(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】パネル構造体及びパネル構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
E04C 2/08 20060101AFI20240408BHJP
E04H 7/04 20060101ALN20240408BHJP
【FI】
E04C2/08 E
E04H7/04
(21)【出願番号】P 2019125977
(22)【出願日】2019-07-05
【審査請求日】2022-06-10
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】森下 邦宏
(72)【発明者】
【氏名】松原 直哉
【審査官】荒井 隆一
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-120895(JP,A)
【文献】特開昭51-056530(JP,A)
【文献】特開昭49-114685(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04C 2/00- 2/54
E04H 7/04ー 7/16
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1パネルと、
前記第1パネルと接合する第2パネルと、を備え、
前記第2パネルは、前記第1パネルの板面と接合する接合部と、前記第1パネルの前記板面から離間するとともに前記板面と対向する基部と、前記基部と前記接合部とを接続する複数の接続部と、を一体的に有し、
前記接続部は、所定方向の一端部が前記基部と接続し、前記所定方向の他端部が前記接合部と接続し、前記所定方向の断面形状が屈曲または湾曲していて、
隣接する前記接続部同士の間には、開口が形成されていて、
前記接合部は、
前記板面を見た際に複数の頂点を有する多角形状であって、
前記接続部は、前記接合部の前記頂点を挟んだ領域に接続されてい
て、
前記接続部同士は、離間しているパネル構造体。
【請求項2】
前記接合部は、縁から屈曲して前記基部の方向へ延びるフランジ部を備え、
前記接続部は、前記フランジ部と接続されていて、
前記接合部の周方向における前記フランジ部の長さは、前記周方向における前記接続部の長さよりも長い請求項1に記載のパネル構造体。
【請求項3】
第1パネルと、前記第1パネルと接合する第2パネルと、を備えるパネル構造体の製造方法であって、
前記第2パネルは、前記第1パネルの板面と接合する接合部と、前記第1パネルの前記板面から離間するとともに前記板面と対向する基部と、前記基部と前記接合部とを接続する複数の接続部と、を一体的に有し、
前記接続部は、所定方向の一端部が前記基部と接続し、前記所定方向の他端部が前記接合部と接続し、前記所定方向の断面形状が屈曲または湾曲していて、
隣接する前記接続部同士の間には、開口が形成されていて、
前記接合部は、
前記板面を見た際に複数の頂点を有する多角形状であって、
前記接続部は、前記接合部の前記頂点を挟んだ領域に接続されていて、
前記接続部同士は、離間していて、
平板状の部材に前記開口を形成する開口形成工程と、
前記開口形成工程で前記開口を形成した前記部材に対してプレス加工を施して前記第2パネルを成型するプレス加工工程と、
前記プレス加工工程で成型した前記第2パネルの前記接合部と前記第1パネルの前記板面とを接合する接合工程と、を備えたパネル構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、パネル構造体及びパネル構造体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
1枚の板材に面外剛性を高める突起を形成し、その板材の突起と別の平板状の板材とを接合したパネル構造が提案されている(例えば、特許文献1)。
特許文献1には、立体トラス状の金属板と平面金属板とを備える構造体が記載されている。立体トラス状の金属板は、プレス加工によって成型されていて、頂点に円形のリブ付き開口が設けられている。一方、平面金属板は、プレス加工によって成型した突起部が設けられている。突起部をリブ付き開口に嵌挿し、円周外側に向けて拡張変形することにより、金属板と金属板を緊結固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されている構造体は、採光器具や換気器具を支持するものであり、大きな荷重が作用することが想定されていない。特に、頂点で接続される4本の柱部が平板状に形成されているため、構造体に荷重が作用すると、この柱部が座屈を起こしてしまう可能性がある。
【0005】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであって、剛性をより向上させることができるパネル構造体及びパネル構造体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示のパネル構造体及びパネル構造体の製造方法は以下の手段を採用する。
本開示の一態様に係るパネル構造体は、第1パネルと、前記第1パネルと接合する第2パネルと、を備え、前記第2パネルは、前記第1パネルの板面と接合する接合部と、前記第1パネルの前記板面から離間するとともに前記板面と対向する基部と、前記基部と前記接合部とを接続する複数の接続部と、を一体的に有し、前記接続部は、所定方向の一端部が前記基部と接続し、前記所定方向の他端部が前記接合部と接続し、前記所定方向の断面形状が屈曲または湾曲していて、隣接する前記接続部同士の間には、開口が形成されている。
【0007】
本開示の一態様に係るパネル構造体の製造方法は、第1パネルと、前記第1パネルと接合する第2パネルと、を備えるパネル構造体の製造方法であって、前記第2パネルは、前記第1パネルの板面と接合する接合部と、前記第1パネルの前記板面から離間するとともに前記板面と対向する基部と、前記基部と前記接合部とを接続する複数の接続部と、を一体的に有し、前記接続部は、所定方向の一端部が前記基部と接続し、前記所定方向の他端部が前記接合部と接続し、前記所定方向の断面形状が屈曲または湾曲していて、隣接する前記接続部同士の間には、開口が形成されていて、平板状の部材に前記開口を形成する開口形成工程と、前記開口形成工程で前記開口を形成した前記部材に対してプレス加工を施して前記第2パネルを成型するプレス加工工程と、前記プレス加工工程で成型した前記第2パネルの前記接合部と前記第1パネルの前記板面とを接合する接合工程と、を備えている。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、パネル構造体の全体の剛性をより向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の一実施形態に係るパネル構造体の要部切欠斜視図である。
【
図2】
図1のパネル構造体の補剛パネルの平面図である。
【
図3】
図2の補剛パネルの要部を拡大した模式的な平面図である。
【
図5】
図2の補剛パネルの要部を拡大した模式的な側面図である。
【
図6】
図3の補剛パネルの天板板と柱部との接続部分の模式的な斜視図である。
【
図7】
図2の補剛パネルを製造する方法を示す模式的な平面図である。
【
図8】
図3に示す補剛パネルの変形例を示す図である。
【
図11】
図5に示す補剛パネルの変形例を示す断面図である。
【
図12】
図5に示す補剛パネルの変形例を示す断面図である。
【
図13】
図3に示す補剛パネルの変形例を示す図である。
【
図14】
図13の補剛パネルの天板板と柱部との接続部分の模式的な斜視図である。
【
図15】
図3に示す補剛パネルの変形例を示す図である。
【
図16】
図15の補剛パネルの天板板と柱部との接続部分の模式的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本開示の実施形態に係るパネル構造体及びパネル構造体の製造方法について、図面を参照して説明する。
本実施形態に係るパネル構造体1は、例えば、燃料タンクやLNGタンクなどの直径が大きい円筒状のタンクの壁部に適用される。なお、パネル構造体1は、タンクの壁部以外に適用されてもよい。例えば、サイロの壁部などに適用してもよい。
【0011】
図1に示すように、パネル構造体1は、平板状の被補剛パネル(第1パネル)10と、被補剛パネル10と接合し被補剛パネル10を補剛する補剛パネル(第2パネル)20と、を備えている。被補剛パネル10及び補剛パネル20は、例えば、アルミニウム等の金属で形成されている。なお、被補剛パネル10及び補剛パネル20の原料は、金属であればよく、アルミニウムに限定されない。
【0012】
補剛パネル20は、平板状の基部21と、基部21から被補剛パネル10方向へ突出する複数の突起部22と、を一体的に有している。各突起部22は、外形が三角錐台形状に形成されている。なお、以下の説明において、被補剛パネル10側から補剛パネル20の板面を見た場合を「平面視」と称し、平面視と交差する方向から補剛パネル20を見た場合を「側面視」と称する。
基部21は、被補剛パネル10の板面の一面10a(補剛パネル20側の面)から離間している。また、基部21は、被補剛パネル10の一面10aと略平行に対向するように配置されている。また、基部21は、突起部22の外端(三角錐台の下端の三角形)を規定する縁部21bを有する。縁部21bは、平面視が略正三角形状をしている。なお、外端とは、X方向及びY方向によって形成される面における外端を意味する。縁部21bは、後述する開口及び柱部24と基部21との接続部分によって構成される。突起部22の外端を規定する正三角形の一辺の長さL1は、例えば、数十mm~数百mmであって、パネル構造体1が必要とする剛性に応じて決定される。
【0013】
複数の突起部22は、一方向(
図1及び
図2のX方向)に列となるように等間隔で並んで配置されるとともに、この列が一方向と交差する方向(
図1及び
図2のY方向)に複数形成されるように配置されている。また、突起部22が千鳥配置となるように、隣接する列同士で突起部22の位置がずれるように配置されている。補剛パネル20(基部21及び突起部22)は、平板状の金属板に対してプレス加工を施すことで形成されている。突起部22を形成する方法についての詳細は、後述する。
【0014】
次に、各突起部22の形状について説明する。各突起部22の形状は、同形状であるため、以下では代表として1つの突起部22の形状について説明する。
突起部22は、
図3に示すように、被補剛パネル10の板面の一面と接合する天端板部(接合部)23と、天端板部23と基部21とを接続する3つの柱部(接続部)24と、一体的に有している。突起部22は、上述のように平板状の金属板に対してプレス加工を施すことで形成されている。このため、突起部22の内側は中空であり、内部空間が形成されている。この内部空間は、後述する開口25によって、突起部22の外側の外部空間と連通している。
【0015】
天端板部23は、基部21と略平行に配置される板状の部材である。天端板部23は、平面視で、3つの頂点を有する略正三角形状に形成されている。天端板部23は、板面の一面(以下、「接合面23a」という。)は、被補剛パネル10の一面10aと面接触している(
図5参照)。また、天端板部23の接合面23aは、被補剛パネル10の一面10aと接合されている。
【0016】
次に、
図3から
図6を用いて、各柱部24について説明する。3つの柱部24は、各々、天端板部23の対応する各頂点に接続している。また、3つの柱部24は、天端板部23の周方向に離間している。また、3つの柱部24は、一端から他端に向かって他の柱部24に近づくように傾斜している。各柱部24の形状は、同形状であるため、以下では代表として1つの柱部24について説明する。また、
図3及び
図6において、太線部分は、屈曲部分を示している。
【0017】
柱部24は、
図5に示すように、基部21の縁部21bから屈曲して接合面23a部に向かって延びる板状の部材である。換言すれば、柱部24の所定方向の一端部24aは、基部21の縁部21bに接続している。詳細には、
図3に示すように、柱部24の一端部24aは、縁部21bのうち、頂点を含んだ接続領域Bに接続している。接続領域Bとは、頂点を挟んだ縁部21bの辺部分の一部の領域である。詳細には、接続領域Bは、当該辺部分の中点よりも頂点側の範囲に設けられる。すなわち、接続領域Bは、隣接する柱部24と基部21との接続領域と、離間している。
【0018】
また、柱部24は、
図5及び
図6に示すように、天端板部23の外縁から屈曲して基部21に向かって延びている。換言すれば、柱部24の所定方向の他端部24bは、天端板部23の外縁に接続している。詳細には、
図3及び
図6に示すように、柱部24の他端部24bは、天端板部23の外縁のうち、頂点を含んだ接続領域Aに接続している。接続領域Aとは、頂点を挟んだ天端板部23の辺部分の一部の領域である。詳細には、接続領域Aは、当該辺部分の中点よりも頂点側の範囲に設けられる。すなわち、接続領域Aは、隣接する柱部24と天端板部23との接続領域と、離間している。
【0019】
また、柱部24は、
図3、
図4及び
図6に示すように、所定方向の断面形状が屈曲している。詳細には、柱部24は、所定方向の断面形状が、略中央領域の1か所で突起部22の外側方向に突出するように屈曲している。屈曲部分24cは、所定方向の全域に亘って形成されている。屈曲部分24cが為す角度θ1は、所定方向で一様に同じ角度であってもよく、また、所定方向の位置によって角度を変化させてもよい。
図3及び
図4の例では、所定方向の真ん中位置における屈曲部分24cの角度θ1が、所定方向の端部における屈曲部分24cの角度θ2(
図6参照。約60度)よりも大きくなるように、柱部24を形成している。
【0020】
上述のように、3つの柱部24は、天端板部23の周方向に離間している。隣接する柱部24同士の間には、
図3に示すように、3つの開口25が形成されている。各開口25の形状は、同形状であるため、以下では代表として1つの開口25について説明する。
開口25は、平面視及び側面視で、台形状に形成されている。開口25は、天端板部23と柱部24と縁部21bとによって規定されている。詳細には、開口25の短辺は、天端板部23の外縁のうち接続領域A以外の部分によって規定されている。開口25の長辺は、基部21の縁部21bのうち接続領域B以外の部分によって規定されている。開口25の両斜辺は、隣接する柱部24同士によって規定されている。
【0021】
次に、パネル構造体1の製造方法について
図7等を用いて説明する。
まず、平板状の金属板材29を用意する。次に、
図7に示すように、金属板材29に台形状の貫通孔30を形成する(開口形成工程)。貫通孔30は、完成後の補剛パネル20における開口25となる部分である。よって、貫通孔30は、上述の開口25と同形状となるように形成される。また、貫通孔30は、近接して3つ形成される。3つの貫通孔30は、斜辺が略平行となるように、周方向に並んで配置される。この3つの貫通孔30が、完成後の補剛パネル20における1つの突起部22に含まれる3つの開口25となる。以下、近接して配置される3つの貫通孔30を、「貫通孔セット」と称する。貫通孔セットは、X方向に列となるように等間隔で並ぶように形成されている。また、この列がY方向に複数形成されるように配置されている。また、貫通孔セットが千鳥配置となるように、隣接する列同士で貫通孔セットの位置がずれるように形成されている。すなわち、貫通孔セットは、完成後の補剛パネル20における突起部22と対応するように、形成される。
【0022】
3つの貫通孔30の短辺に囲まれた部分は、完成後の補剛パネル20における天端板部23となる。以下、完成後の補剛パネル20における天端板部23となる部分を、天端板対応部27と称する。また、隣接する貫通孔30の斜辺同士の間の部分は、完成後の補剛パネル20における柱部24となる。以下、完成後の補剛パネル20における柱部24となる部分を、柱対応部28と称する。
【0023】
次に、貫通孔30を形成した金属板材29に対して、プレス加工機によってプレス加工を施す(プレス加工工程)。プレス加工機は、補剛パネル20に対応する型によってプレス加工を施す。プレス加工を施すことによって、天端板対応部27と柱対応部28との接続部分等が屈曲し、天端板対応部27が天端板部23となるとともに柱対応部28が柱部24となる。これにより、上述の形状の補剛パネル20が成型される(
図2参照)。なお、
図7における破線は、プレス加工を施すことで屈曲する部分を示している。
【0024】
次に、補剛パネル20の天端板部23の接合面23aと、被補剛パネル10の一面とを接合する。天端板部23と被補剛パネル10とを接合する方法は、特に限定されない。接着剤で接合してもよく、溶接で接合してもよい。
すべての天端板部23の接合面23aと被補剛パネル10とを接合すると、パネル構造体1の製造が完了する。
【0025】
完成したパネル構造体1は、適宜タンクの壁部等適用先に適用される。なお、パネル構造体1をタンク等の壁部に適用する場合には、補剛パネル20がタンクの内部に位置するように適用してもよく、また、補剛パネル20がタンクの外部に位置するように適用してもよい。
【0026】
本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
本実施形態では、被補剛パネル10と補剛パネル20とが接合し、補剛パネル20の一部(柱部24及び基部21)が、被補剛パネル10から離間するように設けられている。これにより、補剛パネル20は、被補剛パネル10を補強するリブの役割を果たす。したがって、パネル構造体1全体の剛性を向上させることができる。
【0027】
本実施形態では、被補剛パネル10と補剛パネル20の天端板部23とが接合されている。また、天端板部23と基部21とが柱部24によって接続されている。すなわち、被補剛パネル10及び基部21を柱部24が支持することで、被補剛パネル10と基部21とが離間した状態を維持している。本実施形態では、柱部24の断面形状が屈曲している。このため、柱部24の剛性を向上させることができる。よって、被補剛パネル10と基部21とが離間した状態を、好適に維持することができる。したがって、パネル構造体1の全体の剛性をより向上させることができる。
【0028】
特に、本実施形態では、天端板部23が平面視で正三角形状をしている。被補剛パネル10に荷重が作用すると、被補剛パネル10から補剛パネル20の天端板部23へ荷重が入力する。天端板部23へ入力した荷重は、柱部24を介して基部21へ入力する。天端板部23から基部21へと荷重が入力する際に、三角形状の天端板部23の頂点に応力が集中する。本実施形態では、天端板部23の頂点に柱部24が接続されているため、応力の集中する頂点を柱部24によって補強することができる。これにより、パネル構造体1全体の剛性を向上させることができる。
【0029】
本実施形態では、複数の柱部24同士の間には開口25が形成されている。これにより、開口25が形成されていない構造と比較して、パネル構造体1を軽量化することができる。
また、本実施形態では、平板状の金属板材29に開口25(貫通孔30)を形成してからプレス加工を施して補剛パネル20を成型している。これにより、開口25が形成されていない金属板材をプレス加工する場合と比較して、塑性化させる領域が小さくなるので、プレス加工に要するエネルギを低減することができる。よって、パネル構造体1を容易に製造することができる。また、塑性化させる領域が小さいので、板厚を増加させやすく、容易に補剛効果を向上させることができる。
なお、開口25が形成されていない板材をプレス加工する場合とは、例えば、補剛パネル20に開口25が形成されていないパネル構造体1を製造する場合や、プレス加工を施してから開口25を形成することでパネル構造体1を製造する場合などである。
【0030】
本実施形態では、天端板部23の頂点に接続される柱部24の間に開口25を形成している。すなわち、三角錐台の側面に対応する部分に開口25を形成している。
発明者らの解析及び検討により、被補剛パネル10と補剛パネル20とで構成されるパネル構造体1に対して、内圧、軸力、せん断力などの荷重がかかった場合、主に被補剛パネル10及び補剛パネル20の基部21により荷重に耐えていることが判明した。なお、この補剛パネル20は、被補剛パネル10から離間する基部21及びこの基部21と被補剛パネル10との間に設けられる截頭錐体を有している。これにより、截頭錐体は、被補剛パネル10と基部21とが離間した状態を維持するだけの剛性を有していれば十分であることが判明した。
また、解析及び検討により、被補剛パネル10と補剛パネル20の基部21との間に設けられる截頭錐体の側面に対応する壁部の荷重に対する寄与度は、截頭錐体の辺部分に対応する柱部よりも低いことが判明した。したがって、本実施形態のように、三角錐台の側面に対応する部分に開口25を形成した場合であっても、適切な剛性を有する構造とすることができ、上述のように、被補剛パネル10と基部21とが離間した状態を、好適に維持することができることが判明した。
【0031】
このように、本実施形態では、補剛パネル20に開口25を形成することで、パネル構造体1の軽量化を図ることができるとともに、パネル構造体1を容易に製造することができるという効果を享受するとともに、パネル構造体1の剛性の低下を抑制することができる。また、柱部24の断面形状を屈曲させることで、剛性を向上させているので、パネル構造体1全体の剛性を向上させることができる。
また、このように、柱部24によって剛性を向上させることができるので、例えば、補剛パネル20と被補剛パネル10との間に剛性を向上させるためのモルタル等を充填する必要がない。これにより、軽量化を図れるとともに、コストを低減することができる。
【0032】
なお、本開示は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、適宜変形が可能である。以下で、上記実施形態のいくつかの変形例について説明する。なお、以下の各変形例では、上記実施形態と異なる点のみを説明し、上記実施形態と同一の構成について、同一の符号を付して、その詳細な説明は省略している。
【0033】
[変形例1]
例えば、上記実施形態では、天端板部23及び基部21の縁部21bを平面視で正三角形状に形成する例について説明したが、本開示はこれに限定されない。例えば、
図8に示すように、天端板部31及び基部21の縁部32を平面視で正方形状に形成してもよい。すなわち、突起部22の外径を四角錘台に形成してもよい。この場合には、天端板部31及び縁部32の頂点は、各々4つとなる。よって、柱部24の数も、頂点の数と同数の4つとなる。なお、天端板部及び縁部の形状は、正三角形状や正方形状に限定されない。例えば、天端板部及び縁部の形状を平面視で正五角形状や、正六角形状等の正多角形状としてもよい。また、天端板部及び縁部の形状を平面視で円状としてもよい。また、各辺の長さが異なっている多角形状としてもよい。このような構成でも、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0034】
なお、天端板部及び縁部の頂点の数(柱部の数)は、パネル構造体1の剛性等によって決定してもよい。柱部の数を増加させると、パネル構造体1の剛性は向上する。また、柱部の数を増加させると、平面視した際の天端板部と柱部とが為す角度θ3(
図3及び
図8参照)が小さくなるため、加工性が向上する。一方、柱部の数が増加すると、その分重量が増加するとともに、開口の数が増加するものの、剛性も増加するため板厚を低減できるなどの利点もある。したがって、柱部の数は、製造するパネル構造体1に求められる剛性、要求重量などを考慮した上で、適正な数とすることが望ましい。さらに、1つの補剛パネルが1種類の突起部形状で形成される必要はなく、複数種類の突起部形状で構成されても問題ない。つまり、パネル構造体1のうち、特定部分のみにより高い強度、剛性が要求される場合には、その部分のみを要求を満足できる突起部構造としてもよいことは言うまでもない。
【0035】
[変形例2]
また、上記実施形態では、柱部24が、所定方向の断面形状において、略中央領域の1か所で突起部22の外側方向に突出するように屈曲している例について説明したが、本開示はこれに限定されない。例えば、柱部は、
図9に示す柱部36のように、所定方向の断面形状において、略中央領域の2か所で突起部22の外側方向に突出するように屈曲していてもよい。また、柱部は、
図10に示す柱部37のように、所定方向の断面形状において、略全域に亘って外側方向に突出するように湾曲していてもよい。このような形状でも、柱部の剛性を向上させることができる。
【0036】
[変形例3]
また、上記実施形態では、柱部24が、所定方向に沿って直線状に形成されている例について説明したが、本開示はこれに限定されない。例えば、柱部は、
図11に示す柱部40のように、所定方向の略中央部分において突起部22の外側方向に突出するように屈曲していてもよい。また、
図12に示す柱部41のように、所定方向の略中央部分において突起部22の内側方向に突出するように屈曲していてもよい。
【0037】
[変形例4]
また、上記実施形態では、柱部24の幅が所定方向で一様の長さである例について説明したが、本開示はこれに限定されない。例えば、柱部は、
図13及び
図14に示す柱部51のように、幅が所定方向の位置によって異なっていてもよい。
図13及び
図14の例では、柱部51が天端板部23から縁部21bに向かうにしたがって、幅が長くなっている。すなわち、
図14に示すように、天端板部23側の幅の長さL2よりも、縁部21b側の幅の長さL3の方が長くなっている。また、
図13に示すように、接続領域Aの長さのよりも、接続領域Bの長さの方が長くなっている。このように構成することで、柱部の剛性を向上させることができる。
【0038】
[変形例5]
また、
図15及び
図16に示すように、フランジ部63を設けてもよい。本実施形態の天端板部61は、上記実施形態における天端板部23に対応する平板部62と、平板部62の外周端の略全域から屈曲して基部21の方向へ延びるフランジ部63とを有している。柱部24の他端部24bは、フランジ部63と接続されている。フランジ部63は平板部62の外周端の略全域に形成されているので、当然、フランジ部63の周方向の長さは柱部24の周方向の長さ(幅)よりも長い。また、フランジ部63と柱部24とは、互いの板面が面一となるように、配置されている。
【0039】
このように構成では、平板部62とフランジ部63との接続部分が屈曲部となる。フランジ部63は、平板部62の周方向の全域に接続されているので、局所的な屈曲を抑制することができる。これにより、天端板部23に対して、柱部24を強固に接続させることができる。よって、パネル構造体1全体の剛性を向上させることができる。
【0040】
以上説明した本実施形態に記載のパネル構造体及びパネル構造体の製造方法は例えば以下のように把握される。
本開示の第1の態様に係るパネル構造体は、第1パネル(10)と、前記第1パネル(10)と接合する第2パネル(20)と、を備え、前記第2パネル(20)は、前記第1パネル(10)の板面(10a)と接合する接合部(23)と、前記第1パネル(10)の前記板面(10a)から離間するとともに前記板面(10a)と対向する基部(21)と、前記基部(21)と前記接合部(23)とを接続する複数の接続部(24)と、を一体的に有し、前記接続部(24)は、所定方向の一端部(24a)が前記基部(21)と接続し、前記所定方向の他端部(24b)が前記接合部(23)と接続し、前記所定方向の断面形状が屈曲または湾曲していて、隣接する前記接続部(24)同士の間には、開口(25)が形成されている。
【0041】
上記構成では、第1パネルと第2パネルとが接合し、第2パネルの一部(接続部及び基部)が、第1パネルから離間するように設けられている。これにより、第2パネルは、第1パネルを補強するリブの役割を果たす。したがって、パネル構造体全体の剛性を向上させることができる。
上記構成では、第1パネルと第2パネルの接合部とが接合されている。また、接合部と基部とが接続部によって接続されている。すなわち、第1パネル及び基部を接続部が支持することで、第1パネルと基部とが離間した状態を維持している。上記構成では、接続部の断面形状が屈曲または湾曲している。このため、接続部の剛性を向上させることができる。よって、第1パネルと基部とが離間した状態を、好適に維持することができる。したがって、パネル構造体の全体の剛性をより向上させることができる。
上記構成では、複数の接続部同士の間には開口が形成されている。これにより、開口が形成されていない構造と比較して、パネル構造体を軽量化することができる。また、例えば開口が形成された板材にプレス加工を施すことで第2パネルを成型する場合には、開口が形成されていない板材をプレス加工する場合と比較して、プレス加工に要するエネルギを低減することができる。
【0042】
また、第2の態様に係るパネル構造体は、第1の態様に係るパネル構造体であって、前記接合部(23)は、板面を見た際に複数の頂点を有する多角形状であって、前記接続部(24)は、前記接合部(23)の前記頂点に接続されている。
【0043】
上記構成では、第1パネルに荷重が作用すると、第1パネルから第2パネルの接合部へ荷重が入力する。接合部へ入力した荷重は、接続部を介して基部へ入力する。接合部から基部へと荷重が入力する際に、多角形状の接合部の頂点に応力が集中する。上記構成では、接合部の頂点に接続部が接続されているため、応力の集中する頂点を接続部によって補強することができる。これにより、パネル構造体全体の剛性を向上させることができる。
【0044】
また、第3の態様に係るパネル構造体は、第1の態様または第2の態様に係るパネル構造体であって、前記接合部(23)は、縁から屈曲して前記基部(21)の方向へ延びるフランジ部(63)を備え、前記接続部(24)は、前記フランジ部(63)と接続されていて、前記接合部(23)の周方向における前記フランジ部(63)の長さは、前記周方向における前記接続部(24)の長さよりも長い。
【0045】
上記構成では、フランジ部と接続部とが接続されている。接合部の周方向におけるフランジ部の長さは、周方向における接続部の長さよりも長い。これにより、接合部に対して、接続部を強固に接続させることができる。これにより、パネル構造体全体の剛性を向上させることができる。
【0046】
本開示の第1の態様に係るパネル構造体の製造方法は、第1パネル(10)と、前記第1パネル(10)と接合する第2パネル(20)と、を備えるパネル構造体(1)の製造方法であって、前記第2パネル(20)は、前記第1パネル(10)の板面と接合する接合部(23)と、前記第1パネル(10)の前記板面から離間するとともに前記板面と対向する基部(21)と、前記基部(21)と前記接合部(23)とを接続する複数の接続部(24)と、を一体的に有し、前記接続部(24)は、所定方向の一端部(24a)が前記基部(21)と接続し、前記所定方向の他端部24bが前記接合部(23)と接続し、前記所定方向の断面形状が屈曲または湾曲していて、隣接する前記接続部(24)同士の間には、開口(25)が形成されていて、平板状の部材に前記開口(25)を形成する開口形成工程と、前記開口形成工程で前記開口(25)を形成した前記部材に対してプレス加工を施して前記第2パネル(20)を成型するプレス加工工程と、前記プレス加工工程で成型した前記第2パネル(20)の前記接合部(23)と前記第1パネル(10)の前記板面とを接合する接合工程と、を備えている。
【0047】
上記構成では、接続部の断面形状が屈曲または湾曲している。このため、接続部の剛性を向上させることができる。これにより、第1パネルと基部とが離間した状態を、好適に維持することができる。したがって、全体の剛性をより向上させたパネル構造体を製造することができる。
上記構成では、平板状の部材に開口を形成してからプレス加工を施して第2パネルを成型している。これにより、開口が形成されていない板材をプレス加工する場合と比較して、塑性化させる領域が小さくなるので、プレス加工に要するエネルギを低減することができる。よって、容易に製造することができる。なお、開口が形成されていない板材をプレス加工する場合とは、例えば、パネルに開口が形成されていないパネル構造体を製造する場合や、プレス加工を施してから開口を形成することでパネル構造体を製造する場合などである。
【符号の説明】
【0048】
1 :パネル構造体
10 :被補剛パネル(第1パネル)
10a :一面(板面)
20 :補剛パネル(第2パネル)
21 :基部
21b :縁部
22 :突起部
23 :天端板部(接合部)
23a :接合面
24 :柱部(接続部)
24a :一端部
24b :他端部
24c :屈曲部分
25 :開口
27 :天端板対応部
28 :柱対応部
29 :金属板材
30 :貫通孔
61 :天端板部
62 :平板部
63 :フランジ部