(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】撮像装置及びその制御方法並びにプログラム
(51)【国際特許分類】
H04N 23/71 20230101AFI20240408BHJP
【FI】
H04N23/71
(21)【出願番号】P 2019218080
(22)【出願日】2019-12-02
【審査請求日】2022-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125254
【氏名又は名称】別役 重尚
(72)【発明者】
【氏名】久 健造
【審査官】越河 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-201979(JP,A)
【文献】特開平10-276363(JP,A)
【文献】特開2019-004416(JP,A)
【文献】特開2014-236429(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 23/71
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像手段と、
前記撮像手段により撮像される被写体の明るさを検出する検出手段と、
予め設定された適正の明るさに対する前記検出された被写体の明るさの差分を算出する第1の算出手段と、
露出制御の目標となる明るさである目標値を算出する第2の算出手段と、
前記目標値に応じて露出パラメータを変更する露出変更手段と、
被写体の明るさの変化に応じて前記露出変更手段により前記露出パラメータを変更しない範囲として、前記適正の明るさを基準とした第1の範囲を設定する設定手段と、を備え、
前記露出変更手段は、前記差分が前記第1の範囲以内である場合、前記露出パラメータを変更せず、
前記第2の算出手段は、前記差分が前記第1の範囲を超えている場合は、前記第1の範囲の端に位置する値のうち、前記検出された被写体の明るさに近い値を前記目標値として算出することを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記第1の算出手段は、前記予め設定された適正の明るさに対する前記検出された被写体の明るさの差分を相対的な値として算出し、
前記第2の算出手段は、前記差分が示す値が0以下である場合は、前記被写体の明るさに前記差分を加算した値に対して、さらに、前記第1の範囲の上限値を加算した値を前記目標値として算出し、前記差分が示す値が0よりも大きい場合は、前記被写体の明るさに前記差分を加算した値に対して、さらに、前記第1の範囲の下限値を加算した値を前記目標値として算出することを特徴とする請求項1記載の撮像装置。
【請求項3】
前記設定手段は、前記適正の明るさを基準とした、前記第1の範囲よりも広い第2の範囲を設定でき、
前記露出変更手段は、前記第2の範囲を超えて前記被写体の明るさが変化した場合に、前記露出パラメータを変更することを特徴とする請求項1又は2記載の撮像装置。
【請求項4】
複数の露出制御モードを更に備え、
前記設定手段は、前記複数の露出制御モード毎に
前記適正の明るさを基準とした異なる範囲の
許容範囲及び目標範囲を設定することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項5】
複数の露出制御モードには少なくとも、自動で露出を変更するAEモードと、ユーザによるボタンの押下中において自動で露出を変更するPushAEモードが含まれることを特徴とする請求項4記載の撮像装置。
【請求項6】
前記AEモードにおける前記許容範囲は、前記PushAEモードにおける前記許容範囲より広く、前記AEモードにおける前記目標範囲は、前記PushAEモードにおける前記目標範囲より広いことを特徴とする請求項5記載の撮像装置。
【請求項7】
撮像手段を備えた撮像装置の制御方法であって、
前記撮像手段により撮像される被写体の明るさを検出する検出工程と、
予め設定された適正の明るさに対する、前記検出工程で検出された被写体の明るさの差分を算出する第1の算出工程と、
露出制御の目標となる目標値を算出する第2の算出工程と、
前記目標値に応じて露出パラメータを変更する露出変更工程と、
被写体の明るさの変化に応じて前記露出変更工程において前記露出パラメータを変更しない範囲として、前記適正の明るさを基準とした第1の範囲を設定する設定工程と、を有し、
前記露出変更工程では、前記差分が前記第1の範囲以内である場合、前記露出パラメータを変更せず、
前記第2の算出工程では、前記差分が前記第1の範囲を超えている場合は、前記第1の範囲の端に位置する値のうち、前記検出された被写体の明るさに近い値を前記目標値として算出することを特徴とする撮像装置の制御方法。
【請求項8】
請求項7に記載の撮像装置の制御方法を実行することを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置及びその制御方法並びにプログラムに関し、特に、露出制御の機能を有する撮像装置及びその制御方法並びにプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、多くの機種のビデオカメラは、撮影されている被写体に応じて自動で被写体の明るさを変更する自動露出制御の機能を有する。具体的には、自動露出制御の機能は、撮影されている被写体の輝度情報に基づき被写体の明るさが適正露出でないと判断した場合、被写体の明るさが適正露出となるように露出パラメータ(絞り値、ND、シャッター速度、ISO感度など)を変更する。これらの露出パラメータはそれぞれ制御できる分解能が異なるため、各露出パラメータによる被写体の明るさを適正に近づけられるレベルはその分解能に依存する。このため、各露出パラメータについて、その最も粗い分解能を予め記憶しておき、適正露出が分解能の幅に入ったら、その後の制御を止めるという技術が知られている。例えば、露出変更の分解能のうち、最も粗い絞りの分解能が1/8段である場合、適正露出と判定する範囲を1/8段とし、現在の露出が適正露出から±1/16段以内であれば、絞りについての制御は止める。
【0003】
一方、自動露出制御により、撮影されている被写体の明るさに追従した露出パラメータの変更が行われると、被写体の明るさの変化に伴って画面全体の明るさが変化してしまい、違和感が発生する。特にシネマや報道の撮影では、このような自動露出制御に伴って発生する違和感を嫌って、マニュアルでの露出制御が行われる場合が多い。しかしながら、現在の露出が適正露出からある程度外れると白とびや黒つぶれなどの現象が映像の一部に発生するため、このような時はマニュアルでの露出制御から自動露出制御に変更することが望ましい。このような現象は、例えば固定カメラや長まわしなどでの撮影中に、環境が変化したり予想外の被写体が発生したりした場合に発生する。
【0004】
自動露出制御の頻度は、上述の適正露出と判定する範囲を広げることにより減らすことができる。例えば、HDR時には変更できるISO感度の範囲がSDR時と比べて減少するため、自動露出制御の際に絞りやシャッター等のISO感度以外の露出パラメータの変更頻度が増える。この問題を解消するため、特許文献1ではHDR時にSDR時よりも絞りやシャッターに対して設定される適正露出と判定する範囲を広げ、自動露出制御の頻度を減らしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では目標とする明るさに関しては言及されていない。絞りやシャッターに対して設定される適正露出と判定する範囲を広げた場合、被写体の明るさがこれらの適正露出と判定する範囲を超えたときに、適正露出とすべく絞り値やシャッター速度を大きく変更する必要が生じる。このため、露出の変更量が大きくなり、映像の品質が悪化する。
【0007】
本発明の目的は、自動露出制御における露出制御の頻度および露出制御を行う際の露出の変更量を共に低減でき、自動露出制御による映像の品質の悪化を防止できる撮像装置及びその制御方法並びにプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1に係る撮像装置は、撮像手段と、前記撮像手段により撮像される被写体の明るさを検出する検出手段と、予め設定された適正の明るさに対する前記検出された被写体の明るさの差分を算出する第1の算出手段と、露出制御の目標となる明るさである目標値を算出する第2の算出手段と、前記目標値に応じて露出パラメータを変更する露出変更手段と、被写体の明るさの変化に応じて前記露出変更手段により前記露出パラメータを変更しない範囲として、前記適正の明るさを基準とした第1の範囲を設定する設定手段と、を備え、前記露出変更手段は、前記差分が前記第1の範囲以内である場合、前記露出パラメータを変更せず、前記第2の算出手段は、前記差分が前記第1の範囲を超えている場合は、前記第1の範囲の端に位置する値のうち、前記検出された被写体の明るさに近い値を前記目標値として算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、自動露出制御における露出制御の頻度および露出制御を行う際の露出の変更量を共に低減でき、自動露出制御による映像の品質の悪化を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1の実施形態に係る撮像装置としてのカメラの外観図である。
【
図2】
図1のカメラの内部構成を示すブロック図である。
【
図3】第1の実施形態における露出制御処理のフローチャートである。
【
図4】
図3のステップS304の目標BVの算出処理のフローチャートである。
【
図5】第2の実施形態における露出制御処理のフローチャートである。
【
図6】
図5のステップS501のAE用の許容範囲と目標範囲の決定処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る本発明を限定するものでなく、また本実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須のものとは限らない。
【0012】
<第1の実施形態>
図1は、本実施形態に係る撮像装置としてのデジタルビデオカメラ(以下、単にカメラという)100の外観図である。尚、本実施形態において、カメラ100は、より具体的にはデジタルビデオカメラであるが、以下に説明する自動露出制御が実行できる撮像装置であれば、これに限定されない。例えば、本発明の撮像装置は、ライブビュー表示の際に以下の自動露出制御を実行するデジタルカメラであってもよい。
【0013】
図1において、カメラ100は、表示部28、録画スイッチ61、操作部70、コネクタ112、及び記録媒体スロット201を備える。また、
図1においては反対面に配置されているため不図示であるが、カメラ100は、各種モードを切り替えるモード切替スイッチ60や、ユーザからの電源オン、電源オフを切り替える指示を受け付ける電源スイッチ81も備える。モード切替スイッチ60及び電源スイッチ81の詳細については
図2を用いて後述する。
【0014】
表示部28は、画像や各種情報を表示する。
【0015】
録画スイッチ61は、ユーザからの撮影指示を受け付ける操作部材である。
【0016】
操作部70は、各種ボタン、上下左右4方向の十字キー等のユーザからの各種操作を受け付ける操作部材である。
【0017】
コネクタ112は、不図示の外部電源の接続ケーブルとカメラ100とのコネクタである。
【0018】
記録媒体スロット201は、記録媒体200(
図1において不図示。
図2で後述。)を格納するためのスロットである。記録媒体スロット201に格納された、記録媒体200は、カメラ100との通信が可能となる。
【0019】
図2は、カメラ100の内部構成を示すブロック図である。
【0020】
図2において、カメラ100は、D/A変換器13、記録媒体I/F18、撮像部22、A/D変換器23、画像処理部24、表示部28、電源部30、メモリ32、ジャイロ40、システム制御部50、システムメモリ52、システムタイマー53を備える。またカメラ100は、不揮発性メモリ56、モード切替スイッチ60、録画スイッチ61、操作部70、電源制御部80、電源スイッチ81、絞り101、バリア102、撮像レンズ103、NDフィルタ104、コネクタ112、及び記録媒体200を備える。
【0021】
撮像レンズ103は、ズームレンズ、フォーカスレンズ、シフトレンズを含むレンズ群であり、被写体像(光学像)を撮像部22において結像させる。
【0022】
絞り101は、撮像レンズ103を介して撮像部22に導光される光の光量調整に使用する絞りである。
【0023】
NDフィルタ104は、撮像レンズ103を介して撮像部22に導光される光の光量を減光するために使用するNDである。
【0024】
撮像部22は、その結像面で結像した光学像を電気信号(アナログ信号)に光電変換するCCDやCMOS等の光電変換素子により構成される撮像素子を有する。また、撮像部22は、電子シャッターによる電荷蓄積の制御機能、アナログゲインの制御機能、及び読み出し速度の制御機能も備える。すなわち、撮像部22は、電子シャッターのシャッター速度により露出調整を行うことができる。
【0025】
A/D変換器23は、撮像部22から出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換し、画像データとして出力するために用いられる。A/D変換器23から出力される画像データは、画像処理部24及びメモリ制御部15を介して、或いは、メモリ制御部15を介してメモリ32に書き込まれる。
【0026】
バリア102は、撮像レンズ103、絞り101、NDフィルタ104、撮像部22を含むカメラ100の撮像系を覆うことにより、カメラ100の撮像系の汚れや破損を防止する。
【0027】
画像処理部24は、A/D変換器23またはメモリ制御部15から出力された画像データに対し、所定の画素補間処理、縮小処理といったリサイズ処理や、色変換処理、ガンマ補正処理、デジタルゲインの付加によるISO感度の設定処理等の処理を行う。また、A/D変換器23から出力された画像データを用いて、その輝度平均値の取得等の所定の演算処理を行い、演算結果をシステム制御部50に送信する。
【0028】
ジャイロ40は、手振れやユーザのカメラワーク等により生じるカメラ100の動きや姿勢変化を検出する。
【0029】
システム制御部50は、画像処理部24により送信された演算結果に基づいて、AE(自動露出)処理、AWB(オートホワイトバランス)処理や、TTL(スルー・ザ・レンズ)方式のAF(オートフォーカス)処理等を行う。また、システム制御部50は、ジャイロ40で検出したカメラ100の動きや姿勢変化に応じて撮像レンズ103のシフトレンズを動作させるか、画像処理部24でA/D変換器23から出力された画像データにおける画像をずらすことで像振れ補正を行う。
【0030】
メモリ32は、撮像部22によって光電変換されA/D変換器23によりデジタル信号に変換された画像データや、表示部28に表示するための画像データを格納する。メモリ32は、所定時間の動画像および音声を格納するのに十分な記憶容量を備えている。また、メモリ32は表示部28に表示するための画像データを格納するメモリ(ビデオメモリ)を兼ねている。
【0031】
D/A変換器13は、メモリ32に格納されている表示部28に表示するための画像データをアナログ信号に変換して表示部28に供給する。こうして、メモリ32に書き込まれた表示部28に表示するための画像データはD/A変換器13を介して表示部28により表示される。
【0032】
表示部28は、LCD等により構成される表示器であって、その画面上に、D/A変換器13からのアナログ信号に応じた表示を行う。また、撮像部22からのアナログの画像データを、A/D変換器23でデジタル化してメモリ32に蓄積した後、D/A変換器13で再度アナログ化し、表示部28に逐次転送・表示するようにしてもよい。これにより、電子ビューファインダが実現され、スルー画像表示を行うことができる。
【0033】
不揮発性メモリ56は、電気的に消去・記録可能なメモリであり、例えばEEPROMが用いられる。不揮発性メモリ56には、システム制御部50の動作用の定数、プログラム等が記憶される。ここでいう、プログラムとは、後述する各種フローチャートを実行するためのプログラムのことである。システム制御部50は、不揮発性メモリ56に記録された動作用の定数を用いてカメラ100全体を制御する。また、不揮発性メモリ56に記録されたプログラムを実行することにより、システム制御部50は、後述する本実施形態の各処理を実行する。さらに、不揮発性メモリ56には、後述する露出制御可能範囲、許容範囲、目標範囲等が保持される。
【0034】
システムメモリ52は、RAMにより構成される。システムメモリ52において、不揮発性メモリ56から読み出した、システム制御部50の動作用の定数、変数、プログラム等が展開される。また、システム制御部50はメモリ32、D/A変換器13、表示部28等を制御することにより表示部28の画面上の像データの表示制御も行う。
【0035】
システムタイマー53は、各種制御に用いる時間や、内蔵された時計の時間を計測する計時部である。
【0036】
モード切替スイッチ60、録画スイッチ61、操作部70は、システム制御部50に各種の動作指示をユーザから受け付けるための操作部材であり、受け付けた動作指示は順次システム制御部50に出力される。
【0037】
モード切替スイッチ60は、システム制御部50の動作モードを、動画記録モード、静止画記録モード、再生モード等のいずれかに切り替えるための動作指示をユーザから受け付ける。また動画記録モードや静止画記録モードには、オート撮影モード、オートシーン判定モード、マニュアルモード、撮影シーン別の撮影設定となる各種シーンモード、プログラムAEモード、カスタムモード等のモードが含まれる。ユーザは、モード切替スイッチ60の操作により動画記録モードに切り替えた後、更にモード切替スイッチ60を操作することにより、動画記録モードに含まれるこれらのモードのいずれかに直接切り替えることができる。また、ユーザは、モード切替スイッチ60の操作により動画記録モードに切り替えた後、動画記録モードに含まれるこれらのモードのいずれかに、操作部70等の他の操作部材を用いて切り替えることもできる。
【0038】
録画スイッチ61は、ユーザからの撮影指示を受け付ける。具体的には、録画スイッチ61がユーザによりOFFにされた場合にカメラ100は撮影待機状態に切り替えられ、録画スイッチ61がユーザによりONにされた場合にカメラ100は撮影状態を切り替えられる。システム制御部50は、録画スイッチ61がONされると、カメラ100を撮影状態に切り替え、撮像部22からの信号読み出しから記録媒体200への動画データの書込みまでの一連の動作を開始する。
【0039】
操作部70は、各種ボタン、十字キー等の操作部材から構成される。これらの各種ボタン、十字キーは、表示部28に表示される種々の機能アイコンをユーザが選択操作することなどによって適宜機能が割り当てられ、各種機能ボタンとして動作する。機能ボタンとしては、例えば終了ボタン、戻るボタン、画像送りボタン、ジャンプボタン、絞り込みボタン、属性変更ボタン、メニューボタン、SETボタン等がある。例えば、ユーザにより操作部70のメニューボタンとして動作するボタンが押されると各種の設定が可能なメニュー画面が表示部28に表示される。ユーザは、表示部28に表示されたメニュー画面と、操作部70の十字キーやSETボタンとして動作するボタンを用いて直感的に各種設定を行うことができる。
【0040】
電源制御部80は、電池検出回路、DC-DCコンバータ、通電するブロックを切り替えるスイッチ回路等により構成され、電池の装着の有無、電池の種類、電池残量の検出を行う。また、電源制御部80は、その検出結果及びシステム制御部50の指示に基づいてDC-DCコンバータを制御し、必要な電圧を必要な期間、記録媒体200を含む各部へ供給する。また、電源制御部80は、電源スイッチ81を介してユーザからの電源オン、電源オフを切り替える指示を受け付け、その指示に応じてDC-DCコンバータを制御し、必要な電圧をシステム制御部50へ供給する。
【0041】
電源部30は、アルカリ電池やリチウム電池などの一次電池やNiCd電池やNiMH電池、Liイオン電池などの二次電池、ACアダプター等からなる。電源部30は、コネクタ112を介して外部電源からの電源供給を受けると、二次電池の充電やACアダプターを介した電源制御部80への電源供給を行う。
【0042】
記録媒体I/F18は、記録媒体200とのインターフェースである。
【0043】
記録媒体200は、半導体メモリ等により成るメモリカードや磁気ディスク等より成るハードディスク等の外部メモリである。記録媒体200は、カメラ100と記録媒体I/Fを介して通信し、カメラ100で撮影された被写体像を画像データとして記録する。
【0044】
図3は、本実施形態における露出制御処理のフローチャートである。本処理は、システム制御部50が、不揮発性メモリ56に記録されるプログラムをシステムメモリ52に展開することにより実行する。
【0045】
図3において、まず、被写体の明るさを検出する(ステップS301)。本実施形態では、具体的には、システム制御部5(検出部)は、撮像部22からA/D変換器23を介して出力された画像データの輝度平均値を画像処理部24で演算し、その演算された輝度平均値を被写体の明るさとして検出する。なお、明るさの単位としては、所謂APEX(ADDITIVE SYSTEM OF PHOTOGRAPHIC EXPOSURE)システムに基づくBVで示すが、輝度情報の単位(Y値)で示す構成であってもよい。
【0046】
次にステップS301で決定された現在の被写体の明るさと、被写体が適正となる明るさとの差分を算出する(ステップS302)。例えば、現在の露出で撮影される画像の輝度平均値をYt、予め決められている基準に従い、被写体が適正な明るさとなる露出で撮影した時の画像の輝度平均値である輝度目標値をYsとすると、輝度目標値に対する輝度平均値の露出差ΔYは、
ΔY=log2(Yt/Ys) (式1)
となる。例えば、ΔYはYtがYsに対して2倍のときは1となり、4倍のときは2となる。なお、本実施形態では、被写体が適正となる明るさを基準に相対的な値であるΔYを求める構成であって、この場合は、被写体が適正となる明るさを中心に後述の許容範囲および目標範囲を決定する。
【0047】
次にステップS302で算出されたΔYが、被写体が適正となる明るさを基準とした許容範囲以内かどうかを判定する(ステップS303)。予めΔYの許容範囲を決めておき、ΔYが許容範囲以内かどうかを判定する。ここで許容範囲とは、被写体が適正な明るさとなるBVに対する現在の明るさのBV(現在BV)のズレの許容範囲であって、予め設定され、不揮発性メモリ56に保持される。例えば、現在BVが4BVであって、許容範囲を±2BVである場合、被写体が適正なる明るさのBVが2BV~6BV以下であれば、ΔYが許容範囲以内である。
【0048】
尚、露出変更の分解能のうち、最も粗い絞り101(露出変更部)の分解能が1/8段である場合、この分解能に応じて露出制御可能範囲が±1/16に設定される。従来の自動露出制御においては、この露出制御可能範囲に基づいて実行されていた。これに対し本実施形態の許容範囲は、少なくともこの露出制御可能範囲より広い範囲が設定され、本実施形態では、露出変更の分解能を考慮せずに設定する。
【0049】
ステップS303の判定の結果、ΔYが許容範囲以内であれば、露出の変更を行わずに本処理を終了する。一方、ΔYが許容範囲以内でなければ、ステップS304に進み、露出の目標となる被写体の明るさ(以下、目標BV)の算出処理を実行する。目標BVの算出処理の詳細に関しては
図4に後述する。
【0050】
ステップS304において目標BVが算出されると、目標BVになるような露出パラメータを決定する(ステップS305)。プログラムAEモードに応じて、露出パラメータの変動の仕方(以下、プログラム線図という)が予め決められている。例えば動画撮影中において、撮影対象が明るい被写体から暗い被写体に変化した場合、まず絞り値が最小絞り値からF4.0まで変化し、その後、シャッター速度が1/250から1/60に変化する。その後、絞り値がF4.0から最大絞り値まで変化した後、ISO感度を最低感度から最高感度まで上げる。ここで、最小絞り値、最大絞り値、最低感度、及び最高感度は、カメラ100の状態や露出に関連する設定に応じて変動する。尚、カメラ100の状態とは、ズーム位置、フォーカス位置、NDフィルタ104の挿入状況などを指す。また、露出に関連する設定とは、各露出パラメータの制御を自動で行うか手動で行うかの設定、ISO感度の拡張機能やガンマ補正の設定などを指す。ステップS304における目標BVの算出時のカメラ100の状態、露出に関連する設定に応じてプログラム線図を決定し、そのプログラム線図に基づき、目標BVにするための露出パラメータを決定する。
【0051】
次に、ステップS305で決定された露出パラメータに基づき露出を変更する(ステップS306)。具体的には、ステップS305で決定された露出パラメータに含まれる絞り値、シャッター速度、及びISO感度となるよう、システム制御部50が絞り101、撮像部22、画像処理部24の夫々に制御命令を送信する。これにより、絞り101における絞り値、撮像部22における電子シャッターのシャッター速度、画像処理部24により設定されるISO感度が変更され、所望の露出になる。
【0052】
図4は、
図3のステップS304の目標BVの算出処理のフローチャートである。
【0053】
尚、本実施形態においては、予めΔYの目標範囲が設定され、不揮発性メモリ56に保持されている。例えば露出パラメータの中で絞り101の制御分解能である1/8段が最も粗い場合、±1/16(=0.0625)段の範囲(露出制御可能範囲)以内での露出変更ができない可能性がある。よって、目標範囲は許容範囲よりもその両端が制御分解能の半値である1/16段だけ内側に設定される。つまり目標範囲は±1.9375(=2-0.0625)に設定される。尚、目標範囲は、許容範囲と制御分解能に基づき、露出変更を確実に実行できる範囲に設定されればよく、本実施形態のように目標範囲を許容範囲より狭くしなくてもよい。例えば、本実施形態よりも
図3のステップS306での露出変更による映像の明るさの変化は大きくなるが、目標範囲を許容範囲よりもその両端が制御分解能の半値である1/16段だけ外側に設定してもよい。
【0054】
図4において、まずΔYが0以下の値(ΔY≦0)であるか否かを判定する(ステップS401)。判定の結果、ΔYが0以下(ΔY≦0)であれば(ステップS401でYES)、目標BVを現在BVにΔYを加算した値にΔYの目標範囲の上限値(=1.9375)を加算した値とする(ステップS402)。
【0055】
現在BVは、絞り値(AV)、シャッター速度(以下、蓄積時間という)(TV)、ISO感度(SV)等の露出パラメータに基づき算出される。例えば、現在BVは以下の数式で求められる。
【0056】
BV=AV+TV-SV (式2)
【0057】
尚、NDフィルタ104に関しては、これを挿入することにより暗くなる段数を式2に加算することでBVが算出される。例えば透過率1/4のNDフィルタを挿入した場合は式2にさらに2を加算し、1/8の場合は式2にさらに3を加算する。カメラ100の露出パラメータに基づいて式2に値を代入すると、現在BVを算出することができる。また、適正の明るさに対する、現在BVとなる露出で撮影した時の被写体の明るさがΔYであるので、現在BVにΔYを加算した値が被写体の明るさのBVとなる。
【0058】
すなわち、ステップS402では、被写体が適正となる輝度を基準とした目標範囲の両端のうち現在の明るさのBVと近接する端の付近に目標BVが設定される。
【0059】
一方、ステップS401の判定の結果、ΔYが0よりも大きい値(ΔY>0)である場合は、目標BVを現在BVにΔYを加算した値に目標範囲の下限値(=-1.9375)を加算した値とする(ステップS403)。
【0060】
すなわち、ステップS403では、目標範囲(第1の範囲)の両端のうち、明るさが暗い側の端に合わせて目標BVが設定される。尚、本実施形態では、目標範囲の端の一方が目標BVに設定されたが、許容範囲を制御分解能を考慮した範囲とし、その範囲の端の一方を目標BVとして設定するようにしてもよい。
【0061】
なお、ステップS401では目標範囲を用いて目標BVを算出するか否かを判定する場合を示したが、許容範囲を用いて目標BVを算出するか否かを判定しても良い。例えば、目標範囲と許容範囲が同じである場合など、目標範囲を考慮する必要性が低い場合に有効である。
【0062】
以上、本実施形態に係る露出制御処理によれば、被写体の明るさに対してする現在の明るさの差分を示すΔYが許容範囲以内である場合は、露出変更を行わない。これにより、従来より露出制御の頻度を低減でき、自動露出制御による映像の品質の悪化を低減できる。
【0063】
また、ΔYが許容範囲を超えた場合は、被写体が適正な明るさを基準とした露出を変更しない範囲のうち、現在の明るさのBVに近い端の付近に目標BVが設定される。このため、目標BVを被写体の明るさのBVに設定する従来の自動露出制御と比べて、露出制御を行う際の露出の変更量を低減することができ、自動露出制御による映像の品質の悪化を防止できる。
【0064】
被写体の明るさの算出方法は、本実施形態における方法に限定するものではない。例えば、中央部の明るさに重みを持たせて平均する中央重点や顔の明るさの平均値としても良い。同様に、被写体の明るさと適正の明るさとの差分であるΔYは、式(1)に示す式を用いて算出せず、輝度平均値の差分(=Yt-Ys)として算出しても良い。また、被写体の明るさのBVとカメラ100のBVの差分を算出しても良い。すなわち
図3の露出制御処理は、被写体の明るさが許容範囲を超えた時に、超えた側の輝度許容範囲の端付近を目標として露出の変更ができれば良い。
【0065】
<第2の実施形態>
第1の実施形態では、被写体の明るさと適正の明るさとの差分であるΔYが許容範囲を超えた場合、目標範囲の端のうち、被写体の明るさのBVと近い端に合わせて目標BVを設定して露出制御を行うことで、露出制御の頻度と露出の変更量を減らした。本実施形態に係る露出制御処理においては、ユーザが操作部70の所定のボタン(以下、PushAEボタンという)を押下している場合はPush Auto Exposure(以下、PushAE)モードでの露出制御を実行する。一方、ユーザがPushAEボタンを押下していない場合は第1の実施形態と同様の露出制御を行うAuto Expousre(以下、AE)モードでの露出制御を実行する。
【0066】
尚、本実施形態に係る撮像装置の外観や内部構成は、
図1,2に示す第1の実施形態に係るカメラ100と同一である。よって、以下、本実施形態においては、第1の実施形態における構成と同一の構成については同一の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0067】
図5は、本実施形態における露出制御処理のフローチャートである。本処理は、システム制御部50が、不揮発性メモリ56に記録されるプログラムをシステムメモリ52に展開することにより実行する。
【0068】
尚、本処理は、
図3に示す第1の実施形態に係る露出制御処理に対してステップS501の処理が追加されている点で異なる。
【0069】
図5において、まず、第1の実施形態に係る露出制御処理と同様に被写体の明るさを決定し(ステップS301)、被写体の明るさと適正の明るさとの差分ΔYを算出する(ステップS302)。次にAE用の許容範囲と目標範囲の決定処理を実行する(ステップS501)。
【0070】
図6は、
図5のステップS501のAE用の許容範囲と目標範囲の決定処理のフローチャートである。
【0071】
図6において、まず、PushAEボタンが押下中であるかどうかを判定する(ステップS601)。この判定の結果、PushAEボタンが押下中である場合、カメラ100はPushAEモードに移行し、PushAE用の許容範囲と目標範囲を設定する(ステップS602)。一方、ステップS601の判定の結果、PushAEボタンが押下されていない場合、カメラ100はAEモードに移行し、AE用の許容範囲と目標範囲を設定する(ステップS603)。
【0072】
具体的には、ステップS602でAEモードに移行した場合は、第1の実施形態と同様に許容範囲を±2、目標範囲を±1.9375に設定する。一方、ステップS603でPushAEモードに移行した場合は、許容範囲を±0.0625、目標範囲を0に設定する。尚、これらの許容範囲及び目標範囲は予めその露出制御モード毎に設定され、不揮発性メモリ56内に記憶されている。すなわち、ステップS603の設定は、不揮発性メモリ56から現在の露出制御モードに応じた許容範囲及び目標範囲を読み出すことにより行われる。
【0073】
尚、AEモードにおける許容範囲がPushAEモードにおける許容範囲より広く、AEモードにおける目標範囲がPushAEモードにおける目標範囲より広く設定されれば、本実施形態に限定されない。
【0074】
図5に戻り、次にΔYがステップS501で設定された許容範囲以内かどうかを判定し(ステップS303)、許容範囲以内であれば本処理をそのまま終了する一方、許容範囲外であれば、目標BVの算出処理を実行する(ステップS304)。
【0075】
本実施形態では、AEモードにおいては許容範囲が±2、目標範囲が±1.9375に設定されるので、第1の実施形態と同様に目標BVが算出される。
【0076】
一方、PushAEモードにおいては目標範囲が0に設定される。このため、ΔYが許容範囲を超えた時、ΔY≦0であっても(ステップS401でYES)ΔY>0であっても(ステップS401でNO)、目標BVは被写体の明るさのBV(現在BVにΔYを加算した値)となる。このように目標範囲が0に設定された場合はステップS401の判定を行わず、目標BVを現在BVにΔYを加算した値としてもよい。
【0077】
上述した方法で算出された目標BVを元に、第1の実施形態と同様に露出パラメータの決定(ステップS305)と露出変更(ステップS306)を行う。この際、PushAEモードの場合はステップS304で目標BVは被写体の明るさのBVとなるので、被写体の明るさを適正にするように露出を変更する。ただし、ΔYが許容範囲以内(-1/16≦Y≦1/16)になれば、露出変更は行わない。一方、AEモードの場合は第1の実施形態と同様、ΔYが許容範囲を超えた場合、目標範囲(あるいは許容範囲)の端のうち、現在の明るさのBVと近い端の付近が目標BVとなるように露出を変更する。
【0078】
以上、本実施形態に係る露出制御処理によれば、AEモードのときは第1の実施形態と同様の露出制御をする一方、PushAEモードのときは適正な明るさになるように露出を制御する。これにより、ユーザは、被写体の明るさのBVが目標範囲や許容範囲の端付近に一定時間継続して滞まるような場合は、PushAEボタンを押下するだけで映像中の被写体の明るさを適正な明るさに合わせることができる。
【0079】
尚、複数の露出制御モードの夫々に応じて異なる許容範囲及び目標範囲が設定される構成であればよく、本実施形態に係る露出制御モードはAEモード、PushAEモード以外のモードを含んでいてもよい。例えば、ステップS601で絞り優先モードやシャッター速度優先モードであると判定された場合に、AEモード、PushAEモードとは異なる許容範囲及び目標範囲が設定されるよう構成してもよい。
【0080】
<その他の実施形態>
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記録媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読み出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【符号の説明】
【0081】
22 撮像部
23 A/D変換器
24 画像処理部
50 システム制御部
56 不揮発性メモリ
70 操作部
100 カメラ
101 絞り
103 撮像レンズ
104 NDフィルタ