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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】トイレ装置
(51)【国際特許分類】
   E03D 11/00 20060101AFI20240408BHJP
   E03D 7/00 20060101ALI20240408BHJP
   E03D 11/13 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
E03D11/00 A
E03D7/00
E03D11/13
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020016201
(22)【出願日】2020-02-03
(65)【公開番号】P2021123896
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2022-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】牧 道太郎
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 弘明
【審査官】秋山 斉昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-82574(JP,A)
【文献】登録実用新案第3076664(JP,U)
【文献】特開平9-201385(JP,A)
【文献】特開2016-61101(JP,A)
【文献】特開2000-170234(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 11/00-11/18
E03D 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定して設置された固定配管と、
前記固定配管に設けた配管側接続部と、
床面上で移動可能な便器装置と、
前記便器装置に設けられ、前記配管側接続部よりも低い位置に配置された便器側接続部と、
前記配管側接続部と前記便器側接続部との間に設けられ、前記固定配管と前記便器装置とを接続し、可撓性を有するホースとを備え、
前記便器装置は、トイレ本体と、前記トイレ本体の排水を行う排水装置とを有し、
前記ホースが、前記便器側接続部に対して前記排水装置の上方へ導出されるように接続されているトイレ装置。
【請求項2】
前記ホースの全長は、前記便器装置が便器収納部内に収納される収納位置と前記便器収納部の外部へ露出する使用位置との間で移動する過程の少なくとも一部において、前記ホースが前記床面と非接触となる寸法に設定されている請求項1記載のトイレ装置。
【請求項3】
前記便器装置が前記収納位置に移動したときに前記便器装置の少なくとも一部を収納する機器収納部を備えており、
前記配管側接続部が前記機器収納部内に配置されている請求項2に記載のトイレ装置。
【請求項4】
前記便器装置が前記収納位置に移動したときに前記便器装置の少なくとも一部を収納する機器収納部を備えており、
前記便器装置が前記収納位置に移動したときに、前記便器側接続部が、前記機器収納部内に収納される請求項2及び請求項3のいずれか1項に記載のトイレ装置。
【請求項5】
前記便器装置が前記収納位置に移動したときに前記便器装置の少なくとも一部を収納する機器収納部を備えており、
前記便器装置が前記収納位置と前記使用位置との間で移動する過程で、前記ホースが前記機器収納部の内部に収納されている請求項2から請求項4のいずれか1項に記載のトイレ装置。
【請求項6】
複数の前記配管側接続部が、1本の前記固定配管における複数位置に設けられており、
複数の前記便器装置と複数の前記配管側接続部との間に、複数本の前記ホースが個別に接続されている請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のトイレ装置。
【請求項7】
前記排水装置は、前記トイレ本体の排水を行うポンプ機能を有し、
前記便器側接続部が、前記排水装置の上面に配置されている請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のトイレ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、トイレ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、介護用の水洗トイレ装置が開示されている。この水洗トイレ装置の水洗便器は、使用しないときにはトイレ収納室に収納しておき、使用する時にはトイレ収納室からトイレ設置室へ移動させることができるようになっている。水洗便器には、可撓性を有する排水管の上流端と、可撓性を有する給水管の下流端が接続されている。排水管と給水管は、水洗便器の移動にともなって柔軟に変形できるようにするための余長を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実用新案登録第3076664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
排水管の下流端と給水管の上流端が床面に接続されているため、水洗便器がトイレ収納室とトイレ設置室との間で移動する過程では、排水管と給水管が床面で擦れる。そのため、排水管と給水管のうち床面と擦れる部分が摩耗するという問題がある。
【0005】
本開示は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、便器装置に接続されたホースの摩耗を回避又は抑制することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のトイレ装置は、
固定して設置された固定配管と、
前記固定配管に設けた配管側接続部と、
床面上で移動可能な便器装置と、
前記便器装置に設けられ、前記配管側接続部よりも低い位置に配置された便器側接続部と、
前記配管側接続部と前記便器側接続部との間に設けられ、前記配管と前記便器装置とを接続し、可撓性を有するホースとを備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態1のトイレ装置において便器装置を収納した状態をあらわす正面図
図2図1のA-A線断面図
図3図2のB-B線断面図
図4】便器装置を使用位置へ移動させた状態の正面図
図5図4のC-C線断面図
図6図5のD-D線断面図
図7図4のE-E線断面図
図8】トイレ装置の全体構成をあらわす概略正断面図
【発明を実施するための形態】
【0008】
<実施形態1>
以下、本開示を具体化した実施形態1を図1図8を参照して説明する。本開示のトイレ装置1は、医療施設の病室、介護施設の居室、サービス付き高齢者向け住宅の居室、一般住宅の居室等に設置されるものである。トイレ装置1は、複数のキャビネット10と、複数の移動式トイレ40と、1本の排水用配管61と、1本の通気用配管62とを備えている。複数のキャビネット10は、各病室や居室に個別に設けられている。複数の移動式トイレ40は、便器装置41と台車55とを備えて構成され、各病室や居室に個別に設けられている。
【0009】
以下の説明において、上下の方向については、図1,3,4,6~8にあらわれる向きを、そのまま上方、下方と定義する。左右の方向については、図1,4の正面図にあらわれる向き、図2,4の平断面図にあらわれる向き、及び図3,6の正断面図にあらわれる向きを、そのまま左方、右方と定義する。左右方向と幅方向は、同義で用いる。
【0010】
トイレ装置1の前後方向については、キャビネット10の正面側(図7における左方)を前方と定義する。トイレ装置1の前後方向と奥行き方向は、同義で用いる。便器装置41の前後方向については、便器装置41の便座44に着座した使用者の正面側を前側、使用者の背中側を後側と定義する。
【0011】
キャビネット10は、建物の躯体とは別に製作したものであり、居室の壁面に対しキャビネット10の背面を密着させるように配置した状態で固定されている。キャビネット10は、機器収納部11と、支持部23と、洗面台24と、回転軸27とを備えている。機器収納部11は、便器収納部12と、取付部20と、背面収納部21とを備えている。
【0012】
便器収納部12は、上面と下面が開口した直方体状の箱形をなし、床面Fに設置されている。便器収納部12の左側面における後側領域も、上下両面の開口と連通した形態で開口している。本実施形態1において、便器収納部12前面を正面部12Fと定義する。便器収納部12の正面部12Fのうち左端部を除いた領域には、便器収納部12の内部空間を機器収納部11の前方外部へ開放する開口部13が形成されている。便器収納部12の内部には、便器装置41を収容するための便器収納スペース14が確保されている。
【0013】
便器収納部12には、開口部13を開閉するための扉15が設けられている。扉15は、吊り元側パネル16と戸先側パネル17とを有する折れ戸によって構成されている。吊り元側パネルは、開口部13の右側の開口縁に支持されている。閉じた状態の扉15を開く過程では、2枚のパネル16,17が互いに内面同士を対向させて重なるように変位する。開いた状態の扉15は、開口部13の右側の開口縁から前方へ突出する。
【0014】
取付部20は、下面が開口した直方体状の箱形をなし、便器収納部12の上に重なっている。取付部20の下面と便器収納部12の上面は連通しており、便器収納部12内の空間と取付部20内の空間は連通して1つの空間を構成している。取付部20の左側面における後側領域は、取付部20の下面の開口及び便器収納部12の左側面の開口と連通した形態で開口している。
【0015】
キャビネット10を上から見た平面視においては、便器収納部12と取付部20が同一の形状であり、便器収納部12と取付部20の前後方向の奥行き寸法が同じ寸法であり、便器収納部12と取付部20の左右方向の幅寸法が同じ寸法である。平面視において取付部20は便器収納部12の真上に重なっている。便器収納部12の正面部12Fと取付部20の前面20Fは面一状に連なっている。取付部20の右側面と便器収納部12の右側面は面一状に連なっている。取付部20の背面と便器収納部12の背面は面一状に連なっている。
【0016】
背面収納部21は、下面が開口した直方体状の箱形をなし、便器収納部12及び取付部20の左側に並ぶように配置されている。背面収納部21の上端面は、取付部20の上端面と同じ高さである。背面収納部21の前面21Fは、便器収納部12の正面部12F及び取付部20の前面20Fよりも後方に位置する。背面収納部21の右側面は、便器収納部12及び取付部20の左側面の開口と連通した状態で開口している。したがって、便器収納部12内の空間と取付部20内の空間と背面収納部21内の空間は、連通して1つの空間を構成している。
【0017】
支持部23は、直方体状の箱形をなし、床面F上に設置されている。支持部23は、背面収納部21の前側に隣接し、便器収納部12及び取付部20の左側に隣接して並ぶように配置されている。支持部23の上端は、取付部20の上端及び背面収納部21の上端よりも低い高さである。支持部23の上面には、洗面台24と水栓25が取り付けられている。
【0018】
回転軸27は、機器収納部11内において、軸線を床面Fと直角な鉛直方向に向けた状態で配置されている。回転軸27の下端部は床面Fに固定され、回転軸27の上端部は、取付部20の上面板に固定されている。回転軸27は、後述する移動式トイレ40が使用位置(図4~7を参照)と収納位置(図2,3を参照)との間で移動するときに描く円弧状の移動軌跡の中心である。
【0019】
移動式トイレ40の便器装置41は、トイレ本体42と排水装置50とを備えている。トイレ本体42は、便鉢部(図示省略)を有する便器本体43と、便器本体43の上面に載置された便座44と、機器用収容部45とを有する。機器用収容部45には、トイレ本体42の使用感を向上させるための機能機器(図示省略)が収容されている。機能機器としては、局部洗浄装置、便器洗浄装置、擬音装置)、便座開閉装置、便座暖房装置、温風装置、及び消臭装置等がある。
【0020】
トイレ本体42における便器本体43の後面には、トイレ本体42に給水するための給水用接続部46が設けられている。給水用接続部46は、トイレ本体42の上下方向中央部に配置されている。給水用接続部46は、左右方向においては、トイレ本体42の中央部よりも左方、即ちトイレ本体42の中央部よりも回転軸27に近い位置に配置されている。給水用接続部46には、床面Fから導出された可撓性を有する給水ホース47の下流端が接続されている。
【0021】
便器本体43の後面には、排水装置50に接続するための排水用接続部48が、排水装置50と対向するように設けられている。排水用接続部48は、トイレ本体42の左右方向中央部に配置され、トイレ本体42の上下方向中央部よりも低い位置に配置されている。排水装置50は、ポンプ機能によってトイレ本体42の排水を行う装置である。排水装置50の前面の左右方向中央部と、トイレ本体42の排水用接続部48との間には、トイレ本体42の汚物等を排出するための排水経路である排水管49が配管されている。
【0022】
排水装置50の上面には、排水用便器側接続部51と通気用便器側接続部52が設けられている。排水用便器側接続部51と通気用便器側接続部52は、排水装置50の左右方向中央部に配置されている。排水装置50の上面の高さはトイレ本体42の上面よりも低いので、排水用便器側接続部51と通気用便器側接続部52の高さは、トイレ本体42の上下方向中央部に相当する高さである。
【0023】
移動式トイレ40の台車55は、便器装置41を載置するベース部材56と、ベース部材56に取り付けた4つのキャスター57と、ベース部材56に設けた1つの軸受部58とを有する。ベース部材56の前端側領域にはトイレ本体42が載置された状態で固定されている。ベース部材56の後端部には排水装置50が載置された状態で固定されている。台車55は、キャスター57によって床面F上を水平に移動可能であり、便器装置41を使用位置と収納位置との間で一体的に移動させる。
【0024】
軸受部58は、トイレ本体42の後端42Rよりも後方であり、かつ排水装置50の前端50Fよりも前方の位置に配置されている。左右方向における軸受部58の取付け位置は、トイレ本体42の左端よりも左方の位置である。軸受部58には、回転軸27が貫通されている。移動式トイレ40は、回転軸27を中心として床面F上を四半円弧形の軌跡を描きながら、収納位置と使用位置との間で移動する。
【0025】
平面視において、移動式トイレ40が便器収納部12内に収納される位置を、収納位置と定義する。移動式トイレ40のうちトイレ本体42が便器収納部12の前方外部へ露出する位置を、使用位置と定義する。便器収納部12の扉15を開けると、開口部13が開放されるので、移動式トイレ40を便器収納部12内へ収納できるとともに、便器収納部12内の移動式トイレ40を使用位置へ移動させることができる。
【0026】
回転軸27によって収納位置と使用位置との間で便器装置41の向きを変えるときの便器本体43の移動形態は、水平面内における回転移動である。便器収納部12の奥行き方向における回転軸27の設置位置は、正面部12Fに近い位置である。便器収納部12の幅方向における回転軸27の設置位置は、便器収納部12の幅方向中央よりも洗面台24に近い左側の位置である。
【0027】
移動式トイレ40を収納位置へ格納した状態では、便器装置41の前後方向の向きが、便器収納部12の正面部12F及び幅方向と平行である。収納位置の移動式トイレ40は、平面視において時計回り方向へ水平に90°回転させることによって、使用位置へ移動させることができる。移動式トイレ40が使用位置にあるときに、便器装置41の前後方向の向きは、便器収納部12の正面部12Fに対して直角の方向を向く。
【0028】
背面収納部21のうち便器収納部12よりも上方の領域の内部空間と、取付部20の内部空間は、排水用配管61と通気用配管62を配置するための配管用スペース60となっている。配管用スペース60には、排水用配管61及び通気用配管62の他に、排水用ホース66と通気用ホース68の一部が収容される。配管用スペース60は、便器収納部12よりも上方の領域に確保されている。したがって、排水用配管61と通気用配管62は、移動式トイレ40が収納位置へ移動したときに、移動式トイレ40と干渉することはない。
【0029】
排水用配管61は、複数の病室間や居室間を仕切る仕切壁を貫通した状態で水平に固定され、機器収納部11の背面壁に沿うように配置されている。1本の排水用配管61は、複数の病室や居室に個別に設けた複数の便器装置41に対して共用され、複数の便器装置41の汚物等を排出する共用経路として機能する。
【0030】
通気用配管62も、排水用配管61と同様、複数の病室間や居室間を仕切る仕切壁を貫通した状態で水平に固定され、機器収納部11の背面壁に沿うように配置されている。1本の通気用配管62は、複数の病室や居室に個別に設けた複数の排水装置50に対して共用され、複数の排水装置50のポンプ機能を発揮させるものである。
【0031】
排水用配管61のうち背面収納部21内に収納される部位には、排水用配管61から斜め左上方へ突出した形態の逆両防止管63が接続されている。逆両防止管63の上端部には、ボールバルブ64が吊り下げられた状態で接続されている。ボールバルブ64の下端部には、排水用配管側接続部65が設けられている。排水用配管側接続部65には、可撓性を有する排水用ホース66の下流端が接続されている。排水用ホース66の上流端は、排水装置50の排水用便器側接続部51に接続されている。
【0032】
排水用ホース66は、排水用配管側接続部65と排水用便器側接続部51との間において、排水用ホース66の自重によって下方へ膨らむように湾曲した状態で吊り下げられている。排水用配管側接続部65の位置は排水用便器側接続部51よりも高い位置にあるので、排水用ホース66の重量の大部分は排水用配管側接続部65によって支えられている。
【0033】
通気用配管62のうち左右方向において排水用配管側接続部65よりも右方の部位には、通気用配管側接続部67が設けられている。通気用配管側接続部67には、可撓性を有する通気用ホース68の一方の端部が接続されている。通気用ホース68の他方の端部は、排水装置50の通気用便器側接続部52に接続されている。
【0034】
通気用ホース68は、通気用配管側接続部67と通気用便器側接続部52との間において、通気用ホース68の自重によって下方へ膨らむように湾曲した状態で吊り下げられている。通気用配管側接続部67の位置は通気用便器側接続部52よりも高い位置にあるので、通気用ホース68の重量の大部分は通気用配管側接続部67によって支えられている。
【0035】
排水用ホース66と通気用ホース68が接続されている排水装置50は、使用位置と収納位置との間で移動する。排水用配管側接続部65と排水用便器側接続部51の水平距離は、移動式トイレ40が使用位置にあるときに最長である。排水用ホース66の長さは、移動式トイレ40が使用位置にある状態で、排水用ホース66が排水用配管側接続部65と排水用便器側接続部51との間で弛まない長さに設定されている。
【0036】
排水用配管側接続部65と排水用便器側接続部51の水平距離は、移動式トイレ40が収納位置にあるときに最短である。排水用ホース66の長さは、移動式トイレ40が収納位置にあるときに、排水用ホース66のいずれの部位も床面Fに接触しない長さに設定されている。換言すると、排水用ホース66の最も低い部位の下面が、床面Fよりも高い位置となるような長さに設定されている。
【0037】
通気用配管側接続部67と通気用便器側接続部52の水平距離は、移動式トイレ40が使用位置にあるときに最長である。通気用ホース68の長さは、移動式トイレ40が使用位置にある状態で、通気用ホース68が通気用配管側接続部67と通気用便器側接続部52との間で引っ張られないような余長を持った長さに設定されている。
【0038】
通気用配管側接続部67と通気用便器側接続部52の水平距離は、移動式トイレ40が収納位置にあるときに最短である。通気用ホース68の長さは、移動式トイレ40が収納位置にあるときに、通気用ホース68のいずれの部位も床面Fに接触しない長さに設定されている。換言すると、通気用ホース68の最も低い部位の下面が、床面Fよりも高い位置となるような長さに設定されている。
【0039】
移動式トイレ40が使用位置にある状態では、排水装置50の排水用便器側接続部51と通気用便器側接続部52は、回転軸27よりも後方で、かつ排水用配管側接続部65及び通気用配管側接続部67よりも前方に配置される。移動式トイレ40が使用位置から収納位置へ移動する際には、排水装置50は、キャビネット10を上から見た平面視において反時計回り方向へ90°回転する。移動式トイレ40が収納位置にある状態でも、排水用便器側接続部51と通気用便器側接続部52は、回転軸27よりも後方で、かつ排水用配管側接続部65及び通気用配管側接続部67よりも前方に配置される。
【0040】
移動式トイレ40が使用位置と収納位置との間で移動する過程において、排水用便器側接続部51と通気用便器側接続部52が移動する経路は、キャビネット10の前後方向において回転軸27よりも後方の領域の範囲だけである。したがって、移動式トイレ40が使用位置と収納位置との間で移動する過程で、排水用ホース66と通気用ホース68が回転軸27と接触することはない。
【0041】
本実施形態1のトイレ装置1は、固定して設置された固定配管である排水用配管61及び通気用配管62と、床面F上で移動可能な便器装置41と、可撓性を有する排水用ホース66と、可撓性を有する通気用ホース68とを備えている。排水用配管61には排水用配管側接続部65が設けられ、通気用配管62には通気用配管側接続部67が設けられている。便器装置41には、排水用便器側接続部51と通気用便器側接続部52が設けられている。
【0042】
排水用ホース66は、排水用配管側接続部65と排水用便器側接続部51との間に設けられ、排水用配管61と便器装置41とを接続する。排水用配管61と便器装置41との間では、排水用ホース66を通ることによって汚水等の流体が移送される。排水用便器側接続部51は排水用配管側接続部65よりも低い位置に配置されている。通気用ホース68は、通気用配管側接続部67と通気用便器側接続部52との間に設けられ、通気用配管62と便器装置41を接続する。通気用配管62と便器装置41との間では、通気用ホース68を通ることによって空気が移送される。通気用便器側接続部52は通気用配管側接続部67はりも低い位置に配置されている。
【0043】
排水用ホース66は、便器装置41の移動にともなって変形できるようにするために余長を有する。但し、排水用配管側接続部65の位置が排水用便器側接続部51よりも高い位置にあるので、床面Fに対する排水用ホース66の摺接を回避できる。通気用ホース68も、便器装置41の移動にともなって変形できるようにするために余長を有する。但し、通気用配管側接続部67の位置が通気用便器側接続部52よりも高い位置にあるので、床面Fに対する通気用ホース68の摺接を回避できる。
【0044】
なお、排水用ホース66の余長が長い場合には、排水用ホース66の一部が床面Fに接触することも考えられる。しかし、排水用ホース66は排水用配管側接続部65によって床面Fよりも高い位置で支えられているので、排水用ホース66が床面Fに摺接するときに床面Fに作用する排水用ホース66の重量が軽減される。したがって、排水用ホース66の摩耗を抑制することができる。通気用ホース68に関しても、同様に、床面Fとの摺接に起因する摩耗を抑制することができる。
【0045】
排水用ホース66の全長は、便器装置41が収納位置と使用位置との間で移動する全過程(即ち、移動過程の少なくとも一部)において排水用ホース66が床面Fと非接触となる寸法に設定されている。便器装置41の移動過程で常に排水用ホース66が床面Fに接触している場合に比べると、排水用ホース66と床面Fとの間に生じる摺動抵抗を低減することができる。通気用ホース68に関しても、排水用ホース66と同様、床面Fとの間に生じる摺動抵抗を低減することができる。
【0046】
トイレ装置1は、便器装置41が収納位置に移動したときに便器装置41の全体(便器装置41の少なくとも一部)を収納する機器収納部11を備えている。排水用配管側接続部65は機器収納部11内に配置されているので、排水用配管側接続部65の全体と排水用配管61の一部を、機器収納部11を利用して隠すことができる。通気用配管側接続部67も機器収納部11内に配置されているので、通気用配管側接続部67の全体と通気用配管62の一部を、機器収納部11を利用して隠すことができる。
【0047】
便器装置41が収納位置と使用位置との間で移動する過程では、排水用ホース66の全体と通気用ホース68の全体が機器収納部11の内部に収納されるので、排気用ホースと通気用ホース68を、常に、機器収納部11内に隠しておくことができる。
【0048】
図8に示すように、1本の排水用配管61における複数位置には複数の排水用配管側接続部65が設けられており、複数の病室や居室に設けた複数の便器装置41と、複数の排水用配管側接続部65との間には、複数本の排水用ホース66が個別に接続されている。1本の通気用配管62における複数位置には複数の通気用配管側接続部67が設けられており、複数の病室や居室に設けた複数の便器装置41と、複数の通気用配管側接続部67との間には、複数本の通気用ホース68が個別に接続されている。したがって、本実施形態のトイレ装置1は、複数の病室や居室に便器装置41を設けた施設等において、1本の排水用配管61を共用することができる。
【0049】
<他の実施形態>
本開示は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本開示の技術的範囲に含まれる。
便器装置が収納位置と使用位置との間で移動する過程で、ホースの一部が常に摺接するようにしてもよく、便器装置の移動過程でホースの一部が一時的に床面に摺接するようにしてもよい。
配管側接続部は、機器収納部の外部に配置されていてもよい。
便器側接続部は、便器装置が収納位置へ移動したときに、機器収納部の外部に配置されてもよい。
便器装置が収納位置へ移動したときに、便器装置の一部が機器収納部の外部に露出してもよい。
便器装置が収納位置と使用位置との間で移動する過程で、ホースの少なくとも一部が機器収納部の外部に露出するようにしてもよい。
便器収納部に扉を設けず、開口部を開放したままにしてもよい。
便器装置が使用位置にある状態において、便器装置の前後の向きが、便器収納部の正面部に対して平行な向きであってもよく、正面部に対して斜めの向きであってもよい。
収納位置と使用位置との間における便器装置の変位経路を、複数のアーム状のリンクを二次元平面上で相対回転し得るように連結した多節リンク機構等によってガイドしてもよい。
排水装置は便器装置の側方に配置されていてもよい。この場合、便器装置が収納位置にあるときには、排水装置は、便器装置とともに便器収納部内に収納される。便器装置が使用位置にあるときには、排水装置は、便器収納部内に収納されていてもよく、便器収納部の外部に露出していてもよい。
便器装置を電動によって移動させるようにしてもよい。
便器装置が収納位置にあるときに、便器装置の一部が便器収納部の外部にはみ出していてもよい。
便器収納部と取付部は、居室の内壁と一体をなすように造り付けたものであってもよい。
1本の固定配管に設ける配管側接続部の数は、1つだけでもよい。
キャビネットを、背面開放の箱形として、病室や居室の壁面を覆うように配置し、壁面がキャビネットの背面を兼ねるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1…トイレ装置、11…機器収納部、41…便器装置、51…排水用便器側接続部(便器側接続部)、52…通気用便器側接続部(便器側接続部)、61…排水用配管(固定配管)、62…通気用配管(固定配管)、65…排水用配管側接続部(配管側接続部)、66…排水用ホース(ホース)、67…通気用配管側接続部(配管側接続部)、68…通気用ホース(ホース)、F…床面
図1
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図8