IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キヤノン株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-光学装置及び撮像装置 図1
  • 特許-光学装置及び撮像装置 図2
  • 特許-光学装置及び撮像装置 図3
  • 特許-光学装置及び撮像装置 図4
  • 特許-光学装置及び撮像装置 図5
  • 特許-光学装置及び撮像装置 図6
  • 特許-光学装置及び撮像装置 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】光学装置及び撮像装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/02 20210101AFI20240408BHJP
【FI】
G02B7/02 C
G02B7/02 Z
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2019157547
(22)【出願日】2019-08-30
(65)【公開番号】P2021036279
(43)【公開日】2021-03-04
【審査請求日】2022-08-25
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100136799
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 亜希
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雄一郎
【審査官】門田 宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-097228(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02 - 7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部材と、
光学部材を保持する保持部材とを備え、
前記ベース部材及び前記保持部材のうち一方には、前記光学部材の径方向に貫通する第1の孔部と、記第1の孔部に連通する溝部とが設けられ
前記ベース部材及び前記保持部材のうち他方には、前記溝部を通過することで前記第1の孔部の中に位置する第1の凸部と、前記溝部に位置する第2の凸部とが設けられており、
前記第1の孔部、前記第1の凸部、及び前記第2の凸部によって形成される空間内に収容された接着剤により、前記ベース部材及び前記保持部材が接着されていることを特徴とする光学装置。
【請求項2】
前記ベース部材及び前記保持部材のうち他方には、前記第1の凸部と前記第2の凸部が前記光学部材の光軸に沿った方向に並んで設けられていることを特徴とする請求項1に記載の光学装置。
【請求項3】
ベース部材と、
光学部材を保持する保持部材とを備え、
前記ベース部材及び前記保持部材のうち一方には、前記光学部材の光軸に沿った方向に貫通する第1の孔部と、前記第1の孔部に連通する溝部とが設けられ、
前記ベース部材及び前記保持部材のうち他方には、前記溝部を通過することで前記第1の孔部の中に位置する第1の凸部と、前記溝部に位置する第2の凸部とが設けられており、
前記第1の孔部、前記第1の凸部、及び前記第2の凸部によって形成される空間内に収容された接着剤により、前記ベース部材及び前記保持部材が接着されていることを特徴とする光学装置。
【請求項4】
前記ベース部材及び前記保持部材のうち他方には、前記第1の凸部と前記第2の凸部が前記光軸を中心とした周方向に沿って設けられていることを特徴とする請求項3に記載の光学装置。
【請求項5】
前記第1の孔部は、前記ベース部材に設けられていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の光学装置。
【請求項6】
前記第1の凸部は、前記保持部材に設けられていることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の光学装置。
【請求項7】
前記第2の凸部は、前記保持部材に設けられていることを特徴とする請求項1乃至の何れか一項に記載の光学装置。
【請求項8】
前記第1の凸部は、変形可能な材料から成ることを特徴とする請求項1乃至の何れか一項に記載の光学装置。
【請求項9】
前記ベース部材及び前記保持部材の間からの前記接着剤の流出を抑制する流出抑制部を備えることを特徴とする請求項1乃至の何れか一項に記載の光学装置。
【請求項10】
前記流出抑制部は、前記第1の凸部の周囲に位置する環状部材を含むことを特徴とする請求項に記載の光学装置。
【請求項11】
撮像装置に対して着脱可能であることを特徴とする請求項1乃至10の何れか一項に記載の光学装置。
【請求項12】
請求項1乃至11の何れか一項に記載の光学装置と、該光学装置からの光を受光する撮像素子とを有することを特徴とする撮像装置。
【請求項13】
ベース部材と、光学部材を保持する保持部材とを備える光学装置の製造方法であって、
前記ベース部材及び前記保持部材のうち一方には、前記光学部材の径方向に貫通する第1の孔部と、記第1の孔部に連通する溝部とが設けられ、
前記ベース部材及び前記保持部材のうち他方には、第1の凸部と第2の凸部が設けられており、
前記溝部を通過させることで前記第1の凸部を前記第1の孔部の中に配置し、かつ前記第2の凸部を前記溝部に配置する配置工程と、
前記第1の孔部、前記第1の凸部、及び前記第2の凸部によって形成される空間内に接着剤を充填する接着工程とを有することを特徴とする製造方法。
【請求項14】
前記配置工程において、前記第1の凸部を前記光学部材の光軸方向に沿って移動させることで前記溝部を通過させることを特徴とする請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
ベース部材と、光学部材を保持する保持部材とを備える光学装置の製造方法であって、
前記ベース部材及び前記保持部材のうち一方には、前記光学部材の光軸に沿った方向に貫通する第1の孔部と、前記第1の孔部に連通する溝部とが設けられ、
前記ベース部材及び前記保持部材のうち他方には、第1の凸部と第2の凸部が設けられており、
前記溝部を通過させることで前記第1の凸部を前記第1の孔部の中に配置し、かつ前記第2の凸部を前記溝部に配置する配置工程と、
前記第1の孔部、前記第1の凸部、及び前記第2の凸部によって形成される空間内に接着剤を充填する接着工程とを有することを特徴とする製造方法。
【請求項16】
前記配置工程において、前記第1の凸部を前記光学部材の光軸周りの方向に沿って移動させることで前記溝部を通過させることを特徴とする請求項15に記載の製造方法。
【請求項17】
前記配置工程と前記接着工程との間において、前記ベース部材及び前記保持部材の間からの前記接着剤の流出を抑制する流出抑制部を設ける工程を有することを特徴とする請求項13乃至16の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項18】
前記流出抑制部は環状部材であり、前記流出抑制部を設ける工程では、前記環状部材を前記第1の凸部の周囲に配置することを特徴とする請求項17に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学装置及びそれを用いた撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レンズなどの光学部材を備える光学装置においては、衝撃や環境変動による光学部材の位置ずれを防止することが求められる。
【0003】
特許文献1には、光学調整されたレンズ保持部材をベース部材に固定する手段がレンズ保持部材の正面側に設けられた光学機器が開示されている。そして、レンズ保持部材の固定は、レンズ保持部材に設けられた凸部がベース部材に設けられた貫通穴部の内部に位置し、貫通穴部の中における凸部の周りに充填された接着剤の硬化によりなされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-97228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の光学機器では、レンズ保持部材の側面側から調整工具を挿入して光学調整が行われる一方、レンズ保持部材とベース部材の固定はレンズ保持部材の正面側から接着剤により行われるため、組立が複雑であった。また、レンズ保持部材とベース部材を固定する手段を単にレンズ保持部材の側面側に配置すると、レンズ保持部材に設けられた凸部をベース部材に設けられた貫通穴部の内部に配置することができなかった。
【0006】
本発明の目的は、組立が容易な光学装置及びそれを用いた撮像装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、光学装置は、ベース部材と、光学部材を保持する保持部材とを備え、前記ベース部材及び前記保持部材のうち一方には、前記光学部材の径方向に貫通する第1の孔部と、記第1の孔部に連通する溝部とが設けられ、前記ベース部材及び前記保持部材のうち他方には、前記溝部を通過することで前記第1の孔部の中に位置する第1の凸部と、前記溝部の中に位置する第2の凸部とが設けられており、前記第1の孔部、前記第1の凸部、及び前記第2の凸部によって形成される空間内に収容された接着剤により、前記ベース部材及び前記保持部材が接着されていることを特徴とする。


【発明の効果】
【0008】
組立が容易な光学装置及びそれを用いた撮像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1に係る交換レンズ50の全長が縮んだ状態(TELE)の断面図である。
図2】実施例1に係る交換レンズ50の全長が伸長した状態(WIDE)の断面図である。
図3】実施例1の交換レンズ50とカメラ本体のシステムブロック図である。
図4】実施例1の交換レンズ50の1群鏡筒2に係る部材の分解斜視図である。
図5】実施例1の交換レンズ50の1群ベース4の斜視図である。
図6】実施例1の交換レンズ50の接着構造の部分断面図である。
図7】実施例2の保持鏡筒202の部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施例1)
以下に、本発明の好ましい実施の形態を、添付の図面に基づいて詳細に説明する。なお、図面の一点鎖線で示される光軸方向において、光学部材であるレンズを備えた交換レンズ50(光学装置)の物体側を前側、カメラ本体70にバヨネット固定される固定側(撮像面側)を後側と定義する。図1、2を参照して、本発明の実施例1に係る交換レンズ50について説明する。
【0011】
図1は、交換レンズ50の全長が縮んだTELEの状態である交換レンズ50の断面図である。図2は、交換レンズ50の全長が伸長したWIDEの状態である交換レンズ50の断面図である。光学部材である1群レンズ1は、1群鏡筒2により保持される。1群鏡筒2は、1群調整環3により保持され、1群調整環3は、光学調整のために1群鏡筒2を光軸方向と光軸方向に垂直な方向における面上で移動させる。1群鏡筒2と1群調整環3は、1群ベース4により保持される。交換レンズ50は、以下に説明するように複数の光学部材を有するが、1群調整環3は、複数の光学部材の少なくとも一部を保持する保持部材である。
【0012】
直進筒5には、物体側に不図示のフィルタを取り付けるねじ部が形成されている。直進筒5と1群レンズ1は、一体となってズーム作動に伴って進退するが、実施例1ではこれらは互いに不図示の別の支持構造によって支持されて移動する。化粧環6には、交換レンズ50のスペック等が印刷されており、化粧環6は、直進筒5にビス固定されると共に外観を成している。
【0013】
2群レンズ7(フォーカスレンズ)は、2群鏡筒8により保持されており、駆動機構(超音波モータユニット30)及び不図示の直進案内機構によって2群鏡筒8が光軸方向に沿って進退可能に支持されると共に移動され、合焦動作が行われる。この直進案内機構はいわゆるガイドバーと呼ばれる光軸方向に伸びた円筒部材を2本使用しており、2本の内の一方が2群鏡筒8の倒れ/偏芯を決め、他方が光軸を中心とした回転位置を決める。そして、2群鏡筒8がガイドバーに沿って進退できるように支持されている。
【0014】
3群レンズ9は、3群鏡筒10により保持されている。4群レンズ11は4群鏡筒12により保持されており、4群鏡筒12は、光軸方向に対して垂直な面上で4群レンズ11を移動させることで、いわゆる手ブレを補正する光学防振機能を果たす。この光学防振機能を生じさせるためのアクチュエータは、いわゆるボイスコイルモータであるが、その構成の詳細説明は割愛する。
【0015】
5群レンズ13は、5群鏡筒14により保持され、6群レンズ15は、6群鏡筒16により保持されている。そして、5群鏡筒14は、6群鏡筒16に不図示のビスで固定されている。以上で述べた各レンズ群は、それぞれが一つのレンズとして構成されるわけではなく、複数のレンズ群によって構成される場合もあるが、説明の便宜上、その詳細を割愛する。
【0016】
光量調節を行う絞りユニット17は、4群鏡筒12に固定されており、複数の遮光羽根を有する。そして、不図示のステッピングモータを駆動源として絞りユニット17の複数の遮光羽根が駆動され、所望のF値にすることが可能である。前述の3群鏡筒10は、4群鏡筒12に一体固定された絞りユニット17と4群鏡筒12に挟まれているが、光軸方向への移動は可能である。
【0017】
所定のフレア光をカットする副絞りユニット18は、4群鏡筒12に支持されており、絞りユニット17と同様に複数の遮光羽根を内部に有する。そして、不図示のメカ連結機構によって副絞りユニット18の複数の遮光羽根が駆動され、TELE~WIDEのズーム位置に対応する開口形状に複数の遮光羽根を変化させることが可能である。
【0018】
案内筒19が備えられ、この案内筒19の外周側に回転可能に係合するカム環20が更に備えられている。そして、物体側に前側固定筒22、カメラ本体70側に後側固定筒21が備えられ、前側固定筒22は、後側固定筒21の前側にビスで固定されている。更に後側固定筒21には、案内筒19、外観筒24、マウント25、レンズの駆動用IC、マイコン等が配置されたプリント基板23が固定されている。
【0019】
後側固定筒21にビス固定された外観筒24の外周面には、MF⇔AF切り替えやISモード切り替えをすることができる不図示のスイッチが配置されている。また、後側固定筒21にビス固定されたマウント25には、裏蓋27が固定されており、その内面には有害光をカットする遮光線が配置されている。マウント筒26は、後側固定筒21とマウント25の間に挟まれて固定されており、裏蓋27と同様、その内面には遮光線が配置されている。実施例1の交換レンズ50においては、マウント筒26の光軸方向の厚みを加工等によって変化させることで、撮像部78(撮像素子)への合焦位置が調節可能である。接点ブロック28は、不図示の配線(フレキシブル基板など)によってプリント基板23に接続され、マウント25にビス固定される。
【0020】
MFリングユニット29は、前側固定筒22を軸として定位置に回転可能に支持されている。MFリングユニット29を回転させると、その回転を不図示のセンサが検出し、回転量に応じて2群鏡筒8を駆動し、2群レンズ7の合焦制御が行われる。
【0021】
超音波モータユニット30は、2群鏡筒8の駆動源であり、圧電素子が発生する超音波振動によって自ら移動することができる。2群鏡筒8と超音波モータユニット30は、不図示の連結機構で係合されており、2群鏡筒8は、超音波モータユニット30と共に移動可能である。2群鏡筒8に取り付けられた不図示の遮光壁は、不図示のフォトインタラプタの遮光/透光を切り替え、この遮光/透光が電気的に検出され、この検出の値に基づいて2群鏡筒8の進退の位置(基準位置)が把握される。この基準位置から2群鏡筒8を所定量移動させることで、所望の合焦位置への移動が可能となる。
【0022】
2群レンズ7の第1のベース31は、前述の直進案内機構を構成するガイドバーの一端を保持する。2群レンズ7の第2のベース32は前述のガイドバーの他端、超音波モータユニット30及びフォトインタラプタを保持する。すなわち、ガイドバーは、第1のベース31と第2のベース32に挟まれて所定の位置に固定されている。
【0023】
ファンクションリングユニット33は、前側固定筒22を軸として定位置で回転可能に支持されている。フロントカバー34は、ファンクションリングユニット33が組込まれた後、その押えとして前側固定筒22にビス固定されている。ファンクションリングユニット33は、MFリングユニット29と同様に不図示のセンサでその回転量が検出される。実施例1では、この検出された値によって絞りユニット17を制御し、任意のF値に変更することができる。なお、ISO感度やシャッタースピード等、F値とは異なる撮影条件の変更をファンクションリングユニット33に割り当てることも可能である。
【0024】
マニュアルズームリング35は、後側固定筒21に回転自在に支持される。カム環20とマニュアルズームリング35は不図示の連結部材によって連結されており、ユーザーがマニュアルズームリング35を回転させることでカム環20が回転する構造となっている。
【0025】
次に、各レンズ群の位置調節機構(ズーム動作)について説明する。1群鏡筒2と1群調整環3を保持する1群ベース4、3群鏡筒10、2群鏡筒8や超音波モータユニット30を保持する2群レンズ7の第2のベース32には、不図示のコロが各々配置されており、これらのコロがカム環20に係合する。
【0026】
4群鏡筒12には、前述のとおり光学防振機能を発揮するためのアクチュエータ及び副絞りユニット18が搭載されているが、更に3群鏡筒10より前側に配置された絞りユニット17も搭載されている。そして、4群鏡筒12、5群鏡筒14を保持する6群鏡筒16には、不図示のコロが各々配置されており、これらのコロがカム環20に係合する。
【0027】
これらのコロは、それぞれ異なる軌跡を有するカム環20に設けられた不図示のカム溝と係合している。そして、カム溝は、所望のズーム位置において各レンズ群が光学的に所望のレンズ間隔となるような軌跡となっている。カム環20の光軸周りの回転に伴い、1群ベース4、3群鏡筒10、4群鏡筒12、6群鏡筒16及び第2のベース32を図1に示す縮んだTELEの位置から図2に示す伸長したWIDEの位置、更にその間の任意のズーム位置に配置することができる。
【0028】
カム環20の回転は、不図示のセンサによって検出され、プリント基板23に搭載されたICによってその検出された信号から回転量に応じたズーム位置が判断され、ズーム位置に応じたフォーカス、防振、絞りの制御が行われる。
【0029】
実施例1の交換レンズ50は、撮像装置であるカメラ本体70にマウント25で着脱可能にバヨネット固定される。カメラ本体70に交換レンズ50がマウント25で固定されると、各レンズ群の動作を制御するプリント基板23は、接点ブロック28を介してカメラ本体70と通信が可能となる。
【0030】
撮像部78は、カメラ本体70に搭載されており、交換レンズ50を通過した被写体からの光を受光し、その光を電気信号に変換するCMOSやCCD等の光-電気変換素子(撮像素子)である。
【0031】
図3は、交換レンズ50及びカメラ本体70におけるカメラシステムの電気的構成を示す。まず、カメラ本体70内部の制御フローについて説明する。カメラCPU71はマイクロコンピュータにより構成される。カメラCPU71は、カメラ本体70内の各部の動作を制御する。また、カメラCPU71は、交換レンズ50の装着時にはレンズ側電気接点52、カメラ側電気接点72を介して、交換レンズ50内に設けられたレンズCPU51との通信を行う。カメラCPU71がレンズCPU51に送信する情報(信号)には、2群レンズ7の駆動量情報、平行振れ情報及びピント振れ情報が含まれる。また、レンズCPU51からカメラCPU71に送信する情報(信号)には、撮像倍率情報が含まれる。なお、レンズ側電気接点52、カメラ側電気接点72には、カメラ本体70から交換レンズ50に電源を供給するための接点が含まれている。
【0032】
電源スイッチ73は、撮影者により操作可能なスイッチであり、カメラCPU71の起動、及びカメラシステム内の各アクチュエータやセンサ等への電源供給の開始をすることができる。レリーズスイッチ74は、撮影者により操作可能なスイッチであり、第1ストロークスイッチSW1と第2ストロークスイッチSW2とを有する。レリーズスイッチ74からの信号は、カメラCPU71に入力される。カメラCPU71は、第1ストロークスイッチSW1からのON信号の入力に応じて、撮影準備状態に入る。撮影準備状態では、測光部75による被写体輝度の測定と、焦点検出部76による焦点検出が行われる。
【0033】
カメラCPU71は、測光部75による測光結果に基づいて絞りユニット17の絞り値や撮像部78の撮像素子の露光量(シャッタ秒時)等を演算する。また、カメラCPU71は、焦点検出部76による撮影光学系の焦点状態の検出結果である焦点情報(デフォーカス量及びデフォーカス方向)に基づいて、被写体に対する合焦状態を得るための2群レンズ7及び2群鏡筒8の駆動量(駆動方向を含む)を決定する。上記駆動量の情報(2群レンズ7の駆動量情報)は、レンズCPU51に送信される。レンズCPU51は、交換レンズ50の各構成部の動作を制御する。
【0034】
更にカメラCPU71は、所定の撮影モードになると、2群鏡筒8のシフト駆動、すなわち防振動作の制御を開始する。第2ストロークスイッチSW2からのON信号が入力されると、カメラCPU71は、レンズCPU51に対して絞り駆動命令を送信し、絞りユニット17を先に演算した絞り値に設定する。また、カメラCPU71は、露光部77に露光開始命令を送信し、不図示のミラーの退避動作や不図示のシャッタの開放動作を行わせ、撮像部78の撮像素子において、被写体像の光電変換、すなわち露光動作を行わせる。
【0035】
撮像部78からの撮像信号は、カメラCPU71内の信号処理部にてデジタル変換され、更に各種補正処理が施されて画像信号として出力される。画像信号(データ)は、画像記録部79において、フラッシュメモリ等の半導体メモリ、磁気ディスク、光ディスク等の記録媒体に記録保存される。
【0036】
次に交換レンズ50内部の制御フローについて説明する。MFリング回転検出部53は、MFリングユニット29の回転を検出し、ZOOMリング回転検出部54は、マニュアルズームリング35の回転を検出する。
【0037】
IS駆動部55は、防振動作を行う2群鏡筒8の駆動アクチュエータとその駆動回路とを含む。AF駆動部56は、カメラCPU71から送信された2群レンズ7の駆動量情報に応じてAFモータ(超音波モータユニット30)を通じて2群鏡筒8のAF駆動を行う。
【0038】
電磁絞り駆動部57は、カメラCPU71からの絞り駆動命令を受けたレンズCPU51により制御されて、絞りユニット17を指定された絞り値に相当する開口状態に動作させる。
【0039】
角速度センサ58は、交換レンズ50に搭載され、プリント基板23に接続されている。角速度センサ58は、カメラシステムの角度振れである縦(ピッチ方向)振れと横(ヨー方向)振れのそれぞれの角速度を検出し、検出値を角速度信号としてレンズCPU51に出力する。レンズCPU51は、角速度センサ58からのピッチ方向及びヨー方向の角速度信号を電気的又は機械的に積分して、それぞれの方向での変位量であるピッチ方向振れ量及びヨー方向振れ量(これらをまとめて角度振れ量という。)を演算する。
【0040】
レンズCPU51は、上述した角度振れ量と平行振れ量の合成変位量に基づいてIS駆動部55を制御して2群鏡筒8をシフト駆動させ、角度振れ補正及び平行振れ補正を行う。また、レンズCPU51は、ピント振れ量に基づいてAF駆動部56を制御して2群鏡筒8を光軸方向に駆動させ、ピント振れ補正を行う。
【0041】
次に、実施例1の交換レンズ50における1群鏡筒2について説明する。実施例1の交換レンズ50は、いくつかのレンズを偏芯し、もしくは倒れさせ、又は光軸方向に沿って移動させることで、所望の光学性能を得るための光学調整機構を有する。その光学調整機構の一つとして、1群鏡筒2の1群レンズ1の偏芯調整機構及びスラスト位置調整機構がある。図4は、1群鏡筒2に係る部材の分解斜視図である。図4を用いて1群鏡筒2の構成を詳細に説明する。
【0042】
スラスト調整カム3aは、1群調整環3に設けられ、1群調整環3の光軸を中心とした回転方向に沿ってリードを持つ貫通孔である。スラスト調整コロ37は、1群鏡筒2が1群調整環3の内部に収納された後、1群鏡筒2の周方向に120°均等に3個配置されると共に、スラスト調整カム3aに係合する。そして、各々のスラスト調整コロ37は、それぞれビス37aによって1群鏡筒2に固定される。1群鏡筒2を回転させることで各々のスラスト調整コロ37がスラスト調整カム3aのリードに沿って移動し、1群調整環3に対して1群鏡筒2が相対的に光軸に沿って移動することができる。このようなスラスト調整カム3aとスラスト調整コロ37によりスラスト位置調整機構が構成される。
【0043】
偏芯調整溝4cは、1群ベース4に設けられた略長方形の貫通孔である。偏芯コロ38は、1群調整環3が1群ベース4の内部に収納された後、1群調整環3の周方向に120°均等に3個配置されると共に、偏芯調整溝4cに係合する。そして、各々の偏芯コロ38は、それぞれビス38aによって1群調整環3に固定される。実施例1の偏芯調整溝4cは、光軸方向を長手とする略長方形となっており、偏芯コロ38の偏芯径部とその短手方向の幅が係合する。偏芯コロ38が偏芯径部を中心に偏芯調整溝4cの中で回転すると、回転中心と異なる中心を持つ1群調整環3側の円筒部はその回転に対して偏芯動作する。この偏芯動作を利用して、1群調整環3を1群ベース4に対して相対的に偏芯させ、ひいては1群調整環3に固定された1群鏡筒2及び1群レンズ1を光軸に対して偏芯させることができる。このような偏芯コロ38を使った偏芯調整機構は、交換レンズ50の構成としては一般的であるので、詳細な作動や偏芯コロ形状の詳細については割愛し、上記説明のみに留める。
【0044】
1群コロ36は、1群ベース4の周方向に120°均等に不図示のビスで固定されており、カム環20に設けられたカム溝と係合することで、1群ベース4がカム溝の軌跡にならって光軸方向に進退可能となる。
【0045】
このような1群レンズ1の偏芯調整機構及びスラスト位置調整機構では、1群レンズ1の側面側(径方向)から所望の光学性能を得るための光学調整を行っている。そして、交換レンズ50には、例えば強い衝撃が加わった際や、長時間高温・高湿化にさらされた際における光学性能の維持が求められるので、光学調整を行った後、その各レンズや各鏡筒を各コロで固定するだけでなく接着固定も行なわれている。従来では、その接着がレンズ保持部材の正面側、すなわち光軸方向から行われており、径方向からの光学調整に対して組立が複雑であった。そこで、1群レンズ1の側面側(径方向)から接着するようにすれば、光学調整と同じ方向にて接着が行えるので、組立を容易にすることができる。しかしながら、調整する部品同士を接着する場合、調整で必要なスペースから接着剤が流れ出し、接着剤が減少することにより十分な接着強度を確保できない場合がある。次に、実施例1の接着固定の構成と接着剤の流出を防止できる接着構造について説明する。
【0046】
1群調整環3の側面には、接着凸部3b(第1の凸部)と流出防止凸部3c(第2の凸部)が光軸に沿って隣接して設けられている。接着凸部3bは、接着面積を増加させ、接着強度を十分に確保するように機能し、流出防止凸部3cは後述の接着剤Aの流出を防止する流出抑制部として機能する。そして、1群ベース4の側面には、径方向に貫通する貫通孔の形状をした接着池4a(第1の穴部)が設けられている。更に、接着池4aに連通する通過溝4b(第2の穴部)も光軸に沿って設けられている。
【0047】
以下、交換レンズ50を組立て(製造方法)の一部を説明しながら、接着構造の詳細を説明する。1群調整環3を1群ベース4に光軸に沿って収納する工程により、1群ベース4に設けられた接着池4aは、1群調整環3の外周面を底として接着溜まり部を形成する。その際に、接着凸部3bは通過溝4bを通って接着池4aの中に配置され、かつ、流出防止凸部3cが通過溝4bの中に位置するように配置される(配置工程)。
【0048】
上記のように、接着池4aに連通する通過溝4bを光軸に沿って設けることによって、1群調整環3を1群ベース4に収納する際に、接着凸部3bが通過溝4bを通って接着池4aの中に配置されることが可能になる。接着池4aには、接着剤Aが充填され(接着工程)、1群調整環3が1群ベース4に接着固定されるが、接着池4aが1群調整環3の側面側に配置されているので、1群レンズ1の側面側(径方向)から上記の光学調整と接着ができ、組立が容易になる。
【0049】
なお、上記のように形成された接着溜まり部は、1群ベース4及び1群調整環3のうち一方に設けられていれば良く、また、接着凸部3bは接着溜まり部が設けられていない1群ベース4及び1群調整環3のうち一方に設けられていれば良い。更に、接着凸部3bは、交換レンズ50の物体側から撮像面側へもしくは撮像面側から物体側へ移動することで通過溝4bを通過する。
【0050】
上記のように、接着池4aに連通する通過溝4bを光軸に沿って設けることによって、組立が容易になる効果が得られる一方、この通過溝4bから接着剤Aが流出してしまうことが懸念される。しかしながら、流出防止凸部3cが通過溝4bの中に位置することにより、この接着剤Aの流出が防止される。更に、接着凸部3bが接着池4aの中に配置された後に、環状部材である流出防止リング39が1群ベース4の外周面から取り付けられる。流出防止リング39は、接着凸部3bを取り囲むように接着池4aに配置され、接着凸部3bの周囲に位置し、接着剤Aの流出を防止する流出抑制部材(流出抑制部)として機能する。
【0051】
図5は、1群ベース4の接着池4aに接着凸部3bが位置し、流出防止リング39が組み込まれ、接着剤Aが充填されていない状態を示す斜視図である。図6は、接着池4aに接着剤Aが充填された状態の接着構造を示す部分断面図である。接着工程において接着剤Aは、接着池4a、接着凸部3b、流出防止凸部3cによって形成される空間内に収容される。又は、接着剤Aは、接着池4a、接着凸部3b、流出防止凸部3c、流出防止リング39によって形成される空間内に収容される。
【0052】
接着池4aは、その深さ方向(図6の上下方向)に径が異なる筒部4dが段差をなして形成され、その小さい径の筒部4dで流出防止リング39を保持している。小さい径の筒部4dと流出防止リング39の外径はおおよそ同径になっており、この接着池4aに接着剤Aを充填しても、互いの隙間が小さいため接着剤Aの流出を防止できる。一方、1群調整環3に設けられた接着凸部3bの外形と、流出防止リング39の内径とは矢印Cで示すとおり、一定の隙間が空いている。これは、1群調整環3及び接着凸部3bが、接着池4aに保持された流出防止リング39に対し、相対的に偏芯するためのスペースである。そして、接着剤Aがこのスペースに入り込み、接着凸部3bと流出防止リング39の間を強固に接着することができる。
【0053】
1群ベース4の内部に1群調整環3が収納される際に、接着凸部3bが通過する通過溝4bは接着池4aと連通しているが、その通過溝4bの内側には流出防止凸部3cが位置する。そのため、接着剤Aを接着池4aに充填した際、通過溝4bに流れ込む接着剤Aを流出防止凸部3cで堰き止めることができる。なお、1群ベース4と1群調整環3は相対的に偏芯するため、通過溝4bと流出防止凸部3cとの間にはスペースが必要である。しかしながら、使用する接着剤Aは紫外線を照射すると固着するタイプのいわゆるUV接着剤であり、一定の粘度を有するので、紫外線を照射するまでの作業時間を最適化することで、上記スペースからの流出を防ぐことができる。もし仮に、流出防止凸部3cが無い場合、通過溝4bによるスペースが大きすぎるため、紫外線を照射する作業時間の最適化だけでは流出を防止することが困難である。
【0054】
また、流出防止リング39は、その自重により図6に示すように1群調整環3に当接している。偏芯調整機構により1群調整環3が重力方向又は、図面の上下方向に移動しても、流出防止リング39は1群調整環3の動きに応じて当接したまま保持される。そのため、接着剤Aが接着池4aの底まで流れ込んでも、流出防止リング39と1群調整環3の間からの接着剤Aの流出を防止できる。なお、接着池4aから接着剤Aの流出防止を考えた場合、接着凸部3bを無くし、その組込みに必要な通過溝4bも無くし、流出するスペースを最小化することが考えられる。しかしながら、接着凸部3bが無くなるとその分接着面積が減少し、接着強度が十分確保できないおそれがある。更には、接着凸部3bを別部材とし、例えば1群調整環3にビス固定する構成とすれば、通過溝4bを廃止することができる。なお、この構成でも接着剤Aの流出を防止することができ、接着強度も確保できるが、別部品の追加によるコストアップや組立工数アップするおそれがある。更に、ビス固定をするためのビス下穴を1群調整環3に設ける必要があり、その下穴のためのスペースを確保するために、1群鏡筒2ひいては交換レンズ50の大型化を招くおそれもある。すなわち、実施例1の構成は、小型で、必要最低限の部品で、そして十分な接着力を確保できる最適な構成の一例と言える。
【0055】
また、実施例1の流出防止凸部3cは、1群調整環3と一体的に形成されているが、例えば、流出防止リング39に一体的に形成されていても構わない。なお、流出防止リング39は、1群ベース4の外側から組み込まれるため、流出防止凸部3cを通過溝4bに挿入させるため、少し傾けて組むような組立配慮は必要であるが、構成としては可能である。また、全く別部品の例えば、通過溝4bの形状に合わせて変形可能な材料で構成されたクッション材を通過溝4bに後からはめ込む構成も考えられ、流出防止凸部3cとして接着剤Aの流出を防止する機能を果たせば、その構成、形態を規制するものではない。
【0056】
実施例1に係る構成により、1群調整環3を1群ベース4に組立てる際に、光学調整及び部材の固定を容易にすることができる。また、固定に使われる接着剤Aの流出を防止することができるという優れた効果は有する。
【0057】
(実施例2)
図7は、本発明の実施例2の接着構造を有する保持鏡筒202(保持部材)の部分斜視図である。実施例2では、レンズ201が保持鏡筒202に備えられており、保持鏡筒202とベース部材には、不図示の爪部が複数設けられており、互いを突き当てて矢印Bの方向に回転させることにより爪がかみ合う、いわゆるバヨネット方式で固定される。
【0058】
接着池202aは、保持鏡筒202のフランジ面上において光軸方向に貫通する貫通孔として形成されている。接着凸部204bと流出防止凸部204cは、保持鏡筒202の裏側に配置された不図示のベース部材に形成されている。
【0059】
実施例2では、バヨネット方式が採用されているので、保持鏡筒202はベース部材に対して周方向に回動することによって固定される。このような構成に対しては、接着池202aに接着凸部204bを収納するため、保持鏡筒202に設けられた通過溝202b(第2の穴部)は光軸方向ではなく、光軸を中心とした周方向に形成された溝となっている。そして、接着凸部204bは、光軸を略中心とした周方向へ移動することで通過溝202bを通過する。なお、保持鏡筒202とベース部材が組み合わさった後に、流出防止リング39を組み付けし、接着することが可能であり、実施例1と同様の接着剤Aの流出を防止できる構成となっている。また、詳細は割愛するが、前述の爪がかみ合った状態で、ベース部材に対して保持鏡筒202は偏芯可能に支持されており、偏芯による光学調整を行った後に接着することができる。
【0060】
実施例2に係る構成により、バヨネット方式が採用された保持鏡筒202をベース部材に組立てる際に、光学調整及び部材の固定を容易にすることができる。また、固定に使われる接着剤Aの流出を防止することができるという優れた効果は有する。
【0061】
以上、本発明の好ましい実施例1、2について説明したが、本発明はこれらの実施例1、2に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。また設計機能を考慮した材質であれば、それを限定するものではない。
【符号の説明】
【0062】
3 1群調整環(保持部材)
3b 接着凸部(第1の凸部)
3c 流出防止凸部(第2の凸部)
4 1群ベース(ベース部材)
4a 接着池(第1の穴部)
4b、202b 通過溝(第2の穴部)
50 交換レンズ(光学装置)
202 保持鏡筒(保持部材)
A 接着剤
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7