(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 21/00 20060101AFI20240408BHJP
G03G 15/01 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
G03G21/00 370
G03G15/01 Y
(21)【出願番号】P 2019213602
(22)【出願日】2019-11-26
【審査請求日】2022-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099324
【氏名又は名称】鈴木 正剛
(72)【発明者】
【氏名】成田 和行
【審査官】早川 貴之
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-152759(JP,A)
【文献】特開2018-010097(JP,A)
【文献】特開2015-004892(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 13/01-13/02
13/14-13/16
13/34
15/00-15/02
15/14-15/16
15/36
21/00-21/02
21/14
21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光体
、前記感光体の表面を一様に帯電させる帯電手段、帯電された前記感光体の表面をレーザ光により露光することで、前記感光体の表面に静電潜像を形成する露光手段、及び前記静電潜像にトナーを付着させる現像スリーブを含む現像手段を有し、前記感光体に画像を形成する画像形成手段と、
前記画像が転写される中間転写体と、
前記画像を前記感光体から前記中間転写体へ転写する一次転写手段と、
前記画像を前記中間転写体からシートへ転写する二次転写手段と、
第1の駆動源と、
第2の駆動源と、
前記感光体を回転させるため、前記第1の駆動源を回転速度が第1の目標回転速度となるように制御する第1制御手段と、
前記中間転写体を回転させるため、前記第2の駆動源を回転速度が第2の目標回転速度となるように制御する第2制御手段と、
前記感光体と前記中間転写体とが接触した第1状態において前記第1の駆動源の負荷に関する第1情報を取得し、前記感光体と前記中間転写体が離間した第2状態において前記第1の駆動源の負荷に関する第2情報を取得する取得手段と、
前記感光体の表面速度と前記中間転写体の表面速度との速度差が低減するように、前記第1の目標回転速度を前記第1情報と前記第2情報とに基づいて制御する第3制御手段と、を有
し、
前記現像スリーブは、前記静電潜像に前記トナーを付着させる際に回転しており、前記取得手段による前記第1情報の取得時と前記第2情報の取得時には、回転状態が統一されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記現像スリーブは、前記取得手段による前記第1情報の取得時と前記第2情報の取得時には、回転駆動されることを特徴とする、
請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記現像スリーブは、前記取得手段による前記第1情報の取得時と前記第2情報の取得時には、回転が停止されることを特徴とする、
請求項1記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記画像形成手段は複数であり、それぞれ異なる色のトナー像を前記感光体に形成し、
それぞれの前記感光体から前記中間転写体に転写されたトナー像の位置のずれである色ずれを調整する色ずれ調整制御手段をさらに備え、
前記第3制御手段は、前記色ずれ調整制御手段により色ずれが調整されないタイミングで前記第1の目標回転速度を決定し、前記色ずれ調整制御手段により色ずれが調整されるタイミングで該第1の目標回転速度を前記第1制御手段に設定することを特徴とする、
請求項
1記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記第3制御手段は、前記色ずれ調整制御手段により色ずれが調整されないタイミングで、前回の第1の目標回転速度の設定から所定枚数の画像形成が行われたときに、前記第1の目標回転速度を決定することを特徴とする、
請求項
4記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記色ずれ調整制御手段は、前記第1制御手段が設定された前記第1の目標回転速度に基づいて前記第1の駆動源を駆動制御しているときに色ずれを調整し、
前記第1制御手段は、前記色ずれ調整制御手段による色ずれ補正が成功すると該第1の目標回転速度に応じた第1の駆動源の回転速度を本決定し、前記色ずれ調整制御手段による色ずれ補正が失敗すると第1の駆動源の回転速度を元に戻すことを特徴とする、
請求項
4又は5記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記第3制御手段は、次の画像形成時に前記第1の目標回転速度を決定することを特徴とする、
請求項
1記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記第1制御手段は、前記第1の駆動源の回転速度を前記第1の目標回転速度に応じた速度になるように制御する駆動信号を、前記第1の駆動源へ送信し、
前記取得手段は、前記駆動信号に基づいて回転負荷を検出することを特徴とする、
請求項1~
7のいずれか1項記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記第1制御手段は、前記駆動信号としてパルス幅変調信号を出力し、
前記取得手段は、前記駆動信号を所定時間平均化して、デューティー比を回転負荷として検出することを特徴とする、
請求項
8記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記第3制御手段は、前記第1情報と前記第2情報とに基づいて前記第1の目標回転速度を決定することを特徴とする、
請求項1~
9のいずれか1項記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記第1情報と前記第2情報とから算出される負荷の差分値を保存する保存手段をさらに備えており、
前記第3制御手段は、前記保存手段に所定数の前記差分値が保存されている場合に、所定数の前記差分値の平均値に基づいて前記第1の目標回転速度を決定することを特徴とする、
請求項1~
10のいずれか1項記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記保存手段は、前記第1の目標回転速度が本決定されると前記差分値が消去されることを特徴とする、
請求項
11記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、複合機、プリンタ等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置は、例えばドラム形状の感光体である感光ドラムに形成した画像を、中間転写体に一旦転写し、その後、中間転写体からシートに転写することで画像形成を行う。中間転写体は、例えば無端ベルト状の部材である。感光ドラムと中間転写体とは、画像の転写時にいずれも回転している。感光ドラムと中間転写体とは、それぞれの表面速度が最終的にシートに形成される画像に影響を与えるため、一般的に等速回転している。感光ドラム及び中間転写体の回転速度は、以下のような画像劣化の原因となる。
【0003】
例えば、感光ドラム及び中間転写体の回転速度にムラがあると、画像が伸縮する。これは、バンディングと呼ばれる画像濃度の変動ムラとしてシート上に現れる。また、タンデム方式の画像形成装置では、複数の感光ドラムの速度変動が、本来の作像位置及び転写位置からのズレとなり、中間転写体の速度変動が、転写位置のズレとなる。この場合、シートに形成される画像は、各色の画像が本来の転写位置からズレた、いわゆる「色ずれ」が生じた状態となる。色ずれは、100[μm]以上になると目視で確認可能となる。そのために、転写位置のズレの要求精度は、100[μm]未満にする必要がある。
【0004】
感光ドラムや中間転写体を回転駆動する駆動装置は、ブラシレスDCモータを用いたPLL(Phase Locked Loop)制御を採用することが多い。PLL制御では、ブラシレスDCモータの回転位相を示すFG信号を回転速度を表す信号(回転速度信号)として用い、回転速度信号を外部から供給されるクロック信号に同期させる。これにより安定した一定周期のクロック信号とその一周期当たりの回転距離とを同期させることができるために、一定の回転速度が得られる。また、このような駆動装置は、汎用のドライバIC(Integrated Circuit)が普及していることもあり、一般的に用いられる。
【0005】
このような駆動装置により一定速度で回転制御する場合であっても、例えば感光ドラムの直径の公差により、感光ドラムの表面速度が目標速度で一定になるとは限らない。また、中間転写体を駆動する駆動ローラの直径や中間転写体の厚みの公差により、中間転写体の表面速度が目標速度で一定になるとは限らない。
【0006】
感光ドラム及び中間転写体の表面速度の目標速度について説明する。感光ドラムと中間転写体との表面速度を一致させて表面速度差を0にした場合、それぞれの表面が擦れ合うことなく感光ドラムから中間転写体に画像が転写される。そのために画像の細線再現性が高くなる。よって、感光ドラム及び中間転写体の表面速度の目標速度は、感光ドラムと中間転写体との表面速度差ができるだけ小さくなるように設定されることが好ましい。
【0007】
感光ドラム及び中間転写体の表面速度は、表面速度差を0に設定しようとする場合に、感光ドラムや駆動ローラの偏心や真円度等による公差の影響で、周期的に大小関係が入れ替わることがある。また、ギアやカップリングのガタの影響で、駆動装置からの回転力の伝達が不連続になることがある。これらの現象は画像の劣化の原因となる。そのために、表面速度差は、表面速度の大小関係が入れ替わらない程度に設ける方がよい。従来は、表面速度差が、モータの速度目標値で0.2%程度中間転写体を感光ドラムよりも速くするように設定されている。この値は、寸法公差があっても表面速度の大小関係が入れ替わらない最小値である。
【0008】
しかし表面速度差が存在することで感光ドラムと中間転写体との間に摩擦力が生じる。摩擦力は外乱として作用する負荷となる。摩擦力がかかった状態で感光ドラムと中間転写体との間にトナー(画像)が介在すると、瞬間的な負荷変動が生じる。負荷変動により、中間転写体に速度変動が生じると色ずれが発生し、感光ドラムに速度変動が生じるとショックが発生し、いずれも画像不良となる。これらの画像不良は、表面速度差が大きいほど大きくなる。そのために表面速度差を小さくする必要がある。感光ドラム及び中間転写体に表面速度を検出するための等間隔のマーキングを行い、光学センサで該マーキングの通過時間を読み取る方法や、ドップラ速度計を用いることで表面速度が計測可能である。計測した表面速度に応じて表面速度差を小さくする制御を行うことは可能であるが、この方法は大幅なコストアップを招く。
【0009】
特許文献1は、感光ドラムと中間転写体との間にトナーが有る状態と無い状態とでそれぞれの負荷を比較し、負荷の差を縮める方向に目標速度を設定する画像形成装置を開示する。感光ドラムは、現像スリーブによりトナーが付着することで画像が形成される。現像スリーブが駆動されている状態と駆動されていない状態とで、感光ドラムを駆動するモータの回転負荷が測定される。画像形成装置は、現像スリーブが駆動されている状態のモータの回転負荷に、駆動されていない状態のモータの回転負荷を近づけるように感光ドラムのモータの速度を調整する。
【0010】
現像スリーブの駆動により感光ドラム上にトナーが付着する。このトナーは、感光ドラムと中間転写体との間に入ることでコロの役割を果たす。トナーがコロとして摩擦力を緩和する方向に作用するために、感光ドラムと中間転写体との表面速度差が生じていない状態のモータの負荷が擬似的に実現される。現像スリーブが駆動されていない場合、感光ドラムと中間転写体との間には、表面速度差により本来の摩擦力が生じる。回転負荷の差分が0ではない場合に表面速度差が生じるために、回転負荷の差分値を縮める方向に感光ドラムの回転速度の目標速度が変更されることで、表面速度差が小さくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1の画像形成装置は、現像スリーブの表面に存在するトナーが感光体の回転負荷に外乱として影響を与える場合に、現像スリーブの駆動の有無による負荷の変化により正確な回転負荷の差分値を得ることができない可能性がある。これにより回転負荷の差分値を縮める方向に感光体の回転速度を正確に制御できなくなる。そのために、従来の手法だけでは画像の劣化を抑制する方向に感光体の表面速度を補正できなくなる可能性がある。
【0013】
本発明の目的は、感光体と中間転写体の表面速度の関係に起因した画像の劣化を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の画像形成装置は、感光体、前記感光体の表面を一様に帯電させる帯電手段、帯電された前記感光体の表面をレーザ光により露光することで、前記感光体の表面に静電潜像を形成する露光手段、及び前記静電潜像にトナーを付着させる現像スリーブを含む現像手段を有し、前記感光体に画像を形成する画像形成手段と、前記画像が転写される中間転写体と、前記画像を前記感光体から前記中間転写体へ転写する一次転写手段と、前記画像を前記中間転写体からシートへ転写する二次転写手段と、第1の駆動源と、第2の駆動源と、前記感光体を回転させるため、前記第1の駆動源を回転速度が第1の目標回転速度となるように制御する第1制御手段と、前記中間転写体を回転させるため、前記第2の駆動源を回転速度が第2の目標回転速度となるように制御する第2制御手段と、前記感光体と前記中間転写体とが接触した第1状態において前記第1の駆動源の負荷に関する第1情報を取得し、前記感光体と前記中間転写体が離間した第2状態において前記第1の駆動源の負荷に関する第2情報を取得する取得手段と、前記感光体の表面速度と前記中間転写体の表面速度との速度差が低減するように、前記第1の目標回転速度を前記第1情報と前記第2情報とに基づいて制御する第3制御手段と、を有し、前記現像スリーブは、前記静電潜像に前記トナーを付着させる際に回転しており、前記取得手段による前記第1情報の取得時と前記第2情報の取得時には、回転状態が統一されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、感光体と中間転写体の表面速度の関係に起因した画像の劣化を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図4】(a)~(c)は、感光ドラムと中間転写体の当接状態の説明図。
【
図9】感光ドラムの回転速度の制御処理を表すフローチャート。
【
図10】(a)、(b)は、一次転写ローラと感光ドラムとの当接/離間状態を表す図。
【
図11】(a)、(b)は、感光ドラムの駆動トルクの説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状それらの相対配置などは、発明が適用される装置の構成や各種条件によって適宜変更されるべきものであり、この発明の範囲を以下の実施の形態に限定する趣旨のものではない。
【0018】
(画像形成装置)
図1は、本実施形態の画像形成装置の構成図である。本実施形態の画像形成装置1は、電子写真方式を採用したカラー画像形成装置である。画像形成装置1は、多種多様なシートへの適応性やプリント生産性に優れることから、4色の画像形成部1200Y、1200M、1200C、1200Kを中間転写体130の回転方向に並べて配置された中間転写タンデム方式の構成を採用する。
【0019】
本実施形態の画像形成装置1は、プリンタ、スキャナ、及び操作パネル330を備えた構成である。プリンタの上部にスキャナが設けられる。スキャナは、原稿が載置される原稿台ガラス55と、原稿が載置される原稿トレイ152を有するADF(Auto Document Feeder)と、読取センサ233と、を備える。スキャナは、読取センサ233により、原稿台ガラス55に載置された原稿の画像及びADFにより搬送される原稿の画像を読み取ることができる。読取センサ233は、読み取った原稿の画像を表す画像データをプリンタへ送信する。プリンタはスキャナから取得した画像データに基づいてシートに画像を形成することで、複写機能を実現する。
【0020】
操作パネル330はユーザインタフェースであり、入力装置である各種キー、タッチパネル、及び出力装置であるディスプレイを備える。ユーザは、入力装置により指示や設定値の入力を行う。出力装置には、画像形成装置1への入力画面や動作状態を表す画面等が表示される。
【0021】
プリンタは、画像形成部1200Y、1200M、1200C、1200K、中間転写体130、露光器103、二次転写部118、定着器170、給紙カセット111、及びシートの搬送機構を備える。シートの搬送機構には、シートの搬送方向の上流側から順に、給紙ローラ113、分離ローラ114、レジストローラ116、及び排出ローラ139が設けられる。レジストローラ116の下流側には二次転写部118が設けられ、二次転写部118の下流側には定着器170が設けられる。
【0022】
画像形成部1200Yは、イエローの画像形成に用いられる。画像形成部1200Mは、マゼンタの画像形成に用いられる。画像形成部1200Cは、シアンの画像形成に用いられる。画像形成部1200Kは、ブラックの画像形成に用いられる。画像形成部1200Y、1200M、1200C、1200Kは、同様の構成であり、形成する画像の色が異なるのみである。ここでは、画像形成部1200Yの構成を説明し、他の画像形成部1200M、1200C、1200Kの構成の説明を省略する。
【0023】
画像形成部1200Yは、感光ドラム101、帯電器102、現像器104、及びドラムクリーナ107を備える。感光ドラム101は、表面に帯電層を有するドラム形状の感光体であり、画像(トナー像)を担持する像担持体である。感光ドラム101は、ドラム軸を中心にして図中時計回りに回転自在に設けられる。帯電器102は、回転する感光ドラム101の表面を一様に帯電する。露光器103は、画像データに基づいて変調したレーザ光により、帯電した感光ドラム101の表面を走査する。これにより感光ドラム101の表面に静電潜像が形成される。
【0024】
露光器103は、形成する画像の色に応じた4つのレーザ光を出力可能である。露光器103は、色成分毎の画像データに応じて、色毎にレーザ光の変調を行う。そのために、画像形成部1200Y、1200M、1200C、1200Kのそれぞれの感光ドラム101に形成される静電潜像は、各色に応じた像となる。
【0025】
現像器104は、感光ドラム101の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する。現像器104は、非磁性のトナーと低磁化高抵抗のキャリアと含む2成分現像剤を用いて現像を行う。非磁性のトナーは、スチレン系樹脂やポリエステル樹脂等の結着樹脂、カーボンブラックや染料、顔料等の着色剤、ワックス等の離型剤、荷電制御剤等を適当量用いることにより構成される。このようなトナーは、粉砕法や重合法などの常法により製造することができる。キャリアとトナーとが現像器104内で摩擦帯電されることで、トナーは帯電する。帯電したトナーに対して現像バイアスが印加されることで、感光ドラム101の表面との間に電位差が生じ、トナーが感光ドラム101側に付着する。これにより感光ドラム101の表面の静電潜像が現像されて可視化する。本実施形態では、負に帯電するトナーを使用する。
【0026】
感光ドラム101に形成されたトナー像は、中間転写体130に転写される。そのために感光ドラム101の中間転写体130を挟んで対向する位置には、一次転写ローラ105が設けられる。中間転写体130は、駆動ローラ106を含む複数のローラに架け回されており、駆動ローラ106により図中反時計回りに回転するようになっている無端ベルト状の転写体である。中間転写体130の回転速度に応じたタイミングで各画像形成部1200Y、1200M、1200C、1200Kからトナー像が順次重畳して転写される。これにより中間転写体130上にフルカラーのトナー像が形成される。転写後に感光ドラム101に残留するトナーは、ドラムクリーナ107により除去される。
【0027】
中間転写体130に形成されたトナー像は、中間転写体130の回転により二次転写部118へ搬送される。二次転写部118は、駆動ローラ106を含んで構成される。二次転写部118は、中間転写体130上のトナー像を、搬送機構により給送されてきたシートに転写する。中間転写体130の近傍には、ベルトクリーナ108が設けられる。ベルトクリーナ108は、転写後に中間転写体130に残留するトナーを除去する。
【0028】
シートは、給紙カセット111から給紙ローラ113によりピックアップされて、搬送経路へ給紙される。分離ローラ114は、給紙ローラ113により給紙されたシートを1枚ずつ分離して搬送経路へ搬送する。分離ローラ114により搬送されたシートは、停止中のレジストローラ116に搬送方向の先端が突き当てられる。シートは、先端が突き当てられた後に所定量搬送されることで、ループを形成して搬送方向に対する斜行が補正される。レジストローラ116は、中間転写体130に形成されたトナー像が二次転写部118へ搬送されるタイミングに応じてシートを二次転写部118へ搬送する。これによりシートの所定の位置にトナー像が転写される。
【0029】
トナー像が転写されたシートは、二次転写部118から定着器170へ搬送される。定着器170は、シートにトナー像を定着する。定着器170は、例えばトナー像が転写されたシートを加熱及び加圧することで、トナー像をシートに定着させる。トナー像が定着されたシートは、定着器170から排出ローラ139を介して排出トレイ141へ排出される。
【0030】
中間転写体130の回転方向で画像形成部1200Kの下流側には、画像検出センサ1004が設けられる。画像検出センサ1004は、中間転写体130に形成される色ずれや画像濃度を検出するための検出用画像を検出する。
【0031】
(現像及び転写処理)
図2は、画像形成部1200Kの動作説明図である。他の画像形成部1200Y、1200M、1200Cも同様に動作する。
図3は、現像処理時の電位の説明図である。
【0032】
感光ドラム101は、帯電器102により表面が負の帯電電位Vdに帯電される。感光ドラム101の静電潜像が形成された部分の電位(露光部電位)VLは、帯電電位Vdから0[V]側に除電される。帯電電位Vdは例えば-700[V]、露光部電位VLは例えば-200[V]である。
【0033】
現像器104は、負極性に摩擦帯電されたトナーを含む現像剤を、現像スリーブ109によって感光ドラム101の近傍に搬送する。現像スリーブ109に現像時に印加される現像バイアス電位Vdcは、帯電電位Vdと露光部電位VLとの間の電位であり、例えば-550[V]である。現像スリーブ109上の負に帯電したトナーは、負の現像バイアス電位Vdcによって、感光ドラム101の表面の帯電電位Vdや現像バイアス電位Vdcよりも相対的に正電位に近い露光部電位VLの部分に飛翔する。これにより現像バイアス電位Vdcと露光部電位VLとの差分である現像潜像電位Vcontに応じた量のトナーが、感光ドラム101上に付着することになる。トナーが感光ドラム101に付着する量に応じてトナー像の濃度が決定する。そのために、現像潜像電位Vcontを調整することで、画像濃度を調整することができる。
【0034】
感光ドラム101に飛翔した負極性のトナーは、一次転写ローラ105と中間転写体130との圧力及び電界によって、中間転写体130に転写される。この際、一次転写ローラ105にはトナーと逆極性の一次転写バイアス電位Vtr1が印加される。例えば一次転写バイアス電位Vtr1は+1500[V]である。このとき、一次転写ローラ105には、金属ローラが使用される。これは、従来のスポンジローラよりも安価であるためである。
【0035】
感光ドラム101は、感光ドラム駆動制御部134により回転駆動される。感光ドラム101にかかる負荷は、駆動負荷検出部135により検出される。現像スリーブ109は、現像スリーブ駆動制御部132により回転駆動される。中間転写体130は、駆動ローラ106が中間転写体駆動制御部131により回転駆動されることで回転する。一次転写ローラ105は、転写状態切替部133により感光ドラム101へ当接する方向と離間する方向とに移動可能である。中間転写体駆動制御部131、感光ドラム駆動制御部134、現像スリーブ駆動制御部132、及び転写状態切替部133の動作は、コントローラ1001により制御される。コントローラ1001の構成については後述する。
【0036】
(画像形成シーケンス)
画像形成装置1は、画像形成時に、大きく分けて前回転動作、作像動作、紙間動作、後回転動作の画像形成シーケンスを行う。前回転動作は、画像形成を行うために各部の駆動状態やバイアス電圧の状態を安定させるために行われる動作である。作像動作は、感光ドラム101に形成された静電潜像をトナーにより現像する動作である。紙間動作は、画像が形成されるシート間の動作であり、作像を行わない。後回転動作は、画像形成を行うための各部の駆動状態やバイアス電圧を停止するために行われる動作である。
【0037】
図4は、感光ドラム101と中間転写体130の当接状態の説明図である。ここでは、色を区別して説明する場合に、各画像形成部1200Y、1200M、1200C、1200Kの感光ドラムを、感光ドラム101Y、101M、101C、101Kと記載する。また、一次転写ローラについても、色を区別して説明する場合に、一次転写ローラ105Y、105M、105C、105Kと記載する。色を区別せずに説明する場合には、感光ドラム101、一次転写ローラ105と記載する。
【0038】
前回転動作では、画像形成に必要な感光ドラム101と中間転写体130とを当接させる。
図4(a)は、ブラックに対応する感光ドラム101Kと中間転写体130とが当接し、他の感光ドラム101Y、101M、101Cと中間転写体130とが離間した状態を示す。
【0039】
モノクロモードで画像形成を行う場合、
図4(a)の状態で画像形成が行われる。フルカラーモードで画像形成を行う場合、
図4(a)の状態から、転写状態切替部133により一次転写ローラ105Y、105M、105Cが感光ドラム101Y、101M、101C方向に移動する。これにより、
図4(b)に示すように、感光ドラム101Kと中間転写体130とが当接する。このようにモノクロモードとフルカラーモードとで有彩色用の感光ドラム101Y、101M、101Cと中間転写体130との接触状態が切り替えられる。これにより感光ドラム101Y、101M、101Cの表面の耐久状態の進行を抑制することができる。
【0040】
次いで感光ドラム101及び中間転写体130は回転駆動される。感光ドラム101及び中間転写体130は慣性力が大きいために、回転駆動の開始から目標速度に到達して安定して一定速度で回転するまでに時間を要する。感光ドラム101及び中間転写体130の駆動方式については後述する。感光ドラム101及び中間転写体130が一定速度で回転するようになると、帯電器102に帯電バイアスが印加される。一次転写ローラ105への一次転写バイアスの印加は、感光ドラム101表面の帯電された領域が一次転写ローラ105に対向する位置を通過した後のタイミングで行われる。現像スリーブ109の回転駆動及び現像バイアスの印加は、感光ドラム101に形成された静電潜像が現像スリーブ109に対向する位置に搬送される前に所定の回転速度及び現像バイアス電位になるように行われる。ただし、現像剤の劣化を防止するために、現像スリーブ109の回転駆動及び現像バイアスの印加は、極力遅いタイミングで行われる。
【0041】
作像動作では、表面が帯電された感光ドラム101に対して、後述する色ずれ調整モードにより決定された走査の開始タイミングで露光器103からレーザ光が照射される。レーザ光の照射により感光ドラム101に形成された静電潜像は、現像器104により現像される。現像により感光ドラム101に形成されたトナー像は、一次転写ローラ105により中間転写体130に転写される。このように作像動作では、トナー像の作像から中間転写体130への転写までの処理が行われる。
【0042】
紙間動作では、露光器103によるレーザ光の露光が停止するが、他の部品は作像動作時の状態を維持する。
後回転動作では、露光器103によるレーザ光の露光、現像スリーブ109の回転駆動、現像バイアスの印加、一次転写バイアスの印加、帯電バイアスの印加の順に動作が停止する。その後、感光ドラム101及び中間転写体130の回転駆動が停止する。その後、転写状態切替部133により一次転写ローラ105Y、105M、105Cが感光ドラム101Y、101M、101Cから離間する方向に移動する。これにより、
図4(a)に示すように、感光ドラム101Y、101M、101Cと中間転写体130とが離間する。
また、後述する感光ドラム101の速度制御に用いるトルク取得時や、長期間本体を使用しない場合、感光ドラム101や中間転写体130のそれぞれの交換時等には、
図4(c)に示すように、すべての感光ドラム101と中間転写体130とを離間する。
【0043】
(色ずれ調整)
色ずれ調整時には、中間転写体130上に色ずれ調整用のトナー像である検出用画像が形成される。画像検出センサ1004は、中間転写体130に形成された検出用画像を読み取る。読取結果に基づいて色ずれ量が検出される。色ずれ量に基づいて露光器103による感光ドラム101の走査(露光)の開始タイミング(画像の書込開始位置)が調整される。色ずれ調整モードでは、このような色ずれ調整が行われる。色ずれ調整モードは、操作パネル330によるユーザからの指示、画像形成装置1の始動時、或いは所定の印刷枚数毎等の予め設定された所定のタイミングで行われる。色ずれ調整モードにより、画像形成装置1の製造ばらつきや機内温度の変化により生じる画像形成位置のズレや経時変化が補正される。
【0044】
図5は、色ずれ調整モードで中間転写体130に形成される検出用画像の説明図である。各色の検出用画像702Y、702M、702C、702Kは、これら4つの画像を一組として、中間転写体130上に複数連続して形成される。各検出用画像702Y、702M、702C、702Kの位置は、画像検出センサ1004により読み取られて検出される。図中、二点破線は、画像検出センサ1004の読取位置を示す。画像検出センサ1004は、例えば光学センサである。
【0045】
各色の検出用画像702Y、702M、702C、702Kが画像検出センサ1004の読取位置を通過する時間により、各色の検出用画像702Y、702M、702C、702Kの相対的な位置関係が検出される。検出用画像702Y、702M、702C、702Kは、L字型であり、一つの画像が画像検出センサ1004の読取位置を二回通過することになる。
【0046】
検出用画像702Y、702M、702C、702Kが画像検出センサ1004の読取位置を通過すると、一つの画像が二回検出される時間間隔が検出される。この時間間隔により、中間転写体130の回転方向に直交する方向の色ずれ量が検出される。例えば、検出用画像702Yの時間間隔はLysであり、検出用画像702Mの時間間隔はLmsである。検出用画像702Mが中間転写体130の回転方向に直交する方向にずれることで、時間間隔Lmsが時間間隔Lysよりも短時間になる。このように各検出用画像702Y、702M、702C、702Kが読取位置を通過する時間間隔の大小関係により、中間転写体130の回転方向に直交する方向の色ずれ量が検出される。
【0047】
また、各検出用画像702Y、702M、702C、702Kの位置により中間転写体130の回転方向の色ずれ量が検出される。検出用画像702Y、702M、702C、702Kの位置は、二回検出される時間の平均値で表される。例えば 検出用画像702Yと検出用画像702Mとが検出された時間間隔Lymとなる。この時間間隔Lymと、検出用画像702Yと検出用画像702Mとに色ずれが生じていないときの時間間隔と、の差分が検出用画像702Yと検出用画像702Mとの中間転写体130の回転方向の色ずれ量となる。
【0048】
このように各検出用画像702Y、702M、702C、702Kの相対的な位置関係から色ずれ量が算出される。色ずれ量は、複数の検出用画像702Y、702M、702C、702Kの組から複数回算出される。色ずれ調整には、複数回算出された色ずれ量の平均値が用いられる。これは、複数回の算出結果を平均化することで、各組の検出用画像702Y、702M、702C、702Kの形成位置に様々な外乱により生じる微小のバラツキを吸収するためである。
【0049】
つまり、検出用画像702Y、702M、702C、702Kの形成、読み取り、及び色ずれ量の算出の一連の処理は、所定数の検出用画像702Y、702M、702C、702Kの読み取りが終了するまで繰り返し行われる。一連の処理が終了すると、色ずれ量の平均値が算出される。算出された平均値により、露光器103がレーザ光により感光ドラム101を露光開始するタイミングが決定される。
【0050】
(感光ドラムの回転速度制御)
図6は、感光ドラム101を駆動制御するドラム駆動部の説明図である。感光ドラム101のドラム軸は、駆動モータ32から出力される駆動力がモータギア31及びドラム駆動ギア33を介して伝達されて回転駆動される。駆動モータ32は感光ドラム駆動制御部134により駆動制御される。感光ドラム駆動制御部134は、駆動速度設定部1002により駆動モータ32の回転速度の速度目標値(目標回転速度)が設定される。目標回転速度により感光ドラム101の回転速度が決定される。
【0051】
本実施形態の駆動モータ32は、DCブラシレスモータであり、FG信号を感光ドラム駆動制御部134へ出力する。感光ドラム駆動制御部134は、駆動モータ32から取得するFG信号が表す駆動モータ32の回転速度と、目標回転速度とを比較し、駆動モータ32の回転速度が目標回転速度に応じた速度になるような駆動信号を生成して駆動モータ32へ送信する。これにより駆動モータ32はフィードバック制御される。駆動信号は、例えばパルス幅変調信号(PWM:Pulse Width Modulation信号)である。駆動信号のデューティー(duty)比に応じて駆動モータ32の回転速度が制御される。駆動信号は、駆動負荷検出部135へも入力される。駆動負荷検出部135は、駆動信号を所定時間平均化して、デューティー比を回転負荷として検出する。駆動速度設定部1002は、駆動負荷検出部135で検出された回転負荷に応じて目標回転速度を設定する。
【0052】
(コントローラ)
図7は、画像形成装置1の動作を制御するコントローラ1001の説明図である。コントローラ1001は、画像形成装置1に内蔵される。コントローラ1001は、CPU(Central Processing Unit)1000を備える。CPU1000は、所定のコンピュータプログラムを実行することで画像形成装置1全体の動作を制御する。コントローラ1001は、色ずれ調整制御部1003、駆動速度設定部1002、中間転写体制御部1005、現像制御部1006、作像制御部1100Y、1100M、1100C、1100K、及び駆動負荷検出部135CL、135Kを備える。CPU1000を除くコントローラ1001の構成要素は、ハードウェアにより実現されてもよいが、CPU1000がコンピュータプログラムを実行することでソフトウェアにより実現されてもよい。色ずれ調整制御部1003、駆動速度設定部1002、中間転写体制御部1005、及び現像制御部1006は、CPU1000の指示に応じて動作する。また、CPU1000は、転写状態切替部133の動作を制御する。
【0053】
色ずれ調整制御部1003は、作像制御部1100Y、1100M、1100C、1100K、駆動速度設定部1002、及び画像検出センサ1004が接続される。色ずれ調整制御部1003は、画像検出センサ1004による検出用画像の読取結果を取得し、この読取結果に基づいて色ずれ量を算出する。作像制御部1100Y、1100M、1100C、1100Kは、それぞれ対応する画像形成部1200Y、1200M、1200C、1200Kの動作を制御する。色ずれ調整制御部1003は、作像制御部1100Y、1100M、1100C、1100Kに色ずれ量を通知する。作像制御部1100Y、1100M、1100C、1100Kは、通知された色ずれ量に基づいて色ずれ調整を行う。具体的には作像制御部1100Y、1100M、1100C、1100Kは、色ずれ量に基づいて露光開始のタイミングを決定し、対応する画像形成部1200の露光器103の露光制御を行う。
【0054】
駆動速度設定部1002は、感光ドラム駆動制御部134CL、134K及び駆動負荷検出部135CL、135Kに接続される。これらの構成は、上記の「感光ドラムの回転速度制御」を行う。感光ドラム駆動制御部134CLは、有彩色の感光ドラム101Y、101M、101Cを駆動する駆動モータ32CLの駆動制御を行う。駆動モータ32CLは、各感光ドラム101Y、101M、101Cずつ設けられる。感光ドラム駆動制御部134CLは、各感光ドラム101Y、101M、101Cに1つずつ対応して設けられる。感光ドラム駆動制御部134Kは、ブラックの感光ドラム101Kを駆動する駆動モータ32Kの駆動制御を行う。
【0055】
駆動負荷検出部135CLは、感光ドラム駆動制御部134CLの駆動負荷を検出して検出結果を駆動速度設定部1002に通知する。駆動負荷検出部135CLは、感光ドラム駆動制御部134CLに対応して1つずつ設けられる。駆動負荷検出部135Kは、感光ドラム駆動制御部134Kの駆動負荷を検出して検出結果を駆動速度設定部1002に通知する。駆動速度設定部1002は、目標回転速度を感光ドラム駆動制御部134CL及び感光ドラム駆動制御部134Kのそれぞれに設定する。感光ドラム駆動制御部134CLと感光ドラム駆動制御部134Kとには、それぞれの状態に応じて目標回転速度が設定される。感光ドラム駆動制御部134CLには、感光ドラム101Y、101M、101C、101Kのそれぞれに対応する目標回転速度が設定される。
【0056】
中間転写体制御部1005は、中間転写体駆動制御部131に接続される。中間転写体駆動制御部131は、中間転写体駆動モータ1310に接続される。中間転写体駆動モータ1310は、駆動ローラ106を回転駆動する駆動源である。中間転写体制御部1005は、中間転写体駆動制御部131により中間転写体駆動モータ1310を駆動制御する。中間転写体制御部1005は、中間転写体駆動制御部131に中間転写体駆動モータ1310の目標回転速度を指示する。中間転写体駆動制御部131は、中間転写体駆動モータ1310の回転速度が中間転写体駆動モータ1310の目標回転速度となるように、中間転写体駆動モータ1310を制御する。
【0057】
現像制御部1006は、現像スリーブ駆動制御部132に接続される。現像スリーブ駆動制御部132は、現像器駆動モータ1320に接続される。現像器駆動モータ1320は、現像スリーブ109を回転駆動する駆動源である。現像制御部1006は、現像スリーブ駆動制御部132に現像スリーブ109の回転を指示する。現像スリーブ駆動制御部132は、この指示に応じて現像器駆動モータ1320を制御して、現像スリーブ109を回転させる。
【0058】
(駆動制御)
このような構成のコントローラ1001による感光ドラム101の回転速度制御について説明する。
【0059】
中間転写体130は、中間転写体駆動モータ1310により駆動され、画像形成を行った枚数に応じて、表面の摩擦係数μbが上昇するという特性を有する。感光ドラム101及び中間転写体130の回転速度は、初期設定として、感光ドラム101の表面速度が中間転写体130の表面速度よりも若干遅くなるように設定されている。
【0060】
このような設定で画像形成処理を行うと、一次転写ローラ105の表面速度差による摩擦力や、各種のバイアス電圧による感光ドラム101と中間転写体130との電気的な吸着力により、中間転写体130に感光ドラム101が連れ回される。これにより感光ドラム101の駆動モータ32にかかる回転負荷が下降する。この摩擦力と電気的な吸着力を総じて「接線力」という。
図8は、中間転写体130の耐久による感光ドラム101の駆動モータ32にかかる回転負荷を表すグラフである。このグラフは、接線力により感光ドラム101の駆動モータ32にかかる回転負荷が下降することを表している。
【0061】
接線力は、表面速度差が大きいほど大きくなり、所定の表面速度差以上になるとそれ以上は大きくならないという性質を有する。接線力が大きい状態で感光ドラム101と中間転写体130との間にトナーが介入すると、トナーがコロの役割を果たす。これにより接線力が一気に緩和されるために、色ずれやショックといった画像不良が発生する。本実施形態では、感光ドラム101の回転速度を制御することで表面速度を変更して、2つの表面速度差を低減し且つ接線力の上昇を抑制するとともに、接線力の瞬間的な緩和による画像不良の発生を防止する。
【0062】
図9は、感光ドラム101の回転速度の制御処理を表すフローチャートである。感光ドラム101の回転速度を制御することで感光ドラム101の表面速度が調整される。
【0063】
画像形成装置1が起動すると、CPU1000は、感光ドラム101や中間転写体130の駆動ローラ106を含むユニットが交換されたか否かを判断する(S301)。ユニットが交換されていない場合(S301:N)、CPU1000は、操作パネル330により印刷ジョブが入力されたか否かを判断する(S303)。印刷ジョブが入力された場合(S303:Y)、CPU1000は、印刷ジョブに応じた画像形成処理を開始する(S304)。CPU1000は、画像形成処理の実行中に色ずれ調整を行うタイミングであるか否かを確認する(S305:N、S306:N)。
【0064】
色ずれ調整を行うタイミングが確認できずに画像形成処理が終了すると(S306:Y)、CPU1000は、前回の目標回転速度の設定から所定枚数(例えば500枚)の画像形成を行ったか否かを判断する(S307)。所定枚数の画像形成を行っていない場合(S307:N)、CPU1000は、通常の動作で画像形成処理を終了してS301の処理に戻る。
【0065】
所定枚数以上の画像形成を行った場合(S307:Y)、CPU1000は、感光ドラム101と中間転写体130(一次転写ローラ105)とが接触した状態の感光ドラム101の駆動トルクTaを、駆動負荷検出部135により検出する(S308)。その後、CPU1000は、中間転写体制御部1005により転写状態切替部133を動作させて、一次転写ローラ105を感光ドラム101から離間させる(S309)。CPU1000は、感光ドラム101と中間転写体130(一次転写ローラ105)とが離間した状態の感光ドラム101の駆動トルクTbを、駆動負荷検出部135により検出する(S310)。つまりCPU1000は、感光ドラム101と中間転写体130とが当接した状態の回転負荷として駆動トルクTaを検出し、感光ドラム101と中間転写体130とが離間した状態の回転負荷として駆動トルクTbを検出する。駆動トルクTa、Tbは、負荷に関する情報であり、例えば、駆動モータ32に入力される駆動信号のデューティー比に相当する。
【0066】
図10は、一次転写ローラ105と感光ドラム101との当接/離間状態を表す図である。
図10(a)は、当接状態を表す。
図10(b)は離間状態を表す。
【0067】
図10(a)のように一次転写ローラ105が感光ドラム101に当接している場合、感光ドラム101と中間転写体130との表面速度に差があれば、感光ドラム101と中間転写体130との接触面に摩擦力が生じる。この摩擦力は、感光ドラム101を駆動する駆動モータ32の回転負荷に影響を及ぼす。また、表面速度に差がない場合、感光ドラム101と中間転写体130との接触面に摩擦力が生じない。この場合、駆動モータ32の回転負荷に中間転写体130からの影響は及ばない。
【0068】
画像不良の生じにくい理想の状態は、感光ドラム101と中間転写体130との接触面に表面速度差がなく、中間転写体130が感光ドラム101の回転負荷に影響を与えない状態である。この状態を疑似的に作り出すために、
図10(b)のように一次転写ローラ105を感光ドラム101から離間させ、中間転写体130から感光ドラム101へ影響が及ばないようにする。この状態での回転負荷を検出することで、理想状態時の感光ドラム101の回転負荷を検出することができる。
【0069】
このとき、現像スリーブ109表面の現像剤は、キャリアがトナーを保持しながら磁気により立ち上がり、感光ドラム101の表面に触れている状態である。現像スリーブ109は、現像スリーブ109の表面速度が感光ドラム101の表面速度より速いため、回転することで感光ドラム101の回転負荷を軽減する方向に影響する。また、現像スリーブ109は、回転しない場合に、感光ドラム101の回転負荷に増加する方向に影響する。そのために現像スリーブ109の回転状態を駆動トルクTaの検出時と駆動トルクTbの検出時とで統一しておくことで、外乱による影響が除外される。
【0070】
図11は、中間転写体130の耐久による感光ドラム101の駆動トルク(回転負荷)の説明図である。
図11(a)は、中間転写体130が初期状態の場合に感光ドラム101の表面速度を変化させたときの駆動トルクTa、Tbの変化を示す。
図11(b)は、中間転写体130の表面の耐久が進んだ場合に感光ドラム101の表面速度を変化させたときの駆動トルクTa、Tbの変化を示す。
【0071】
中間転写体130が初期状態のときと比較して、耐久後の駆動トルクTaは大きく変動する。理想状態である駆動トルクTbの曲線と駆動トルクTaの曲線とが交差する0.1%近辺が、実際に感光ドラム101と中間転写体130との表面速度差が0になる速度と考えられる。
【0072】
また、駆動トルクTbに対して駆動トルクTaが小さい場合、中間転写体130と感光ドラム101とが当接して回転することで摩擦力が生じ、感光ドラム101が中間転写体130に引っ張られることで回転負荷が軽減されたと考えられる。そのために、表面速度差を0にするためには、感光ドラム101の回転速度を大きくする必要がある。逆に、駆動トルクTbに対して駆動トルクTaが大きい場合、感光ドラム101が中間転写体130を引っ張る形となるため、感光ドラム101の速度を小さくする必要がある。
【0073】
CPU1000は、
図9のフローチャートに示す通り、理想状態の駆動トルクTbと駆動トルクTaの差分値を所定のメモリに保存(バックアップ)して、印刷ジョブに応じた画像形成処理を終了する(S311)。CPU1000は、差分値がメモリに所定数保存されているか否かを判断する(S312)。所定数保存されていない場合(S312:N)、CPU1000は、S301の処理に戻る。所定数保存されている場合(S312:Y)、CPU1000は、所定数の差分値に基づいて、駆動速度設定部1002により表面速度差が小さくなるように目標回転速度を決定する(S313)。駆動速度設定部1002は、例えば所定数の差分値の平均値に基づいて目標回転速度を決定する。CPU1000は、目標回転速度の決定後にS301の処理に戻る。
【0074】
S301の処理においてユニットが交換された場合(S301:Y)、CPU1000は、メモリにバックアップした差分値を消去して、駆動トルクの測定をやり直す(S302)。これは、感光ドラム101や中間転写体130の駆動ローラ106を含むユニットの交換により部品公差が変化し、表面速度の関係も変化するためである。
【0075】
感光ドラム101の駆動モータ32の目標回転速度を変更する場合、そのまま画像を形成すると、作像動作によるトナー像の作像から中間転写体130への転写までの時間が変化するために、画像の先端位置が変化する。また、各色の感光ドラム101を駆動する駆動モータ32の目標回転速度がそれぞれ変化した場合、各色で画像先端位置が変化するために、色ずれが発生する。
そのために、印刷ジョブが入力されずに色ずれ調整が操作パネル330により指示された場合(S303:N、S314:Y)、或いは色ずれ調整を行うタイミングである場合(S305:Y)、CPU1000は色ずれ調整モードで動作を開始する。CPU1000は、S313の処理で新たな目標回転速度が決定されている場合(S315:Y)、駆動速度設定部1002により、感光ドラム駆動制御部134にS313の処理で決定した目標回転速度を設定する。感光ドラム駆動制御部134は、設定された目標回転速度に応じた回転速度で駆動モータ32の駆動する(S317)。その後、CPU1000は、色ずれ調整制御部1003により色ずれを調整する(S318)。S313の処理で新たな目標回転速度が決定されていない場合(S315:N)、CPU1000は、回転速度を変更せずに、色ずれ調整制御部1003により色ずれを調整してS301の処理に戻る(S316)。
【0076】
色ずれ調整が成功した場合(S319:Y)、CPU1000は、メモリにバックアップした差分値を消去する(S321)。CPU1000は、S313の処理で決定した目標回転速度に応じた駆動モータ32の回転速度を本決定する。色ずれ調整が失敗した場合(S319:N)、CPU1000は、回転速度の設定を元の回転速度に戻してS301の処理に戻る(S320)。
【0077】
メモリにバックアップした差分値を消去したCPU1000は、色ずれ調整を操作パネル330からの指示に応じて行ったか否かを判断する(S322)。操作パネル330からの指示である場合(S322:Y)、CPU1000は、感光ドラム101の回転速度の制御処理を終了する。操作パネル330からの指示ではない場合(S322:N)、CPU1000は、残動作を完了させて感光ドラム101の回転速度の制御処理を終了する(S323)。
以上のように感光ドラム101の回転速度の制御処理を行うことで、感光ドラム101の回転速度を変更しても色ずれの発生を防止することができる。
【0078】
以上のように本実施形態の画像形成装置1は、感光ドラム101の表面速度を中間転写体130の表面速度と一致させるように、駆動モータ32の目標回転速度を変更する。コントローラ1001は、トナーの有無による回転負荷の差に外乱が生じて表面速度の逆転が起こった場合であっても、中間転写体130と感光ドラム101との表面速度差の有無を正しく検出して、感光ドラム101の回転速度を調整する。これにより、表面速度差を好適に保つことができ、色ずれやバンディングを防止して高品質な画像を維持することができる。なお、本実施形態においては1つの感光ドラム101を回転させる駆動モータ32の回転負荷を検出して駆動モータ32の目標回転速度の変更を行っている。複数の感光ドラム101を駆動させる駆動モータ32の目標回転速度の変更を行う場合であっても、同様に本実施形態が適用可能である。
【0079】
また、本実施形態の画像形成装置1は、感光ドラム101の駆動モータ32の回転負荷を検出する構成に限定されない。例えば、画像形成装置1は、駆動モータ32の回転負荷の代わりに中間転写体130の駆動ローラ106を駆動する中間転写体駆動モータ1310の回転負荷を検出する構成であってもよい。また、本実施形態の画像形成装置1は、感光ドラム101の目標回転速度を制御する構成に限定されない。例えば、画像形成装置1は、当接状態における駆動モータ32の回転負荷と、離間状態における駆動モータ32の回転負荷と、に基づいて、中間転写体130の駆動ローラ106を駆動する中間転写体駆動モータ1310の目標回転速度を制御する構成であってもよい。また、中間転写体130の駆動ローラ106を駆動する中間転写体駆動モータ1310の回転負荷を当接状態と離間状態とで取得し、これら異なる状態における回転負荷に基づいて、中間転写体駆動モータ1310の目標回転速度が制御される構成であってもよい。
【0080】
なお、現在、部品の共通化の観点から、カラー中間転写タンデム型の画像形成装置から、カラー部分を抜き取ることでモノクロ化するモノクロ画像形成装置が多く開発されている。モノクロ画像形成装置では、感光ドラム101が1つであり1色の画像しか形成されないために、色ずれが起こりえない。上記のような中間転写体130を有するモノクロ画像形成装置は、本実施形態の感光ドラム101と中間転写体130との表面速度の変更制御を適用すると、色ずれが起こらないため、速度を変化させるタイミングに限定がない。そこで、目標回転速度を決定した次の画像形成時の最初において、回転速度を変更して感光ドラム101を回転させる。このとき、変更した速度の比率分だけ画像先端位置が前の出力紙と比較してずれるため、画像の書込開始位置を変更することで、画像先端位置が補正される。