(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】検体分析装置
(51)【国際特許分類】
G01N 33/543 20060101AFI20240408BHJP
G01N 21/17 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
G01N33/543 541A
G01N21/17 A
(21)【出願番号】P 2020011943
(22)【出願日】2020-01-28
【審査請求日】2022-12-05
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118876
【氏名又は名称】鈴木 順生
(74)【代理人】
【識別番号】100202429
【氏名又は名称】石原 信人
(72)【発明者】
【氏名】池田 成
(72)【発明者】
【氏名】本波 優介
【審査官】西浦 昌哉
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0050215(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0122513(US,A1)
【文献】特開2017-075938(JP,A)
【文献】特開2011-193075(JP,A)
【文献】特開2007-133064(JP,A)
【文献】特開平02-295377(JP,A)
【文献】特開2002-090800(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
G03B 9/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体と検体に含まれる検出対象物と結合する磁性粒子を収納するカートリッジに対して磁場を印加する磁場印加部と、
前記カートリッジを撮像する撮像部と、
前記撮像部により撮像した画像に基づいて解析処理を行う解析処理部とを備え、
前記磁場印加部は、
カートリッジの第1側面側に設けられる電磁石と、
前記電磁石により磁化する磁性部材
であって、前記カートリッジにおける前記第1側面側と反対側の第2側面側に設けられる、磁性部材と、
前記磁性部材を移動する移動機構とを備える検体分析装置。
【請求項2】
前記移動機構で前記磁性部材を移動することにより、前記カートリッジ内の磁性粒子の移動方向を変える、請求項
1に記載の検体分析装置。
【請求項3】
前記移動機構は、前記磁性部材を、
前記電磁石が生成した磁場の磁束密度を前記カートリッジの位置で反転させる位置である反転位置と、
前記電磁石が生成した磁場の磁束密度を前記カートリッジの位置で反転させない位置である非反転位置と
の間で移動させる、請求項
1に記載の検体分析装置。
【請求項4】
前記電磁石が設けられる前記第1側面側は、前記カートリッジの上側であり、前記磁性部材が設けられる前記第2側面側は、前記カートリッジの下側であり、
前記反転位置は、前記カートリッジと前記撮像部との間で且つ前記カートリッジと前記撮像部とに挟まれた位置である、請求項
3に記載の検体分析装置。
【請求項5】
前記磁性部材は、平板状の形状をなしている、請求項
4に記載の検体分析装置。
【請求項6】
前記非反転位置は、前記撮像部が前記カートリッジを撮像する際に、前記撮像部が前記カートリッジを撮像するのに障害とならない、前記反転位置の側方の位置である、請求項
4又は請求項
5に記載の検体分析装置。
【請求項7】
前記電磁石が設けられる前記第1側面側は、前記カートリッジの下側であり、前記磁性部材が設けられる前記第2側面側は、前記カートリッジの上側であり、
前記反転位置は、前記カートリッジと前記撮像部との間で且つ前記カートリッジと前記撮像部とに挟まれた位置である、請求項
3に記載の検体分析装置。
【請求項8】
前記磁性部材は、環状の形状をなしている、請求項
7に記載の検体分析装置。
【請求項9】
前記非反転位置は、前記磁性部材に形成されている開口部に、前記撮像部が挿入される、前記反転位置の上方の位置である、請求項
8に記載の検体分析装置。
【請求項10】
前記磁性部材は、平板状の形状の第1の磁性部材と、環状の形状の第2の磁性部材とを備えて構成されており、
前記磁性部材が前記反転位置にある場合には、前記反転位置にある前記第1の磁性部材と前記第2の磁性部材により磁性粒子を上側に集めた後、前記第1の磁性部材が前記非反転位置に移動する、請求項
7に記載の検体分析装置。
【請求項11】
前記磁性部材は、虹彩絞りの形状をなしており、
前記磁性部材が前記反転位置にある場合には、前記磁性部材の虹彩絞りを絞った状態で磁性粒子を上側に集めた後、虹彩絞りを開いた状態とする、請求項
7に記載の検体分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、検体分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
極微量のウイルスや生体物質等の検出対象物を高感度に検出することによって、感染症等の疾病を早期に診断することを可能にする検体分析装置が、多くの病院で利用されている。このような検体検査装置においては、例えば、検出対象物を含む検体とこの検体と特異的に結合する磁性粒子とをカートリッジに収納した上で、カートリッジに形成されたセンサエリアに捕捉された磁性粒子の個数を光学的な手段によって計数することによって、検体に含まれる検出対象物を高感度に検出および定量することができる。
【0003】
この場合、検体分析装置に、センサエリアに捕捉された検出対象物を測定するために光学的な手段として撮像部を設けることにより、この撮像部を用いて磁性粒子の数を測定することが可能になる。そのためには、撮像部がカートリッジのセンサエリアを撮像する際に、磁場印加部が撮像の障害とならないように、撮像部と磁場印加部とを配置する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-215553号公報
【文献】特開2010-212531号公報
【文献】国際公開第2010/058303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本実施形態の目的は、撮像部がカートリッジを撮像する際に、磁場印加部が障害とならないように磁場印加部を配置した検体分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態に係る検体分析装置は、
検体と検体に含まれる検出対象物と結合する磁性粒子を収納するカートリッジに対して磁場を印加する磁場印加部と、
前記カートリッジを撮像する撮像部と、
前記撮像部により撮像した画像に基づいて解析処理を行う解析処理部とを備え、
前記磁場印加部は、
カートリッジの第1側面側に設けられる電磁石と、
前記電磁石により磁化する磁性部材と、
前記磁性部材を移動する移動機構とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態に係る検体分析装置の構造を説明する側面レイアウト図である(磁性粒子を下方に移動させる磁場を印加した状態)。
【
図2】第1実施形態に係る検体分析装置の構造を説明する側面レイアウト図である(磁性粒子を上方に移動させる磁場を印加した状態)。
【
図3】第1実施形態に係る検体分析装置における磁性部材を上方から見た状態を示す図である。
【
図4】第1実施形態に係る検体分析装置における別な態様の磁性部材を上方から見た状態を示す図である。
【
図5】第1実施形態において電磁石が生成する磁場の磁束密度の変化を表すグラフを示す図である(磁性部材が反転位置にある場合)。
【
図6】第1実施形態において電磁石が生成する磁場の磁束密度の変化を表すグラフを示す図である(磁性部材が非反転位置にある場合)。
【
図7】第1実施形態に係る検体分析装置で実行される検体分析処理の一例を説明するフローチャートを示す図である。
【
図8】カートリッジのセンサエリアにおける磁性粒子の数に関する時間変化を表すグラフを示す図である。
【
図9】第2実施形態に係る検体分析装置の構造を説明する側面レイアウト図である(磁性粒子を下方に移動させる磁場を印加した状態)。
【
図10】第2実施形態に係る検体分析装置の構造を説明する側面レイアウト図である(磁性粒子を上方に移動させる磁場を印加した状態)。
【
図11】第2実施形態に係る検体分析装置における磁性部材を上方から見た状態を示す図である。
【
図12】第2実施形態に係る検体分析装置における別な態様の磁性部材を上方から見た状態を示す図である。
【
図13】第2実施形態において電磁石が生成する磁場の磁束密度の変化を表すグラフを示す図である(磁性部材が非反転位置にある場合)。
【
図14】第2実施形態において電磁石が生成する磁場の磁束密度の変化を表すグラフを示す図である(磁性部材が反転位置にある場合)。
【
図15】第2実施形態に係る検体分析装置で実行される検体分析処理の一例を説明するフローチャートを示す図である。
【
図16】第2実施形態に係る検体分析装置においてセンサエリアの撮像をする際のセンサエリアと撮像部の撮像範囲と磁性部材の位置関係の一例を示す図である。
【
図17】第2実施形態の変形例に係る検体分析装置の構造を説明する側面レイアウト図である(磁性粒子を下方に移動させる磁場を印加した状態)。
【
図18】第2実施形態の変形例に係る検体分析装置の構造を説明する側面レイアウト図である(磁性粒子を上方に移動させる磁場を印加した第1の状態)。
【
図19】第2実施形態の変形例に係る検体分析装置の構造を説明する側面レイアウト図である(磁性粒子を上方に移動させる磁場を印加した第2の状態)。
【
図20】第2実施形態の別な変形例に係る検体分析装置における磁性部材を上方から見た平面図である(虹彩絞りが絞られた状態)。
【
図21】第2実施形態の別な変形例に係る検体分析装置における磁性部材を上方から見た平面図である(虹彩絞りが開かれた状態)。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、本実施形態に係る検体分析装置を説明する。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行うこととする。
【0009】
〔第1実施形態〕
図1及び
図2は、第1実施形態に係る検体分析装置1の構造を説明する側面レイアウト図である。特に、
図1は、検体分析装置1がカートリッジ100内の磁性粒子を下方に移動させる状態を説明する側面レイアウト図であり、電磁石22が生成した磁場の磁束密度の変化を反転させる反転位置に磁性部材24がある状態を示している。一方、
図2は、検体分析装置1がカートリッジ100内の磁性粒子を上方に移動させる状態を説明する側面レイアウト図であり、電磁石22が生成した磁場を反転させない非反転位置に磁性部材24がある状態を示している。
【0010】
これら
図1及び
図2に示すように、本実施形態に係る検体分析装置1は、撮像部10と、磁場印加部20と、解析処理部30とを備えて構成されている。
【0011】
撮像部10は、カートリッジ100のセンサエリア上に結合している磁性粒子を1個1個識別して計数できるようにする、光学デバイスである。撮像部10としては、例えば、光学顕微鏡や、光学顕微鏡にデジタルカメラ等を組み合わせた顕微撮像システムを用いることができる。カートリッジ100におけるセンサエリアの照明方法としては、光学顕微鏡で通常用いられる落射/透過照明や明視野/暗視野照明を用いることができる。照明には、各種ランプから発生した光や、その光を光学フィルタで波長選別した光、LED(Light Emitting Diode)光など、磁性粒子の観察に適した照明手段を用いることができる。
【0012】
本実施形態においては、撮像部10は、カートリッジ100が検体分析装置1にセットされた状態において、カートリッジ100のセンサエリアを撮像するために、カートリッジ100の下方に設置されている。また、本実施形態においては、撮像部10は、磁場印加部20における電磁石22よりも、下方に設けられている。
【0013】
磁場印加部20は、磁場のオン/オフが可能な電磁石22を備えて構成されている。電磁石22は、永久磁石が組み合わされたものでもよく、或いは、ヨークが組み合わされたものでもよい。永久磁石としては、例えば、フェライト磁石やアルニコ磁石、サマリウムコバルト磁石、ネオジム磁石等の既存の如何なる永久磁石が用いられてもよい。電磁石22は、磁場のオン/オフ時に磁場分布が歪むことを避け、また、磁場の強さを調整することもできる。磁場印加部20がどのような構成であっても、その磁極はカートリッジ100側に向いており、磁極のSNの方向軸とカートリッジ100のセンサエリア面とが略直交するように磁場印加部20を配置することが望ましい。
【0014】
本実施形態においては、カートリッジ100が検体分析装置1の支持フレームに載置された状態において、電磁石22は、カートリッジ100の上側に位置するように配置されており、検体に検出対象物が含まれているかどうかの分析を行う際に、カートリッジ100を電磁石22と撮像部10とで挟むように配置されている。
【0015】
さらに、磁場印加部20は、磁場印加部20により磁化する磁性部材24を備えている。すなわち、磁性部材24は、電磁石22がオンとなり磁場を生成すると、磁化されて磁石として作用する。この磁性部材24には、一般的な軟磁性材料を用いることができる。
【0016】
この磁性部材24の形状は任意である。本実施形態においては、磁性部材24が反転位置にある場合には、この磁性部材24がカートリッジ100と撮像部10との間の位置に挿入されることから、平板状の形状をなしていることが望ましい。検体分析装置1の上方から見た磁性部材24の形状も任意である。例えば、
図3に示すように、磁性部材24は、円形の形状をなしていてもよいし、或いは、
図4に示すように、矩形の形状をなしていてもよい。
【0017】
さらに、磁場印加部20は、磁性部材24を移動する移動機構26を備えている。すなわち、アクチュエータ等により構成された移動機構26は、磁性部材24の位置を、
図1に示す反転位置と、
図2に示す非反転位置との間で、移動させる。
図1に示す反転位置は、電磁石22がオンとなり磁場を生成した場合に、その磁場の磁束密度をカートリッジ100の位置で反転させる位置である。この反転位置は、カートリッジ100の近傍の位置である。
図2に示す非反転位置は、電磁石22がオンとなり磁場を生成した場合に、その磁場の磁束密度をカートリッジ100の位置で反転させない位置である。この非反転位置は、カートリッジ100から離れた位置である。
【0018】
移動機構26は、モーター等を備えており、磁性部材24を水平方向に移動させたり、垂直方向に移動させたりすることができる。これにより、移動機構26は、磁性部材24を反転位置から非反転位置に移動させたり、非反転位置から反転位置に移動させたりすることができる。
図1及び
図2の例では、移動機構26は、磁性部材24を水平方向に移動させることにより、反転位置と非反転位置との間を相互に移動させている。つまり、反転位置と非反転位置は、互いに側方に並んだ位置にある。
【0019】
解析処理部30は、撮像部10により撮像された画像に基づいて解析処理を行う。すなわち、
図2に示す非反転位置に磁性部材24を移動した状態で、撮像部10はカートリッジ100の底部に形成されているセンサエリアの撮像を行い、カートリッジ100のセンサエリア画像を取得する。解析処理部30は、このセンサエリア画像に基づいて、センサエリアにある磁性粒子の数を計数して、検体に含まれる検出対象物を高感度に検出する。つまり、解析処理部30は、センサエリア画像に基づいて、センサエリアに結合された、検出対象物と結合する磁性粒子の数を画像解析によりカウントする。検出対象物の濃度としては、センサエリアに結合された磁性粒子の数が多ければ多いほど、その濃度が高いことを意味している。
【0020】
カートリッジ100は、検体に検出対象物が含まれるか否かを分析する際に、検体分析装置1にセットされる容器である。このカートリッジ100には、検体と、この検体に含まれる検出対象物と結合する磁性粒子とが収納される。そして、検体に検出対象物が含まれているかどうかの分析を行う際には、このカートリッジ100は検体分析装置1における支持フレームにセットされて載置される。このカートリッジ100が検体分析装置1にセットされた状態が、
図1及び
図2の状態である。
【0021】
カートリッジ100の底面には、センサエリアが設けられている。このセンサエリアを形成する基板としては、撮像部10により、センサエリア上に結合した磁性粒子を観察又は計数できるように光学的に透明な基板、例えば光学ガラスや石英ガラスなどを用いて構成されている。センサエリア上には、検出対象物と抗原抗体反応により特異的に結合できる物質、例えば抗体が固定されている。
【0022】
本実施形態においては、カートリッジ100が検体分析装置1の支持フレームにセットされた状態において、カートリッジ100の上側(第1側面側)に、電磁石22が位置するように構成されており、カートリッジ100の下側(第2側面側)に、反転位置にある磁性部材24が位置するように構成されている。換言すれば、反転位置は、カートリッジ100と撮像部10との間で、且つ、カートリッジ100と撮像部10とに挟まれた位置になる。
【0023】
また、
図2の非反転位置に磁性部材24がある場合には、撮像部10がカートリッジ100の底面にあるセンサエリアを撮像する際に、撮像部10によるカートリッジ100の撮像の障害とはならない。一方、
図1の反転位置に磁性部材24がある場合には、撮像部10がカートリッジ100の底面にあるセンサエリアを撮像しようとすると、磁性部材24が障害となり、カートリッジ100の底面の撮像ができない。このため、本実施形態においては、撮像部10によりカートリッジ100の底面にあるセンサエリアの撮像を行おうとする場合には、移動機構26により磁性部材24を
図2の非反転位置に移動させておく必要がある。
【0024】
図5及び
図6は、電磁石22が生成した磁界の磁束密度の変化を表すグラフを示している。具体的には、
図5は、
図2に示す非反転位置に磁性部材24が位置している場合の磁束密度の変化を示しており、
図6は、
図1に示す反転位置に磁性部材24が位置している場合の磁束密度の変化を示している。
【0025】
図5に示すように、
図2の非反転位置に磁性部材24がある場合、電磁石22がオンとなり磁場を生成すると、磁束密度は、電磁石22からカートリッジ100に向けて、滑らかに減少する。このため、
図2に示すように、カートリッジ100の位置で上向きの磁場が生成され、カートリッジ100に収納されている磁性粒子を上側に移動させる磁力が働く。
【0026】
一方、
図6に示すように、
図1の反転位置に磁性部材24がある場合、電磁石22がオンとなり磁場を生成すると、磁束密度は、電磁石22から遠ざかるにつれて減少するが、磁性部材24が磁化されることから、この磁性部材24の近傍で磁束密度は増加する。このため、
図1に示すように、カートリッジ100の位置で下向きの磁場が生成され、カートリッジ100に収納されている磁性粒子を下側に移動させる磁力が働く。換言すれば、この磁束密度が電磁石22から離れるにつれて増加する位置に、カートリッジ100をセットすることにより、カートリッジ100に収納された磁性粒子に下向きの磁場を印加して、下側に移動させる磁力を働かせることができる。本実施形態に係る検体分析装置1では、この特性を利用して、カートリッジ100の上方に設けられた電磁石22により、カートリッジ100に収納された磁性粒子に、上向きの磁場と下向きの磁場を切り替えて、印加できるようにしている。
【0027】
次に、
図7及び
図8に基づいて、
図1及び
図2に示した検体分析装置1の動作について説明する。
図7は、本実施形態に係る検体分析装置1で実行される検体分析処理の内容を説明するためのフローチャートを示す図である。また、
図8は、カートリッジ100のセンサエリアにおける磁性粒子の数の時間変化を示すグラフの一例である。
【0028】
図7に示すように、まず、検体分析装置1は、電磁石22をオフの状態とする(ステップS10)。磁性部材24の位置は任意であり、反転位置にあってもよいし、非反転位置にあってもよい。但し、磁性部材24の保磁力が大きく、電磁石22をオフにしていても磁性部材24に大きな磁化が残る場合は、磁性部材24は非反転位置に移動させた方が望ましい。
【0029】
この状態でユーザは、カートリッジ100を検体分析装置1の支持フレームにセットし、検体と、この検体に含まれる検出対象物と結合する磁性粒子との混合液を、カートリッジ100に注入する。この注入は、自動で行われてもよいし、手動で行われてもよい。
【0030】
カートリッジ100への混合液の注入が完了すると、検体分析装置1は、磁性部材24を
図1に示す反転位置に移動した上で、電磁石22をオンにする(ステップS12)。カートリッジ100の検体分析装置1へのセットの完了は、検体分析装置1にセンサを設けて、このセンサによりカートリッジ100のセットの完了を自動的に検知するようにしてもよし、或いは、ユーザが検体分析装置1に設けられたセット完了ボタンを押下することにより、検体分析装置1がカートリッジ100のセットの完了を検知するようにしてもよい。
【0031】
なお、ステップS10にて、磁性部材24が反転位置にある場合は、検体分析装置1は移動機構26を駆動した磁性部材24の移動は不要であるが、磁性部材24が非反転位置にある場合は、検体分析装置1は移動機構26を駆動して、磁性部材24を非反転位置から反転位置に移動させる必要がある。
【0032】
このように、反転位置に磁性部材24が位置している状態で、電磁石22をオンとすることにより、
図6に示すように、カートリッジ100の位置で磁束密度の変化が逆向きとなり、カートリッジ100の磁性粒子に下向きの磁場を印加することができる。換言すれば、
図6における磁束密度の変化が逆転する位置に、カートリッジ100が位置するように、カートリッジ100を支持する支持フレームを配置する必要がある。
【0033】
カートリッジ100に下向きの磁場が印加されると、カートリッジ100に注入された混合液中で拡散している磁性粒子は、混合液中を沈降して、カートリッジ100の底面にあるセンサエリアに侵入する。磁性粒子が沈降する際には、磁性粒子は検体に含まれる検出対象物と結合しながら沈降して、センサエリアの表面に達する。この磁性粒子の沈降速度は、下向きの磁場が印加されていることから、この下向きの磁場が印加されておらず重力のみで沈降する場合と比較して、速くなる。つまり、カートリッジ100に下向きの磁場を印加することにより、磁性粒子の沈降に要する時間を短縮することができる。なお、磁場によって磁化された磁性粒子は磁力によって互いに吸着し、センサエリアの表面から上方に鎖状に配列した状態になる。
【0034】
このステップS12におけるセンサエリア上の磁性粒子の数の変化が、
図8における時刻t0~時刻t1に表されている。すなわち、混合液中の磁性粒子が沈降するので、センサエリア上の磁性粒子の数は時間の経過とともに、増大する。
【0035】
次に、検体分析装置1は、電磁石22をオフの状態とする(ステップS14)。磁性部材24の位置は任意であり、反転位置にあってもよいし、非反転位置にあってもよい。但し、磁性部材24の保磁力が大きく、電磁石22をオフにしていても磁性部材24に大きな磁化が残る場合は、磁性部材24は非反転位置に移動させた方が望ましい。
【0036】
このステップS14では、磁場が印加され鎖状に配列した状態から解放されて磁性粒子は重力により沈降し、センサエリア上の磁性粒子はさらに増加する。このステップS14におけるセンサエリア上の磁性粒子の数の変化が、
図8における時刻t1~時刻t2に表されている。磁場から解放された磁性粒子は重力によって沈降しつつ自由拡散によってセンサエリア上を拡散移動するため、センサエリア上の磁性粒子は時刻t1からさらに増加して飽和する。なお、このステップS14における自由拡散の時間は、センサエリア上の磁性粒子が飽和してほぼ一定値になった後は、測定時間の短縮化を重視する場合は、短くすること、或いは、省略することも可能である。
【0037】
カートリッジ100の底面にあるセンサエリア上に侵入し自由拡散した、検出対象物と結合した磁性粒子は、この検出対象物を介して、センサエリアに固定されている抗体と抗原抗体反応を行い、センサ上に結合される。一方、検出対象物と結合していない磁性粒子は、センサエリアに固定されている抗体と結合はしない。このため、センサエリアに結合された磁性粒子の数が多いほど、検体に含まれる検出対象物の数が多いことを意味している。
【0038】
次に、検体分析装置1は、磁性部材24を
図2に示す非反転位置に移動した上で、電磁石22をオンにする(ステップS16)。ステップS14にて、磁性部材24が非反転位置にある場合は、検体分析装置1は移動機構26を駆動した磁性部材24の移動は不要であるが、磁性部材24が反転位置にある場合は、検体分析装置1は移動機構26を駆動して、磁性部材24を反転位置から非反転位置に移動する必要がある。このように、非反転位置に磁性部材24が位置している状態で、電磁石22をオンとすることにより、
図5に示すように、カートリッジ100の位置で磁束密度の変化は減少傾向を維持することとなり、カートリッジ100の磁性粒子に上向きの磁場を印加することができる。
【0039】
カートリッジ100に上向きの磁場が印加されると、磁性粒子は混合液中を上側に移動する。しかし、抗原抗体反応でセンサエリアに結合した磁性粒子は、この上向きの磁場に抗して、センサエリアに結合したままの状態となる。つまり、検出対象物と結合した磁性粒子はセンサエリアに残ることとなる。
【0040】
このステップS16におけるセンサエリア上の磁性粒子の数の変化が、
図8における時刻t2~時刻t4に表されている。すなわち、時刻t2~時刻t3は、上向きの磁場の影響で、センサエリアに結合していない磁性粒子が混合液の上側に向けて移動するので、センサエリア上の磁性粒子の数は減少する。しかし、センサエリアに結合していない磁性粒子がすべてセンサエリアから引き剥がされて上側に移動してしまうと、それ以上は、センサエリア上の磁性粒子の数は減少しない。この状態が
図8の時刻t3以降である。
【0041】
ステップS16で所定の時間が経過した後に、検体分析装置1は、撮像部10を用いて、カートリッジ100の下側から、センサエリアの撮像を行う(ステップS18)。すなわち、センサエリアは光学的に透明な基板で形成されていることから、この透明な基板を介して、撮像したセンサエリア画像にはセンサエリアに固着している磁性粒子が映り込んでいる。この時刻が、
図8における時刻t4である。
【0042】
次に、検体分析装置1は、解析処理部30が、このセンサエリア画像の解析を行い、センサエリア画像に含まれている磁性粒子の数を計数する(ステップS20)。すなわち、センサエリア画像の画像解析を行うことにより、センサエリアに残っている磁性粒子の数をカウントし、検体に検出対象物が含まれているか否かを判定し、また、検体に含まれる検出対象物の濃度を分析する。以上により、本実施形態に係る検体分析処理が終了する。
【0043】
以上のように、本実施形態に係る検体分析装置1によれば、カートリッジ100を検体分析装置1にセットした状態において、カートリッジ100の上側に電磁石22を設け、カートリッジ100の下側にある磁性部材24を反転位置と非反転位置との間で移動させることにより、カートリッジ100の位置における、電磁石22が生成した磁界の向きを切り換えるようにしたので、カートリッジ100の下側の電磁石を省くことができる。このため、検体分析装置1の製造コストの低減を図ることができる。
【0044】
また、下側の電磁石を省いた位置に、撮像部10を配置することができるので、カートリッジ100におけるセンサエリアの撮像を、撮像部10を用いてカートリッジ100の真下から行うことができる。
【0045】
その一方で、撮像部10によりカートリッジ100の底面にあるセンサエリアの撮像を行う際には、撮像の障害とならないように、磁性部材24は、反転位置の側方の位置である非反転位置に移動させることとした。このため、撮像部10は、カートリッジ100の混合液中の磁性粒子に上向きの磁場を印加しながら、カートリッジ100のセンサエリアの撮像を円滑に行うことができる。
【0046】
〔第2実施形態〕
上述した第1実施形態においては、カートリッジ100の上側に電磁石22を配置し、カートリッジ100の下側に撮像部10を配置したが、第2実施形態においては、この上下関係を逆転させ、カートリッジ100の上側に撮像部10を配置し、カートリッジ100の下側に電磁石22を配置するようにしたものである。以下、上述した第1実施形態と異なる部分を説明する。
【0047】
図9及び
図10は、第2実施形態に係る検体分析装置1の構造を説明する側面レイアウト図であり、それぞれ、第1実施形態における
図1及び
図2に対応する図である。特に、
図9は、検体分析装置1がカートリッジ100内の磁性粒子を下方に移動させる状態を説明する側面レイアウト図であり、電磁石22が生成した磁場の磁束密度の変化を反転させない非反転位置に磁性部材24がある状態を示している。一方、
図10は、検体分析装置1がカートリッジ100内の磁性粒子を上方に移動させる状態を説明する側面レイアウト図であり、電磁石22が生成した磁場を反転させる反転位置に磁性部材24がある状態を示している。
【0048】
これら
図9及び
図10に示すように、本実施形態に係る検体分析装置1は、上述した第1実施形態と同様に、撮像部10と、磁場印加部20と、解析処理部30とを備えて構成されている。
【0049】
但し、本実施形態においては、カートリッジ100が検体分析装置1にセットされた状態で、撮像部10はカートリッジ100の上側(第2側面側)に位置しており、磁場印加部20が備える電磁石22はカートリッジ100の下側(第1側面側)に位置している。このため、磁場印加部20が備える磁性部材24も、カートリッジ100の上側に位置している。
【0050】
本実施形態においては、この磁性部材24は、環状の形状をなしている。
図11及び
図12は、本実施形態に係る検体分析装置1の磁性部材24を上側から見た状態を示している。
図11の例では、環状の磁性部材24は、矩形形状をなしており、その中央部分に開口部24aが形成されている。このため、開口部24aの形状も矩形形状である。一方、
図12の例では、環状の磁性部材24は、円形形状をなしており、その中央部分に開口部24aが形成されている。このため、開口部24aの形状も円形形状である。本実施形態では、磁性部材24が非反転位置に移動する場合には、この磁性部材24の開口部24aに、撮像部10が挿入される。なお、磁性部材24が反転位置から非反転位置に移動する場合に撮像部10を開口部24aに挿入できる構造であれば、磁性部材24の形状や開口部24aの形状は任意である。
【0051】
図9及び
図10に示すように、移動機構26は、磁性部材24を反転位置から非反転位置に移動させたり、非反転位置から反転位置に移動させたりすることができる。
図9及び
図10の例では、移動機構26は、磁性部材24を垂直方向に移動させることにより、反転位置と非反転位置との間を相互に移動させている。つまり、反転位置と非反転位置は、互いに上下に並んだ位置にある。
【0052】
図9に示すように、非反転位置に磁性部材24を位置させる場合には、磁性部材24を撮像部10に挿入して、カートリッジ100から磁性部材24を遠ざける。すなわち、移動機構26は、磁性部材24の開口部24aに撮像部10を貫通させつつ、磁性部材24を上側に移動する。一方、反転位置に磁性部材24を位置させる場合には、磁性部材24を撮像部10から抜去して、カートリッジ100の近傍に磁性部材24を位置させる。すなわち、移動機構26は、撮像部10が開口部24aを貫通しなくなる状態まで、磁性部材24を下側に移動させて、磁性部材24をカートリッジ100に近接させる。換言すれば、反転位置は、カートリッジ100と撮像部10との間で、且つ、カートリッジ100と撮像部10とに挟まれた位置である。
【0053】
カートリッジ100の上面は、本実施形態においては、センサエリア上に結合した磁性粒子を上方から観察又は計数できるように光学的に透明な基板、例えば、光学ガラスや石英ガラスなどを用いて構成されている。カートリッジ100の底面に形成されたセンサエリア上には、上述した第1実施形態と同様に、検出対象物と抗原抗体反応により特異的に結合できる物質、例えば抗体が固定されている。
【0054】
図13及び
図14は、本実施形態に係る検体分析装置1において、電磁石22が生成した磁界の磁束密度の変化を表すグラフを示しており、上述した第1実施形態における
図5及び
図6に対応している。具体的には、
図13は、
図9に示す非反転位置に磁性部材24が位置している場合の磁束密度の変化を示しており、
図14は、
図10に示す反転位置に磁性部材24が位置している場合の磁束密度の変化を示している。
【0055】
図13に示すように、
図9の非反転位置に磁性部材24がある場合、電磁石22がオンとなり磁場を生成すると、磁束密度は、電磁石22からカートリッジ100に向けて、滑らかに減少する。このため、
図9に示すように、カートリッジ100の位置で下向きの磁場が生成され、カートリッジ100に収納されている磁性粒子を下側に移動させる力が働く。
【0056】
一方、
図14に示すように、
図10の反転位置に磁性部材24がある場合、電磁石22がオンとなり磁場を生成すると、磁束密度は、電磁石22から遠ざかるにつれて減少するが、磁性部材24が磁化されることから、この磁性部材24の近傍で磁束密度は増加する。このため、
図10に示すように、カートリッジ100の位置で上向きの磁場が生成され、カートリッジ100に収納されている磁性粒子を上側に移動させる力が働く。換言すれば、この磁束密度が電磁石22から離れるにつれて増加する位置に、カートリッジ100をセットすることにより、カートリッジ100に収納された磁性粒子に上向きの磁場を印加して、上側に移動させる力を働かせることができる。
【0057】
次に、
図15に基づいて、
図9及び
図10に示した検体分析装置1の動作について説明する。この
図15は、本実施形態に係る検体分析装置1で実行される検体分析処理の内容を説明するためのフローチャートを示す図である。なお、カートリッジ100のセンサエリアにおける磁性粒子の数の時間変化は、第1実施形態における
図8のグラフと同様であるので、適宜、
図8を参照する。
【0058】
この
図15に示すように、検体分析装置1は、電磁石22をオフの状態とする(ステップS30)。このステップS30は、第1実施形態にけるステップS10と同様である。すなわち、磁性部材24の位置は任意であり、反転位置にあってもよいし、非反転位置にあってもよい。但し、磁性部材24の保磁力が大きく、電磁石22をオフにしていても磁性部材24に大きな磁力が残る場合は、磁性部材24は非反転位置に移動させた方が望ましい。
【0059】
この状態でユーザは、カートリッジ100を検体分析装置1の支持フレームにセットし、検体と、この検体に含まれる検出対象物と結合する磁性粒子との混合液を、カートリッジ100に注入する。この注入は、自動で行われてもよいし、手動で行われてもよい。
【0060】
カートリッジ100への混合液の注入が完了すると、検体分析装置1は、磁性部材24を
図9に示す非反転位置に移動した上で、電磁石22をオンにする(ステップS32)。上述した第1実施形態と同様に、カートリッジ100の検体分析装置1へのセットの完了は、検体分析装置1にセンサを設けて、このセンサによりカートリッジ100のセットの完了を自動的に検知するようにしてもよし、或いは、ユーザが検体分析装置1に設けられたセット完了ボタンを押下することにより、検体分析装置1がカートリッジ100のセットの完了を検知するようにしてもよい。
【0061】
なお、ステップS10にて、磁性部材24が非反転位置にある場合は、検体分析装置1は移動機構26を駆動した磁性部材24の移動は不要であるが、磁性部材24が反転位置にある場合は、検体分析装置1は移動機構26を駆動して、磁性部材24を反転位置から非反転位置に移動させる必要がある。
【0062】
このように、非反転位置に磁性部材24が位置している状態で、電磁石22をオンとすることにより、
図9に示すように、カートリッジ100の磁性粒子に下向きの磁場を印加することができる。
【0063】
カートリッジ100に下向きの磁場が印加されると、カートリッジ100に注入された混合液中で拡散している磁性粒子は、混合液中を沈降して、カートリッジ100の底面にあるセンサエリアに侵入する。磁性粒子が沈降する際には、磁性粒子は検体に含まれる検出対象物と結合しながら、沈降する。この磁性粒子の沈降速度は、下向きの磁場が印加されていることから、この下向きの磁場が印加されておらず重力のみで沈降する場合と比較して、速くなる。つまり、カートリッジ100に下向きの磁場を印加することにより、磁性粒子の沈降に要する時間を短縮することができる。なお、磁場によって磁化された磁性粒子は磁力によって互いに吸着し、センサエリアの表面から上方に鎖状に配列した状態になる。
【0064】
このステップS32におけるセンサエリア上の磁性粒子の数の変化が、
図8における時刻t0~時刻t1に表されている。すなわち、混合液中の磁性粒子が沈降するので、センサエリア上の磁性粒子の数は時間の経過とともに、増大する。
【0065】
次に、検体分析装置1は、電磁石22をオフの状態とする(ステップS34)。磁性部材24の位置は任意であり、反転位置にあってもよいし、非反転位置にあってもよい。但し、磁性部材24の保磁力が大きく、電磁石22をオフにしていても磁性部材24に大きな磁力が残る場合は、磁性部材24は非反転位置から移動させない方が望ましい。
【0066】
このステップS34では、磁場が印加され鎖状に配列した状態から解放されて磁性粒子は重力により沈降し、センサエリア上の磁性粒子はさらに増加する。このステップS34におけるセンサエリア上の磁性粒子の数の変化が、
図8における時刻t1~時刻t2に表されている。磁場から解放された磁性粒子は重力によって沈降しつつ自由拡散によってセンサエリア上を拡散移動するため、センサエリア上の磁性粒子は時刻t1からさらに増加して飽和する。なお、このステップS34における自由拡散の時間は、センサエリア上の磁性粒子が飽和してほぼ一定値になった後は、測定時間の短縮化を重視する場合は、短くすること、或いは、省略することも可能である。
【0067】
カートリッジ100の底面にあるセンサエリア上に侵入し自由拡散した、検出対象物と結合した磁性粒子は、この検出対象物を介して、センサエリアに固定されている抗体と抗原抗体反応を行い、センサ上に結合される。一方、検出対象物と結合していない磁性粒子は、センサエリアに固定されている抗体と結合はしない。このため、センサエリアに結合された磁性粒子の数が多いほど、検体に含まれる検出対象物の数が多いことを意味している。
【0068】
次に、検体分析装置1は、磁性部材24を
図10に示す反転位置に移動した上で、電磁石22をオンにする(ステップS36)。ステップS34にて、磁性部材24が反転位置に既に移動されている場合は、検体分析装置1は移動機構26を駆動した磁性部材24の移動は不要であるが、磁性部材24が非反転位置にある場合は、検体分析装置1は移動機構26を駆動して、磁性部材24を非反転位置から反転位置に移動する。このように、反転位置に磁性部材24が位置している状態で、電磁石22をオンとすることにより、
図10に示すように、カートリッジ100の位置で磁束密度の変化をカートリッジ100の位置で逆転させることができ、カートリッジ100の磁性粒子に上向きの磁場を印加することができる。
【0069】
カートリッジ100に上向きの磁場が印加されると、磁性粒子は混合液中を上側に移動する。しかし、抗原抗体反応でセンサエリアに結合した磁性粒子は、この上向きの磁場に対向して、センサエリアに結合したままの状態となる。つまり、検出対象物と結合した磁性粒子はセンサエリアに残ることとなる。
【0070】
このステップS36におけるセンサエリア上の磁性粒子の数の変化が、
図8における時刻t2~時刻t4に表されている。すなわち、時刻t2~時刻t3は、上向きの磁場の影響で、センサエリアに結合していない磁性粒子が混合液の上側に向けて移動するので、センサエリア上の磁性粒子の数は減少する。しかし、センサエリアに結合していない磁性粒子がすべてセンサエリアから引き剥がされて上側に移動してしまうと、それ以上は、センサエリア上の磁性粒子の数は減少しない。この状態が
図8の時刻t3以降である。
【0071】
ステップS36で所定の時間が経過した後に、検体分析装置1は、撮像部10を用いて、カートリッジ100の上方から、センサエリアの撮像を行う(ステップS38)。すなわち、カートリッジ100の上面は光学的に透明な基板で形成されていることから、この透明な基板を介して、撮像したセンサエリア画像にはセンサエリアに固着している磁性粒子が映り込んでいる。この時刻が、
図8における時刻t4である。
【0072】
図16は、このときのセンサエリアと撮像部の撮像範囲と磁性部材の位置関係の一例を示す図である。この
図16に示すように、反転位置に磁性部材24がある場合、磁性部材24に、混合液中の磁性粒子が引き付けられる。このため、環状の形状の磁性部材24に沿って、磁性粒子が捕集される。この結果、磁性部材24の開口部24aには、上側に集まっている磁性粒子はなくなり、カートリッジ100の上側から、カートリッジ100の上面の透明な基板を介して、センサエリアを見通すことができる。すなわち、上向きの磁界の力により、混合液の上側に引き寄せられた磁性粒子は、磁性部材24の磁力により、環状の磁性部材24の環状部分に引き付けられて、開口部24aにある磁性粒子が取り除かれた状態となる。本実施形態では、この磁性粒子が取り除かれた開口部24aの領域を利用して、カートリッジ100のセンサエリアの撮像を行い、センサエリア画像を取得するのである。
【0073】
次に、検体分析装置1は、解析処理部30が、このセンサエリア画像の解析を行い、センサエリア画像に含まれている磁性粒子の数を計数する(ステップS40)。すなわち、センサエリア画像の画像解析を行うことにより、センサエリアに残っている磁性粒子の数をカウントし、検体に検出対象物が含まれているか否かを判定し、また、検体に含まれる検出対象物の濃度を分析する。以上により、本実施形態に係る検体分析処理が終了する。
【0074】
以上のように、本実施形態に係る検体分析装置1によれば、カートリッジ100を検体分析装置1にセットした状態において、カートリッジ100の上側に撮像部10を設け、カートリッジ100の下側にある磁性部材24を反転位置と非反転位置との間で移動させることにより、カートリッジ100の位置における、電磁石22が生成した磁界の向きを切り換えるようにしたので、カートリッジ100の上側の電磁石を省くことができる。このため、検体分析装置1の製造コストの低減を図ることができる。
【0075】
また、上側の電磁石を省いた位置に、撮像部10を配置することができるので、カートリッジ100におけるセンサアリアの撮像を、撮像部10を用いてカートリッジ100の真上から行うことができる。
【0076】
その一方で、撮像部10によりカートリッジ100の底面にあるセンサエリアの撮像を行う際には、磁性部材24が撮像の障害とならないように、磁性部材24は、環状の形状に形成されていることから、磁性部材24の開口部24aとカートリッジ100の上面における透明な基板とを通して、カートリッジ100のセンサエリアの撮像を行うことができる。
【0077】
なお、本実施形態においは、移動機構26は、磁性部材24を垂直方向のみならず、水平方向にも移動させるようにしてもよい。すなわち、
図10の状態において、移動機構26は、磁性部材24を水平方向にも移動して、磁性部材24がカートリッジ100のセンサエリアから側方に離れた位置まで移動するようにしてもよい。この場合、カートリッジ100に収納された磁性粒子のうち、上側に引き寄せられた磁性粒子は、磁性部材24の水平方向への移動に伴って、カートリッジ100の混合液中を水平方向へ移動して、撮像部10によるセンサエリア上の撮像の障害にならない位置まで移動させることができる。
【0078】
また、
図17乃至
図19に示すように、磁性部材24を複数の磁性部材で構成することもできる。この
図17乃至
図19に示す例では、磁性部材24を、第1の磁性部材28aと第2の磁性部材28bの2つの磁性部材で構成している。第1の磁性部材28aは、第1実施形態に示したように平板状の形状をなしている。第2の磁性部材28bは、第2実施形態に示したように環状の形状をなしている。
【0079】
図17に示すように、磁性部材24が非反転位置にある場合には、第1の磁性部材28aも第2の磁性部材28bも、反転位置から水平方向に移動した、カートリッジ100から離れた位置にある。このため、電磁石22がオンとなっても、電磁石22が生成した磁界の磁束密度の変化が反転することはない。
【0080】
そして、電磁石22が生成した磁界の磁束密度の変化を反転させる場合には、まず、移動機構26は、磁性部材24を、
図18の反転位置に移動する。すなわち、第1の磁性部材28aも第2の磁性部材28bも、撮像部10とカートリッジ100との間の反転位置に移動する。このため、2つの磁性部材により、磁束密度の変化を反転させることができ、カートリッジ100の混合液中における磁性粒子に上向きの磁場を印加することができる。
【0081】
所定の時間が経過して、磁性粒子が混合液の上側に集まった後、
図19に示すように、移動機構26は、第2の磁性部材28bは反転位置に残したまま、第1の磁性部材28aを非反転位置に移動させる。この
図19の状態になると、混合液の上側に引き寄せられた磁性粒子は、環状の形状の第2の磁性部材28bに引き寄せられて、第2の磁性部材28bに形成されている開口部の領域には、センサエリアに結合された磁性粒子以外は、磁性粒子がない状態が生成される。すなわち、上述した
図16に示したような磁性粒子の状態が形成される。このため、混合液の上側に集まった磁性粒子が撮像部10による撮像の障害となることなく、カートリッジ100の上方から撮像部10がセンサエリアの撮像を行うことができる。
【0082】
なお、第1の磁性部材28aと第2の磁性部材28bとの上下関係は、逆であってもよい。すなわち、平板状の形状である第1の磁性部材28aが下側にあり、環状の形状の第2である磁性部材28bが上側にあってもよい。
【0083】
或いは、
図20及び
図21に示すように、磁性部材24を虹彩絞りの形状に構成することもできる。
図20は、虹彩絞りが絞られた状態の磁性部材24を上方から見た状態を示しており、
図21は、虹彩絞りが開いた状態の磁性部材24を上方から見た状態を示している。
【0084】
この磁性部材24が反転位置にある場合には、
図18に示したように、磁性部材24は撮像部10とカートリッジ100との間に挿入される。そして、カートリッジ100の混合液中の磁性粒子に上向きの磁場を印加する場合は、
図20に示すように、磁性部材24の虹彩絞りが絞られた状態となり、混合液中の磁性粒子が全体的に上側に引き寄せられる。
【0085】
所定の時間が経過して、磁性粒子が混合液の上側に集まった後、
図21に示すように、磁性部材24の虹彩絞りを開いた状態にする。すると、混合液の上側に集まった磁性粒子が磁性部材24の形状に沿って引き寄せられて、虹彩絞りを開くことにより形成された開口部の領域には、センサエリアに結合した磁性粒子以外は、磁性粒子がない状態が生成される。すなわち、上述した
図16に示したような磁性粒子の状態が形成される。このため、混合液の上側に集まった磁性粒子が撮像部10による撮像の障害となることなく、カートリッジ100の上方から撮像部10がセンサエリアの撮像を行うことができる。
【0086】
なお、この
図20及び
図21の例では、磁性部材24が非反転位置にある場合は、
図9に示したように、虹彩絞りを開いた状態で上方に移動させることにより、虹彩絞りを開いたことにより形成された開口部に撮像部10が貫通するようにしてもよいし、或いは、
図17に示したように、水平方向に移動して、カートリッジ100から離れるようにしてもよい。
【0087】
以上、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例としてのみ提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図したものではない。本明細書で説明した新規な装置および方法は、その他の様々な形態で実施することができる。また、本明細書で説明した装置および方法の形態に対し、発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の省略、置換、変更を行うことができる。添付の特許請求の範囲およびこれに均等な範囲は、発明の範囲や要旨に含まれるこのような形態や変形例を含むように意図されている。
【符号の説明】
【0088】
1…検体分析装置、10…撮像部、20…磁場印加部、22…電磁石、24…磁性部材、24a…開口部、26…移動機構、28a…第1の磁性部材、28b…第2の磁性部材、30…解析処理部、100…カートリッジ