(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】潤滑剤の給脂方法及び給脂装置
(51)【国際特許分類】
F16N 11/10 20060101AFI20240408BHJP
F16N 13/00 20060101ALI20240408BHJP
F16N 29/00 20060101ALI20240408BHJP
F16N 31/00 20060101ALI20240408BHJP
F16H 57/04 20100101ALI20240408BHJP
【FI】
F16N11/10
F16N13/00
F16N29/00 E
F16N31/00 Z
F16H57/04 E
F16H57/04 J
(21)【出願番号】P 2019220895
(22)【出願日】2019-12-06
【審査請求日】2022-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】519436264
【氏名又は名称】住友重機械精機販売株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】竹内 堅悟
(72)【発明者】
【氏名】河田 和正
【審査官】角田 貴章
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05456295(US,A)
【文献】独国特許出願公開第19523768(DE,A1)
【文献】特開2015-064065(JP,A)
【文献】特開2006-242365(JP,A)
【文献】米国特許第05808187(US,A)
【文献】特開2012-072809(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16N 11/08-11/10
29/00
31/00
F16H 57/00-57/12
B60P 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑剤が封入される潤滑剤封入装置に対する潤滑剤の給脂方法であって、
前記潤滑剤封入装置の給脂口に潤滑剤を供給可能にする工程と、
前記潤滑剤封入装置の吸引口に吸引パイプを差込み、当該吸引パイプの先端を、潤滑剤を供給する所望のレベルに合わせる設定工程と、
前記吸引パイプに負圧を掛けて前記給脂口から潤滑剤を吸引する工程と、
を含む潤滑剤の給脂方法。
【請求項2】
前記潤滑剤の供給後、前記給脂口を塞いだ後に、前記吸引パイプにかけた負圧を解除する工程を更に含み、
前記潤滑剤を供給可能にする工程では、
前記吸引口よりも鉛直方向に低い位置に設けられた前記給脂口から潤滑剤を供給可能にする、
請求項1記載の潤滑剤の給脂方法。
【請求項3】
前記吸引パイプから潤滑剤が排出された後に、前記給脂口への潤滑剤の供給を停止する工程を更に含む、請求項1又は請求項2に記載の潤滑剤の給脂方法。
【請求項4】
前記設定工程では、前記潤滑剤封入装置の前記吸引口に前記吸引パイプを上方から差し込み、当該吸引パイプの先端を所望のレベルに合わせる、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の潤滑剤の給脂方法。
【請求項5】
前記潤滑剤を供給可能にする工程では、
潤滑剤容器と前記給脂口とをつなぐホースを介して潤滑剤を供給可能にする、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の潤滑剤の給脂方法。
【請求項6】
前記設定工程では、
前記吸引パイプを前記潤滑剤封入装置の本体部と連通する潤滑剤タンクに差し込む、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の潤滑剤の給脂方法。
【請求項7】
前記設定工程では、
前記潤滑剤タンクに設けられた窓から内部を見て、前記吸引パイプの先端の位置を所望のレベルに合わせる、
請求項6記載の潤滑剤の給脂方法。
【請求項8】
潤滑剤が封入される潤滑剤封入装置に対して潤滑剤を給脂する潤滑剤の給脂装置であって、
前記潤滑剤封入装置に設けられた吸引口から潤滑剤を供給する所望のレベルまで挿入可能な吸引パイプと、
前記吸引パイプに負圧を掛ける負圧発生器と、
前記吸引パイプと前記吸引口との間を密封する密封部材と、
を備え
、
前記密封部材に対して、前記吸引パイプの先端の位置を調整可能であり、
前記吸引パイプの先端の位置を調整することで潤滑剤の供給する所望のレベルを調整可能である潤滑剤の給脂装置。
【請求項9】
前記吸引パイプと前記負圧発生器との間に、前記吸引パイプから吸引した空気と潤滑剤とを分離して潤滑剤を蓄積するタンクを更に備える、
請求項8記載の潤滑剤の給脂装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑剤封入装置に潤滑剤を供給する給脂方法及び給脂装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、遊星歯車機構を備えた減速機へグリスを注入するために、遊星歯車機構の収容空間に連通する吸引孔から空気を吸引し、別の注入孔からグリスが供給する方法が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のグリスの注入方法によれば、遊星歯車機構の収容空間が負圧にされ、収容空間にグリスが引き込まれるので、粘性の高いグリスであってもグリスの供給が容易となる。しかしながら、この注入方法では、潤滑剤を供給する規定レベルが定められている場合に、潤滑剤を規定量供給することが困難であった。
【0005】
本発明は、潤滑剤封入装置に対して容易に規定量の潤滑剤を給脂できる潤滑剤の給脂方法及び給脂装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る潤滑剤の給脂方法は、
潤滑剤が封入される潤滑剤封入装置に対する潤滑剤の給脂方法であって、
前記潤滑剤封入装置の給脂口に潤滑剤を供給可能にする工程と、
前記潤滑剤封入装置の吸引口に吸引パイプを差込み、当該吸引パイプの先端を、潤滑剤を供給する所望のレベルに合わせる設定工程と、
前記吸引パイプに負圧を掛けて前記給脂口から潤滑剤を吸引する工程と、
を含む。
【0007】
本発明の係る潤滑剤の給脂装置は、
潤滑剤が封入される潤滑剤封入装置に対して潤滑剤を給脂する潤滑剤の給脂装置であって、
前記潤滑剤封入装置に設けられた吸引口から潤滑剤を供給する所望のレベルまで挿入可能な吸引パイプと、
前記吸引パイプに負圧を掛ける負圧発生器と、
前記吸引パイプと前記吸引口との間を密封する密封部材と、
を備え、
前記密封部材に対して、前記吸引パイプの先端の位置を調整可能であり、
前記吸引パイプの先端の位置を調整することで潤滑剤の供給する所望のレベルを調整可能である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、潤滑剤封入装置に対して容易に規定量の潤滑剤を給脂できるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】給脂対象の潤滑剤封入装置を示す正面図である。
【
図2】本発明の実施形態の給脂装置を示す図である。
【
図3】給脂口に給脂ホースが接続された状態を示す図である。
【
図4】吸引パイプと密封部材と潤滑剤封入装置の吸引口とを分離させた図である。
【
図5】実施形態の給脂装置を用いて実施される給脂処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
<潤滑剤封入装置>
図1は、給脂対象の潤滑剤封入装置を示す正面図である。まず、給脂対象の潤滑剤封入装置100について説明する。潤滑剤封入装置100は、電動モータ101と減速機構102と軸受103とを含んだ駆動装置である。潤滑剤封入装置100は、例えば減速機構102及び軸受103の機構部分が潤滑剤により浸漬された状態で使用される。潤滑剤封入装置100において、潤滑剤を封入すべき規定量は、潤滑剤にエアが噛んでなくかつ機構が所定状態(例えば静止状態)のときの、潤滑剤の液面により規定される。この液面を規定レベルL0と示す。規定レベルL0は、アッパーレベルとロアレベルの間のように幅を有していてもよい。規定レベルL0は、本発明に係る「所望のレベル」に相当する。
【0012】
潤滑剤封入装置100は、潤滑剤の一部が蓄積される潤滑剤タンク110と、潤滑剤を供給する給脂口120と、古い潤滑剤を抜くための図示略のドレン口とを備える。さらに、潤滑剤タンク110には、その上部に、吸引パイプ12を差込み可能な吸引口112が設けられている。吸引口112、給脂口120及びドレン口は、通常時、例えばネジ式の蓋により封止される。給脂口120、吸引口112及びドレン口を閉じた状態で、潤滑剤封入装置100の潤滑剤が行き渡る内部空間は密閉される。
【0013】
潤滑剤タンク110には、潤滑剤の液面を外部から確認するための窓(液面ゲージ用の窓)111(
図4も参照)を有する。窓111は潤滑剤の規定レベルL0が位置する高さに配置されている。給脂口120は、吸引口112よりも鉛直方向に低く、さらに、規定レベルL0より低く配置されている。給脂口120は、仮に潤滑剤を上方から供給した場合に空気が噛みやすい機構(例えば軸受103)の上端よりも低く配置され、潤滑剤が進入しやすい機構部分(例えば減速機構102)よりも高く配置されている。
【0014】
図2は、本発明の実施形態に係る給脂装置を示す模式図である。
【0015】
本実施形態の潤滑剤の給脂装置1は、給脂対象の潤滑剤封入装置100に潤滑剤を給脂する装置であり、潤滑剤封入装置100の吸引口112に負圧を掛ける吸引機構10と、潤滑剤封入装置100の給脂口120に潤滑剤を送る給脂部30とを備える。
【0016】
吸引機構10は、負圧を発生させる負圧発生器11と、潤滑剤封入装置100内に差し込まれる吸引パイプ12と、吸引パイプ12と吸引口112との間を密封する密封部材13と、吸引パイプ12から潤滑剤が吸引された場合に吸引エアと潤滑剤とを分離するタンク14と、吸引の作動と解除とを切り替える切替器15と、負圧発生器11とタンク14とをつなぐホース16aと、タンク14と吸引パイプ12とをつなぐホース16bとを備える。負圧発生器11は、負圧ポンプであってもよいし、圧縮空気を利用して負圧を発生させるエジェクタ方式の負圧発生器であってもよい。タンク14はアキュムレータであってもよい。切替器15は電磁的に駆動される切り替え弁であってもよい。また、切替器15を設けることなく、負圧発生器11のON/OFFのみで負圧をコントロールしてもよい。
【0017】
給脂部30は、潤滑剤が蓄積された潤滑剤容器31と、潤滑剤容器31から潤滑剤を導入する給脂ホース32とを備える。
【0018】
図3は、給脂口に給脂ホースが接続された状態を示す図である。給脂ホース32は給脂口120と周囲に隙間無く連通可能に構成される。例えば、給脂ホース32は、その先端部に先が細くなるテーパー部32aを有し、テーパー部32aに可撓性が付加される。テーパー部32aが給脂口120に差し込まれて撓むことで、給脂口120と給脂ホース32との間の隙間が生じないように、両者を接続できる。給脂ホース32が給脂口120に接続されて潤滑剤を供給する際、給脂口120に生じる負圧によって、給脂口120から給脂ホース32の先端部を引き込む力が生じる。この力により、テーパー部32aと給脂口120との接続が強固となり、給脂中に給脂ホース32が外れてしまうことが抑制される。
【0019】
図4は、吸引パイプと密封部材と潤滑剤封入装置の吸引口とを分離させた図である。
図4の窓111には、吸引パイプ12と密封部材13とを設置したときの吸引パイプ12の先端部を二点鎖線で示している。
【0020】
吸引パイプ12は、例えば変形しにくい樹脂から構成され、吸引口112を介して潤滑剤タンク110の内部へ挿入可能である。吸引パイプ12は、吸引口112から潤滑剤タンク110の窓111までの距離よりも長く、吸引パイプ12の挿入量を調整することで、吸引パイプ12の先端部を窓111に臨む位置まで到達させることができる。吸引パイプ12の根元側はホース16bに接続される。
【0021】
密封部材13は、吸引口112に固定される1部材13aと、吸引パイプ12に外嵌される第2部材13bとを備える。
【0022】
第1部材13aは、例えば樹脂から構成され、吸引口112のネジ部(雌ネジ)に対応したネジ部(雄ネジ)n1を有する。この構成により、第1部材13aのネジ部n1と吸引口112のネジ部とを螺合させることにより、両者の間に負圧が抜ける隙間が生じることなく、第1部材13aを吸引口112に装着することができる。なお、第1部材13aと吸引口112との接合形態は、螺合に限られない。この接合形態は、例えば嵌合とし、パッキンを挟んで第1部材13aと吸引口112とを接合する形態としてもよいなど、負圧が漏れる隙間が生じず、かつ、取り外し可能な接続形態であれば、どのような形態が採用されてもよい。第1部材13aは、さらに第2部材13bの軸部a1を内嵌する貫通孔h1を有する。
【0023】
第2部材13bは、例えばゴムなどの弾性部材から構成され、吸引パイプ12を内嵌する貫通孔h2と、第1部材13aの貫通孔h1に内嵌する軸部a1と、軸部a1より径方向に張り出したフランジ部f1とを有する。第2部材13bは弾性を有し、負圧が抜ける隙間が生じないように、吸引パイプ12を貫通孔h2に嵌入することができる。さらに、第2部材13bの軸部a1は、負圧が抜ける隙間が生じないように、第1部材13aの貫通孔h1に嵌入される。さらに、吸引パイプ12の挿入深さを調整可能なように、吸引パイプ12を第2部材13bの貫通孔h2に沿ってスライドさせることが可能である。
【0024】
吸引パイプ12を密封部材13を介して吸引口112に装着し、かつ、負圧発生器11の負圧をホース16a、16bに加えると、吸引パイプ12を介して潤滑剤タンク110から空気が引き抜かれる。そして、潤滑剤タンク110及び潤滑剤封入装置100の内部空間を負圧にすることができる。
【0025】
吸引パイプ12に接続されるホース16bは、負圧エアに加えて潤滑剤が通る場合があるので、潤滑剤の通過が分かるように透明な材料が選定されてもよい。
【0026】
<潤滑剤の給脂方法>
続いて、本発明の実施形態に係る給脂方法が適用された給脂処理について説明する。
図5は、給脂処理の手順を示すフローチャートである。給脂処理は、潤滑剤封入装置100に封入された古い潤滑剤がドレン口から抜かれた状態で開始される。
【0027】
給脂処理の準備段階において、先ず、作業員は、潤滑剤封入装置100の給脂口120を開け、給脂口120に給脂ホース32の先端部を差し込み、給脂口120に7給脂ホース32を接続する(ステップS1)。給脂ホース32の他端は潤滑剤容器31にて潤滑剤内に位置し、ステップS1の処理により、給脂口120から潤滑剤が供給可能となる。
【0028】
さらに、準備段階として、作業員は、吸引パイプ12を密封部材13を介して潤滑剤封入装置100の吸引口112に装着する(ステップS2)。装着したら、あるいは、装着に際して、作業員は、吸引パイプ12の先端位置を窓111を介して確認しながら、吸引パイプ12の先端が潤滑剤の規定レベルL0に対応する位置に配置されるように、吸引パイプ12の差込量を調整する(ステップS3:設定工程)。これにて準備段階が完了する。
【0029】
準備段階が完了したら、作業員は、負圧発生器11を作動させ、切替器15を切り替えて、負圧を吸引パイプ12にかける(ステップS4)。なお、切替器15を設けない場合は、負圧発生器11をONすることにより、吸引パイプ12に負圧が掛かる。すると、負圧が、吸引パイプ12から吸引口112を介して潤滑剤タンク110及び潤滑剤封入装置100の内部に作用し、給脂口120から給脂ホース32を介して潤滑剤を引き込む。そして、潤滑剤が給脂口120を介して潤滑剤封入装置100の内部へ導入される(ステップS5)。導入された潤滑剤は、潤滑剤充填空間の鉛直下方から徐々に蓄積され、潤滑剤の液面が、減速機構102(
図1)の内部空間から、給脂口120の高さを経て、軸受103(
図1)の内部空間、潤滑剤タンク110のタンク内へと上昇していく。潤滑剤の液面が上昇する際、潤滑剤は負圧により吸い上げられているので、軸受103の内部空間など、空気が噛みやすい箇所でも、空気の混入が抑制された状態で潤滑剤が充填されていく。
【0030】
作業員は、潤滑剤が導入される間、吸引パイプ12を確認し、吸引パイプ12から潤滑剤が吸い上げられたか否か判別する(ステップS6)。潤滑剤の液面が吸引パイプ12の先端に到達すると、吸引パイプ12から潤滑剤が吸い上げられて、ホース16bを介してタンク14へ排出される。
【0031】
作業員は潤滑剤が吸い上げられたことを確認したら、給脂口120から給脂ホース32を外す(ステップS7)。すると、潤滑剤の供給がなくなるので、潤滑剤の液面は吸引パイプ12の先端の箇所で停止する。さらに、このとき吸引パイプ12からの負圧により、潤滑剤には重力に逆らって引き上げられる力が働いているので、潤滑剤の液面より低い位置にある給脂口120が開放されても、給脂口120から潤滑剤が漏れ出すことが抑制される。
【0032】
この状態で、作業員は、速やかに、給脂口120を蓋(ボルト)で塞ぎ(ステップS8)、その後、吸引パイプ12へかけられた負圧を解除する(ステップS9)。具体的には、切替器15を切り替えるか、負圧発生器11をOFFする。切替器15を設けない場合には、負圧発生器11をOFFする。そして、吸引パイプ12及び密封部材13を取り外し、吸引口112を蓋で塞ぎ(ステップS10)、給脂処理が終了する。このような給脂処理により、規定量の潤滑剤を潤滑剤封入装置100に給脂できる。
【0033】
以上のように、本実施形態の潤滑剤の給脂装置1及び給脂方法によれば、給脂口120から潤滑剤を供給可能とするステップS1の工程を含む。さらに、吸引パイプ12を吸引口112に差込みかつ吸引パイプ12の先端を潤滑剤の規定レベルL0に対応した位置に合わせるステップS3の工程と、吸引パイプ12に負圧を掛けて給脂口120から潤滑剤を吸引するステップS5の工程とを含む。したがって、負圧により空気の混入を抑制しつつ潤滑剤封入装置100の内部に潤滑剤を導入することができ、かつ、潤滑剤の供給量を規定レベルL0に容易に合わせることができる。
【0034】
さらに、本実施形態の潤滑剤の給脂装置1及び給脂方法によれば、潤滑剤封入装置100への潤滑剤の供給後、給脂口120を塞いだ後に、吸引パイプ12にかけた負圧を解除する(ステップS8、S9)。このような方法によれば、給脂口120を開放して塞ぐまでに、吸引パイプ12からの負圧が給脂口120においても作用し、給脂口120から潤滑剤が排出されてしまうことを抑制できる。よって、給脂口120を、潤滑剤の規定レベルより低い位置に設定することが可能となり、給脂口120より高い機構部分において、潤滑剤が下方から引き上げられるように導入されるので、空気の混入をより抑制することが可能となる。
【0035】
さらに、本実施形態の潤滑剤の給脂装置1及び給脂方法によれば、吸引パイプ12から潤滑剤が排出された後に、給脂口120からの潤滑剤の供給を停止する(ステップS6、S7)。このような方法によれば、潤滑剤の供給停止(例えば給脂口120から給脂ホース32を外す)のタイミングが遅い方にずれても、潤滑剤の供給量が規定量に保たれた状態で潤滑剤の供給を停止できる。したがって、規定量の潤滑剤の供給を容易に実現できる。また、潤滑剤の供給を停止するためのトリガー(吸引パイプ12からの潤滑剤の排出)が判別しやすい。
【0036】
さらに、本実施形態の潤滑剤の給脂装置1及び給脂方法によれば、吸引口112よりも低い位置の給脂口120に対して、給脂ホース32を接続することで潤滑剤の供給を可能とする。このような方法によれば、給脂口120より高い機構部分において、潤滑剤を下方から引き上げられるように導入することができ、空気の混入をより抑制することができる。
【0037】
さらに、本実施形態の潤滑剤の給脂装置1及び給脂方法によれば、潤滑剤容器31と給脂口120とをつなぐ給脂ホース32を介して潤滑剤が供給される。したがって、潤滑剤容器31を持ち上げる必要なく、潤滑剤の供給をより容易に行うことができる。
【0038】
さらに、本実施形態の潤滑剤の給脂装置1及び給脂方法によれば、吸引パイプ12を潤滑剤封入装置100の潤滑剤タンク110に差し込むことで、吸引パイプ12の先端位置を調整する。したがって、吸引パイプ12の先端位置を調整するのに、潤滑剤封入装置100の機構部分が妨げとなることがなく、作業員は、容易に先端位置の調整を遂行できる。さらに、潤滑剤タンク110の液面ゲージ用の窓111を介して吸引パイプ12の先端位置を目視できるので、作業員は、より容易に先端位置の調整を遂行できる。
【0039】
さらに、本実施形態の潤滑剤の給脂装置1によれば、潤滑剤封入装置100の吸引口112から潤滑剤の規定レベルL0まで差し込むことが可能な吸引パイプ12と、吸引パイプ12に負圧を掛ける負圧発生器11とを備える。さらに、吸引パイプ12と吸引口112との間を密封する密封部材13とを備える。このような構成により、上述した潤滑剤の給脂が可能となる。
【0040】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は上記の実施形態に限られない。例えば、給脂ホース32と給脂口120との接続は、例えばアダプタ部材を介して接続されてもよい。また、吸引口112は潤滑剤タンク110に配置されていなくてもよく、潤滑剤封入装置100の本体部に設けられていてもよい。また、吸引口112から潤滑剤を供給する所望のレベルまで、吸引パイプを差し込める経路が曲がっていてもよく、その場合、吸引パイプは、上記経路に対応して曲がった形状であってもよい。さらに、吸引パイプを通す空間が狭ければ、吸引パイプに可撓性を付与して湾曲可能な構成としてもよい。また、吸引パイプ12の差込量の調整は、吸引パイプの先端を窓111で確認するのではなく、吸引パイプ12の途中に規定された目印位置が吸引口112の高さに合わされることで、差込量が調整される構成としてもよい。
【0041】
また、上記実施形態では、吸引パイプ12を介して潤滑剤が排出されたら、給脂口120からの潤滑剤の供給を停止する方法を示した。しかし、吸引パイプ12の先端位置に潤滑剤が到達したら、潤滑剤が排出される前に、給脂ホース32からの潤滑剤の供給を停止するようにしてもよい。この場合、タンク14を省略することができる。吸引パイプ12の先端位置にセンサを設け、上記のような潤滑剤の供給の停止が自動制御される構成としてもよい。
【0042】
また、上記実施形態では、潤滑剤を供給する対象である潤滑剤封入装置の一例を具体的に示したが、潤滑剤封入装置としては、歯車機構や軸受等を含んだ装置など、潤滑剤が所望のレベルまで充填された状態で稼働される装置であれば、どのような装置であってもよく、例えばトランスミッション装置であってもよい。その他、実施の形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0043】
1 潤滑剤の給脂装置
10 吸引機構
11 負圧発生器
12 吸引パイプ
13 密封部材
13a 第1部材
n1 ネジ部
13b 第2部材
a1 軸部
f1 フランジ部
14 タンク
15 切替器
16a、16b ホース
30 給脂部
31 潤滑剤容器
32 給脂ホース
32a テーパー部
100 潤滑剤封入装置
110 潤滑剤タンク
111 窓
112 吸引口
120 給脂口
L0 規定レベル