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特許7467128廃棄物処理システムおよび廃棄物処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】廃棄物処理システムおよび廃棄物処理方法
(51)【国際特許分類】
   B09B 3/60 20220101AFI20240408BHJP
   C05F 17/90 20200101ALI20240408BHJP
   C05F 17/00 20200101ALI20240408BHJP
   C05F 7/00 20060101ALI20240408BHJP
   C05F 3/06 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
B09B3/60
C05F17/90
C05F17/00
C05F7/00 301H
C05F3/06 H
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020006101
(22)【出願日】2020-01-17
(65)【公開番号】P2021112704
(43)【公開日】2021-08-05
【審査請求日】2023-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】597150795
【氏名又は名称】中部エコテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174090
【弁理士】
【氏名又は名称】和気 光
(74)【代理人】
【識別番号】100100251
【弁理士】
【氏名又は名称】和気 操
(74)【代理人】
【識別番号】100205383
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 諭史
(72)【発明者】
【氏名】吉田 達宏
(72)【発明者】
【氏名】荒川 友子
(72)【発明者】
【氏名】竹内 和敏
【審査官】松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-232588(JP,A)
【文献】特開平11-029385(JP,A)
【文献】特開平11-077002(JP,A)
【文献】特開2003-053306(JP,A)
【文献】特開平08-131994(JP,A)
【文献】特開2000-219585(JP,A)
【文献】特開2008-062224(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0260111(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B
C05F 17/90
C05F 17/00
C05F 7/00
C05F 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機性廃棄物を貯蔵する貯蔵庫と、2以上の廃棄物処理装置と、前記貯蔵庫から前記廃棄物処理装置へ前記有機性廃棄物を運搬する運搬手段と、から構成される廃棄物処理システムであって、
前記廃棄物処理装置は、気密性があり、内容積が5m 以上の処理室を有する容器を備え、前記有機性廃棄物を前記処理室内で撹拌しながら発酵および乾燥させて前記有機性廃棄物として家畜排泄物または汚泥の堆肥化を行なう廃棄物処理装置であり、
前記容器は、前記処理室内の前記有機性廃棄物の重量を直接的または間接的に算出する重量センサを備え
前記貯蔵庫の前記有機性廃棄物は、前記各廃棄物処理装置に設けられた前記重量センサにより算出される前記処理室内の前記有機性廃棄物の重量情報に基づいて、前記各廃棄物処理装置へ運搬され、
前記廃棄物処理装置には外部から視認できる信号が設けられ、前記信号は、前記重量センサに基づいて内部の状況を色別で表すことを特徴とする廃棄物処理システム。
【請求項2】
前記重量センサは、前記容器の外側に少なくとも3つ設けられていることを特徴とする請求項1記載の廃棄物処理システム。
【請求項3】
前記重量センサは、前記容器の円形状の底面に、周方向に均等に配置されていることを特徴とする請求項2記載の廃棄物処理システム。
【請求項4】
有機性廃棄物が、該有機性廃棄物を貯蔵する貯蔵庫から、2以上の廃棄物処理装置へと、運搬手段により運搬され、前記廃棄物処理装置によって堆肥化される廃棄物処理方法であって、
前記廃棄物処理装置は、気密性があり、内容積が5m 以上の処理室を有する容器を備え、前記有機性廃棄物を前記処理室内で撹拌しながら発酵および乾燥させて前記有機性廃棄物として家畜排泄物または汚泥の堆肥化を行なう廃棄物処理装置であり、
前記容器は、前記処理室内の前記有機性廃棄物の重量を直接的または間接的に算出する重量センサを備え、
前記貯蔵庫の前記有機性廃棄物は、前記各廃棄物処理装置に設けられた前記重量センサにより算出される前記処理室内の前記有機性廃棄物の重量情報に基づいて、前記各廃棄物処理装置へ運搬され、
前記廃棄物処理装置には外部から視認できる信号が設けられ、前記信号は、前記重量センサに基づいて内部の状況を色別で表すことを特徴とする廃棄物処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家畜排泄物や食品残渣、汚泥などの有機性廃棄物を処理するための廃棄物処理装置などに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、家畜排泄物や食品残渣などの有機性廃棄物を堆肥化して、循環資源としてリサイクルすることが行われている。堆肥化方法は、敷地に有機性廃棄物を堆積し、切り替えしを行なって堆肥化を行なう「開放型」と、有機性廃棄物を容器内に投入してその中で堆肥化を行なう「密閉型」に大きく分類される。密閉型としては、例えば、微生物の発酵作用を利用した密閉型発酵乾燥処理装置(「コンポ」とも呼ぶ)を用いて堆肥化する方法が知られている。このコンポは、円筒縦型の容器(処理室を含む)を有し、処理室内に投入された廃棄物が外気と接触しにくい密閉縦型構造の堆肥化処理装置である。
【0003】
コンポとして、例えば特許文献1には、容器内を通気撹拌しながら好気性微生物の作用により食品残渣を発酵させる処理装置が提案されている。この処理装置では、縦型容器内に立設された回転軸周りに上下複数段の撹拌翼が放射状に延在されている。最下段の撹拌翼の下部には、複数の通気孔が設けられ、この通気孔から容器内に通気がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-69477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1のような処理装置は、一般的に、処理装置付近に設けられた制御盤を用いて運転者の下で運転される。運転者は、有機性廃棄物を廃棄物処理装置の処理室へ投入した後、一定時間毎などに、処理室の内部を目視確認する。運転者は、確認された堆肥化の進行状況に応じて、運転継続や、有機性廃棄物の投入、堆肥化した有機性廃棄物の取り出しを判断する。
【0006】
経験豊富な運転者の場合、処理室内の有機性廃棄物の見た目だけでなく、においや、装置の稼働音、排気(蒸気)の発生量などの情報を、五感を使って得る。経験豊富な運転者は、これらの情報を、過去の経験と勘に基づき、総合的に判断することにより、堆肥化の進行状況を把握する。経験が浅い運転者の場合、経験と勘を駆使した運転が困難であるため、堆肥化の進行状況の判断の精度が経験豊富な運転者よりも劣る。その結果、堆肥の質が悪くなったり、堆肥生産(廃棄物処理)の効率が低くなったりしやすい。また、経験豊富な運転者であっても、気象条件や季節などの諸条件により、堆肥化の進行状況の把握は容易ではなく、過乾燥や過剰投入が生じることがある。過乾燥や過剰投入によって堆肥化のバランスが一度崩れると、処理室内の堆肥を全量取り出したり、投入量を減らした運転をしばらく続けたりする必要がある。そのため、有機性廃棄物の処理に支障をきたすおそれがある。
【0007】
本発明はこのような問題に対処するためになされたものであり、処理室内の堆肥化の進行状況を把握でき、安定した品質の堆肥が得られる廃棄物処理装置、およびこの廃棄物処理装置を利用した処理システムと処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の廃棄物処理装置は、気密性のある大型の処理室を有する容器を備え、有機性廃棄物を前記処理室内で撹拌しながら発酵および乾燥させて有機性廃棄物の堆肥化を行なう廃棄物処理装置であって、上記容器は、上記処理室内の上記有機性廃棄物の重量を直接的または間接的に算出する重量センサを備えることを特徴とする。
【0009】
上記重量センサは、上記容器の外側に少なくとも3つ設けられていることを特徴とする。
【0010】
上記重量センサは、上記容器の円形状の底面に、周方向に均等に配置されていることを特徴とする。
【0011】
本発明の廃棄物処理システムは、有機性廃棄物を貯蔵する貯蔵庫と、2以上の本発明の廃棄物処理装置と、上記貯蔵庫から上記廃棄物処理装置へ上記有機性廃棄物を運搬する運搬手段と、から構成される廃棄物処理システムであって、上記貯蔵庫の有機性廃棄物は、上記各廃棄物処理装置に設けられた上記重量センサにより算出される上記処理室内の有機性廃棄物の重量情報に基づいて、上記各廃棄物処理装置へ運搬されることを特徴とする。
【0012】
本発明の廃棄物処理方法は、有機性廃棄物が、該有機性廃棄物を貯蔵する貯蔵庫から、2以上の本発明の廃棄物処理装置へと、運搬手段により運搬され、上記廃棄物処理装置によって堆肥化される廃棄物処理方法であって、上記貯蔵庫の有機性廃棄物は、上記各廃棄物処理装置に設けられた上記重量センサにより算出される上記処理室内の有機性廃棄物の重量情報に基づいて、上記各廃棄物処理装置へ運搬されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の廃棄物処理装置は、気密性のある大型の処理室を有する容器を備え、有機性廃棄物を前記処理室内で撹拌しながら発酵および乾燥させて有機性廃棄物の堆肥化を行なう装置であり、上記容器は処理室内の有機性廃棄物の重量を直接的または間接的に算出する重量センサを備えるので、処理廃棄物の重量変化から処理室内の堆肥化の進行状況を把握できる。これにより、堆肥の取り出しと、新たな有機性廃棄物の投入を行なう適切な時期が分かるため、気象条件、季節、作業者の熟練度に関わらず、安定した品質の堆肥を得ることができる。
【0014】
重量センサは、容器の外側に少なくとも3つ設けられているので、容器内の廃棄物の重量変化を正確に計測でき、堆肥化の進行状況を高い精度で把握することができる。これにより、堆肥の取り出しと、新たな有機性廃棄物の投入を、より適切な時期に行なうことができる。
【0015】
重量センサは、容器の円形状の底面に、周方向に均等に配置されているので、処理装置の荷重を支持する支持台の設置などを別途行なうことなく、基礎の上に簡易に、廃棄物処理装置を設置することができる。
【0016】
本発明の廃棄物処理システムは、有機性廃棄物を貯蔵する貯蔵庫と、2以上の本発明の廃棄物処理装置と、貯蔵庫から廃棄物処理装置へ有機性廃棄物を運搬する運搬手段とから構成され、貯蔵庫の有機性廃棄物が、各廃棄物処理装置に設けられた重量センサにより算出される処理室内の有機性廃棄物の重量情報に基づいて、各廃棄物処理装置へ運搬されるので、複数の廃棄物処理装置が連携して稼働できる。これにより、連続運転を行ないやすくなるため、より多くの廃棄物処理が可能となる。また、各処理装置間で運転負荷を一定とでき、特定の装置のみが故障することなどを防止できる。
【0017】
本発明の廃棄物処理方法は、有機性廃棄物が該有機性廃棄物を貯蔵する貯蔵庫から2以上の本発明の廃棄物処理装置へと運搬手段により運搬され、これらの廃棄物処理装置によって堆肥化される方法であり、貯蔵庫の有機性廃棄物が、各廃棄物処理装置に設けられた重量センサにより算出される処理室内の有機性廃棄物の重量情報に基づいて、各廃棄物処理装置へ運搬されるので、複数の廃棄物処理装置を連携して稼働させることができる。これにより、連続運転を行ないやすくなるため、より多くの廃棄物処理が可能となる。また、各処理装置間で運転負荷を一定とでき、特定の装置のみが故障することなどを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の廃棄物処理装置の一例を示す図である。
図2】重量センサの設置位置を示す図である。
図3】重量センサの他の設置位置を示す図である。
図4】本発明の廃棄物処理システム・処理方法の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の廃棄物処理装置の一例を図1に基づいて説明する。図1は廃棄物処理装置の構成を示す縦断面図である。廃棄物処理装置1は、有機性廃棄物の堆肥化を行なう密閉型発酵乾燥処理機(コンポ)である。図1に示すように、廃棄物処理装置1は、容器2と、容器2に設けられた重量センサ3と、制御盤12を備える。また、廃棄物処理装置1は、容器2の内部に、気密性のある大型の処理室4と、この処理室内で縦方向に設けられた回転軸5と、回転軸5周りに固定された複数枚の撹拌翼6と、処理室内への送気手段7と、処置室外への排気手段11と、処理室に有機性廃棄物を投入する投入口4aとを備える。最下段の撹拌翼6の下部に通気孔6aを有し、この通気孔6aは送気手段7に連結されている。この通気孔6aから、外気(送風)が処理室4の内部に導入される。通気孔が設けられる撹拌翼としては、最下段の撹拌翼に限られず、中段や上段の撹拌翼であってもよい。
【0020】
本発明の廃棄物処理装置は業務用の大型の装置である。このため、処理室についても、内容積が例えば5m以上、好ましくは15m以上の大型となる。処理室の内容積の大きさの上限は特にないが、通常120m以下である。本発明はこのような大型の廃棄物処理装置において、後述する重量センサ3を設けたこと、および、該重量センサからの情報に基づいて運転を最適化することを特徴としている。
【0021】
発酵槽である処理室4は、金属製外層と断熱層とを有する断熱室である。また、処理室4は、通気孔から導入される以外の外気とは接触しにくい気密性の高い空間である。処理室4は、上部に有機性廃棄物の投入口4aと、ガスなどの排気口4cとを有する。処理室4は、その底部に、堆肥(処理後の有機性廃棄物)の取出口4bを有する。排気口4cは排気手段に連結されている。投入口4aおよび取出口4bには、処理室4の気密性を確保するための開閉可能な蓋などが設けられている。
【0022】
撹拌翼6は、処理室内において回転軸5の下部から上部にかけて所定間隔で離間して複数段の位置で各段に所定枚数設けられている。図1に示す形態では、段数は5段であり、撹拌翼枚数は、下部から1段目に3枚(うち1枚は図示せず)、2段目に2枚、3段目に1枚、4段目に1枚、5段目に2枚の計9枚が設けられている。撹拌翼6の段数や、各段における撹拌翼の枚数は、図1に示す例に限定されない。
【0023】
図1に示す形態では、容器2の内部で処理室4の下方に機械室8が設けられている。この機械室内には、回転軸5の駆動手段である油圧ユニット9と、送気手段7と、外気を加温するヒータ10とが設けられている。回転軸5は、機械室8内に貫通しており、油圧ユニット9により所定回転数で回転させられる。送気手段7は、送風ブロワ7aと、送風管7bとで構成される。送風ブロワ7aから送られる外気(送風)は、ヒータ10、回転軸5内に設けられた送風管7bを介して処理室内に送られる。また、回転軸5の上端部にも送気手段が連結され、容器の上部と下部から通気する形態としてもよい。さらに、送風ブロワ7aとヒータ10との間には、処理室内へ導入する送風量を調整するための弁として送風バルブを設けてもよい。
【0024】
処理室4の内部で発生したガスや水蒸気などは、排気口4cから排気手段11を介して外気へ排気される。排気手段11は、排気ブロワ11aと、排気管11bと、水洗スクラバー11cとで構成される。排気ブロワ11aは、処理室内のガスなどを強制的に排気させる。水洗スクラバー11cは、ガスなどに洗浄液としての水を接触させて臭気成分を捕捉する脱臭装置である。臭気成分としては、プロピオン酸、ノルマル酢酸、イソ吉草酸などの低級脂肪酸やアンモニアなどが挙げられる。また、排気手段11を機械室8に設ける態様としてもよい。
【0025】
有機性廃棄物(以下、単に「廃棄物」または「処理物」ともいう)は、処理室4の上方に存する投入口4aから処理室内に投入される。投入口4aまで有機性廃棄物を搬送する搬送方法としては、有機性廃棄物を入れたバケットをロープなどで昇降させる方法を選択してもよいし、ベルトコンベヤで搬送する方法を選択してもよい。例えば、ロープなどで昇降させる場合、廃棄物処理装置1は、有機性廃棄物を搬送するバケットと、バケットを昇降させる昇降台とを備える。バケットと昇降台はロープで連結されている。バケットは、平常状態では昇降台の足元に位置し、廃棄物投入の際に昇降する。投入の際には、巻取管の駆動によってロープが巻き取られて、バケットが上昇する。昇降台の上端まで上昇したバケットは傾倒して、廃棄物を投入口4aから投入する。
【0026】
また、ベルトコンベヤで搬送する場合、廃棄物は、有機性廃棄物を貯蔵した貯蔵庫から、廃棄物処理装置へ繋げられたベルトコンベヤを用いて廃棄物処理装置へ搬送され、投入口4aから処理室4へ投入される。ベルトコンベヤは、平常時は停止しており、廃棄物処理装置へ廃棄物を投入する際に稼働させる。ベルトコンベヤは、人が稼働させてもよいし、後述するような、自動的に稼働する構成としてもよい。
【0027】
廃棄物処理装置1で処理する有機性廃棄物としては、有機質成分を多く含む、家畜排泄物、食品廃棄物、浄化槽などの汚泥、またはこれらの混合物が挙げられる。家畜排泄物として、鶏糞、豚糞、牛糞、馬糞などが挙げられる。食品廃棄物として、生ごみ、食品製造副産物などが挙げられる。
【0028】
有機性廃棄物の堆肥化は、容器内において、好気性発酵菌の存在下で通気しながら好気発酵させて行なう。好気性発酵菌としては、30~90℃程度で活性化する発酵菌が好ましい。この好気性発酵菌として、例えば、ジオバチスル属やバチルス属などが挙げられる。好気発酵は、通気孔6aから処理室内に外気を導入しつつ各撹拌翼6を低速で回転させて、廃棄物を通気撹拌して行なう。この通気撹拌により、廃棄物は発酵とともに乾燥される。そして、発酵・乾燥され堆肥化された廃棄物(堆肥)は、処理室4の下部の取出口4bより取り出される。
【0029】
制御盤12は、有機性廃棄物の堆肥化において、廃棄物処理装置1の運転を制御する制御装置である。制御盤12は、廃棄物処理装置1に備え付けられている。制御盤12により、例えば、送風ブロワ7aのON/OFFや、油圧ユニット9(油圧モータ)のON/OFFなどが制御される。また、制御盤12は、後述する重量センサ3で算出された処理室4の内部の重量を表示する表示部を備える。廃棄物処理装置1の運転は、一般に運転者が制御盤12を操作することで行われる。運転者は、堆肥化の状況に合わせて廃棄物処理装置1の運転を管理する。
【0030】
本発明の廃棄物処理装置1は、処理室4の内部の有機性廃棄物の重量を直接的または間接的に算出する重量センサ3を設けることを特徴とする。その結果、有機性廃棄物の発酵および乾燥による変化を、重量変化として定量的に、常時確認することができるため、廃棄物の堆肥化の進行状況を把握しやすくなる。これにより季節や、気象条件、運転者などが異なっても、一定品質の堆肥を得ることができる。
【0031】
図1に示すように、廃棄物処理装置1は、容器2の外側の底面に重量センサ3を備える。重量センサ3は、ロードセルとも呼ばれ、荷重を測定するためのセンサである。ロードセルは、力に比例して変形する起歪体と、その変形量(ひずみ)を測定するひずみゲージから構成される。ひずみゲージの貼り付けられた起歪体の一方は固定され、もう一方は自由端となっている。自由端に荷重がかかると起歪体が変形するため、起歪体の変形量をひずみゲージにより電圧信号として測定し、荷重(重量)を算出する。ロードセルの構成部品であるひずみ増幅器や、ロードセル指示計には、安定した印加電源を用いることが好ましい。
【0032】
本発明に用いる重量センサ3は、正確な重量を算出するためには、振動の少ない、高剛性で水平な基礎の上に設置することが好ましい。屋外環境に設置する場合、コンクリートや、鉄板などの基礎の上に設置することが好ましい。また、風雨や、急激な温度変化、太陽光などへの対策を施してもよい。
【0033】
次に、重量センサ3の設置位置について、図2および図3を用いて説明する。図2は重量センサの設置位置の一例(容器底面)を示す図であり、図3は重量センサの設置位置の他の例(容器側面)を示す図である。
図2に示すように、重量センサ3は、円筒縦型の容器2の円周上の外側の底面に、周方向に均等に配置できる。図2(a)における重量センサ3は、容器2の荷重を支持し、容器2の安定性を保つために、3つ設けられている。設置する重量センサの数は、容器の安定性を高めたい場合や、算出される重量の精度を高めたい場合には、4つ以上としてもよい。例えば、図2(b)では、重量センサ3を4つ設置している。このように複数個の重量センサを設けることで、一つ当たりの重量センサに加わる荷重が過大にならないため、処理室4の内部の廃棄物の重量を正確に算出することができる。
【0034】
また、図3に示すように、重量センサ3は容器2の側面に設けてもよい(排気手段など、容器2の外部の設備の記載は省略)。容器2は、その側面に少なくとも3つの取付部13を有し、これら取付部13は容器2の周方向に均等に配置される。また、取付部13の下方には、容器2を支持するための支持台14が設けられる。容器2は、取付部13と、支持台14を、重量センサ3を介して固定することにより、支持される。支持台14は、振動の少ない、高剛性の支持台であることが好ましい。容器2の側面に重量センサ3を設けることで、傾斜地などの、容器2の底面へ重量センサ3を設けることが困難な場合でも、廃棄物処理装置を設置することができる。
【0035】
図2図3に示す形態において、複数の重力センサ3は、いずれも容器2の縦方向に直交する同一の水平面上に配置されている。すなわち、複数の重力センサ3は、図2の形態では容器2の水平底面に、図3の形態では容器2の側面位置において同じ高さに配置されている。これにより、容器内の廃棄物の重量変化をより正確に計測できる。
【0036】
図2図3に示す形態では、重量センサ3により、処理室4や機械室8を含めた容器2の全体の重量が測定でき、処理室内に有機性廃棄物がない状態のこれらの全体の重量から、処理室内の有機性廃棄物の重量を間接的に算出することができる。また、処理室内の内部下部に重量センサを設ける構成とすることで、処理室内の有機性廃棄物の重量を直接的に算出することができる。
【0037】
次に、廃棄物処理装置の具体的な運転方法について、図1を用いて説明する。上述のように、容器2には複数の重量センサ3が設置される。各重量センサ3が検出した電圧信号から算出された重量は合算され、処理室4の内部の重量として、制御盤12の表示部(図示省略)に表示される。運転者は、制御盤12に表示される処理室4の内部の重量を基に、堆肥化の進行状況を把握する。運転者は、有機性廃棄物が堆肥化されたと判断したら、処理室4の内部の堆肥を、取出口4bから取り出す。この際、堆肥の一部は処理室内に残すことが好ましい。処理室内に残す堆肥の量は、処理室4の容積に対して、10~80体積%の範囲内であることが好ましく、20~50体積%の範囲内であることがさらに好ましい。その後、新たな有機性廃棄物を投入口4aから処理室4へ投入する。新たに投入された有機性廃棄物と、前述の取り出し時に残された堆肥の合計の量は、処理室4の容積に対して20体積%以上であることが好ましく、60体積%以上であることがさらに好ましい。
【0038】
このように、処理室4の内部に堆肥を一部残しつつ、堆肥の取り出しと、堆肥の原料となる有機性廃棄物の投入を行ないながら、連続的に運転することで、堆肥化処理の効率が向上する。また、堆肥を取り出す前後での堆肥の品質が近いものとなるため、品質が安定する。なお、投入する有機性廃棄物の準備が間に合わず、投入できない場合などは、出来上がった堆肥の全量を取り出し、その後に準備された新たな有機性廃棄物のみを堆肥化処理する、バッチ方式での運転としてもよい。
【0039】
また、廃棄物処理装置1には、重量センサ3以外の検出器を設けてもよい。その場合、当該検出器から得られる情報も制御盤12の表示部に表示することができる。運転者は、各種検出器から得られる情報を基に、堆肥化の進行状況について、より精度の高い判断を行なうことができる。
【0040】
この種の廃棄物処理装置は、畜産農場などで使用される。一定規模以上の農場の場合、この処理装置は複数台(例えば、3~10台程度)が同時に使用される。従来、このようなケースでは、すべての装置を均等に運転することは難しく、装置間の稼働率差や処理量差が発生していた。これに対して、本発明の廃棄物処理装置は、重量センサを備えることで、各装置の処理室内の堆肥化の進行状況を把握でき、効率よく廃棄物を処理でき、また、負荷の分散が容易となる。
【0041】
複数の廃棄物処理装置を利用した廃棄物処理システムおよび廃棄物処理方法の一例を図4により説明する。図4は、廃棄物処理システム・処理方法を示す概要図である。
廃棄物処理システム15は、有機性廃棄物を貯蔵する貯蔵庫16と、2以上の廃棄物処理装置1と、ベルトコンベヤ17とから構成される。ベルトコンベヤ17は、貯蔵庫16に貯蔵されている有機性廃棄物を、各廃棄物処理装置1へ運搬する運搬手段である。運転者は、本システムの制御盤18を操作することにより、ベルトコンベヤ17を稼働する。また、制御盤18は、各廃棄物処理装置1の各種操作も行なうことができる。
【0042】
有機性廃棄物は、投入される廃棄物処理装置1の上方へ、ベルトコンベヤ17により運搬される。廃棄物処理装置1の上方に運搬された有機性廃棄物は、運転者により処理室内へ投入される。処理室への投入は、ベルトコンベヤ上の有機性廃棄物を、処理室上方の投入口へ投入するための投入手段を別途設けることにより、制御盤18での操作により遠隔で行えるようにしてもよい。
【0043】
制御盤18には、各廃棄物処理装置1の処理室内の重量が表示される。運転者は、制御盤18を操作し、廃棄物処理装置1を稼働させることにより堆肥化を進める。堆肥化の進行状況の確認は、適時、制御盤18に表示される各廃棄物処理装置1の処理室内の重量と、実際に処理室内部の状況を確認することによって行なう。堆肥化が進行し、取り出し可能となった廃棄物処理装置1からは、出来上がった堆肥を取り出す。堆肥が取り出された廃棄物処理装置1には、新たな有機性廃棄物を投入し、堆肥化を再開する。また、各廃棄物処理装置1において外部から視認できる信号などを設け、重量センサに基づく内部の状況を該信号の色などで把握する形態としてもよい。
【0044】
このような処理システムまたは処理方法とすることで、処理量をみて各装置を運転でき継続的に堆肥化を行なうことができる。また、各廃棄物処理装置の処理室内の有機性廃棄物の量を把握することができるため、堆肥化完了後の適切な時期に堆肥の入れ替えができる。これにより、連続運転を行ないやすくなるため、より多くの廃棄物処理が可能となる。また、各処理装置間における稼働率や処理量、運転負荷を一定とできるため、特定の装置のみが故障することなどを防止できる。
【0045】
本発明は、上述の実施形態に限られず、以下に例示する構成であってもよい。例えば、廃棄物処理システムは、人間による判断や、操作が無くても、各種センサから得られた情報や過去のデータをプログラムが処理することで、自動的に稼働するシステムとしてもよい。具体的には、堆肥化の進行状況の判断や、処理室への有機性廃棄物の運搬と投入、撹拌翼の回転、処理室内への通気、各廃棄物処理装置間での運転の最適化などを、機械自身がプログラムに従って行える構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の廃棄物処理装置は、処理室内の堆肥化の進行状況を把握でき、安定した品質の堆肥が得られるので、家畜排泄物、食品廃棄物、汚泥などを堆肥化する処理装置として広く利用でき、特に、複数台の廃棄物処理装置を同時に利用する形態において好適に利用できる。
【符号の説明】
【0047】
1 廃棄物処理装置
2 容器
3 重量センサ
4 処理室
5 回転軸
6 撹拌翼
7 送気手段
8 機械室
9 油圧ユニット
10 ヒータ
11 排気手段
12 制御盤
13 取付部
14 支持台
15 廃棄物処理システム
16 貯蔵庫
17 ベルトコンベヤ
18 制御盤
図1
図2
図3
図4