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特許7467044編組インプラントを使用するシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】編組インプラントを使用するシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/12 20060101AFI20240408BHJP
【FI】
A61B17/12
【請求項の数】 18
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019143574
(22)【出願日】2019-08-05
(65)【公開番号】P2020022750
(43)【公開日】2020-02-13
【審査請求日】2022-07-13
(31)【優先権主張番号】16/056,135
(32)【優先日】2018-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513069064
【氏名又は名称】デピュイ・シンセス・プロダクツ・インコーポレイテッド
【住所又は居所原語表記】325 Paramount Drive, Raynham MA 02767-0350 United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・スラザス
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー・ピーターズ
【審査官】石川 薫
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102014113836(DE,A1)
【文献】特表2008-502378(JP,A)
【文献】特開2016-047241(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 13/00-18/18
A61F 2/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動脈瘤を治療するためのフローダイバータとして構成された編組インプラントであって、
最大1mmの血管直径範囲を有するテーパ状血管内で、65%~70%の実質的に一貫した目標多孔率を維持するように構成された編組メッシュ、を備え、
前記編組メッシュが、前記テーパ状血管内にある間、前記編組メッシュの近位端と遠位端との間で前記実質的に一貫した目標多孔率を維持するように構成されており、
前記編組インプラントが、示された血管直径を更に有し、前記編組インプラントは、前記示された血管直径が前記編組インプラントの多孔率曲線のピークと一致するように構成されており、前記多孔率曲線は、多孔率対直径の曲線である、編組インプラント。
【請求項2】
前記テーパ状血管が、最大1mm異なる近位端直径及び遠位端直径を有し、前記最大1mmの血管直径範囲が、前記近位端直径と前記遠位端直径とを比較することによって画定される、請求項1に記載の編組インプラント。
【請求項3】
前記実質的に一貫した目標多孔率が約70%である、請求項1に記載の編組インプラント。
【請求項4】
前記テーパ状血管内の前記編組メッシュの前記近位端と前記遠位端との間の所定の長さが、少なくとも3cmである、請求項1に記載の編組インプラント。
【請求項5】
前記テーパ状血管内の前記編組メッシュの前記近位端と前記遠位端との間の所定の長さが、少なくとも1cmである、請求項1に記載の編組インプラント。
【請求項6】
前記編組インプラントが、前記多孔率曲線の前記ピーク周辺に並んだ血管直径の1mmの径方向範囲に対応する多孔率の安定状態を更に有する、請求項1に記載の編組インプラント。
【請求項7】
前記編組インプラントが、前記多孔率曲線の前記ピーク周辺に並んだ血管直径の1mmの径方向範囲と一致する多孔率の安定状態を更に有する、請求項1に記載の編組インプラント。
【請求項8】
前記編組インプラントの孔密度が、18~23孔/mmである、請求項1に記載の編組インプラント。
【請求項9】
前記編組インプラントが、円筒形の多孔質構造である、請求項1に記載の編組インプラント。
【請求項10】
前記編組インプラントが、少なくとも1つの第1の材料から構成される複数のシングルストランド及び1つ以上の放射線不透過性マルチストランドから形成されている、請求項1に記載の編組インプラント。
【請求項11】
前記編組インプラントは、各々がそれぞれモノフィラメントと合わせて敷かれている、モノフィラメントで形成された複数のマルチストランドから形成されている、請求項1に記載の編組インプラント。
【請求項12】
動脈瘤を治療するためのシステムであって、
複数の編組インプラントを備え、各前記編組インプラントが請求項1に記載の編組インプラントである、システム。
【請求項13】
記テーパ状血管が、最大1mm異なる近位端直径及び遠位端直径を有し、前記テーパ状血管の直径における前記最大1mmの血管直径範囲は、前記近位端直径と前記遠位端直径とを比較することによって画定される、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記複数の編組インプラントが、
2~3mmの血管直径範囲を治療するように構成された第1の編組インプラントと、
2.5~3.5mmの血管直径範囲を治療するように構成された第2の編組インプラントと、
3.0~4.0mmの血管直径範囲を治療するように構成された第3の編組インプラントと、
3.5~4.5mmの血管直径範囲を治療するように構成された第4の編組インプラントと、
4.0~5.0mmの血管直径範囲を治療するように構成された第5の編組インプラントと、
4.5~5.5mmの血管直径範囲を治療するように構成された第6の編組インプラントと、を備え、
各前記編組インプラントの前記目標多孔率は、65%~70%の範囲である、請求項12に記載のシステム。
【請求項15】
各前記編組インプラントが、18~23孔/mmの範囲の孔密度を有する、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記複数の編組インプラントのそれぞれが、前記複数の編組インプラントのうちの次に最小の前記編組インプラントの前記テーパ状血管の直径における前記血管直径範囲の約半分だけ互いにずれている、請求項12に記載のシステム。
【請求項17】
前記テーパ状血管は、内頸動脈である、請求項1に記載の編組インプラント。
【請求項18】
前記編組インプラントが、前記多孔率曲線の前記ピーク周辺で前記実質的に一貫した目標多孔率を維持する、請求項1に記載の編組インプラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、体内血管内のインプラントに関し、より具体的には、材料のストランドで形成された編組インプラントを含むフローダイバータ、ステント及び関連方法に関する。
【背景技術】
【0002】
動脈瘤及びその他の動静脈奇形といった血管疾患及び血管障害(vascular disorders and defects)は、決定組織付近又は形成異常部への迅速な接近(ready access)が不可能な場所に位置している場合、特に治療が困難である。どちらの困難要因も、頭蓋動脈瘤の場合に特に当てはまる。頭蓋血管を包囲する傷つきやすい脳組織、及び接近が制限されることのために、頭蓋脈管構造障害の手術治療は非常に困難であり、多くの場合危険を伴う。
【0003】
通常は、最初に送達カテーテルを用いて、ステント様の血管再建装置を治療される動脈瘤の真下に誘導する。1つの市販の再構成製品は、記載されているようなCERENOVOUS ENTERPRISE(登録商標)Vascular Reconstruction Device and Systemであり、これにより、CERENOVOUS ENTERPRISE(登録商標)ステント装置は、中央送達ワイヤによって運ばれ、最初は、シース型導入器によって、折り畳まれた状態で送達ワイヤ上の定位置に保持される。通常は、これもCerenovousから市販され、また例えばGoreらによる米国特許第5,662,622号にて開示されるPROWLER(登録商標)SELECT(登録商標)Plusマイクロカテーテルなどの送達カテーテルは、最初に、その遠位先端を動脈瘤頸部からわずかに超えて血管内に配置される。導入器のテーパ状遠位先端が送達カテーテルの近位ハブと結合すると、送達ワイヤが送達カテーテル内を貫いて前進する。
【0004】
CERENOVOUS ENTERPRISE(登録商標)ステント装置は、装置の各フレア端部においてマーカーとして機能する多数の放射線不透過性ワイヤのコイルを備え、高可撓性の自己拡張型クローズドセル設計を有する。ステントの小型のために、かつステントのクローズドセル内では特に困難である放射線不透過性ワイヤをステント上のストラットの周囲に複数回巻きつける必要のために、かかるマーカーの製造は比較的時間がかかり、かつ高価である。
【0005】
血管動脈瘤は、利用可能ないくつかの治療方法を有する。アプローチの1つとしては、十分に密な血管内ステントであり得るフローダイバーティングステントが挙げられ、血流が動脈瘤に入ることから迂回するようにする。このようなフローダイバータは、最近の発展している治療の選択肢である。他の点では、現世代のフローダイバータの過半数は、フィンガートラップ玩具と同様に動作する金属ワイヤの管状編組から構成される。次いで、これらの管状編組は、半径方向に圧縮され、小口径カテーテルを通して治療部位に送達され、次いで定位置に拡張される。
【0006】
しかしながら、神経脈管構造の脆弱性及び非直線性は、手順における、例えば、神経脈管欠損の修復におけるかかるステントの適用性を制限する。その上、既知の送達方法は、血管閉塞症手術において、特に、ごく小さな脈管、例えば、脳内に発見される脈管などを治療するときに、有用性が低い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、選択的補強材を神経脈管欠損の近傍に提供する神経脈管欠損の血管閉塞症治療における送達技法と共に使用され得る編組インプラントが必要とされる。また、血管の外傷又はその破裂の危険性を低減する編組ステントも必要とされる。本開示の解決策は、当該技術のこれら及びその他の問題点を解決するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の必要性に対処することができる、本開示の様々な例示的な装置、システム、及び方法について開示する。
【0009】
本解決策の目的は、テーパ状血管のためのより長い血管直径範囲を提供し、所定の長さ(例えば、1mmの血管直径範囲)にわたって目標多孔率(porosity)を維持するフローダイバータとして構成された1つ以上の編組インプラントを提供することである。
【0010】
本解決策の目的は、動脈瘤の治療時に施術者に必要な装置の数を最小化するために、編組インプラントの適用可能な血管直径範囲を増加させることである。一例では、1つ以上の編組インプラントは、特徴的な多孔率曲線の広い安定状態領域を有し、安定状態内の血管直径についての編組インプラントを示し(1.0mm幅の表示範囲となる)、装置の表示範囲と重なり、医者は提示された解剖学的構造に応じて最良の選択のための選択肢を有する。
【0011】
特定の例では、動脈瘤を治療するためのフローダイバータとして構成される編組インプラントが開示される。インプラントは、少なくとも1mmの血管直径範囲にわたってテーパ状血管内の実質的に一貫した目標多孔率を維持するように構成された編組メッシュを備えることができる。編組メッシュはまた、テーパ状血管内にある間、編組メッシュの近位端と遠位端との間で実質的に一貫した目標多孔率を維持するように構成され得る。
【0012】
特定の例では、テーパ状血管が、最大1mm異なる近位端直径及び遠位端直径を有し、最大1mmの血管直径範囲が、近位端直径と遠位端直径とを比較することによって画定される。しかしながら、直径は、必要に応じて又は必要とされる、少なくとも0.5mm又は他の任意選択の直径差だけ異なり得ることが想到される。
【0013】
特定の例では、実質的に一貫した目標多孔率は、約70%である。
【0014】
特定の例では、テーパ状血管内の編組メッシュの近位端と遠位端との間の所定の長さが、少なくとも3cmである。
【0015】
特定の例では、テーパ状血管内の編組メッシュの近位端と遠位端との間の所定の長さが、少なくとも2cmである。
【0016】
特定の例では、テーパ状血管内の編組メッシュの近位端と遠位端との間の所定の長さが、少なくとも1cmである。
【0017】
特定の例では、テーパ状血管内の編組メッシュの近位端と遠位端との間の所定の長さは、近位海綿状内頸動脈(proximal cavernous internal carotid artery)と内頸動脈末端(internal carotid artery terminus)との間に画定される。
【0018】
特定の例では、編組インプラントが、医療用に開示される。インプラントは、近位端と遠位端とを有するメッシュを備えることができ、メッシュは、近位端と遠位端との間で、血管直径の1mmの径方向範囲にわたって実質的に一貫した多孔率を有する。
【0019】
特定の例では、多孔率は、血管直径の1mmの径方向範囲にわたって約70%である。
【0020】
特定の例では、編組インプラントが、示された血管直径を更に有し、編組インプラントは、示された血管直径が編組インプラントの多孔率曲線のピークと一致するように構成されている。編組インプラントが、多孔率曲線のピーク周辺に並んだ血管直径の1mmの径方向範囲に対応する多孔率の安定状態を更に有することができる。
【0021】
特定の例では、2~3mmの血管直径範囲にわたって、編組インプラントの多孔率は、65%~70%の範囲である。
【0022】
特定の例では、2.5~3.5mmの血管直径範囲にわたって、編組インプラントの多孔率は、65%~70%の範囲である。
【0023】
特定の例では、3.0~4.0mmの血管直径範囲にわたって、編組インプラントの多孔率は、65%~70%の範囲である。
【0024】
特定の例では、3.5~4.5mmの血管直径範囲にわたって、編組インプラントの多孔率は、65%~70%の範囲である。
【0025】
特定の例では、全体にわたって(across)、編組インプラントは、血管直径範囲3.5~4.5mmで構成され、編組インプラントは、血管直径3.5mmで多孔率69%、血管直径4.0mmで多孔率69%、及び血管直径4.5mmで多孔率67%を有する。
【0026】
特定の例では、4.5~5.5mmの血管直径範囲にわたって、編組インプラントの多孔率は、65%~70%の範囲である。
【0027】
特定の例では、編組インプラントの孔密度は、18孔/mmである。
【0028】
特定の例では、編組インプラントの孔密度は、23孔/mmである。
【0029】
特定の例では、編組インプラントの孔密度は、19孔/mmである。
【0030】
特定の例では、編組インプラントの孔密度は、約18~23孔/mmである。
【0031】
特定の例では、編組インプラントによって治療される標的血管はテーパ状のものである。
【0032】
特定の例では、編組インプラントは、実質的に円筒形の多孔質構造である。
【0033】
特定の例では、編組インプラントはステントである。
【0034】
特定の例では、編組インプラントはフローダイバータである。
【0035】
特定の例では、編組インプラントが、少なくとも1つの第1の材料から構成される複数のシングルストランド及び1つ以上の放射線不透過性マルチストランドから形成されている。
【0036】
特定の例では、編組インプラントは、少なくとも1つの第2のマルチストランドを含むように織られている。
【0037】
特定の例では、編組インプラントは、各々がそれぞれモノフィラメントと合わせて敷かれている、モノフィラメントで形成された複数のマルチから形成されている。
【0038】
特定の例では、編組インプラントは、織られたパターンを更に含み、パターンは、第1の方向に配向された複数のシングルストランドによって画定される開口部と、第1の方向に対して横断する第2の方向に配向された複数のシングルストランドによって画定される開口部を備える。
【0039】
特定の例では、編組インプラントは、編組されたパターンを更に含み、パターンは、第1の方向に配向された複数のシングルストランドによって画定される開口部と、第1の方向に対して横断する第2の方向に配向された複数のシングルストランドによって画定される開口部を備える。
【0040】
特定の例では、動脈瘤を治療するためのシステムが開示される。システムは、複数の編組インプラントを備えることができ、各編組インプラントが、血管直径における異なる1mmの径方向範囲にわたって実質的に一貫した多孔率を有し、各編組インプラントは、異なる1mmの直径範囲にわたって実質的に一貫した多孔率を提供するように構成されている。
【0041】
特定の例では、編組インプラントは、テーパ状血管内で使用するように構成されている。テーパ状血管は、最大1mm異なる近位端直径及び遠位端直径を有し得る。血管直径における異なる1mmの径方向範囲は、近位端直径と遠位端直径とを比較することによって画定することができる。しかしながら、血管直径における異なる1mmの径方向範囲もまた、治療部位における2つの別々の位置で血管直径を測定することによっても決定することができる。
【0042】
特定の例では、システムの複数の編組インプラントは、1.5mm~6mmの直径範囲内の任意選択の血管を治療するように構成される。
【0043】
特定の例では、システムの複数の編組インプラントが、2~3mmの血管直径範囲を治療するように構成された第1の編組インプラント(10)と、2.5~3.5mmの血管直径範囲を治療するように構成された第2の編組インプラント(10)と、3.0~4.0mmの血管直径範囲を治療するように構成された第3の編組インプラント(10)と、3.5~4.5mmの血管直径範囲を治療するように構成された第4の編組インプラント(10)と、4.0~5.0mmの血管直径範囲を治療するように構成された第5の編組インプラント(10)と、4.5~5.5mmの血管直径範囲を治療するように構成された第6の編組インプラント(10)と、を備える。各編組インプラント(10)の多孔率は、それぞれのインプラントの示された血管範囲において65%~70%の範囲であり得る。いくつかの例では、各編組インプラントの多孔率は約70%である。いくつかの例では、各編組インプラントが、示された血管直径を更に有し、編組インプラントは、示された血管直径が編組インプラントの多孔率曲線のピークと一致するように構成されている。いくつかの例では、各編組インプラントが、多孔率曲線のピーク周辺に並んだ血管直径の1mmの範囲に対応する多孔率の安定状態を更に有することができる。いくつかの例では、各編組インプラントは、約18~23孔/mmの範囲の孔密度を有する。
【0044】
いくつかの例では、第1の編組インプラントの孔密度は、18孔/mmである。
【0045】
いくつかの例では、第2の編組インプラントの孔密度は、23孔/mmである。
【0046】
いくつかの例では、第3の編組インプラントの孔密度は、18孔/mmである。
【0047】
いくつかの例では、第4の編組インプラントの孔密度は、19孔/mmである。
【0048】
いくつかの例では、第5の編組インプラントの孔密度は、23孔/mmである。
【0049】
いくつかの例では、第6の編組インプラントの孔密度は、21孔/mmである。いくつかの例では、編組インプラントは、白金、クロム、コバルト、タンタル、タングステン、金、銀、及びこれらの合金などの放射線不透過性材料を含む。
【0050】
いくつかの例では、動脈瘤を治療するためのシステムが開示される。システムは、複数の編組インプラントを備えることができ、各編組インプラントが、血管直径における異なる0.5mmの径方向範囲にわたって実質的に一貫した多孔率を有し、各編組インプラント(10)は、異なる0.5mmの径方向直径範囲にわたって実質的に一貫した多孔率を提供するように構成されている。しかしながら、必要に応じて又は必要とされる他の異なる径方向範囲は、0.3mm、0.4mm、0.6mm、0.7mm、0.8mm、0.9mmなどの異なる血管直径範囲を含む、システムと共に使用され得る。
【0051】
いくつかの例では、動脈瘤を治療するための方法が開示される。この方法は、動脈瘤の血管に関連する血管直径を決定することと、血管を治療するための複数の編組インプラントのうちの1つを選択することであって(例えば、決定された血管直径に基づいて)、各編組インプラントが、少なくとも1mmの血管直径範囲にわたって実質的に一貫した多孔率を有し、各編組インプラントは、異なる1mmの直径範囲にわたって実質的に一貫した多孔率を提供するように構成されている、ことと、複数の編組インプラントのうちの1つを用いて血管を治療することと、を含む。
【0052】
いくつかの例では、血管はテーパ状であり、最大1mm異なる近位端直径及び遠位端直径を有し、血管直径を決定することは、近位端直径と遠位端直径とを比較することを含む。
【0053】
いくつかの例では、血管はテーパ状であり、約1mmの血管直径差を有し、この方法は、約1mmの血管直径差にわたって実質的に一貫した多孔率を維持することを更に含む。
【0054】
いくつかの例では、方法は、各他の編組インプラント間に0.5mm重複して血管直径範囲をカバーするように各編組インプラントを構成することを含む。
【0055】
いくつかの例では、血管直径はテーパ状であり、約3~4mmの範囲である。
【0056】
いくつかの例では、血管直径はテーパ状であり、約3.5~4.5mmの範囲である。
【0057】
いくつかの例では、血管直径はテーパ状であり、約4~5mmの範囲である。
【0058】
いくつかの例では、血管直径はテーパ状であり、約4.5~5.5mmの範囲である。
【0059】
いくつかの例では、血管直径はテーパ状であり、約5.0~6.0mmの範囲である。
【0060】
いくつかの例では、血管直径はテーパ状であり、複数の編組インプラントは、1.5~6mmの範囲の血管直径を治療するように構成される。
【0061】
いくつかの例では、血管直径の決定は、X線、X線透視法、MRI、又は他の視覚化手段によって実施される。
【0062】
いくつかの例では、血管を治療することが、編組インプラントを動脈瘤に前進させることと、複数の編組インプラントのうちの1つを使用して、動脈瘤を排除し、動脈瘤から血流を迂回させることによって、血管内の血流を再構成することと、を含む。
【0063】
前述の関連する目的を達成するために、特定の例示的な態様について、以下の説明及び添付の図面に関連して本明細書に記載する。しかしながら、これらの態様は、特許請求する主題の原理を採用することができる様々な形態のうちのいくつかのみを説明したものであり、特許請求する主題は、かかる全ての態様及びそれらの均等物を含むことを意図している。図面と併せて考慮すると、以下の詳細な説明から他の利点及び新規な特徴が明らかとなり得る。
【図面の簡単な説明】
【0064】
本解決策の上述の態様及び更なる態様は、添付図面と共に以下の説明を参照することによって更に詳しく説明され、添付図面において、種々の図の同様の数字は同様の構造要素及び特徴を示す。図面は、必ずしも縮尺どおりではなく、代わりに、本発明の原理を例示することに主眼が置かれている。図は、限定としてではなく単なる例示として、本発明の装置の1つ以上の実装形態を描写している。
図1】本発明による、シングルストランド及び1つ以上の放射線不透過性マルチストランドで形成されたインプラント本体の一部分の概略拡大図である。
図2】本開示の編組インプラントと共に使用するために企図される例示的な血管の側面図を示す。
図3】本開示の例示的な編組インプラントの多孔率対血管直径を示すグラフである。
図4】従来の装置と比較した、本開示の例示的な編組インプラントの多孔率対血管直径を比較するグラフである。
図5】本開示の一組の例示的な編組インプラントについての孔密度及び血管直径に対するワイヤの数を示すグラフである。
図6】本開示の一組の例示的な編組インプラント対一組の従来の装置に対する、多孔率対血管直径を比較するグラフである。
図7】本開示の例示的な方法の工程を概説するフロー図である。
図8】本開示の例示的な方法の工程を概説するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0065】
開示された技術の代表的な実施形態が本明細書に詳述されるが、他の実施形態が企図されることを理解すべきである。したがって、以下の説明に記載される又は図面に示される構成要素の構造及び配置の詳細に開示した技術の範囲が限定されることを意図するものではない。開示した技術は、他の実施形態が可能であり、種々の方法で実施又は実行されることが可能である。
【0066】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈上、別段の明確な指示がない限り、複数の指示対象をも含むことにもまた、留意しなければならない。「を備える(comprising)」又は「を含有する(containing)」又は「を含む(including)」は、少なくとも言及された化合物、要素、粒子、又は方法工程が組成物又は物品又は方法において存在することを意味するが、その他の化合物、材料、粒子、方法工程の存在を、これらのその他の化合物、材料、粒子、方法工程が言及されたものと同じ機能を有する場合であっても、除外するものではない。
【0067】
代表的な実施形態の説明では、明確性を期すために専門用語を用いる。各用語は、当業者が理解するその最も広い意味を企図し、かつ同様の目的を達成するために同様に動作する全ての技術的等価物を含むことが意図される。また、方法の1つ以上の工程への言及は、明示的に特定されたそれらの工程間の追加の方法工程又は介在する方法工程の存在を排除しないことを理解すべきである。方法の工程は、開示した技術の範囲から逸脱することなく、本明細書で述べた順序と異なる順序で実行され得る。同様に、装置又はシステムの1つ以上の構成要素への言及は、明示的に特定された構成要素間の追加の構成要素又は介在する構成要素の存在を排除しないことも理解されたい。
【0068】
本明細書にて議論されるように、「被験者」又は「患者」の脈管構造は、ヒト又は任意の動物の脈管構造であってよい。動物は、限定されるものではないが、哺乳類、獣医学的動物、家畜動物、又はペット類の動物等を含む、種々のあらゆる該当する種類のものであり得ることを理解するべきである。一例として、動物は、ヒトに類似したある特定の性質を有するように特に選択された実験動物(例えば、ラット、イヌ、ブタ、サルなど)であってよい。被験者は、例えば、あらゆる該当するヒト患者でよいことを理解するべきである。
【0069】
本明細書で論じられる場合、「オペレータ」には、医者、外科医、又は被験者の脈管構造への編組本体の送達と関連した任意の他の個人若しくは送達器具が含まれてよい。
【0070】
本明細書で論じられるように、「ストランド」は、最も広範囲な意味において、ワイヤ、繊維、フィラメント、又はその他の単一の細長い部材を含むことを意図している。
【0071】
本明細書で論じられるように、「放射線不透過性」は、放射線不透過性であることの通常の意味、即ち、電磁放射線の通過を阻害する1つ以上の材料から形成されてイメージング中の可視性を向上させること、に対して用いられる。本発明による使用に好適な放射線不透過性材料としては、プラチナ、クロム、コバルト、タンタル、タングステン、金、銀、及びこれらの合金が挙げられる。
【0072】
本開示の編組インプラント10は、本開示に添付された図を見ればよりよく理解することができる。例えば、図1では、編組インプラント10の一部の概略拡大図が、本開示の一例により示されている。編組インプラント10は、少なくとも1つの第1の材料から構成されるシングルストランド12及び1つ以上の放射線不透過性マルチストランド14から形成され得る。本構造では、インプラント10は、少なくとも1つの第2のマルチストランド16を含むように織られる。破線で示される別の構造では、インプラント10は、各々がそれぞれモノフィラメント26及び28と合わせて敷かれている、モノフィラメント22及び24で形成されたマルチストランド18及び20を更に含む。一部の構造では織られ、またその他の構造では編組されるインプラント10のパターンは、例えば、第1の方向に配向されたシングルストランド12並びに第1の方向に対して横断する第2の方向に配向されたシングルストランド24及び25によって画定される開口部30を含む。インプラント10は、マルチストランド14と同じ方向に配向されたシングルストランド13及び15、並びに横断方向に配向されたシングルストランド24、25及び27によってマルチストランド14の両側に画定された開口部32及び34を更に含む。一部の構造では、開口部32及び34はシングルストランドによってのみ画定される開口部30よりもわずかに大きく、その他の構造では、開口部30、32及び34の全てが実質的に同じである。
【0073】
本開示のインプラント10について他の実施形態が想到され、米国特許出願公開第2016/0058524号(本明細書にその全体が組み込まれる参考文書)にも確認できる。いくつかの例における本開示の編組インプラント10の構造は、インプラント10が、材料のシングルストランドのみから形成された場合と実質的に同じパターンを有すると考えられる。マルチストランドは、あたかも放射線不透過性材料のシングルストランドが使用されたかのように編組される、織られる、又はその他の方法で同様に互いに並列して敷かれるため、特にマルチストランドの各フィラメントがシングルストランドと同じ直径を有するとき、可撓性、拡張性(ability to expand)、及びクリンプされたプロファイル(crimped profile)などのインプラント性能に対する機械的影響はほとんど又は全く存在しない。
【0074】
図2を参照すると、本開示のインプラント10と共に使用することが企図される、例示的な血管の側面図が示されている。確認できるように、例示的な血管は、内頸動脈(ICA)のその長手方向軸線に沿ってテーパ状になっている。Rai AT,Hogg JP,Cline B,et al.J NeuroIntervent Surg(2012)を参照されたい(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。Raiの研究は、前脳循環における血管の典型的な長さ、直径、及びテーパを決定するために行われた。動脈直径は、近位海綿状ICA、ICA末端、中大脳動脈のMCA起点及びM2起点で測定した。これらの端点間の長さを中心線に沿って計算した。血管のテーパは、単位長さ当たりの口径の変化としてICAについて計算された。この研究を実施する際、Raiの研究では、海綿状ICA及びICA末端における平均直径は、それぞれ5±0.6mm、及び3.6±0.4mmであったことが判明した。平均ICAテーパは、MCAについては0.04±0.02mm/1mmであり、MCA及びM2の起点における直径は、それぞれ3.1±0.4mm、及び2.4±0.4mmであった。
【0075】
図2は、近位海綿状ICAからICA末端に向かって取られた、それぞれの長さにおける直径測定の非限定的な例を提供し、血管のテーパ状の性質を更に例示する。Raiの研究により、ICAはその近位海綿状部分からICA末端までテーパ状になっており、インプラント10が治療するように構成されていることが確認された。
【0076】
図3を参照すると、本開示について調査した血管直径と比較した、本開示の例示的な編組インプラント10のパーセントの多孔率を示すグラフが提供される。確認できるように、本開示の編組インプラント10は、1mmの血管直径範囲にわたって比較的一貫した孔径及び多孔率を保持していた。本開示全体を通して、血管直径範囲を指すとき、この用語は、編組インプラント10によって治療される血管内の2つの別々の位置の間で測定される直径の範囲を意味することが意図される。例えば、X線可視化を使用した施術者は、近位海綿状ICAの血管直径を4.2mmとして測定することができ、その一方で、ICA末端に向かう血管直径は3.2とすることができる。この点において、この例のテーパ状血管の血管直径範囲は、1mmである。本開示のインプラント10は、これらの例示的な血管直径範囲にわたってそのようなテーパ状血管を適応する一方で、実質的に一貫した目標多孔率を維持するように設計されている。これは特に有利であり、そうすることで、従来の装置(例えば、約0.25mmの血管直径範囲)よりも大きくテーパ状になっている血管、又は神経脈管構造に典型的に見られる蛇行性の血管を適応するのに必要なインプラントが減ることになるからである。
【0077】
これにより、図3は、3.5mm~4.5mmとの間の1mmの血管直径範囲を有する血管の例を示す。この例では、本開示の編組インプラント10は、約70%の多孔率を維持した。具体的には、直径3.5mmで、編組の多孔率は約69%であった。直径4.0mmで、編組の多孔率は約69%であった。直径4.5mmで、編組の多孔率は約67%であった。
【0078】
図4を参照すると、比較をまとめたグラフが提供さており、これにより、1mmの血管直径範囲にわたる、MedtronicによるPipeline(商標)Embolization Device(PED)と比較した本開示の例示的なインプラント10に関する、多孔率対血管直径が示される。具体的には、編組インプラント10とPED装置とを、3.5mm~4.5mmの血管直径範囲の間で比較した。確認できるように、本開示の編組インプラント10は、図3にこれまで示されているのと同じ範囲にわたって、約70%で、1mmの血管直径範囲にわたって比較的一貫した孔径及び多孔率を保持した。反対に、3.5mmの血管直径でのPED装置では80%の多孔率が示され、4mmの血管直径でのPED装置では70%の多孔率が示され、4.5mmの血管直径でのPED装置では50%未満の多孔率が示された。換言すれば、PED装置の多孔率は、血管の直径が1mmの範囲にわたって増加するにつれて顕著に減少し、一方、本開示の例示的な編組インプラント10は、1mmの直径範囲にわたって実質的に一貫した多孔率を示した。
【0079】
図4はまた、各装置が拡張しながら変化するときの各装置の多孔率も示しており、特徴的には同じである。特定の例では、編組インプラント10は、示された血管直径が多孔率曲線のピーク及びその周囲の安定状態領域と一致する(目標の多孔率からほとんど逸脱しない)ように設計されている。例えば、図3では、示される編組インプラント10は、3.5mm~4.5mmの動脈直径範囲について示されている。この装置は、その拡張範囲(1.0mmの幅)全体にわたって70%の目標多孔率に非常に近いままである。
【0080】
例えば、装置が圧縮されると、密度が高まるので、その多孔率は非常に低くなる(例えば、図3の左下を参照されたい)。装置が拡張すると、編組インプラント10の孔が開いているので、多孔率が増加する。ある特定の点で、多孔率はピークに到達し、ピークは各孔が正方形になり得るので編組角度が90度のときであり、図3の中央の矢印が示す同じくらいの大きさを得ることができる。このピークを越えて直径を更に拡張すると、各孔のサイズが減少し、ひいては多孔率が低下する。編組インプラント10がその拡張限界で最大直径に達すると、編組インプラント10は再び非常に密度が高まり、それに対応して多孔率が低くなる(例えば、図3の右下参照されたい)。
【0081】
対照的に、既知の他の装置は異なって設計されていることがあり、そのため多孔率曲線の安定状態領域が1.0mmほど広くなく、すなわち安定状態領域と一致しない動脈直径について示されることがある。これらのより古いアプローチでは、安定状態の外側で、動脈直径の小さな変化により目標多孔率から大きく離れるので、目標多孔率と一致する直径の範囲は狭くなる場合がある。したがって、既知の他の装置では、より広い範囲の血管直径を治療することができない場合がある。
【0082】
図5を参照すると、本開示の例示的な編組インプラント10についての多孔率対血管直径をまとめたグラフが提供されている。具体的には、図5は、それぞれ血管直径の約1mmの範囲を有し、その範囲の約半分(0.5mm)だけ互いにずれている6つの別々の編組インプラント(10)を示す。表記は、最小から最大までの血管直径の範囲、及び適用可能な編組インプラント(10)の対応するラベルを示す。例えば、第1の編組インプラント(10)は、2.5mmのラベルを有する2.0mm~3.0mmの血管直径範囲に合わせて構成されている。第1の編組インプラント(10)は、18の孔密度(mm)を有する48本のワイヤを有する。第2の編組インプラント(10)は、3mmのラベルを有する2.5mm~3.5mmの血管直径範囲に合わせて構成されている。第2の編組インプラント(10)は、23の孔密度(mm)を有する64本のワイヤを有する。第3の編組インプラント(10)は、3.5mmのラベルを有する3.0mm~4.0mmの血管直径範囲に合わせて構成されている。第3の編組インプラント(10)は、18の孔密度(mm)を有する64本のワイヤを有する。第4の編組インプラント(10)は、4.0mmのラベルを有する3.5mm~4.5mmの血管直径範囲に合わせて構成されている。第4の編組インプラント(10)は、19の孔密度(mm)を有する72本のワイヤを有する。第5の編組インプラント(10)は、4.5mmのラベルを有する4.0mm~5.0mmの血管直径範囲に合わせて構成されている。第5の編組インプラント(10)は、21の孔密度(mm)を有する96本のワイヤを有する。第6の編組インプラント(10)は、5mmのラベルを有する4.5mm~5.5mmの血管直径範囲に合わせて構成されている。第6の編組インプラント(10)は、21の孔密度(mm)を有する96本のワイヤを有する。
【0083】
図6を参照すると、比較をまとめたグラフが提供さており、これにより、2mm~6mmを含む異なる血管直径範囲にわたる、一組のPED装置と比較した本開示の一組の例示的なインプラント(10)に関する、多孔率対血管直径が示される。具体的には、2mm~3mmの血管直径にわたって使用するように構成されているものと示されている第1の編組インプラント10では、編組インプラント10は約70%の多孔率を提供すると確認されたが、同等のPED装置は、2.5mm~2.75mmの血管直径(すなわち、0.25mmの血管直径範囲)にわたって約70%の多孔率しか維持できなかった。関連する直径範囲の別のPED装置には、図示のように、2.75mm~3.0mmの血管直径範囲から隙間を完全に埋めるための上記PED装置が必要であった。第1の編組インプラント(10)は、48本のワイヤストランドから構成され、PED装置も同様に48本のワイヤストランドから構成された。2.0mm~2.5mmの範囲では、PED装置は、使用中に70%の多孔率を維持することができる0.25mmの範囲しか示さなかったので、更に2つのPED装置も必要とされる。
【0084】
図6はまた、2.5mm~3.5mmの血管直径にわたって使用するように構成されているものと示されている第2の編組インプラント(10)では、編組インプラント(10)は約70%の多孔率を提供すると確認されたが、同等のPED装置は、3.0mm~3.25mmの血管直径(すなわち、0.25mmの血管直径範囲)にわたって約70%の多孔率しか維持できなかったことを示している。この例における第2の編組インプラント(10)は、64本のワイヤストランドから構成され、PED装置は48本のワイヤストランドから構成された。換言すれば、血管直径3mmにおいて、第2の編組インプラント(10)は、血管直径1mm当たり約21.3ストランドを使用し、一方でPED装置は、血管直径1mm当たり16ストランドを使用した。直径当たりのより少ないストランドを使用した結果として、PED装置は、第2の編組インプラント(10)よりも狭い安定状態部分を有する多孔率対直径曲線を有する。更に、関連する直径範囲の別のPED装置には、図示のように、3.25mm~3.50mmの血管直径範囲から隙間を完全に埋めるための上記PED装置が必要であった。更に、2.5mm~3.0mmの範囲及び第1の編組インプラント(10)に関して示されるように、PED装置は、使用中に70%の多孔率を維持することができる0.25mmの範囲しか示さなかったので、更に2つのPED装置も必要となる。
【0085】
図6はまた、3.0mm~4.0mmの血管直径にわたって使用するように構成されているものと示されている第3の編組インプラント(10)では、編組インプラント(10)は約70%の多孔率を提供すると確認されたが、同等のPED装置は、3.5mm~3.75mmの血管直径(すなわち、0.25mmの血管直径範囲)にわたって約70%の多孔率しか維持できなかったことを示している。この例における第3の編組インプラント(10)は、64本のワイヤストランドから構成され、PED装置は48本のワイヤストランドから構成された。換言すれば、血管直径3.5mmにおいて、第3の編組インプラント(10)は、血管直径1mm当たり約18.3ストランドを使用し、一方でPED装置は、血管直径1mm当たり13.7ストランドを使用した。直径当たりのより少ないストランドを使用した結果として、PED装置は、第3の編組インプラント(10)よりも狭い安定状態部分を有する多孔率対直径曲線を有する。更に、関連する直径範囲の別のPED装置には、図示のように、3.75mm~4.00mmの血管直径範囲から隙間を完全に埋めるための上記PED装置が必要であった。
【0086】
図6はまた、3.5mm~4.5mmの血管直径にわたって使用するように構成されているものと示されている第4の編組インプラント(10)では、編組インプラント(10)は約70%の多孔率を提供すると確認されたが、同等のPED装置は、4.0mm~4.25mmの血管直径(すなわち、0.25mmの血管直径範囲)にわたって約70%の多孔率しか維持できなかったことを示している。この例における第4の編組インプラント(10)は、72本のワイヤストランドから構成され、PED装置は48本のワイヤストランドから構成された。換言すれば、血管直径4mmにおいて、第4の編組インプラント(10)は、血管直径1mm当たり約18ストランドを使用し、一方でPED装置は、血管直径1mm当たり12ストランドを使用した。直径当たりのより少ないストランドを使用した結果として、PED装置は、第4の編組インプラント(10)よりも狭い安定状態部分を有する多孔率対直径曲線を有する。更に、関連する直径範囲の別のPED装置には、図示のように、4.25mm~4.50mmの血管直径範囲から隙間を完全に埋めるための上記PED装置が必要であった。
【0087】
図6はまた、4.0mm~5.0mmの血管直径にわたって使用するように構成されているものと示されている第5の編組インプラント(10)では、編組インプラント(10)は約70%の多孔率を提供すると確認されたが、同等のPED装置は、4.5mm~4.75mmの血管直径(すなわち、0.25mmの血管直径範囲)にわたって約70%の多孔率しか維持できなかったことを示している。この例における第5の編組インプラント(10)は、96本のワイヤストランドから構成され、PED装置は48本のワイヤストランドから構成された。換言すれば、血管直径4.5mmにおいて、第5の編組インプラント(10)は、血管直径1mm当たり約21.3ストランドを使用し、一方でPED装置は、血管直径1mm当たり10.7ストランドを使用した。直径当たりのより少ないストランドを使用した結果として、PED装置は、第5の編組インプラント(10)よりも狭い安定状態部分を有する多孔率対直径曲線を有する。更に、関連する直径範囲の別のPED装置には、図示のように、4.75mm~5.00mmの血管直径範囲から隙間を完全に埋めるための上記PED装置が必要であった。
【0088】
図6はまた、4.5mm~5.5mmの血管直径にわたって使用するように構成されているものと示されている第6の編組インプラント(10)では、編組インプラント(10)は約70%の多孔率を提供すると確認されたが、同等のPED装置は、5.0mm~5.25mmの血管直径(すなわち、0.25mmの血管直径範囲)にわたって約70%の多孔率しか維持できなかったことを示している。この例における第6の編組インプラント(10)は、96本のワイヤストランドから構成され、PED装置は48本のワイヤストランドから構成された。換言すれば、血管直径5.0mmにおいて、第6の編組インプラント(10)は、血管直径1mm当たり約19.2ストランドを使用し、一方でPED装置は、血管直径1mm当たり9.6ストランドを使用した。直径当たりのより少ないストランドを使用した結果として、PED装置は、第6の編組インプラント(10)よりも狭い安定状態部分を有する多孔率対直径曲線を有する。更に、関連する直径範囲の別のPED装置には、図示のように、5.25mm~5.50mmの血管直径範囲から隙間を完全に埋めるための上記PED装置が必要であった。
【0089】
図6に確認されるように、編組インプラント(10)の1つでカバーされている1mmの血管範囲に示されたそれぞれに対して、対応する血管における同様の適用範囲に、施術者により4つの別々のPED装置が必要とされるなら、このことは都合の悪いだけでなく無駄が多く、他には、出血性事象を起こした血管の性質及び著しくテーパ状になる傾向を考慮すると、恐らく非常に危険である。例えば、血管が0.25mmを超えてテーパ状になった場合、現在のPED装置は、70%の実質的に一貫した目標多孔率を維持する方法で、症状を起こした血管を適切に治療することはないだろう。
【0090】
図7において、フロー図は、一例の方法700及び対応する工程を示す。工程710は、動脈瘤を有する血管に関連する血管直径を決定することを含む。工程720は、血管を治療するための複数の編組インプラント(10)のうちの1つを選択することを含み、各編組インプラント(10)は、最大1mmの血管直径範囲にわたって実質的に一貫した多孔率を有し、各編組インプラント(10)は、異なる1mmの直径範囲にわたって実質的に一貫した多孔率を提供するように構成されている。工程730は、複数の編組インプラント(10)のうちの1つを用いて血管を治療することを含む。
【0091】
図8において、フロー図は、一例の方法800及び対応する工程を示す。工程810は、動脈瘤を含有する血管に関連する血管直径を決定することを含む。工程820は、血管を治療するための複数の編組インプラント(10)のうちの1つを選択することを含み、各編組インプラント(10)は、少なくとも0.5mmの血管直径範囲にわたって実質的に一貫した多孔率を有し、各編組インプラント(10)は、異なる0.5mmの直径範囲にわたって実質的に一貫した多孔率を提供するように構成されている。工程830は、複数の編組インプラント(10)のうちの1つを用いて血管を治療することを含む。
【0092】
本開示の編組インプラント(10)は、特に有利である。というのは、医者が、測定の不正確さ及び/又は誤差(例えば、動脈がX線上で測定されるか、又は任意選択の他の視覚化手段が実際に3.5mmである場合には3.3mmである)に対してある程度許容できるので、より広く示された直径範囲からメリットを得ることができるからである。医者はまた、より広い指示直径範囲により、テーパ状血管内の目標多孔率に近い一貫した多孔率を維持することができるため、メリットを得ることもでき、このことは共通している。本開示のインプラント(10)はまた、動脈直径の解剖学的範囲をより少ない装置で治療することができ、装置選択プロセスを簡略化し、手元に保管しなければならない在庫の保管スペースを節約することができるため、有利である。
【0093】
特定の例では、一組又は一群のインプラント(10)が開示され、それぞれは、1.0mm幅の示された直径範囲を有し、図5~6に示されるように、解剖学的範囲を0.5mm重複してカバーするように配置されている。本明細書を通して図示され記載された範囲は、それぞれの編組インプラント(10)について最大1mmの血管直径範囲を基準とすることに留意されたい。しかしながら、編組インプラント(10)は、1mm超の血管直径範囲に適合され得ることが企図される。本開示の編組インプラント(10)は、任意選択の所与の動脈直径に対して、選択され得る装置の2つの異なる選択肢が存在するため、特に有利である。例えば、直径3.25mmの動脈は、脈管構造内の所望の治療位置にあり得る。治療位置から離れるにつれて動脈がテーパダウンする(tapers down)場合(すなわち、より小さくなる)、医者は、例えば、3.5mmではなく2.5mmに列挙されたインプラントを選択することによって、一組又は一群のインプラントからより小さいインプラントを選択することができる。これに関して、動脈セグメントは、より長い長さにわたって目標多孔率の影響を受ける。逆に、治療位置から離れるにつれて動脈がテーパアップする(tapers up)場合(すなわち、より大きくなる)、医者は、例えば、3.0mm~4.0mmに列挙されたインプラントを選択することによって、一組又は一群からより大きいインプラントを選択することができる。これに関して、前述の例と同様に、動脈セグメントは、より長い長さにわたって目標多孔率の影響を受ける。
【0094】
本開示における利点は、特徴的な多孔率曲線の広い安定状態領域を有する編組インプラントを提供することからもたらされるので、インプラント又は一群若しくは一組のインプラントにより、約1.0mm幅の表示範囲における安定状態内の動脈直径を治療すること、及び示された直径範囲を重ね合わせることができ、医者は提示される解剖学的構造に応じて最良の選択肢の選択を有する。
【0095】
特定の例では、本開示の編組インプラントにおける並列(side-by-side)フィラメントのそれぞれは、放射線不透過性材料のモノフィラメントを含む。一構造では、マルチストランドを有する支持体(carrier)はシングルストランド用の支持体と実質的に同一である。マルチストランドの並列フィラメントの各々は、放射線不透過性材料のモノフィラメントである。各並列フィラメントの直径は、シングルストランドの直径と実質的に同じであることが好ましい。本体を形成することは、開放編組パターン又は開放製織パターンといった第1の間隔パターン及び第1の壁厚を定めることを含み、各マルチストランドは第1の間隔パターンから実質的に逸脱することなく、かつ第1の壁厚を実質的に変更することなく、第1の間隔パターンに加わる。
【0096】
特定の技術では、少なくとも1つのマルチストランド支持体が1ダースのシングルストランド支持体毎に使用される。一部の機械は少なくとも42個の支持体、例えば48個の支持体などを有し、また少なくとも支持体のうちの6つ、例えば8個の支持体が、放射線不透過性材料のマルチストランドを搭載する。8個の支持体が放射線不透過性材料のシングルストランドを搭載するとき、これは、48個の支持体の編組をなおもたらすが、編組は2倍の数の放射線不透過性ストランドを有する。
【0097】
フローダイバータを含む本開示の編組インプラントは、治療部位で適所に送達及び拡張した後に、1つの動脈領域当たりの適用範囲領域における特定の割合に対して、又は逆に、「多孔率」として本開示で知られている、1つの動脈領域当たりの残りの開口領域の割合に対して、設計することができる。設計された多孔率は、PPI又はピッチとして代替的に測定することができる、ワイヤの数、ワイヤの幅、編組直径、及び編組角度などの編組パラメータによって調整することができる。これらの因子に基づいて目標多孔率が特定されると、示された動脈直径まで拡張されたときに目標多孔率に到達するように編組設計を調整することができる。
【0098】
フローダイバータを含む本開示の編組インプラントは、異なる動脈直径で目標多孔率に達する一組又は一群内に多くの変形体を有することができる。したがって、一組又は一群の装置によって、医者が解剖学的範囲(1.5mm~6mmが神経脈管に典型的である)内の任意選択の直径の動脈を治療することができる。
【0099】
本明細書に含まれる記述は、各種実施形態の例であり、本発明の範囲を何ら制限するものではない。本明細書に記載されるように、本発明は、使用することができるシステム、デバイス、又は方法の多くの変形形態及び修正形態を企図する。変形例としては、限定するものではないが、本明細書に記載される要素及び構成要素の代替的な幾何学的形状が挙げられ、各構成要素又は要素(例えば、放射線不透過性材料、形状記憶金属など)の多数の材料のいずれかが利用される。これらの修正形態は、本発明の関連技術分野の当業者に明らかであろうし、かつ、以下の特許請求項の範囲内であることが意図される。
【0100】
特定の構成、材料選択、並びに種々の要素の寸法及び形状は、開示された技術の原理に従って構成されたシステム又は方法を必要とする特定の設計仕様若しくは制約に従って変化し得る。このような変更は、開示された技術の範囲内に包含されることが意図される。したがって、本開示の実施形態は、あらゆる点において、例示的であり、かつ限定的ではないと見なされる。したがって、以上のことから、本開示の特定の形態を図示し説明したが、本開示の精神と範囲から逸脱することなしに種々の変更を行うことができ、その等価物の意味及び範囲内にある全ての変更が本開示に含まれると意図されることが明らかである。
【0101】
〔実施の態様〕
(1) 動脈瘤を治療するためのフローダイバータとして構成された編組インプラントであって、
テーパ状血管内の実質的に一貫した目標多孔率を最大1mmの血管直径範囲まで維持するように構成された編組メッシュ、を備え、
前記編組メッシュが、前記テーパ状血管内にある間、前記編組メッシュの近位端と遠位端との間で前記実質的に一貫した目標多孔率を維持するように構成されている、編組インプラント。
(2) 前記テーパ状血管が、最大1mm異なる近位端直径及び遠位端直径を有し、前記最大1mmの血管直径範囲が、前記近位端直径と前記遠位端直径とを比較することによって画定される、実施態様1に記載のインプラント。
(3) 前記実質的に一貫した目標多孔率が約70%である、実施態様1に記載のインプラント。
(4) 前記テーパ状血管内の前記編組メッシュの近位端と遠位端との間の所定の長さが、少なくとも3cmである、実施態様1に記載のインプラント。
(5) 前記テーパ状血管内の前記編組メッシュの近位端と遠位端との間の所定の長さが、少なくとも1cmである、実施態様1に記載のインプラント。
【0102】
(6) 前記編組インプラントが、示された血管直径を更に有し、前記編組インプラントは、前記示された血管直径が前記編組インプラントの多孔率曲線のピークと一致するように構成されている、実施態様1に記載のインプラント。
(7) 前記編組インプラントが、前記多孔率曲線の前記ピーク周辺に並んだ血管直径の1mmの径方向範囲に対応する多孔率の安定状態を更に有する、実施態様6に記載のインプラント。
(8) 前記編組インプラントが、前記多孔率曲線の前記ピーク周辺に並んだ血管直径の1mmの径方向範囲と一致する多孔率の安定状態を更に有する、実施態様6に記載のインプラント。
(9) 前記編組インプラントの孔密度が、約18~23孔/mmである、実施態様1に記載のインプラント。
(10) 前記編組インプラントが、実質的に円筒形の多孔質構造である、実施態様1に記載のインプラント。
【0103】
(11) 前記編組インプラントが、少なくとも1つの第1の材料から構成される複数のシングルストランド及び1つ以上の放射線不透過性マルチストランドから形成されている、実施態様1に記載のインプラント。
(12) 前記編組インプラントは、各々がそれぞれモノフィラメントと合わせて敷かれている、モノフィラメントで形成された複数のマルチストランドから形成されている、実施態様1に記載のインプラント。
(13) 動脈瘤を治療するためのシステムであって、
複数の編組インプラントを備え、各編組インプラントが、血管直径における異なる1mmの径方向範囲にわたって実質的に一貫した多孔率を有し、各編組インプラントは、異なる1mmの径方向直径範囲にわたって実質的に一貫した多孔率を提供するように構成されている、システム。
(14) 前記編組インプラントがテーパ状血管で使用するように構成され、前記テーパ状血管が、最大1mm異なる近位端直径及び遠位端直径を有し、前記血管直径における異なる1mmの径方向範囲は、前記近位端直径と前記遠位端直径とを比較することによって画定される、実施態様13に記載のシステム。
(15) 前記複数の編組インプラントが、
2~3mmの血管直径範囲を治療するように構成された第1の編組インプラントと、
2.5~3.5mmの血管直径範囲を治療するように構成された第2の編組インプラントと、
3.0~4.0mmの血管直径範囲を治療するように構成された第3の編組インプラントと、
3.5~4.5mmの血管直径範囲を治療するように構成された第4の編組インプラントと、
4.0~5.0mmの血管直径範囲を治療するように構成された第5の編組インプラントと、
4.5~5.5mmの血管直径範囲を治療するように構成された第6の編組インプラントと、を備え、
各編組インプラントの前記多孔率は、65%~70%の範囲である、実施態様13に記載のシステム。
【0104】
(16) 各編組インプラントが、約18~23孔/mmの範囲の孔密度を有する、実施態様15に記載のシステム。
(17) 前記複数の編組インプラントのそれぞれが、前記複数の編組インプラントのうちの次に最小の前記編組インプラントの血管直径における前記径方向範囲の約半分だけ互いにずれている、実施態様13に記載のシステム。
(18) 動脈瘤の治療方法であって、
前記動脈瘤を有する血管に関連する血管直径を決定することと、
前記血管を治療するための複数の編組インプラントのうちの1つを選択することであって、各編組インプラントが、最大1mmの血管直径範囲にわたって実質的に一貫した多孔率を有し、各編組インプラントは、異なる血管直径範囲にわたって実質的に一貫した多孔率を提供するように構成されている、ことと、
前記複数の編組インプラントのうちの前記1つを用いて前記血管を治療することと、を含む、方法。
(19) 前記血管がテーパ状であり、前記テーパ状血管が、最大1mm異なる近位直径及び遠位直径を有し、前記血管直径を決定することが、前記近位端直径と遠位端直径とを比較することを含み、前記方法が、
前記テーパ状血管全体にわたって、前記実質的に一貫した多孔率を維持すること、を更に含む、実施態様18に記載の方法。
(20) 前記血管を治療することが、
前記編組インプラントを動脈瘤に前進させることと、
前記複数の編組インプラントのうちの前記1つを使用して、前記動脈瘤を排除し、前記動脈瘤から血流を迂回させることによって、前記血管内の血流を再構成することと、を含む、実施態様18に記載の方法。
図1
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図8