(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】液体吐出装置及び液体吐出方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20240408BHJP
【FI】
B41J2/01 205
B41J2/01 301
(21)【出願番号】P 2020023288
(22)【出願日】2020-02-14
【審査請求日】2022-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000137823
【氏名又は名称】株式会社ミマキエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100166545
【氏名又は名称】折坂 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100142653
【氏名又は名称】小林 直樹
(72)【発明者】
【氏名】上村 広紀
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-120355(JP,A)
【文献】特開2005-088436(JP,A)
【文献】特開2016-049759(JP,A)
【文献】特開2018-094805(JP,A)
【文献】特開2006-021446(JP,A)
【文献】特開2017-159561(JP,A)
【文献】特開2006-289239(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出する液体吐出装置であって、
インクジェット方式で前記液体を吐出するヘッド部と、
前記ヘッド部へ前記液体を供給する液体供給部と、
前記ヘッド部を駆動する駆動信号を前記ヘッド部へ供給する駆動信号供給部と、
前記駆動信号の電圧を設定する信号電圧設定部と
を備え、
前記ヘッド部は、
前記液体供給部から供給される前記液体を受ける部分である液体受部と、
複数のノズル列と
を有し、
それぞれの前記ノズル列は、前記液体を吐出するノズルが所定のノズル列方向へ並ぶ列であり、
それぞれの前記ノズル列におけるそれぞれの前記ノズルは、前記液体受部を介して前記液体供給部から供給される前記液体を吐出し、
前記駆動信号供給部は、前記複数のノズル列におけるそれぞれの前記ノズルに対応する前記駆動信号を前記ヘッド部へ供給することで、それぞれの前記ノズルに前記液体を吐出させ、
前記信号電圧設定部は、
前記駆動信号の少なくとも一部の期間における電圧について、互いに異なる複数種類の電圧を設定可能であり、
吐出特性が所定の正常範囲にある前記ノズルに対して供給する前記駆動信号を正常時信号と定義した場合、少なくとも一部の前記ノズル列においていずれかの端の側にある予め設定された数の前記ノズルのうちの少なくとも一部へ供給する前記駆動信号について、前記少なくとも一部の期間における電圧を前記正常時信号における電圧と異ならせ、
前記液体は、画像を描くためのインクであり、
前記ヘッド部は、互いに異なる色のインクを吐出する複数の前記ノズル列を有
し、
前記駆動信号供給部は、前記少なくとも一部の期間における電圧が互いに異なる複数種類の前記駆動信号を出力可能であり、
前記信号電圧設定部は、それぞれの前記ノズル列におけるそれぞれの前記ノズルに対して供給する前記駆動信号を前記複数種類の駆動信号の中から前記ノズル毎に選択することで、それぞれの前記ノズルに対して供給する前記駆動信号における前記少なくとも一部の期間における電圧を設定し、
前記予め設定された数のノズルは、前記ノズル列において連続して並ぶ複数のノズルであり、
前記信号電圧設定部は、前記少なくとも一部の前記ノズル列において、前記予め設定された数のノズルのうちの一部へ供給する前記駆動信号のみについて、前記少なくとも一部の期間における電圧を前記正常時信号における電圧と異ならせることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
液体を吐出する液体吐出装置であって、
インクジェット方式で前記液体を吐出するヘッド部と、
前記ヘッド部へ前記液体を供給する液体供給部と、
前記ヘッド部を駆動する駆動信号を前記ヘッド部へ供給する駆動信号供給部と、
前記駆動信号の電圧を設定する信号電圧設定部と
を備え、
前記ヘッド部は、
前記液体供給部から供給される前記液体を受ける部分である液体受部と、
複数のノズル列と
を有し、
それぞれの前記ノズル列は、前記液体を吐出するノズルが所定のノズル列方向へ並ぶ列であり、
それぞれの前記ノズル列におけるそれぞれの前記ノズルは、前記液体受部を介して前記液体供給部から供給される前記液体を吐出し、
前記駆動信号供給部は、前記複数のノズル列におけるそれぞれの前記ノズルに対応する前記駆動信号を前記ヘッド部へ供給することで、それぞれの前記ノズルに前記液体を吐出させ、
前記信号電圧設定部は、
前記駆動信号の少なくとも一部の期間における電圧について、互いに異なる複数種類の電圧を設定可能であり、
吐出特性が所定の正常範囲にある前記ノズルに対して供給する前記駆動信号を正常時信号と定義した場合、少なくとも一部の前記ノズル列においていずれかの端の側にある予め設定された数の前記ノズルのうちの少なくとも一部へ供給する前記駆動信号について、前記少なくとも一部の期間における電圧を前記正常時信号における電圧と異ならせ、
前記少なくとも一部の前記ノズル列における前記予め設定された数の前記ノズルが並ぶ範囲を前記ノズル列における第1の範囲と定義し、
前記ノズル列において前記第1の範囲と隣接し、かつ、前記第1の範囲よりも前記ノズル列の端から遠い側で前記ノズル列における所定の一部の前記ノズルが並ぶ範囲を前記ノズル列における第2の範囲と定義した場合、
前記信号電圧設定部は、前記少なくとも一部のノズル列において、前記第2の範囲に含まれる前記ノズルの一部へ供給する前記駆動信号についても、前記少なくとも一部の期間における電圧を前記正常時信号における電圧と異ならせ、
かつ、前記少なくとも一部の期間における電圧を前記正常時信号における電圧と異ならせる前記ノズルの割合について、前記第2の範囲における前記割合を前記第1の範囲における前記割合よりも小さくすることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項3】
前記ノズル列において前記第2の範囲と隣接し、かつ、前記第2の範囲よりも前記ノズル列の端から遠い側で前記ノズル列における所定の一部の前記ノズルが並ぶ範囲を前記ノズル列における第3の範囲と定義した場合、
前記信号電圧設定部は、前記少なくとも一部のノズル列において、前記第3の範囲に含まれる前記ノズルの一部へ供給する前記駆動信号についても、前記少なくとも一部の期間における電圧を前記正常時信号における電圧と異ならせ、
かつ、前記少なくとも一部の期間における電圧を前記正常時信号における電圧と異ならせる前記ノズルの前記割合について、前記第3の範囲における前記割合を前記第2の範囲における前記割合よりも小さくすることを特徴とする請求項2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記予め設定された数の前記ノズルは、前記少なくとも一部の前記ノズル列において前記液体受部から供給される前記液体の流路方向で前記液体受部に近い端の側にあるノズルであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記複数のノズル列には、共通の前記液体受部を介して前記液体供給部から前記液体が供給され、
前記信号電圧設定部は、前記共通の液体受部を介して前記液体が供給される前記複数のノズル列の全てにおいて、前記予め設定された数の前記ノズルのうちの少なくとも一部へ供給する前記駆動信号について、前記少なくとも一部の期間における電圧を前記正常時信号における電圧と異ならせることを特徴とする請求項1から
4のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記ヘッド部は、前記液体受部から供給される前記液体を前記ノズル列におけるそれぞれの前記ノズルの位置へ流す液体流路を更に有し、
前記液体流路において、前記液体は、前記ノズル列の一端側から他端側へ流れることを特徴とする請求項1から
5のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項7】
液体を吐出する液体吐出装置であって、
インクジェット方式で前記液体を吐出するヘッド部と、
前記ヘッド部へ前記液体を供給する液体供給部と、
前記ヘッド部を駆動する駆動信号を前記ヘッド部へ供給する駆動信号供給部と、
前記駆動信号の電圧を設定する信号電圧設定部と
を備え、
前記ヘッド部は、
前記液体供給部から供給される前記液体を受ける部分である液体受部と、
複数のノズル列と
を有し、
それぞれの前記ノズル列は、前記液体を吐出するノズルが所定のノズル列方向へ並ぶ列であり、
それぞれの前記ノズル列におけるそれぞれの前記ノズルは、前記液体受部を介して前記液体供給部から供給される前記液体を吐出し、
前記駆動信号供給部は、前記複数のノズル列におけるそれぞれの前記ノズルに対応する前記駆動信号を前記ヘッド部へ供給することで、それぞれの前記ノズルに前記液体を吐出させ、
前記信号電圧設定部は、
前記駆動信号の少なくとも一部の期間における電圧について、互いに異なる複数種類の電圧を設定可能であり、
吐出特性が所定の正常範囲にある前記ノズルに対して供給する前記駆動信号を正常時信号と定義し、前記ノズル列における所定の一部の前記ノズルが並ぶ範囲を前記ノズル列における第1の範囲と定義し、前記ノズル列において前記第1の範囲と隣接し、かつ、前記ノズル列における他の所定の一部の前記ノズルが並ぶ範囲を前記ノズル列における第2の範囲と定義した場合、
前記信号電圧設定部は、前記第1の範囲に含まれる前記ノズルの少なくとも一部へ供給する前記駆動信号、及び、前記第2の範囲に含まれる前記ノズルの一部へ供給する前記駆動信号について、前記少なくとも一部の期間における電圧を前記正常時信号における電圧と異ならせ、
かつ、
前記少なくとも一部の期間における電圧を前記正常時信号における電圧と異ならせる前記ノズルの割合について、前記第2の範囲における前記割合を前記第1の範囲における前記割合よりも小さくすることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項8】
液体を吐出する液体吐出方法であって、
インクジェット方式で前記液体を吐出するヘッド部と、
前記ヘッド部へ前記液体を供給する液体供給部と、
前記ヘッド部を駆動する駆動信号を前記ヘッド部へ供給する駆動信号供給部と、
前記駆動信号の電圧を設定する信号電圧設定部と
を用い、
前記ヘッド部は、
前記液体供給部から供給される前記液体を受ける部分である液体受部と、
複数のノズル列と
を有し、
それぞれの前記ノズル列は、前記液体を吐出するノズルが所定のノズル列方向へ並ぶ列であり、
それぞれの前記ノズル列におけるそれぞれの前記ノズルは、前記液体受部を介して前記液体供給部から供給される前記液体を吐出し、
前記駆動信号供給部により、前記複数のノズル列におけるそれぞれの前記ノズルに対応する前記駆動信号を前記ヘッド部へ供給することで、それぞれの前記ノズルに前記液体を吐出させ、
前記信号電圧設定部は、前記駆動信号の少なくとも一部の期間における電圧について、互いに異なる複数種類の電圧を設定可能であり、
吐出特性が所定の正常範囲にある前記ノズルに対して供給する前記駆動信号を正常時信号と定義した場合、前記信号電圧設定部により、少なくとも一部の前記ノズル列においていずれかの端の側にある予め設定された数の前記ノズルのうちの少なくとも一部へ供給する前記駆動信号について、前記少なくとも一部の期間における電圧を前記正常時信号における電圧と異ならせ、
前記液体は、画像を描くためのインクであり、
前記ヘッド部は、互いに異なる色のインクを吐出する複数の前記ノズル列を有
し、
前記駆動信号供給部は、前記少なくとも一部の期間における電圧が互いに異なる複数種類の前記駆動信号を出力可能であり、
前記信号電圧設定部は、それぞれの前記ノズル列におけるそれぞれの前記ノズルに対して供給する前記駆動信号を前記複数種類の駆動信号の中から前記ノズル毎に選択することで、それぞれの前記ノズルに対して供給する前記駆動信号における前記少なくとも一部の期間における電圧を設定し、
前記予め設定された数のノズルは、前記ノズル列において連続して並ぶ複数のノズルであり、
前記信号電圧設定部は、前記少なくとも一部の前記ノズル列において、前記予め設定された数のノズルのうちの一部へ供給する前記駆動信号のみについて、前記少なくとも一部の期間における電圧を前記正常時信号における電圧と異ならせることを特徴とする液体吐出方法。
【請求項9】
液体を吐出する液体吐出方法であって、
インクジェット方式で前記液体を吐出するヘッド部と、
前記ヘッド部へ前記液体を供給する液体供給部と、
前記ヘッド部を駆動する駆動信号を前記ヘッド部へ供給する駆動信号供給部と、
前記駆動信号の電圧を設定する信号電圧設定部と
を用い、
前記ヘッド部は、
前記液体供給部から供給される前記液体を受ける部分である液体受部と、
複数のノズル列と
を有し、
それぞれの前記ノズル列は、前記液体を吐出するノズルが所定のノズル列方向へ並ぶ列であり、
それぞれの前記ノズル列におけるそれぞれの前記ノズルは、前記液体受部を介して前記液体供給部から供給される前記液体を吐出し、
前記駆動信号供給部により、前記複数のノズル列におけるそれぞれの前記ノズルに対応する前記駆動信号を前記ヘッド部へ供給することで、それぞれの前記ノズルに前記液体を吐出させ、
前記信号電圧設定部は、前記駆動信号の少なくとも一部の期間における電圧について、互いに異なる複数種類の電圧を設定可能であり、
吐出特性が所定の正常範囲にある前記ノズルに対して供給する前記駆動信号を正常時信号と定義した場合、前記信号電圧設定部により、少なくとも一部の前記ノズル列においていずれかの端の側にある予め設定された数の前記ノズルのうちの少なくとも一部へ供給する前記駆動信号について、前記少なくとも一部の期間における電圧を前記正常時信号における電圧と異ならせ、
前記少なくとも一部の前記ノズル列における前記予め設定された数の前記ノズルが並ぶ範囲を前記ノズル列における第1の範囲と定義し、
前記ノズル列において前記第1の範囲と隣接し、かつ、前記第1の範囲よりも前記ノズル列の端から遠い側で前記ノズル列における所定の一部の前記ノズルが並ぶ範囲を前記ノズル列における第2の範囲と定義した場合、
前記信号電圧設定部により、前記少なくとも一部のノズル列において、前記第2の範囲に含まれる前記ノズルの一部へ供給する前記駆動信号についても、前記少なくとも一部の期間における電圧を前記正常時信号における電圧と異ならせ、
かつ、前記少なくとも一部の期間における電圧を前記正常時信号における電圧と異ならせる前記ノズルの割合について、前記第2の範囲における前記割合を前記第1の範囲における前記割合よりも小さくすることを特徴とする液体吐出方法。
【請求項10】
液体を吐出する液体吐出方法であって、
インクジェット方式で前記液体を吐出するヘッド部と、
前記ヘッド部へ前記液体を供給する液体供給部と、
前記ヘッド部を駆動する駆動信号を前記ヘッド部へ供給する駆動信号供給部と、
前記駆動信号の電圧を設定する信号電圧設定部と
を用い、
前記ヘッド部は、
前記液体供給部から供給される前記液体を受ける部分である液体受部と、
複数のノズル列と
を有し、
それぞれの前記ノズル列は、前記液体を吐出するノズルが所定のノズル列方向へ並ぶ列であり、
それぞれの前記ノズル列におけるそれぞれの前記ノズルは、前記液体受部を介して前記液体供給部から供給される前記液体を吐出し、
前記駆動信号供給部により、前記複数のノズル列におけるそれぞれの前記ノズルに対応する前記駆動信号を前記ヘッド部へ供給することで、それぞれの前記ノズルに前記液体を吐出させ、
前記信号電圧設定部は、前記駆動信号の少なくとも一部の期間における電圧について、互いに異なる複数種類の電圧を設定可能であり、
吐出特性が所定の正常範囲にある前記ノズルに対して供給する前記駆動信号を正常時信号と定義し、前記ノズル列における所定の一部の前記ノズルが並ぶ範囲を前記ノズル列における第1の範囲と定義し、前記ノズル列において前記第1の範囲と隣接し、かつ、前記ノズル列における他の所定の一部の前記ノズルが並ぶ範囲を前記ノズル列における第2の範囲と定義した場合、
前記信号電圧設定部により、前記第1の範囲に含まれる前記ノズルの少なくとも一部へ供給する前記駆動信号、及び、前記第2の範囲に含まれる前記ノズルの一部へ供給する前記駆動信号について、前記少なくとも一部の期間における電圧を前記正常時信号における電圧と異ならせ、
かつ、
前記少なくとも一部の期間における電圧を前記正常時信号における電圧と異ならせる前記ノズルの割合について、前記第2の範囲における前記割合を前記第1の範囲における前記割合よりも小さくすることを特徴とする液体吐出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置及び液体吐出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェット方式で液体を吐出する液体を吐出する液体吐出装置が広く用いられている。また、このような液体吐出装置としては、例えばインクジェットプリンタ等が広く用いられている(例えば、特許文献1参照)。インクジェットプリンタ等の液体吐出装置では、例えば、複数のノズルが並ぶノズル列から、インク等の液体を吐出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インクジェットプリンタ等の液体吐出装置においては、ノズルの吐出特性に差が生じる場合がある。そして、この場合、吐出特性が正常範囲から外れた異常ノズルが存在すると、液体吐出装置の用途において製造する成果物の品質に影響が生じる場合がある。例えば、インクジェットプリンタで印刷を行う場合、異常ノズルの影響で周期的なムラ(印刷ムラ、印刷縞)が発生して、印刷の品質が低下する場合がある。そのため、液体吐出装置において、異常ノズルが存在する場合、ノズルの吐出特性に対する補正等を行うことが好ましい。また、この場合において、例えば吐出特性の異常が生じる原因や液体吐出装置の構成等を考慮して、より適切な方法で吐出特性の補正等を行うことが望まれる。そこで、本発明は、上記の課題を解決できる液体吐出装置及び液体吐出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
液体吐出装置においては、複数のノズルが並ぶノズル列を有するヘッド部を用いる場合がある。また、この場合において、ヘッド部の外部にある液体供給部からヘッド部における液体受部(液体供給ポート)へ液体を供給して、液体受部を介してノズル列へ液体の供給を行う場合がある。しかし、このようにして液体を供給する場合、液体を供給する流路(経路)の構造等に起因して、ノズル列中の位置によってノズルの吐出特性に差が生じて、異常ノズルが発生する場合がある。
【0006】
これに対し、本願の発明者は、ノズル列を構成する複数のノズルのうち、ノズル列の端付近において、上記のような吐出特性の異常が生じやすいことに着目をした。そして、このような吐出特性の異常が生じやすい部分における少なくとも一部のノズルへ供給する駆動信号の電圧を変化させることで、吐出特性の補正を行うことを考えた。このように構成すれば、例えば、液体供給部からヘッド部における液体受部へ液体を供給して、液体受部を介してノズル列へ液体の供給を行う場合において、吐出特性の異常が生じやすいノズルに対し、吐出特性の補正を適切に行うことができる。
【0007】
また、液体吐出装置においては、例えば高速に液体の吐出を行うこと等を目的として、複数のノズル列を用いる場合がある。例えば、インクジェットプリンタにおいて、パス数を少なくして高速な印刷を行おうとする場合、同色のインクを吐出する複数のノズル列を用いて印刷を行うことが考えられる。そして、液体受部を介して複数のノズル列へ液体の供給を行う場合、液体の流路において液体受部との関係が同等になるノズルの数が増えるため、ノズル列中の位置によってノズルの吐出特性に差が生じると、異常ノズルの影響が生じやすくなる。これに対し、上記のように構成すれば、複数のノズル列を用いる場合においても、吐出特性の異常が生じやすいノズルに対し、吐出特性の補正を適切に行うことができる。
【0008】
また、本願の発明者は、更なる鋭意研究により、このような効果を得るために必要な特徴を見出し、本発明に至った。上記の課題を解決するために、本発明は、液体を吐出する液体吐出装置であって、インクジェット方式で前記液体を吐出するヘッド部と、前記ヘッド部へ前記液体を供給する液体供給部と、前記ヘッド部を駆動する駆動信号を前記ヘッド部へ供給する駆動信号供給部と、前記駆動信号の電圧を設定する信号電圧設定部とを備え、前記ヘッド部は、前記液体供給部から供給される前記液体を受ける部分である液体受部と、複数のノズル列とを有し、それぞれの前記ノズル列は、前記液体を吐出するノズルが所定のノズル列方向へ並ぶ列であり、それぞれの前記ノズル列におけるそれぞれの前記ノズルは、前記液体受部を介して前記液体供給部から供給される前記液体を吐出し、前記駆動信号供給部は、前記複数のノズル列におけるそれぞれの前記ノズルに対応する前記駆動信号を前記ヘッド部へ供給することで、それぞれの前記ノズルに前記液体を吐出させ、前記信号電圧設定部は、前記駆動信号の少なくとも一部の期間における電圧について、互いに異なる複数種類の電圧を設定可能であり、吐出特性が所定の正常範囲にある前記ノズルに対して供給する前記駆動信号を正常時信号と定義した場合、少なくとも一部の前記ノズル列においていずれかの端の側にある予め設定された数の前記ノズルのうちの少なくとも一部へ供給する前記駆動信号について、前記少なくとも一部の期間における電圧を前記正常時信号における電圧と異ならせる。
【0009】
このように構成すれば、例えば、液体供給部からヘッド部における液体受部へ液体を供給して、液体受部を介して複数のノズル列へ液体の供給を行う場合において、ノズル列において吐出特性の異常が生じやすい位置にあるノズルに対する吐出特性の補正を容易かつ適切に行うことができる。また、これにより、例えば、液体吐出装置において、液体の吐出を高い精度で適切に行うことができる。
【0010】
また、液体受部を介して複数のノズル列へ液体の供給を行う場合、ノズル列の両端のうち、特に、液体受部に近い端の側において、吐出特性の異常が生じやすいと考えられる。この場合、上記の予め設定された数のノズルについて、例えば、少なくとも一部のノズル列において液体受部から供給される液体の流路方向で液体受部に近い端の側にあるノズル等と考えることができる。このように構成すれば、例えば、吐出特性の異常が生じやすいノズルに対する吐出特性の補正を適切に行うことができる。また、液体を供給する流路の構造等によっては、ノズル列を構成する複数のノズルのうち、液体受部から遠い側において吐出特性の異常が生じやすくなる場合もある。そして、このような場合、上記の予め設定された数のノズルについて、液体の流路方向で液体受部から遠い端の側にあるノズル等と考えることができる。
【0011】
また、この構成において、液体吐出装置は、例えば、インクジェットプリンタである。この場合、液体としては、インクを用いることが考えられる。また、この場合、上記の複数のノズル列について、例えば、同じ色のインクを吐出する複数のノズル列等と考えることができる。また、液体吐出装置は、例えば、インクジェット方式で立体的な造形物を造形する造形装置等であってもよい。また、この構成において、正常時信号と電圧を異ならせる場合の駆動信号については、例えば、その駆動信号が供給されるノズルの吐出特性を補正するように電圧を異ならせることが考えられる。この場合、ノズルの吐出特性を補正することについては、例えば、吐出特性を正常範囲に近づけること等と考えることができる。
【0012】
また、この構成において、ヘッド部は、例えば、液体受部から供給される液体をノズル列におけるそれぞれのノズルの位置へ流す液体流路を更に有する。また、この液体流路において、液体は、例えば、ノズル列の一端側から他端側へ流れる。この場合、ノズル列における予め設定された数のノズルについては、例えば、ノズル列の一端側又は他端側に並ぶ複数のノズル等と考えることができる。このように構成すれば、例えば、ノズル列において吐出特性の異常が生じやすい位置にあるノズルに対する吐出特性の補正を適切に行うことができる。
【0013】
また、この構成において、複数のノズル列には、例えば、共通の液体受部を介して液体供給部から液体が供給される。この場合、信号電圧設定部は、例えば、共通の液体受部を介して液体が供給される複数のノズル列の全てにおいて、予め設定された数のノズルのうちの少なくとも一部へ供給する駆動信号について、少なくとも一部の期間における電圧を正常時信号における電圧と異ならせることが好ましい。このように構成すれば、例えば、ノズル列において吐出特性の異常が生じやすい位置にあるノズルに対する吐出特性の補正をより適切に行うことができる。
【0014】
また、この構成において、ヘッド部は、例えば、予め設定された主走査方向へ移動しつつ液体を吐出する主走査動作を行うことで、液体の吐出対象へ液体を吐出する。この場合、ヘッド部の移動は、吐出対象に対する相対的な移動であってよい。また、この場合、それぞれのノズル列において複数のノズルが並ぶノズル列方向については、例えば、主走査方向と交差する方向等と考えることができる。また、この場合、例えば、主走査方向へ並ぶ複数のノズル列を用いることで、各回の主走査動作において高い解像度で液体の吐出を行うことが考えられる。
【0015】
また、このような複数のノズル列を有するヘッド部については、例えば、1回の主走査動作で高い解像度での液体の吐出が可能な高解像度ヘッド等と考えることができる。そして、この場合、例えば、吐出対象の各位置と対応する位置をヘッド部が通過する主走査動作の回数であるパス数を少なくして、液体の吐出を行うことが考えられる。このように構成した場合、例えば、各回の主走査動作でのそれぞれのノズルの使用率が高くなることで、ノズルの吐出特性の影響が生じやすくなる。そのため、例えば複数のノズル列における特定の位置(例えば、液体受部の付近等)に異常ノズルが多く発生すると、周期的なムラ等の問題が発生しやすくなる。これに対し、上記のように構成した場合、例えば、このような問題の発生等を適切に防ぐことができる。
【0016】
また、駆動信号の電圧の変更については、例えば、少なくとも一部の期間における電圧が互いに異なる複数種類の駆動信号を用意しておき、それぞれのノズルに対して供給する駆動信号を切り替えることで行うことが考えられる。この場合、ノズルに対して駆動信号を供給することについては、例えば、そのノズルからの液体の吐出を駆動する駆動素子(例えば、ピエゾ素子等)へ駆動信号を供給すること等と考えることができる。
【0017】
より具体的に、この場合、駆動信号供給部として、例えば、少なくとも一部の期間における電圧が互いに異なる複数種類の駆動信号を出力可能な構成を用いる。そして、信号電圧設定部は、例えば、それぞれのノズル列におけるそれぞれのノズルに対して供給する駆動信号を複数種類の駆動信号の中からノズル毎に選択することで、それぞれのノズルに対して供給する駆動信号における少なくとも一部の期間における電圧を設定する。このように構成すれば、例えば、それぞれのノズルへ供給する駆動信号の電圧を適切に変化させることができる。また、この場合、複数種類の駆動信号としては、例えば、3種類以上(例えば、5種類程度)の駆動信号を用いることが好ましい。このように構成すれば、例えば、それぞれのノズルへ供給する駆動信号の電圧を多様かつ適切に変化させることができる。
【0018】
また、駆動信号の電圧を変更することで吐出特性の補正を行う場合、補正の行い方によっては、補正を行った箇所がかえって目立つこと等も考えられる。例えば、インクジェットプリンタにおいて、異常ノズルの吐出特性の補正を行う場合、補正を行ったノズルと補正を行っていないノズルとの境界部分で吐出後の状態に差が生じて、意図しない縞(印刷ムラ)等が印刷結果において生じること等も考えられる。また、このような問題は、ノズル列において連続して並ぶある程度以上の数のノズルに対して補正を行う場合に生じやすくなると考えられる。そのため、この構成において、少なくとも一部の期間の電圧を正常時信号と異ならせた駆動信号を供給するノズルについては、ノズル列において過度に連続して並ばないように選択することが考えられる。また、この場合、補正対象のノズルについて、ノズル列中で位置が分散するように選択することが好ましい。
【0019】
より具体的に、この構成において、ノズル列においていずれかの端の側にある予め設定された数のノズルについては、例えば、ノズル列において連続して並ぶ複数のノズルであると考えることができる。そして、この場合、信号電圧設定部では、例えば、少なくとも一部のノズル列において、予め設定された数のノズルのうちの一部へ供給する駆動信号のみについて、少なくとも一部の期間における電圧を正常時信号における電圧と異ならせる。このように構成すれば、例えば、連続して並ぶ複数のノズルのうちの一部のノズルのみを吐出特性の補正の対象とすることで、補正を行った箇所が目立つこと等を適切に防ぐことができる。また、これにより、例えば、意図しない縞の発生等を適切に防ぐことができる。
【0020】
また、補正を行った箇所が目立つことをより適切に防ぐためには、例えば、ノズル列に対して補正対象の範囲を複数設定して、補正の強さを徐々に変化させること等も考えられる。この場合、例えば、ノズル列においていずれかの端の側にある予め設定された数のノズルに対応する補正対象の範囲として第1の範囲を設定し、その隣に第2の範囲を設定することが考えられる。また、この場合、第1の範囲及び第2の範囲に含まれる少なくとも一部のノズルに対して吐出特性の補正を行い、かつ、第2の範囲については、第1の範囲よりも補正の影響が小さくなるように吐出特性の補正を行うことが考えられる。このように構成した場合、例えば、吐出特性の補正を行わないノズルが並ぶ範囲と第1の範囲との間に第2の範囲を挟むことで、吐出特性の補正の影響が目立つこと等をより適切に防ぐことができる。
【0021】
また、より具体的に、この場合、ノズル列における第1の範囲及び第2の範囲のそれぞれについては、例えば、ノズル列において複数のノズルが連続して並ぶ範囲等と考えることができる。第1の範囲については、例えば、少なくとも一部のノズル列における予め設定された数のノズルが並ぶ範囲等と考えることができる。第2の範囲については、例えば、ノズル列において第1の範囲と隣接し、かつ、第1の範囲よりもノズル列の端から遠い側でノズル列における所定の一部のノズルが並ぶ範囲等と考えることができる。また、この場合、信号電圧設定部は、例えば、少なくとも一部のノズル列において、第1の範囲に含まれるノズルの少なくとも一部へ供給する駆動信号について、少なくとも一部の期間における電圧を正常時信号における電圧と異ならせる。また、第2の範囲に含まれるノズルの一部へ供給する駆動信号についても、少なくとも一部の期間における電圧を正常時信号における電圧と異ならせる。そして、信号電圧設定部は、更に、少なくとも一部の期間における電圧を正常時信号における電圧と異ならせるノズルの割合について、第2の範囲における割合を第1の範囲における割合よりも小さくする。このように構成すれば、例えば、ノズル列に対して補正対象の範囲を複数設定して、補正の強さを徐々に変化させることができる。また、これにより、例えば、吐出特性の補正の影響が目立つこと等をより適切に防ぐことができる。
【0022】
また、ノズル列に対して設定する補正対象の範囲については、3個以上にしてもよい。この場合、第1の範囲から離れるに従って補正の強さを徐々に小さくすることが考えられる。より具体的に、この場合、第2の範囲に対する第1の範囲と反対の側にノズル列における第3の範囲を設定することが考えられる。第3の範囲については、例えば、ノズル列において第2の範囲と隣接し、かつ、第2の範囲よりもノズル列の端から遠い側でノズル列における所定の一部のノズルが並ぶ範囲等と考えることができる。また、この場合、信号電圧設定部は、例えば、少なくとも一部のノズル列において、第3の範囲に含まれるノズルの一部へ供給する駆動信号についても、少なくとも一部の期間における電圧を正常時信号における電圧と異ならせる。そして、信号電圧設定部は、更に、少なくとも一部の期間における電圧を正常時信号における電圧と異ならせるノズルの割合について、第3の範囲における割合を第2の範囲における割合よりも小さくする。このように構成すれば、例えば、吐出特性の補正の影響が目立つこと等をより適切に防ぐことができる。
【0023】
また、ノズル列に対する補正対象の範囲としては、第4の範囲等を更に設定すること等も考えられる。この場合、これらの範囲については、例えばノズル列における他の範囲と隣接し、かつ、当該他の範囲よりもノズル列の端から遠い側でノズル列における所定の一部のノズルが並ぶ範囲等と考えることができる。また、この場合、信号電圧設定部は、例えば、少なくとも一部の期間における電圧を正常時信号における電圧と異ならせるノズルの割合について、第1の範囲からより遠い範囲における割合をより小さくすることが考えられる。
【0024】
また、本発明の特徴について、例えば、液体受部から供給される液体がノズル列の一端側から他端側へ流れる構成と関連づけて考えることもできる。この場合も、本発明の効果として、例えば、ノズル列において吐出特性の異常が生じやすい位置にあるノズルに対する吐出特性の補正を適切に行えること等を考えることができる。また、本発明の特徴について、例えば、ノズル列に対して補正対象の範囲を複数設定して、補正の強さを徐々に変化させる特徴に着目して考えることもできる。この場合、本発明の効果として、例えば、吐出特性の補正の影響を目立ちにくくすること等が考えられる。また、本発明の構成として、上記と同様の特徴を有する液体吐出方法等を用いることも考えられる。この場合も、例えば、上記と同様の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、例えば、液体吐出装置において、液体の吐出を高い精度で適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の一実施形態に係る印刷装置10の一例を示す図である。
図1(a)は、印刷装置10の要部の構成の一例を示す。
図1(b)は、印刷装置10におけるヘッド部12の構成の一例を示す。
【
図2】ヘッド部12における各色用ノズル列部202について更に詳しく説明をする図である。
図2(a)は、ヘッド部12における一組の各色用ノズル列部202及びインク供給ポート204の構成の一例を示す。
図2(b)は、各色用ノズル列部202の一部を拡大して示す。
【
図3】ヘッド部12が有する複数の各色用ノズル列部202c~kの構成を簡略化して示す図である。
【
図4】吐出特性の補正の仕方について説明をする図である。
図4(a)は、吐出特性の補正の仕方の一例を示す。
図4(b)は、吐出特性の補正の仕方の他の例を示す。
【
図5】吐出特性の補正の仕方の更なる他の例を示す図である。
図5(a)は、一つのノズル列302に対して補正対象の範囲を2つ設定する場合の例を示す。
図5(b)は、一つのノズル列302に対して補正対象の範囲を3つ設定する場合の例を示す。
【
図6】吐出特性の補正の仕方に関する補足説明用の図である。
図6(a)、(b)は、補正対象のノズル312の選択の仕方の変形例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る印刷装置10の一例を示す。
図1(a)は、印刷装置10の要部の構成の一例を示す。
図1(b)は、印刷装置10におけるヘッド部12の構成の一例を示す。本例において、印刷装置10は、液体吐出装置の一例となるインクジェットプリンタであり、ヘッド部12、プラテン14、主走査駆動部16、副走査駆動部18、インク供給部20、及び制御部22を備える。以下において説明をする点を除き、印刷装置10は、公知の印刷装置と同一又は同様の特徴を有してよい。また、印刷装置10は、図示した要部の構成以外に、公知の印刷装置と同一又は同様の構成を更に備えてよい。
【0028】
ヘッド部12は、インクジェット方式でインクを吐出する複数のノズルを有する部分である。この場合、インクは、液体吐出装置において吐出する液体の一例である。また、本例において、ヘッド部12は、
図1(b)に示すように、複数色のインクを吐出するインク吐出部102を有する。また、インク吐出部102は、複数の各色用ノズル列部202及び複数のインク供給ポート204を有する。より具体的に、本例において、インク吐出部102は、図中に各色用ノズル列部202c、202m、202y、202kと区別して示すように、互いに異なる4色用の各色用ノズル列部202を有する。また、図中にインク供給ポート204c、204m、204y、204kと区別して示すように、互いに異なる4色用のインク供給ポート204を有する。
【0029】
それぞれの各色用ノズル列部202は、一つの色のインクを吐出するノズル列を有する部分である。この場合、ノズル列については、例えば、インクを吐出するノズルが所定のノズル列方向へ並ぶ列等と考えることができる。また、ノズル列がインクを吐出することについては、例えば、ノズル列を構成するノズルがインクを吐出すること等と考えることができる。また、本例において、それぞれの各色用ノズル列部202は、複数のノズル列を有する。また、この場合、各色用ノズル列部202cにおける複数のノズル列は、シアン色(C色)のインクを吐出する。各色用ノズル列部202mにおける複数のノズル列は、マゼンタ色(M色)のインクを吐出する。各色用ノズル列部202yにおける複数のノズル列は、イエロー色(Y色)のインクを吐出する。各色用ノズル列部202kにおける複数のノズル列は、ブラック色(K色)のインクを吐出する。また、本例において、それぞれの各色用ノズル列部202は、それぞれの色のインクについて、インク供給ポート204を介して、インク供給部20から受け取る。
【0030】
それぞれのインク供給ポート204は、液体受部の一例であり、ヘッド部12に外部に配設されるインク供給部20から供給されるインクを受ける。また、本例において、インク供給ポート204c~kのそれぞれは、各色用ノズル列部202c~kのそれぞれに対応して配設されており、インク供給部20から受け取る各色のインクを、対応する各色用ノズル列部202における複数のノズル列へ供給する。より具体的に、本例において、インク供給ポート204cは、シアン色のインクをインク供給部20から受け取り、各色用ノズル列部202cにおける複数のノズル列へ供給する。インク供給ポート204mは、マゼンタ色のインクをインク供給部20から受け取り、各色用ノズル列部202mにおける複数のノズル列へ供給する。インク供給ポート204yは、イエロー色のインクをインク供給部20から受け取り、各色用ノズル列部202yにおける複数のノズル列へ供給する。インク供給ポート204kは、ブラック色のインクをインク供給部20から受け取り、各色用ノズル列部202kにおける複数のノズル列へ供給する。
【0031】
尚、インク吐出部102の構成の変形例において、インク吐出部102は、CMYKの各色以外のインクを吐出してもよい。この場合、例えば、いずれかの各色用ノズル列部202及びインク供給ポート204において、CMYKの各色以外の色のインクを用いる。また、ヘッド部12の構成の変形例において、ヘッド部12は、複数のインク吐出部102を有してもよい。この場合、例えば、一部のインク吐出部102において、CMYKの各色以外の色のインクを吐出すること等が考えられる。また、本例において、それぞれの各色用ノズル列部202については、例えば、一つの色用のインクジェットヘッドに対応する部分等と考えることができる。この場合、例えば、一つの色用のインクジェットヘッドが有する複数のノズル列により、それぞれの各色用ノズル列部202を構成すること等が考えられる。また、複数の各色用ノズル列部202のそれぞれは、複数色のインクを吐出する一つのインクジェットヘッドの一部であってもよい。
【0032】
また、インク吐出部102については、例えば、複数色用のインクジェットヘッドに対応する部分等と考えることができる。この場合、例えば、それぞれが一つの各色用ノズル列部202に対応する複数のインクジェットヘッドを組み合わせて、インク吐出部102を構成することが考えられる。また、複数色のインクを吐出する一つのインクジェットヘッドによりインク吐出部102を構成すること等も考えられる。これらのインクジェットヘッドとしては、公知のインクジェットヘッドと同一又は同様の構成のインクジェットヘッド等を好適に用いることができる。インク吐出部102における各色用ノズル列部202等のより具体的な構成については、後に更に詳しく説明をする。
【0033】
プラテン14は、印刷対象の媒体(メディア)50を支持する台状部材である。本例において、プラテン14は、上面に媒体50を載せて支持することで、媒体50の少なくとも一部をヘッド部12と対向させて媒体50を支持する。
【0034】
主走査駆動部16は、ヘッド部12に主走査動作を行わせる駆動部である。この場合、主走査動作については、例えば、インクの吐出対象に対して相対的に主走査方向へ移動しつつインクを吐出する動作等と考えることができる。また、本例において、主走査方向は、図中のY方向と平行な方向である。ヘッド部12に主走査動作を行わせることについては、例えば、ヘッド部12の少なくとも一部を構成するインクジェットヘッドに主走査動作を行わせること等と考えることもできる。また、本例において、主走査駆動部16は、主走査方向へヘッド部12を移動させつつ、ヘッド部12を駆動する駆動信号をヘッド部12へ供給することで、ヘッド部12に主走査動作を行わせる。この場合、駆動信号をヘッド部12へ供給することについては、例えば、ヘッド部12においてインクを吐出するそれぞれのノズルに対して駆動信号を供給すること等と考えることができる。
【0035】
また、ノズルに対して駆動信号を供給することについては、例えば、そのノズルからの液体の吐出を駆動する駆動素子(例えば、ピエゾ素子等)へ駆動信号を供給すること等と考えることができる。また、駆動信号については、例えば、ノズルからインクを吐出させるために駆動素子を駆動する信号等と考えることができる。より具体的に、例えば、駆動素子としてピエゾ素子を用いる場合、駆動信号については、例えば、電圧の変化によりピエゾ素子を変位させてノズルからインクを吐出させる信号等と考えることができる。また、より具体的に、本例において、駆動信号としては、電圧が変化することで駆動素子を駆動する信号を用いる。
【0036】
更に、本例において、それぞれのノズルに対して供給する駆動信号としては、複数種類の駆動信号から選択される信号を用いる。また、複数種類の駆動信号としては、少なくとも一部の期間における電圧が互いに異なる複数種類の信号を用いる。これらの複数種類の駆動信号については、例えば、所定の同一の容量のインクの液滴をノズルから吐出させる場合に用いる複数種類の信号等と考えることができる。また、この場合、ヘッド部12における複数のノズルと駆動信号との関係について、例えば、それぞれのノズルに対応する駆動信号をヘッド部12へ供給して、それぞれのノズルにインクを吐出させていると考えることができる。
【0037】
尚、ノズルからインクジェット方式でインクの液滴を吐出する場合、液滴の容量を複数段階で可変にすること等も考えられる。そして、この場合、互いに異なる容量の吐出時に用いる駆動信号について、電圧が異なる信号と考えることもできる。これに対し、本例においては、同一の容量の液滴に対して、複数種類の駆動信号を用意する。この場合、例えば、それぞれのノズルの吐出特性に応じて駆動信号を選択することで、吐出特性に対する補正を行うことが可能になる。また、本例のヘッド部12においても、それぞれのノズルから吐出する液滴の容量について、複数段階で可変にしてもよい。この場合、例えば、それぞれの容量に対し、複数種類の駆動信号を用意することが考えられる。
【0038】
また、上記のような複数種類の駆動信号を用いてヘッド部12に主走査動作を行わせるために、本例において、主走査駆動部16は、駆動信号選択部32、駆動信号供給部34、及びY移動駆動部36を有する。駆動信号選択部32は、信号電圧設定部の一例であり、ヘッド部12におけるそれぞれのノズルに対して供給する駆動信号の選択を行う。この場合、駆動信号選択部32は、ヘッド部12におけるそれぞれのノズルに対し、例えば制御部22の制御に応じて複数の駆動信号の中のいずれかを選択することで、それぞれのノズルに対して供給する駆動信号を決定する。また、上記においても説明をしたように、本例において、複数種類の駆動信号としては、少なくとも一部の期間における電圧が互いに異なる複数種類の信号を用いる。この場合、それぞれのノズルに対して供給する駆動信号を選択する動作について、駆動信号の電圧を設定する動作等と考えることができる。また、この場合、駆動信号の少なくとも一部の期間における電圧について、互いに異なる複数種類の電圧を設定可能になっていると考えることができる。
【0039】
また、本例において、駆動信号選択部32は、吐出特性が所定の正常範囲にあるノズルに対して供給する駆動信号として、所定の標準の駆動信号(以下、正常時信号という)を選択する。また、ヘッド部12が有するノズル列における所定の位置にある少なくとも一部のノズルに対して供給する駆動信号として、正常時信号以外の駆動信号を選択する。また、この場合、正常時信号以外の駆動信号については、例えば、少なくとも一部の期間の電圧を正常時信号と異ならせた補正電圧の信号等と考えることができる。駆動信号の選択の仕方等については、後に更に詳しく説明をする。
【0040】
駆動信号供給部34は、駆動信号をヘッド部12へ供給する構成である。本例において、駆動信号供給部34は、ヘッド部12におけるそれぞれのノズルに対し、駆動信号選択部32により選択される駆動信号を供給する。また、これにより、駆動信号供給部34は、それぞれのノズルにインクを吐出させる。Y移動駆動部36は、主走査方向へヘッド部12を移動させる構成である。Y移動駆動部36は、例えば図示を省略したレール部材に沿ってヘッド部12を移動させることで、主走査動作時に主走査方向へヘッド部12を移動させる。本例によれば、ヘッド部12に主走査動作を適切に行わせることができる。
【0041】
副走査駆動部18は、ヘッド部12に副走査動作を行わせる駆動部である。この場合、副走査動作については、例えば、主走査方向と直交する副走査方向へインクの吐出対象に対して相対的に移動する動作等と考えることができる。また、副走査動作については、例えば、ヘッド部12に対して相対的に副走査方向へ媒体50を送る動作等と考えることもできる。本例において、副走査駆動部18は、主走査動作の合間にヘッド部12に副走査動作を行わせることで、媒体50においてヘッド部12と対向する領域を変更する。また、副走査方向は、図中のX方向と平行な方向である。ヘッド部12に副走査動作を行わせることについては、例えば、ヘッド部12の少なくとも一部を構成するインクジェットヘッドに副走査動作を行わせること等と考えることもできる。
【0042】
インク供給部20は、ヘッド部12へインクを供給する構成である。本例において、インク供給部20は、インクの色毎に、インク貯留部及びインク流路を有する。この場合、インク貯留部については、例えば、ヘッド部12の外部においてインクを貯留する構成等と考えることができる。インク流路については、例えば、インク貯留部とヘッド部12とを接続する流路等と考えることができる。また、この場合、インク流路の一端はインク貯留部に接続され、他端は、ヘッド部12におけるそれぞれのインク供給ポート204に接続される。これにより、インク供給部20は、インク流路を介して、インク貯留部からヘッド部12へインクを供給する。インク貯留部としては、インクタンクやインクボトル等を好適に用いることができる。インク流路としては、例えば可撓性のチューブ等を好適に用いることができる。
【0043】
制御部22は、例えば印刷装置10のCPUを含む構成であり、印刷装置10の各部の動作を制御する。また、より具体的に、制御部22は、例えば、主走査駆動部16及び副走査駆動部18の動作を制御することで、主走査動作及び副走査動作の制御を行う。また、この場合において、印刷すべき画像を示すデータに基づいてヘッド部12におけるそれぞれのノズルにインクを吐出させることで、媒体50への画像の描画の制御を行う。本例によれば、例えば、媒体50への印刷の動作を適切に行うことができる。
【0044】
また、本例において、制御部22は、更に、駆動信号選択部32及び駆動信号供給部34等の動作を制御することで、ヘッド部12におけるそれぞれのノズルに対して供給する駆動信号の選択を制御する。この場合、それぞれのノズルに対して供給する駆動信号としては、例えば、それぞれのノズルの吐出特性を考慮して選択される駆動信号を用いることが考えられる。このように構成すれば、例えば、ノズルの吐出特性に合わせた駆動信号の供給を適切に行うことができる。また、これにより、例えば、高い品質での印刷を適切に行うことができる。
【0045】
ここで、上記のように、本例においては、少なくとも一部の期間における電圧が互いに異なる複数種類の駆動信号を用いる。そして、この場合、駆動信号供給部34について、例えば、少なくとも一部の期間における電圧が互いに異なる複数種類の駆動信号を出力可能な構成等と考えることができる。また、この場合、駆動信号選択部32の動作について、例えば、インク吐出部102が有するそれぞれのノズル列におけるそれぞれのノズルに対して供給する駆動信号を複数種類の駆動信号の中からノズル毎に選択することで、それぞれのノズルに対して供給する駆動信号における少なくとも一部の期間における電圧を設定していると考えることができる。このように構成すれば、例えば、それぞれのノズルへ供給する駆動信号の電圧を適切に変化させることができる。また、この場合、複数種類の駆動信号としては、3種類以上(例えば、5種類程度)の駆動信号を用いることが好ましい。このように構成すれば、例えば、それぞれのノズルへ供給する駆動信号の電圧を多様かつ適切に変化させることができる。
【0046】
また、上記においても説明をしたように、本例において、印刷装置10は、
図1等に図示した要部の構成以外に、公知の印刷装置と同一又は同様の構成を更に備えてよい。より具体的に、印刷装置10は、図示した構成以外に、例えば、インクの定着手段等を更に備えてよい。この場合、使用するインクの特性に合わせた定着手段を用いることが考えられる。例えば、溶媒を蒸発させることで媒体50に定着するインク(蒸発乾燥型のインク)を用いる場合、定着手段として、ヒータ等の加熱手段を用いることが考えられる。この場合、加熱手段について、例えばプラテン14内に配設すること等が考えられる。また、インクとして紫外線硬化型インクを用いる場合等には、定着手段として、紫外線光源を用いることが考えられる。この場合、紫外線光源については、例えば、ヘッド部12におけるノズル列と主走査方向において隣接する位置に配設すること等が考えられる。
【0047】
続いて、ヘッド部12における各色用ノズル列部202の構成等について、更に詳しく説明をする。
図2は、ヘッド部12における各色用ノズル列部202について更に詳しく説明をする図である。
図2(a)は、ヘッド部12における一組の各色用ノズル列部202及びインク供給ポート204の構成の一例を示す。
図2(b)は、各色用ノズル列部202の一部を拡大して示す拡大図である。この場合、一組の各色用ノズル列部202及びインク供給ポート204とは、一つの各色用ノズル列部202と、その各色用ノズル列部202に対してインクを供給するインク供給ポート204とのことである。
図2(a)に示す各色用ノズル列部202及びインク供給ポート204については、例えば、インク吐出部102(
図1参照)における1色分の各色用ノズル列部202及びインク供給ポート204等と考えることもできる。
【0048】
上記においても説明をしたように、インク吐出部102において、それぞれの色用の各色用ノズル列部202は、複数のノズル列302を有する。また、より具体的に、
図2に図示する構成において、一つの各色用ノズル列部202は、図中でノズル列302a~dとして区別して示すように、4個のノズル列302を有する。この場合、一つの各色用ノズル列部202における複数のノズル列302(ノズル列302a~d)については、例えば、同じ色のインクを吐出する複数のノズル列302等と考えることができる。また、これらの複数のノズル列302については、例えば、同じインク供給ポート204を介してインク供給部20(
図1参照)からインクの供給を受ける同一系統のノズル列等と考えることもできる。また、本例において、ノズル列302a~dのそれぞれにおけるノズル列方向は、副走査方向と平行な方向である。また、ノズル列302a~dのそれぞれにおいて、複数のノズル312は、例えば
図2(b)に示すように、副走査方向における間隔(ノズルピッチ)を一定にして並ぶ。
【0049】
また、一つの各色用ノズル列部202における複数のノズル列302は、一端側をインク供給ポート204に向けて、主走査方向へ並ぶ。そして、この場合、インク供給ポート204を介してインク供給部20(
図1参照)から供給されるインクは、図示を省略した流路(液体流路)により、それぞれのノズル列302におけるそれぞれのノズル312に供給される。この流路は、例えば、それぞれのノズル列302におけるノズル312の並びに沿って形成されることで、ノズル列302の一端側から他端側へインクを流す。また、本例において、それぞれのノズル列302におけるそれぞれのノズル312の位置には、図示を省略した駆動素子が配設されている。そして、この駆動素子は、駆動信号供給部34(
図1参照)から供給される駆動信号に応じて、それぞれのノズル312の位置へ供給されるインクをノズル312から吐出させる。
【0050】
また、
図2(b)に補助的に示した破線とノズル列302a~dのそれぞれにおけるノズル312の位置との関係等から理解できるように、本例においては、複数のノズル列302a~dについて、ノズル312の副走査方向における位置が一つのノズル列302におけるノズルピッチ未満の距離だけ互いにずれるように配設している。この場合、一つのノズル列302におけるノズルピッチについては、例えば、一つのノズル列302(ノズル列302a~dのいずれか)を構成するノズル312の副走査方向における間隔等と考えることができる。また、異なるノズル列302間でのノズル312の副走査方向における位置のずれ量については、ノズルピッチをPとし、一つの各色用ノズル列部202が有するノズル列302の数をnとした場合に、他のノズル列302のノズル312の中で副走査方向において最も近いノズル312との副走査方向における距離がP/nと等しくなるようにすることが考えられる。
【0051】
また、本例において、一つの各色用ノズル列部202が有するノズル列302の並び方については、例えば、複数のノズル列302が有する複数のノズル312について、主走査方向における位置を無視して、副走査方向における位置のみに着目した場合に、副走査方向における間隔をP/nにして並んでいると考えることもできる。また、複数のノズル列302が有する複数のノズル312については、例えば、それぞれのノズル列302における対応するノズル312の位置が副走査方向において重ならないようにした構成等と考えることもできる。それぞれのノズル列302における対応するノズル312ノズルについては、例えば、それぞれのノズル列302において一端側から数えたノズル312の数が同じになる位置のノズル312等と考えることができる。
【0052】
本例によれば、例えば、各色のインクについて主走査方向へ並ぶ複数のノズル列302を用いることで、各回の主走査動作において高い解像度でインクの吐出を行うことができる。また、このような複数のノズル列302を有するインク吐出部102又は各色用ノズル列部202については、例えば、1回の主走査動作で高い解像度でのインクの吐出が可能な高解像度ヘッド等と考えることができる。
【0053】
また、このような構成の複数のノズル列302を用いる場合、例えば、印刷のパス数を少なくした低パスでの印刷の動作を行うことが可能になる。この場合、パス数については、例えば、インクの吐出対象である媒体50と対応する位置をヘッド部が通過する主走査動作の回数等と考えることができる。また、低パスでの印刷時のパス数については、例えば、4以下にすることが考えられる。低パスでの印刷時のパス数は、例えば2以下であってもよい。また、低パスでの印刷時のパス数は、1であってもよい。また、各色用ノズル列部202の構成の変形例においては、複数の各色用ノズル列部202について、対応するノズル列302の副走査方向における位置をずらさずに並べてもよい。この場合も、複数の各色用ノズル列部202を用いることで、例えば、各回の主走査動作においてインクを吐出する吐出位置の解像度について、主走査方向における解像度を高めることができる。また、これにより、例えば、低パスでの印刷を行うことが可能になる。
【0054】
そして、このような低パスでの印刷を行う場合、例えば、各回の主走査動作でのそれぞれのノズル312の使用率が高くなることで、ノズル312の吐出特性の影響が生じやすくなることが考えられる。また、本例のように、多数のノズル312が並ぶノズル列302を用いてインクの吐出を行う場合、インクの流路(インクの供給経路)の構造等の影響で、ノズル列302内の位置によってそれぞれのノズル312からのインクの吐出量に差が生じる場合がある。また、その結果、媒体50に描かれる画像において、周期的な濃度のムラ等が生じる場合がある。より具体的に、本例のように、ヘッド部12の外部から供給されるインクをインク供給ポート204において受けて、インク供給ポート204を介してそれぞれのノズル列302におけるノズル312へインクを供給する場合、例えば、インクが流れる流路においてインク供給ポート204に最も近くなる位置付近のノズル312において異常ノズルが発生しやすくなること等が考えられる。この場合、異常ノズルについては、例えば、吐出特性が正常範囲から外れたノズル等と考えることができる。また、吐出特性が正常範囲から外れることについては、例えば、上記において説明をした正常時信号を供給した場合における吐出特性が所定の正常範囲から外れること等と考えることができる。
【0055】
また、本例のように、同一系統のノズル列302として複数のノズル列302を用いる場合、インク供給ポート204の付近等の特定の位置において異常ノズルが発生しやすくなると、それぞれのノズル列302における異常ノズルの影響が重畳することで、周期的なムラ等の問題が発生しやすくなると考えられる。これに対し、本例においては、上記においても説明をしたように、少なくとも一部の期間における電圧が互いに異なる複数種類の駆動信号を用意しておき、ヘッド部12が有するノズル列302における所定の位置にあるノズル312に対して供給する駆動信号として、正常時信号以外の駆動信号を選択する。このように構成すれば、例えば、異常ノズルへ供給する駆動信号の電圧を変更することで、異常ノズルの吐出特性を補正することができる。また、これにより、例えば、異常ノズルの影響を適切に低減することができる。また、このような動作については、例えば、それぞれのノズル312に対して供給する駆動信号を切り替えることで駆動信号の電圧を変更していると考えることができる。
【0056】
続いて、異常ノズルに対する吐出特性の補正の仕方等について、更に詳しく説明をする。
図3は、ヘッド部12が有する複数の各色用ノズル列部202c~kの構成を簡略化して示す図であり、各色用ノズル列部202c~kのそれぞれが有するそれぞれのノズル列302(
図2参照)におけるそれぞれのノズル312(
図2参照)について、インク供給ポート204(
図1参照)に近い側から数えた順番に着目して、それぞれのノズル312を区別可能に図示している。
【0057】
より具体的に、上記においても説明をしたように、本例において、各色用ノズル列部202c~kのそれぞれは、
図2においてノズル列302a~dと区別して図示をしたように、4個のノズル列302を有する。そのため、
図3においては、各色用ノズル列部202c~kのそれぞれに対し、これらの複数のノズル列302について、文字a~dを付した列により示している。また、
図3においては、それぞれのノズル列302において50個のノズル312が並ぶ場合について、それぞれのノズル列302においてインク供給ポート204に近い側の端のノズル312の番号(ノズル番号)を1とし、反対側の端のノズル312の番号を50として、それぞれのノズル列302における複数のノズル312をマス目によって区別して図示をしている。この場合、各色用ノズル列部202c~kのそれぞれが有するノズル312の数は、4個分のノズル列302の合計により、200個になっている。また、この場合、同じ番号のノズル312が並ぶ行について、それぞれのノズル列302における対応するノズル312の並び等と考えることができる。また、以下においては、
図3と同様にしてそれぞれのノズル列302におけるノズル312を区別して図示しつつ、駆動信号の選択による吐出特性の補正の仕方等について、更に詳しく説明をする。
【0058】
図4は、吐出特性の補正の仕方について説明をする図である。
図4(a)は、吐出特性の補正の仕方の一例を示す。上記においても説明をしたように、多数のノズル312が並ぶノズル列302を用いてインクの吐出を行う場合、それぞれのノズル312からのインクの吐出量について、ノズル列302内の位置によって差が生じる場合がある。例えば、本例のように、ヘッド部12の外部から供給されるインクをインク供給ポート204において受けて、インク供給ポート204を介してそれぞれのノズル列302におけるノズル312へインクを供給する場合、インクが流れる流路においてインク供給ポート204に最も近くなる位置付近のノズル312において異常ノズルが発生しやすくなること等が考えられる。この場合、それぞれのノズル列302の中でインク供給ポート204に近い位置にあるノズル312において、例えば、正常なノズルよりも吐出量が少なくなる異常が生じやすくなること等が考えられる。また、各色用ノズル列部202の構造等によっては、インク供給ポート204に近い位置にあるノズル312において、例えば、正常なノズルよりも吐出量が多くなる異常が生じやすくなること等も考えられる。
【0059】
これに対し、本例においては、図中に示すように、各色用ノズル列部202におけるインク供給ポート204に近い側を補正対象範囲に設定して、補正対象範囲に含まれるノズル312へ供給する駆動信号として、正常時信号以外に駆動信号を選択する。この場合、各色用ノズル列部202に対して補正対象範囲を設定することについては、例えば、各色用ノズル列部202が有するノズル列302に対して補正対象範囲を設定すること等と考えることができる。また、ノズル列302に対して補正対象範囲を設定することについては、例えば、そのノズル列302における一部の範囲を補正対象の範囲に設定すること等と考えることができる。また、ノズル列302における補正対象の範囲については、例えば、その範囲の中から選ばれる少なくとも一部のノズル312に対して吐出特性の補正を行う範囲等と考えることができる。
【0060】
また、上記においても説明をしたように、本例においては、少なくとも一部の期間における電圧が正常時信号と異なる駆動信号を用いることで、吐出特性の補正を行う。この場合、正常時信号と電圧を異ならせる場合の駆動信号については、その駆動信号が供給されるノズル312の吐出特性を補正するように電圧を異ならせることが考えられる。また、ノズル312の吐出特性を補正することについては、例えば、吐出特性を正常範囲に近づけること等と考えることができる。より具体的に、例えば、ノズル列302においてインク供給ポート204に近い位置にあるノズル312について、正常時信号を供給した場合の吐出量が正常範囲よりも小さくなる場合、いずれかの期間において電圧の絶対値が正常時信号よりも大きくなる駆動信号をノズル312へ供給することが考えられる。また、この場合、電圧の絶対値を異ならせる期間としては、例えば、ノズル312から吐出するインクの液滴の容量が変化する期間を設定することが考えられる。このように構成すれば、例えば、ノズル312の吐出特性について、インクの吐出量が大きくなるように適切に補正を行うことができる。また、これにより、例えば、吐出量に生じる誤差(吐出容量差)を適切に低減することができる。また、反対に、ノズル列302においてインク供給ポート204に近い位置にあるノズル312について、正常時信号を供給した場合の吐出量が正常範囲よりも大きくなる場合、いずれかの期間において電圧の絶対値が正常時信号よりも小さくなる駆動信号をノズル312へ供給することが考えられる。このように構成すれば、例えば、ノズル312の吐出特性について、インクの吐出量が小さくなるように適切に補正を行うことができる。
【0061】
ここで、各色用ノズル列部202が有するそれぞれのノズル列302において、インク供給ポート204に近い側に生じる吐出特性の異常は、端部の数個程度(例えば、1~10個程度、特に、1~5個程度)のノズル312において生じやすいと考えられる。そのため、各色用ノズル列部202における補正対象範囲については、例えば、各色用ノズル列部202が有するそれぞれのノズル列302におけるインク供給ポート204に近い側から所定の数(例えば、3~20個程度、好ましくは、5~15個程度)のノズル312が並ぶ範囲等を設定することが考えられる。また、補正対象範囲については、例えば、それぞれの各色用ノズル列部202における全てのノズル列302について同じように設定することが考えられる。このように構成すれば、例えば、補正対象範囲を容易かつ適切に設定することができる。また、これにより、例えば、インク供給ポート204に近い側にあるノズル312に対する吐出特性の補正を容易かつ適切に行うことができる。また、吐出特性の補正を行うことで、例えば、印刷装置10(
図1参照)において、インクの吐出を高い精度で適切に行うことができる。
【0062】
また、補正対象範囲や補正対象のノズル312について、より一般化して考えた場合、インク吐出部102における一部のノズル列302に対してのみ補正対象範囲を設定することや、補正対象範囲における一部のノズル312のみに対して正常時信号以外の駆動信号を供給すること等も考えることができる。そして、この場合、それぞれのノズル312へ供給する駆動信号の選択を行う駆動信号選択部32(
図1参照)の動作に関し、例えば、少なくとも一部ノズル列302においてノズル列302の端付近にある予め設定された数のノズル312のうちの少なくとも一部へ供給する駆動信号について、少なくとも一部の期間における電圧を正常時信号における電圧と異ならせる等と考えることができる。また、この場合、ノズル列302における予め設定された数のノズル312については、例えば、ノズル列302におけるインク供給ポート204に近い一端側に並ぶ複数のノズル312等と考えることができる。このように構成すれば、例えば、インク供給ポート204に近い側にあるノズル312に対する吐出特性の補正を適切に行うことができる。
【0063】
また、この場合、駆動信号選択部32は、共通のインク供給ポート204を介してインクが供給される複数のノズル列302の全てにおいて、予め設定された数のノズルのうちの少なくとも一部へ供給する駆動信号について、少なくとも一部の期間における電圧を正常時信号における電圧と異ならせることが好ましい。このように構成すれば、例えば、インク供給ポート204に近い側にあるノズル312に対する吐出特性の補正をより適切に行うことができる。
【0064】
また、補正対象範囲内の一部のノズル312に対してのみ正常時信号以外の駆動信号を供給する場合、例えば、それぞれのノズル312の吐出特性を個別に確認して、それぞれのノズル312に対して供給する駆動信号を決定することが考えられる。このように構成すれば、例えば、吐出特性の補正を高い精度で適切に行うことができる。しかし、この場合、それぞれのノズル312の吐出特性を個別に確認することが必要になるため、吐出特性を確認するための作業に要する手間や時間等が大きく増大すること等も考えられる。これに対し、ノズル312の吐出特性の補正については、必ずしも一つのノズル312単位で厳密に補正を行わなくても、周辺のノズル312を含む範囲での平均の吐出量に着目して行うこと等も考えられる。そして、この場合、例えば、個別のノズル312の吐出特性については必ずしも厳密に考慮せずに、正常時信号以外の駆動信号を供給するノズル312として、例えば
図4(b)に示すように、予め設定されている一部のノズル312のみを選択すること等も考えられる。
【0065】
図4(b)は、吐出特性の補正の仕方の他の例を示す図であり、補正対象範囲の中の一部のノズル312のみを選択して正常時信号以外の駆動信号を供給する場合の例を示す。また、より具体的に、図示した例においては、それぞれのノズル列302に対してインク供給ポート204に近い側に設定する補正対象範囲のうち、濃い色の網掛け模様を付けて示すノズル312のみに対し、正常時信号以外の駆動信号を供給する。この場合、濃い色の網掛け模様を付けていないノズル312に対しては、正常時信号を供給することで、インクの吐出を行わせる。このように構成した場合も、例えば、補正対象領域における平均的な吐出特性について、正常範囲に近づける補正を適切に行うことができる。また、これにより、例えば、異常ノズルの影響を適切に抑えることができる。また、この場合、正常時信号以外の駆動信号を供給するノズル312を予め決めておくことで、例えば一つのノズル312単位で厳密に補正を行う場合等と比べ、より容易に吐出特性の補正を行うことができる。
【0066】
ここで、
図4(b)に示す場合においても、補正対象範囲においてノズル列302に連続して並ぶ複数のノズル312について、インクの流路方向でインク供給ポート204に近い側にある予め設定された数のノズル312等と考えることができる。また、この場合、駆動信号選択部32の動作に関し、例えば、少なくとも一部のノズル列302において、予め設定された数のノズル312のうちの一部へ供給する駆動信号のみについて、少なくとも一部の期間における電圧を正常時信号における電圧と異ならせていると考えることができる。
【0067】
また、駆動信号の電圧を変更することで吐出特性の補正を行う場合、補正の行い方によっては、補正を行った箇所がかえって目立つこと等も考えられる。例えば、本例のように、インクジェット方式で印刷を行う印刷装置10において、異常ノズルの吐出特性の補正を行う場合、補正を行ったノズル312と補正を行っていないノズル312との境界部分で吐出後の状態に差が生じて、意図しない縞(印刷ムラ)等が印刷結果において生じること等も考えられる。また、このような問題は、近接した位置にある多くの数のノズル312に対して吐出特性の補正を行う場合に生じやすくなること等が考えられる。また、この場合、例えば、ノズル列302において連続して並ぶある程度以上の数の複数のノズル312に対して補正を行う場合に生じやすくなると考えられる。
【0068】
これに対し、例えば
図4(b)に示す例のように、補正対象範囲においてノズル列302に連続して並ぶ複数のノズル312の一部を選択して吐出特性の補正を行う場合、近接した位置にあるノズル312の中で補正の対象とするノズル312の数が少なくなることで、補正を行った箇所が目立つことを適切に防ぐことができる。そのため、このように構成すれば、例えば、吐出特性の補正を行うことで意図しない縞の発生等を適切に防ぐことができる。
【0069】
また、より具体的に、
図4(b)に示す例においては、正常時信号以外の駆動信号を供給するノズル312の選択について、補正対象のノズル312の位置が分散するように、予め設定された数のノズル312を選択している。この場合、ノズル312の位置が十分に分散していれば、補正対象範囲の一部において、隣接して並ぶノズル312を選択してもよい。また、予め設定されたノズル312については、例えばランダムな選択等で任意に選択を行ってもよい。また、必要に応じて、例えば、隣接して並ぶノズル312が選択されないように、補正対象のノズル312を選択すること等も考えられる。
【0070】
また、この場合、正常時信号以外の駆動信号を供給するノズル312については、上記においても説明をしたように、予め設定されている一部のノズル312を選択することが考えられる。また、この場合、選択されたノズル312に対して供給する駆動信号については、テストパターンを印刷すること等で確認されるノズル312の吐出特性に応じて選択することが考えられる。より具体的に、この場合、例えば、選択されるそれぞれのノズル312に対応する位置の近辺での吐出量の過不足等をテストパターンの印刷結果から推測して、それぞれのノズル312に対して供給する駆動信号を決定すること等が考えられる。このように構成すれば、例えば、補正対象範囲内の各位置に対し、吐出特性の補正を容易かつ適切に行うことができる。
【0071】
また、印刷に求められる精度等によっては、補正対象範囲の全体での吐出特性に着目して、補正対象範囲の全体を単位にして、選択したノズル312へ供給する駆動信号を決定してもよい。この場合、例えば、補正対象範囲において選択されるノズル312に対し、正常時信号以外の共通の駆動信号を供給することが考えられる。この場合、共通の駆動信号を供給することについては、例えば、上記において説明をした複数種類の駆動信号から選択されるいずれかの1種類の駆動信号を供給すること等と考えることができる。また、このようにして共通の駆動信号を供給する動作については、例えば、第1範囲402及び第2範囲404に含まれるノズル312のうち、正常時信号と異なる駆動信号を供給する全てのノズル312に対して共通の駆動信号を供給する動作等と考えることもできる。また、共通の駆動信号については、例えば、正常時信号と電圧を異ならせる期間における電圧が等しい駆動信号等と考えることもできる。このように構成すれば、例えば、補正対象範囲に対する補正の強度について、容易かつ適切に調整することができる。
【0072】
また、補正を行った箇所が目立つことをより適切に防ぐためには、例えば
図5に示すように、ノズル列302に対して補正対象の範囲を複数設定して、補正の強さを徐々に変化させること等も考えられる。
図5は、吐出特性の補正の仕方の更なる他の例を示す。また、
図5においても、
図3及び
図4と同様にして、各色用ノズル列部202について、それぞれのノズル列302(
図2参照)におけるノズル312(
図2参照)をマス目によって区別して図示している。また、
図4と同様に、正常時信号以外の駆動信号を供給するノズル312に対し、濃い色の網掛け模様を付けて示している。
図5(a)は、一つのノズル列302に対して補正対象の範囲を2つ設定する場合の例を示す図であり、第1及び第2の範囲の一例である第1範囲402及び第2範囲404を設定して吐出特性の補正を行う例を示す。この場合、第1範囲402及び第2範囲404のそれぞれは、各色用ノズル列部202が有するノズル列302において複数のノズル312が連続して並ぶ範囲である。
【0073】
また、より具体的に、この場合、インクの流路方向でインク供給ポート204(
図2参照)に近い側にある予め設定された数のノズル312に対応する範囲を第1範囲402に設定し、その隣に第2範囲404を設定する。第1範囲402については、例えば、
図4に示した例における補正対象範囲に対応する補正対象の範囲等と考えることができる。また、第2範囲404については、例えば、第1範囲402が目立つことを避けるために設定する補正対象の範囲等と考えることができる。また、第1範囲402及び第2範囲404について、より一般化して考えた場合、第1範囲402については、例えば、少なくとも一部のノズル列302における予め設定された数のノズル312が並ぶ範囲等と考えることができる。第2範囲404については、例えば、ノズル312において第1範囲402と隣接し、かつ、第1範囲402よりもノズル列302の端から遠い側でノズル312における所定の一部のノズル312が並ぶ範囲等と考えることができる。また、この場合、第1範囲402よりもノズル列302の端から遠い側については、例えば、第1範囲402よりもインク供給ポート204から遠い側等と考えることもできる。
【0074】
また、この場合、印刷装置10(
図1参照)では、第1範囲402及び第2範囲404に含まれるノズル312の少なくとも一部のノズル312に対して吐出特性の補正を行い、かつ、第2範囲404については、第1範囲402よりも補正の影響が小さくなるように吐出特性の補正を行う。このように構成すれば、吐出特性の補正を行わないノズル312が並ぶ範囲(第1範囲402及び第2範囲404以外の部分)と第1範囲402との間に第2範囲404を挟むことで、例えば、補正を行った箇所と行わなかった箇所との境界を曖昧にして、吐出特性の補正の影響が目立つこと等をより適切に防ぐことができる。
【0075】
また、より具体的に、
図5に図示する場合においては、例えば図中に示すように、第1範囲402及び第2範囲404のそれぞれについて、それぞれの範囲における一部のノズル312を選択して、選択したノズル312に対し、正常時信号以外の駆動信号を供給する。また、それぞれの範囲において正常時信号以外の駆動信号を供給するノズル312として選択するノズル312の割合について、第2範囲404における割合を第1範囲402における割合よりも小さくする。このように構成すれば、例えば、ノズル312に対して補正対象の範囲を複数設定して、補正の強さを徐々に変化させることができる。また、これにより、例えば、吐出特性の補正の影響が目立つこと等をより適切に防ぐことができる。
【0076】
ここで、このような補正の動作については、例えば、駆動信号選択部32(
図1参照)の動作に着目して、より一般化して考えることもできる。この場合、駆動信号選択部32の動作に関し、例えば、少なくとも一部のノズル列302において、第1範囲402に含まれるノズル312の少なくとも一部へ供給する駆動信号について、少なくとも一部の期間における電圧を正常時信号における電圧と異ならせていると考えることができる。また、第2範囲404に含まれるノズル312の一部へ供給する駆動信号についても、少なくとも一部の期間における電圧を正常時信号における電圧と異ならせていると考えることができる。そして、この場合において、駆動信号選択部32の動作に関し、更に、例えば、少なくとも一部の期間における電圧を正常時信号における電圧と異ならせるノズル312の割合について、第2範囲404における割合を第1範囲402における割合よりも小さくしていると考えることができる。
【0077】
また、
図5に示す場合において、第1範囲402及び第2範囲404のそれぞれは、それぞれのノズル列302において連続して並ぶ10個のノズル312を含む範囲である。第1範囲402及び第2範囲404において一つのノズル列302の中で並ぶノズル312の個数については、例えば5~15個程度にすることが考えられる。また、上記においても説明をしたように、第2範囲404については、例えば、第1範囲402が目立つことを避けるために設定する補正対象の範囲等と考えることができる。そして、この場合、第2範囲404として、異常ノズルを含まない範囲を設定すること等も考えられる。この場合、第2範囲404に含まれるノズル312に対して正常時信号以外の駆動信号を供給する動作については、例えば、第1範囲402を目立ちにくくするために行う吐出特性の補正の動作等と考えることができる。
【0078】
また、ノズル列302に対して設定する補正対象の範囲については、例えば
図5(b)に示すように、3個以上にしてもよい。
図5(b)は、一つのノズル列302に対して補正対象の範囲を3つ設定する場合の例を示す図であり、第3の範囲の一例である第3範囲406を第1範囲402及び第2範囲404に加えて更に設定して吐出特性の補正を行う例を示す。この場合、第3範囲406も、第1範囲402及び第2範囲404と同様に、各色用ノズル列部202が有するノズル列302において複数のノズル312が連続して並ぶ範囲である。また、第3範囲406については、例えば、ノズル列302において第2範囲404と隣接し、かつ、第2範囲404よりもノズル列302の端から遠い側でノズル列302における所定の一部のノズルが並ぶ範囲等と考えることができる。また、第3範囲406については、例えば、第2範囲404に対する第1範囲402と反対側の範囲等と考えることもできる。また、第3範囲406においてノズル312が並ぶ個数については、例えば、第1範囲402及び第2範囲404と同程度にすることが考えられる。
【0079】
そして、この場合、それぞれの範囲に対する補正の強さについて、第1範囲402から離れるに従って補正の強さを徐々に小さくすることが考えられる。より具体的に、
図5(b)に示す場合においては、それぞれの範囲において正常時信号以外の駆動信号を供給するノズル312として選択するノズル312の割合について、第2範囲404における割合を第1範囲402における割合よりも小さくし、第3範囲406における割合を第2範囲404における割合よりも小さくしている。このように構成すれば、例えば、補正対象の複数の範囲について、補正の強さを徐々に変化させることができる。また、これにより、例えば、吐出特性の補正の影響が目立つこと等をより適切に防ぐことができる。
【0080】
また、このような補正の動作に関し、駆動信号選択部32の動作に着目して、より一般化して考えた場合、例えば、
図5(a)に示す場合の動作に加え、少なくとも一部のノズル列302において、第3範囲406に含まれるノズル312の一部へ供給する駆動信号についても、少なくとも一部の期間における電圧を正常時信号における電圧と異ならせていると考えることができる。そして、この場合において、駆動信号選択部32の動作に関し、更に、例えば、少なくとも一部の期間における電圧を正常時信号における電圧と異ならせるノズル312の割合について、第3範囲406における割合を第2範囲404における割合よりも小さくしていると考えることができる。
【0081】
また、ノズル列302に対して設定する補正対象の範囲としては、更に多くの範囲を設定してもよい。この場合、例えば、第4の範囲等を更に設定すること等が考えられる。また、この場合、これらの範囲については、例えばノズル列302における他の範囲と隣接し、かつ、当該他の範囲よりもノズル列302の端から遠い側でノズル列302における所定の一部のノズル312が並ぶ範囲等と考えることができる。また、この場合、駆動信号選択部32の動作に関し、例えば、少なくとも一部の期間における電圧を正常時信号における電圧と異ならせるノズル312の割合について、第1範囲402からより遠い範囲における割合をより小さくする等と考えることができる。このように構成すれば、例えば、吐出特性の補正の影響が目立つこと等をより適切に防ぐことができる。
【0082】
続いて、上記において説明をした各構成に関する補足説明等を行う。また、以下においては、説明の便宜上、上記において説明をした各構成をまとめて、本例という。上記においては、主に、ノズル列302においてインク供給ポート204に近い側で生じる吐出特性の異常に着目して、吐出特性の補正の仕方の例を説明した。この場合、ノズル列302においてインク供給ポート204に近い側で生じる吐出特性の異常については、例えば、各色用ノズル列部202の構造等に起因して生じる吐出特性の異常の例等と考えることができる。また、このような吐出特性の異常については、例えば、装置に固有の異常等と考えることもできる。そして、このような吐出特性の異常については、異常が生じやすい箇所が決まっているため、本例のように、予め設定されているノズル312を選択して吐出特性の補正を行うことが有効である。
【0083】
また、上記においても説明をしたように、本例において、補正対象範囲において補正の対象として選択するノズル312に対しては、例えば、共通の駆動信号を供給する。また、補正対象範囲として複数の範囲(第1範囲402及び第2範囲404等)を設定する場合、複数の範囲の中で選択される補正対象の全てのノズル312に対し、共通の駆動信号を供給することが考えられる。より具体的に、この場合、第1範囲402において補正の対象として選択されるノズル312と、第2範囲404において補正の対象として選択されるノズル312とに対し、共通の駆動信号を供給することが考えられる。このように構成すれば、例えば、第1範囲402及び第2範囲404等の複数の範囲に対する補正の強度について、容易かつ適切に調整することができる。また、この場合、例えば、それぞれの範囲において補正の対象として選択するノズル312の個数を互いに異ならせることで、範囲毎の補正の強度を容易かつ適切に異ならせることができる。
【0084】
また、上記の説明等から理解できるように、第1範囲402及び第2範囲404等の補正対象範囲の設定の仕方や、補正の対象として選択するノズル312の選択の仕方等については、求められる印刷の品質や印刷装置10の具体的な構成等に応じて、様々に変更することが可能である。例えば、補正対象のノズル312の選択については、
図6(a)に示すように行うこと等も考えられる。
図6は、吐出特性の補正の仕方に関する補足説明用の図である。
図6(a)、(b)は、補正対象のノズル312の選択の仕方の変形例を示す。
【0085】
図6(a)に示す場合においては、第1範囲402及び第2範囲404のそれぞれとして、それぞれのノズル列302において連続して並ぶ5個のノズル312を含む範囲を設定している。この場合、第1範囲402及び第2範囲404のそれぞれについて、4個のノズル列302における20個のノズル312を含む範囲等と考えることができる。また、図示した場合においては、第1範囲402における補正対象のノズル312として、20個のノズル312のうちの8個のノズル312を選択している。また、第2範囲404における補正対象のノズル312として、20個のノズル312のうちの5個のノズル312を選択している。このように構成した場合も、例えば、補正を行った箇所が目立つことを防ぎつつ、吐出特性の補正を適切に行うことができる。
【0086】
また、各色用ノズル列部202の構造等によっては、ノズル列302においてインク供給ポート204に近い側以外において、構造等に起因する吐出特性の異常が生じること等も考えられる。例えば、ノズル列302においてインク供給ポート204から遠い側の端部付近において、吐出特性の異常が生じやすくなること等も考えられる。このような場合も、例えば吐出特性の異常が生じやすくなる位置に合わせて補正対象の範囲や補正対象のノズル312を設定することで、上記と同様にして吐出特性の補正を行うことができる。また、このような場合も、例えば、ノズル列302に対して補正対象の範囲を複数設定して、補正の強さを徐々に変化させることで、吐出特性の補正の影響が目立つこと等を適切に防ぐことができる。
【0087】
また、吐出特性の異常については、例えば、それぞれのノズル列302の両方の端の付近で生じやすくなること等も考えられる。この場合、それぞれのノズル列302の両方の端付近のノズル312に対し、上記と同様にして吐出特性の補正を行うことが考えられる。また、吐出特性の異常については、ノズル列302の端付近以外の位置において生じやすくなること等も考えられる。例えば、各色用ノズル列部202の構造等によっては、吐出特性の異常について、それぞれのノズル列302の中央付近において生じやすくなること等も考えられる。この場合、それぞれのノズル列302の中央付近のノズル312に対し、上記と同様にして吐出特性の補正を行うことが考えられる。また、吐出特性の異常については、端と中央との間において生じやすくなること等も考えられる。
【0088】
そして、ノズル列302の端付近以外の位置において吐出特性の異常が生じやすい場合、吐出特性の異常が生じやすい位置を補正の中心に設定して、例えば
図6(b)に示すように吐出特性の補正を行うことが考えられる。より具体的に、
図6(b)に示す場合においては、ノズル列302の端以外の所定の位置に第1範囲402を設定して、ノズル列方向における第1範囲402の両隣に第2範囲404を設定している。また、この場合も、第1範囲402及び第2範囲404のそれぞれについて、4個のノズル列302における20個のノズル312を含む範囲等と考えることができる。また、第1範囲402及び第2範囲404に対する補正の強度については、
図6(a)に示す第1範囲402及び第2範囲404に対する補正の強度と同じにしている。このように構成した場合も、例えば、補正を行った箇所が目立つことを防ぎつつ、吐出特性の補正を適切に行うことができる。また、このような構成については、例えば、ノズル列302における所定の位置を補正の中心として、ノズル列方向におけるこの中心の両側へ徐々に補正の強度を変化させる構成等と考えることもできる。
【0089】
また、上記においては、主に、ノズル列302のいずれかの端の側にインク供給ポート204を配設して、ノズル列302の一端側から他端側へインクが流れる場合の構成について、説明をした。しかし、インク吐出部102の構成の変形例においては、例えば、インク供給ポート204からノズル列302へのインクの供給について、ノズル列302の端以外の位置(例えば、ノズル列302の中央部付近等)で行うこと等も考えられる。この場合、ノズル列302の端以外の位置でインク供給ポート204からノズル列302へインクの供給を行うことについては、例えば、インク供給ポート204からノズル列302の各位置へ供給されるインクが流れる方向においてノズル列302の端以外の位置がノズル列302における最上流の位置になること等と考えることができる。また、この場合、インク供給ポート204について、ノズル列302の端以外の位置の付近に配設することが考えられる。そして、このようにしてノズル列302へのインクの供給を行う場合、例えば、ノズル列302の端付近以外の位置において吐出特性の異常が生じやすくなることが考えられる。これに対し、このような場合にも、例えば
図6(b)に示すように吐出特性の補正を行うことで、補正を行った箇所が目立つことを防ぎつつ、吐出特性の補正を適切に行うことができる。
【0090】
また、ノズル312の吐出特性の異常としては、構造等に起因して生じる装置に固有の異常以外に、個々のノズル312の微細な形状のバラツキ等が原因で生じる異常(以下、バラツキ要因の異常という)も考えられる。そして、この場合、このような吐出特性の異常に対しても、吐出特性の補正を行うことが好ましい。より具体的に、この場合、ノズル列302における特定の位置(例えば、インク供給ポート204に近い側等)で生じる吐出特性の異常に対して予め設定されているノズル312を選択して吐出特性の補正を行うことに加え、例えば公知の方法と同一又は同様にして、バラツキ要因の異常に対する補正を行うことが考えられる。また、この場合、バラツキ要因の異常に対する補正については、例えば、異常ノズルを特定して、そのノズル312へ供給する駆動信号として正常時信号以外の駆動信号を用いることで行うこと等が考えられる。また、バラツキ要因の異常に対する補正については、駆動信号の変更以外の方法で行うこと等も考えられる。この場合、例えば、異常ノズルにおいて本来インクを吐出する位置に対して代わりにインクを吐出する代替ノズルを設定して、異常ノズルを使用せずに印刷を行うこと等が考えられる。
【0091】
また、上記においても説明をしたように、本例においては、複数のノズル列302を有する各色用ノズル列部202を用いることで、印刷のパス数を少なくした低パスでの印刷の動作を行うことが可能になる。また、上記のようにしてノズル312の吐出特性の補正を行うことで、低パスでの印刷時においても、異常ノズルの影響を適切に低減することができる。そのため、本例の印刷装置10(
図1参照)については、例えば、高速な印刷が求められる用途に対して好適に用いることができる。より具体的に、印刷装置10については、例えば、昇華転写印刷の用途等に好適に用いることができる。また、この場合、印刷対象の媒体としては、例えば転写媒体を用いることが考えられる。
【0092】
また、上記においては、印刷装置10について、主に、媒体に対してインクを吐出する場合の構成を説明した。この場合、印刷装置10について、上記においても説明をしたように、媒体上に2次元の画像を描くインクジェットプリンタ等と考えることができる。また、印刷装置10の変形例においては、印刷装置10として、インクジェット方式で立体的な造形物を造形する3Dプリンタ(3D印刷装置)等を用いることも考えられる。この場合、印刷装置10について、例えば、液体吐出装置の一例となる造形装置等と考えることもできる。また、この場合、インクジェット方式でノズルから吐出するインクについて、例えば、造形に用いる機能性な液体等と考えることができる。また、この場合、造形中の造形物を支持する造形台や、造形中の造形物について、インクを吐出する対象と考えることができる。この場合も、上記と同様にして吐出特性の補正等を行うことで、高い精度でのインクの吐出を行うことができる。また、これにより、例えば、高い品質で造形物の造形を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明は、液体吐出装置に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0094】
10・・・印刷装置、12・・・ヘッド部、14・・・プラテン、16・・・主走査駆動部、18・・・副走査駆動部、20・・・インク供給部、22・・・制御部、32・・・駆動信号選択部、34・・・駆動信号供給部、36・・・Y移動駆動部、50・・・媒体、102・・・インク吐出部、202・・・各色用ノズル列部、204・・・インク供給ポート、302・・・ノズル列、312・・・ノズル、402・・・第1範囲、404・・・第2範囲、406・・・第3範囲