(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/00 20060101AFI20240408BHJP
H04N 1/00 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
G03G15/00 303
H04N1/00 002A
(21)【出願番号】P 2019220675
(22)【出願日】2019-12-05
【審査請求日】2022-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】船谷 和弘
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雅博
(72)【発明者】
【氏名】伊▲崎▼ 優
【審査官】三橋 健二
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-222026(JP,A)
【文献】特開2005-084395(JP,A)
【文献】特開平11-231736(JP,A)
【文献】特開2012-088431(JP,A)
【文献】特開2006-140794(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/00
G03G 21/00
H04N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電潜像が形成される感光体と、
前記感光体に形成された静電潜像を所定の極性に帯電したトナーによりトナー像として現像する現像手段と、
現像された前記トナー像を、一次転写領域で像担持体に一次転写する一次転写手段と、
前記像担持体に一次転写された前記トナー像を、二次転写領域でシートに二次転写する二次転写手段と、
前記像担持体に向けて照射光を照射する発光素子と、前記照射光が前記像担持体から反射した反射光を受光する受光素子とを備え、前記反射光に基づき、前記像担持体上に付着したトナーの量に応じて変化する検知信号を出力する検知手段と、
前記シート上のトナーの量を読み取る読み取り手段であって、前記二次転写領域を通過した前記シート上に付着したトナーの量に応じて変化する読み取り信号を出力する読み取り手段と、
前記検知信号の大きさに対する前記読み取り信号の大きさが所定の値を超えた場合、前記静電潜像が形成されていない非画像領域に付着したトナーの極性が、前記所定の極性であると判断し、前記検知信号の大きさに対する前記読み取り信号の大きさが前記所定の値を超えない場合、前記静電潜像が形成されていない非画像領域に付着したトナーの極性が、前記所定の極性の逆極性であると判断する制御手段と、を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記検知信号の大きさと前記読み取り信号の大きさの比率が所定の値を超えた場合、前記静電潜像が形成されていない非画像領域に付着したトナーの極性が、前記所定の極性であると判断し、前記比率が前記所定の値を超えない場合は、前記静電潜像が形成されていない非画像領域に付着したトナーの極性が、前記所定の極性の逆極性であると判断することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記検知手段は、前記感光体と前記現像手段が離間している状態で形成された第一の非画像形成部に対応する前記検知信号を出力する第1の検知と、前記感光体と前記現像手段が当接している状態で形成された第二の非画像形成部に対応する前記検知信号を出力する第2の検知とを行うことを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記読み取り手段は、前記感光体と前記現像手段が離間している状態で前記二次転写領域を通過したシート上の前記第一の非画像形成部に対応する部分を読み取り、前記読み取り信号を出力する第1の読み取りと、前記二次転写領域を通過したシート上の前記第二の非画像形成部に対応する部分を読み取り、読み取り信号を出力する第2の読み取りとを行うことを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記第1の検知、前記第2の検知、前記第1の読み取り、及び前記第2の読み取りに基づき、前記非画像領域に付着したトナーの極性を判断することを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記感光体を帯電する帯電手段を備え、
前記制御手段は、前記非画像領域に付着したトナーの極性に応じて、前記帯電手段に印加する電圧を制御することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記非画像領域に付着したトナーの極性が正極性の場合、前記帯電手段による帯電電位と前記現像手段による現像電位との差が小さくなるように、前記帯電手段に印加する電圧を制御することを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記非画像領域に付着したトナーの極性が負極性の場合、前記帯電手段による帯電電位と前記現像手段による現像電位との差が大きくなるように、前記帯電手段に印加する電圧を制御することを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記像担持体をクリーニングするクリーニング手段を備え、
前記制御手段は、前記非画像領域に付着したトナーの極性に応じて、前記クリーニング手段に回収されるトナー量を推測することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記制御手段は、前記非画像領域に付着したトナーの極性が正極性の場合に前記クリーニング手段に回収されるトナー量より、前記非画像領域に付着したトナーの極性が負極性の場合に前記クリーニング手段に回収されるトナー量の方が少ないと推測することを特徴とする請求項9に記載の画像形成装置。
【請求項11】
静電潜像が形成される感光体と、
前記感光体に静電潜像を形成する帯電手段と、
前記感光体に形成された静電潜像を所定の極性に帯電したトナーによりトナー像として現像する現像手段と、
現像された前記トナー像を、一次転写領域で像担持体に一次転写する一次転写手段と、
前記像担持体に一次転写された前記トナー像を、二次転写領域でシートに二次転写する二次転写手段と、
前記像担持体に向けて照射光を照射する発光素子と、前記照射光が前記像担持体から反射した反射光を受光する受光素子とを備え、前記反射光に基づき、前記像担持体上に付着したトナーの量に応じて変化する検知信号を出力する検知手段と、
前記シート上のトナーの量を読み取る読み取り手段であって、前記二次転写領域を通過した前記シート上に付着したトナーの量に応じて変化する読み取り信号を出力する読み取り手段と、
前記検知信号の大きさに対する前記読み取り信号の大きさが所定の値を超えた場合、前記帯電手段による帯電電位と前記現像手段による現像電位との差が大きくなるように、前記帯電手段に印加する電圧を制御し、前記検知信号の大きさに対する前記読み取り信号の大きさが前記所定の値を超えない場合、前記帯電手段による帯電電位と前記現像手段による現像電位との差が小さくなるように、前記帯電手段に印加する電圧を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項12】
前記制御手段は、前記検知信号の大きさに対する前記読み取り信号の比率が所定の値を超えた場合、前記帯電手段による帯電電位と前記現像手段による現像電位との差が大きくなるように、前記帯電手段に印加する電圧を制御し、前記検知信号の大きさに対する前記読み取り信号の大きさが前記所定の値を超えない場合、前記帯電手段による帯電電位と前記現像手段による現像電位との差が小さくなるように、前記帯電手段に印可する電
圧を制御することを特徴とする請求項11に記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記検知手段は、前記感光体と前記現像手段が離間している状態で形成された第一の非画像形成部に対応する前記検知信号を出力する第1の検知と、前記感光体と前記現像手段が当接している状態で形成された第二の非画像形成部に対応する前記検知信号を出力する第2の検知とを行うことを特徴とする請求項12に記載の画像形成装置。
【請求項14】
前記読み取り手段は、前記感光体と前記現像手段が離間している状態で前記二次転写領域を通過したシート上の前記第一の非画像形成部に対応する部分を読み取り、前記読み取り信号を出力する第1の読み取りと、前記二次転写領域を通過したシート上の前記第二の非画像形成部に対応する部分を読み取り、読み取り信号を出力する第2の読み取りとを行うことを特徴とする請求項13に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像を読み取ることが可能なセンサを有する画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1のように、シートに画像を形成後、シートに形成された画像を読み取る。そして、現像部において感光ドラムの非画像形成部(非露光部)にトナーが飛翔してしまう現象(以下、かぶりとも称する)が発生しているか否かを検知する方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような方法においては、かぶりが発生しているか否かについては検知することができる。しかし、かぶりとなってしまったトナーの極性まではわからない。かぶりとなってしまったトナーは、プラスの極性である場合と、マイナスの極性である場合とがあり、極性の違いによってかぶりの影響具合が変わってしまう。
【0005】
本出願にかかる発明は、上記のような状況を鑑みてなされたものであり、かぶりトナーの極性に応じた画像形成条件の制御を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、静電潜像が形成される感光体と、前記感光体に形成された静電潜像を所定の極性に帯電したトナーによりトナー像として現像する現像手段と、現像された前記トナー像を、一次転写領域で像担持体に一次転写する一次転写手段と、前記像担持体に一次転写された前記トナー像を、二次転写領域でシートに二次転写する二次転写手段と、前記像担持体に向けて照射光を照射する発光素子と、前記照射光が前記像担持体から反射した反射光を受光する受光素子とを備え、前記反射光に基づき、前記像担持体上に付着したトナーの量に応じて変化する検知信号を出力する検知手段と、前記シート上のトナーの量を読み取る読み取り手段であって、前記二次転写領域を通過した前記シート上に付着したトナーの量に応じて変化する読み取り信号を出力する読み取り手段と、前記検知信号の大きさに対する前記読み取り信号の大きさが所定の値を超えた場合、前記静電潜像が形成されていない非画像領域に付着したトナーの極性が、前記所定の極性であると判断し、前記検知信号の大きさに対する前記読み取り信号の大きさが前記所定の値を超えない場合、前記静電潜像が形成されていない非画像領域に付着したトナーの極性が、前記所定の極性の逆極性であると判断する制御手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の構成によれば、かぶりトナーの極性に応じた画像形成条件の制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図5】かぶりトナーの極性を鑑みた画像形成条件の補正方法を示したフローチャート
【
図7】バックコントラストとかぶりトナー量の関係を示した図
【
図8】かぶりトナーの極性を鑑みた回収トナー量の予測方法
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲の発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組合せの全てが本発明の解決手段に必須のものとは限らない。
【0010】
(第1の実施形態)
[画像形成装置]
図1は、画像形成装置100の概略構成図である。画像形成装置100は、中間転写方式、インライン方式を採用した電子写真方式のフルカラープリンタである。画像形成装置100は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック(黒色)の各色の画像を形成するP_y、P_m、P_c、P_kの4つの画像形成ステーションを備えている。これらの4つの画像形成ステーションP_y~P_kは、一定の間隔をおいて一列に配置されている。なお、以下の説明では、参照符号の末尾の英文字_y、_m、_c及び_kは、それぞれ当該部材がイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)のトナー像の形成に関する部材であることを示している。以下の説明において色を区別する必要が無い場合には、末尾の英文字_y、_m、_c及び_kを除いた参照符号を使用することもある。
【0011】
画像形成ステーションPは、感光体としての感光ドラムを備えている。さらに、感光ドラム1の周囲には、帯電手段としての帯電ローラ2、現像手段としての現像装置3、感光ドラムクリーニング装置4が配置されている。なお、現像装置3_y、3_m、3_c、3_kには、それぞれイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのトナーが収納されている。本実施形態においては、いずれの色のトナーも粒径が6μm、正規の帯電極性が負極性となっている。感光ドラムクリーニング装置4には、クリーニングブレード41が備えられている。また、帯電ローラ2と現像装置3との間の図中下方には、露光手段としての露光装置5が配置されている。また、全ての画像形成ステーションPの感光ドラム1には、像担持体としての無端ベルト状の中間転写ベルト6が、1次転写ローラ7によって当接されている。
【0012】
感光ドラム1は、本実施形態においては、負帯電性の有機感光体である。感光ドラム1は、アルミニウムのドラム状の基体上に感光層を有しており、駆動装置(不図示)によって図中矢印の方向(時計方向)に所定のプロセススピードで回転駆動される。なお、ここでいうプロセススピードは、感光ドラム1の周速度(表面移動速度)に相当する。帯電ローラ2は、感光ドラム1に所定の圧接力で接触しており、帯電高圧電源(不図示)によって、所望の帯電電圧を印加され、感光ドラム1の表面を所定の電位に均一に帯電させる。本実施形態においては、感光ドラム1は帯電ローラ2により負極性に帯電される。なお、帯電ローラ2に-1000[V]の電圧が印加され、感光ドラム1の電位は-500[V]に帯電される。
【0013】
露光装置5は、レーザスキャナであり、画像情報に対応したレーザ光を照射し、感光ドラム1の表面を露光する。これにより、感光ドラム1の表面に画像情報に応じた静電潜像が形成される。現像装置3は、本実施形態においては、現像方式として接触現像方式を用いている。現像装置3は、現像ローラ31を備えている。感光ドラム1上に形成された静電潜像は、現像ローラ31と感光ドラム1との対向部(現像部)において、現像ローラ31によって搬送されたトナーによってトナー像として現像される。このとき、現像ローラ31には、現像高圧電源(不図示)により現像電圧が印加される。なお、現像電圧は-350[V]に設定されている。
【0014】
本実施形態においては、反転現像方式にて、静電潜像を現像する。すなわち、帯電処理後の感光ドラム1における、露光によって電荷が減衰した部分に、感光ドラム1の帯電極性と同極性に帯電したトナーを付着させることで、静電潜像をトナー像として現像する。なお、感光ドラム1を露光することにより、感光ドラム1の電位は-100[V]まで減衰する。また、全ての画像形成ステーションPの現像装置3の現像ローラ31と感光ドラム1は、当接状態及び離間状態を切り替えることが可能である。また、現像ローラ31には、トナーを供給するトナー供給ローラ32が接している。トナー供給ローラ32により現像ローラ31にトナーが供給されている。なお、本実施形態においては、一成分非磁性接触現像法を採用したが、二成分非磁性接触や非接触現像法を使用してもよい。また、トナーは、重合法により生成された重合トナーである。
【0015】
中間転写ベルト6は、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PVdF(弗化ビニリデン樹脂)、ETFE(四弗化エチレン-エチレン共重合樹脂)、ポリイミド、PET(ポリエチレンテレフタレート)、ポリカーボネート等の樹脂単層からなる。これらの樹脂を無端ベルト状に構成し、体積抵抗率1×10^10Ω・cm程度に抵抗調整したものを好適に用いることができる。あるいは、上記基層の表面に例えばアクリル等のコート層を設けた多層構成のものを、無端ベルト状に構成したものを好適に用いることができる。
【0016】
中間転写ベルト6は、複数の支持部材としての駆動ローラ8、テンションローラ9に掛け渡されており、駆動ローラ8に駆動力が伝達されることで、図中R2の方向(反時計回り)に回転する。なお、中間転写ベルト6は感光ドラム1の周速度と略同一の所定のプロセススピードで回転する。1次転写ローラ7は、中間転写ベルト6の内周面側において、画像形成ステーションPの感光ドラム1に対向して設けられている。
【0017】
1次転写ローラ7としては、ポリウレタンゴムやEPDM(エチレン・プロピレン・ジエン)、NBR(ニトリルブタジエンゴム)などから成るスポンジゴムなどの弾性部材で構成されたものを好適に用いることができる。1次転写ローラ7は、中間転写ベルト6を感光ドラム1に向けて押圧して、感光ドラム1と中間転写ベルト6とが圧接する一次転写領域を形成し、トナー像を一次転写する。すなわち、1次転写ローラ7は、1次転写部にて、中間転写ベルト6を介して感光ドラム1に当接する。そして、1次転写ローラ7は、中間転写ベルト6に従動して回転する。なお、全ての1次転写ローラ7と感光ドラム1は、当接状態及び離間状態を切り替えることが可能である。
【0018】
1次転写ローラ7には、1次転写高圧電源(不図示)が接続され、所定のタイミングで所定の1次転写電圧が印加される。感光ドラム1上に形成されたトナー像は、1次転写高圧電源によって所定の1次転写電圧が印加された1次転写ローラ7により、中間転写ベルト6上に1次転写される。
【0019】
2次転写ローラ10は、駆動ローラ8に対向する位置において中間転写ベルト6に圧接し、二次転写領域を形成し、トナー像を二次転写する。すなわち、2次転写ローラ10は、中間転写ベルト6を介して駆動ローラ8と当接する。2次転写ローラ10には、2次転写高圧電源(不図示)が接続されている。そして、2次転写ローラ10には、2次転写高圧電源から、所定のタイミングで所定の2次転写電圧が印加される。中間転写ベルト6上に形成されたトナー像は、2次転写高圧電源によって所定の2次転写電圧が印加された2次転写ローラ10により、2次転写部を通過するシートSに2次転写される。給紙カセット11から給紙されたシートSは、中間転写ベルト6上に形成されたトナー像が2次転写部に到達するタイミングに合わせて、搬送ローラ12、レジストローラ対13に搬送されて、2次転写部に到達する。
【0020】
トナー像が2次転写されたシートSは、定着器14に搬送される。定着器14は、不図示の定着ヒータと定着ヒータの温度を測定する不図示のサーミスタを内蔵した定着フィルム141と、定着フィルム141に圧接するための加圧ローラ142を備えたフィルム加熱方式の定着器である。そして、シートSは、定着器14により加熱及び加圧されることによりトナー像が定着されて、排紙ローラ対15により排紙トレイへと排出される。
【0021】
なお、本実施形態における画像形成装置100では、シートSの両面に画像を形成する両面印刷を行うことが可能である。シートSに両面印刷を行う場合、定着器14を通過したシートSの後端が両面フラッパ16の位置を通過した後に、両面フラッパ16の位置を切り替える。これにより、反転されてきたシートSを両面搬送路に搬送するように搬送路を切り替える。また、排紙ローラ対15の回転方向を、不図示の反転クラッチにより両面搬送路側に切り替える。これにより、シートSの搬送方向は反転し、両面搬送路に向けて搬送される。
【0022】
両面搬送路では、両面搬送ローラ対18と本体合流ローラ対19によりシートSが搬送され、再びレジストローラ対13までシートSが搬送される。レジストローラ対13以降は、上述した画像形成と同様の処理が行われ、両面に画像が形成されたシートSは、排紙トレイに排紙される。
【0023】
なお、本実施形態においては、両面搬送路に読み取り手段としてのContact Image Sensor(以下、CISとも称する)17が配置されているCIS17は、シートSの表面を読み取ることで、画像情報を取得することができる。CIS17により、シートSの表面をスキャンする場合は、両面搬送路へシートSを搬送し、両面搬送ローラ対18を通過したタイミングに基づき、読み取りを行う。CIS17は、搬送されているシートSの画像を時系列のデジタル画素信号として読み取りし、CIS17内のメモリにスキャンした画像データとして蓄積する。画像読み取りが完了したシートSは、排紙トレイに排紙される。
【0024】
中間転写ベルト6の外周面側において、テンションローラ9の近傍には、中間転写ベルト6の表面に残った転写残トナーを除去して回収するための中間転写ベルトクリーニング装置20が設けられている。中間転写ベルトクリーニング装置20は、クリーニングブレード201とトナーボックス202を備えている。中間転写ベルト6の表面に残った転写残トナーはクリーニングブレード201によってかぎ取られ、トナーボックス202に回収される。また、駆動ローラ8の近傍には、光学式の濃度センサ21が配置されている。濃度センサ21は、中間転写ベルト6上に形成された検知用画像(パッチ)の濃度に関する情報を検知する。なお、これら一連の画像形成に関する処理は、制御手段としてのエンジン制御部300によって制御される。
【0025】
[濃度センサ]
図2を用いて、濃度センサについて説明する。
図2(a)に示すように、濃度センサ21は、LEDなどの発光素子211と、フォトダイオードなどの受光素子212を備える。発光素子211による照射光は、中間転写ベルト6の法線方向に対し30°の角度で入射し、検知位置213で反射される。受光素子212は照射光と同じ角度で反射された反射光を検知する位置に配置されており、鏡面反射光(正反射光)を検知する。なお、受光素子212からの出力電圧は、その特性として反射光の強度が強くなるほど電圧が高くなる。
【0026】
次に、濃度センサ21で中間転写ベルト6上に形成された検知用画像を検知した場合の反射光の特性について説明する。下地となる中間転写ベルト6に照射された光は、
図2(b)に示すように中間転写ベルト6の材質固有の屈折率とその表面状態に応じた反射率で反射され、受光素子212で検知される。ここにトナー像が形成されると、
図2(c)に示すようにトナーがある部分の下地が隠され反射光量が減少する。したがって、
図3に示すように検知用画像のトナー量が増加すると、反射光量は減少する。この減少量を基に検知用画像の単位面積当たりの重量(以下、M/Sと呼ぶ)を求める。実際には、中間転写ベルト6の使用度合いによって下地の表面状態が変動することで反射光量も変動する。よって、検知用画像を検知した反射光量を、下地を検知した反射光量で規格化した後、M/S情報に変換する。中間転写ベルト6の表面状態は場所によってムラがあり、反射光量が異なっている。そのため、検知用画像の検知位置と規格化に用いる下地の検知位置とを精度よく合わせることも、濃度の検知精度を向上させる上で重要である。
【0027】
このような、鏡面反射光を検知するタイプの濃度センサ21は、検知用画像からの反射光を検知しない検知方式のため、黒色の中間転写ベルト6上に形成された黒色の検知用画像の濃度も検知することができる。一般的に、中間転写ベルト6の色は抵抗調整のためカーボンブラックが分散されるため、黒色、又は濃いグレーとなることが多いので、濃度センサ21としては、鏡面反射光を検知する方式が望ましい。
【0028】
[一般的なシート上のかぶりトナー量の測定方法]
次に、一般的なシートS上のかぶりトナー量を測定する方法について説明する。かぶりトナー量は、例えば東京電色社製の反射濃度計TC-6DXにより測定される。このような、反射濃度計を用いたかぶりトナー量の測定方法を説明する。まず、画像形成が行われる前のシートの反射濃度を測定する。この時、グリーン・ブルー・アンバーの3種類のフィルターを使用し、それぞれの反射濃度Gr0・Bl0・Am0を測定する。次に、同じシートに画像形成を行い、画像形成後のシートの非画像部において、再度反射濃度Gr1・Bl1・Am1を測定する。ここで、グリーンのフィルターではマゼンタトナー、ブルーのフィルターではイエロートナー、アンバーのフィルターではシアントナーのかぶりが測定される。
【0029】
本実施形態においては、3種類のフィルターで測定された画像形成前後の反射率の差をかぶりトナー量Ks[%]と定義し、以下の式で計算する。
イエローのかぶりトナー量Ks_y=Bl0-Bl1・・・(1)
マゼンタのかぶりトナー量Ks_m=Gr0-Gr1・・・(2)
シアンのかぶりトナー量Ks_c=Am0-Am1・・・(3)
【0030】
なお、ブラックトナーのかぶり量はいずれのフィルターを用いても測定可能であるが、ここでは一例としてグリーンのフィルターを用いて測定する。
ブラックのかぶりトナー量Ks_k=Gr0-Gr1・・・(4)
【0031】
[本実施形態におけるシート上のかぶりトナー量の測定方法]
画像形成装置を利用している状況において、上記のように反射濃度計を用いてシートS上のかぶりトナー量を測定するのは煩雑である。そこで、本実施形態においては、CIS17を用いてシートS上のかぶりトナー量を測定する。また、さらに濃度センサ21を用いて、中間転写ベルト6上におけるかぶりトナー量も測定する。すなわち、中間転写ベルト6上、及びシートS上のそれぞれにおいて、かぶりトナー量を測定する。さらに、本実施形態においては、中間転写ベルト6上、及びシートS上で検知したかぶりトナー量を比較することで、かぶりの極性も判別する。
【0032】
[CISでのかぶりトナー量の測定方法]
CIS17を用いたかぶりトナー量の測定方法について説明する。まず、シートSをCIS17まで搬送し、シートSの測定を行う。この場合、現像装置3を離間状態とすることで、シートSにトナーが付着していない状態、すなわち画像形成前のシートSの色を測定できる。ここで得られるシートの色はRGB情報であり、画像形成前のシートSのRGB情報(R0,G0,B0)を第1の読み取り結果として測定することができる。
【0033】
次に、同じシートSを再度CIS17まで搬送し、シートSを再度測定する。この場合、現像装置3を当接状態とし、帯電電圧、現像電圧、1次転写電圧、2次転写電圧は、画像形成状態と同じ電圧を印加する。しかし、静電潜像の形成は行わない。このようにすることで、シートSに画像形成後の余白部(非画像領域)と同じかぶりトナーが付着した状態とすることができる。この状態のシートSの色をCIS17で測定する。
【0034】
また、この時の各ステーションにおける現像装置3の当接動作を制御することにより、シートS上の所定の領域に、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのそれぞれのトナーのみでかぶりが発生する状態としている。この当接動作の制御については後述する。ここで得られる測定結果は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのそれぞれのかぶりトナーのRGB情報(R_y,G_y,B_y)、(R_m,G_m,B_m)、(R_c,G_c,B_c)、(R_k,G_k,B_k)である。
【0035】
次に、かぶりトナーのRGB情報と、画像形成前のシートSのRGB情報との色差dE_y、dE_m、dE_c、dE_kを計算する。なお、本実施形態における色差はRGB空間でのユークリッド距離としている。
【0036】
dE_y=((R_y-R0)^2+(G_y-G0)^2+(B_y-B0)^2)^0.5・・・(5)
dE_m=((R_m-R0)^2+(G_m-G0)^2+(B_m-B0)^2)^0.5・・・(6)
dE_c=((R_c-R0)^2+(G_c-G0)^2+(B_c-B0)^2)^0.5・・・(7)
dE_k=((R_k-R0)^2+(G_k-G0)^2+(B_k-B0)^2)^0.5・・・(8)
【0037】
この色差は、かぶりトナーによる色の変化を表しており、かぶりトナーの量と相関するものである。
【0038】
次に、色差dE_y、dE_m、dE_c、dE_kを、変換テーブルT1を用いてかぶりトナー量情報Ks_y、Ks_m、Ks_c、Ks_kに変換する。この変換テーブルT1は、あらかじめCIS17で測定した色差情報と反射濃度計TC-6DXで測定したかぶり量情報の相関をとり、作成される。変換したKs_y、Ks_m、Ks_c、Ks_kを、CIS17で測定された第2の読み取り結果としてのシートS上のかぶりトナー量とする。
【0039】
[濃度センサ21でのかぶりトナー量の測定方法]
次に、濃度センサ21を用いたかぶりトナー量の測定方法について説明する。濃度センサ21は、中間転写ベルト6を駆動した状態で、中間転写ベルト6からの反射光量に応じた出力電圧V0を第1の検知結果として測定する。この場合、現像装置3を離間状態とすることで、中間転写ベルト6にトナーが付着していない状態の反射光量を測定することができる。
【0040】
次に、現像装置3を当接状態とし、再度中間転写ベルト6からの反射光量を測定する。この場合、帯電電圧、現像電圧、1次転写電圧は、画像形成状態と同じ電圧を印加する。しかし、静電潜像の形成は行わない。このようにすることで、かぶりトナーが中間転写ベルト6に付着した状態の反射光量を第2の検知結果として測定することができる。
【0041】
また、この時の各ステーションにおける現像装置3の当接動作を制御することにより、中間転写ベルト6上の所定の領域に、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのそれぞれのトナーのみでかぶりが発生する状態としている。この当接動作の制御については後述する。ここで得られる測定結果は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのそれぞれのかぶりトナーが付着した状態の中間転写ベルト6からの反射光量に応じた出力電圧V_y、V_m、V_c、V_kである。
【0042】
次に、かぶりトナーが中間転写ベルト6に付着した状態の反射光量に応じた出力電圧V_y、V_m、V_c、V_kを、中間転写ベルト6にトナーが付着していない状態の反射光量に応じた出力電圧V0で規格化する。規格化した反射光量に応じた出力電圧は、それぞれV_y/V0、V_m/V0、V_c/V0、V_k/V0となる。
【0043】
規格化した反射光量に応じた出力電圧を、変換テーブルT2を用いて単位面積当たりのトナー重量wi_y、wi_m、wi_c、wi_kに変換する。この変換テーブルT2は、あらかじめ中間転写ベルト6上の単位面積当たりのトナー重量と濃度センサ21で測定される規格化した反射光量に応じた出力電圧の相関をとり、作成される。
【0044】
次に、中間転写ベルト6上のかぶりトナーの単位面積当たりのトナー重量wi_y、wi_m、wi_c、wi_kを、変換テーブルT3を用いて反射濃度計で測定したかぶりトナー量に相当する情報Ki_y、Ki_m、Ki_c、Ki_kに変換する。この変換テーブルT3は、あらかじめ転写材S上の単位面積当たりのトナー重量と反射濃度計による測定結果の相関をとり、作成される。すなわち、ここで得られるかぶりトナー量情報Ki_y、Ki_m、Ki_c、Ki_kは、中間転写ベルト6上のかぶりトナーがすべてシートSに転写された場合に、CIS17で測定されるかぶりトナー量に相当する。
【0045】
[かぶりトナー量測定動作の詳細]
本実施形態においては、CIS17を用いたかぶりトナー量の測定と、濃度センサ21を用いたかぶりトナー量の測定を、並行して行う。かぶりトナー量の測定を行うタイミングは任意に設定可能であるが、例えば画像形成を100枚行ったタイミングで実施するようにすることができる。
【0046】
以下、かぶりトナー量の測定動作について説明する。かぶりトナー量の測定が指示されると、中間転写ベルト6の駆動を開始する。そして、濃度センサ21の発光素子211を発光させ、中間転写ベルト6からの反射光を受光素子212で測定する。ここでは一例として、中間転写ベルト6が10cm移動する期間の測定を行い、その間の受光素子212からの出力電圧の平均値を、中間転写ベルト6にトナーが付着していない状態の出力V0とする。
【0047】
出力V0の測定と並行して、シートSの搬送を開始する。シートSは、現像ローラ31を離間状態としている状態で両面搬送路に搬送される。そして、両面搬送路を搬送されているシートSをCIS17により測定する。本実施形態においては、一例としてシートSが10cm移動する期間の測定を行い、その間のCIS17による測定結果の平均値を画像形成前のシートSの色(R0,G0,B0)とする。測定を行ったシートSは、レジストローラ対13に到達したタイミングで、搬送を停止される。
【0048】
次に、現像ローラ31と感光ドラム1を当接状態とする。この時、すべての画像形成ステーションの現像ローラ31を同時に感光ドラム1に当接させる。そして、感光ドラム1が画像形成ステーションPの間隔と同じ距離だけ駆動したタイミングで、現像ローラ31を同時に離間させる。このような当接動作の制御を行うことにより、中間転写ベルト6上には
図4(a)に示したようなイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのそれぞれのかぶりトナーのみが付着した領域が形成される。
【0049】
また、この場合、現像ローラ31、帯電ローラ2、1次転写ローラ7、2次転写ローラ10には画像形成時と同じ電圧が印加されている。すなわち、現像部では画像形成時と同程度のかぶりトナーが発生する。1次転写部では画像形成時と同程度のかぶりトナーが中間転写ベルト6に転写される。2次転写部では画像形成時と同程度のかぶりトナーがシートSに転写される。なお、ここでは現像ローラ31の当接離間制御により中間転写ベルト6、及びシートS上のかぶりトナー付着領域を制御する構成とした。しかし、1次転写部の当接離間を制御することでも、同様の制御は可能である。この場合、1次転写部が離間されている状態で現像当接を行った後、すべての画像形成ステーションで同時に1次転写部の当接を行う。感光ドラム1が画像形成ステーションPの間隔と同じ距離だけ駆動されたタイミングですべての1次転写部を同時に離間する。
【0050】
中間転写ベルト6上のかぶりトナーが付着した領域が、濃度センサ21の位置に到達すると、再び濃度センサ21の発光素子211が発光し中間転写ベルト6からの反射光を受光素子212で測定する。ここでは中間転写ベルト6上のイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの個別のかぶりトナーが付着した領域ごとに出力電圧を平均し、かぶりトナーが付着した状態の中間転写ベルト6からの反射光量出力V_y、V_m、V_c、V_kを得る。
【0051】
次に、レジストローラ対13で搬送を停止されていたシートSの搬送を再開する。このとき、中間転写ベルト6上のかぶりトナーが付着した領域の先端が2次転写部に到達するタイミングと、シートSの先端が2次転写部に到達するタイミングが一致するよう制御が行われている。すなわち、2次転写部では先述の通り画像形成時と同程度のかぶりトナーがシートSに転写される。これにより、シートS上には
図4(b)に示すようなイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの個別のかぶりトナーが付着した領域が形成される。
【0052】
かぶりトナーが2次転写されたシートSは、再び両面搬送路に搬送され、再びCIS17により測定される。ここではシートS上のイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの個別のかぶりトナーが付着した領域ごとに測定結果を平均する。そして、かぶりトナーのRGB情報(R_y,G_y,B_y)、(R_m,G_m,B_m)、(R_c,G_c,B_c)、(R_k,G_k,B_k)を求める。CIS17により再び測定されたシートSはレジストローラ対13、2次転写部、定着器14へと搬送され、排紙トレイに排出される。このようにして得られたそれぞれの値から、先に説明したかぶりトナー量を求める手順を用いて、中間転写ベルト6上のかぶりトナー量、及びシートS上のかぶりトナー量を求める。
【0053】
[画像形成条件の補正]
画像形成条件の補正動作は、各色のトナーで共通する部分が多い。従って、以下の説明においては、特に区別を要しない場合は、いずれかの色用に設けられた要素であることを表すために符号に与えた添え字_y、_m、_c、_kは省略して総括的に説明する。
【0054】
本実施形態においては、中間転写ベルト6上のかぶりトナー量情報Ki、及びシートS上のかぶりトナー量情報Ksに基づいて画像形成条件を補正しかぶりトナーの発生を抑制する方法について説明する。なお、本実施形態においては、画像形成条件として感光ドラム1の非露光部電位と現像バイアスとの差(以下、バックコントラストとも称する)を制御する方法について説明する。
【0055】
かぶりの改善を図るには、かぶりトナーの電気極性を把握することが重要である。例えば、かぶりトナーが所定の帯電極性とは異なる極性に帯電している場合(以下、反転かぶりとも称する)、バックコントラストを小さくすることでかぶりを抑制できる。逆に、かぶりトナーが所定の帯電極性と同じ極性に帯電している場合(以下、地かぶりとも称する)、バックコントラストを大きくすることでかぶりを抑制できる。このように、かぶりトナーの電気極性を把握したうえで、適切にバックコントラストを補正することでかぶりを抑制することができる。以下、かぶりトナーの極性を鑑みた画像形成条件の補正方法について、
図5のフローチャートを用いて説明する。
【0056】
S101において、エンジン制御部300は中間転写ベルト6上のかぶりトナー量情報Kiを参照し、所定値を超えているか否かを判断する。本実施形態では、中間転写ベルト6上のかぶりトナー量情報Kiが1[%]より多いか否かを判断する。かぶりトナー量情報Kiが1[%]以下である場合、改善の必要がない軽微なかぶりであると判断し、画像形成条件の補正動作を終了する。かぶりトナー量情報Kiが1[%]を超えていた場合、S102に進む。
【0057】
S102において、エンジン制御部300はシートS上のかぶりトナー量情報Ksと、中間転写ベルト6上のかぶりトナー量情報Kiの比であるKs/Kiを求める。Ks/Kiが0.5以上である場合、地かぶりが発生していると判断して、S103に進む。Ks/Kiが0.5未満である場合、反転かぶりが発生していると判断して、S104に進む。
【0058】
なお、感光ドラム1上の電位の模式図を
図6に示す。また、バックコントラストとかぶりトナー量の関係を
図7に示す。
図6に示すように、バックコントラストとは、現像電圧(現像電位)と非露光部電位VD(帯電電位)との電位差のことを示している。
図7に示すように、このバックコントラストが小さい場合には地かぶりのかぶりトナーの量が増えてしまう。反対に、このバックコントラストが大きい場合には、反転かぶりのかぶりトナー量が増えてしまう。
【0059】
S103において、エンジン制御部300は地かぶりが発生している場合の補正を行う。地かぶりが発生している場合は、バックコントラストを大きくすることで現像ローラ31上のネガ極性(負極性)のトナーが非露光部電位VDへ向けて付着することを抑制する。本実施形態においては、表1を参照してKs/Kiの値に応じた補正電圧値を帯電電圧に加えることで、非露光部電位VDを補正し地かぶりの発生を抑制するバックコントラストとなるようにしている。
【0060】
【0061】
S104において、エンジン制御部300は反転かぶりが発生している場合の補正を行う。反転かぶりが発生している場合は、バックコントラストを小さくすることで現像ローラ31上のポジ極性(正極性)のトナーが非露光部電位VDへ向けて付着することを抑制する。本実施形態においては、表2を参照してKs/Kiの値に応じた補正電圧値を帯電電圧に加えることで、非露光部電位VDを補正し、反転かぶりの発生を抑制するバックコントラストとなるようにしている。
【0062】
【0063】
S105において、エンジン制御部300はイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのすべての色について補正が完了したか否かを判断する。補正が完了していない場合は、S101に戻り、補正が完了している場合はフローを終了する。
【0064】
このように、CIS17で測定したシートS上のかぶりトナー量と、濃度センサ21で測定したかぶりトナー量と、を比較することでかぶりトナーの電気極性を把握することができる。把握したかぶりトナーの電気極性に応じて、画像形成条件の補正を行うことで、かぶりトナーの発生を抑制することができる。
【0065】
(第2の実施形態)
先の第1の実施形態においては、かぶりトナーの電気極性を把握し、画像形成条件の補正を行うことについて説明した。本実施形態においては、かぶりトナーの電気極性を把握し、トナーボックス202に回収される廃トナー量を予測する方法について説明する。なお、画像形成装置など先の第1の実施形態と同様の構成については、本実施形態においては、詳しい説明は省略する。
【0066】
本実施形態においては、かぶりトナー量の測定結果に基づき、トナーボックス202に回収されたトナーの量を予測し、トナーボックス202の残寿命を予測することを特徴としている。
【0067】
[トナーボックスの構成]
トナーボックス202に回収されるトナーの満杯検知は、光学センサによる検知と画像の印字率情報に基づいて行われる。具体的には、光学センサにてトナーボックス202に所定量以上のトナーが回収されたことが検知されると、トナーボックス202が満杯近くになっていることを報知する。そして、交換用のトナーボックス202の準備を促す。次に、画像の印字率情報に基づいた、トナーボックス202内に回収されるトナーの増加量を積算し、積算値が所定値を超えたところで画像形成装置の動作を停止し、トナーボックス202からのトナー溢れを防止する。
【0068】
以下、この算出について具体的に説明する。まず、1ページ当たりにトナーボックス202に回収される転写残トナーの重量piを求める。piは印字率情報ri、感光ドラム1上に現像されるトナーの単位面積当たりの重量Dと所定の転写効率nから、以下の式(9)で求められる。
pi=D×ri×(1-n)・・・(9)
【0069】
なお、感光ドラム1上に現像されるトナーの単位面積当たりの重量Dと所定の転写効率nは、あらかじめ実験で得られた数値である。
【0070】
次に、1ページ当たりにトナーボックス202に回収されるかぶりトナーの重量、すなわちシートSに2次転写されず中間転写ベルト6上に残留して、トナーボックス202に回収されるかぶりトナーの重量Uiを求める。Uiは所定の単位面積当たりのかぶりトナーの重量u、現像ローラ31の長手幅L、1ページ当たりの中間転写ベルト6の走行距離H、シートSの面積siと印字率情報riから、以下の式(10)で求められる。
Ui=u×(L×H-si×ri)・・・(10)
【0071】
なお、単位面積当たりのかぶりトナーの重量uは、あらかじめ実験で得られた数値である。
【0072】
次に、1ページ当たりのトナーボックス202のトナー増加量Piを求める。Piは1ページ当たりにトナーボックス202に回収される転写残トナーとかぶりトナーの合計重量であり、以下の式(11)で求められる。
Pi=pi+Ui・・・(11)
【0073】
1ページ印刷するごとに、式(11)を用いてPiを積算し、その積算値が所定値を超えたところで画像形成装置による画像形成動作を停止する。
【0074】
しかしながら、トナーボックス202に回収されるかぶりトナーの重量は常に一定ではなく、かぶりトナーの電気極性の影響を受けて変化する。具体的には、反転かぶりの場合、かぶりトナーはシートSに転写されにくいため、2次転写部を通過してトナーボックス202に回収される量が、相対的に増える。逆に、地かぶりの場合、かぶりトナーはシートSに転写されやすいため、トナーボックス202に回収される量が、相対的に減る。これは、シートSに相対しない領域のかぶりトナーについても同様の傾向がある。反転かぶりの場合、かぶりトナーは正の電圧が印加されている2次転写ローラ10に付着しにくいため、2次転写部を通過してトナーボックス202に回収される量が、相対的に増える。逆に、地かぶりの場合、かぶりトナーは正の電圧が印加されている2次転写ローラ10に付着しやすいため、トナーボックス202に回収される量が、相対的に減る。
【0075】
かぶりトナーの極性が不明な場合、かぶりトナーがすべてトナーボックス202に回収されるとして積算量を算出する。このような前提で回収されるかぶりトナーの積算量を算出していると、例えば地かぶりが発生している場合においては、算出した積算量に誤差が発生してしまう。この誤差が積算される量が増えるほど、例えばトナーボックス202にまだ空きがある状態で、トナーボックス202の交換が促されてしまう可能性がある。さらに、かぶりトナーの量、及び極性は、トナーの使用度合、中間転写ベルト6の使用度合、画像形成装置が使用される雰囲気環境など様々の要因の影響を受けて変化しうる。よって、事前の実験に基づく、かぶりトナーの極性の予測は難しい。
【0076】
本実施形態においては、先の第1の実施形態で説明した方法と同様に、中間転写ベルト6上のかぶりトナー量情報Kiと、シートS上のかぶりトナー量情報Ksを比較することで、かぶりトナーの電気極性を判別する。そして、かぶりトナーの電気極性に応じて、トナーボックス202に回収されるかぶりトナー量を予測し、1ページ印刷するごとに積算されるPiの値を求める。
【0077】
[回収トナー量の予測]
回収トナー量の予測は、各色のトナーで共通する部分が多い。従って、以下の説明においては、特に区別を要しない場合は、いずれかの色用に設けられた要素であることを表すために符号に与えた添え字_y、_m、_c、_kは省略して総括的に説明する。以下、かぶりトナーの極性を鑑みた回収トナー量の予測方法について、
図8のフローチャートを用いて説明する。
【0078】
S201において、エンジン制御部300は中間転写ベルト6上のかぶりトナーの単位面積当たりのトナー重量wiを求める。なお、トナー重量wiの求め方は、先の第1の実施形態で説明した方法と同様であるため、ここでの詳しい説明は省略する。
【0079】
S202において、エンジン制御部300はシートS上のかぶりトナー量Ksを求める。なお、Ksの求め方も先の第1の実施形態で説明したものと同様であるため、ここでの詳しい説明は省略する。ここで、Ksは反射濃度計で測定したかぶりトナー量であり、これを第1の実施形態で説明した変換テーブルT3を用いて、単位面積当たりのトナー重量wsに変換する。
【0080】
S203において、エンジン制御部300は中間転写ベルト6上のかぶりトナーの単位面積当たりの重量wiと、シートS上のかぶりトナーの単位面積当たりの重量wsの差分wを求める。すなわち、wはトナーボックス202に回収されるかぶりトナーの単面積当たりの重量であり、式(12)で計算される。
w=wi-ws・・・(12)
【0081】
S204において、エンジン制御部300はイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのすべての色についてトナーボックス202に回収されるかぶりトナー量の算出を行ったか否かを判断する。すべての色の算出が行われると、S205において、エンジン制御部300はトナーボックス202に回収されるすべての色を合わせたかぶりトナーの単位面積当たりの重量Wを式(13)により求める。
W=w_y+w_m+w_c+w_k・・・(13)
【0082】
S206において、エンジン制御部300は所定のかぶりトナーの単位面積当たりの重量uを重量Wに置き換え、1ページごとにトナーボックス202に回収されるトナーの重量Piを式(14)により求める。
Pi=pi+W×(L×H-si×ri)・・・(14)
【0083】
S207において、エンジン制御部300は1ページごとに求めたPiを積算し、積算値が所定値を超えたか否かを判断する。積算値が所定値に達していなければ、S208において、エンジン制御部300は次のページの印刷を行うために、iに1をインクリメントする。そして、S201に戻って、かぶりトナー量の推測を行う。積算値が所定値に達していれば、S209において、エンジン制御部300は画像形成を停止して、一連の処理を終了する。
【0084】
このように、CIS17で測定したシートS上のかぶりトナー量と、濃度センサ21で測定したかぶりトナー量と、を比較することでかぶりトナーの電気極性を把握することができる。把握したかぶりトナーの電気極性に応じて、トナーボックス202に回収されるかぶりトナー量を推測することができ、トナーボックス202の残寿命をより精度よく求めることができる。つまり、まだ使用できるトナーボックス202が交換されてしまうといった事態を抑制することができる。
【符号の説明】
【0085】
1 感光ドラム
3 現像装置
6 中間転写ベルト
7 1次転写ローラ
10 2次転写ローラ
17 CIS
21 濃度センサ
300 エンジン制御部