(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】発現困難タンパク質のための多部位SSI細胞
(51)【国際特許分類】
C12N 5/10 20060101AFI20240408BHJP
C12P 21/02 20060101ALN20240408BHJP
C12P 21/08 20060101ALN20240408BHJP
【FI】
C12N5/10 ZNA
C12P21/02 C
C12P21/08
(21)【出願番号】P 2019544616
(86)(22)【出願日】2018-02-17
(86)【国際出願番号】 IB2018000232
(87)【国際公開番号】W WO2018150269
(87)【国際公開日】2018-08-23
【審査請求日】2021-01-26
【審判番号】
【審判請求日】2023-01-04
(32)【優先日】2017-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審理対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】391003864
【氏名又は名称】ロンザ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】LONZA LIMITED
(73)【特許権者】
【識別番号】506181531
【氏名又は名称】ファイザー インコーポレイティッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(74)【代理人】
【識別番号】100200540
【氏名又は名称】安藤 祐子
(72)【発明者】
【氏名】フェアリー, マーク
(72)【発明者】
【氏名】ヤング, ロバート, ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】キャスパーソン, ゲラルド フライズ
(72)【発明者】
【氏名】ジョーンズ, ヘザー ローレンス
(72)【発明者】
【氏名】モファット, マーク
(72)【発明者】
【氏名】ジャン, リン
【合議体】
【審判長】福井 悟
【審判官】飯室 里美
【審判官】藤井 美穂
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-519914(JP,A)
【文献】国際公開第2006/056617(WO,A1)
【文献】特表2005-503778(JP,A)
【文献】Database NCBI Reference Sequence Database [online],Accession No. NW_006879785.1, 27-MAY-2016 updated, [retrieved on 04-Feb-2022],Cricetulus griseus unplaced genomic scaffold, alternate assembly C_griseus_v1.0 scaffold2552, whole genome shotgun sequence,http://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/614239084?sat=4&satkey=164524266
【文献】Database NCBI Reference Sequence Database [online],Accession No. NW_003613834.1, 27-MAY-2016 updated, [retrieved on 04-Feb-2022],Cricetulus griesus unplaced genomic scaffold, CriGri_1.0 scaffold2422, whole genome shotgun sequence,http://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/351517715?sat=47&satkey=1407990
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N15/00-15/90
BIOSIS/MEDLINE/CAplus/EMBASE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの別個の組換え標的部位(RTS)を含
む哺乳動物細胞であって、前記RTSのうちの2つが
、チャイニーズハムスター(Cricetulus griseus)のNW_003615899.1に対応する新たな座位1(NL1)
内のCol5a2偽遺伝子とCol5a2遺伝子との間、又は
チャイニーズハムスターのNW_003613834.1に対応する新たな座位2(NL2)
のNaa15イントロン内において染色体に組み込まれている哺乳動物細胞。
【請求項2】
2つの別個のRTSを含む、請求項1に記載の細胞。
【請求項3】
前記2つの別個のRTSが、NL1座位又はNL2座位内において染色体に組み込まれている、請求項2に記載の細胞。
【請求項4】
4つの別個のRTSを含む、請求項1に記載の細胞。
【請求項5】
前記4つの別個のRTSが、同じ座位において染色体に組み込まれている、請求項4に記載の細胞。
【請求項6】
6つの別個のRTSを含む、請求項1に記載の細胞。
【請求項7】
少なくとも4つの別個のRTSが、同じ座位において染色体に組み込まれている、請求項6に記載の細胞。
【請求項8】
少なくとも2つの別個のRTSが、別々の座位において染色体に組み込まれている、請求項4又は6に記載の細胞。
【請求項9】
前記別々の座位がFer1L4座位である、請求項8に記載の細胞。
【請求項10】
前記RTSの少なくとも1つが、frt部位、lox部位、rox部位又はatt部位である、請求項1~9のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項11】
前記RTSの少なくとも1つが、配列番号1~30からなる群から選択される、請求項1~10のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項12】
マウス細胞、ヒト細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、CHO-K1細胞、CHO-DXB11細胞、CHO-DG44細胞、すべてのバリアントを含むCHOK1SV(商標)細胞、すべてのバリアントを含むCHOK1SV GS-KO(商標)(グルタミン合成酵素ノックアウト)細胞、HEK細胞、付着適応及び懸濁適応バリアントを含むHEK293細胞、ヒーラ細胞又はHT1080細胞である、請求項1~11のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項13】
第1の目的遺伝子をさらに含み、前記第1の目的遺伝子が染色体に組み込まれている、請求項1~12のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項14】
前記第1の目的遺伝子が、レポーター遺伝子、選択遺伝子、治療目的遺伝子、補助的遺伝子又はそれらの組合せを含む、請求項13に記載の細胞。
【請求項15】
前記治療目的遺伝子が、Fc融合タンパク質、酵素、膜受容体又はモノクローナル抗体からなる群から選択される発現困難タンパク質をコードする遺伝子を含む、請求項14に記載の細胞。
【請求項16】
前記第1の目的遺伝子が、2つの前記RTSの間に位置する、請求項13~15のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項17】
第2の目的遺伝子をさらに含み、前記第2の目的遺伝子が染色体に組み込まれている、請求項1~16のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項18】
前記第1の目的遺伝子がNL1座位内に位置し、前記第2の目的遺伝子がNL2座位内に位置する、請求項17に記載の細胞。
【請求項19】
第3の目的遺伝子をさらに含み、前記第3の目的遺伝子が染色体に組み込まれている、請求項1~18のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項20】
a.前記第1の目的遺伝子、前記第2の目的遺伝子及び前記第3の目的遺伝子のうちの少なくとも1つが、NL1座位内にあり、
b.前記第1の目的遺伝子、前記第2の目的遺伝子及び前記第3の目的遺伝子のうちの少なくとも1つが、NL2座位内にある、請求項19に記載の細胞。
【請求項21】
少なくとも4つの別個の組換え標的部位(RTS)を含む哺乳動物細胞であって、
a.
チャイニーズハムスター(Cricetulus griseus)のNW_003615899.1に対応する新たな座位1(NL1)
内のCol5a2偽遺伝子とCol5a2遺伝子との間、又は
チャイニーズハムスターのNW_003613834.1に対応する新たな座位2(NL2)
のNaa15イントロン内において、染色体に組み込まれている少なくとも2つの別個のRTSと、
b.(a)の少なくとも2つのRTSの間に組み込まれている第1の目的遺伝子であって、レポーター遺伝子、発現困難タンパク質をコードする遺伝子、補助的遺伝子又はそれらの組合せを含む、前記第1の目的遺伝子と、
c.(a)の座位とは別の第2の染色体座位内に組み込まれている第2の目的遺伝子であって、レポーター遺伝子、発現困難タンパク質をコードする遺伝子、補助的遺伝子又はそれらの組合せを含む、前記第2の目的遺伝子と
を含む、哺乳動物細胞。
【請求項22】
少なくとも4つの別個の組換え標的部位(RTS)を含む哺乳動物細胞であって、
a.Fer1L4座位内において染色体に組み込まれている少なくとも2つの別個のRTSと、
b.
チャイニーズハムスター(Cricetulus griseus)のNW_003615899.1に対応する新たな座位1(NL1)
内のCol5a2偽遺伝子とCol5a2遺伝子との間、又は
チャイニーズハムスターのNW_003613834.1に対応する新たな座位2(NL2)
のNaa15イントロン内において染色体に組み込まれている少なくとも2つの別個のRTSと、
c.Fer1L4座位内において染色体に組み込まれている第1の目的遺伝子であって、レポーター遺伝子、発現困難タンパク質をコードする遺伝子、補助的遺伝子又はそれらの組合せを含む、前記第1の目的遺伝子と、
d.(b)のNL1座位又はNL2座位内において染色体に組み込まれている第2の目的遺伝子であって、レポーター遺伝子、発現困難タンパク質をコードする遺伝子、補助的遺伝子又はそれらの組合せを含む、前記第2の目的遺伝子と
を含む、哺乳動物細胞。
【請求項23】
少なくとも6つの別個の組換え標的部位(RTS)を含む哺乳動物細胞であって、
a.Fer1L4座位内において染色体に組み込まれている少なくとも2つの別個のRTS及び第1の目的遺伝子と、
b.
チャイニーズハムスター(Cricetulus griseus)のNW_003615899.1に対応する新たな座位1(NL1)内
のCol5a2偽遺伝子とCol5a2遺伝子との間において染色体に組み込まれている少なくとも2つの別個のRTS及び第2の目的遺伝子と、
c.
チャイニーズハムスターのNW_003613834.1に対応する新たな座位2(NL2)
のNaa15イントロン内において染色体に組み込まれている少なくとも2つのRTS及び第3の目的遺伝子と
を含む、哺乳動物細胞。
【請求項24】
組換えタンパク質プロデューサー細胞を生産する方法であって、
a.少なくとも4つの別個の組換え標的部位(RTS)及び部位特異的リコンビナーゼをコードする遺伝子を含み、
少なくとも2つの別個のRTSが
チャイニーズハムスター(Cricetulus griseus)のNW_003615899.1に対応する新たな座位1(NL1)内
のCol5a2偽遺伝子とCol5a2遺伝子との間において染色体に組み込まれ、少なくとも2つの別個のRTSが
チャイニーズハムスターのNW_003613834.1に対応する新たな座位2(NL2)
のNaa15イントロン内において染色体に組み込まれているか、又は少なくとも2つの別個のRTSがFer1L4座位内において染色体に組み込まれ、少なくとも2つの別個のRTSがNL1座位
のCol5a2偽遺伝子とCol5a2遺伝子との間又はNL2座位
のNaa15イントロン内において染色体に組み込まれている細胞を用意するステップと、
b.(a)の前記細胞に、第1の目的遺伝子をコードする交換可能なカセットを含む第1のベクターと、第2の目的遺伝子をコードする交換可能なカセットを含む第2のベクターとをトランスフェクトするステップと、
c.NL1座位内に第1の交換可能なカセットを、NL2座位内に第2の交換可能なカセットを組み込むか、又はFer1L4座位内に第1の交換可能なカセットを、NL1座位又はNL2座位内に第2の交換可能なカセットを組み込むステップと、
d.染色体に組み込まれた前記第1の交換可能なカセット及び前記第2の交換可能なカセットを含む組換えタンパク質プロデューサー細胞を選択するステップと
を含む方法。
【請求項25】
組換えタンパク質プロデューサー細胞を生産する方法であって、
a.少なくとも少なくとも6つの別個の組換え標的部位(RTS)及び部位特異的リコンビナーゼをコードする遺伝子を含み、少なくとも2つの別個のRTSがFer1L4座位内において染色体に組み込まれ、少なくとも2つの別個のRTSが
チャイニーズハムスター(Cricetulus griseus)のNW_003615899.1に対応する新たな座位1(NL1)内
のCol5a2偽遺伝子とCol5a2遺伝子との間において染色体に組み込まれ、少なくとも2つの別個のRTSが
チャイニーズハムスターのNW_003613834.1に対応する新たな座位2(NL2)
のNaa15イントロン内において染色体に組み込まれている細胞を用意するステップと、
b.(a)の前記細胞に、第1の目的遺伝子をコードする交換可能なカセットを含む第1のベクターと、第2の目的遺伝子をコードする交換可能なカセットを含む第2のベクターと、第3の目的遺伝子をコードする交換可能なカセットを含む第3のベクターとをトランスフェクトするステップと、
c.Fer1L4座位内に第1の交換可能なカセットを、NL1座位内に第2の交換可能なカセットを、NL2座位内に第3の交換可能なカセットを組み込むステップと、
d.染色体に組み込まれた前記第1の交換可能なカセット、前記第2の交換可能なカセット及び前記第3の交換可能なカセットを含む組換えタンパク質プロデューサー細胞を選択するステップと
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本開示は、少なくとも2つの別個の組換え標的部位(RTS)を含み、2つのRTSがNL1座位又はNL2座位内において染色体に組み込まれている、部位特異的組込み(SSI)哺乳動物細胞に関する。本開示はまた、少なくとも4つの別個のRTSを含み、2つのRTSがNL1又はNL2座位内において染色体に組み込まれ、2つのRTSが、別々の座位内において染色体に組み込まれている、SSI哺乳動物細胞に関する。本開示はまた、SSI哺乳動物宿主細胞株を使用して、発現困難タンパク質をさらに発現できる組換えタンパク質発現細胞株を生産する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]バイオ医薬品(新薬及びバイオシミラー)には高いニーズがあり、またそれは販売収入の増加をもたらすものである。普及が増加している新規なフォーマットとして、非モノクローナル抗体(mAb)、組換えタンパク質(rP)が存在するが、それらの多くは発現困難(DtE)と分類されており、ゆえにバイオ医薬品産業に対し、治療薬の送達に関する課題を提起することとなりうる。DtEタンパク質に関連する課題としては、予想より低い力価や、多重鎖発現、補助的タンパク質、生成物の回収又は精製に関する課題が挙げられる(Pybus et al.Biotechnol.Bioeng.111:372-85 (2014))。DtEタンパク質の例としては、Fc融合タンパク質、2重及び3重特異的MAb、酵素、膜受容体及び2重特異的T細胞エンゲージャー(engager)BITE(登録商標)(Micromet AG社、Munich,Germany)分子及び選択されたmAbが挙げられるが、これらに限定されない。
【0003】
[0003]ある1つの報告された、組換えタンパク質(rP)発現カセットを宿主細胞ゲノムに組み込む方法は、ランダム組込み(RI)すなわち、DNAを細胞に導入し、ゲノム内に存在する既存の二重鎖切断(DSB)により組み込ませるプロセス、に依存する。したがって、かかる方法を使用するときは、組み込まれる遺伝子コピーの数及び組込み部位(斑入り位置効果)における発現の特徴が大きく変動しうる。これは、いくつかの理由から、DtEタンパク質の場合には問題となりうる。例えば、いくつかの多重鎖タンパク質の場合、個々の鎖をコードする遺伝子又は補助的遺伝子の組み込まれるコピー数の制御が困難となること、ベクターサイズ限界が多重鎖タンパク質の発現を妨げうること、ベクターでの多重トランスフェクションでは組込み効率が低くなり、またいくつかのDtEでは高発現により毒性が生じるおそれがあること、が挙げられる。
【0004】
[0004]rP発現カセットを組み込む別の方法は、部位特異的組込み(SSI)を用いる方法である。SSI細胞株のゲノムに配置される「ランディングパッド」は、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)由来のFLP-Frt系又はバクテリオファージP1由来のCre-loxP系などの、部位特異的リコンビナーゼ系に由来する組換え標的部位(RTS)を利用することができる。これらの系において、組換え酵素又はリコンビナーゼは、互換性を有する組換え部位(それぞれ、Frt又はloxP)を含むドナー及び標的DNA間での組換えイベントに関わる(Wirth et al.Curr.Op.in Biotech.18:411-9(2007)を参照)。(ドナー及び標的DNAにおいて)交換されるカセットの5’及び3’末端の別個の組換え部位を用いることにより、組換えが一定方向で起こり、好ましいカセット領域のみが確実に交換されると考えられる。したがって、SSIはランダム組込み方法よりも有利である。SSI細胞株へのカセットの組込みプロセスは、リコンビナーゼにより触媒されるカセット交換(RMCE)と呼ばれる。実際には、RMCEを用いる組換えタンパク質生産のための細胞株の構築は一般に、リコンビナーゼをコードする発現ベクターを、(rPをコードする)目的遺伝子及びリコンビナーゼ標的配列が隣接する選択マーカーを含むターゲッティング発現ベクターと共に、コトランスフェクトすることを含む。
【0005】
[0005]単一のランディングパッドを使用するSSI生成細胞株はまた、限界を有する。例えば、かかるアプローチは通常、デザイン上、組み込まれる遺伝子のコピー数が少なく、rP生産された組換えタンパク質の発現力価を間接的に制限する結果となりうる。rP生産において、単一のランディングパッドを含むSSI宿主細胞株における複数のタンパク質の生産が求められる場合、必要な遺伝子の全てを単一のベクターに含めることが必要となりうる。組換え遺伝子の組込みコピー数を増加させる1つの方法は、累積的(或いは重層的又は多重的とも呼ばれる)SSIである(例えばKameyama et al.Biotechnol.Bioeng.105:1106-14(2010),Kawabe et al.Cytotechnology 64:267-79(2012)及びTuran et al.J.Mol.Biol.402:52-69(2010)を参照)。かかる方法においては、RMCEのラウンドを繰り返し行うことにより、単一の部位にrP発現カセットのコピーを複数、直列的に配置することができる。このタイプのSSI宿主細胞株のランディングパッドは、独立して部位指定をすることができず、RMCEのラウンドを繰り返して各サイクル毎にさらなる時間を費やす必要がある。
【0006】
[0006]各種の刊行物を本願明細書において引用し、それらの全開示内容を参照により本願明細書に組み込む。
【発明の概要】
【0007】
[発明の簡単な説明]
[0007]単一のゲノム挿入部位のみを有するSSI宿主の限界を克服するSSI宿主細胞株を生成することに対するニーズが存在する。本発明では、直列型のSSIランディングパッドを用いることによりこのニーズを満たすものであり、その際2つ以上のランディングパッドが同一の座位に組み込まれる、それにより累積的な部位特異的組込みの限界が克服されうる。かかる系では、ランディングパッドは(組換え部位及び選択マーカーの選択により)独立して部位指定可能である。
【0008】
[0008]いくつかの実施形態では、本開示は、少なくとも2つの別個のRTSを含み、2つのRTSがNL1座位又はNL2座位内において染色体に組み込まれている哺乳動物細胞を提供する。いくつかの実施形態では、細胞は2つの別個のRTSを含む。いくつかの実施形態では、2つの別個のRTSは、NL1座位内において染色体に組み込まれている。いくつかの実施形態では、2つの別個のRTSは、NL2座位内において染色体に組み込まれている。いくつかの実施形態では、細胞は4つの別個のRTSを含む。いくつかの実施形態では、4つの別個のRTSは、同じ座位内において染色体に組み込まれている。いくつかの実施形態では、2つの別個のRTSは、別々の座位において染色体に組み込まれている。いくつかの実施形態では、別々の座位は、Fer1L4座位である。いくつかの実施形態では、2つの別個のRTSはNL1座位内において染色体に組み込まれ、2つの別個のRTSはNL2座位内において染色体に組み込まれている。いくつかの実施形態では、細胞は6つの別個のRTSを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも4つの別個のRTSは、同じ座位内において染色体に組み込まれている。いくつかの実施形態では、少なくとも2つの別個のRTSはNL1座位又はNL2座位内において染色体に組み込まれ、少なくとも2つの別個のRTSは別々の座位において染色体に組み込まれている。いくつかの実施形態では、別々の座位は、Fer1L4座位である。いくつかの実施形態では、少なくも2つの別個のRTSはNL1座位内において染色体に組み込まれ、少なくとも2つの別個のRTSはNL2座位内において染色体に組み込まれている。いくつかの実施形態では、RTSの少なくとも1つは、Frt部位、lox部位、rox部位又はatt部位である。いくつかの実施形態では、RTSの少なくとも1つは、配列番号1~30から選択される。いくつかの実施形態では、細胞は、マウス細胞、ヒト細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、CHO-K1細胞、CHO-DXB11細胞、CHO-DG44細胞、すべてのバリアントを含むCHOK1SV(商標)細胞、すべてのバリアントを含むCHOK1SV GS-KO(商標)(グルタミン合成酵素ノックアウト)細胞、HEK細胞、付着適応及び懸濁適応バリアントを含むHEK293細胞、ヒーラ細胞又はHT1080細胞である。いくつかの実施形態では、細胞はHEK細胞である。
【0009】
[0009]いくつかの実施形態では、細胞は第1の目的遺伝子を含み、第1の目的遺伝子は染色体に組み込まれている。いくつかの実施形態では、第1の目的遺伝子は、レポーター遺伝子、選択遺伝子、治療目的遺伝子、補助的遺伝子又はそれらの組合せを含む。いくつかの実施形態では、治療目的遺伝子は、DtEタンパク質をコードする遺伝子を含む。いくつかの実施形態では、DtEタンパク質は、Fc融合タンパク質、酵素、膜受容体、二重特異性T細胞エンゲージャー(BITE(登録商標)Micromet AG,Munich,Germany)又はモノクローナル抗体からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、モノクローナル抗体は、二重特異性モノクローナル抗体又は三重特異性モノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、第1の目的遺伝子は、2つのRTSの間に位置する。いくつかの実施形態では、第1の目的遺伝子は、NL1座位に位置する。いくつかの実施形態では、細胞は第2の目的遺伝子を含み、第2の目的遺伝子は染色体に組み込まれている。いくつかの実施形態では、第2の目的遺伝子は、レポーター遺伝子、選択遺伝子、治療目的遺伝子、補助的遺伝子又はそれらの組合せを含む。いくつかの実施形態では、治療目的遺伝子は、DtEタンパク質をコードする遺伝子を含む。いくつかの実施形態では、DtEタンパク質は、Fc融合タンパク質、酵素、膜受容体、二重特異性T細胞エンゲージャー(BITE(登録商標))又はモノクローナル抗体からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、第2の目的遺伝子は、2つのRTSの間に位置する。いくつかの実施形態では、第2の目的遺伝子は、NL1座位又はNL2座位内に位置する。いくつかの実施形態では、第1の目的遺伝子はNL1座位内に位置し、第2の目的遺伝子はNL2座位内に位置する。いくつかの実施形態では、細胞は第3の目的遺伝子を含み、第3の目的遺伝子は染色体に組み込まれている。いくつかの実施形態では、第3の目的遺伝子は、レポーター遺伝子、選択遺伝子、治療目的遺伝子、補助的遺伝子又はそれらの組合せを含む。いくつかの実施形態では、治療目的遺伝子は、DtEタンパク質をコードする遺伝子を含む。いくつかの実施形態では、第3の目的遺伝子は、2つのRTSの間に位置する。いくつかの実施形態では、第3の目的遺伝子は、NL1座位又はNL2座位内に位置する。いくつかの実施形態では、第3の目的遺伝子は、NL1座位及びNL2座位とは別の座位内に位置する。いくつかの実施形態では、第1の目的遺伝子、第2の目的遺伝子及び第3の目的遺伝子は、3つの別々の座位内にある。いくつかの実施形態では、第1の目的遺伝子、第2の目的遺伝子及び第3の目的遺伝子のうちの少なくとも1つは、NL1座位内にあり、第1の目的遺伝子、第2の目的遺伝子及び第3の目的遺伝子のうちの少なくとも1つは、NL2座位内にある。いくつかの実施形態では、細胞は、部位特異的リコンビナーゼ遺伝子を含む。いくつかの実施形態では、部位特異的リコンビナーゼ遺伝子は、染色体に組み込まれている。
【0010】
[0010]いくつかの実施形態では、本開示は、少なくとも4つの別個のRTSを含む哺乳動物細胞を提供し、細胞は、(a)NL1座位又はNL2座位内において染色体に組み込まれている少なくとも2つの別個のRTSと、(b)(a)の少なくとも2つのRTSの間に組み込まれている第1の目的遺伝子であって、レポーター遺伝子、DtEタンパク質をコードする遺伝子、補助的遺伝子又はそれらの組合せを含む第1の目的遺伝子と、(c)(a)の座位とは別の第2の染色体座位内に組み込まれている第2の目的遺伝子であって、レポーター遺伝子、DtEタンパク質をコードする遺伝子、補助的遺伝子又はそれらの組合せを含む第2の目的遺伝子とを含む。
【0011】
[0011]いくつかの実施形態では、本開示は、少なくとも4つの別個のRTSを含む哺乳動物細胞を提供し、細胞は、(a)Fer1L4座位内において染色体に組み込まれている少なくとも2つの別個のRTSと、(b)NL1座位又はNL2座位内において染色体に組み込まれている少なくとも2つの別個のRTSと、(c)Fer1L4座位内において染色体に組み込まれている第1の目的遺伝子であって、レポーター遺伝子、DtEタンパク質をコードする遺伝子、補助的遺伝子又はそれらの組合せを含む、第1の目的遺伝子と、(d)(b)のNL1座位又はNL2座位において染色体に組み込まれている第2の目的遺伝子であって、レポーター遺伝子、DtEタンパク質をコードする遺伝子、補助的遺伝子又はそれらの組合せを含む、第2の目的遺伝子とを含む。
【0012】
[0012]いくつかの実施形態では、本開示は、少なくとも6つの別個のRTSを含む哺乳動物細胞を提供し、細胞は、(a)Fer1L4座位内において染色体に組み込まれている少なくとも2つの別個のRTS及び第1の目的遺伝子と、(b)NL1座位内において染色体に組み込まれている少なくとも2つの別個のRTS及び第2の目的遺伝子と、(c)NL2座位内において染色体に組み込まれている少なくとも2つの別個のRTS及び第3の目的遺伝子とを含む。
【0013】
[0013]いくつかの実施形態では、本開示は、組換えタンパク質プロデューサー細胞を生産する方法を提供し、該方法は、(a)少なくとも少なくとも4つの別個のRTS及び部位特異的リコンビナーゼをコードする遺伝子を含み、少なくとも2つの別個のRTSが、NL1座位内において染色体に組み込まれ、少なくとも2つの別個のRTSが、NL2座位内において染色体に組み込まれている細胞を用意するステップと、(b)(a)の細胞に、第1の目的遺伝子をコードする交換可能なカセットを含む第1のベクターと、第2の目的遺伝子をコードする交換可能なカセットを含む第2のベクターとをトランスフェクトするステップと、(c)NL1座位内に第1の交換可能なカセットを、NL2座位内に第2の交換可能なカセットを組み込むステップと、(d)染色体に組み込まれた第1の交換可能なカセット及び第2の交換可能なカセットを含む組換えタンパク質プロデューサー細胞を選択するステップとを含む。いくつかの実施形態では、第1の目的遺伝子は、レポーター遺伝子、選択遺伝子、治療目的遺伝子、補助的遺伝子又はそれらの組合せを含む。いくつかの実施形態では、治療目的遺伝子は、DtEタンパク質をコードする遺伝子を含む。いくつかの実施形態では、DtEタンパク質は、Fc融合タンパク質、酵素、膜受容体、二重特異性T細胞エンゲージャー(BITE(登録商標))又はモノクローナル抗体からなる。いくつかの実施形態では、モノクローナル抗体は、二重特異性モノクローナル抗体又は三重特異性モノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、第1の目的遺伝子は、2つのRTSの間に位置する。いくつかの実施形態では、第2の目的遺伝子は、レポーター遺伝子、選択遺伝子、治療目的遺伝子、補助的遺伝子又はそれらの組合せを含む。いくつかの実施形態では、治療目的遺伝子は、DtEタンパク質をコードする遺伝子を含む。いくつかの実施形態では、第2の目的遺伝子は、2つのRTSの間に位置する。
【0014】
[0014]いくつかの実施形態では、本開示は、組換えタンパク質プロデューサー細胞を生産する方法を提供し、該方法は、(a)少なくとも4つの別個のRTS及び部位特異的リコンビナーゼをコードする遺伝子を含み、少なくとも2つの別個のRTSが、Fer1L4座位内において染色体に組み込まれ、少なくとも2つの別個のRTSが、NL1座位又はNL2座位内において染色体に組み込まれている細胞を用意するステップと、(b)(a)の細胞に、第1の目的遺伝子をコードする交換可能なカセットを含む第1のベクターと、第2の目的遺伝子をコードする交換可能なカセットを含む第2のベクターとをトランスフェクトするステップと、(c)Fer1L4座位内に第1の交換可能なカセットを、NL1座位又はNL2座位内に第2の交換可能なカセットを組み込むステップと、(d)染色体に組み込まれた第1の交換可能なカセット及び第2の交換可能なカセットを含む組換えタンパク質プロデューサー細胞を選択するステップとを含む。いくつかの実施形態では、第1の目的遺伝子は、レポーター遺伝子、選択遺伝子、治療目的遺伝子、補助的遺伝子又はそれらの組合せを含む。いくつかの実施形態では、治療目的遺伝子は、DtEタンパク質をコードする遺伝子を含む。いくつかの実施形態では、DtEタンパク質は、Fc融合タンパク質、酵素、膜受容体、二重特異性T細胞エンゲージャー(BITE(登録商標))又はモノクローナル抗体からなる。いくつかの実施形態では、モノクローナル抗体は、二重特異性モノクローナル抗体又は三重特異性モノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、第1の目的遺伝子は、2つのRTSの間に位置する。いくつかの実施形態では、第2の目的遺伝子は、レポーター遺伝子、選択遺伝子、治療目的遺伝子、補助的遺伝子又はそれらの組合せを含む。いくつかの実施形態では、治療目的遺伝子は、DtEタンパク質をコードする遺伝子を含む。いくつかの実施形態では、第2の目的遺伝子は、2つのRTSの間に位置する。
【0015】
[0015]いくつかの実施形態では、本開示は、組換えタンパク質プロデューサー細胞を生産する方法を提供し、該方法は、(a)少なくとも少なくとも6つの別個のRTS及び部位特異的リコンビナーゼをコードする遺伝子を含み、少なくとも2つの別個のRTSがFer1L4座位内において染色体に組み込まれ、少なくとも2つの別個のRTSがNL1座位において染色体に組み込まれ、少なくとも2つの別個のRTSがNL2座位内において染色体に組み込まれている細胞を用意するステップと、(b)(a)の細胞に、第1の目的遺伝子をコードする交換可能なカセットを含む第1のベクターと、第2の目的遺伝子をコードする交換可能なカセットを含む第2のベクターと、第3の目的遺伝子をコードする交換可能なカセットを含む第3のベクターとをトランスフェクトするステップと、(c)Fer1L4座位内に第1の交換可能なカセットを、NL1座位内に第2の交換可能なカセットを、NL2座位内に第3の交換可能なカセットを組み込むステップと、(d)染色体に組み込まれた第1の交換可能なカセット、第2の交換可能なカセット及び第3の交換可能なカセットを含む組換えタンパク質プロデューサー細胞を選択するステップとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】2つの独立に部位指定可能なランディングパッドを有する多部位部位特異的組込み(SSI)宿主細胞株を用いた、リコンビナーゼにより触媒されるカセット交換(RMCE)方法の概略図である。ランディングパッドの数は、適切な座位の入手可能性、互換性を有さないFrtリコンビナーゼ部位(例えば野生型Frt(F)、Frt F5(F5)、Frt F14、F14)及びFrt F15(F15)、並びにかかる多重化アプローチと互換性を有する選択マーカー(例えば緑色蛍光タンパク質(GFP)又は赤色蛍光タンパク質(RFP))により制限される。
【
図2】
図2Aは、2つの異なる図示するランディングパッド(ランディングパッドA及びランディングパッドB)を含むCHOK1SV GS-KO(商標)(グルタミンシンセターゼ・ノックアウト)多部位SSI宿主のランディングパッド配置の概略図を示す。単一及び多部位GS-CHOK1SV(商標)SSI宿主におけるこれらのランディングパッドの染色体組込みに関する詳細は、表10に示す。ランディングパッドAは、ハイグロマイシン・ホスホトランスフェラーゼ(Hpt)により強化された緑色蛍光タンパク質(eGFP)融合遺伝子(Hpt-eGFP)を含む。Hpt-eGFP融合遺伝子発現は、SV40初期プロモーターの制御下にあり、SV40ポリA配列を有する。RMCEのため、別個の及び異なるFrt部位は、SV40プロモーターとHpt-eGFP遺伝子との間(F5)、及び5’側のSV40ポリA配列の隣(F)に位置する。ランディングパッドBは、SV40プロモーターの制御下のピューロマイシンN-アセチルトランスフェラーゼ-DsRed(PAC-DsRed)融合遺伝子を含み、またSV40ポリA配列を含む。ランディングパッドAとは別個のFrt部位の異なる対は、SV40初期プロモーターとPAC-DsRed遺伝子との間(F14)、及び5’側のSV40ポリA配列の隣(F15)に位置する。SV40Eプロモーターと選択マーカーとの間にFrt部位を配置することにより、RMCEの次のラウンドでの使用が可能となる。単一SSI及び多部位宿主のRMCEのために設計されたターゲティングベクターは、目的のランディングパッドと互換性を有するFrt部位のすぐ3’側に配置される陽性選択マーカー(例えばGS)を含む(
図2B)。ベクターの残りの部分は、ランディングパッドの第2のFrt部位と互換性を有する持つFrt部位が続くGOI(例えばmAb)の転写単位を含む。ターゲティングベクターDNA(
図3A及び
図5)を、FlpEリコンビナーゼを発現するベクターとコトランスフェクトする(Takata et al.,Genes to Cells 16: 7(2011)、
図3B)。トランスフェクトされた細胞を24時間インキュベートし、次に選択圧(例えば培地からのグルタミンの除去)を適用する。RMCEが成功した場合、Hpt-eGFP遺伝子の喪失及び陽性選択マーカー遺伝子による置換がその標識となる(
図2C)。細胞は、蛍光顕微鏡下又はフローサイトメトリー分析により暗く見える。陽性選択において回収される非置換細胞は、蛍光に基づく細胞選別により容易に除去される。
【
図3】CHOK1SV GS-KO(商標)SSI宿主のDsRed生産細胞株の作製に用いた、pMF25ターゲティングベクター(
図3A)及びpMF4リコンビナーゼ発現ベクター(
図3B)を示す。pMF25(
図3A)は、DsRed遺伝子を組み込んだ転写単位を含み、変異型(F5)及び野生型(F)のFrt部位が両側に隣接する。DsRedモノマーの転写は、hCMV主要中間体初期遺伝子1(hCMV)のプロモーター及びその第1イントロン(イントロンA、hCMVイントロン)により駆動され、また5’UTRをコードするフランキングエキソンをEx1及びEx2として示す。グルタミンシンセターゼのcDNA(GS)及びSV40イントロンA(SV40イントロン)は、Frt F5のすぐ3’側に位置し、RMCEが成功した場合、ランディングパッドに位置するSV40Eプロモーターにより転写が駆動される。pMF4(
図3B)はFlpE遺伝子を組み込んだ転写単位を含み(Takata et al.,Genes to Cells 16: 7(2011)、hCMV主要中間体初期遺伝子1(hCMV)及びその第1イントロン(イントロンA、hCMVイントロンのプロモーター)により駆動される)、また5’UTRをコードするフランキングエキソンをEx1及びEx2として示す。両方のベクターにおいて、それぞれ、ポリアデニル化配列及びβ-ラクタマーゼをpA及びblaとして示す。
【
図4】pMF25及びFlpEリコンビナーゼをコードするベクターによるコトランスフェクション前後における、CHOK1SV GS-KO(商標)SSI宿主クローン(7878、8086、8096、9113、9116及び9115)のフローサイトメトリー分析から得られたデータを示す。RMCEの前及び後(グルタミンフリーの培地で11日間の選択)において、Millipore Guavaフローサイトメトリーを使用し、緑色及び黄色の蛍光を、7878及び8086(単一部位、Fer1L4ランディングパッドA)、8086及び9113(単一部位、NL1ランディングパッドA)及び9116及び9115(単一部位、NL2ランディングパッドA)について測定した。eGFPの蛍光を緑色チャネルにおいて検出し、DsRedは黄色チャネルにおいて検出した。
【
図5】CHOK1SV GS-KO(商標)由来のSSI宿主において、ターゲティングベクターによりmAbを生産する細胞株が作製されたことを示す。ベクターpMF26(A)、pMF27(B)及びpMF28(C)は、(それぞれ)リツキシマブ、cB72.3及びH31K5抗体遺伝子を組み込んだ転写単位を含み、それらは変異型(F5)及び野生型(F)Frt部位が両側に隣接する。重鎖(HC)及び軽鎖(LC)遺伝子の転写は、hCMV主要中間体初期遺伝子1(hCMV)のプロモーター及びその第1イントロン(イントロンA(hCMVイントロン))により駆動され、また5’UTRをコードするフランキングエキソンをEx1及びEx2として示す。RMCEの後、的確な組込みがなされたものを選択するために、Frt F5のすぐ3’側に、グルタミンシンセターゼのcDNA(GS)及びSV40イントロン-ポリA配列(
図5においてpAとして示す)を配置する。β-ラクタマーゼをblaとしてそれぞれ示す。
【
図6】バッチ培養において増殖させたCHOK1SV GS-KO(商標)SSIプールから分泌されたリツキシマブ、cB72.3及びH31K5のmAb濃度を示す。CHOK1SV GS-KO(商標)SSI宿主クローン11434(単一部位、Fer1L4ランディングパッドA)を、pMF26(リツキシマブ)、pMF27(cB72.3)又はpMF28(H31K5)でトランスフェクトした。反復試験(n≧3)にて、CHOK1SV GS-KO(商標)SSIプールを8日間バッチ培養した。分泌されたリツキシマブ(A)、cB72.3(B)及びH31K5(C)mAb(mg/L)を、プロテインA HPLCで測定した。
【
図7】RMCE前の、多部位SSI宿主のフローサイトメトリー分析から得られたデータを示す。Millipore Guavaフローサイトメトリーを使用し、CHOK1SV GS-KO(商標)宿主(宿主)、11434(単一部位、Fer1L4ランディングパッドA)、DsRedランダム組込みコントロール及び6つのCHOK1SV GS-KO(商標)多部位宿主クローン(12151、12152、12606、12607、12608及び12609)(Fer1L4座位のランディングパッドA及びNL1座位のランディングパッドBを有する多部位姉妹クローン)における緑色及び黄色の蛍光を測定した。eGFPの蛍光を緑色チャネルにおいて検出し、DsRedは黄色チャネルにおいて検出した。
【
図8】CHOK1SV GS-KO SSI宿主のFer1L4及びNL1ランディングパッドを標的とするベクターpCM9及びpCM11の概略図である。ベクターは、以下の通りである:
図8A:pCM9(Fer1L4座位を標的とするE2クリムゾン発現ベクター)。
図8B:pCM11(NL1座位を標的とするE2クリムゾン発現ベクター)。
【
図9】pCM9及びpCM11により標的とされた細胞から得られた、CHOK1SV GS-KO SSIのフローサイトメトリー分析結果を示す。多重CHOK1SV GS-KO SSIクローン12151(Fer1L4座位のランディングパッドA(
図2A)及びNL1座位のランディングパッドB(
図2A)を含む)を、pCM9(Fer1L4座位を標的とするE2クリムゾン発現ベクター)及びpCM11(NL1座位を標的とするE2クリムゾン発現ベクター)によりトランスフェクトした。
【
図10】Fer1L4(
図2、ランディングパッドA)、NL1(
図2、ランディングパッドB)又はその両方を標的とするリツキシマブ発現ベクターpMF26、pCM38、pCM22及びpAR5の概略図である。ベクターは、以下の通りとした:pMF26(
図10A:Fer1L4座位を標的とするリツキシマブ 1×LC、1×HC発現ベクター)、pCM38(
図10B:Fer1L4座位を標的とするリツキシマブ 2×LC、2×HC発現ベクター)、pCM22(
図10C:NL1座位を標的とする空の発現ベクター)、及びpAR5(
図10D:NL1座位を標的とするリツキシマブ 1×LC、1×HC発現ベクター)。
【
図11】pMF26、pCM38、pCM22及びpAR5により標的とされたRMCEプールにおける、8日間のバッチ培養後の、細胞特異的なリツキシマブ生産速度(qmAb)を示す。
【
図12】Fer1L4(
図2、ランディングパッドA)、NL1(
図2、ランディングパッドB)又はその両方を標的とするセルグツズマブアムナロイキン(CEA-IL2v)発現ベクターpAB2、pAB5、pCM46及びpAR2の概略図である。ベクターは、以下の通りとした:pAB2(Fer1L4座位を標的とするCEA-IL2v LC、HC及びHC-IL2発現ベクター)、pAB5(Fer1L4座位を標的とするCEA-IL2v LC及びHC-IL2発現ベクター)、pCM46(NL1座位を標的とする空の発現ベクター)及びpAR2(NL1座位を標的とするCEA-IL2v HC発現ベクター)。
【
図13A】pAB2、pAB5、pCM46及びpAR2(
図12)によるトランスフェクションの後、セルグツズマブアムナロイキン(CEA-IL2v)を発現するRMCEプールのSDS-PAGE解析の概略図である。A:非還元条件で生成した10%ビストリスプロテインゲルのイメージ(レーン1~9としてラベルした)。レーン1:Seeblue Plus2 プレステインプロテインスタンダード。レーン2:pAB2の空のバージョンをトランスフェクトして生成したモック(空)プールの解析。レーン2~5:フォールディング中間体の割り当てに用いるCEA-IL2vを生成するのに必要となる3つの鎖のうち2つのみを発現するベクターから得られたコントロールプール。レーン6:Fer1L4座位にCEA-IL2vのLC、HC及びHC-IL2(pAB2)を有するプールの解析。レーン7:Fer1L4座位にCEA-IL2v LC及びHC-IL2を有し、NL1に空ベクター(pCM46)を有するプールの解析。レーン8及び9:Fer1L4座位にCEA-IL2v LC及びHC-IL2を有し、NL1座位にCEA-IL2v HC(pAR2)を有する。B:軽鎖(LC)、軽鎖ダイマー(2LC)、半分抗体(1LC、1HC-IL2)及びセルグツズマブアムナロイキンを組み立てるパーツ(2LC、2HC-IL2及び2LC、2HC)を表すと仮定されるバンドの強度を要約するヒストグラム。
【
図13B】pAB2、pAB5、pCM46及びpAR2(
図12)によるトランスフェクションの後、セルグツズマブアムナロイキン(CEA-IL2v)を発現するRMCEプールのSDS-PAGE解析の概略図である。A:非還元条件で生成した10%ビストリスプロテインゲルのイメージ(レーン1~9としてラベルした)。レーン1:Seeblue Plus2 プレステインプロテインスタンダード。レーン2:pAB2の空のバージョンをトランスフェクトして生成したモック(空)プールの解析。レーン2~5:フォールディング中間体の割り当てに用いるCEA-IL2vを生成するのに必要となる3つの鎖のうち2つのみを発現するベクターから得られたコントロールプール。レーン6:Fer1L4座位にCEA-IL2vのLC、HC及びHC-IL2(pAB2)を有するプールの解析。レーン7:Fer1L4座位にCEA-IL2v LC及びHC-IL2を有し、NL1に空ベクター(pCM46)を有するプールの解析。レーン8及び9:Fer1L4座位にCEA-IL2v LC及びHC-IL2を有し、NL1座位にCEA-IL2v HC(pAR2)を有する。B:軽鎖(LC)、軽鎖ダイマー(2LC)、半分抗体(1LC、1HC-IL2)及びセルグツズマブアムナロイキンを組み立てるパーツ(2LC、2HC-IL2及び2LC、2HC)を表すと仮定されるバンドの強度を要約するヒストグラム。
【
図14】Fer1L4(
図2、ランディングパッドA)、NL1(
図2、ランディングパッドB)又はその両方を標的とする、エタナーセプト、補助的タンパク質又は不安定化GFP(3’UTRにmiR標的配列を有するdsGFP)遺伝子を有するベクターの概略図である。ベクターは、以下の通りとした:pTC1(
図14A、B及びC:Fer1L4座位を標的とするエタナーセプト発現ベクター)、pCM22(
図14A:NL1を標的とする空ベクター)、pCM39(
図14B:NL1を標的とするハツカネズミ(Mus musculus)SCD1(mSCD1)発現ベクター)、pCM40(
図14B:NL1を標的とするチャイニーズハムスター(Cricetulus griseus)(ccmSCD1)発現ベクター用にコドン最適化したハツカネズミSCD1)、pCM41(
図14B:ヒト(Homo sapiens)SCD1(hSCD1)、pCM42(
図14B:NL1を標的とするチャイニーズハムスターSREBF1(ccSREBF1)発現ベクター)、pCM43(
図14C:NL1を標的とするdsGFP_6n CPEB2A発現ベクター)、pCM44(
図14C:NL1を標的とするdsGFP_6n CPEB2B発現ベクター)及びpCM45(
図14C:NL1を標的とするdsGFP_6n SRPα発現ベクター)。補助的遺伝子及びスポンジ配列の詳細については表11及び表12を参照。
【
図15】エタナーセプトを発現するRMCEプールの、補助的遺伝子発現の有無における8日間の培養から得られた、増殖及び生産性の測定結果をまとめた図(
図14を参照)。データを平均(n=2)±標準偏差で表す。A:細胞特異的生産速度(qP)。B:生細胞濃度の積分値(IVCC)。C:分泌されたエタナーセプトの濃度。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[発明の詳細な説明]
[0031]単語「1つの(a)」又は「1つの(an)」の使用は、特許請求の範囲及び/又は明細書中の「含む」という用語との関係で用いられるときは、「1つ」を意味する場合もあるが、また「1つ又は複数」、「少なくとも1つ」及び「1つ又は複数以上」を意味することとも整合する。
【0018】
[0032]本願において「約」という用語は、ある値が、その値を測定するために使用される方法/装置において固有の誤差変動を有するか、又は試験対象物中にかかる変動が存在することを示すために用いられる。典型的には、用語は、状況に応じて、およそ1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%若しくは20%の、又はそれ未満の変動性を含むことを意味する。
【0019】
[0033]特許請求の範囲における用語「又は」の使用は、それが単なる代替物であるか、又は該代替物を排他的に含まないことを意図することが明確に示されない限り、「及び/又は」を意味するものとするが、本開示では、かかる代替物及び「及び/又は」に関連する定義に関するサポートは設けている。
【0020】
[0034]本明細書及び請求項(複数含む)において用いられる単語「含む(comprising)」(また例えば「comprise」及び「comprises」などのあらゆる同義語)、「有する(having)」(また例えば「have」及び「has」などのあらゆる同義語)、「包含する(including)」(また例えば「includes」及び「include」などのあらゆる同義語)又は「含有する(containing)」(また例えば「contains」及び「contain」などのあらゆる同義語)は、包括的であるか又はオープンエンドであり、さらなる、記載されていないエレメント又は方法ステップを排除するものではない。本明細書で述べられるいかなる実施形態も、本発明のいかなる方法、システム、宿主細胞、発現ベクター及び/又は組成物に関して実施されることができると考えられる。さらにまた、本発明の組成物、システム、細胞及び/又はベクターは、本願明細書に記載される方法のいずれかを実施するために用いることができる。
【0021】
[0035]用語「例えば」及びその対応する省略形「e.g.」(イタリック体か否かを問わない)の使用は、記載される具体的な用語が開示の代表的な例及び実施形態であって、特に断りのない限り、参照される又は引用される具体例に限定されるものではないことを意味する。
【0022】
[0036]いくつかの実施形態では、本開示は、少なくとも2つの別個のRTSを含み、RTSがNL1座位又はNL2座位内において染色体に組み込まれている哺乳動物細胞を提供する。
【0023】
[0037]本願明細書の用語「哺乳動物細胞」には、哺乳動物綱(Mammalia)に属するあらゆるメンバーに由来する細胞(例えばヒト細胞、マウス細胞、ラット細胞、サル細胞、ハムスター細胞及びその他)が包含される。いくつかの実施形態では、哺乳動物細胞は、マウス細胞、ヒト細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、CHO-K1細胞、CHO-DXB11細胞、CHO-DG44細胞、すべてのバリアント(例えばCHOK1SV(商標)POTELLIGENT(登録商標)、Lonza、Slough、英国)を含むCHOK1SV(商標)細胞、すべてのバリアントを含むCHOK1SV GS-KO(商標)(グルタミン合成酵素ノックアウト)細胞、付着適応及び懸濁適応バリアントを含むHEK293細胞、ヒーラ細胞又はHT1080細胞である。
【0024】
[0038]「核酸」、「核酸分子」又は「オリゴヌクレオチド」は、共有結合したヌクレオチドを含むポリマー化合物を意味する。用語「核酸」には、ポリリボ核酸(RNA)及びポリデオキシリボ核酸(DNA)が包含され、そのいずれも、一本鎖でも二本鎖でもよい。DNAには、相補的DNA(cDNA)、ゲノムDNA、プラスミド若しくはベクターDNA、及び合成DNAが包含されるが、これらに限定されない。RNAには、mRNA、tRNA、rRNA、snRNA、マイクロRNA、miRNA又はMIRNAが包含されるが、これらに限定されない。
【0025】
[0039]本発明で使用する「アミノ酸」とは、カルボキシル(-COOH)及びアミノ(-NH2)基を含む化合物を意味する。「アミノ酸」は、天然の、及び非天然の、すなわち合成された、アミノ酸を指す。天然アミノ酸(その3文字及び1文字標記と併記する)には、アラニン(Ala;A)、アルギニン(Arg、R)、アスパラギン(Asn;N)、アスパラギン酸(Asp;D)、システイン(システイン;C)、グルタミン(Gln;Q)、グルタミン酸(Glu;E)、グリシン(Gly;G)、ヒスチジン(His;H)、イソロイシン(Ile;I)、ロイシン(Leu;L)、リジン(Lys;K)、メチオニン(Met;M)、フェニルアラニン(Phe;F)、プロリン(Pro;P)、セリン(Ser;S)、スレオニン(Thr;T)、トリプトファン(Trp;W)、チロシン(Tyr;Y)及びバリン(Val;V)が含まれる。
【0026】
[0040]用語「ペプチド」、「ポリペプチド」及び「タンパク質」は、本願明細書においては交換可能に用いられ、任意の長さのアミノ酸のポリマー形態のことを指し、それには、変性ペプチド主鎖を有するコード化及び非コード化アミノ酸、化学的又は生化学的に修飾された又は誘導体化されたアミノ酸及びポリペプチドが包含される。用語「鎖」及びポリペプチド「鎖」は、本願明細書において交換可能に用いられ、単一のペプチド主鎖を有するアミノ酸のポリマー形態を指す。
【0027】
[0041]用語「組換え」は、核酸分子、ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質に関して用いるときは、天然に存在することが公知でない遺伝的物質の新規な組合せ、又はそれらの結果物を意味する。組換え分子は、限定されないが、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、遺伝子切断(例えば制限エンドヌクレアーゼを使用)及び核酸分子、ペプチド又はタンパク質の固相合成などの、組換技術の分野において利用可能な周知技術のいずれかにより調製することができる。いくつかの実施形態では、「組換え」は、天然に存在することが公知でないウイルスベクター又はウイルスを指し、例えば、ウイルスベクター又はウイルス中に1つ又は複数の変異、核酸挿入又は異種遺伝子を有するウイルスベクター又はウイルスを指す。いくつかの実施形態では、「組換え」は、天然に存在することが公知でない細胞又は宿主細胞を指し、例えば細胞又は宿主細胞中に1つ又は複数の変異、核酸挿入又は異種遺伝子を有する細胞又は宿主細胞を指す。
【0028】
[0042]「単離された」ポリペプチド、タンパク質、ペプチド又は核酸は、その天然の環境から取り出された分子である。「単離された」ポリペプチド、タンパク質、ペプチド又は核酸は、賦形剤(例えば希釈剤又はアジュバント)と共に調製されてもよく、それによっても、未だ単離されたと考えられる。
【0029】
[0043]核酸配列又はアミノ酸配列の文脈における用語「配列同一性」又は「%同一性」とは、ある複数の配列が指定された比較ウインドウで整列配置されたときの、比較された配列中の同一である残基のパーセンテージを意味する。比較ウインドウは、配列が整列配置されることができる及び比較されることができる、少なくとも10~1000以上の残基のセグメントでありうる。配列同一性の決定のためのアラインメント方法は、従来技術において周知であり、一般公開されているデータベース(例えばBLAST(blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi.))を使用して実施できる。
【0030】
[0044]いくつかの実施形態では、ポリペプチド又は核酸分子は、参照ポリペプチド又は核酸分子(又は参照ポリペプチド若しくは核酸分子の断片)と、それぞれ、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%又は約100%の配列同一性を有する。本開示の特定の実施形態では、ポリペプチド又は核酸分子は、参照ポリペプチド又は核酸分子(又は参照ポリペプチド若しくは核酸分子の断片)と、それぞれ、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%又は100%の配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、ポリペプチド又は核酸分子は、参照ポリペプチド又は核酸分子と、それぞれ、約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%の配列同一性を有する。
【0031】
[0045]「遺伝子」は、ポリペプチドをコードするヌクレオチドの集合体を指し、cDNA及びゲノムDNAである核酸分子が包含される。「遺伝子」はまた、コーディング配列に先行する(5’非コード配列)及び続く(3’非コード配列)制御配列として作用することができる核酸断片を指すこともある。いくつかの実施形態では、遺伝子は、複数のコピーで宿主細胞のゲノムに組み込まれる。いくつかの実施形態では、遺伝子は、所定のコピー数で宿主細胞のゲノムに組み込まれる。
【0032】
[0046]本願明細書に記載される用語「制御エレメント」は、核酸配列の発現のいくつかの態様を制御する遺伝的エレメントを指す。本明細書において、「プロモーター」、「プロモーター配列」又は「プロモーター領域」は、RNAポリメラーゼを結合させることができ、下流のコード配列又は非コード配列の転写開始に関与するDNA制御領域/配列を指す。本開示のいくつかの例において、プロモーター配列は、転写開始点を含み、上流側に向かって、バックグラウンドよりも高い検出可能なレベルで転写開始するのに必要最小限の塩基又はエレメントを含む。いくつかの実施形態では、プロモーター配列は、転写開始点、並びにRNAポリメラーゼを結合させる役割を果たすタンパク質結合ドメインを含む。真核生物プロモーターは、常にではないがしばしば、「TATA」ボックス及び「CAT」ボックスを含む。誘導性プロモーターなどの各種のプロモーターを、例えば本開示の宿主細胞又はベクターにおいて用いて、遺伝子発現を駆動させうる。いくつかの実施形態では、プロモーターはリーク発現をもたらすプロモーターではなく、すなわち、該プロモーターは、本願明細書に記載される遺伝子産物のうちのいずれか1つを構成的に発現しない。
【0033】
[0047]本明細書中で使用する「異種プロモーター」という用語は、それが作動可能に連結される遺伝子とは異なる種に由来する、かかる制御エレメントを指す。いくつかの実施形態では、異種プロモーターは原核生物の系に由来する。いくつかの実施形態では、異種プロモーターは真核生物の系に由来する。いくつかの実施形態では、本開示は、1つ又は複数の異種プロモーターが染色体に組み込まれて宿主細胞のゲノムに入っている細胞を提供する。
【0034】
[0048]本願明細書に記載される用語「作動可能な組合せにおいて」、「作動可能な順序で」及び「作動可能に連結される」は、所定の遺伝子の転写及び/又は所望のタンパク質分子の合成を誘導できる核酸分子が生産される態様での核酸配列の結合を指す。用語はまた、機能性タンパク質が得られる態様でのアミノ酸配列の結合を指す場合もある。いくつかの実施形態では、目的遺伝子はプロモーターに作動可能に連結され、目的遺伝子は染色体に組み込まれて宿主細胞に入っている。いくつかの実施形態では、目的遺伝子は異種プロモーターに作動可能に連結され、目的遺伝子は染色体に組み込まれて宿主細胞に入っている。いくつかの実施形態では、補助的遺伝子はプロモーターに作動可能に連結され、補助的遺伝子は宿主細胞の染色体に組み込まれて宿主細胞のゲノムに入っている。いくつかの実施形態では、補助的遺伝子は異種プロモーターに作動可能に連結され、補助的遺伝子は宿主細胞の染色体に組み込まれて宿主細胞のゲノムに入っている。いくつかの実施形態では、DtEタンパク質をコードする遺伝子はプロモーターに作動可能に連結され、DtEタンパク質をコードする遺伝子は宿主細胞の染色体に組み込まれて宿主細胞のゲノムに入っている。いくつかの実施形態では、DtEタンパク質をコードする遺伝子は異種プロモーターに作動可能に連結され、DtEタンパク質をコードする遺伝子は宿主細胞の染色体に組み込まれて宿主細胞のゲノムに入っている。いくつかの実施形態では、リコンビナーゼ遺伝子はプロモーターに作動可能に連結され、リコンビナーゼ遺伝子は染色体に組み込まれて宿主細胞に入っている。いくつかの実施形態では、リコンビナーゼ遺伝子はプロモーターに作動可能に連結され、リコンビナーゼ遺伝子は染色体に組み込まれて宿主細胞のゲノムに入っていない。いくつかの実施形態では、リコンビナーゼ遺伝子は異種プロモーターに作動可能に連結され、リコンビナーゼ遺伝子は染色体に組み込まれて宿主細胞のゲノムに入っていない。いくつかの実施形態では、リコンビナーゼ遺伝子は異種プロモーターに作動可能に連結され、リコンビナーゼ遺伝子は染色体に組み込まれて宿主細胞のゲノムに入っていない。
【0035】
[0049]いくつかの実施形態では、制御エレメントは、遺伝子発現を、外因的に供給されたリガンドの存在に作動可能に連結する。いくつかの実施形態では、目的遺伝子はプロモーターに作動可能に連結され、プロモーターは遺伝子発現を外因的に供給されたリガンドの存在に作動可能に連結し、目的遺伝子は宿主細胞の染色体に組み込まれて宿主細胞のゲノムに入っている。いくつかの実施形態では、補助的遺伝子はプロモーターに作動可能に連結され、プロモーターは遺伝子発現を外因的に供給されたリガンドの存在に作動可能に連結し、補助的遺伝子は染色体に組み込まれて宿主細胞に入っている。いくつかの実施形態では、DtEタンパク質をコードする遺伝子はプロモーターに作動可能に連結し、プロモーターは遺伝子発現を外因的に供給されたリガンドの存在に作動可能に連結し、DtEタンパク質をコードする遺伝子は宿主細胞の染色体に組み込まれて宿主細胞のゲノムに入っている。いくつかの実施形態では、リコンビナーゼ遺伝子はプロモーターに作動可能に連結され、プロモーターは遺伝子発現を外因的に供給されたリガンドの存在に作動可能に連結し、リコンビナーゼ遺伝子は染色体に組み込まれて宿主細胞のゲノムに入っている。いくつかの実施形態では、リコンビナーゼ遺伝子はプロモーターに作動可能に連結され、プロモーターは遺伝子発現を外因的に供給されたリガンドの存在に作動可能に連結し、リコンビナーゼ遺伝子は染色体に組み込まれて宿主細胞のゲノムに入っていない。
【0036】
[0050]本願明細書の用語「染色体に組み込まれた」又は「染色体への組込み」は、宿主細胞(例えば哺乳動物細胞)の染色体への核酸配列の安定な取り込み、すなわち、宿主細胞(例えば哺乳動物細胞)の染色体のゲノムDNA(gDNA)に核酸配列が組み込まれることを指す。いくつかの実施形態では、染色体に組み込まれている核酸配列は安定である。いくつかの実施形態では、染色体に組み込まれている核酸配列は、プラスミド又はベクターに配置されない。いくつかの実施形態では、染色体に組み込まれている核酸配列は切除されない。いくつかの実施形態では、染色体への組込みは、クラスター形成され一定の間隔をあけられた短いパリンドロームリピート(CRISPR)、及びCRISPR関連タンパク質(Cas)遺伝子編集システム(CRISPR/CAS)により媒介される。
【0037】
[0051]本願明細書に記載される用語「染色体座位」は、少なくとも1つの遺伝子を含みうる、細胞の染色体上の核酸の、所定の位置を指す。いくつかの実施形態では、染色体座位は、約500塩基対~約100,000塩基対、約5,000塩基対~約75,000塩基対、約5,000塩基対~約60,000塩基対、約20,000塩基対~約50,000塩基対、約30,000塩基対~約50,000塩基対又は約45,000塩基対~約49,000塩基対を含む。いくつかの実施形態では、染色体座位は、所定の核酸配列の5’又は3’末端から最大約100塩基対、約250塩基対、約500塩基対、約750塩基対又は約1000塩基対伸長する。いくつかの実施形態では、染色体座位は内因性の核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、染色体座位は、分子生物学の当業者に公知の方法を使用して染色体に組み込まれた外因性のヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、染色体座位は、宿主細胞のゲノム内に、染色体座位内に組み込まれる目的遺伝子によりコードされる異種タンパク質を強力且つ安定に生産させるヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、染色体座位は、宿主細胞のゲノム内に、ウイルス遺伝子を強力且つ安定に発現させるヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、染色体座位は、宿主細胞のゲノム内にて、効率的に部位特異的な組込みを生じさせるヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、染色体座位は、表1に記載されるNL1座位、NL2座位、NL3座位、NL4座位、NL5座位又はNL6座位を含む。 いくつかの実施形態では、本開示は、少なくとも2つの別個のRTSを含む哺乳動物細胞に関し、2つのRTSは、表1に記載のNL1座位、NL2座位、NL3座位、NL4座位、NL5座位又はNL6座位内において染色体に組み込まれている。いくつかの実施形態では、本開示は、少なくとも2つの別個のRTSを含む哺乳動物細胞に関し、2つのRTSは、表1に記載のNL1座位又はNL2座位内において染色体に組み込まれている。
【0038】
【表1】
[0052]当業者は「NL1座位内で組み込まれる」又は「NL2座位内で組み込まれる」という用語が、座位のいかなる部分への組込みも包含し、それが示されるゲノム座標にのみ限定されないことを理解するであろう。当業者は「NL1座位内で組み込まれる」又は「NL2座位内で組み込まれる」という用語が、対応する生物における対応する座も包含するものと理解するであろう。したがって、いくつかの実施形態では、「NL1座位内で組み込まれる」又は「NL2座位内で組み込まれる」という用語は、示されるゲノム座標の約50,000bp以内、約40,000bp以内、約30,000bp以内、20,000bp以内又は10,000bp以内への組込みを包含するであろう。
【0039】
[0053]いくつかの実施形態では、本開示は、少なくとも2つの別個のRTSを含む哺乳動物細胞に関し、2つのRTSは、Fer1L4(例えば米国特許出願第14/409,283号を参照)、ROSA26、HGPRT、DHFR、COSMC、LDHA又はMGAT1から選択される染色体座位内において染色体に組み込まれている。いくつかの実施形態では、染色体座位は、X染色体上のMID1の第1イントロンを含む。いくつかの実施形態では、染色体座位は、発現増強及び安定性領域(EESYR、例えば米国特許第7,771,997号明細書を参照)を含む。いくつかの実施形態では、天然の染色体座位の少なくとも一部の遺伝子は欠失している。
【0040】
[0054]「ベクター」又は「発現ベクター」は、例えばプラスミド、ファージ、ウイルス又はコスミドなどのレプリコンであり、それに対して他のDNA断片が連結され、細胞内において当該連結されたDNA断片の複製及び/又は発現がなされる。「ベクター」には、エピソーム性(例えばプラスミド)及び非エピソーム性のベクターが含まれる。本開示のいくつかの実施形態では、ベクターはエピソーム性のベクターであり、それは、例えば非対称的な分離により、度重なる細胞世代を経た後で細胞集団から除去され/失われる。用語「ベクター」は、インビトロ、インビボ、又はエクスビボで核酸分子を細胞に導入するためのウイルス性及び非ウイルス性の手段を包含する。用語ベクターには、合成ベクターが包含されうる。ベクターは、トランスフェクション、トランスダクション、細胞融合及びリポフェクションを含むがこれに限定されない周知の方法により、所望の宿主細胞に導入できる。ベクターは、プロモーターを含む各種の制御エレメントを含んでもよい。
【0041】
[0055]本明細書において、「交換可能なカセット」又は「カセット」という用語は、遺伝子及び組換え部位を含む一種の可動的な遺伝的エレメントである。いくつかの実施形態では、交換可能なカセットは少なくとも2つのRTSを含む。いくつかの実施形態では、交換可能なカセットはレポーター遺伝子又は選択遺伝子を含む。いくつかの実施形態では、カセットは、リコンビナーゼにより媒介されるカセット交換(recombinase-mediated cassette-exchange:RMCE)により交換される。
【0042】
[0056]いくつかの実施形態では、部位特異的組込みは、1つ又は複数の遺伝子を宿主細胞の染色体に導入するために用いる。参照により本願明細書に組み込む、Bode et al.,Biol.Chem.381:801-813(2000),Kolb,Cloning and Stem Cells 4:381-392(2002)及びCoates et al.,Trends in Biotech.23:407-419(2005)を参照。いくつかの実施形態では、「部位特異的組込み」は、ある核酸配列を染色体の特定の部位に組み込むことを指す。いくつかの実施形態では、部位特異的組込みは、「部位特異的組換え」を意味することもある。いくつかの実施形態では、「部位特異的組換え」は、配列又は標的部位のそれらの同族対での組換を触媒する特異的な酵素による、2つのDNAパートナー分子の再編成を指す。部位特異的組換えは、相同組換とは対照的に、パートナーDNA分子の間にDNA相同性を必要とせず、RecAとは独立しており、またいかなる段階においてもDNA複製が関与しない。いくつかの実施形態では、部位特異的組換えは、宿主細胞(例えば哺乳動物細胞)における核酸の部位特異的組込みを触媒する部位特異的リコンビナーゼシステムを使用する。リコンビナーゼシステムは、典型的には、2つの特異的なDNA配列(組換え標的部位)、及び特異的な酵素(リコンビナーゼ)の3つのエレメントからなる。リコンビナーゼは、複数の特異的な組換え部位間での組換え反応を触媒する。
【0043】
[0057]リコンビナーゼ酵素又はリコンビナーゼは、部位特異的組換えにおいて、組換えを触媒する酵素である。本開示のいくつかの実施形態では、部位特異的組換えに使用するリコンビナーゼは、非哺乳動物の系に由来する。いくつかの実施形態では、リコンビナーゼは、細菌、バクテリオファージ又は酵母に由来する。
【0044】
[0058]いくつかの実施形態では、リコンビナーゼをコードする核酸配列は、宿主細胞(例えば哺乳動物細胞)に組み込まれる。いくつかの実施形態では、リコンビナーゼをコードする核酸配列は、分子生物学において公知の方法により宿主細胞に送達される。いくつかの実施形態では、リコンビナーゼのポリペプチド配列を直接細胞に送達してもよい。いくつかの実施形態では、リコンビナーゼは、Creリコンビナーゼ、FLPリコンビナーゼ、Dreリコンビナーゼ、KDリコンビナーゼ、B2B3リコンビナーゼ、Hinリコンビナーゼ、Treコンビナーゼ、λインテグラーゼ、HK022インテグラーゼ、HP1インテグラーゼ、γδレゾルバーゼ/インベルターゼ、ParAレゾルバーゼ/インベルターゼ、Tn3レゾルバーゼ/インベルターゼ、Ginレゾルバーゼ/インベルターゼ、φC31インテグラーゼ、BxB1インテグラーゼ、R4インテグラーゼ又は他の機能性リコンビナーゼ酵素である。例えば、Thorpe & Smith, Proc. Nat’l. Acad. Sci. USA 95: 5505-5510(1998)、Kuhstoss & Rao, J. Mol. Biol. 222:897-890(1991)、米国特許第5,190,871号明細書、Ow & Ausubel, J. Bacteriol. 155:704-713(1983)、Matsuura et al., J. Bacteriol. 178:3374-3376(1996)、Sato et al., J. Bacteriol. 172:1092-1098(1990)、Stragier et al., Science 243:507-512(1989)、Carrasco et al., Genes Dev. 8: 74-83(1994)、Bannam et al., Mol. Microbiol. 16:535-551(1995)、Crelin & Rood, J. Bacteriol. 179:5148-5156(1997)を参照。
【0045】
[0059]いくつかの実施形態では、本願明細書に記載されるリコンビナーゼはFLPリコンビナーゼである。FLPリコンビナーゼは、DNA複製の間、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)の2μプラスミドのコピー数の増幅に関係する部位特異的組換え反応を触媒するタンパク質である。いくつかの実施形態では、本開示のFLPリコンビナーゼはサッカロマイセス(Saccharomyces)属の種に由来する。いくつかの実施形態では、FLPリコンビナーゼはサッカロマイセス・セレビシエに由来する。いくつかの実施形態では、FLPリコンビナーゼはサッカロマイセス・セレビシエの株に由来する。いくつかの実施形態では、FLPリコンビナーゼは耐熱性の変異FLPリコンビナーゼである。いくつかの実施形態では、FLPリコンビナーゼはFLP1又はFLPeである。いくつかの実施形態では、FLPリコンビナーゼをコードする核酸配列は、ヒトにおいて最適化されたコドンを含む。
【0046】
[0060]いくつかの実施形態では、リコンビナーゼはCreリコンビナーゼである。Cre(causes recombination)は、リコンビナーゼのIntファミリーのメンバーであり(Argos et al. (1986) EMBO J. 5:433)、細菌のみならず真核細胞においても、lox部位(locus of X-ing over)の効率的な組換えを行うことが示されている(Sauer(1987) Mol. Cell. Biol. 7:2087、Sauer and Henderson(1988) Proc. Natl Acad. Sci. 85:5166)。いくつかの実施形態では、本願明細書に記載され、使用されるCreリコンビナーゼは、バクテリオファージに由来する。いくつかの実施形態では、CreリコンビナーゼはP1バクテリオファージに由来する。
【0047】
[0061]本明細書に記載される用語「部位特異的組込み部位」、「組換え標的部位」、「RTS」及び「部位特異的リコンビナーゼ標的部位」は、短い(例えば約60未満の塩基対の)核酸部位又は配列を指し、それは部位特異的リコンビナーゼにより認識され、部位特異的組換えイベントの間の交差領域となる。いくつかの実施形態では、組換え標的部位は、約60未満の塩基対、約55未満の塩基対、約50未満の塩基対、約45未満の塩基対、約40未満の塩基対、約35未満の塩基対又は約30未満の塩基対である。いくつかの実施形態では、組換え標的部位は、約30~約60の塩基対、約30~約55の塩基対、約32~約52の塩基対、約34~約44の塩基対、約32の塩基対、約34の塩基対又は約52の塩基対である。部位特異的組換え標的部位の例には、lox部位、rox部位、frt部位、att部位及びdif部位が包含されるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、組換え標的部位は、配列番号1~30に示すのと実質的に同じ配列を有する核酸である。
【0048】
[0062]いくつかの実施形態では、RTSは、表1から選択されるlox部位である。本願明細書に記載の用語「lox部位」は、Creリコンビナーゼが部位特異的組換えを触媒できるヌクレオチド配列を指す。様々な同一でないlox部位が当技術分野で公知である。各種のlox部位の配列は、組換えが起こる8塩基の対非対称コア領域に隣接する同一の13塩基対の逆向き反復配列をそれら全てが含むという点で類似している。部位の方向性、及び各種のlox部位の変動性の原因となるのは、非対称コア領域である。これらの(非限定的な)例としては、天然のloxP(P1ゲノムに存在する配列)、loxB、loxL及びloxR(これらは大腸菌(E.coli)染色体に存在)、並びにいくつかの変異型又は改変型lox部位(例えばloxP511、loxΔ86、loxΔ117、loxC2、loxP2、loxP3及びloxP23)が挙げられる。いくつかの実施形態では、lox組換え標的部位は、表2に示す配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する核酸である。
【0049】
【表2】
[0063]いくつかの実施形態では、RTSは、loxΔ86、loxΔ117、loxC2、loxP2、loxP3及びloxP23から選択されるlox部位である。
【0050】
[0064]いくつかの実施形態では、RTSは、表3から選択されるFrt部位である。本願明細書に記載の用語「Frt部位」は、酵母の2μmプラスミドのFLP遺伝子の産物(FLPリコンビナーゼ)が部位特異的組換えを触媒できるヌクレオチド配列を指す。様々な同一でないFrt部位が当技術分野で公知である。各種のFrt部位の配列は、組換えが起こる8塩基の対非対称コア領域に隣接する同一の13塩基対の逆向き反復配列をそれら全てが含むという点で類似している。部位の方向性、及び各種のFrt部位の変動性の原因となるのは、非対称コア領域である。これらの(非限定的な)例には、天然のFrt(F)及びいくつかの変異型又は改変型Frt部位(例えばFrt F1及びFrt F2)が包含される。いくつかの実施形態では、Frt組換え標的部位は、表3に示す配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する核酸である。
【0051】
【表3】
[0065]いくつかの実施形態では、RTSは、表4から選択されるrox部位である。本願明細書に記載の用語「rox部位」は、Dreリコンビナーゼが部位特異的組換えを触媒できるヌクレオチド配列を指す。様々な同一でないrox部位が当技術分野で公知である。これらの(非限定的な)例としては、roxR及びroxFが包含される。いくつかの実施形態では、rox組換え標的部位は、表4に示す配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する核酸である。
【0052】
【表4】
[0066]いくつかの実施形態では、RTSは、表5から選択されるatt部位である。本願明細書に記載の用語「att部位」は、λインテグラーゼ又はφC31インテグラーゼが部位特異的組換えを触媒できるヌクレオチド配列を指す。様々な同一でないatt部位が当技術分野で公知である。これらの(非限定的な)例としては、attP、attB、proB、trpC、galT、thrA及びrrnBが包含される。いくつかの実施形態では、att組換え標的部位は、表5に示す配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する核酸である。
【0053】
【表5】
[0067]本願明細書に記載される用語「別個の組換え標的部位」は、同一でない、又は異種特異的な組換え標的部位を指す。例えば、いくつかのバリアントFrt部位が存在するが、組換えは通常、同一の2つのFrt部位の間でのみ起こりうる。いくつかの実施形態では、別個の組換え標的部位は、同じ組換え系(例えばLoxP及びLoxR)に由来する同一でない組換え標的部位を指す。いくつかの実施形態では、別個の組換え標的部位は、異なる組換え系(例えばLoxP及びFrt)に由来する同一でない組換え標的部位を指す。いくつかの実施形態では、別個の組換え標的部位は、同じ組換え系に由来する組換え標的部位と、異なる組換え系に由来する組換え標的部位との組合せ(例えばLoxP、LoxR、Frt及びFrt1)を指す。
【0054】
[0068]各種のRTSの組合せが使用できる。いくつかの実施形態では、細胞は2つの別個のRTSを含む。いくつかの実施形態では、細胞は4つのRTSを含む。いくつかの実施形態では、細胞は6つのRTSを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのRTSは、配列番号1~30から選択される。いくつかの実施形態では、細胞は6つのRTSを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのRTSは、配列番号1~6から選択される。いくつかの実施形態では、細胞は6つのRTSを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのRTSは、配列番号7~21から選択される。いくつかの実施形態では、細胞は6つのRTSを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのRTSは、配列番号22~23から選択される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのRTSは、配列番号28~30から選択される。いくつかの実施形態では、細胞は6つのRTSを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのRTSは、配列番号24~27から選択される。いくつかの実施形態では、少なくとも4つの別個のRTSを含む細胞は、以下のRTSを含む:LoxP511、Frt F5、Frt及びLoxP。いくつかの実施形態では、少なくとも4つの別個のRTSを含む細胞は、以下のRTSを含む:Frt F14及びFrt F15。いくつかの実施形態では、少なくとも4つの別個のRTSを含む細胞は、以下のRTSを含む:LoxP511、Frt F5、Frt、LoxP、Frt F14及びFrt F15。いくつかの実施形態では、少なくとも4つの別個のRTSを含む細胞は、以下のRTSを含んでもよい:Frt 1、Frt 2、Frt 3、Frt 4。いくつかの実施形態では、少なくとも4つの別個のRTSを含む細胞は、以下のRTSを含む:Frt m5、Frt wt、Frt m14、Frt m15、Frt m7及びFrt m6。いくつかの実施形態では、6つの別個のRTSを含む細胞は、以下のRTSを含んでもよい:Frt 1、Frt 2、Frt 3、Frt 4、Frt 5、Frt 6。いくつかの実施形態では、少なくとも4つの別個のRTSを含む細胞は、以下のRTSを含んでもよい:Frt m5、Frt、Frt m14、Frt m15。
【0055】
[0069]本願明細書に記載される用語「ランディングパッド」は、宿主細胞において染色体に組み込まれている第1の組換え標的部位を含む核酸配列を指す。いくつかの実施形態では、ランディング部位は、宿主細胞において染色体に組み込まれている2つ以上の組換え標的部位を含む。いくつかの実施形態では、細胞は1、2、3、4、5、6、7又は8つのランディングパッドを含む。いくつかの実施形態では、細胞は1、2又は3つのランディングパッドを含む。いくつかの実施形態では、細胞は4つのランディングパッドを含む。いくつかの実施形態では、ランディングパッドは、最大1、2、3、4、5、6、7又は8つの別個の染色体座位に組み込まれている。いくつかの実施形態では、ランディングパッドは、最大1、2又は3つの別個の染色体座位に組み込まれている。いくつかの実施形態では、ランディングパッドは、最大4つの別個の染色体座位に組み込まれている。
【0056】
[0070]いくつかの実施形態では、本開示は、各種の座位から、例えばDtEタンパク質などの各種のタンパク質を発現させることによって、タンパク質の所望の発現を達成させる方法を記載する。いくつかの実施形態では、DtEタンパク質は、例えばCHOの染色体のNL1座位から発現される。いくつかの実施形態では、DtEタンパク質は、例えばCHOの染色体のNL2座位から発現される。
【0057】
[0071]いくつかの実施形態では、細胞は2つの別個のRTSを含む。いくつかの実施形態では、2つの別個のRTSは、NL1座位内において染色体に組み込まれている。いくつかの実施形態では、2つの別個のRTSは、NL2座位内において染色体に組み込まれている。いくつかの実施形態では、細胞は4つの別個のRTSを含む。いくつかの実施形態では、4つの別個のRTSは、同じ座位内において染色体に組み込まれている。いくつかの実施形態では、2つの別個のRTSはNL1座位又はNL2座位内において染色体に組み込まれ、2つの別個のRTSは別々の座位において染色体に組み込まれている。いくつかの実施形態では、別々の座位は、Fer1L4座位である。いくつかの実施形態では、2つの別個のRTSはNL1座位内において染色体に組み込まれ、2つの別個のRTSはNL2座位内において染色体に組み込まれている。いくつかの実施形態では、細胞は6つの別個のRTSを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも4つの別個のRTSは、同じ座位内において染色体に組み込まれている。いくつかの実施形態では、少なくとも2つの別個のRTSはNL1座位又はNL2座位内において染色体に組み込まれ、少なくとも2つの別個のRTSは別々の座位において染色体に組み込まれている。いくつかの実施形態では、別々の座位は、Fer1L4座位である。いくつかの実施形態では、少なくも2つの別個のRTSはNL1座位内において染色体に組み込まれ、少なくとも2つの別個のRTSはNL2座位内において染色体に組み込まれている。いくつかの実施形態では、RTSの少なくとも1つは、frt部位、lox部位、rox部位又はatt部位である。いくつかの実施形態では、RTSの少なくとも1つは、配列番号1~30から選択される。
【0058】
[0072]各種の細胞が、本開示に従い使用できる。いくつかの実施形態では、細胞は、マウス細胞、ヒト細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、CHO-K1細胞、CHO-DXB11細胞、CHO-DG44細胞、すべてのバリアント(例えばCHOK1SV POTELLIGENT(登録商標)、Lonza、Slough、英国)を含むCHOK1SV(商標)細胞、すべてのバリアントを含むCHOK1SV GS-KO(商標)細胞(グルタミン合成酵素ノックアウト)、付着適応及び懸濁適応バリアントを含むHEK293細胞、ヒーラ細胞又はHT1080細胞である。いくつかの実施形態では、哺乳動物細胞は少なくとも2つの別個のRTSを含み、RTSはNL1座位、NL2座位又はFer1L4座位内において染色体に組み込まれている。いくつかの実施形態では、哺乳動物細胞は少なくとも4つの別個のRTSを含み、2つの別個のRTSはNL1座位又はNL2座位内において染色体に組み込まれ、2つの別個のRTSは別々の座位において染色体に組み込まれている。いくつかの実施形態では、別々の座位は、Fer1L4座位である。いくつかの実施形態では、哺乳動物細胞は少なくとも4つの別個のRTSを含む、2つの別個のRTSはNL1座位内において染色体に組み込まれ、2つの別個のRTSはNL2座位内において染色体に組み込まれている。いくつかの実施形態では、哺乳動物細胞は少なくとも4つの別個のRTSを含み、4つの別個のRTSはNL1座位又はNL2座位内において染色体に組み込まれている。いくつかの実施形態では、哺乳動物細胞は少なくとも6つの別個のRTSを含み、2つの別個のRTSはNL1座位内において染色体に組み込まれ、2つの別個のRTSはNL2座位内において染色体に組み込まれ、2つの別個のRTSは別々の座位において染色体に組み込まれている。いくつかの実施形態では、別々の座位は、Fer1L4座位である。いくつかの実施形態では、哺乳動物細胞は少なくとも6つの別個のRTSを含み、6つの別個のRTSはNL1座位又はNL2座位内に組み込まれている。いくつかの実施形態では、哺乳動物細胞は少なくとも6つの別個のRTSを含み、4つの別個のRTSはNL1座位又はNL2座位内に組み込まれ、2つの別個のRTSは別々の座位に組み込まれている。いくつかの実施形態では、第2の座位は、Fer1L4座位である。
【0059】
[0073]いくつかの実施形態では、細胞は第1の目的遺伝子を含み、第1の目的遺伝子は染色体に組み込まれている。
【0060】
[0074]本願明細書に記載される「目的遺伝子」又は「GOI」という用語は、異種遺伝子を記載するために用いる。本願明細書に記載される「異種遺伝子」又は「HG」という用語は、コーディング配列又は制御配列などの核酸配列に関連する場合には、通常では結合されず、及び/又は通常では特定の細胞との関連がない、核酸配列(例えば遺伝子)を意味する。いくつかの実施形態では、異種遺伝子は、コーディング配列自体が天然で見つからない構築物(例えば天然遺伝子と異なるコドンを有する合成配列)である。アレルの変動又は天然に生じる変異イベントは、本発明で用いられるような異種DNAを生じさせない。
【0061】
[0075]いくつかの実施形態では、目的遺伝子は、レポーター遺伝子、選択遺伝子、治療目的遺伝子、補助的遺伝子又はそれらの組合せを含む。
【0062】
[0076]本願明細書に記載される「レポーター遺伝子」は、その発現が、細胞に対して容易に同定でき及び測定できる表現型を付与する遺伝子のことである。いくつかの実施形態では、レポーター遺伝子は蛍光タンパク質遺伝子を含む。いくつかの実施形態では、レポーター遺伝子は選択遺伝子を含む。
【0063】
[0077]本願明細書に記載される用語「選択遺伝子」は、通常の必須栄養素が欠損する培地において増殖する能力を付与するための酵素活性をコードする遺伝子の使用を指し、加えて、選択遺伝子は、該選択遺伝子が発現される細胞に抗生物質又は薬剤に対する耐性を付与できるものであってもよい。選択遺伝子を用いて、宿主細胞に特定の表現型を与えてもよい。宿主細胞が、選択培地において増殖しようとするときに選択遺伝子を発現しなければならない場合、該遺伝子はポジティブセレクション遺伝子と呼ばれる。また選択遺伝子は、特定の遺伝子を含む宿主細胞に対する選択に用いることもでき、このように用いられる選択遺伝子はネガティブセレクション遺伝子と呼ばれる。
【0064】
[0078]本願明細書に記載される用語「治療目的遺伝子」は、何らかの機能的関連性のあるヌクレオチド配列を指す。したがって、本開示の治療目的遺伝子は、治療的な組換えタンパク質を調製するために発現させる必要のあるタンパク質をコードするいかなる好ましい遺伝子を含んでもよい。治療目的遺伝子の適切な(非限定的な)代表例には、モノクローナル抗体、二重特異性モノクローナル抗体又は抗体薬物コンジュゲートが挙げられる[血液凝固因子、タンパク質発現が転写において制限される、十分に発現されるmAb、ホルモン(例えばEPO)、免疫融合タンパク質(Fc融合体)、三重特異性mAbを含む]。
【0065】
[0079]本明細書に記載される用語「補助的遺伝子」又は「ヘルパー遺伝子」は、第2の遺伝子の発現を補助するか、又は第2の遺伝子の産物の安定化、フォールディング若しくは翻訳後修飾の補助を行うか、又は第2の遺伝子の産物の生産を促進する細胞環境を構築する、第1の遺伝子を指すものとして交換可能に用いられる。いくつかの実施形態では、第2の遺伝子はDtEをコードする遺伝子である。いくつかの実施形態では、補助的遺伝子はRNAをコードする。いくつかの実施形態では、補助的遺伝子はmRNA、tRNA又はmiRNAをコードする。いくつかの実施形態では、補助的遺伝子は、転写因子、シャペロン、シャペロニン、シンセターゼ、オキシダーゼ、レダクターゼ、グリコトランスフェラーゼ、プロテアーゼ、キナーゼ、ホスファターゼ、アセチルトランスフェラーゼ、リパーゼ又はアルキラーゼをコードする。
【0066】
[0080]いくつかの実施形態では、第1の目的遺伝子は、レポーター遺伝子、選択遺伝子、治療目的遺伝子、補助的遺伝子又はそれらの組合せを含む。いくつかの実施形態では、治療目的遺伝子は、所望のコピー数で十分に発現される治療的なタンパク質をコードする遺伝子を含む。いくつかの実施形態では、十分に発現される治療的なタンパク質をコードする遺伝子は、2コピー、3コピー、4コピー、5コピー、6コピー、7コピー、8コピー、9コピー又は10コピーのコピー数である。いくつかの実施形態では、治療目的遺伝子は、DtEタンパク質をコードする遺伝子を含む。
【0067】
[0081]本願明細書に記載される用語「発現困難タンパク質」は、その生産が困難であるタンパク質を指す。いくつかの実施形態では、DtEタンパク質の生産は、タンパク質発現が高度に制御されるために困難である場合もある。いくつかの実施形態では、DtEタンパク質は、宿主細胞からの回収が困難である。いくつかの実施形態では、DtEタンパク質は、ミスフォールディングの傾向を有するタンパク質である。いくつかの実施形態では、DtEタンパク質は、クリッピングの傾向を有するタンパク質である。いくつかの実施形態では、DtEタンパク質は、分解される傾向を有するタンパク質である。いくつかの実施形態では、DtEタンパク質は、凝集の傾向を有するタンパク質である。いくつかの実施形態では、DtEタンパク質は、溶解性が低いタンパク質である。いくつかの実施形態では、DtEタンパク質は、膜結合タンパク質である。いくつかの実施形態では、DtEタンパク質は、精製が困難である。いくつかの実施形態では、DtEタンパク質は、細胞毒性を有する。いくつかの実施形態では、DtEタンパク質は、複数のポリペプチド鎖(例えば2、3又は4つのポリペプチド鎖)を含む。いくつかの実施形態では、DtEタンパク質の複数のポリペプチド鎖は、ホモオリゴマーを形成してDtEタンパク質を生産する。いくつかの実施形態では、DtEタンパク質の複数のポリペプチド鎖は、ヘテロオリゴマーを形成して、DtEタンパク質を生産する。いくつかの実施形態では、ホモオリゴマー又はヘテロオリゴマーは、共有結合性の相互作用、非共有結合性の相互作用又はそれらの組合せにより形成される。いくつかの実施形態では、DtEタンパク質は、補助的遺伝子の発現がDtEタンパク質の生産に必要となるタンパク質を含む。いくつかの実施形態では、DtEタンパク質は、翻訳後修飾がDtEタンパク質の生産に必要となるタンパク質である。いくつかの実施形態では、DtEタンパク質は、分子生物学の当業者に公知の標準的な技術を用いた発現が変動的な特徴を有する生産タンパク質をもたらすタンパク質である。いくつかの実施形態では、DtEタンパク質は融合タンパク質である。
【0068】
[0082]例えば、いくつかの実施形態では、本開示は、DtEタンパク質が2g/L以上のタンパク質生成力価において得られるよう、NL1座位及び/又はNL2座位からDtEタンパク質を発現させる方法を記載する。いくつかの実施形態では、NL1座位におけるDtEタンパク質の発現は、DtEタンパク質を2g/L超で生産させる。いくつかの実施形態では、NL2座位におけるDtEタンパク質の発現は、DtEタンパク質を2g/L超で生産させる。いくつかの実施形態では、DtEタンパク質は、分子生物学の当業者に公知の標準的な技術を用いた発現が2g/L未満のタンパク質生成力価をもたらすタンパク質である。
【0069】
[0083]いくつかの実施形態では、DtEタンパク質はモノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、DtEタンパク質は二重特異性モノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、DtEタンパク質は三重特異性モノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、DtEタンパク質はFc融合タンパク質である。本願明細書に記載される用語「Fc融合タンパク質」は、免疫グロブリンのFcドメインが第2のペプチドに作動可能に連結される融合タンパク質を指す。いくつかの実施形態では、DtEタンパク質は酵素である。いくつかの実施形態では、DtEタンパク質は膜受容体である。いくつかの実施形態では、DtEタンパク質は二重特異的なT細胞エンゲージャー(BITE(登録商標)、Micromet AG,Munich,Germany)である。
【0070】
[0084]いくつかの実施形態では、DtEタンパク質は、Fc融合タンパク質、酵素、膜受容体又はモノクローナル抗体からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、モノクローナル抗体は、二重特異性モノクローナル抗体又は三重特異性モノクローナル抗体である。
【0071】
[0085]いくつかの実施形態では、DtEタンパク質は、1つ又は複数の目的遺伝子にコードされる。いくつかの実施形態では、第1の目的遺伝子は、2つのRTSの間に位置する。
【0072】
[0086]本願明細書に記載される用語「2つのRTSの間に位置する」とは、2つのRTSの間に位置する遺伝子を指し、すなわち、RTSの1つが遺伝子の5’に位置し、別のRTSが遺伝子の3’に位置することを指す。いくつかの実施形態では、RTSは、それらの間に位置する遺伝子に直接隣接して位置する。いくつかの実施形態では、RTSは、それらの間に位置する遺伝子から所定の距離を置いて位置する。いくつかの実施形態では、RTSは方向性を有する配列である。いくつかの実施形態では、RTSの間に位置する遺伝子の5’及び3’は、順方向に配向される(すなわち、それらは同じ方向に配向する)。いくつかの実施形態では、RTSの間に位置する遺伝子の5’及び3’は、逆方向に配向される(すなわち、それらは異なる方向に配向する)。
【0073】
[0087]いくつかの実施形態では、第1の目的遺伝子は、NL1座位に位置する。いくつかの実施形態では、細胞は第2の目的遺伝子を含み、第2の目的遺伝子は染色体に組み込まれている。いくつかの実施形態では、第2の目的遺伝子は、レポーター遺伝子、選択遺伝子、治療目的遺伝子、補助的遺伝子又はそれらの組合せを含む。いくつかの実施形態では、治療目的遺伝子は、DtEタンパク質をコードする遺伝子を含む。いくつかの実施形態では、DtEタンパク質は、Fc融合タンパク質、酵素、膜受容体、二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE(登録商標))又はモノクローナル抗体からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、第2の目的遺伝子は、2つのRTSの間に位置する。いくつかの実施形態では、第2の目的遺伝子は、NL1座位又はNL2座位内に位置する。いくつかの実施形態では、第1の目的遺伝子はNL1座位内に位置し、第2の目的遺伝子はNL2座位内に位置する。いくつかの実施形態では、細胞は第3の目的遺伝子を含み、第3の目的遺伝子は染色体に組み込まれている。いくつかの実施形態では、第3の目的遺伝子は、レポーター遺伝子、選択遺伝子、治療目的遺伝子、補助的遺伝子又はそれらの組合せを含む。いくつかの実施形態では、治療目的遺伝子は、DtEタンパク質をコードする遺伝子を含む。いくつかの実施形態では、第3の目的遺伝子は、2つのRTSの間に位置する。いくつかの実施形態では、第3の目的遺伝子は、NL1座位又はNL2座位内に位置する。いくつかの実施形態では、第3の目的遺伝子は、NL1座位及びNL2座位とは別の座位内に位置する。いくつかの実施形態では、第1の目的遺伝子、第2の目的遺伝子及び第3の目的遺伝子は、3つの別々の座位内にある。いくつかの実施形態では、第1の目的遺伝子、第2の目的遺伝子及び第3の目的遺伝子のうちの少なくとも1つは、NL1座位内にあり、第1の目的遺伝子、第2の目的遺伝子及び第3の目的遺伝子のうちの少なくとも1つは、NL2座位内にある。
【0074】
[0088]いくつかの実施形態では、細胞は、部位特異的リコンビナーゼ遺伝子を含む。いくつかの実施形態では、部位特異的リコンビナーゼ遺伝子は、染色体に組み込まれている。
【0075】
[0089]いくつかの実施形態では、本開示は、少なくとも4つの別個のRTSを含む哺乳動物細胞を提供し、細胞は、(a)NL1座位又はNL2座位内において染色体に組み込まれている少なくとも2つの別個のRTSと、(b)(a)の少なくとも2つのRTSの間に組み込まれている第1の目的遺伝子であって、レポーター遺伝子、DtEタンパク質をコードする遺伝子、補助的遺伝子又はそれらの組合せを含む第1の目的遺伝子と、(c)(a)の座位とは別の第2の染色体座位内に組み込まれている第2の目的遺伝子であって、レポーター遺伝子、DtEタンパク質をコードする遺伝子、補助的遺伝子又はそれらの組合せを含む第2の目的遺伝子とを含む。
【0076】
[0090]いくつかの実施形態では、本開示は、少なくとも4つの別個のRTSを含む哺乳動物細胞を提供し、細胞は、(a)Fer1L4座位内において染色体に組み込まれている少なくとも2つの別個のRTSと、(b)NL1座位又はNL2座位内において染色体に組み込まれている少なくとも2つの別個のRTSと、(c)Fer1L4座位内において染色体に組み込まれている第1の目的遺伝子であって、レポーター遺伝子、DtEタンパク質をコードする遺伝子、補助的遺伝子又はそれらの組合せを含む、第1の目的遺伝子と、(d)(b)のNL1座位又はNL2座位において染色体に組み込まれている第2の目的遺伝子であって、レポーター遺伝子、DtEタンパク質をコードする遺伝子、補助的遺伝子又はそれらの組合せを含む、第2の目的遺伝子とを含む。
【0077】
[0091]いくつかの実施形態では、本開示は、少なくとも6つの別個のRTSを含む哺乳動物細胞を提供し、細胞は、(a)Fer1L4座位内において染色体に組み込まれている少なくとも2つの別個のRTS及び第1の目的遺伝子と、(b)NL1座位内において染色体に組み込まれている少なくとも2つの別個のRTS及び第2の目的遺伝子と、(c)NL2座位内において染色体に組み込まれている少なくとも2つの別個のRTS及び第3の目的遺伝子とを含む。
【0078】
[0092]いくつかの実施形態では、本開示は、組換えタンパク質プロデューサー細胞を生産する方法を提供し、該方法は、(a)少なくとも4つの別個のRTS及び部位特異的リコンビナーゼをコードする遺伝子を含み、少なくとも2つの別個のRTSがNL1座位内において染色体に組み込まれ、少なくとも2つの別個のRTSがNL2座位内において染色体に組み込まれている細胞を用意するステップと、(b)(a)の細胞に、第1の目的遺伝子をコードする交換可能なカセットを含む第1のベクターと、第2の目的遺伝子をコードする交換可能なカセットを含む第2のベクターとをトランスフェクトするステップと、(c)NL1座位内に第1の交換可能なカセットを、NL2座位内に第2の交換可能なカセットを組み込むステップと、(d)染色体に組み込まれた第1の交換可能なカセット及び第2の交換可能なカセットを含む組換えタンパク質プロデューサー細胞を選択するステップとを含む。
【0079】
[0093]本発明で用いられる「トランスフェクション」は、ベクターを含む外因性の核酸分子を細胞に導入することを意味する。「トランスフェクトされた」細胞は、細胞内に外因性の核酸分子を含み、また「変換された」細胞は、細胞内の外因性の核酸分子により細胞の表現型の変化が誘導されたものである。トランスフェクトされた核酸分子は、宿主細胞のゲノムDNAに組み込まれる場合も、及び/又は、細胞により、染色体外において一時的に維持されるか若しくは長期間維持される場合もある。外因性の核酸分子又は断片を発現する宿主細胞又は生物は、「組換え」、「形質転換」又は「トランスジェニック」生物と呼ばれる。多くのトランスフェクション技術が従来技術において一般に公知である。例えば、Graham et al., Virology, 52:456(1973)、Sambrook et al., Molecular Cloning, a laboratory manual, Cold Spring Harbor Laboratories, New York(1989)、Davis et al., Basic Methods in Molecular Biology, Elsevier(1986)及びChu et al., Gene 13:197(1981)を参照。かかる技術を用いて、1つ又は複数の外来性DNA部分を適切な宿主細胞に導入することができる。
【0080】
[0094]2つのRTS配列に関する用語「マッチング」は、リコンビナーゼと結合して、2つの配列間での部位特異的組換えに影響を及ぼしうる能力を有する2つの配列を意味する。いくつかの実施形態では、細胞のRTSにマッチングする交換可能なカセット上のRTSは、細胞のRTSと実質的に同一の配列を有する該カセット上のRTSを指す。いくつかの実施形態では、交換可能なカセットは、染色体に組み込まれて宿主細胞のゲノムに入っている1つ又は2つのRTSと実質的に同一の配列を含む。
【0081】
[0095]いくつかの実施形態では、「組み込む」という用語は、交換可能なカセットの染色体への組込み(例えば挿入)を指す。いくつかの実施形態では、組込みは、部位特異的リコンビナーゼにより媒介される。いくつかの実施形態では、本発明者らは、細胞がそれらの遺伝的構成において相同であるため、SSIの使用が、トランスフェクトした細胞からのクローニングの必要性を排除することを見出している。
【0082】
[0096]いくつかの実施形態では、用語「選択」は、染色体に組み込まれたマーカーを含む細胞を同定することを指す。いくつかの実施形態では、選択は、周知の方法を用いたマーカーの存在の検出により行う。いくつかの実施形態では、選択は、周知の方法を用いたマーカーの不存在の検出により行う。
【0083】
[0097]いくつかの実施形態では、第1の目的遺伝子は、レポーター遺伝子、選択遺伝子、治療目的遺伝子、補助的遺伝子又はそれらの組合せを含む。いくつかの実施形態では、治療目的遺伝子は、DtEタンパク質をコードする遺伝子を含む。いくつかの実施形態では、DtEタンパク質は、Fc融合タンパク質、酵素、膜受容体、二重特異性T細胞エンゲージャー(BITE(登録商標))又はモノクローナル抗体からなる。いくつかの実施形態では、モノクローナル抗体は、二重特異性モノクローナル抗体又は三重特異性モノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、第1の目的遺伝子は、2つのRTSの間に位置する。いくつかの実施形態では、第2の目的遺伝子は、レポーター遺伝子、選択遺伝子、治療目的遺伝子、補助的遺伝子又はそれらの組合せを含む。いくつかの実施形態では、治療目的遺伝子は、DtEタンパク質をコードする遺伝子を含む。いくつかの実施形態では、第2の目的遺伝子は、2つのRTSの間に位置する。
【0084】
[0098]いくつかの実施形態では、本開示は、組換えタンパク質プロデューサー細胞を生産する方法を提供し、該方法は、(a)少なくとも少なくとも4つの別個のRTS及び部位特異的リコンビナーゼをコードする遺伝子を含み、少なくとも2つの別個のRTSが、Fer1L4座位内において染色体に組み込まれ、少なくとも2つの別個のRTSが、NL1座位又はNL2座位内において染色体に組み込まれている細胞を用意するステップと、(b)(a)の細胞に、第1の目的遺伝子をコードする交換可能なカセットを含む第1のベクターと、第2の目的遺伝子をコードする交換可能なカセットを含む第2のベクターとをトランスフェクトするステップと、(c)Fer1L4座位内に第1の交換可能なカセットを、NL1座位又はNL2座位内に第2の交換可能なカセットを組み込むステップと、(d)染色体に組み込まれた第1の交換可能なカセット及び第2の交換可能なカセットを含む組換えタンパク質プロデューサー細胞を選択するステップとを含む。いくつかの実施形態では、第1の目的遺伝子は、レポーター遺伝子、選択遺伝子、治療目的遺伝子、補助的遺伝子又はそれらの組合せを含む。いくつかの実施形態では、治療目的遺伝子は、DtEタンパク質をコードする遺伝子を含む。いくつかの実施形態では、DtEタンパク質は、Fc融合タンパク質、酵素、膜受容体、二重特異性T細胞エンゲージャー(BITE(登録商標))又はモノクローナル抗体からなる。いくつかの実施形態では、モノクローナル抗体は、二重特異性モノクローナル抗体又は三重特異性モノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、第1の目的遺伝子は、2つのRTSの間に位置する。いくつかの実施形態では、第2の目的遺伝子は、レポーター遺伝子、選択遺伝子、治療目的遺伝子、補助的遺伝子又はそれらの組合せを含む。いくつかの実施形態では、治療目的遺伝子は、DtEタンパク質をコードする遺伝子を含む。いくつかの実施形態では、第2の目的遺伝子は、2つのRTSの間に位置する。
【0085】
[0099]いくつかの実施形態では、本開示は、組換えタンパク質プロデューサー細胞を生産する方法を提供し、該方法は、(a)少なくとも少なくとも6つの別個のRTS及び部位特異的リコンビナーゼをコードする遺伝子を含み、少なくとも2つの別個のRTSが、Fer1L4座位内において染色体に組み込まれ、少なくとも2つの別個のRTSが、NL1座位において染色体に組み込まれ、少なくとも2つの別個のRTSが、NL2座位内において染色体に組み込まれている細胞を用意するステップと、(b)(a)の細胞に、第1の目的遺伝子をコードする交換可能なカセットを含む第1のベクターと、第2の目的遺伝子をコードする交換可能なカセットを含む第2のベクターと、第3の目的遺伝子をコードする交換可能なカセットを含む第3のベクターとをトランスフェクトするステップと、(c)Fer1L4座位内に第1の交換可能なカセットを、NL1座位内に第2の交換可能なカセットを、NL2座位内に第3の交換可能なカセットを組み込むステップと、(d)染色体に組み込まれた第1の交換可能なカセット、第2の交換可能なカセット及び第3の交換可能なカセットを含む組換えタンパク質プロデューサー細胞を選択するステップとを含む。
【0086】
[00100]いくつかの実施形態では、本発明者らは、rP発現細胞の調製におけるSSIの使用が、rP発現細胞のプールの遺伝的構造を相同なものとすることを見出した。いくつかの実施形態では、本発明者らは、rP発現細胞の調製におけるSSIの使用が、rP発現細胞のプールをその効率において相同なものとすることを見出した。いくつかの実施形態では、本発明者らは、rP発現細胞の調製におけるSSIの使用が、rP発現細胞のプールを、第2のヘルパー遺伝子に対する第1のヘルパー遺伝子の比率において相同なものとすることを見出した。いくつかの実施形態では、本発明者らは、rP発現細胞の調製におけるSSIの使用が、rP発現細胞のプールを、治療目的遺伝子に対するヘルパー遺伝子の比率において相同なものとすることを見出した。いくつかの実施形態では、本発明者らは、rP発現細胞の調製におけるSSIの使用が、より一貫したrP産物の品質保持を可能とすることを見出した。
【0087】
[00101]本願明細書に記載される原核及び/又は真核細胞株などの細胞株は、本願明細書に記載されるいかなる好適な装置、施設及び方法を使用して培養することができる。さらに、実施形態では、装置、施設及び方法は、懸濁細胞又は足場依存性(付着)細胞の培養に適しており、例えばポリペプチド製品、核酸製品(例えばDNA又はRNA)、又は、例えば細胞及び/若しくはウイルス及び微生物治療に使用される哺乳動物若しくは微生物の細胞、及び/又は、ウイルスなどの、薬学的及び生物薬学的製品、の製造用に構成された製造操作に適する。
【0088】
[00102]いくつかの実施形態では、細胞は、例えば治療用又は診断用の組換え製品などの製品を発現するか又は生産する。以下に詳細に説明するように、細胞により生産される製品の例としては、限定されないが、抗体分子(例えばモノクローナル抗体、二重特異性抗体)、抗体ミメティック(抗原と特異的に結合するが、抗体とは構造的な関連性がないポリペプチド分子(例えばDARPin、affibody、adnectin又はIgNAR))、融合タンパク質(例えばFc融合タンパク質、キメラサイトカイン)、他の組換えタンパク質(例えばグリコシル化タンパク質、酵素、ホルモン)、ウイルス治療薬(例えば抗癌腫瘍溶解性ウイルス、遺伝子治療及びウイルス免疫療用のウイルスベクター)、細胞治療薬(例えば多能性幹細胞、間葉系幹細胞及び成人幹細胞)、ワクチン又は脂質封入粒子(例えばエキソーム、ウイルス様粒子)、RNA(例えばsiRNA)、又はDNA(例えばプラスミドDNAなど)(抗生物質)又はアミノ酸が挙げられる。実施形態では、装置、施設及び方法は、バイオシミラーの製造に用いられうる。
【0089】
[00103]上記のように、実施形態では、装置、施設及び方法は、真核細胞(例えば哺乳動物細胞)又は下等真核細胞(例えば酵母細胞若しくは糸状菌細胞)、又は原核細胞(例えばグラム陽性若しくはグラム陰性細胞)、及び/又は真核細胞により合成される、真核若しくは原核細胞の産物(例えばタンパク質、ペプチド、抗生物質、アミノ酸、核酸(例えばDNA若しくはRNA))の、大規模スケールにて製造することを可能にする。いくつかの実施形態では、微生物叢治療において利用される微生物及びその胞子の使用も開示される。本願明細書において特に明記しない限り、装置、施設及び方法には、限定されないが、ベンチスケール、パイロットスケール及び最大生産スケールなど、あらゆる望ましい容量又は生成能力のものが包含されうる。
【0090】
[00104]さらに、本願明細書において特に明記しない限り、装置、施設及び方法は、あらゆる適切な反応器又はバイオリアクターを備えてもよく、限定されないが、撹拌槽、エアーリフト、線維、マイクロファイバー、中空糸、セラミックマトリックス、流動床、固定床及び/又はスパウテッドベッドバイオリアクターが挙げられる。本明細書において、「反応器」又は「バイオリアクター」は、培養槽又は培養ユニット、又は他のいかなる反応容器を備えてもよく、用語「反応器」は「培養槽」と交換可能に用いられる。「培養槽」又は「培養」という用語は、微生物及び哺乳動物組織のいずれの培養をも指す。例えば、いくつかの態様において、一例としてのバイオリアクターユニットは、栄養分及び/又は炭素源のフィード、適切なガス(例えば酸素)注入、発酵培地又は細胞培地の吸排気、気液相の分離、温度の維持、酸素及びCO2レベルの維持、pHレベルの維持、撹拌(例えば回転)及び/又は洗浄/殺菌、のうちの1つ又は複数又は全てを行うことができる。例示的な反応器ユニット(例えば培養ユニット)は、ユニット内に複数の反応器を備えてもよく、例えば、当該ユニットは1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90又は100又はそれ超のユニットのバイオリアクターを有してもよく、及び/又は、施設には、施設内に単一の又は複数の反応器を有する複数のユニットを設置してもよい。各種実施形態では、バイオリアクターは、バッチ、セミフェドバッチ、フェドバッチ、潅流及び/又は連続発酵プロセスに適したものとしうる。反応器の直径を適宜調節しうる。実施形態では、バイオリアクターは、約100mL~約50,000Lの容量としうる。非限定的な例としては、100mL、250mL、500mL、750mL、1L、2L、3L、4L、5L、6L、7L、8L、9L、10L、15L、20L、25L、30L、40L、50L、60L、70L、80L、90L、100L、150L、200L、250L、300L、350L、400L、450L、500L、550L、600L、650L、700L、750L、800L、850L、900L、950L、1000L、1500L、2000L、2500L、3000L、3500L、4000L、4500L、5000L、6000L、7000L、8000L、9000L、10,000L、15,000L、20,000L及び/又は50,000Lの容量が挙げられる。さらに、適切な反応器は、複数回使用用、一回使用用、使い捨て可能、又は非使い捨て可能であってもよく、合金製(例えばステンレス鋼(例えば、316L又は他のいかなる適切なステンレス鋼)及びインコネル)、プラスチック製及び/又はガラス製など、いかなる適切な材料により形成されてもよい。
【0091】
[00105]実施形態では、本願明細書において特に明記しない限り、本願明細書に記載される装置、施設及び方法は、その他の記載されていないいずれの適切な操作ユニット及び/又は器材、例えば分離、精製及びかかる製品の単離のための操作ユニット及び/又は器材を備えてもよい。いかなる適切な施設及び環境を使用してもよく、例えば従来の現場組立施設、モジュール式、移動式及び仮設式の施設、又は他のいかなる適切な建設物、施設及び/又はレイアウトを使用してもよい。例えば、いくつかの実施形態ではモジュール式のクリーンルームを使用してもよい。さらに、特に明記しない限り、本願明細書に記載される装置、システム及び方法は、単一の場所又は施設の中において格納され、及び/又は実施してもよく、或いは別々の又は複数の場所及び/又は施設の中において格納され、及び/又は実施してもよい。
【0092】
[00106]適切でありうる施設、器材及び/又はシステムの非限定的な例としては、限定されないが、米国特許出願公開第2013/0280797号、第2012/0077429号、第2011/0280797号、第2009/0305626号、並びに米国特許第8,298,054号、第7,629,167号及び第5,656,491号に記載のものが挙げられ、それらの全開示内容を参照により本願明細書に組み込む。
【0093】
[00107]実施形態では、細胞は真核細胞(例えば哺乳動物細胞)である。例えば、哺乳動物細胞は、ヒト又は齧歯目又はウシの細胞系又は細胞株でありうる。例えば、かかる細胞、細胞系又は細胞株の例としては、マウス骨髄腫(例えばNS0又はSP2/0細胞系)、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞系、HT1080、H9、HepG2、MCF7、MDBK Jurkat、NIH3T3、PC12、BHK(乳児ハムスター腎臓細胞)、VERO、YB2/0、Y0、C127、L細胞、COS(例えばCOS1及びCOS7)、QC1-3、HEK-293、VERO、PER.C6、HeLa、EBl、EB2、EB3、腫瘍溶解性又はハイブリドーマ細胞系が挙げられる。好ましくは、哺乳動物細胞はCHO細胞系である。一実施形態では、細胞はCHO細胞である。一実施形態では、細胞は、CHO-K1細胞、CHO-K1SV細胞、DG44 CHO細胞、DUXB11 CHO細胞、CHOS、CHO GSノックアウト細胞、CHO FUT8 GSノックアウト細胞、CHOZN又はCHO由来の細胞である。CHO GSノックアウト細胞(例えばGSKO細胞)は、例えばCHOK1SV(商標)GSノックアウト細胞(CHOK1SV GS-KO(商標))である。CHO FUT8ノックアウト細胞は、例えばCHOK1SV(商標)Potelligent(登録商標)(Lonza Biologics,Inc.社)である。真核細胞は、鳥類の細胞、細胞株又は細胞系統(例えばEBx(登録商標)細胞、EB14、EB24、EB26、EB66又はEBvl3)であってもよい。
【0094】
[00108]いくつかの実施形態では、真核細胞は幹細胞である。幹細胞は、例えば多能性幹細胞であってもよく、例えば胚幹細胞(ESC)、成人幹細胞、誘導された多能性幹細胞(iPSCs)、組織特異的幹細胞(例えば造血幹細胞)及び間葉系幹細胞(MSC)が挙げられる。
【0095】
[00109]一実施形態では、細胞は、本願明細書に記載される細胞のいずれかの分化形態である。一実施形態では、細胞は、培養物中のいずれかの初代細胞から誘導された細胞である。いくつかの実施形態では、細胞は幹細胞から誘導されたものではない。例えば、いくつかの実施形態では、細胞は、個々の患者から抽出され単離された、又は確立された細胞バンクから得た細胞(例えばリンパ球)として免疫療法において用いられる。いくつかの実施形態では、細胞には、遺伝的に操作された細胞(すなわちCAR-Tなど)が包含されうる。
【0096】
[00110]実施形態では、細胞は肝細胞(例えばヒト肝細胞、動物の肝細胞又は非実質細胞)である。例えば、細胞は、プレート培養可能な代謝試験用ヒト肝細胞、プレート培養可能な誘導試験用ヒト肝細胞、プレート培養可能なQualyst Transporter Certified(商標)ヒト肝細胞、懸濁培養用ヒト肝細胞(10ドナー及び20ドナーをプールした肝細胞を含む)、ヒト肝クッパー細胞、ヒト肝星状細胞、イヌ肝細胞(単一及びプールされたビーグル肝細胞を含む)、マウス肝細胞(CD-1及びC57BI/6肝細胞を含む)、ラット肝細胞(スピローグ-ドーリー、ウィスターハム及びウィスター肝細胞を含む)、サル肝細胞(カニクイザル又はアカゲザル肝細胞を含む)、ネコ肝細胞(イエ・短毛ネコ肝細胞を含む)、及びウサギ肝細胞(ニュージランドホワイト肝細胞を含む)であってもよい。肝細胞は、例えばTriangle Research Labs、LLC(6 デイビスドライブリサーチトライアングルパーク、ノースカロライナ、米国27709)から市販されている。
【0097】
[00111]一実施形態では、真核細胞は下等真核細胞であり、例えば酵母細胞(例えばピキア属(例えばピキア・パストリス(Pichia pastoris)、ピキア・メタノリカ(Pichia methanolica)、ピキア・クルイベリ(Pichia kluyveri)、及びピキア・アングスタ(Pichia angusta))、コマガタエラ属(例えばコマガタエラ・パストリス(Komagataella pastoris)、コマガタエラ・シュードパストリス(Komagataella pseudopastoris)又はコマガタエラ・ファフィイ(Komagataella phaffii))、サッカロマイセス属(例えばサッカロマイセス・セレビシエ、サッカロマイセス・クルイベリ(Saccharomyces kluyveri)、サッカロマイセス・ウバルム(Saccharomyces uvarum))、クリベロマイセス属(例えばクリベロマイセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)、クリベロマイセス・マルキシアヌス(Kluyveromyces marxianus))、カンジダ属(例えばカンジダ・ウチリス(Candida utilis)、カンジダ・カカオイ(Candida cacaoi)、カンジダ・ボイディニイ(Candida boidinii))、ゲオトリクム属(例えば(ゲオトリクム・ファーメンタンスGeotrichum fermentans))、ハンセヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、ヤロウイア・リポリチカ(Yarrowia lipolytica)又はシゾサッカロマイセス・ポンペ(Schizosaccharomyces pombe))が挙げられる。ピキア・パストリスの種が好ましい。ピキア・パストリスの株の例は、X33、GS115、KM71、KM71H及びCBS7435である。
【0098】
[00112]一実施形態では、真核細胞は菌類の細胞であり、例えばアスペルギルス(例えばA.ニガー(A.niger)、アスペルギルス・フミガツス(Aspergillus fumigatus)、A.オリザエ(A.orzyae)、A.ニドゥラ(A.nidula))、アクレモニウム(例えばA.サーモフィラム(A.thermophilum))、カエトモニウム(例えばC.サーモフィラム(C.thermophilum))、クリソスポリウム(例えばC.サーモフィラム(C.thermophilum))、コルジセプス(例えばC.ミリタリス(C.militaris))、コリナスクス(Corynascus)、クテノマイセス(Ctenomyces)、フザリウム(例えばF.オキシスポルム(F.oxysporum))、グロメレラ(例えばG.グラミニコラ(G.graminicola))、ヒポクレア(例えばH.ジェコリナ(H.jecorina))、マグナポルテ(例えばM.オリザエ(M.orzyae))、ミセリオフトラ(例えばM.サーモフィレ(M.thermophile))、ネクトリア(例えばN.ヘマトコッカ(N.heamatococca))、ニューロスポラ(例えばN.クラッサ(N.crassa))、ペニシリウム、スポロトリクム(例えばS.サーモフィレ(S.thermophile))、チエラビア(例えばT.テレストリス(T.terrestris)、T.ヘテロサリカ(T.heterothallica))、トリコデルマ(例えばT.リーセイ(T.reesei))又はバーティシリウム(例えばV.ダーリア(V.dahlia))が挙げられる。
【0099】
[00113]一実施形態では、真核細胞は、昆虫細胞(例えばSf9、Mimic(商標)Sf9、Sf21、High Five(商標)(BT1-TN-5B1-4)又はBT1-Ea88細胞)、藻類細胞(例えばアンフォラ(Amphora)、珪藻、ドゥナリエラ(Dunaliella)、クロレラ、クラミドモナス、シアノフィタ(Cyanophyta)(シアノバクテリア)、ナノクロロピス(Nannochloropsis)、スピルリナ又はオクロモナス(Ochromonas))、又は植物細胞(例えば単子葉植物(例えばトウモロコシ、米、小麦又はエノコログサ)由来の細胞、又は双子葉植物(例えばカッサバ、ジャガイモ、大豆、トマト、タバコ、アルファルファ、ヒメツリガネゴケ(Physcomitrella patens)又はアラビドプシス)由来の細胞である。
【0100】
[00114]一実施形態では、細胞は細菌又は原核細胞である。いくつかの実施形態では、原核細胞はグラム陽性細胞(例えばバシラス、ストレプトマイセス、ストレプトコッカス、スタフィロコッカス又はラクトバシラス)である。使用できるバシラスは、例えばB.サブティルス(B.subtilis)、B.アミノリクエファシエンス(B.amyloliquefaciens)、B.リケニホルミス(B.licheniformis)、B.ナットー(B.natto)又はB.メガテリウム(B.megaterium)である。実施形態では、細胞はB.サブティルス(例えばB.サブティルス3NA及びB.サブティルス168)である。例えば、バシラスは、Bacillus Genetic Stock Center(Biological Sciences 556, 484 West 12th Avenue, Columbus OH 43210-1214)から入手できる。
【0101】
[00115]一実施形態では、原核細胞はグラム陰性細胞、例えばサルモネラ菌spp.又は大腸菌(例えばTG1、TG2、W3110、DH1、DHB4、DH5a、HMS 174、HMS174(DE3)、NM533、C600、HB101、JM109、MC4100、XL1-Blue及びOrigami)、並びに、大腸菌B-株に由来する細胞(例えばBL-21又はBL21(DE3))であり、それらの全ては市販されている。適切な宿主細胞は、例えば、DSMZ(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen and Zellkulturen GmbH, Braunschweig, Germany)又はAmerican Type Culture Collection(ATCC)などの微生物収集機関から市販されている。いくつかの実施形態では、細胞には、治療薬として利用される他の微生物叢が包含される。これらは、ファーミキューテス(Firmicutes)、バクテロイデス(Bacteroidetes)、プロテオバクテリア(Proteobacteria)、ベラムミクロビア(Verrumicrobia)、アクチノバクテリア、フゾバクテリア及びシアノバクテリアに属するヒトマイクロバイオームに存在する微生物叢を包含する。微生物叢には、好気性、絶対嫌気性又は通性嫌気性のいずれも包含され、また細胞又は胞子が包含される。治療的な微生物叢には、遺伝的に操作された生物及びそれらの操作において利用されるベクターも包含される。他のマイクロバイオーム関連の治療的な生物としては、アルケー、菌類及びウイルスが挙げられる。例えば、The Human Microbiome Project Consortium. Nature 486, 207-214 (14 June 2012)、Weinstock, Nature, 489(7415): 250-256(2012)、Lloyd-Price, Genome Medicine 8:51(2016)を参照。
【0102】
[00116]いくつかの実施形態では、培養細胞を用いて、治療的使用のためのタンパク質、例えば抗体(例えばモノクローナル抗体)及び/又は組換えタンパク質を生産させる。実施形態では、培養細胞は、ペプチド、アミノ酸、脂肪酸又は他の有用な生化学的中間体又は代謝産物を生産する。例えば、実施形態では、約4000ダルトンから、約140,000ダルトン超の分子量を有する分子を生産させることができる。実施形態では、これらの分子は、一定の範囲の複雑さを有する場合があり、グリコシル化などの翻訳後修飾を含む場合がある。
【0103】
[00117]実施形態では、タンパク質は、例えば、ボトックス、ミオブロック、ニューロブロック、ディスポート(又はボツリヌス神経毒の他の血清型)、アルグルコシダーゼα、ダプトマイシン、YH-16、コリオゴナドトロピンα、フィルグラスチム、セトロレキシル、インターロイキン-2、アルデスロイキン、セテロイキン(cteceleulin)、デニロイキンディフィトックス、インターフェロンα-n3(注入)、インターフェロンα-nl、DL-8234、インターフェロン、サントリー(γ-1a)、インターフェロンγ、サイモシンα1、タソネルミン、DigiFab、ビペラタブ、エチタブ、CroFab、ネシリチド、アバタセプト、アレファセプト、レビフ、エプトテルミンα、テリパラチド(骨粗鬆症)、カルシトニン注射可能剤(骨疾患)、カルシトニン(鼻、骨粗鬆症)、エタナーセプト、ヘモグロビングルタマー 250(ウシ)、ドロトレコギンα、コラゲナーゼ、カルペリチド、組換えヒト上皮成長因子(局所ゲル、創傷癒合)、DWP401、ダーベポエチンα、エポエチンω、エポエチンβ、エポエチンα、デシルジン、レピルジン、ビバリルジン、ノナコグα、モノナイン、エプタコグα(活性化)、組換え因子VIII+VWF、リコンビネート、組換え因子VIII、因子VIII(組換え)、アルフマート(Alphnmate)、オクトコグα、因子VIII、パリフェルミン、インディキナーゼ(Indikinase)、テネクテプラーゼ、アルテプラーゼ、パミテプラーゼ、レテプラーゼ、ナテプラーゼ、モンテプラーゼ、卵胞刺激ホルモンα、rFSH、hpFSH、ミカファンギン、ペグフィルグラスチム、レノグラスチム、ナルトグラスチム、セルモレリン、グルカゴン、エキセナチド、プラムリンチド、イニグルセラーゼ、ガルスルファーゼ、ロイコトロピン(Leucotropin)、モルグラモスチム、トリプトレリン酢酸塩、ヒステレリン(皮下インプラント、ハイドロン)、デスロレリン、ヒステレリン、ナファレリン、ロイプロリド持続的放出デポー(ATRIGEL)、ロイプロリドインプラント(DUROS)、ゴセレリン、ユートロピン(Eutropin)、KP-102プログラム、ソマトロピン、メカセルミン(成長不全)、エンフビルチド(enlfavirtide)、Org-33408、インスリングラルギン、インスリングルリジン、インスリン(吸入)、インスリンリスプロ、インスリンデテミル(deternir)、インスリン(頬、RapidMist)、メカセルミンリンファバート、アナキンラ、セルモロイキン、99mTc-アプシチド注入、ミエロピド(myelopid)、ベタセロン、酢酸ガラティラメル、ゲポン(Gepon)、サルグラモスチム、オプレルベキン、ヒト白血球由来のαインターフェロン、ビリブ(Bilive)、インスリン(組換え)、組換えヒトインスリン、インスリンアスパルト、メカセルミン(mecasenin)、ロフェロン-A、インターフェロン-α2、アルファフェロン、インターフェロンアルファコン-1、インターフェロンα、アボネックス組換えヒト黄体化ホルモン、ドルナーゼα、トラフェルミン、ジコノチド、タルチレリン、ジボテルミンα、アトシバン、ベカプレルミン、エプチフィバチド、ゼマイラ、CTC-111、シャンバック(Shanvac)-B、HPVワクチン(四価)、オクトレオチド、ランレオチド、アンセスチム(ancestirn)、アガルシダーゼβ、アガルシダーゼα、ラロニダーゼ、酢酸プレザチド銅(局所ゲル)、ラスブリケース、ラニビズマブ、アクチミューン(Actimmune)、PEG-イントロン、トリコミン、組換え型ダニアレルギー減感作注入剤、組換えヒト上皮小体ホルモン(副甲状腺ホルモン)1-84(sc、骨粗鬆症)、エポエチンデルタ、トランスジェニック抗トロンビンIII、グランジトロピン(Granditropin)、ビトラーゼ(Vitrase)、組換えインスリン、インターフェロン-α(経口トローチ剤)、GEM-21S、バプレオチド、イデュルスルファーゼ、オマパトリラト、組換え血清アルブミン、セルトリズマブペゴル、グルカルピダーゼ、ヒト組換えC1エステラーゼインヒビター(血管性浮腫)、ラノテプラーゼ、組換えヒト成長ホルモン、エンフュービルタイド(ニードルフリー注射液、バイオジェクター(Biojector) 2000)、VGV-1、インターフェロン(α)、ルシナクタント、アビプタジル(吸入、肺疾患)、イカチバント、エカランチド、オミガナン、アウログラブ(Aurograb)、ペキシガナンアセテート、ADI-PEG-20、LDI-200、デガレリクス、シントレデキンベスドトクス(cintredelin besudotox)、Favld、MDX-1379、ISAtx-247、リラグルチド、テリパラチド(骨粗鬆症)、ティファコギン(tifacogin)、AA4500、T4N5リポソームローション剤、カツマキソマブ、DWP413、ART-123、クリサリン(Chrysalin)、デスモテプラーゼ、アメジプラーゼ、コリフォリトロピンα、TH-9507、テデュグルチド、ダイアミド(Diamyd)、DWP-412、成長ホルモン(持続的放出注入)、組換えG-CSF、インスリン(吸入、AIR)、インスリン(吸入、テクノスフィア(Technosphere))、インスリン(吸入、AERx)、RGN-303、DiaPep277、インターフェロンβ(C型肝炎ウイルス感染(HCV))、インターフェロンα-n3(経口)、ベラタセプト、経皮インスリンパッチ、AMG-531、MBP-8298、キセレセプト(Xerecept)、オペバカン、AIDSVAX、GV-1001、リンホスキャン(LymphoScan)、ランピルナーゼ、リポキシサン(Lipoxysan)、ルスプルチド、MP52(β-リン酸三カルシウム担体、骨再生)、黒色腫ワクチン、シプリューセル-T、CTP-37、インセジア(Insegia)、ビテスペン(vitespen)、ヒトトロンビン(冷凍、外科手術出血)、トロンビン、TransMID、アルフィメプラーゼ、プリカーゼ(Puricase)、テルリプレシン(静脈、肝腎症候群)、EUR-1008M、組換えFGF-I(注射可能剤、血管疾患)、BDM-E、ロチガプチド、ETC-216、P-113、MBI-594AN、デュラマイシン(吸入、嚢胞性線維形成)、SCV-07、OPI-45、エンドスタチン、アンジオスタチン、ABT-510、ボウマンビルク阻害剤濃縮物、XMP-629、99mTc-ハイニック-アネキシンV、カハラリド(kahalalide)F、CTCE-9908、テベレリックス(teverelix)(持続放出)、オザレリクス、ロミデプシン(rornidepsin)、BAY-504798、インターロイキン4、PRX-321、ペプスキャン(Pepscan)、イボクタデキン(iboctadekin)、rhラクトフェリン、TRU-015、IL-21、ATN-161、シレンギチド、アルブフェロン(Albuferon)、バイファシックス(Biphasix)、IRX-2、ωインターフェロン、PCK-3145、CAP-232、パシレオチド、huN901-DMI、卵巣癌免疫療法ワクチン、SB-249553、オンコバックス(Oncovax)-CL、オンコバックス-P、BLP-25、CerVax-16、マルチエピトープペプチド黒色腫ワクチン(MART-1、gp100、チロシナーゼ)、ネミフィチド、rAAT(吸入)、rAAT(皮膚病学的)、CGRP(吸入、喘息)、ペグスネルセプト、チモシンβ4、プリチデプシン、GTP-200、ラモプラニン、GRASPA、OBI-1、AC-100、サーモンカルシトニン(経口薬、eligen)、カルシトニン(経口薬、骨粗鬆症)、エキサモレリン(examorelin)、カプロモレリン、カルデバ(Cardeva)、ベラフェルミン、131I-TM-601、KK-220、T-10、ウラリチド、デペレスタット、ヘマチド、クリサリン(Chrysalin)(局所)、rNAPc2、組換え因子V111(PEG化リポソーム)、bFGF、PEG化組換えスタフィロキナーゼバリアント、V-10153、ソノリシス プロリーゼ、ニューロバックス(NeuroVax)、CZEN-002、膵島細胞新生治療薬、rGLP-1、BIM-51077、LY-548806、エキセナチド(放出制御、メディソルブ)、AVE-0010、GA-GCB、アボレリン(avorelin)、ACM-9604、linaclotid eacetate、CETi-1、ヘモスパン(Hemospan)、VAL(注射可能)、速効性インスリン(注射可能剤、ビアデル(Viadel))、鼻腔内インスリン、インスリン(吸入)、インスリン(経口、エリゲン(eligen))、組換えメチオニルヒトレプチン、ピトラキンラ(皮下注入、湿疹)、ピトラキンラ(吸入用乾燥粉末、喘息)、マルチカイン(Multikine)、RG-1068、MM-093、NBI-6024、AT-001、PI-0824、Org-39141、Cpn10(自己免疫疾患/炎症)、タラクトフェリン(局所)、rEV-131(眼)、rEV-131(呼吸器疾患)、経口組換えヒトインスリン(糖尿病)、RPI-78M、オプレルベキン(経口)、CYT-99007 CTLA4-Ig、DTY-001、バラテグラスト、インターフェロンα-n3(局所)、IRX-3、RDP-58、タウフェロン、胆汁酸塩刺激されたリパーゼ、メリスパーゼ、アルカリホスファターゼ、EP-2104R、メラノタン-II、ブリメラノチド、ATL-104、組換えヒトマイクロプラスミン、AX-200、SEMAX、ACV-1、Xen-2174、CJC-1008、ダイノルフィンA、SI-6603、LAB GHRH、AER-002、BGC-728、マラリアワクチン(バイロソーム(virosomes)、PeviPRO)、ALTU-135、パルボウイルスB19ワクチン、インフルエンザワクチン(組換えノイラミニダーゼ)、マラリア/HBVワクチン、炭疽菌ワクチン、Vacc-5q、Vacc-4x、HIVワクチン(経口)、HPVワクチン、Tatトキソイド、YSPSL、CHS-13340、PTH(1-34)リポソームクリーム(ノバソーム(Novasome))、オスタボリン(Ostabolin)-C、PTH類似体(局所、乾癬)、MBRI-93.02、MTB72Fワクチン(結核)、MVA-Ag85Aワクチン(結核)、FARA04、BA-210、組換え疫病FIVワクチン、AG-702、OxSODrol、rBetV1、Der-p1/Der-p2/Der-p7アレルゲンターゲッティングワクチン(ダニアレルギー)、PR1ペプチド抗原(白血病)、変異型rasワクチン、HPV-16 E7リポペプチドワクチン、ラビリンチン(labyrinthin)ワクチン(腺癌)、CMLワクチン、WT1-ペプチドワクチン(癌)、IDD-5、CDX-110、ペントリス(Pentrys)、ノレリン(Norelin)、CytoFab、P-9808、VT-111、イクロカプチド、テルベルミン(皮膚病、糖尿病性足潰瘍)、ルピントリビル、レチクロース(reticulose)、rGRF、HA、αガラクトシダーゼA、ACE-011、ALTU-140、CGX-1160、アンジオテンシン治療ワクチン、D-4F、ETC-642、APP-018、rhMBL、SCV-07(経口薬、結核)、DRF-7295、ABT-828、ErbB2特異的免疫毒素(抗癌)、DT3SSIL-3、TST-10088、PRO-1762、コムボトックス(Combotox)、コレシストキニン-B/ガストリン受容体結合ペプチド、111In-hEGF、AE-37、トラスニズマブ-DM1、アンタゴニストG、IL-12(組換え)、PM-02734、IMP-321、rhIGF-BP3、BLX-883、CUV-1647(局所
)、L-19ベースの放射性免疫治療剤(癌)、Re-188 P-2045、AMG-386、DC/1540/KLHワクチン(癌)、VX-001、AVE-9633、AC-9301、NY-ESO-1ワクチン(ペプチド)、NA17.A2ペプチド、黒色腫ワクチン(治療的なパルス化抗原)、前立腺癌ワクチン、CBP-501、組換えヒトラクトフェリン(ドライアイ)、FX-06、AP-214、WAP-8294A(注射可能)、ACP-HIP、SUN-11031、ペプチドYY[3-36](肥満、鼻腔)、FGLL、アタシセプト(atacicept)、BR3-Fc、BN-003、BA-058、ヒト上皮小体ホルモン1-34(鼻、骨粗鬆症)、F-18-CCR1、AT-1100(セリアック病/糖尿病)、JPD-003、PTH(7-34)リポソームクリーム(ノバソーム)、デュラマイシン(眼、ドライアイ)、CAB-2、CTCE-0214、グリコPEG化エリスロポイエチン、EPO-Fc、CNTO-528、AMG-114、JR-013、因子XIII、アミノカンジン(aminocandin)、PN-951、716155、SUN-E7001、TH-0318、BAY-73-7977、テベレリックス(即時放出)、EP-51216、hGH(放出制御、バイオスフィア)、OGP-I、シフビルチド(sifuvirtide)、TV4710、ALG-889、Org-41259、rhCC10、F-991、チモペンチン(肺疾患)、r(m)CRP、肝選択インスリン、スバリン(subalin)、L19-IL-2融合タンパク質、エラフィン、NMK-150、ALTU-139、EN-122004、rhTPO、トロンボポエチン受容体アゴニスト(血小板減少障害)、AL-108、AL-208、神経成長因子アンタゴニスト(痛み)、SLV-317、CGX-1007、INNO-105、経口テリパラチド(エリゲン)、GEM-OS1、AC-162352、PRX-302、LFn-p24融合ワクチン(テラポア(Therapore))、EP-1043、小児S肺炎ワクチン、マラリアワクチン、髄膜炎菌グループBワクチン、新生児のグループB溶連菌ワクチン、炭疽菌ワクチン、HCVワクチン(gpE1+gpE2+MF-59)、中耳炎治療、HCVワクチン(コア抗原+イスコマトリックス(ISCOMATRIX))、hPTH(1-34)(経皮、ViaDerm)、768974、SYN-101、PGN-0052、アビスクミン、BIM-23190、結核ワクチン、マルチエピトープチロシナーゼペプチド、癌ワクチン、エンカスチム(enkastim)、APC-8024、GI-5005、ACC-001、TTS-CD3、血管標的化TNF(固形腫瘍)(デスモプレシン)(頬、徐放性)、オネルセプト及びTP-9201が挙げられる。
【0104】
[00118]いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、アダリムマブ(HUMIRA)、インフリキシマブ(REMICADE(商標))、リツキシマブ(RITUXAN(商標)/MABTHERA(商標))エタナーセプト(ENBREL(商標))、ベバシズマブ(AVASTIN(商標))、トラスツズマブ(HERCEPTIN(商標))、ペグリルグラスチム(pegrilgrastim)(NEULASTA(商標))又は、バイオシミラー及びバイオベターを含む他のあらゆる適切なポリペプチドである。
【0105】
[00119]他の適切なポリペプチドは、下記の表6、及び米国特許出願公開第2016/0097074号の表1に記載のものである。当業者であれば、本発明の開示がさらに、本願明細書において記載されている製品及び/又はコンジュゲートの組合せ(すなわち、マルチプロテイン、修飾タンパク質(PEG、毒素、他の活性成分へのコンジュゲート)を包含することを認識できるであろう。
【0106】
【表6】
[00120]実施形態では、ポリペプチドは、表7に示すホルモン、血液凝固/凝固因子、サイトカイン/成長因子、抗体分子、融合タンパク質、タンパク質ワクチン又はペプチドである。
【0107】
【表7】
[00121]実施形態では、タンパク質は多重特異的なタンパク質(例えば表8で示す二重特異性抗体)である。
【0108】
【実施例】
【0109】
実施例1:高い発現及び安定性をもたらす座位の同定
[00122]以下の基準を満たす、モノクローナル抗体(mAb)(ランダム組込みを用いて構築)を生産する400個のGS-CHOK1SV(商標)クローン細胞株(Lonza社、バーゼル、スイス)をスクリーニングした:高いqmAb量(>1.25pg/細胞・時間)、安定生産性(>70世代)及び適切な増殖(IVCC>1500×106細胞/mL・時間、μ~0.03時間-1)。大部分のこれらの細胞株は、2つの公表されたLonzaプロジェクトに由来するものであり(Porter et al.,Cell Culture and Tissue Engineering 26:1455-1464(2010)及びPovey et al.,J Biotechnol 184:84-93(2014))、GS-CHOK1SV(商標)クローン細胞株の構築プロセスはPorter et al.,2010に詳述されている。簡潔には、mAbをコードするPvuI直鎖化Lonzaグルタミン合成酵素(GS)発現ベクターを、標準的なエレクトロポレーション方法を使用して宿主細胞株(CHOK1SV(商標))に導入した。トランスフェクション混合物を80枚の96ウェルプレート全体に分配した。次の日、新鮮な培地をプレート内の細胞懸濁液に添加し、各ウェル中の最終的なMSX濃度が50μMとなるように、培地中のメチオニンスルホキシイミン(MSX)濃度を調整した。コロニーのバイオマスが増加したとき、細胞株を24ウェルの静置培養プレートで培養し、次に25cm2のT型培養フラスコにおいて静置培養した。懸濁培養は、コンフルエントとなった25cm2のT型培養フラスコから開始し、10Lのフェドバッチバイオリアクター培養で増殖させ、凍結保存した。
【0110】
[00123]これらの20の細胞株のうち最も低い世代数のアンプルを、qPCR(βラクタマーゼ遺伝子のプライマー/プローブセット)を用いた組み込まれたベクターコピー数の分析のため、指数増殖期の中期となるまで培養した。コピー数基準(ゲノム当たりβラクタマーゼのコピー数≦5)を満たすとして同定された5つの細胞株(964E7、952C8、2A6、E22及びE14)をサンプリングし、隣接配列の同定を行った。
【0111】
[00124]上述した5つの細胞株に由来する細胞を用いてゲノムDNA(gDNA)抽出物を調製し、配列捕捉分析を行った。mAb遺伝子を担持するグルタミン合成酵素(GS)発現ベクター内の領域に対して設計したバイトを用い、組換え細胞株に由来する断片化gDNAに対し、NimbleGen SeqCapターゲットエンリッチメント(Roche NimbleGen,Inc.,Madison,USA)を実施した。標的を富化したプールを溶出させ、Illumina MISEQ(登録商標)(Next Gen Sequencing,Illumina,San Diego,CA,USA)を用いてシークエンシングを行った。同じ5つの細胞株に対して全ゲノム再シークエンシング(WGRS)分析を行い(BGI,Tai Po,Hong Kong)、2つの選択された細胞株(964E7及び952C8)に対し、標的特異的座位増幅(TLA)(Cergentis B.V.,Netherlands)を用いて分析を行って、標的特異的シークエンシング及びWGRSの結果を評価した。
【0112】
[00125]シークエンシングのリードのバイオインフォマティックス解析を実施した。捕捉シークエンシングのデータをゲノム及びベクター配列にマッピングした。スプリットリード(ゲノムから半分、ベクターから半分)を用い、潜在的組込み部位及びブレークポイントを同定した。加えて、ベクター挿入を示唆するリードペア(ゲノム上の一端、ベクター上の一端)も、組込み部位を裏付ける証拠として同定した。潜在的組込み部位のリストを、配列捕捉データから同定し、その部位を裏付け証拠によりランク付けした。WGRSデータを全ての潜在的組込み部位にマッピングし、さらなる裏付け証拠とした。ブレークポイントを横切ってマッピングされるWGRSからのリード、並びにブレークポイントをカバーするリードペアを、正のサポートとしてカウントした。組込み部位ごとに、左(L)及び右(R)の記号を用い、ゲノム配列の位置を示した(チャイニーズハムスター(Cricetulus griseus)足場及びコンティグ配列により、常に5’→3’)。左側又は右側において、ベクターを順方向(F)又は逆方向(R)に挿入した。細胞株964E7及び952C8に関するデータは、後でCergentis社(ユトレヒト、NL)における近傍ライゲーションを用いた標的特異的シークエンシングにより得た(例えばde Vree et al.,Nat Biotechnol.32:1019-25(2014)を参照)。
[00126]組込み部位は、全5つの細胞株における予測されるゲノム:ベクター境界を横切るPCR増幅により確認した。表9は、これらの組換え細胞株のβラクタマーゼ遺伝子のコピー数、生産性及び増殖データと共に、これらの組込み部位に関する知見を要約する。合計6つの部位(新規な座位1~6(NL1~6))を、5つの細胞株のPCRによって確認し、そのうち3つ(NL1、NL2及びNL4)ではPCRによって両方のゲノム:ベクター境界にあることが確認され、また残りの3つ(NL3、NL5及びNL6)では片方のみにあることが確認された。
【0113】
【表9】
[00127]NL1座位及びNL2座位を、SSIランディングパッドによる組込みに用いたところ、誘導体細胞株964E7及び952C8が、その他の3つの細胞株と同等のβ-ラクタマーゼ組込みコピー数を有していたが、高い比生産性(47~48pg/細胞・日)であったため、これらの領域が高い組換え遺伝子発現をサポートすることを示唆する。CHOK1SV(商標)誘導体宿主において生成した組換え細胞株からの座位の選択、及びGS選択マーカー(RMCEステップの説明についてステージ2を参照)の使用により、座位とGS発現系ベースの系との互換性を確保した。これらの座位は、増殖にとり重要なプロセスに悪影響を与えることなく、安定な組換え遺伝子の発現(qP:23~48pg/細胞.日)を支持することが示された(IVCC:2039~6015×10
6細胞/時・mL)。
【0114】
実施例2:選択された座位の組合せへのランディングパッドのエンジニアリング
[00128]次のRMCEに適するランディングパッドを、CHOK1SV GS-KO(商標)宿主細胞株に組み込んだ。
【0115】
[00129]ランディングパッド(ランディングパッドA:
図2)を最初に、Fer1L4(国際公開第2013190032A1号パンフレット及び欧州特許出願公開第2711428A1号明細書参照)(
図4:クローン7878及び8086、
図7:クローン11434)、NL1(
図4:クローン8096及び9113)及びNL2(クローン9116及び9115)座位に別々に組み込んだ。クローン11434(Fer1L4座位のランディングパッド、ランディングパッドA:
図2A)を選択し、NL1における第2のランディングパッドのエンジニアリングに供した(ランディングパッドB:
図2A)。本決定は、GS選択を用いるときにRMCEを完了させる能力、反復継代培養の間のプールにおけるRFPの発現安定性、及び回収時にフェドバッチ培養培地に分泌されるmAbの濃度に基づき行った。A又はBタイプのランディングパッドが表1のいずれの座位にも挿入されうるという一般的な可能性が見事に示された。合計6つの多重部位SSIクローンが生成された(12151、12152、12606、12607、12608及び12609)。これらの2部位宿主は、Fer1L4に、Frt F5及び野生型Frt F RTSが隣接するHpt-eGFP融合を含むランディングパッドを、並びに、部位2に、Frt F14及びFrt F15 RTSが隣接するPAC-DsRed融合遺伝子を含む第2のランディングパッド(NL1座位のランディングパッド、ランディングパッドB:
図2)を、有する。SV40Eプロモーターと選択マーカーとの間のFrt部位の配置により、次のRMCEのラウンドにおけるその使用が可能となる。
【0116】
[00130]CHOK1SV GS-KO(商標)単一及び多重ランディングパッド宿主におけるRMCEのために設計されたターゲッティングベクターは、目的のランディングパッドと互換性を有するFrt部位の3’側のすぐ横に配置されるGSのcDNAを含んだ(
図2B)。ベクターの残りの部分は、ランディングパッドの第2のFrt部位と互換性を有するFrt部位が続くGOI(例えばmAb)のための転写単位を含んだ。ターゲッティングベクターDNA(
図3A)を、FlpEリコンビナーゼを発現するベクター(
図3B)と共に、(それぞれ1:9のプラスミドのモル比で)コトランスフェクトした。トランスフェクトした細胞を6mMのグルタミンの存在下で24時間インキュベートし、FlpEリコンビナーゼの一過性発現を行わせた。このトランスフェクタントのプールを次に洗浄し、グルタミン欠損培地においてインキュベートした。生細胞濃度及び培養生存率を、選択ステップ全体にわたりモニターした。RMCEの成功は、Hpt-eGFP遺伝子の喪失及びターゲッティングベクター中のGS遺伝子との置換により示された。FlpEの無いコントロールを全てのトランスフェクションに含め(pMF4無しでターゲッティングベクターDNAでトランスフェクション)、いかなるリカバリーも一過性のFlpEリコンビナーゼ発現(RMCE)の結果であることを確認した。RMCEが成功したとき、細胞は、蛍光顕微鏡下又はフローサイトメトリー分析において暗く見えた。CHOK1SV GS-KO(商標)宿主が機能的内因性GS遺伝子を欠失するため、GSが的確に組み込まれたそれらの細胞は、グルタミン非存在下でも増殖可能であり、トランスフェクション後12~14日の培養生存率も95%を超えるものであった。ターゲッティングベクターのGS cDNAがプロモーターを欠いていたため、GS遺伝子のオフターゲット組込みが、充分なGSタンパク質量を生じさせグルタミン非存在下での増殖を可能にする確率は極めて低いと考えられた。内因性酵素活性の抑制による選択は、オフターゲット効果(例えばMSX、Fearyら、Biotechnol.Prog.(2016)を参照)といえ、したがって、グルタミンなどの代謝物質の非存在下での選択は有効であった。この選択システムは、極めてストリンジェントであり、トランスフェクションの14日後における非交換細胞(GFP蛍光の有無が標識)のパーセンテージは典型的には2~5%程度であり、蛍光を利用する細胞選別により容易に除去された。2つの部位が1つのベクターにより標的とされる場合、複数のFrt部位をコンカテマーとして配置でき、それによりトランスフェクションを単純化できる。
【0117】
実施例3:CHOK1SV GS-KO(商標)SSI宿主におけるFer1L4、NL1及びNL2座位の別々の評価
[00131]次に、Fer1L4、NL1及びNL2座位の、組換え遺伝子発現を支持しRMCEを完了させる能力を試験した。ターゲッティングベクターpMF25(
図3A)及びリコンビナーゼベクターpMF4(
図3B)を、6つのCHOK1SV GS-KO(商標)(
図4:Fer1L4座位:7878及び8086(NL1):8096及び9113(NL2):9116及び9115)単一ランディングパッドSSI宿主にコトランスフェクトし、グルタミンフリーの培地においてインキュベートし、RMCEを完了させた細胞を選択した。これらのCHOK1SV GS-KO(商標)SSIプールは、RMCE前、及びグルタミンフリー培地において11日後に、フローサイトメトリーにより解析した(
図4)。クローン中のランディングパッド(ランディングパッドA、
図2)はHpt-eGFPレポーター(緑のチャネルにおいて検出)を含み、pMF25ターゲッティングベクターはDsRedレポーター(黄色のチャネルにおいて検出)を含むため、RMCEの成功により、+GFP及び-YFPから-GFP及びYFPへの蛍光変化が示される。
【0118】
[00132]次に、SSI宿主クローン11434(Fer1L4座位のランディングパッド、ランディングパッドA:
図2)を用い、治療的mAbを生産する能力について試験した。クローン11434のFer1L4座位を標的とする、リツキシマブ、cB72.3及びH31K5の転写単位を含むベクターを構築した(
図5を参照)。次に、CHOK1SV GS-KO(商標)プールを構築し、8日間バッチ懸濁培養した。回収時の分泌されたmAbの濃度は、収穫時におけるプロテインA HPLCにより測定した(
図6を参照)。これらのデータは、複製されたプール間、異なるmAbの間において、非常に一貫した発現を示す(250~300mg/L)。
【0119】
実施例4:多部位CHOK1SV GS-KO(商標)SSI宿主におけるFer1L4及びNL1の評価
[00133]実施例2に記載される6つの多部位宿主をフローサイトメトリーにより解析し、組換え遺伝子発現を支持する座位の能力を確認した(
図7)。Fer1L4座位で組み込んだランディングパッドはHpt-eGFP遺伝子を含み(
図2:ランディングパッドA)、NL1座位で組み込んだランディングパッドはPAC-DsRed遺伝子を含む(
図2:ランディングパッドB)。eGFP蛍光を緑のチャネルにおいて検出し、DsRedを黄色のチャネルにおいて検出した。CHOK1SV GS-KO(商標)宿主(宿主)を陰性コントロールとして用いた。クローン11434(Fer1L4座位にランディングパッド、ランディングパッドA:
図2)をeGFP蛍光の陽性コントロールとして用いた。ランダム組込みにより生成したDsRed遺伝子を発現するCHOK1SV GS-KO(商標)プール(DsRed RIコントロール)を、Dsred蛍光の陽性コントロールとして用いた。予想通り、全6つの多部位CHOK1SV GS-KO(商標)SSIクローン(12151、12152、12606、12607、12608及び12609)は、11434及びDsRed RIコントロールと同等のeGFP及びDsRed蛍光強度であった(
図7)。これは、両方の部位が外因性遺伝子の発現を支持できることを証明するものであった。次に、RMCEを完了する多部位宿主の能力を確認した。ターゲッティングベクターpCM9(
図8A、E2クリムゾン発現カセットを含み、ランディングパッドA:Fer1L4を標的とする)及びpCM11(
図8B、E2クリムゾン発現カセットを含み、ランディングパッドA:NL1を標的とする)を、多部位CHOK1SV GS-KO(商標)SSI宿主12151にトランスフェクトした。グルタミンフリー培地においてプールをインキュベートし、RMCEを完了した細胞を選択した。FlpEの無いコントロールは、RMCEプールによってリカバーしなかった。これらのCHOK1SV GS-KO(商標)SSIプールを、RMCE前及びグルタミンフリー培地において14日後に、フローサイトメトリーにより解析した(
図8)。CHOK1SV GS-KO(商標)SSI宿主のランディングパッドA(ランディングパッドA、
図2)がHpt-eGFPレポーターを含み、pCM9ターゲッティングベクターがE2クリムゾンレポーター(赤いチャネルにおいて検出)を含むため、+GFP及び-RFPから-GFP及び+RFPへの蛍光変化により、RMCEの成功が示された。CHOK1SV GS-KO(商標)SSI宿主のランディングパッドB(ランディングパッドB、
図2)はPAC-DsRedレポーターを含むが、しかしながら、フローサイトメーターではDsRedシグナルは検出されなかった(
図9)。pCM11ターゲッティングベクターはE2クリムゾンレポーターを含み、したがって、+GFP及び-RFPから+GFP及び+RFPへの変化(
図9)により、ランディングパッドA(Hpt-eGFP遺伝子を含む)の喪失なくRMCEが成功したことが示された。
【0120】
[00134]治療的タンパク質のための系の利点を実現するため、表10で概説する治療的タンパク質を発現させるために、CHOK1SV(商標)SSI多部位宿主(
図2を参照)を試験した。実験を、3つのフェーズに分ける;フェーズ1:多部位SSIの用途を試験し、qPを増加させる;フェーズ2:多部位SSIの能力を試験し、2つのランディングパッドにわたる3遺伝子二重特異性mAbを発現させる;フェーズ3:1つの部位において補助的遺伝子を発現させ、他の部位においてコードされるDtEタンパク質の発現を補助する。
【0121】
【表10】
[00135]フェーズ1:いくつかの単一部位SSIシステムの限界は、必要な転写単位が単一コピーでは臨床製造のための適切な力価を発生させるのに不十分であるということである。したがって、本実施例ではオプションを評価し、多部位SSIを用いて、mAb遺伝子の組込みコピー数を増加させる。モノクローナル抗体リツキシマブを用いて、組込みコピー数の増加のための2つのアプローチを試験した。第1のアプローチにおいて、4つのmAb発現カセットを含むターゲッティングベクターを生成し(
図10B:pCM38=2×HC及び2つのLC)、CHOK1SV GS-KO(商標)SSI宿主(ランディングパッドA、
図2A)のランディングパッドAをターゲッティングした。このベクター及び2つのmAb発現カセット相当のベクター(
図10A:pMF26)をGS-KO SSI宿主クローン12151(
図10A及びB)に別々にトランスフェクトし(2回)、グルタミンフリー培地においてプールを選択した(詳細なトランスフェクション方法は実施例2を参照)。第2のアプローチにおいて、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子(NEO)に加えて2つのmAb発現カセットを含み、ランディングパッドBを標的とする(ランディングパッドB、
図2A)ターゲッティングベクター(
図10C及びD:pAR5=1×HC及び1×LC)を生成した。mAb遺伝子を欠失するpAR5のバージョンもまた作製し、それをpCM22(
図10C)と称した。次に、pMF26によりトランスフェクションされ、グルタミンフリー培地において選択されたCHOK1SV GS-KO(商標)SSIプールを、pAR5(
図10D)又はpCM22(
図10C)によりトランスフェクトし(2回)、pMF4(
図3B)の存在下で24時間インキュベートし、次に400μg/mLジェネテシン(G418)において選択した(詳細なトランスフェクション方法は実施例2を参照)。グルタミンフリー培地の選択と整合して、培養したFlpEの無いコントロールは、G418の存在下では、RMCEプールによりリカバーされなかった。選択からの回収の後、8つのRMCEプールを継代培養し、次に8日間のバッチ培養に移行させた。Vicellセルカウンターを用いて4、6及び8日目に生細胞濃度を測定し、回収時の分泌されたmAbの濃度をプロテインAセンサーを用いたForteBio Octetにより測定した。リツキシマブの細胞特異的な生産率(回収時のqmAb)を算出した(
図11を参照)。これらのデータは、両方のシナリオが、CHOK1SV GS-KO(商標)SSI宿主からの細胞特異的なmAb生産率を増加させる現実的なオプションであることを立証するものであった。
【0122】
フェーズ2:大多数の次世代抗体(例えば四価の二重特異性抗体)の場合、複数の重鎖又は軽鎖の会合は繰り返し起こる課題である。極めて少ない不必要な副産物量の最適な生成物の品質を得るため、安定的及び高い再現性で、4つの抗体鎖を発現する適切なCHOクローンの選択が有効である。その結果、クローン選択の間、ELISA、RP-HPLC又はCD-SDSを利用する多くの生成物の解析がしばしば必要とされる。しかしながら、多部位SSI細胞株では、複数鎖タンパク質をコードする遺伝子は個々のプロモーターにより駆動され、少なくとも2つの部位にわたり空間的に切り離される。これにより、個々の鎖のコピー数及び相対的な発現がトランスフェクタントプールと早い時期に整合することが確実となり、コード化される転写単位のプロモーター強度又はコピー数の操作による個々のポリペプチド鎖の取得可能性の効果的な経験的微調整が可能となる。この利点としては、生成物の品質がより均一となり、SSI生成プール及び細胞株から生産されるミスフォールディングされた複数鎖組換えタンパク質の比率が減少し、初期段階での評価の必要性が劇的に減少することが挙げられる。したがって、本実施例では、多部位SSIを用いて、以下の3つの遺伝子によりコードされるセルグツズマブアムナロイキン(CEA-IL2v)の発現の有無を評価した:LC、HC及びHC-IL2(Klein et al.,Oncoimmunology 6: 3(2017))。本実施例では、CHOK1SV GS-KO(商標)SSI宿主のゲノムへのこれらの3つの遺伝子の挿入のため、2つのアプローチを試験した。本実験(フェーズ2)において、ヒトイントロンA(Addison et al.,Journal of General Virology,78(1997))との組合せによるマウスサイトメガロウイルス第1の初期遺伝子(IE1)(mCMV)プロモーター(欧州特許出願公開第1525320号)を用い、hCMVプロモーターの代わりに組換えタンパク質の発現を行わせた。第1のアプローチにおいて、本実施例では、ターゲッティングベクターpAB2(
図12A)を用いて、ランディングパッドAにセルグツズマブアムナロイキンのLC、HC及びHC-IL2を挿入した。選択は、実施例2にて説明したようにグルタミンの不存在下で行った。第2のアプローチにおいて、ランディングパッドAをターゲッティングするセルグツズマブアムナロイキンのLC及びHC-IL2のための発現ユニットを含むpAB5(
図12B)により、CHOK1SV GS-KO(商標)SSI宿主をトランスフェクトした(
図2)。選択は、実施例2にて説明したようにグルタミンの不存在下で行った。その後、本実施例では、ランディングパッドB(ランディングパッドB、
図2A)を標的とするネオマイシンホスホトランスフェラーゼ選択マーカー遺伝子(NEO)に加えて、単一のセルグツズマブアムナロイキンのHC発現カセット(
図12C:pAR2)を含むターゲッティングベクターを生成した。mAb遺伝子を欠くpAR2のバージョンもまた作製し、それをpCM46(
図12B:pCM46)と称した。次に、pAB5によりトランスフェクトし、グルタミンフリー培地において選択したCHOK1SV GS-KO(商標)SSIプールを、pCM46又はpAR2(詳細なトランスフェクション方法は実施例2を参照)によりトランスフェクトし(2回)、400μg/mLのジェネテシン(G418)を含む培地において選択した。コントロールプールも構築し、その内訳は、pAR2の空のバージョンを有する「モック」トランスフェクション、並びにCEA-IL2v抗体種を同定するために用いる3つのプール(各々セルグツズマブアムナロイキンをコードする3つの遺伝子のうちの1つを欠く、LC+HC、LC+HC-IL2及びHC+HC-IL2)とした。選択からの回収後、RMCEプールを継代培養し、次に8日間のバッチ培養に移行させた。Vicellセルカウンターを用い、生細胞濃度を4、6及び8日目に測定した。セルグツズマブアムナロイキンの会合体種を、上清の10%のビス-トリスSDS PAGEゲルにおける非還元的分析(
図13A)、及び次のデンシトメトリー分析(ImageJソフトウェア)(
図13B)により測定した。これらのデータは、セルグツズマブアムナロイキンのLC、HC及びHC-IL2遺伝子がランディングパッドAに挿入されるとき、個々の鎖の発現が低く、また完全に組み立てられた生成物と考えられるものもごくわずかであった。対照的に、セルグツズマブアムナロイキンのLC及びHC-IL2でランディングパッドAを標的とし、HCでランディングパッドBを標的としたとき、個々の鎖の発現は増加し、より完全に組み立てられた生成物が検出される。この結果の再現性(反復したプール)は、多部位SSI法を用いたアプローチにより各鎖の相対量を調製し、生成物の品質を向上させる可能性をサポートするものである。二重特異性会合のために必要とされる遺伝子を、2つの部位にわたり切り離す(また第2部位を一杯にしない)ことにより、発現の改善が示された。
【0123】
フェーズ3:CHOK1SV GS-KO(商標)細胞株の分泌能力の増加を目的とする内因性タンパク質の発現は、生成物の力価を増加させる確立されたアプローチである。国際公開第2015/018703A1号から同定される候補、並びに表10、11及び12のそれらを、多部位SSI細胞株において評価した。この概念を試験するため、ランディングパッドAを標的とするエタナーセプトを発現するベクター(
図14A、B及びC:pTC1)を構築した。これを別々にCHOK1SV GS-KO(商標)SSI宿主(
図14)にトランスフェクトし、プールをグルタミンフリー培地において、選択(2回)した(詳細なトランスフェクション方法は実施例2を参照)。pCM39からpCM45は、ヒトサイトメガロウイルスの主要初期(hCMV)プロモーター(その第1イントロンAを有する)の制御下の補助的遺伝子の発現ユニット、及び標的ランディングパッドBを含む(
図14)(表11及び12)。pCM39-42において、ステアロイルCoAデサチュラーゼ-1(Scd1)及びステロール制御エレメント結合タンパク質1(SREBF1)のバリアントにより、NL1座位をターゲッティングした。pCM43、44及び45において、配列gb:CQ871827からのc-末端PEST配列
(配列番号38)を有する半減期の短いGFP(又はdsGFP)を構築し、また3’UTRにCPEB2A(pCM43)、CEPB2B(pCM44)及びSRPα(pCM45)のためのmiR標的配列を6コピー挿入した。これらのターゲッティングベクターは、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子(NEO)を含み、二重のpTC01トランスフェクション済みプールに各ベクターで(pMF4と共に)トランスフェクトした24時間後、400μg/mLのG418を補充した培地を用いて選択を行った。プール回収の成功及び少なくとも1回の継代培養の後、8バッチ培養を行った。Vicellセルカウンターを用い、生細胞濃度を4、6及び8日目に測定し、回収時の分泌されたmAbの濃度をプロテインAセンサーを用いたForteBio Octetにより測定した。生細胞濃度(IVCC)、細胞特異的生産率(回収時qP)及び分泌されたエタナーセプト濃度の全体を示す(
図15を参照)。これらのデータは、マウスSCD1(mSCD1)の発現及びCEPB2A(dsGFP_6n CPEB2A)、CPEB2B(dsGFP_6n CPEB2B)及びSRPα(dsGFP_6n SRPα)miR結合部位を3’UTRに担持するスポンジベクターによるエタナーセプトの分泌量増加を示すものであった。
【0124】
【表11】
【表12】
実施例5:CHOK1SVとHEK293細胞株との間の座位の転移
[00136]HEK293 SSI宿主を生成するため、University of California Santa Cruz (UCSC)ヒトゲノムデータベースのスタンドアロンコピー(バージョン:2006年3月(NCBI36/hg18))を使用し、CHOK1SV由来のベクター組込み部位、及びランディングパッド位置を、ヒトゲノムに対してBLAT検索した。CHOK1SV配列の少なくとも25塩基対において、95%(以上)の配列類似性が同定された。類似の領域を、IGVビューア(Broad institute version 2.4)で視覚化した。社内のCrispr-Cas9デザインツールを使用して、Crispr-Cas9 gRNAをデザインした。CHOK1SV及びHEK293の座位を表1にまとめる。
【配列表】