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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】チャック装置
(51)【国際特許分類】
   B23B 31/02 20060101AFI20240408BHJP
   B23B 31/18 20060101ALI20240408BHJP
   B23B 31/19 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
B23B31/02 610A
B23B31/18
B23B31/19
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019209243
(22)【出願日】2019-11-20
(65)【公開番号】P2021079491
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000137856
【氏名又は名称】シチズンマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002343
【氏名又は名称】弁理士法人 東和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中沢 栄
(72)【発明者】
【氏名】坂井 政夫
【審査官】中田 善邦
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-057508(JP,A)
【文献】特開2004-216501(JP,A)
【文献】実開平05-049207(JP,U)
【文献】特開2018-158397(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106346032(CN,A)
【文献】欧州特許出願公開第1127642(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 31/02
B23B 31/18
B23B 31/19
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械に供給されたワークを保持するワーク保持爪部を設けた複数の杆体と、
該複数の杆体の各々を支持する支持体と、
前記複数の杆体の各々を前記支持体を中心に揺動自在に収容するハウジングと、
前記ハウジングに対して前記複数の杆体を一体に進退移動させる駆動体と、
前記杆体を前記支持体を中心に揺動させる杆体揺動機構と、を備えたチャック装置であって、
前記ハウジングが、前記ワーク保持爪部と対向配置されたワーク当接面を有し、
前記複数の杆体が、前記ワークの保持を解除する場合に、前記ワーク保持爪部を前記ハウジングのワーク当接面から離間させつつ各々の前記ワーク保持爪部がお互いに離れるように一体に揺動し、
前記複数の杆体が、前記ワークを保持する場合に、前記ワーク保持爪部を前記ハウジングのワーク当接面に接近させつつ各々の前記ワーク保持爪部がお互いに近づくように一体に揺動した後、前記駆動体の進退方向と平行に一体に移動して前記ワーク保持爪部を前記ワークに当接させ
前記杆体揺動機構が、ガイド溝と該ガイド溝に係合する突起とを有し、
前記突起と前記ガイド溝とが係合している場合は、前記杆体が前記駆動体の進退方向に対して平行となり、
前記突起と前記ガイド溝との係合が解除されている場合は、前記杆体が前記駆動体の進退方向に対して傾いている、チャック装置。
【請求項2】
前記杆体揺動機構のガイド溝が、前記杆体に形成され、
前記杆体揺動機構の突起が、前記ハウジングに形成されている、請求項に記載のチャック装置。
【請求項3】
前記杆体と前記駆動体との間に、各々の前記杆体のワーク保持爪部が近づく方向に前記杆体を付勢する弾性体が介挿されている、請求項に記載のチャック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械に供給されたワークを保持するチャック装置に関するものであって、特に、複数のワーク保持爪部を備えたチャック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ワークを把持するチャック装置として、チャック本体、チャック本体の一端側に固定されかつワークの一端部を支持するための基準固定爪部、チャック本体の一端側において基準固定爪部に対して開閉動作可能に設けられかつワークの一端部を支持するための可動爪部、可動爪部を開閉させるための駆動手段、およびワークの他端部を支持するためのストッパを備える、ワークチャック装置が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-154876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したワークチャック装置は、ワークの側方を爪部で挟持するため、ワークが板材のとき、ワークに変形や座屈が生じる場合があった。
【0005】
そこで、本発明は、前述したような従来技術の問題を解決するものであって、すなわち、本発明の目的は、工作機械に供給されたワークが板材のときにワークを変形させずに保持するチャック装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、第1に、工作機械に供給されたワークを保持するワーク保持爪部を設けた複数の杆体と、該複数の杆体の各々を支持する支持体と、前記複数の杆体の各々を前記支持体を中心に揺動自在に収容するハウジングと、前記ハウジングに対して前記複数の杆体を一体に進退移動させる駆動体と、前記杆体を前記支持体を中心に揺動させる杆体揺動機構と、を備えたチャック装置であって、前記ハウジングが、前記ワーク保持爪部と対向配置されたワーク当接面を有し、前記複数の杆体が、前記ワークの保持を解除する場合に、前記ワーク保持爪部を前記ハウジングのワーク当接面から離間させつつ各々の前記ワーク保持爪部がお互いに離れるように一体に揺動し、前記複数の杆体が、前記ワークを保持する場合に、前記ワーク保持爪部を前記ハウジングのワーク当接面に接近させつつ各々の前記ワーク保持爪部がお互いに近づくように一体に揺動した後、前記駆動体の進退方向と平行に一体に移動して前記ワーク保持爪部を前記ワークに当接させ、前記杆体揺動機構が、ガイド溝と該ガイド溝に係合する突起とを有し、前記突起と前記ガイド溝とが係合している場合は、前記杆体が前記駆動体の進退方向に対して平行となり、前記突起と前記ガイド溝との係合が解除されている場合は、前記杆体が前記駆動体の進退方向に対して傾いていることを特徴とする。
【0008】
に、前記杆体揺動機構のガイド溝が、前記杆体に形成され、前記杆体揺動機構の突起が、前記ハウジングに形成されていることを特徴とする。
【0009】
に、前記杆体と前記駆動体との間に、各々の前記杆体のワーク保持爪部が近づく方向に前記杆体を付勢する弾性体が介挿されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、以下の効果を得ることができる。
(1)複数の杆体が、ワークの保持を解除する場合に、ワークの保持を解除する場合に、ワーク保持爪部を前記ハウジングのワーク当接面から離間させつつ各々のワーク保持爪部がお互いに離れるように一体に揺動させることにより、ワークを厚み方向である駆動体の進退方向で保持するため、ワークが板材のときにワークを変形させずに保持することができる。
また、突起とガイド溝とが係合している場合は、杆体が駆動体の進退方向に対して平行となり、突起とガイド溝との係合が解除されている場合は、杆体が駆動体の進退方向に対して傾いていることにより、ガイド溝と突起を設けるだけで杆体が揺動自在となるため、簡便な構成で杆体を揺動自在とすることができる。
【0012】
)杆体揺動機構のガイド溝が、杆体に形成され、杆体揺動機構の突起が、ハウジングに形成されていることにより、杆体をハウジングに収容する際に杆体がハウジングと接触しにくくなるため、杆体揺動機構の突起が杆体に形成されている場合に比べて簡便にチャック装置を作製することができる。
【0013】
)杆体と駆動体との間に、各々の杆体のワーク保持爪部が近づく方向に杆体を付勢する弾性体が介挿されていることにより、杆体のワーク保持爪部をワーク当接面に近づけている最中に杆体のワーク保持爪部をお互いに離す方向の力がワーク保持爪部に加わったとしても、弾性体による付勢力が杆体に負荷されているため、杆体のワーク保持爪部をワーク当接面に近づけている最中に複数の杆体が互いに平行である状態を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施例であるチャック装置を組み込んだ工作機械の斜視図。
図2図1に示す工作機械の加工室の平面図。
図3A】本発明の実施例であるチャック装置を示す斜視図。
図3B図3Aに示すチャック装置の内部を示す斜視図。
図4図3AのIV-IV断面図。
図5A】ワーク保持爪部を開いた状態のチャック装置の断面図。
図5B】ワーク保持爪部を閉じてワークを保持した状態のチャック装置の断面図。
図5C】ワーク保持爪部を閉じてワーク保持爪部をワーク当接面に近づけた状態のチャック装置の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、工作機械に供給されたワークを保持するワーク保持爪部を設けた複数の杆体と、この複数の杆体の各々を支持する支持体と、複数の杆体の各々を支持体を中心に揺動自在に収容するハウジングと、ハウジングに対して複数の杆体を一体に進退移動させる駆動体と、杆体を支持体を中心に揺動させる杆体揺動機構と、を備えたチャック装置であって、ハウジングが、ワーク保持爪部と対向配置されたワーク当接面を有し、複数の杆体が、ワークの保持を解除する場合に、ワーク保持爪部をハウジングのワーク当接面から離間させつつ各々のワーク保持爪部がお互いに離れるように一体に揺動し、複数の杆体が、ワークを保持する場合に、ワーク保持爪部をハウジングのワーク当接面に接近させつつ各々のワーク保持爪部がお互いに近づくように一体に揺動した後、駆動体の進退方向と平行に一体に移動してワーク保持爪部を前記ワークに当接させ、杆体揺動機構が、ガイド溝とこのガイド溝に係合する突起とを有し、突起とガイド溝とが係合している場合は、杆体が駆動体の進退方向に対して平行となり、突起とガイド溝との係合が解除されている場合は、杆体が駆動体の進退方向に対して傾き、工作機械に供給されたワークが板材のときにワークを変形させずに保持するものであれば、その具体的な実施態様は、如何なるものであっても構わない。
【実施例
【0016】
以下、図1乃至図5Cに基づいて、本発明の実施例であるチャック装置について説明する。
【0017】
まず、図1および図2に基づいて、本発明の実施例であるチャック装置100を組み込んだ工作機械10の概要について説明する。
図1は本発明の実施例であるチャック装置を組み込んだ工作機械の斜視図であり、図2図1に示す工作機械の加工室の平面図である。
【0018】
工作機械10は、複数の加工モジュールを有しており、図1に示すように、正面にワークの加工を行う加工室11内へのアクセスを確保するためのスライド式のドア12を有している。
加工室11内は、図2に示すように、加工モジュール移動機構13がベッド14上に設けられている。
加工モジュール移動機構13はベッド14上をY方向に移動自在であり、加工モジュール15をZ方向に移動自在に載置している。
加工モジュール15には、不図示の刃物台と工作機械10に供給されたワークを保持するチャック装置100とが取り付けられている。
【0019】
次に、本発明の一実施例であるチャック装置100について、図3A図3B図4に基づき、説明する。
図3Aは本発明の実施例であるチャック装置を示す斜視図であり、図3B図3Aに示すチャック装置の内部を示す斜視図であり、図4図3AのIV-IV断面図である。
【0020】
チャック装置100は、図3Aに示すように円柱状であり、後端側が加工モジュール15に接続されている。
なお、チャック装置100の長軸方向がZ方向に対応し、Z方向およびX方向(鉛直方向)と直交する方向がY方向に対応する。
【0021】
チャック装置100は、図3A図3B図4に示すように、後述する駆動体140を介して加工モジュール15と連結されるハウジング110を備えている。
ハウジング110は、ベース111と、ベース111に取り付けられるハウジング本体112と、後述する杆体120を摺動自在に保持するスリーブ113と、後述する杆体120のガイド溝121aと係合する係合部材114と、ワークを受ける円柱状の受け部材115と、ハウジング本体112に挿入される後述する支持体130の抜け止めとなる円柱状の支持体押さえ116とを有している。
【0022】
ベース111は、円盤状の部材であり、その中心にはZ方向に伸びる貫通孔111aが形成されている。
【0023】
ハウジング本体112は、円柱状の部材であり、不図示のボルトによりベース111に固定されている。
ハウジング本体112の後端側には円柱状でZ方向に伸びる凹部112aが形成されており、この凹部112aとベース111との間で後述する駆動体140を進退自在とする駆動体移動空間Vが形成されている。
また、ハウジング本体112には、Z方向に伸びて凹部112aと連通する3つの貫通孔112bが形成されている。
この貫通孔112bの中心軸は、チャック装置100の中心軸Cとほぼ平行であると共にこの中心軸Cを中心とする単一円周上に設けられている。
そして、貫通孔112bは、Z方向から見て等間隔(本実施例では120度間隔)に形成されている。
また、ハウジング本体112の側周面112cには、後述する支持体130を挿入するための支持体挿入孔112dおよび係合部材114を挿入するための係合部材挿入孔112eが貫通孔112bと同じ数だけ形成されている。
さらに、ハウジング本体112の前面112fには、受け部材115の後端部を収容するための円柱状の受け部材収容凹部112gが形成されている。
【0024】
スリーブ113は、ハウジング本体112の貫通孔112bに挿入され後述する支持体130と係合する円筒状のスリーブ本体113aと、このスリーブ本体113aとハウジング本体112との間の隙間を封止する封止部材113bと、この封止部材113bがスリーブ本体113aから抜けることを防ぐ抜け止めリング113cとを有している。
【0025】
係合部材114は、柱状の部材であり、ハウジング本体112の係合部材挿入孔112eに挿入され、ハウジング本体112に固定されている。
係合部材114の先端(中心軸C側)には、Z方向から見てV字状の突起114aが形成されている。
【0026】
受け部材115は、ワークの厚みによって適宜選択され、受け部材収容凹部112gに挿入されて固定されている。
また、受け部材115の前端にはZ方向と直交する平面状のワーク当接面115aが形成されている。
【0027】
支持体押さえ116は、後述する支持体130を支持体挿入孔112dに挿入した後に支持体挿入孔112dに挿入される部材である。
【0028】
さらにチャック装置100は、図3Bおよび図4に示すように、ハウジング110に収容されハウジング110内を進退自在な3つの杆体120と、ハウジング110に装着される3つの支持体130と、ハウジング110に装着されて3つの杆体120を一体に進退させる駆動体140と、杆体120と駆動体140とを連結して3つの杆体120を一体に揺動させる連結機構150とを備えている。
【0029】
杆体120は、支持体130内を摺動自在である円柱状の杆体本体121と、この杆体本体121の先端と連結されたワークを保持するワーク保持爪部122とを有している。
杆体本体121には、ハウジング本体112の内周面112hと対向する面にZ方向(すなわち、チャック装置100の中心軸Cが伸びる方向)に伸びるガイド溝121aが形成されている。
ワーク保持爪部122は、保持するワークのサイズによって杆体本体121に対して交換自在となっており、ハウジング110から突出している。
このワーク保持爪部122は、杆体本体121に連結されチャック装置100の中心軸Cに向かって伸びる腕部分122aと、この腕部分122aの先端から前方に向かって中心軸Cと略平行に伸びるワーク当接部分122bと、このワーク当接部分122bの先端から中心軸Cに向かって伸びると共にワークを保持する際にハウジング110のワーク当接面115aと対向する爪部分122cとから形成されている。
【0030】
支持体130は、円柱状の部材であり、ハウジング本体112に対して揺動自在となっている。
したがって、ハウジング110は、それぞれの杆体120をそれぞれの支持体130を介して揺動自在に収容していることになる。
また、支持体130は、径方向に貫通孔131が形成されている。
この貫通孔131の直径は、スリーブ本体113aの直径および杆体本体121とほぼ等しくなっている。
したがって、支持体130は、杆体120を緩挿した状態で支持している。
【0031】
駆動体140は、チャック装置100の中心軸Cに沿って進退移動し、ハウジング本体112に挿通されている駆動軸141と、この駆動軸141に挿通された連結部材142と、駆動軸141に挿通されて連結部材142が駆動軸141から脱落することを防ぐ押さえ143とを有している。
駆動軸141は、一端側が加工モジュール15と連結されており、他端側がハウジング本体112に挿通されている。
これにより、駆動軸141は、ハウジング110に対して進退自在となっている。
連結部材142は、三角柱状の部材であり、各辺からは杆体保持部142aが突出している。
杆体保持部142aは、Z方向からみるとU字状であり、杆体本体121を収容している。
杆体保持部142aの杆体本体121と相対する面には、ピン挿入孔142aaが形成されている。
【0032】
連結機構150は、杆体120と駆動体140と挿通される連結ピン151と、この連結ピン151の抜け止めを行う止めネジ152と、杆体120と駆動体140との間に介挿されるバネ(弾性体)153とを有している。
連結ピン151は、駆動体140のピン挿入孔142aaと杆体本体121の後方に形成された貫通孔121bに挿通されている。
止めネジ152は、杆体本体121に形成された貫通孔121bと直交するネジ孔121cに螺着されて連結ピン151と当接している。
バネ153は、杆体120をチャック装置100の中心軸Cから遠ざける方向に付勢している。
【0033】
次に、このように構成された本発明の実施例であるチャック装置100の杆体揺動機構によるワークの保持について、図4図5A乃至図5Cに基づいて説明する。
図5Aはワーク保持爪部を開いた状態のチャック装置の断面図であり、図5Bはワーク保持爪部を閉じてワークを保持した状態のチャック装置の断面図であり、図5Cはワーク保持爪部を閉じてワーク保持爪部をワーク当接面に近づけた状態のチャック装置の断面図である。
【0034】
まず、図4のようなワーク保持爪部122が閉じた状態(杆体120がチャック装置100の中心軸Cとほぼ平行となっている状態)から、駆動体140をZ方向前方に移動させると、連結機構150により駆動体140と接続されている3つの杆体120もZ方向前方に向かって移動する。
係合部材114の突起114aが杆体120のガイド溝121aの後端側に形成された後端斜面121d(図5A参照)を登るとき、係合部材114がハウジング本体112に固定されていることから、杆体120が係合部材114によりチャック装置100の中心軸C側に移動しようとする。
このとき、支持体130がハウジング110(ハウジング本体112)に対して揺動自在であることから、支持体130に緩挿されている杆体120が支持体130を中心に揺動し、杆体120のワーク保持爪部122がチャック装置100の中心軸Cから遠ざかる方向に揺動する。
したがって、突起114aが杆体120の後端斜面121dを登り、突起114aとガイド溝121aとが係合していない場合、杆体120がチャック装置100の中心軸C(駆動体140の進退方向)に対して傾くことになり、図5Aに示すようなワーク保持爪部122が開いた状態(Z方向から見てチャック装置100の中心軸Cと平行なワーク保持爪部122の内端面122caが、受け部材115より広がっている状態)となる。
【0035】
チャック装置100は、この状態になるとワークWを受け取り可能となる。
そして、不図示のワーク搬出装置が、チャック装置100のワーク当接面115aにワークWを当接させる。
【0036】
この状態から、駆動体140をZ方向後方に移動させると、連結機構150により駆動体140と接続されている3つの杆体120もZ方向後方に向かって移動する。
係合部材114の突起114aが杆体120の後端斜面121dを下るとき、係合部材114の突起114aがハウジング本体112に固定されていること、および、バネ153により杆体120がハウジング本体112の外周側に付勢されていることから、杆体120が係合部材114によりチャック装置100の中心軸Cから遠ざかる側に移動しようとする。
このとき、支持体130がハウジング110(ハウジング本体112)に対して揺動自在であることから、支持体130に緩挿されている杆体120が支持体130を中心に揺動し、杆体120のワーク保持爪部122がチャック装置100の中心軸Cから近づく方向に揺動する。
したがって、突起114aが杆体120の後端斜面121dを下り、突起114aとガイド溝121aとが係合している場合、杆体120がチャック装置100の中心軸C(駆動体140の進退方向)に対してほぼ平行となることになり、図5Bに示すようなワーク保持爪部122が閉じた状態となる。
また、バネ153による杆体120の付勢方向は、杆体120のワーク保持爪部122の相互間の距離を狭める方向となっている。
【0037】
この状態から、駆動体140をさらにZ方向後方に移動させると、連結機構150により駆動体140と接続されている3つの杆体120もZ方向後方に向かってさらに移動する。
このとき、係合部材114の突起114aがハウジング本体112に固定されていることから、杆体120がZ方向後方に動くと、係合部材114の突起114aが杆体120のガイド溝121aと係合した状態でガイド溝121a内を摺動する。
これにより、杆体120はチャック装置100の中心軸C(すなわち、駆動体140の進退方向)と平行を保ったままZ方向後方に移動し、ワーク保持爪部122の側端面122cbが、図5Cに示すように、ワークWと当接し、ワークWはワーク保持爪部122の爪部分122cとワーク当接面115aとで保持、すなわち、ワークWの厚み方向で保持される。
なお、杆体120はチャック装置100の中心軸Cと平行を保ったままZ方向後方に移動しているとき、バネ153により杆体120がハウジング本体112の外周側に付勢されていることから、杆体120のワーク保持爪部122の相互間の距離を縮める方向に杆体120が付勢され続けている。
【0038】
したがって、杆体揺動機構は、杆体120のガイド溝121a、ハウジング110の突起114a、支持体130、駆動体140等から構成され、3つの杆体120を一体に揺動させている。
そして、この杆体揺動機構により、複数の杆体120が、ワークWの保持を解除する場合に、ワーク保持爪部122をハウジング110のワーク当接面115aから離間させつつ各々のワーク保持爪部122がお互いに離れるように一体に揺動し、複数の杆体120が、ワークWを保持する場合に、ワーク保持爪部122をハウジング110のワーク当接面115aに接近させつつ各々のワーク保持爪部122がお互いに近づくように一体に揺動した後、駆動体140の進退方向と平行に一体に移動してワーク保持爪部122をワークWに当接させている。
これにより、ワークWが薄い板材であってもワークWを変形させずに保持することができる。
【0039】
また、杆体120と駆動体140とが、杆体120のワーク保持爪部122の相互間の距離を狭める方向に杆体120を付勢するバネ153によって連結されていることにより、杆体120のワーク保持爪部122をワーク当接面115aに近づけている最中に杆体120のワーク保持爪部122の相互間の距離を広げる方向の力がワーク保持爪部122に加わったとしても、バネ153による付勢力が杆体120に負荷されているため、杆体120のワーク保持爪部122をワーク当接面115aに近づけている最中に複数の杆体120が互いに平行である状態を維持することができる。
【0040】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明は、上記の実施例に限定されるものではない。
【0041】
例えば、本実施例では、工作機械10において加工モジュール移動機構13が1つ、加工モジュール15が1つ、チャック装置100が1つ設けられていたが、それぞれの個数はこれに限定されるものではない。
【0042】
例えば、本実施例では、工作機械10においてチャック装置100がX方向に移動自在ではなかったが、チャック装置をX方向に移動自在としてもよい。
【0043】
例えば、本実施例では、チャック装置100の杆体120は3本であったが、杆体の本数は複数あれば、これに限定されるものではない。
なお、支持体の個数についても、杆体と同様である。
【0044】
例えば、本実施例では、杆体揺動機構が、杆体120のガイド溝121aと、ハウジング110の突起114aとから構成されていたが、杆体側に突起、ハウジング側にガイド溝を設けてもよい。
【0045】
例えば、ワークの形状は厚みが幅や高さに比べて十分小さい板材であれば、その平面視における形状は如何なるものであってもよい。
【符号の説明】
【0046】
10 ・・・ 工作機械
11 ・・・ 加工室
12 ・・・ ドア
13 ・・・ 加工モジュール移動機構
14 ・・・ ベッド
15 ・・・ 加工モジュール
100 ・・・ チャック装置
110 ・・・ ハウジング
111 ・・・ ベース
111a ・・・ 貫通孔
112 ・・・ ハウジング本体
112a ・・・ 凹部
112b ・・・ 貫通孔
112c ・・・ 側周面
112d ・・・ 支持体挿入孔
112e ・・・ 係合部材挿入孔
112f ・・・ 前面
112g ・・・ 受け部材収容凹部
112h ・・・ 内周面
113 ・・・ スリーブ
113a ・・・ スリーブ本体
113b ・・・ 封止部座
113c ・・・ 抜け止めリング
114 ・・・ 係合部材
114a ・・・ 突起
115 ・・・ 受け部材
115a ・・・ ワーク当接面
116 ・・・ 支持体押さえ
120 ・・・ 杆体
121 ・・・ 杆体本体
121a ・・・ ガイド溝
121b ・・・ 貫通孔
121c ・・・ ネジ孔
121d ・・・ 後端斜面
122 ・・・ ワーク保持爪部
122a ・・・ 腕部分
122b ・・・ ワーク当接部分
122c ・・・ 爪部分
122ca・・・ 内端面
122cb・・・ 側端面
130 ・・・ 支持体
131 ・・・ 貫通孔
140 ・・・ 駆動体
141 ・・・ 駆動軸
142 ・・・ 連結部材
142a ・・・ 杆体保持部
142aa・・・ ピン挿入孔
143 ・・・ 押さえ
150 ・・・ 連結機構
151 ・・・ 連結ピン
152 ・・・ 止めネジ
153 ・・・ バネ(弾性体)
V ・・・ 駆動体移動空間
C ・・・ 中心軸
W ・・・ ワーク

図1
図2
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図5C