体検査システム500によって生成された診療データを随時取得して蓄積し、定期的に、学習済みモデルを生成又は更新する。この場合には、モデル生成装置が、学習済みモデルの生成で用いられる急変情報を記憶し、診療情報処理装置100は、実際に発生したか否かを示す情報をモデル生成装置にフィードバックする。そして、診療情報処理装置100は、予め決められたタイミング又は操作者からモデル取得の指示を受け付けたタイミングで、モデル生成装置から学習済みモデルを取得して、記憶回路120に記憶させる。
【0179】
また、上述した各実施形態では、診療情報処理装置100が予測する所定の状態変化を病状急変とした場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、診療情報処理装置100は、各実施形態で説明した方法と同様の方法により、治療の副作用発生や、術後感染のような治療対象の疾患とは直接関係のない理由での状態悪化等の他の状態変化を予測することも可能である。
【0180】
また、上述した各実施形態では、本明細書における第1の取得部、第2の取得部、生成部、学習部、及び制御部を、それぞれ、処理回路150の第1の取得機能151、第2の取得機能152、生成機能153、学習機能154、及び制御機能155によって実現する場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、本明細書における第1の取得部、第2の取得部、生成部、学習部、及び制御部は、実施形態で述べた第1の取得機能151、第2の取得機能152、生成機能153、学習機能154、及び制御機能155によって実現する他にも、ハードウェアのみ、又は、ハードウェアとソフトウェアとの混合によって同機能を実現するものであっても構わない。
【0181】
なお、上述した説明で用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサは、記憶回路120に保存されたプログラムを読み出して実行することで、機能を実現する。なお、記憶回路120にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むように構成しても構わない。この場合は、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出して実行することで機能を実現する。また、本実施形態のプロセッサは、単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて一つのプロセッサとして構成され、その機能を実現するようにしてもよい。
【0182】
ここで、プロセッサによって実行されるプログラムは、ROM(Read Only Memory)や記憶回路等に予め組み込まれて提供される。なお、このプログラムは、これらの装置にインストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD(Compact Disk)-ROM、FD(Flexible Disk)、CD-R(Recordable)、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記録されて提供されてもよい。また、このプログラムは、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納され、ネットワーク経由でダウンロードされることにより提供又は配布されてもよい。例えば、このプログラムは、上述した各機能部を含むモジュールで構成される。実際のハードウェアとしては、CPUが、ROM等の記憶媒体からプログラムを読み出して実行することにより、各モジュールが主記憶装置上にロードされて、主記憶装置上に生成される。
【0183】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、病状急変の前兆をより正確に予測することができる。
【0184】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0185】
100 診療情報処理装置
150 処理回路
151 第1の取得機能
152 第2の取得機能
153 生成機能
154 学習機能
155 制御機能