(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】トリガー式噴出器およびエアゾール装置
(51)【国際特許分類】
B65D 83/20 20060101AFI20240408BHJP
B05B 9/04 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
B65D83/20 100
B05B9/04
(21)【出願番号】P 2019219041
(22)【出願日】2019-12-03
【審査請求日】2022-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000100539
【氏名又は名称】アース製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】延原 健二
【審査官】杉田 剛謙
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0283609(US,A1)
【文献】特表2009-500162(JP,A)
【文献】特開2008-030830(JP,A)
【文献】特開2006-198446(JP,A)
【文献】特開2007-331787(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 83/20
B05B 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアゾールバルブを有する容器に装着されるトリガー式噴霧器であって、
先端に作用部を有し前記エアゾールバルブに連通される
装着筒部と、前記装着筒部から連通して折れ曲がった延長筒部と、前記延長筒部の上部において幅方向に延長された台座部と、前記延長筒部の先端に設けられた噴出口と、を備えるノズルと、
支点部とレバー部
と作用上部が一体に形成され、前記支点部を中心として回動可能に保持されたトリガーと、
を備え、
前記トリガーは前記ノズルと別体に構成されており、前記支点部は高さ方向において前記作用部と前記作用上部の間に位置し、前記作用上部は高さ方向において前記台座部よりも上方に位置し、
前記レバー部は、延伸方向において凹形状に形成された第1凹部および第2凹部を有し、
前記第2凹部は、前記作用部よりも前記噴出口に近い側に設けられており、
前記エアゾールバルブの延長線を鉛直線とし、
前記第1凹部および前記第2凹部に共通する接線を共通接線としたとき、
前記鉛直線と前記共通接線とが成す角度θが26度以上36度以下の範囲であ
り、
前記トリガーの回動に伴って前記作用上部が前記台座部と干渉して前記ノズルが押し下げられて、前記作用部が前記エアゾールバルブを押圧することを特徴とするトリガー式噴出器。
【請求項2】
請求項1に記載のトリガー式噴出器であって、
前記第1凹部および前記第2凹部は、前記延伸方向に直交する方向に凸形状に形成されていることを特徴とするトリガー式噴出器。
【請求項3】
請求項1または2に記載のトリガー式噴出器であって、
前記第1凹部における前記共通接線の接点を第1接点Pとし、前記鉛直線と第1接点Pの距離をαとし、
前記第2凹部における前記共通接線の接点を第2接点Qとし、前記鉛直線と第2接点Qの距離をβとしたとき、
前記αが35mm以上41mm以下の範囲であり、前記βが25mm以上31mm以下の範囲であることを特徴とするトリガー式噴出器。
【請求項4】
請求項1から3の何れか一つに記載のトリガー式噴出器であって、
前記支点部から前記作用部までの距離aと前記支点部から前記レバー部の先端までの距離bの比b/aが、2.5以上4.0以下の範囲であることを特徴とするトリガー式噴出器。
【請求項5】
請求項1から4の何れか一つに記載のトリガー式噴出器と、
前記トリガー式噴出器が装着された容器と、
前記容器に貯蔵されたエアゾール組成物を備えることを特徴とするエアゾール装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリガー式噴出器およびエアゾール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、害虫を防除するための害虫防除剤を噴射するエアゾール装置が知られている。このようなエアゾール装置において、トリガー式噴出器をエアゾールバルブに装着して、トリガー式噴出器を使用者が把持してレバーを引くことで、エアゾール組成物を噴射するものが広く用いられている(例えば特許文献1)。
【0003】
このようなトリガー式噴出器を備えたエアゾール装置では、噴射対象である害虫に対して一定時間エアゾール組成物を噴射して、確実に害虫防除の効果を得ることが求められている。しかし一般的なエアゾール装置は、容器内にエアゾール組成物が貯蔵されており、容器自体も耐圧性が求められるため金属製の材料を用いる場合が多く、重量が増加する傾向がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
使用者は、噴射対象である害虫に向けて重量感のあるエアゾール装置を身体から離して保持しながら、把持したトリガー式噴出器のレバーを引き、さらにレバーを一定時間引いた状態を維持する必要があった。あるいは、重量がそれほど無くても、噴射秒数やレバー動作回数が多い虫除け剤や洗浄剤では、このようなエアゾール組成物を噴射するための動作を繰り返し行うことで、使用者の手が痛くなることや疲れを感じることがあり、エアゾール組成物の噴射を継続的に行うことが困難になるという問題があった。
【0006】
本発明は、このような従来の問題に鑑みてなされたものであり、レバーを引く動作が容易であり、疲労感を低減することが可能なトリガー式噴出器およびエアゾール装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明のトリガー式噴出器は、エアゾールバルブを有する容器に装着されるトリガー式噴霧器であって、先端に作用部を有し前記エアゾールバルブに連通される装着筒部と、前記装着筒部から連通して折れ曲がった延長筒部と、前記延長筒部の上部において幅方向に延長された台座部と、前記延長筒部の先端に設けられた噴出口と、を備えるノズルと、支点部とレバー部と作用上部が一体に形成され、前記支点部を中心として回動可能に保持されたトリガーと、を備え、前記トリガーは前記ノズルと別体に構成されており、前記支点部は高さ方向において前記作用部と前記作用上部の間に位置し、前記作用上部は高さ方向において前記台座部よりも上方に位置し、前記レバー部は、延伸方向において凹形状に形成された第1凹部および第2凹部を有し、前記第2凹部は、前記作用部よりも前記噴出口に近い側に設けられており、前記エアゾールバルブの延長線を鉛直線とし、前記第1凹部および前記第2凹部に共通する接線を共通接線としたとき、前記鉛直線と前記共通接線とが成す角度θが26度以上36度以下の範囲であり、前記トリガーの回動に伴って前記作用上部が前記台座部と干渉して前記ノズルが押し下げられて、前記作用部が前記エアゾールバルブを押圧することを特徴とする。
【0008】
このような本発明のトリガー式噴出器では、レバー部が第1凹部および第2凹部を有することで、レバーを引く動作が容易であり、疲労感を低減することが可能となる。
【0009】
また、本発明の一態様では、前記第1凹部および前記第2凹部は、前記延伸方向に直交する方向に凸形状に形成されている。
【0010】
また、本発明の一態様では、前記第1凹部における前記共通接線の接点を第1接点Pとし、前記鉛直線と第1接点Pの距離をαとし、前記第2凹部における前記共通接線の接点を第2接点Qとし、前記鉛直線と第2接点Qの距離をβとしたとき、前記αが35mm以上41mm以下の範囲であり、前記βが25mm以上31mm以下の範囲である。
【0011】
また、本発明の一態様では、前記支点部から前記作用部までの距離aと前記支点部から前記レバー部の先端までの距離bの比b/aが、2.5以上4.0以下の範囲である。
【0012】
また上記課題を解決するため、本発明のエアゾール装置は、上記何れか一つに記載のトリガー式噴出器と、前記トリガー式噴出器が装着された容器と、前記容器に貯蔵されたエアゾール組成物を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、レバーを引く動作が容易であり、疲労感を低減することが可能なトリガー式噴出器およびエアゾール装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るトリガー式噴出器100の概要を示す斜視図である。
【
図2】トリガー式噴出器100をエアゾール容器50に装着した状態を示す、
図1中A-A位置での部分拡大断面図である。
【
図3】トリガー式噴出器100をエアゾール容器50に装着した状態を示す、
図1中B-B位置での部分拡大断面図である。
【
図4】レバー部Lを引いた状態でのトリガー式噴出器100の動作を模式的に示す図である。
【
図5】第2実施形態におけるノズル20とトリガー30の構造を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態におけるトリガー式噴出器100およびエアゾール装置(以下、エアゾール製品ともいうについて、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係るトリガー式噴出器100の概要を示す斜視図である。
図2は、トリガー式噴出器100をエアゾール容器50に装着した状態を示す、
図1中A-A位置での部分拡大断面図である。
図3は、トリガー式噴出器100をエアゾール容器50に装着した状態を示す、
図1中B-B位置での部分拡大断面図である。
【0016】
本実施形態のエアゾール装置は、エアゾール組成物が充填されるエアゾール容器50と、エアゾールバルブ51を介して取り付けられるトリガー式噴出器100とを備える。エアゾール装置は、エアゾール組成物を対象となる害虫に噴射することにより、エアゾール組成物に含まれる害虫防除剤が対象害虫に噴霧され、殺虫する。なお、以下の説明において、エアゾール容器50、エアゾールバルブ51およびトリガー式噴出器100は、エアゾールの技術分野において汎用される部材である。そのため、以下の説明は例示であり、これらの部材は、適宜設計変更され得る。また、本発明に係るエアゾール装置は、害虫防除剤を噴霧するものに限定されず、虫除け剤や洗浄剤、芳香剤等の各種薬剤を散布する用途に用いることができる。
【0017】
図1に示すようにトリガー式噴出器100は、カバー部10と、ノズル20と、トリガー30と、ストッパー40とを備えている。トリガー式噴出器100は、カバー部10がエアゾール容器50に装着されることで、ノズル20がエアゾールバルブ51と連通し、トリガー30のレバー部Lを使用者が引くことで、ノズル20からエアゾール組成物を噴射する。
【0018】
カバー部10は、トリガー式噴出器100の外形を構成してエアゾール容器50に装着される部材であり、内部にノズル20、トリガー30を収容して保持する。またカバー部10は、外装部11と、内筒部12と、装着部13と、挿入口14を備えている。外装部11は、カバー部10の最外殻を構成する部分である。内筒部12は、外装部11と一体に形成され、外装部11内で下方に延伸して形成された筒状の部分である。装着部13は、内筒部12の最下端であり、エアゾール容器50の上端部分に装着されてカバー部10をエアゾール容器50に取り付ける部分である。挿入口14は、内筒部12に設けられた開口であり、後述する支点部33が挿入されて回動自在に保持する部分である。
【0019】
ノズル20は、カバー部10内に収容された略L字形状の管路であり、一端はエアゾールバルブ51に連通して装着され、他端はカバー部10の外部に露出されてエアゾール組成物を噴射する。またノズル20は、カバー部10の内部において、エアゾールバルブ51の延出された方向(上下方向)に移動可能に保持されている。またノズル20は、噴出口21と、延長筒部22と、装着筒部23と、台座部24と、作用部25を備えている。
【0020】
噴出口21は、延長筒部22の先端に設けられた開口部であり、ノズル20内部を通過したエアゾール組成物を外部に噴射する部分である。延長筒部22は、略L字形状の管路の一辺であり、装着筒部23と連通して略直角に折曲がり、図中左右方向に延伸された部分である。装着筒部23は、略L字形状の管路の他辺であり、
図2中に鉛直線lで示したエアゾールバルブ51の延長方向(図中上下方向)に延伸された部分である。台座部24は、延長筒部22の上部において、幅方向に延長して形成された平坦部分である。後述するように、台座部24はトリガー30の作用上部34が干渉して、トリガー30の回動に伴って押し下げられる部分である。作用部25は装着筒部23の下端であり、エアゾールバルブ51に装着されて連通されている。後述するように作用部25はトリガー30の回動によって押し下げられ、エアゾールバルブ51に作用してエアゾール容器50方向に押し下げる。
【0021】
トリガー30は、一部がカバー部10内に収容された部材であり、レバー部Lがカバー部10の外部に露出され、回動可能に保持されている。またトリガー30は、レバー部Lと、先端部30aと、突起部30bと、根元部30cと、第1凹部31と、第2凹部32と、支点部33と、作用上部34を備えている。
【0022】
レバー部Lは、支点部33および作用上部34と一体に形成され、
図2中に示した鉛直線lと延出角度θで交わる共通接線mに沿って、カバー部10から斜め下方に延出して配置されており、使用者が握ることで回動する部分である。レバー部Lは、エアゾール容器50よりも外側に位置する面が使用者の指先が触れる面であり、その下端側から順に先端部30a、第1凹部31、突起部30b、第2凹部32、根元部30cが形成されている。
図2に示すように、共通接線mは第1凹部31と第2凹部32に共通して接する直線であり、それぞれ共通接線mとの接点を第1接点Pおよび第2接点Qとすると、第1接点Pから鉛直線lまでの距離はαであり、第2接点Qから鉛直線lまでの距離はβである。
【0023】
ここで、鉛直線lと共通接線mが成す角度θは、26度以上36度以下の範囲とすることが好ましい。θが26度未満の場合には、レバー部L全体がエアゾール容器50に近すぎて、レバー部Lの可動範囲を十分に確保することができない。また、後述するようにレバー部Lの回動がノズル20の上下移動に変換されるので、エアゾールバルブ51を適切に押し下げることが困難になり、エアゾール組成物の噴射も困難になる。θが36度よりも大きいと、延長筒部22との間隔が狭くなり、使用者の指を入れるスペースを確保することが難しくなる。また、レバー部Lを引く力を加えにくくなることや、レバー部Lに指が届きにくくなり、疲労感を感じやすくなる。
【0024】
また、第1接点Pから鉛直線lまでの距離はαは、35mm以上41mm以下の範囲が好ましく、第2接点Qから鉛直線lまでの距離はβは、25mm以上31mm以下の範囲が好ましい。αとβの値がこれらの数値範囲下限よりも小さいと、使用者がトリガー式噴出器100を把持した状態で指の付け根付近にレバー部Lが位置し、レバー部Lを引く力を加えにくくなることや、レバー部Lがエアゾール容器50と接触するなどの不具合が発生する。またαとβの値がこれらの数値範囲上限よりも大きいと、使用者がトリガー式噴出器100を把持した状態で指先付近にレバー部Lが位置し、レバー部Lを引く力を加えにくくなることや、レバー部Lに指が届きにくくなるなどの不具合が発生する。
【0025】
先端部30aは、レバー部Lの最下端に位置する部分であり、レバー部Lのうち支点部33から最も遠い距離に位置している。突起部30bは、第1凹部31と第2凹部32の境界領域に形成された突出部分である。根元部30cは、第2凹部32の最上部で突出した部分であり、レバー部Lのうち延長筒部22に最も近くに位置している。第1凹部31は、先端部30aと突起部30bの間に設けられた曲面部である。第2凹部32は、突起部30bと根元部30cの間に設けられた曲面部である。
【0026】
図1、
図2に示すように、第1凹部31および第2凹部32は、ともに先端部30aと根元部30cを結んだ仮想平面からは、共通接線mの方向に凹んだ形状とされている。また
図1に示したように、第1凹部31および第2凹部32は、ともに延伸方向に直交する幅方向に対しては凸形状とされている。したがって、第1凹部31および第2凹部32は、延伸方向に凹形状で幅方向に凸形状のいわゆる鞍状をなしている。
【0027】
第1凹部31および第2凹部32が、延伸方向に凹形状で幅方向に凸形状のいわゆる鞍状として形成されていることで、使用者がレバー部Lに指をかけた際に角が当たらず、指に感じる痛みや不快感を低減することができる。
【0028】
支点部33は、装着筒部23を介してレバー部Lの反対側に突出して形成された爪形状の部分であり、挿入口14に回動可能に挿入されている。作用上部34は延長筒部22に設けられた台座部24の上方にまで延長して設けられた部分であり、台座部24の上面に当接している。
【0029】
ストッパー40は、カバー部10に設けられ、トリガー30と一体に形成され、トリガー30の移動を規制する部材である。ストッパー40をカバー部10から取り除くことで、トリガー30が可動範囲内で移動可能となり、エアゾール組成物を噴射可能となる。
【0030】
エアゾール容器50は、内部にエアゾール組成物が充填される空間が形成された概略筒状の容器であり、エアゾール組成物が加圧充填される耐圧容器である。エアゾール容器50の上部は開口が設けられ、エアゾールバルブ51によって密封される。エアゾール容器50の材質は特に限定されない。例えば、エアゾール容器50は、耐圧性を有する各種金属製、樹脂製、ガラス製等であってもよい。
【0031】
エアゾールバルブ51は、トリガー式噴出器100が使用者により操作されることにより、エアゾール容器50内と外部との連通および遮断を切り替える部分である。エアゾールバルブ51が上下に摺動することで、エアゾール容器50内部に蓄えられたエアゾール組成物の連通(噴射状態)および遮断(非噴射状態)が切り替えられる。
【0032】
エアゾール組成物は、エアゾール装置の内容物であり、噴射剤を含む。なお、エアゾール組成物は、噴射剤に加えて原液を含んでいる。原液は、噴射剤とともにエアゾール組成物を構成する成分である。原液は、エアゾール組成物が調製される際に、エアゾール容器50に充填される。原液は、害虫防除剤として殺虫成分等の任意成分を含む。また、原液には溶剤を配合することができる。また、原液には非イオン、陰イオンまたは陽イオン界面活性剤、ブチルヒドロキシトルエン等の抗酸化剤;クエン酸、アスコルビン酸等の安定化剤;タルク、珪酸等の無機粉体、殺菌剤(防黴剤)、消臭剤、芳香剤(香料)、色素等が適宜含有されてもよい。
【0033】
噴射剤は、上記原液を噴射するための媒体であり、原液とともにエアゾール容器50に加圧充填される。噴射剤としては、例えば、液化石油ガス(LPG)、プロパン、プロピレン、n-ブタン、イソブタン、ブタジエン、n-ブチレン、イソブチレン、n-ペンタン、イソペンタン、n-ヘキサン、イソヘキサン、ジメチルエーテル(DME)、炭酸ガス、窒素ガス、ハイドロフルオロオレフィン等が挙げられる。これらの噴射剤は、1種類のみであってもよいし、2種類以上であってもよい。
【0034】
次に、本実施形態のトリガー式噴出器100およびエアゾール装置の動作について
図4を用いて説明する。
図4は、レバー部Lを引いた状態でのトリガー式噴出器100の動作を模式的に示す図である。図中に実線で示したノズル20とトリガー30は、使用者がレバー部Lを引いた状態の位置を示している。また、図中に二点鎖線で示したノズル20とトリガー30は、使用者がレバー部Lを引いていない状態の位置を示している。
【0035】
使用者がトリガー式噴出器100を把持して指先でレバー部Lを引くと、レバー部Lは図中矢印a方向に回動する。このとき、レバー部Lの回動中心は挿入口14に挿入された支点部33である。トリガー30は、支点部33、作用上部34およびレバー部Lが一体に形成されているので、レバー部Lの回動とともに作用上部34も支点部33を回動中心として変位する。このとき、作用上部34はノズル20の台座部24と干渉するので、作用上部34が矢印a方向に回動する際には、台座部24に対して図中下方への力が加えられる。
【0036】
ノズル20は、装着筒部23の下端である作用部25がエアゾールバルブ51に装着されており、エアゾールバルブ51の延出方向(図中上下方向)にのみ移動可能なので、ノズル20は図中矢印b方向に平行移動する。ノズル20が矢印b方向(図中下方)に移動すると、作用部25がエアゾールバルブ51をエアゾール容器50内部方向に押し下げ、エアゾールバルブ51がエアゾール容器50の内部と外部を連通する。これにより、エアゾール容器50内に貯蔵されたエアゾール組成物は、噴射剤の圧力によってエアゾールバルブ51、装着筒部23、延長筒部22および噴出口21を経て外部に噴射される。
【0037】
本実施形態のトリガー式噴出器100では、レバー部Lに第1凹部31と第2凹部32が設けられていることで、使用者がレバー部Lを引く際に適切な位置に指をかけることができ、レバー部Lを引く動作が容易になり、疲労感を低減することが可能となる。
【0038】
また、第1凹部31および第2凹部32は、延伸方向に直交する幅方向には凸形状に形成されているため、使用者がレバー部Lに指をかけた際に角が当たらず、指に感じる痛みや不快感を低減することができる。
【0039】
また、鉛直線lと共通接線mが成す角度θを26度以上36度以下の範囲とすることで、レバー部Lを引くために必要な力を小さくし、使用者が力を加えやすくなるため、さらにレバー部Lを引く動作が容易になり、疲労感を低減することが可能となる。
【0040】
また、第1接点Pから鉛直線lまでの距離はαを35mm以上41mm以下の範囲とし、第2接点Qから鉛直線lまでの距離はβは、25mm以上31mm以下の範囲とすることで、使用者がトリガー式噴出器100を把持した状態での指の位置が適切になり、使用者が力を加えやすくなるため、さらにレバー部Lを引く動作が容易になり、疲労感を低減することが可能となる。
【0041】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態におけるトリガー式噴出器およびエアゾール装置について、
図5を参照して説明する。第1実施形態と重複する内容は説明を省略する。
図5は、本実施形態におけるノズル20とトリガー30の構造を示す模式図である。
図5に示したように、本実施形態ではノズル20とトリガー30とが一体に形成されており、内部に装着筒部23および延長筒部22が形成されている。ここで、
図5ではトリガー30の形状として凹部を有しないものを示しているが、第1実施形態と同様に第1凹部31および第2凹部32を備えるものであってもよい。
【0042】
図5中では、トリガー式噴出器における支点部33と装着筒部23の下端である作用部25と、レバー部Lの先端部30aとを、それぞれ梃子の原理での支点、作用点、力点として示している。このとき、支点と作用点の距離をa(mm)とし、支点と力点の距離をb(mm)とした。また、aとbの値を変更した比較例、実施例1,2を用意し、エアゾール容器50のエアゾールバルブ51に装着して、エアゾール組成物を噴射するために必要な力F(kg)を測定した結果を表1に示す。なお、力Fはフルスケール1kgのプッシュプルゲージをトリガー30のP点(
図2)付近に地面に対して平行に30mm/分の速度で押し当てて測定した。
【0043】
【0044】
表1に示したように、比較例は、a=23、b=55であり、F=0.57であった。実施例1は、a=19、b=57であり、F=0.40であった。実施例2は、a=20、b=73であり、F=0.35であった。また、aとbの比率b/aは、比較例で2.4、実施例1で3.0、実施例2で3.7であった。
【0045】
次に、実施例1,2と比較例1のトリガー式噴出器をエアゾール容器50に装着し、被験者1~7がトリガー30を引く動作を繰り返して、連続動作による疲労度をモニターした。繰り返し動作は、各回でエアゾール組成物の噴出を確認するまでトリガー30を引き、10秒間に10回噴射させた。10回の噴射動作後に、疲労度の大小について5段階評価で主観評価した。主観評価の基準は、1:非常に疲れる、2:疲れる、3:やや疲れる、4:あまり疲れない、5:疲れない、とした。
【0046】
表2に、比較例、実施例1,2における官能評価の結果を示す。表2に示したように、実施例1および実施例2では被験者による評価平均が3を上回っており、疲労度が小さいという良好な結果を得た。一方、比較例1では被験者による評価平均が3を下回っており、疲労度が比較的大きいという結果が得られた。
【0047】
【0048】
表2に示したように、比較例1では疲労感が大きいため、支点と作用点の距離をa、支点と力点の距離をbの好ましい比率b/aは、2.5以上4.0以下の範囲である。より好ましくは比率b/aは、2.8以上3.8以下の範囲である。また、比率b/aが5.0以上では、レバー部Lの先端部30aが遠くなりすぎ、レバー部Lに指をかけて力を加え難くなり好ましくない。
【0049】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0050】
100…トリガー式噴出器
10…カバー部
20…ノズル
30…トリガー
40…ストッパー
50…エアゾール容器
11…外装部
12…内筒部
13…装着部
14…挿入口
21…噴出口
22…延長筒部
23…装着筒部
24…台座部
25…作用部
30a…先端部
30b…突起部
30c…根元部
31…第1凹部
32…第2凹部
33…支点部
34…作用上部
51…エアゾールバルブ