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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】撮像ユニットおよび撮像装置
(51)【国際特許分類】
   G03B 17/02 20210101AFI20240408BHJP
   G02B 7/02 20210101ALI20240408BHJP
   G03B 5/08 20210101ALI20240408BHJP
   H04N 23/52 20230101ALI20240408BHJP
   H04N 23/57 20230101ALI20240408BHJP
   H04N 25/00 20230101ALI20240408BHJP
【FI】
G03B17/02
G02B7/02 Z
G03B5/08
H04N23/52
H04N23/57
H04N25/00
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020025077
(22)【出願日】2020-02-18
(65)【公開番号】P2021131409
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2023-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110412
【弁理士】
【氏名又は名称】藤元 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100104628
【弁理士】
【氏名又は名称】水本 敦也
(74)【代理人】
【識別番号】100121614
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 倫也
(72)【発明者】
【氏名】浦上 俊史
【審査官】越河 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-034070(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0193545(US,A1)
【文献】特開2019-145929(JP,A)
【文献】特開2013-005047(JP,A)
【文献】特開2014-197769(JP,A)
【文献】特開2012-095177(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0047775(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 17/02
G02B 7/02-7/16
G03B 5/00-5/08
H04N 23/52
H04N 23/57
H04N 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長辺と短辺を有する基板における第1の基板面にセンサチップが実装され、該第1の基板面とは反対側の第2の基板面に複数の電子部品が実装された撮像素子と、
開口部が形成され、前記撮像素子を保持する保持部材とを有し、
前記開口部は、前記基板の短辺に平行な内面を有し、
前記保持部材の線膨張係数が、前記基板の線膨張係数より大きく、
前記撮像素子が前記保持部材に対して、前記内面と前記基板の前記第2の基板面における前記複数の電子部品より外側の接着領域とに接触する接着剤により固定されていることを特徴とする撮像ユニット。
【請求項2】
前記接着剤が、前記内面および前記接着領域に連続した線状に接触していることを特徴とする請求項1に記載の撮像ユニット。
【請求項3】
長辺と短辺を有する基板における第1の基板面にセンサチップが実装され、該第1の基板面とは反対側の第2の基板面に複数の電子部品が実装された撮像素子と、
開口部が形成され、前記撮像素子を保持する保持部材とを有し、
前記開口部は、前記基板の短辺に平行な内面を有し、
前記撮像素子が前記保持部材に対して、前記内面と前記基板の前記第2の基板面における前記複数の電子部品より外側の接着領域とに接触する接着剤により固定されており、
前記短辺に平行な方向において、前記内面上での前記接着剤の長さが前記センサチップの長さ以上であることを特徴とする撮像ユニット。
【請求項4】
長辺と短辺を有する基板における第1の基板面にセンサチップが実装され、該第1の基板面とは反対側の第2の基板面に複数の電子部品が実装された撮像素子と、
開口部が形成され、前記撮像素子を保持する保持部材とを有し、
前記開口部は、前記基板の短辺に平行な内面を有し、
前記撮像素子が前記保持部材に対して、前記内面と前記基板の前記第2の基板面における前記複数の電子部品より外側の接着領域とに接触する接着剤により固定され、
前記第2の基板面の前記接着領域に、凹凸形状が設けられていることを特徴とする撮像ユニット。
【請求項5】
長辺と短辺を有する基板における第1の基板面にセンサチップが実装され、該第1の基板面とは反対側の第2の基板面に複数の電子部品が実装された撮像素子と、
開口部が形成され、前記撮像素子を保持する保持部材とを有し、
前記開口部は、前記基板の短辺に平行な内面を有し、
前記撮像素子が前記保持部材に対して、前記内面と前記基板の前記第2の基板面における前記複数の電子部品より外側の接着領域とに接触する接着剤により固定され、
前記第2の基板面の前記接着領域に、金属部が設けられていることを特徴とする撮像ユニット。
【請求項6】
長辺と短辺を有する基板における第1の基板面にセンサチップが実装され、該第1の基板面とは反対側の第2の基板面に複数の電子部品が実装された撮像素子と、
開口部が形成され、前記撮像素子を保持する保持部材とを有し、
前記開口部は、前記基板の短辺に平行な内面を有し、
前記撮像素子が前記保持部材に対して、前記内面と前記基板の前記第2の基板面における前記複数の電子部品より外側の接着領域とに接触する接着剤により固定され、
前記開口部の前記内面が、該開口部の開口方向に対して傾いたテーパ面であることを特徴とする撮像ユニット。
【請求項7】
前記基板の前記第1の基板面における前記センサチップの外周と前記保持部材の基板側の面における前記基板の外周とに接着され、前記センサチップを覆うカバー部材を支持する枠部材を有することを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の撮像ユニット。
【請求項8】
前記保持部材を支持する部材が、前記短辺に平行な方向における前記基板の一方の長辺より外側の少なくとも1か所と他方の長辺より外側の少なくとも1か所を含む3か所に配置されていることを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の撮像ユニット。
【請求項9】
前記保持部材を、前記長辺および前記短辺に平行な面内で移動させるアクチュエータを有することを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の撮像ユニット。
【請求項10】
請求項1からのいずれか一項に記載の撮像ユニットと、
該撮像ユニットを保持する本体とを有することを特徴とする撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルカメラや携帯端末等の撮像装置に好適な撮像ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
撮像装置には、CCDセンサやCMOSセンサ等の撮像素子を保持部材に接着により固定して撮像ユニットを形成し、該撮像ユニットを撮像装置の本体に固定するものがある。特許文献1には、保持部材(固定部材)に設けられた開口部に接着剤を流し込むことで、該開口部を覆うように配置された撮像素子を保持部材に固定する構造が開示されている。
一方、撮像素子として、セラミックパッケージに設けられた凹部(キャビティ)内にシリコン基板等からなるセンサチップを実装する従来タイプのものに加えて、特許文献2に開示されているようにガラスエポキシ等で形成されたプリント基板上にセンサチップを直接実装する、いわゆるパッケージレス構造のものが用いられるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-227673号公報
【文献】特開2015-012211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、パッケージレス構造の撮像素子を保持部材に接着する場合、プリント基板の線膨張係数がセラミックのそれよりも大きく、またプリント基板の剛性がセラミックのそれよりも低いために、温度変化による撮像素子のピント方向(光軸方向)での変形量が大きくなり易い。しかも、プリント基板上にはセンサチップを駆動するための様々な回路素子が実装されているため、保持部材によるプリント基板の接着保持強度を確保するために接着領域を増やすことが困難である。
本発明は、パッケージレス構造の撮像素子と保持部材との十分な接着保持強度を確保しつつ、温度変化による撮像素子のピント方向での変形を抑制することができるようにした撮像ユニットを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一側面としての撮像ユニットは、長辺と短辺を有する基板における第1の基板面にセンサチップが実装され、該第1の基板面とは反対側の第2の基板面に複数の電子部品が実装された撮像素子と、開口部が形成され、撮像素子を保持する保持部材とを有する。開口部は基板の短辺に平行な内面を有し、保持部材の線膨張係数が、基板の線膨張係数より大きく、撮像素子が保持部材に対して、上記内面と基板の第2の基板面における複数の電子部品より外側の接着領域とに接触する接着剤により固定されていることを特徴とする。なお、上記撮像ユニットを備えた各種撮像装置も、本発明の他の一側面を構成する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、パッケージレス構造の撮像素子と保持部材との十分な接着保持強度を確保しつつ、温度変化による撮像素子のピント方向での変形を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施例1であるカメラにおけるマウント部、本体ベースおよび撮像ユニットを示す分解斜視図。
図2】上記撮像ユニットの分解斜視図。
図3】上記撮像ユニットの背面図。
図4図3のA-A線での断面を示す断面図。
図5】実施例1におけるシフトホルダの支持位置と撮像基板との関係を示す図。
図6】実施例1におけるシフトホルダと撮像基板の熱歪みを示す図。
図7】上記撮像ユニットの別の背面図。
図8】本発明の実施例2における撮像ユニットを示す断面図。
図9】本発明の実施例3における撮像ユニットを示す断面図。
図10】本発明の実施例4における撮像ユニットを示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0009】
図1は、本発明の実施例1である撮像ユニット400を備えた撮像装置としてのレンズ交換型カメラ(以下、単にカメラという)100の一部を分解して示している。図1は、撮像ユニット400、マウント部20とおよび本体ベース30を示している。また図2は、撮像ユニット400を分解して示している。図1および図2において、一点鎖線はレンズユニットから撮像ユニット400に至る光軸を示す。
マウント部20には、不図示のレンズユニットを着脱可能に装着することができる。本体ベース30はカメラ100の筐体であり、該本体ベース30にカメラ100の様々な構成部品が取り付けられる。本体ベース30の前面(被写体側の面)にはマウント部20が取り付けられる。また本体ベース30の後部(撮像素子側)には撮像ユニット400が取り付けられる。さらに本体ベース30には、カメラ100の不図示の外装カバー、シャッタユニットおよび電気基板等も取り付けられる。
撮像ユニット400は、撮像素子430を有する。撮像素子430は、CMOSセンサやCCDセンサ等を用いたイメージセンサであり、レンズユニットにより形成された光学像としての被写体像を撮像(光電変換)して画像信号を出力する。撮像ユニット400は、マウント部20におけるレンズユニットの取付け基準面であるマウント面から撮像素子430の撮像面までの距離が所定距離となり、かつマウント面と撮像面が平行となるように、調整バネ50を挟んで本体ベース30にビスにより固定される。
図2を用いて、撮像ユニット400の構成をさらに詳しく説明する。図2では、光軸をZ軸とし、+Z方向を前側とする。また、Z軸に直交する水平軸をX軸とし、Z軸とX軸に直交する垂直軸をY軸とする。撮像ユニット400は、X軸が延びるX方向、Y軸が延びるY方向およびZ軸回り方向の像振れを抑制するために、撮像素子430をX方向およびY方向に移動(シフト)させ、Z軸回り方向に回転(ロール)させることが可能である。
撮像素子430の前面(撮像面)には、光学ローパスフィルタ410が貼り付けられる。光学ローパスフィルタ410は、1枚の水晶からなる矩形の複屈折板である。
【0010】
撮像素子430の後側に配置された保持部材としてのシフトホルダ420は、開口部421を有し、該開口部421の前面を覆うように配置された撮像素子430を保持する。シフトホルダ420は、シフトベース440に対してX方向およびY方向にシフト可能に、かつZ軸回り方向にロール可能に支持される。撮像素子430は、シフトホルダ420の開口部421の左右において接着により固定される。撮像素子430とシフトホルダ420は、可動部を構成する。
シフトベース440は、シフトホルダ420の後側に配置され、後述するフロントベース450とともに撮像ユニット400のベース部材を構成する。フロントベース450は、シフトホルダ420および撮像素子430の前側に配置され、前側から見てL字形状を有する部材であり、シフトベース440に一体に結合されている。シフトベース440とフロントベース450は、鉄等の軟磁性体で形成されている。シフトベース440は、前述した本体ベース30に調整バネ50を介してビスにより固定される。
【0011】
X駆動コイル460aとY駆動コイル460b,460cは、不図示のフレキシブル基板に半田付けされてシフトホルダ420に接着により固定される。X駆動コイル460aは前側から見て撮像素子430の右側に配置され、Y駆動コイル460b,460cは撮像素子430の下側において光軸を通るYZ面に関して対称に配置されている。
【0012】
X磁石470aとY磁石470b,470cは、シフトベース440に接着により固定されている。X磁石470aはX方向に並んだN極とS極を有する永久磁石であり、Y磁石470b,470cはY方向に並んだN極とS極を有する永久磁石である。これら磁石470a,470b,470cはそれぞれ、駆動コイル460a,460b,460cに対向するように配置される。
【0013】
複数(本実施例では3つ)の転動部材としてのボール490は、シフトホルダ420とシフトベース440との間に配置され、シフトベース440に設けられたボール保持穴部441a,441b,441cにより保持され、シフトホルダ420に設けられたボール受け面422a,422b,422cに当接している。シフトホルダ420は不図示の磁気吸引部材または弾性部材によってシフトベース440に向けて付勢される。これにより、シフトホルダ420とシフトベース440は、それらの間に各ボール490を加圧状態で挟持することとなり、撮像素子430を保持したシフトホルダ420のシフトベース440に対する光軸方向での位置決め(支持)がなされる。また各ボール490は、シフトホルダ420がシフトベース440に対してシフトおよびロールする際に転動してシフトホルダ420の移動抵抗を低減する。
X駆動コイル460aとY駆動コイル460b,460cは、X磁石470aとY磁石470b,470cとともに、シフトホルダ420をXY面内で移動させる電磁アクチュエータを構成する。各コイルに電流が流れるとローレンツ力が発生し、該ローレンツ力によってシフトホルダ420を移動させることができる。各コイルへの通電量を制御することにより、シフトホルダ420をX方向およびY方向にシフト駆動したりZ軸回りでロール駆動したりすることができる。カメラ100に加わった振れに応じて、その振れの方向とは逆方向に撮像素子430をシフトまたはロールさせるように各コイルへの通電量を制御することで、像振れを低減することができる。
図3および図4を用いて、撮像素子430の構成について説明する。図3は、後側から見たシフトホルダ420および撮像素子430を示している。なお、図3では、駆動コイル460a,460b,460cの図示を省略している。図4は、シフトホルダ420および撮像素子430を図3におけるA-A線で切断したときの断面を示している。
図4に示すように、撮像素子430は、撮像基板432の前面(第1の基板面)上にCMOSイメージセンサ等のセンサチップ431を直接実装したパッケージレス構造を有する。センサチップ431は、シリコン基板上に形成された半導体チップであり、入射した光に応じて画像信号を出力する。矩形のセンサチップ431は、X方向に平行な長辺とY方向に平行な短辺を有する。
撮像基板432は、ガラスエポキシ等で形成された矩形のプリント基板であり、センサチップ431と金線等を用いたワイヤボンディング配線によって電気的に接続されている。撮像基板432は、シフトホルダ420の開口部421の前面を覆うように配置され、開口部421の左辺および右辺の内面と撮像基板432においてセンサチップ431が実装された前面とは反対側の背面(第2の基板面)とに塗布された接着剤500によりシフトホルダ420に固定される。この撮像基板432のシフトホルダ420に対する接着固定方法については後に詳細に説明する。
撮像基板432の背面には、センサチップ431を動作させるための様々な電子部品(コンデンサ、抵抗、コイル、レギュレータ、ICチップ等)433が実装されている。シフトホルダ420の前面における撮像基板432の外周の部分と撮像基板432の前面(撮像基板側の面)におけるセンサチップ431の外周の部分には、矩形の枠部材435が接着により固定されている。また、枠部材435の前端面にはセンサチップ431を覆う矩形のカバーガラス(カバー部材)434が接着により固定されている。枠部材435とこれにより支持されるカバーガラス434とによってセンサチップ431が封止され、センサチップ431が保護される。枠部材435は、樹脂材料により形成されてもよいし、セラミック材料や金属材料により形成されてもよい。
以下、撮像基板432のシフトホルダ420に対する接着固定方法について説明する。撮像基板432の後側に配置されたシフトホルダ420の開口部421は、撮像基板432の背面上の電子部品433の実装スペースを確保するために、センサチップ431の外寸より広い内寸を有する。開口部421の左辺と右辺はそれぞれセンサチップ431および撮像基板432の左右の短辺と平行であり、開口部421の上辺と下辺はセンサチップ431および撮像基板432の長辺と平行である。
前述したように撮像素子430は、マウント部20のマウント面から所定距離の位置に配置される。マウント部20と撮像素子430の間には、光学ローパスフィルタ410や不図示のシャッタユニット等が配置されるため、さらにここにシフトホルダ420を配置することは困難である。一方、撮像素子430の後側はシフトホルダ420の配置に対する制約が少ない。このため、シフトホルダ420を撮像素子430の後側に配置することで、カメラ100内のZ方向のスペースを有効に使うことができる。
こうして撮像素子430の後側に配置されたシフトホルダ420の開口部421の左辺と右辺の内面に、撮像基板432の短辺に平行に接着剤500が連続した線状に塗布される。接着剤500は、開口部421の左辺と右辺の内面と撮像基板432の背面のうち電子部品433より外側の接着領域(接着しろ)に接触した状態で硬化する。これにより、撮像基板432(つまりは撮像素子430)がシフトホルダ420に接着固定される。接着剤500としては、光硬化型のアクリル系接着剤やエポキシ系の紫外線硬化型接着剤等を用いることができる。
図4に示す接着剤500の上下方向での塗布長さLaは、撮像素子430がカメラの落下衝撃により脱落することがない接着強度を確保する必要があるため、十分に長いことが望ましい。したがって、接着剤500を、開口部421の左右の辺の上下長さの範囲内でできるだけ長く連続した線状に塗布することが望ましい。具体的には、開口部421の左右の辺の内面上にセンサチップ431の短辺の長さLs以上の長さで接着剤500を塗布することが望ましい。つまり、
接着剤500の塗布長さLa≧センサチップ431の短辺長さLs
とすることが望ましい。
ただし、十分な接着強度を確保できるのであれば、接着剤500を開口部421の左右の辺の内面に不連続(スポット状)に塗布してもよい。この場合も、スポット状に接着剤500を塗布した合計の長さを、センサチップ431の短辺の長さLs以上の長さとすることが望ましい。
図4に示すように、接着剤500はシフトホルダ420の開口部421と撮像基板432とにまたがって塗布されている。なお、撮像基板432ではなく、撮像基板432の外周に配置された枠部材435の後端面とシフトホルダ420とを接着してもよいが、枠部材435の後端面における接着面積を確保するために枠部材435を撮像基板432よりもかなり大きくする必要があり、この結果、撮像素子430が大きくなる。またシフトホルダ420の開口部421の大きさも撮像基板432より大きくする必要があり、この結果、シフトホルダ420が大きくなる。したがって、撮像素子430およびシフトホルダ420の小型化のためには、シフトホルダ420と撮像基板432とを接着することが望ましい。
ここで、開口部421の左辺と右辺を用いて撮像素子430を接着するメリットについて説明する。前述したように、シフトホルダ420は3つのボール490に当接することで光軸方向にて支持されている。図3に示すように、シフトホルダ420のうち3つのボール490と当接するボール受け面422a,422b,422cはいずれも、撮像素子430の短辺に平行なY方向においては撮像基板432の上下の辺よりも外側にある。一方、撮像素子430の長辺に平行なX方向においては撮像基板432の左右の辺に対して2か所(422a,422b)は外側で、1か所(422c)は内側にある。
これらの3か所のボール受け面422a,422b,422cの位置(以下、支持位置という)は以下の3つの条件を満たすように設定すればよい。第1に、シフトホルダ420の光軸方向での支持安定性を高めるために、支持位置を結んだ三角形の重心と撮像素子430の重心(撮像基板432の重心と同位置とみなしてよい)とはできるだけ近づける。第2に、同様に支持安定性を高めるために、支持位置を結んだ三角形を正三角形にできるだけ近づける。そして第3に、撮像基板432の左右の辺が上下の辺より短いため、撮像基板432の上下の辺の外側に1つずつ支持位置を設けてカメラ100内でのレイアウト効率を上げる。このため、支持位置を撮像基板432の上辺の外側と撮像基板432の下辺の外側のそれぞれに少なくとも1か所設け、1か所が残っていればそれを上記3つの条件を満たす位置を設けることが望ましい。
図5(a)~(c)は、上記3つの条件を満たす図3に示した3か所の支持位置とは異なる3か所の支持位置の例を示している。これらの図は撮像基板432と3か所の支持位置491a,491b,491cを模式的に示している。いずれの例においても、支持位置491a~491cは、撮像基板432の上辺(一方の長辺)の外側に少なくとも1か所、下辺(他方の長辺)の外側に少なくとも1か所設けられている。
次に、図6を用いて、撮像素子430の温度変化による熱歪みについて説明する。撮像素子430のセンサチップ431のZ方向(ピント方向)での位置精度は非常に重要であり、カメラ100が動作保障されている環境温度での熱歪みによる撮像素子430の変形を低減する必要がある。
シフトホルダ420は、金属材料であるマグネシウム、アルミニウムまたはステンレス等により形成される。一方、シフトホルダ420に接着固定された撮像基板432は、前述したようにガラスエポキシ等により形成されている。これらの線膨張係数を比較すると、シフトホルダ420の方が数倍大きい。このため、カメラ100を高温下あるいは低温下に置くと、それらの線膨張係数の差によって熱歪みが発生し、図6に破線で示すように撮像基板432がセンサチップ431とともにピント方向の反りが発生する。図6は、シフトホルダ420、撮像基板432、センサチップ431および接着剤500のみを模式的に示しており、カメラ100の環境温度を常温(約23℃)から低温(約-10℃~-20℃)に推移させたときに撮像基板432が+Z方向に凸になるように変形量δだけ反った状態を示している。
ここで、シフトホルダ420の開口部421の左辺と右辺において接着剤500で撮像素子430を固定した場合における特定環境温度下での撮像基板432の変形量δをδ1とする。また、図7に示すように開口部421の上辺と下辺において接着剤500′で撮像素子430を固定した場合における上記特定環境温度下での撮像基板432の変形量δをδ2とする。上述したように撮像素子430(撮像基板432)がシフトホルダ420の前側に配置され、シフトホルダ420における3か所の支持位置の条件および線膨張係数がシフトホルダ420の方が撮像基板432より大きいことを考慮すると、変形量δは、
δ1<δ2
となることが実験的にも解析的にも確かめられている。
変形量δには支持位置が大きく関与しており、仮に3か所の支持位置を撮像基板432の上辺と下辺の内側にすることができるならば、変形量δは、
δ1>δ2
となる。つまり、開口部421の左辺と右辺にて撮像基板432を接着固定するよりも、上辺と下辺にて撮像基板432を接着固定した方が変形量δが少なくなる。したがって、本実施例のように3か所の支持位置が撮像基板432の上辺と下辺の外側にある場合は、シフトホルダ420の開口部421の左辺と右辺にて撮像基板432を接着固定した方が変形量δを小さくすることができ、好ましい。
なお、開口部421の左辺と右辺で撮像基板432を接着固定する場合の熱歪みによる変形量を超えないのであれば、開口部421の上辺と下辺で撮像基板432を接着固定してもよいし、この場合にスポット的な接着を行ってもよい。撮像素子430をシフトホルダ420に対してXY面内で位置調整し、まず撮像素子430の位置がずれない程度の弱い仮接着として開口部421の上辺と下辺にスポット的に撮像基板432を接着する。その後、必要な接着強度を確保するために開口部421の左辺と右辺にて撮像基板432を接着するようにしてもよい。
以上説明したように、本実施例によれば、パッケージレス構造の撮像素子430とシフトホルダ420との十分な接着保持強度を確保しつつ、温度変化による撮像素子430のピント方向での変形を抑制することができる。
【実施例2】
【0014】
図8を用いて、本発明の実施例2としての撮像素子430とシフトホルダ420の接着固定方法について説明する。図8は、図4と同様にシフトホルダ420および撮像素子430の断面を示している。
本実施例では、撮像基板432の背面のうち接着剤500が接触する領域に凹凸部436を設けている。凹凸部の形状はどのような形状であってもよく、例えばディンプル状の凹凸形状であってもよいし、表面を粗くした微小な凹凸形状であってもよい。凹凸部436を設けることにより、撮像基板432の背面と接着剤500との接触面積を増やすことができ、接着強度をより高めることができる。
なお、同様の凹凸部を枠部材435の後端面に設けて、枠部材435とシフトホルダ420の接着強度をより高めてもよい。
【実施例3】
【0015】
図9を用いて、本発明の実施例3としての撮像素子430とシフトホルダ420の接着固定方法について説明する。図9は、図4と同様にシフトホルダ420および撮像素子430の断面を示している。
本実施例では、撮像基板432の背面のうち接着剤500が接触する領域に金属部437を設けている。具体的には、撮像基板432背面に接着用の銅箔パターンを設けている。銅箔パターンの形状はどのような形状でもよく、例えばベタ形状であってもおいし、パッド形状であってもよい。接着剤500として嫌気性の接着剤を使用する場合は、撮像基板432の材料であるガラスエポキシよりも活性材料である銅の方が重合反応が促進されるため、接着強度をより高めることができる。
【実施例4】
【0016】
図10を用いて、本発明の実施例4としての撮像素子430とシフトホルダ420の接着固定方法について説明する。図10は、図4と同様にシフトホルダ420および撮像素子430の断面を示している。
本実施例では、シフトホルダ420の開口部421における左辺と右辺の内面、すなわち接着剤500が塗布される面を、撮像素子側とは反対の後側に向かって開口サイズが広がるように開口部421の開口方向(Z方向)に対して傾いたテーパ面422とする。これにより、Z方向における接着剤500の最大厚みがシフトホルダ420の厚みより大きくなり、図4に示すように開口部421における左辺と右辺の内面がZ方向に平行である場合に比べて接着強度が高くなる。
また、シフトホルダ420と撮像素子430とが引き剥がされる方向に力が加わった場合に、テーパ面422上の接着剤500によって撮像素子430とシフトホルダ420との剥がれが制限されるため、接着強度はより高くなる。さらに本実施例のテーパ面422を実施例2の凹凸部や実施例3の金属部と組み合わせることで、接着強度をより高くすることができる。
以上説明した実施例2~4においても、パッケージレス構造の撮像素子430とシフトホルダ420との十分な接着保持強度を確保しつつ、温度変化による撮像素子430のピント方向での変形を抑制することができる。
なお、実施例1~4の撮像ユニット400では、シフトホルダ420が3か所においてボール490により光軸方向にて支持されており、シフトホルダ420がX方向およびY方向にシフトしたりZ軸回りにロールしたりすることで像振れを低減する防振動作を可能としている。
しかし、このような防振動作を行わない撮像ユニットにおいても、実施例1~4にて説明した撮像素子の保持部材に対する接着固定方法を採用することが可能である。この場合、保持部材を図3図5に示した支持位置に設定し、ボールの替わりにビスを用いて保持部材をカメラの本体ベースに直接固定してもよい。
また上記各実施例では、撮像ユニットを搭載した撮像装置としてのレンズ交換型カメラについて説明したが、撮像装置には、レンズ一体型のコンパクトカメラや、スマートフォン等の携帯端末であって撮像ユニットを搭載したものも含まれる。
以上説明した各実施例は代表的な例にすぎず、本発明の実施に際しては、各実施例に対して種々の変形や変更が可能である。
【符号の説明】
【0017】
100 カメラ
400 撮像ユニット
420 シフトホルダ
430 撮像素子
431 センサチップ
432 撮像基板
500 接着剤
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
図9
図10