(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】減肉監視システム及び発電プラント、並びに減肉監視方法、並びに減肉監視プログラム
(51)【国際特許分類】
G01N 17/00 20060101AFI20240408BHJP
G01B 17/02 20060101ALI20240408BHJP
B02C 15/04 20060101ALN20240408BHJP
G01N 29/04 20060101ALN20240408BHJP
【FI】
G01N17/00
G01B17/02 B
B02C15/04
G01N29/04
(21)【出願番号】P 2020028655
(22)【出願日】2020-02-21
【審査請求日】2023-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】石本 雄介
(72)【発明者】
【氏名】和田 貴行
【審査官】鴨志田 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-065944(JP,A)
【文献】特開2001-280599(JP,A)
【文献】特開平08-178172(JP,A)
【文献】特開2008-064540(JP,A)
【文献】特開2019-138517(JP,A)
【文献】特開2001-056088(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 17/00
G01N 29/04
B02C 15/04
G01B 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体粒子を含む流体が流通する配管において、前記固体粒子の衝突による前記配管の内周面の摩耗の進行度合を表す摩耗リスクを評価する評価部と、
前記摩耗リスクの評価結果に基づいて、前記配管に対して監視対象範囲を設定する設定部と、
前記監視対象範囲において設定された複数の計測候補位置の減肉量情報に基づいて、前記配管における減肉量を計測する計測手段の設置位置を選定する選定部と、
を備え、
前記評価部は、前記配管の配管サイズと、前記配管に対する前記固体粒子の衝突角度とに対応して予め設定された摩耗リスクの関係情報、及び前記配管を流通する前記固体粒子を含む流体の流速と、前記配管に対する前記固体粒子の衝突角度とに対応して予め設定された摩耗リスクの関係情報の少なくともいずれか一方に基づいて、前記固体粒子の衝突による前記配管の内周面の摩耗リスクを評価する減肉監視システム。
【請求項2】
前記摩耗リスクの関係情報は、予め設定された前記配管に対する前記固体粒子の衝突角度と摩耗との対応関係に基づいて設定される請求項
1に記載の減肉監視システム。
【請求項3】
前記配管の内周面の前記摩耗リスクの評価結果に基づいて、最も高いリスク評価となった前記配管の内周面に対して、摩耗対策の施工範囲を特定する特定部を備える請求項1
または2に記載の減肉監視システム。
【請求項4】
固体粒子を含む流体が流通する配管において、前記固体粒子の衝突による前記配管の内周面の摩耗の進行度合を表す摩耗リスクを評価する評価部と、
前記摩耗リスクの評価結果に基づいて、前記配管に対して監視対象範囲を設定する設定部と、
前記監視対象範囲において設定された複数の計測候補位置の減肉量情報に基づいて、前記配管における減肉量を計測する計測手段の設置位置を選定する選定部と、
前記配管の内周面の前記摩耗リスクの評価結果に基づいて、最も高いリスク評価となった前記配管の内周面に対して、摩耗対策の施工範囲を特定する特定部と、
を備え、
前記摩耗対策は、クロム含有合金鋼の板状部材または環状部材が前記配管の内周面に貼り付けられる減肉監視システム。
【請求項5】
固体粒子を含む流体が流通する配管において、前記固体粒子の衝突による前記配管の内周面の摩耗の進行度合を表す摩耗リスクを評価する評価部と、
前記摩耗リスクの評価結果に基づいて、前記配管に対して監視対象範囲を設定する設定部と、
前記監視対象範囲において設定された複数の計測候補位置の減肉量情報に基づいて、前記配管における減肉量を計測する計測手段の設置位置を選定する選定部と、
前記配管の内周面の前記摩耗リスクの評価結果に基づいて、最も高いリスク評価となった前記配管の内周面に対して、摩耗対策の施工範囲を特定する特定部と、
を備え、
前記摩耗対策は、セラミックスの板状部材が前記配管の内周面に貼り付けられる減肉監視システム。
【請求項6】
前記計測手段の計測結果に基づいて、前記配管の肉厚が下限肉厚値未満となっているか否か、及び前記配管の減肉速度が最大減肉速度以上となっているか否かの少なくともいずれか一方を判定する判定部を備える請求項1から
5のいずれか1項に記載の減肉監視システム。
【請求項7】
前記計測手段による前記配管の内周面の減肉量の計測結果に基づいて、粉砕により前記固体粒子となる固体燃料の種類、前記配管を流通する前記固体粒子の流量、前記配管を流通する前記固体粒子を含む流体の流速、及び前記配管に対する前記固体粒子の衝突角度の少なくともいずれか1つに対する変更指令要求を出力する出力部と、
を備える請求項1から
6のいずれか1項に記載の減肉監視システム。
【請求項8】
前記計測候補位置は、前記監視対象範囲において、前記配管の周方向及び長手軸方向に設定されている請求項1から
7のいずれか1項に記載の減肉監視システム。
【請求項9】
ボイラと、
固体燃料を粉砕する粉砕機と、
前記粉砕機において生成された微粉燃料を固体粒子として前記ボイラへ搬送する配管と、
請求項1から
8のいずれか1項に記載の減肉監視システムと、
を備える発電プラント。
【請求項10】
固体粒子を含む流体が流通する配管において、前記固体粒子の衝突による前記配管の内周面の摩耗の進行度合を表す摩耗リスクを評価する工程と、
前記摩耗リスクの評価結果に基づいて、前記配管に対して監視対象範囲を設定する工程と、
前記監視対象範囲において設定された複数の計測候補位置の減肉量情報に基づいて、前記配管における減肉量を計測する計測手段の設置位置を選定する工程と、
を有し、
摩耗リスクを評価する前記工程において、前記配管の配管サイズと、前記配管に対する前記固体粒子の衝突角度とに対応して予め設定された摩耗リスクの関係情報、及び前記配管を流通する前記固体粒子を含む流体の流速と、前記配管に対する前記固体粒子の衝突角度とに対応して予め設定された摩耗リスクの関係情報の少なくともいずれか一方に基づいて、前記固体粒子の衝突による前記配管の内周面の摩耗リスクを評価する減肉監視方法。
【請求項11】
固体粒子を含む流体が流通する配管において、前記固体粒子の衝突による前記配管の内周面の摩耗の進行度合を表す摩耗リスクを評価する工程と、
前記摩耗リスクの評価結果に基づいて、前記配管に対して監視対象範囲を設定する工程と、
前記監視対象範囲において設定された複数の計測候補位置の減肉量情報に基づいて、前記配管における減肉量を計測する計測手段の設置位置を選定する工程と、
前記配管の内周面の前記摩耗リスクの評価結果に基づいて、最も高いリスク評価となった前記配管の内周面に対して、摩耗対策の施工範囲を特定する工程と、
を有し、
前記摩耗対策は、クロム含有合金鋼の板状部材または環状部材が前記配管の内周面に貼り付けられる減肉監視方法。
【請求項12】
固体粒子を含む流体が流通する配管において、前記固体粒子の衝突による前記配管の内周面の摩耗の進行度合を表す摩耗リスクを評価する工程と、
前記摩耗リスクの評価結果に基づいて、前記配管に対して監視対象範囲を設定する工程と、
前記監視対象範囲において設定された複数の計測候補位置の減肉量情報に基づいて、前記配管における減肉量を計測する計測手段の設置位置を選定する工程と、
前記配管の内周面の前記摩耗リスクの評価結果に基づいて、最も高いリスク評価となった前記配管の内周面に対して、摩耗対策の施工範囲を特定する工程と、
を有し、
前記摩耗対策は、セラミックスの板状部材が前記配管の内周面に貼り付けられる減肉監視方法。
【請求項13】
固体粒子を含む流体が流通する配管において、前記固体粒子の衝突による前記配管の内周面の摩耗の進行度合を表す摩耗リスクを評価する処理と、
前記摩耗リスクの評価結果に基づいて、前記配管に対して監視対象範囲を設定する処理と、
前記監視対象範囲において設定された複数の計測候補位置の減肉量情報に基づいて、前記配管における減肉量を計測する計測手段の設置位置を選定する処理と、
をコンピュータに実行させ
、
摩耗リスクを評価する前記処理において、前記配管の配管サイズと、前記配管に対する前記固体粒子の衝突角度とに対応して予め設定された摩耗リスクの関係情報、及び前記配管を流通する前記固体粒子を含む流体の流速と、前記配管に対する前記固体粒子の衝突角度とに対応して予め設定された摩耗リスクの関係情報の少なくともいずれか一方に基づいて、前記固体粒子の衝突による前記配管の内周面の摩耗リスクを評価する減肉監視プログラム。
【請求項14】
固体粒子を含む流体が流通する配管において、前記固体粒子の衝突による前記配管の内周面の摩耗の進行度合を表す摩耗リスクを評価する処理と、
前記摩耗リスクの評価結果に基づいて、前記配管に対して監視対象範囲を設定する処理と、
前記監視対象範囲において設定された複数の計測候補位置の減肉量情報に基づいて、前記配管における減肉量を計測する計測手段の設置位置を選定する処理と、
前記配管の内周面の前記摩耗リスクの評価結果に基づいて、最も高いリスク評価となった前記配管の内周面に対して、摩耗対策の施工範囲を特定する処理と、
をコンピュータに実行させ、
前記摩耗対策は、クロム含有合金鋼の板状部材または環状部材が前記配管の内周面に貼り付けられることである減肉監視プログラム。
【請求項15】
固体粒子を含む流体が流通する配管において、前記固体粒子の衝突による前記配管の内周面の摩耗の進行度合を表す摩耗リスクを評価する処理と、
前記摩耗リスクの評価結果に基づいて、前記配管に対して監視対象範囲を設定する処理と、
前記監視対象範囲において設定された複数の計測候補位置の減肉量情報に基づいて、前記配管における減肉量を計測する計測手段の設置位置を選定する処理と、
前記配管の内周面の前記摩耗リスクの評価結果に基づいて、最も高いリスク評価となった前記配管の内周面に対して、摩耗対策の施工範囲を特定する処理と、
をコンピュータに実行させ、
前記摩耗対策は、セラミックスの板状部材が前記配管の内周面に貼り付けられることである減肉監視プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、減肉監視システム及び発電プラント、並びに減肉監視方法、並びに減肉監視プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば発電プラントにおいて、ミル(粉砕部、固体燃料の粉砕機)で粉砕された微粉燃料をボイラのバーナ設備へ搬送する配管等の、固体粒子を含む流体が内部を流通する配管では、固体粒子の衝突によって、配管の内周面に摩耗による減肉が発生する場合がある。摩耗による配管の減肉が進行すると、減肉箇所が破孔に至り、破孔箇所から内部流体が漏洩する可能性がある。このため、発電プラントの定期点検時等において、配管の肉厚を計測して減肉の発生状況を確認する点検が行われる。
【0003】
配管の減肉評価については、例えば手動計測や、超音波振動子(例えば、薄膜UTセンサ)等を用いて行われている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-83251号公報
【文献】特許第5825096号公報
【文献】特許第6109036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
配管における減肉状況を把握するために、超音波振動子(例えば、薄膜UTセンサ)等の計測手段を配管に設置する方法があるが、配管外周部への設置位置が適切に設定されないと効果的に減肉状況を監視することはできない。例えば計測手段(センサ)が適切な箇所に配置されていないと、当該箇所における配管内部の減肉進行を適切に監視できない可能性がある。また、センサの設置数が過度に多いと、多数のセンサが必要となり、また計測にも手間を要するなど、不要な時間や費用が発生する可能性がある。
【0006】
また、摩耗による配管減肉の経過状況に応じて、配管の内部にセラミックス材(アルミナセメントなど)等のタイル状の耐摩耗材を施工する場合がある。このとき、使用環境温度や流体中の固体粒子成分などを考慮し適切に耐摩耗材を選定して、有機系接着剤やモルタル等の接着剤やピン接合などを行う必要がある。それらを貼付施工する際にも、適切な範囲の摩耗減肉状況が把握できていないと、耐摩耗材の施工範囲が不足して施工範囲外における摩耗対策の改善や追加施工が必要となったり、施工範囲が広すぎてコストアップや工期が増大する可能性もある。
【0007】
このことから、配管の減肉監視を適切に行うことが要求されている。
【0008】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであって、配管の摩耗による減肉状況をより適切に監視することのできる減肉監視システム及び発電プラント、並びに減肉監視方法、並びに減肉監視プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の第1態様は、固体粒子を含む流体が流通する配管において、前記固体粒子の衝突による前記配管の内周面の摩耗の進行度合を表す摩耗リスクを評価する評価部と、前記摩耗リスクの評価結果に基づいて、前記配管に対して監視対象範囲を設定する設定部と、前記監視対象範囲において設定された複数の計測候補位置の減肉量情報に基づいて、前記配管における減肉量を計測する計測手段の設置位置を選定する選定部と、を備え、前記評価部は、前記配管に対する前記固体粒子の衝突角度を用いて前記摩耗リスクを評価する減肉監視システムである。
【0010】
本開示の第2態様は、固体粒子を含む流体が流通する配管において、前記固体粒子の衝突による前記配管の内周面の摩耗の進行度合を表す摩耗リスクを評価する工程と、前記摩耗リスクの評価結果に基づいて、前記配管に対して監視対象範囲を設定する工程と、前記監視対象範囲において設定された複数の計測候補位置の減肉量情報に基づいて、前記配管における減肉量を計測する計測手段の設置位置を選定する工程と、を有し、摩耗リスクを評価する前記工程において、前記配管に対する前記固体粒子の衝突角度を用いて前記摩耗リスクを評価する減肉監視方法である。
【0011】
本開示の第3態様は、固体粒子を含む流体が流通する配管において、前記固体粒子の衝突による前記配管の内周面の摩耗の進行度合を表す摩耗リスクを評価する処理と、前記摩耗リスクの評価結果に基づいて、前記配管に対して監視対象範囲を設定する処理と、前記監視対象範囲において設定された複数の計測候補位置の減肉量情報に基づいて、前記配管における減肉量を計測する計測手段の設置位置を選定する処理と、をコンピュータに実行させ、摩耗リスクを評価する前記処理において、前記配管に対する前記固体粒子の衝突角度を用いて前記摩耗リスクを評価する減肉監視プログラムである。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、配管の摩耗状況をより適切に監視することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本開示の一実施形態に係る発電プラントの概略構成を示す図である。
【
図2】本開示の一実施形態に係る減肉監視システムのハードウェア構成の一例を示した図である。
【
図3】本開示の一実施形態に係る減肉監視システムが備える機能を示した機能ブロック図である。
【
図4】本開示の一実施形態に係るミルとボイラとの間の配管の具体例を示す図である。
【
図5】本開示の一実施形態に係る曲がり角度が30°のベンド管の例を示す図である。
【
図6】本開示の一実施形態に係る配管サイズと衝突角度とに対応して摩耗リスクを設定した例を示す図である。
【
図7】本開示の一実施形態に係る衝突角度と摩耗との関係を示す図である。
【
図8】本開示の一実施形態に係る流速と衝突角度とに対応して摩耗リスクを設定した例を示す図である。
【
図9】本開示の一実施形態に係る
図5のベンド管のX-X’断面を示す図である。
【
図10】本開示の一実施形態に係る
図5のベンド管のZ矢視図を示す図である。
【
図11】本開示の一実施形態に係る各計測候補位置における減肉量の計測結果の一例を示す図である。
【
図12】本開示の一実施形態に係る配管の肉厚と下限肉厚値とを比較した例を示す図である。
【
図13】本開示の一実施形態に係る配管の減肉速度と最大減肉速度とを比較した例を示す図である。
【
図14】本開示の一実施形態に係る減肉監視システムによるセンサ設置位置設定処理の一例を示す図である。
【
図15】本開示の一実施形態に係る減肉監視システムが備える機能を示した機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の一実施形態について、図面を参照して説明する。
本実施形態に係る発電プラント1は、固体燃料粉砕装置100とボイラ200とを備えている。そして、発電プラント1には、減肉監視システム60が適用される。
【0015】
本実施形態の固体燃料粉砕装置100は、一例として石炭燃料やバイオマス燃料等の固体燃料(炭素含有固体燃料)を粉砕し、微粉燃料を生成してボイラ200のバーナ部(燃焼装置)220へ供給する装置である。
図1に示す固体燃料粉砕装置100とボイラ200とを含む発電プラント1は、1台の固体燃料粉砕装置100を備えるものであるが、1台のボイラ200の複数のバーナ部220のそれぞれに対応する複数台の固体燃料粉砕装置100を備えるシステムとしてもよい。
【0016】
本実施形態の固体燃料粉砕装置100は、ミル(粉砕部)10と、給炭機(燃料供給機)20と、送風部(搬送用ガス供給部)30と、状態検出部40と、制御部50とを備えている。
なお、本実施形態では、上方とは鉛直上側の方向を、上部や上面などの“上”とは鉛直上側の部分を示している。また同様に“下”とは鉛直下側の部分を示すものであり、鉛直方向は厳密ではなく誤差を含むものである。
【0017】
ボイラ200に供給する石炭燃料やバイオマス燃料等の固体燃料を微粉状の固体燃料である微粉燃料へと粉砕するミル10は、石炭燃料のみを粉砕する形式であっても良いし、バイオマス燃料のみを粉砕する形式であっても良いし、石炭燃料とともにバイオマス燃料を粉砕する形式であってもよい。ここで、バイオマス燃料とは、再生可能な生物由来の有機性資源であり、例えば、間伐材、廃材木、流木、草類、廃棄物、汚泥、タイヤ及びこれらを原料としたリサイクル燃料(ペレットやチップ)などであり、ここに提示したものに限定されることはない。バイオマス燃料は、バイオマスの成育過程において二酸化炭素を取り込むことから、地球温暖化ガスとなる二酸化炭素を排出しないカーボンニュートラルとされるため、その利用が種々検討されている。
【0018】
ミル10は、ハウジング11と、回転テーブル12と、ローラ(粉砕ローラ)13と、駆動部14と、回転式分級機16と、燃料供給部17と、回転式分級機16を回転駆動させる分級機モータ18とを備えている。
ハウジング11は、鉛直方向に延びる筒状に形成されるとともに、回転テーブル12とローラ13と回転式分級機16と、燃料供給部17とを収容する筐体である。ハウジング11の天井部42の中央部には、燃料供給部17が取り付けられている。この燃料供給部17は、バンカ21から導かれた固体燃料をハウジング11内に供給するものであり、ハウジング11の中心位置に上下方向に沿って配置され、下端部がハウジング11内部まで延設されている。
【0019】
ハウジング11の底面部41付近には駆動部14が設置され、この駆動部14から伝達される駆動力により回転する回転テーブル12が回転自在に配置されている。
回転テーブル12は、平面視円形の部材であり、燃料供給部17の下端部が対向するように配置されている。回転テーブル12の上面は、例えば、中心部が低く、外側に向けて高くなるような傾斜形状をなし、外周部が上方に曲折した形状をなしていてもよい。燃料供給部17は、固体燃料(本実施形態では例えば石炭やバイオマス燃料)を上方から下方の回転テーブル12に向けて供給し、回転テーブル12は供給された固体燃料をローラ13との間で粉砕するもので、粉砕テーブルとも呼ばれる。
【0020】
固体燃料が燃料供給部17から回転テーブル12の略中央領域へ向けて投入されると、回転テーブル12の回転による遠心力によって固体燃料は回転テーブル12の外周側へと導かれ、ローラ13との間に挟み込まれて粉砕される。粉砕された固体燃料である粉砕後燃料は、搬送用ガス流路(以降は、一次空気流路と記載する)100aから導かれた搬送用ガス(以降は、一次空気と記載する)によって上方へと吹き上げられ、回転式分級機16へと導かれる。すなわち、回転テーブル12の外周には、一次空気流路100aから流入する一次空気をハウジング11内の回転テーブル12の上方の空間に流出させる吹出口(図示省略)が設けられている。吹出口にはベーン(図示省略)が設置されており、吹出口から吹き出した一次空気に旋回力を与える。ベーンにより旋回力が与えられた一次空気は、旋回する速度成分を有する気流となって、回転テーブル12上で粉砕後燃料をハウジング11内の上方の回転式分級機16へと導く。なお、一次空気に混合した粉砕後燃料の粉砕物のうち、所定粒径より大きいものは回転式分級機16により分級されて、または、回転式分級機16まで到達することなく、落下して回転テーブル12に戻されて、再びローラ13との間で粉砕される。
【0021】
ローラ13は、燃料供給部17から回転テーブル12に供給された固体燃料を粉砕する回転体である。ローラ13は、回転テーブル12の上面に押圧されて回転テーブル12と協働して固体燃料を粉砕する。
図1では、ローラ13が代表して1つのみ示されているが、回転テーブル12の上面を押圧するように、周方向に一定の間隔を空けて、複数のローラ13が対向して配置される。例えば、外周部上に120°の角度間隔を空けて、3つのローラ13が周方向に均等な間隔で配置される。この場合、3つのローラ13が回転テーブル12の上面と接する部分(押圧する部分)は、回転テーブル12の回転中心軸からの距離が等距離となる。
【0022】
ローラ13は、ジャーナルヘッド45によって、上下に揺動可能となっており、回転テーブル12の上面に対して接近離間自在に支持されている。ローラ13は、外周面が回転テーブル12の上面に供給された固体燃料に接触した状態で、回転テーブル12が回転すると、回転テーブル12から回転力を受けて連れ回りするようになっている。燃料供給部17から固体燃料が供給されると、ローラ13と回転テーブル12との間で固体燃料が押圧されて粉砕されて、粉砕後燃料となる。
【0023】
ジャーナルヘッド45の支持アーム47は、中間部が水平方向に沿った支持軸48によって、ハウジング11の側面部に支持軸48を中心としてローラ13を上下方向に揺動可能に支持されている。また、支持アーム47の鉛直上側にある上端部には、押圧装置49が設けられている。押圧装置49は、ハウジング11に固定され、ローラ13を回転テーブル12に押し付けるように、支持アーム47等を介してローラ13に荷重を付与する。
【0024】
駆動部14は、回転テーブル12に駆動力を伝達し、回転テーブル12を中心軸回りに回転させる装置である。駆動部14は、回転テーブル12を回転させる駆動力を発生する。
【0025】
回転式分級機16は、ハウジング11の上部に設けられ中空状の略逆円錐形状の外形を有している。回転式分級機16は、その外周位置に上下方向に延在する複数のブレード16aを備えている。各ブレード16aは、回転式分級機16の中心軸線周りに所定の間隔(均等間隔)で設けられている。また、回転式分級機16は、ローラ13により粉砕された固体燃料である粉砕後燃料を所定粒径(例えば、石炭燃料では70~100μm)より大きいもの(以下、所定粒径を超える粉砕された固体燃料を「粗粉燃料」という。)と所定粒径以下のもの(以下、所定粒径以下の粉砕された固体燃料を「微粉燃料」という。)に分級する装置である。回転により分級する回転式分級機16は、ロータリセパレータとも呼ばれ、制御部50によって制御される分級機モータ18により回転駆動力を与えられ、ハウジング11の上下方向に延在する円筒軸(図示省略)を中心に燃料供給部17の周りを回転する。
【0026】
回転式分級機16に到達した粉砕後燃料は、ブレード16aの回転により生じる遠心力と、一次空気の気流による向心力との相対的なバランスにより、大きな径の粗粉燃料は、ブレード16aによって叩き落とされ、回転テーブル12へと戻されて再び粉砕され、微粉燃料はハウジング11の天井部42にある出口19に導かれる。
回転式分級機16によって分級された微粉燃料は、出口19から供給流路である配管100bへ排出され、一次空気とともに固体粒子を含む流体(固気二層流)となって後工程へと搬送される。配管100bへ流出した微粉燃料は、ボイラ200のバーナ部220へ供給される。
【0027】
燃料供給部17は、ハウジング11の上端を貫通するように上下方向に沿って下端部がハウジング11内部まで延設されて取り付けられ、燃料供給部17の上部から投入される固体燃料を回転テーブル12の略中央領域に供給する。燃料供給部17は、給炭機20から固体燃料が供給される。
【0028】
給炭機20は、搬送部22と、搬送モータ23とを備える。搬送部22は、搬送モータ23から与えられる駆動力によってバンカ21の直下にあるダウンスパウト部24の下端部から排出される固体燃料を搬送し、ミル10の燃料供給部17に導かれる。
通常、ミル10の内部には、粉砕した固体燃料である微粉燃料を搬送するための一次空気が供給されて、圧力が高くなっている。バンカ21の直下にある上下方向に延在する管であるダウンスパウト部24には内部に燃料が積層状態で保持されていて、ダウンスパウト部24内に積層された固体燃料層により、ミル10側の一次空気と微粉燃料が逆流入しないようなシール性を確保している。
ミル10へ供給する固体燃料の供給量は、搬送部22のベルトコンベアのベルト速度で調整されてもよい。
【0029】
送風部30は、ローラ13により粉砕された固体燃料を乾燥させるとともに回転式分級機16へ供給するための一次空気をハウジング11の内部へ送風する装置である。
送風部30は、ハウジング11へ送風される一次空気を適切な温度に調整するために、本実施形態では、一次空気通風機(PAF:Primary Air Fan)31と、熱ガス流路30aと、冷ガス流路30bと、熱ガスダンパ30cと、冷ガスダンパ30dとを備えている。
【0030】
本実施形態では、熱ガス流路30aは、一次空気通風機31から送出された空気(外気)の一部を、例えば空気予熱器などの熱交換器(加熱器)34を通過して加熱せられた熱ガスとして供給する。熱ガス流路30aの下流側には熱ガスダンパ30c(第1送風部)が設けられている。熱ガスダンパ30cの開度は制御部50によって制御される。熱ガスダンパ30cの開度によって熱ガス流路30aから供給する熱ガスの流量が決定する。
【0031】
冷ガス流路30bは、一次空気通風機31から送出された空気の一部を常温の冷ガスとして供給する。冷ガス流路30bの下流側には冷ガスダンパ(第2送風部)30dが設けられている。冷ガスダンパ30dの開度は制御部50によって制御される。冷ガスダンパ30dの開度によって冷ガス流路30bから供給する冷ガスの流量が決定する。
【0032】
一次空気の流量は、本実施形態では、熱ガス流路30aから供給する熱ガスの流量と冷ガス流路30bから供給する冷ガスの流量の合計の流量となる。一次空気の流量は、例えば、ミル10に供給される固体燃料の供給量に応じて設定された流量となるように、制御部50によって送風部30が制御される。一次空気の温度は、熱ガス流路30aから供給する熱ガスと冷ガス流路30bから供給する冷ガスの混合比率で決まる。一次空気の温度は、例えば、ミル10に供給される固体燃料の性状に応じて設定された温度となるように、制御部50によって送風部30が制御される。
また、熱ガス流路30aから供給する熱ガスに、図示しないガス再循環通風機を介してボイラ200から排出された燃焼ガスの一部を導き、混合気とすることで、一次空気流路100aから流入する一次空気の酸素濃度を調整してもよい。
【0033】
本実施形態では、ミル10の状態検出部40により、計測または検出したデータを制御部50に送信する。本実施形態の状態検出部40は、例えば、差圧計測手段であり、一次空気流路100aからミル10内部へ一次空気が流入する部分と、ミル10内部から配管100bへ一次空気及び微粉燃料が排出する出口19との差圧を、ミル10内の差圧として計測する。例えば、回転式分級機16の分級性能により、ミル10内部を回転式分級機16付近と回転テーブル12付近の間で循環する粉砕された固体燃料の循環量の増減と、これに対するミル10内の差圧の上昇低減が変化する。すなわち、ミル10の内部に供給する固体燃料に対して、出口19から排出させる微粉燃料を調整して管理することができるので、微粉燃料の粒度がバーナ部220の燃焼性に影響しない範囲で、ミル10へ投入された固体燃料の供給量に対応した量の微粉燃料をボイラ200に設けられたバーナ部220に安定して供給することができる。
また、本実施形態の状態検出部40は、例えば、温度計測手段であり、ローラ13により粉砕された固体燃料を回転式分級機16へ吹き上げるためにハウジング11の内部に供給する一次空気の温度と、ハウジング11の内部において出口19までの一次空気の温度を検出して、上限温度を超えないように制御部50によって送風部30が制御される。なお、一次空気は、ハウジング11内において、粉砕物を乾燥しながら搬送することによって冷却されるので、ハウジング11の上部空間から出口19での温度は、例えば約60~90度程度となる。
【0034】
制御部50は、固体燃料粉砕装置100の各部を制御する装置である。制御部50は、例えば、駆動部14に駆動指示を伝達することによりミル10の運転に対する回転テーブル12の回転速度を制御してもよい。制御部50は、例えば回転式分級機16の分級機モータ18へ駆動指示を伝達して回転速度を制御することで、分級性能を調整することにより、ミル10内の差圧を所定の範囲に適正化して微粉燃料の供給を安定化させることができる。また、制御部50は、例えば給炭機20の搬送モータ23へ駆動指示を伝達することにより、搬送部22が固体燃料を搬送して燃料供給部17へ供給する固体燃料の供給量(給炭量)を調整することができる。また、制御部50は、開度指示を送風部30に伝達することにより、熱ガスダンパ30cおよび冷ガスダンパ30dの開度を制御して一次空気の流量と温度を制御することができる。具体的には、制御部50は、搬送ガスの流量と出口温度が、固体燃料種別毎に給炭量に対して設定された所定値となるように、熱ガスダンパ30cおよび冷ガスダンパ30dを制御する。
【0035】
次に、固体燃料粉砕装置100から供給される微粉燃料を用いて燃焼を行って蒸気を発生させるボイラ200について説明する。
ボイラ200は、火炉210とバーナ部220とを備えている。
【0036】
バーナ部220は、配管100bから供給される微粉燃料を含む一次空気と、押込気通風機(FDF:Feed Draft Fan)32から送出される空気(外気)を熱交換器34で加熱して供給される二次空気とを用いて微粉燃料を燃焼させて火炎を形成する装置である。微粉燃料の燃焼は火炉210内で行われ、高温の燃焼ガスは、蒸発器,過熱器,節炭器などの熱交換器(図示省略)を通過した後にボイラ200の外部に排出される。
【0037】
ボイラ200から排出された燃焼ガスは、環境装置(脱硝装置、電気集塵機などで図示省略)で所定の処理を行うとともに、例えば空気予熱器などの熱交換器34で一次空気通風機31から送出される空気と押込気通風機32から送出される空気との熱交換が行われ、誘引通風機(IDF:Induced Draft Fan)33を介して煙突(図示省略)へと導かれて外気へと放出される。熱交換器34において燃焼ガスにより加熱された一次空気通風機31から送出される空気は、前述した熱ガス流路30aに供給される。
ボイラ200の各熱交換器への給水は、節炭器(図示省略)において加熱された後に、蒸発器(図示省略)および過熱器(図示省略)によって更に加熱されて高温高圧の蒸気が生成され、発電部である蒸気タービン(図示省略)へと送られて蒸気タービンを回転駆動し、蒸気タービンに接続した発電機(図示省略)を回転駆動して発電が行われ、発電プラント1を構成する。
【0038】
減肉監視システム60は、例えば、一次空気とともに微粉燃料(固体粒子)を含む流体(固気二層流)が流通する配管(微粉燃料搬送管)100bに対する減肉の監視を行うためのシステムである。本実施形態では、計測手段として、薄膜UT(Ultrasonic Testing)センサ(薄膜状超音波センサ)を用いる場合を説明する。薄膜UTセンサは、超音波センサであって、小型及び薄型に形成されている。このため、例えば、配管100bが保温材で覆われている場合であっても、配管100bと保温材との間にセンサを設置して、配管100bの外周面に対して直接接触もしくは近接して設置することができ、配管100bの保温材を取り付けた状態でも配管100bの肉厚(配管の径方向の厚さ)を計測することができる。すなわち、薄膜UTセンサにおいて連続的に配管100bの肉厚が計測することができるため、減肉量(初期肉厚-計測時の肉厚など所定期間での肉厚の差)を把握することができる。なお、一般的なUTセンサ等では、その大きさや周囲環境(温度、湿度、粉塵雰囲気等)に対する制約などにより、配管100bに常時設置することが困難な場合があるため、連続的な計測には不向きである。また、保温材で覆われている配管100bに対して計測を行う場合には、保温材を取り除いてセンサを設置し、計測終了後に保温材を復旧する必要があるため、計測中には配管100bの保温がなされず、また前述の作業にかかる手間を要する。前述の理由により、計測手段としては、薄膜UTセンサを用いることが好ましい。なお、配管100bの肉厚(減肉量)を常時連続的にモニタリングすることが可能なセンサであれば、薄膜UTセンサに限らず用いることができる。以下の説明では、薄膜UTセンサを単に「センサ」として表し説明する。
【0039】
図2は、本実施形態に係る減肉監視システム60のハードウェア構成の一例を示した図である。なお、前述の制御部50についても、減肉監視システム60と同様のハードウェア構成とすることが可能である。
図2に示すように、減肉監視システム60は、コンピュータシステム(計算機システム)であり、例えば、CPU160と、CPU160が実行するプログラム等を記憶するためのROM(Read Only Memory)120と、各プログラム実行時のワーク領域として機能するRAM(Random Access Memory)130と、大容量記憶装置としてのハードディスクドライブ(HDD)140と、ネットワーク等に接続するための通信部150とを備えている。これら各部は、バス180を介して接続されている。なお、大容量記憶装置としてはソリッドステートドライブ(SDD)等の半導体メモリ等が用いられてもよい。
【0040】
また、減肉監視システム60は、キーボードやマウス等からなる入力部(不図示)や、データを表示する液晶表示装置等からなる表示部(不図示)などを備えていてもよい。
【0041】
なお、CPU160が実行するプログラム等を記憶するための記憶媒体は、ROM120に限られない。例えば、磁気ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリ等の他の補助記憶装置であってもよい。
【0042】
後述の各種機能を実現するための一連の処理の過程は、プログラムの形式でハードディスクドライブ140等に記録されており、このプログラムをCPU160がRAM130等に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、後述の各種機能が実現される。なお、プログラムは、ROM120やその他の記憶媒体に予めインストールしておく形態や、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供される形態、有線又は無線による通信手段を介して配信される形態等が適用されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等である。
【0043】
図3は、減肉監視システム60が備える機能を示した機能ブロック図である。
図3に示されるように、減肉監視システム60は、評価部61と、設定部62と、選定部63と、判定部64と、特定部65とを備えている。
【0044】
評価部61は、一次空気(搬送用ガス)とともに微粉燃料が流通する配管100bにおいて、微粉燃料の衝突による配管100bの内周面の摩耗の進行度合を表す摩耗リスクを評価する。摩耗リスクとは、配管100bにおける内周面への微粉燃料の衝突による摩耗の進行度合を示す指標であり、後述するように摩耗影響パラメータに対応して評価される。本実施形態では、摩耗リスクを段階評価する場合について説明するが、評価については段階評価に限定されない。
【0045】
配管100bは、ミル10において生成された微粉燃料を一次空気とともにボイラ200へ搬送する微粉燃料搬送管であり、内部を流通する流体には固体の微粒子である微粉燃料が含まれている。このため、微粉燃料が配管100bの内周面に衝突して摩耗を生じさせる可能性がある。例えば、
図4は、ミル10とボイラ200との間の配管100bの具体例の一つを示す図である。
図4に示すように、配管100bは、直管や、曲げ管(例えば、ベンド管)や、内部流体を分岐する分配器等の配管部材で構成されている。
図4では、ベンド管をT1、分配器をT2として示している。このため、配管100bの内部を流通する流体に含まれる微粉燃料は、配管100bの各配管部材の内周面へ衝突する場合がある。特に、曲げ管(例えば、ベンド管)では、管内の流れに偏流が生じ、微粉燃料などの固体粒子が集中して局所的に管内周面に衝突することで、摩耗を加速させる現象が生じる可能性がある。このことを踏まえて、評価部61では、配管100bの内周面の摩耗の進行度合を表す摩耗リスクを評価している。
【0046】
本実施形態では、評価部61は、後述する摩耗影響パラメータに基づいて、配管100bの配管部材毎に摩耗リスクを評価する。例えば、配管100bが、
図4のように直管、ベンド管(
図4のT1)、分配器(
図4のT2)等が互いに接続されて構成されている場合には、配管100bを構成する各配管部材のそれぞれに対して摩耗リスクを評価する。なお、配管100bを構成する複数領域のそれぞれに対して摩耗リスクが評価されれば、配管部材毎に評価する場合に限定されない。すなわち、ここで言う配管部材は、配管100bの製作時における分割単位とは必ずしも一致しなくてもよい。
【0047】
具体的には、評価部61は、各配管部材の流路の大きさ(例えば、円柱状の管であれば内径に相当する。以下、単に「配管サイズ」という)と、配管部材の内周面に対する微粉燃料の衝突角度(以下、単に「衝突角度」という)とに対応して予め設定された摩耗リスクの関係情報(リスクマップR1)、及び配管100bの内部を流通する微粉燃料を含む流体の流速(以下、単に「流速」という)と、衝突角度とに対応して予め設定された摩耗リスクの関係情報(リスクマップR2)の少なくともいずれか一方に基づいて、摩耗リスクを評価する。
【0048】
衝突角度とは、配管部材の内周面上の一点における接平面(法線と直交する面)と、衝突する粒子の進行方向(速度ベクトル)とがなす角である。例えば、
図5に、曲げ角度が30°のベンド管T1の中心軸上の断面を示す。曲げ管の曲げ角度とは、曲げ管の入口側における流路中心軸と、出口側における流路中心軸とがなす角である。したがって、
図5に示すように、ベンド管T1の入口側における流路中心軸と直交する半径方向の線と、ベンド管T1の出口側における流路中心軸と直交する半径方向の線とがなす角度と同じ角度となる。
図5の場合には半径方向の線L1と半径方向の線L2とが30°をなす曲げ加工がされているため、
図5の配管部材は、曲げ角度が30°のベンド管T1となる。
図5のベンド管T1を例とすると、粒子P1の衝突角度は、粒子P1の進行方向(速度ベクトル、紙面奥行き方向の速度成分はゼロとする)と、衝突箇所である配管部材の内周面の一点における接平面L3(図示上は、線L3と平行であり紙面奥行き方向に延在する面)とのなす角度αとなる。
【0049】
配管部材において、衝突角度と、流速とはそれぞれ摩耗に影響を及ぼすため摩耗影響パラメータとなる。また、配管サイズ(配管部材の内径)についても、流速を規定することとなるため、摩耗影響パラメータとなる。
【0050】
図6は、本実施形態における、配管サイズと衝突角度とに対応して摩耗リスクを設定したリスクマップR1の例である。
図6では、縦軸を衝突角度とし、横軸を配管サイズとしている。配管内部を流通する流体の流量が一定の場合、配管サイズが小さいほど配管部材の内部を流通する流体の流速は大きくなるため、配管サイズと流速とは、
図6に示すように対応しており、本実施形態では流速に対して2段階に分けている。また、衝突角度の最小値と最大値に間を、例えば3段階に分けていて、最も高い摩耗リスクが設定される衝突角度付近にはさらに2段階に分けている。
図6では、衝突角度と配管サイズのそれぞれに対応して摩耗リスクが段階的に設定されている。摩耗リスクは、例えばリスクA、リスクB、リスクC、リスクD、リスクE、リスクF、リスクGとして7段階評価される場合を例とする。そして、リスクAが最も摩耗リスクが高く、リスクB、リスクC、リスクD、リスクE、リスクF、リスクGの順に摩耗リスクが低くなるものとする。具体的には、減肉量の最大値と最小値の間でほぼ均等に3分割をして、減肉量のその分割値に近いきりのよい値を用いて、第1閾値と第2閾値を設定してもよい。
【0051】
具体的には、
図6のリスクマップR1では、配管サイズが小さい側(配管サイズが所定値U1未満の領域)に高い摩耗リスクが設定されており、配管サイズが大きい側(配管サイズが所定値U1以上の領域)に低い摩耗リスクが設定されている。そして、衝突角度に対しては、所定値α1に近いほど高い摩耗リスクが設定される。特に、配管サイズが小さく、衝突角度が所定値α1を含む領域は、最も高いリスクAが設定されている。
【0052】
衝突角度と摩耗(摩耗度合)との関係は、
図7に示すように事前試験等によって取得可能である。
図7では、摩耗性を示す指標として摩耗速度を例としている。なお、衝突角度は、固体粒子の進行方向と、衝突箇所における配管部材の内周面の一点における接平面とのなす角度であるため、
図7の特性では90°を中心として対称となっている。
図7に示すように、衝突角度が所定値α1(例えば、30°)に近いほど、摩耗速度は増加する傾向にある。このため、リスクマップR1は、
図7に示すような予め設定された配管部材に対する微粉燃料の衝突角度と摩耗との対応関係に基づいて設定される(後述するリスクマップR2も同様)。なお、
図7の関係は、配管部材の材料、微粉燃料(固体粒子)の成分等の影響を受けるため、一例を示しているものである。
【0053】
図8は、本実施形態における、流速と衝突角度とに対応して摩耗リスクを設定したリスクマップR2の例である。
図8では、縦軸を衝突角度とし、横軸を流速としている。
図8では、衝突角度と流速のそれぞれに対応して摩耗リスクが段階的に設定されている。流速に対しては、本実施形態では2段階に分けている。摩耗リスクは、リスクマップR1と同様に、例えばリスクA、リスクB、リスクC、リスクD、リスクE、リスクF、リスクGとして7段階評価される場合を例とする。そして、リスクAが最も摩耗リスクが高く、リスクB、リスクC、リスクD、リスクE、リスクF、リスクGの順に摩耗リスクが低くなるものとする。
【0054】
具体的には、
図8のリスクマップR2では、流速が大きい側(流速が所定値F1以上の領域)に高い摩耗リスクが設定されており、流速が小さい側(流速が所定値F1未満の領域)に低い摩耗リスクが設定されている。そして、衝突角度に対しては、所定値α1に近いほど高い摩耗リスクが設定される。特に、流速が大きく、衝突角度が所定値α1を含む領域は、最も高いリスクAが設定されている。リスクマップR2についても
図7のような衝突角度と摩耗との関係に基づいて設定される。
【0055】
このように、リスクマップは配管サイズ基準(リスクマップR1)と、流速基準(リスクマップR2)とが用意され、条件に応じて使い分けされることが好ましい。例えば、配管サイズの小さい方が流速は大きくなることが想定されるが、
図4に示すように配管は分配器T2を用いて分配される場合があるこのため、分配器T2の前と比較して分配器T2の後でサイズが小さくなったとしても流量が変化しているために、流速が大きくなるとは限らない。このため、配管サイズと流速との関係性が一定でない場合には、流速基準のリスクマップR2を使用することが好ましい。なお、リスクマップR1は配管サイズ基準でリスク評価を行うことができるため、例えば、分配器T2が存在しなく、配管100bの全体にわたって配管内を流通する流量が変化しない場合などに、処理負担の軽減が期待できる。
【0056】
評価部61では、リスクマップR1、R2のいずれかを使用して、各配管部材に対して摩耗リスクの評価としてリスクAからリスクGのいずれかを割り当てる。例えば、流速が早く衝突角度が所定値α1に近いベンド管T1にはリスクAが割り当てられ、流速が遅く、ストレート管にはリスクEが割り当てられる。
【0057】
このようにして、評価部61では、配管100bを構成する各構成配管に対して摩耗リスクの割り当て(摩耗リスク評価)を行う。
【0058】
設定部62は、摩耗リスクの評価結果に基づいて、配管100bに対して監視対象範囲を設定する。監視対象範囲とは、配管100bにおける減肉監視の対象の候補とする範囲(領域)である。上述のように、評価部61では、各配管部材に対して摩耗リスクの割り当てが行われているため、設定部62では、評価部61の評価結果に基づいて、摩耗減肉に対する監視対象の候補(監視対象範囲)を設定する。
【0059】
設定部62は、高い摩耗リスクが割り当てられた配管部材を監視対象範囲として設定する。本実施形態では、配管部材ごとに摩耗リスクを割り当てているため設定部62では配管部材を監視対象範囲として設定するが、摩耗リスクが配管部材ごとに割り当てらない場合には、設定部62は、摩耗リスクが割り当てられた領域ごとに監視対象範囲を設定する。
【0060】
具体的には、設定部62は、リスクBに割り当てられた配管部材を監視対象範囲として設定する。本実施形態では、リスクAはリスクBよりも高い摩耗リスクであるが、リスクAは、配管部材の内周面に摩耗による減肉が顕著に表れると判断して事前に耐摩耗材の貼付対策を行うことを前提とすることにより、リスクBを監視対象範囲としている。すなわち、リスクAにおいては、事前に耐摩耗材により対策が行われるため、監視対象から外し、リスクA以外で高い摩耗リスクとなっているリスクBを減肉の監視の対象候補としている。これにより、高い摩耗リスクであるリスクAに耐摩耗材の貼付領域を限定することができるとともに、監視対象範囲をリスクBに限定することができるので、必要以上の対応を効率的に抑制することができる。なお、事前に耐摩耗材の貼付け対策を行わない場合は、リスクAに対して監視対象範囲を設定することとしてもよい。
【0061】
例えば、
図5に示すベンド管T1にリスクBが割り当てられている場合に、ベンド管T1が監視対象範囲として設定される。
【0062】
設定部62では、リスクBに割り当てられた配管部材を監視対象範囲として設定し、他の摩耗リスクが割り当てられた配管部材に対しても後述するセンサの設置位置特定処理を行う場合に、次に高い摩耗リスク(リスクC)が割り当てられた配管部材を監視対象範囲として設定する。このようにすることで、摩耗リスクの高い配管部材から監視対象範囲とすることができる。
【0063】
なお、設定部62は、閾値以上の摩耗リスクが割り当てられた配管部材を監視対象範囲として設定することとしてもよい。例えば、閾値がリスクCに設定されている場合には、リスクC以上の摩耗リスクであり、耐摩耗材の貼付対策を実施していないリスクB、リスクCに割り当てられている配管部材が監視対象範囲として設定される。
【0064】
選定部63は、監視対象範囲において設定された複数の計測候補位置の減肉量に基づいて、配管部材における減肉量を計測するセンサの設置位置を選定する。設定部62において監視対象範囲とする配管部材が設定されるため、選定部63は監視対象範囲とする配管部材に対して効果的なセンサの設置位置を選定する。
【0065】
監視対象範囲において設定された複数の計測候補位置の減肉量とは、本実施形態では、作業員により計測された値とする。具体的には、設定部62において監視対象範囲としてベンド管T1が設定されるため、ベンド管T1に対して複数の計測候補位置が設定され、減肉量が計測される。計測候補位置とは、センサの設置位置の候補となる位置である。
【0066】
例えば、
図5のようなベンド管T1に対して、計測候補位置は、周方向及び長手軸方向に複数位置設定されている。
図9は、
図5のベンド管T1において、ベンド管T1の流路中心軸に直交する断面(例えば、X-X’断面)を示している。ベンド管T1は円筒形状であるため、管断面の中心軸に対して、例えば30°毎に計測候補位置が設定される。
図9では、X-X’断面において30°毎に計測候補位置がS1からS12として設定される例を示している。なお、ベンド管T1の横断面における計測候補位置については、
図5のようにベンド管T1に微粉燃料(固体粒子)が衝突して減肉が発生し易い状況にあると想定される箇所(例えば、
図5に示す網掛け部RA1の領域)に限定することとしてもよい。この場合には、
図9においてS1からS4とS10からS12の示す網掛け部RA1の領域に減肉が発生し易い状況にあると想定される箇所となり、
図9においてS5からS9については、ベンド管T1の減肉量の計測は不要とすることができる。なお、本実施形態では、ベンド管T1の断面において30°毎にS1からS12を設定する場合を例示しているが、必要な減肉分布の精度等によって計測候補位置の設定方法は上記に限定されない。
【0067】
また、
図10は、
図5のベンド管T1において、Z方向(曲げの背面)から見た図(Z矢視図)を示している。そして、ベンド管T1の曲げ角度30°に対して、5等分(6°毎)することによって計測候補位置が設定される。
図10では、Z矢視図において6°毎に計測候補位置がaからeとして設定される例を示している。なお、本実施形態では、Z矢視図において6°毎にaからeを設定する場合を例示しているが、必要な減肉分布の精度等によって計測候補位置の設定方法は上記に限定されない。
【0068】
すなわち、監視対象範囲として設定されたベンド管T1において、長手軸方向に設定されたaからeのそれぞれの位置において、周方向にS1からからS4とS10からS12(S5からS9は除外)が計測候補位置として設定される。
【0069】
そして、各計測候補位置に対して減肉量の計測が実施される。減肉量の計測は、例えば作業員によって手動計測される。
図11は、各計測候補位置における減肉量の計測結果の一例を示す図である。本実施形態では、
図11に示すよう、減肉量を3段階評価している。具体的には、減肉量の最大値と最小値の間でほぼ均等に3分割をして、減肉量のその分割値に近いきりのよい値を用いて、第1閾値と第2閾値を設定してもよい。減肉量が第1閾値未満の場合には「△」で表し、減肉量が第1閾値以上であり、第1閾値より大きな値である第2閾値未満の場合には「〇」で表し、減肉量が第2閾値以上の場合には「◎」で表している。また、S5からS9については、計測不要として「-」で表している。
【0070】
そして、選定部63は、
図11のような各計測候補位置の減肉量情報に基づいて、センサの設置位置を選定する。センサの設置位置については、例えば、減肉量が「◎」の位置をセンサの第1優先取付位置とし、減肉量が「○」の位置を第2優先取付位置とし、減肉量が「△」の位置を第3優先取付位置とし、第1優先取付位置から優先的にセンサを取り付けることが好ましい。なお、センサの設置位置については、
図11のような各計測候補位置の減肉量に基づいていれば、上記の方法に限定されない。例えば、減肉量が大きな「◎」の位置のみにセンサを取り付けるよう設定してもよい。
【0071】
このように、監視対象範囲の中でも減肉状態(減肉量情報)に基づいてセンサの設置位置が選定されることで、減肉監視を行う上で適正な位置にセンサを設置することができ、より効果的に減肉量の計測が可能となる。
【0072】
上記例では、選定部63は、
図11のような各計測候補位置の減肉量(例えば、作業員の手動による計測値)に基づいてセンサの設置位置の選定を行う場合を説明したが、監視対象範囲の中における減肉状態に基づいてセンサの設置位置が選定されれば上記例に限定されない。例えば、監視対象範囲内において、シミュレーションにより減肉状態(減肉量情報)を推定することとしてもよい。また、その他の計算や試験データ(過去実績データ)に基づくこととしてもよい。
【0073】
判定部64は、センサの計測結果に基づいて、配管部材の肉厚が下限肉厚値未満となっているか否か、及び配管部材の減肉速度が最大減肉速度以上となっているか否かの少なくともいずれか一方を判定する。上述した減肉量に対して◎,〇,△の3段階評価を行ってセンサの優先設置位置を決定した処理によって、センサの設置位置が特定され、適正な位置にセンサが設置される。センサは、例えば薄膜UTセンサであり、配管部材の外表面に設置されることによって、減肉の連続的な監視を行うことが可能である。連続的な減肉監視を行うことができるため、適切な減肉評価を行うことが可能となる。
【0074】
配管部材の肉厚は、摩耗による減肉によって減少していくため、減肉の程度は、計測された肉厚値と下限肉厚値とを比較することによって評価することができる。下限肉厚値tminは、判定基準肉厚tmに基づいて設定される。判定基準肉厚は、例えば、JASME S NH1-2006やNH2-2006に規定される配管減肉管理方法により設定される。具体的には、判定基準肉厚tmは、以下の式(1)により算出される。
【0075】
【0076】
式(1)において、tsrは、使用限界肉厚値であり、tnは、配管の製造上の最小肉厚値である。すなわち、下限肉厚値tminは、判定基準肉厚tmに所定のマージンを加算した値として設定される。すなわち、配管部材の計測肉厚と下限肉厚値tminとを比較することで、配管部材の肉厚が判定基準肉厚tmに達する前に減肉の進行を検知することができる。なお、下限肉厚値tminは、許容される配管部材の肉厚の下限値として設定されればよく、必ずしも数式1による判定基準肉厚tmに基づいて設定される場合に限定されない。
【0077】
図12は、配管部材の計測肉厚と下限肉厚値t
minとを比較した一例である。減肉によって、配管部材の肉厚は低下していく。このため、肉厚が下限肉厚値t
min未満となった場合には、肉厚が判定基準肉厚t
mに達する前に減肉の進行を把握して、配管部材内周面への耐摩耗材の貼付等の摩耗対策の施工を行うなど、適切な対応を行うことが可能となる。
図12では説明の簡易化のためにリスクBからリスクDのうちの代表的な例と、リスクEからリスクGのうちの代表的な例とを分けて記載している。
図12に示すようにリスクBからリスクDのうちの代表的な例の方が減肉は早く進むため、適切な位置に設置したセンサで減肉量の計測を行うことで、効率的に減肉監視を行うことが可能となる。
【0078】
また、
図12に示すように、配管100bの肉厚の減肉量は、時間の経過とともに加速され、大きくなるために急速に肉厚が減少する。これは、摩耗による減肉が発生すると、その後の摩耗が、減肉した部位に選択的に発生することに起因する。すなわち、減肉が進行するにつれて減肉速度は上昇する。このため、減肉は、減肉速度と最大限肉速度とを比較することによって評価することも可能である。
【0079】
図13は、配管部材の減肉速度と最大減肉速度とを比較した一例である。なお、
図12のような特性において、所定の時間経過した時に判定基準肉厚t
mに達するときの減肉速度を基準減肉速度V
mとし、下限肉厚値t
minに達するときの減肉速度を最大減肉速度V
maxとしている。所定の時間は、例えば、発電プラント1における定期点検の間隔に設定される。減肉によって、配管部材の減肉速度は増加していく。このため、減肉速度が最大減肉速度V
max以上となった場合には、肉厚が判定基準肉厚に達する前に減肉の進行を把握して、減肉速度が最大減肉速度V
maxを上回り、基準減肉速度V
mに達する前に減肉の進行を把握して、配管部材内周面への耐摩耗材の貼付等の摩耗対策の施工を行うなど、適切な対応を行うことが可能となる。
図13ではリスクBからリスクDのうちの代表的な例と、リスクEからリスクGのうちの代表的な例とを分けて記載している。
図13に示すようにリスクBからリスクDのうちの代表的な例の方が減肉は早く進むため、適切な位置に設置したセンサで減肉量の計測を行うことで、効率的に減肉監視を行うことが可能となる。
【0080】
このように、判定部64では、配管部材の肉厚または減肉速度によって、配管部材の減肉状況の評価を行う。そして、配管部材の肉厚が下限肉厚値tminに達することを検知することで、配管部材の肉厚が判定基準肉厚tmに達する前に、配管部材内周面への耐摩耗材の貼付施工等の対策を行うことが可能となる。
【0081】
特定部65は、センサによる配管部材の減肉量の計測結果に基づいて、最も高いリスク評価となった配管部材の内周面に対して、耐摩耗材の貼付などの摩耗対策の追加施工が必要な範囲を特定する。耐摩耗材は、例えば、セラミックスやクロム含有合金鋼などの材料を用いて構成されている。具体的には、耐摩耗材の形態は、セラミックスの板状部材(タイルなど)や、クロム含有合金鋼の板状部材または環状部材が配管部材の内周面に貼り付けられるライナなどである。摩耗対策が、配管部材の内周面に施工されることによって、施行後は摩耗による減肉の進行を抑制するとともに、減肉による配管部材の強度低下を抑制することが可能となる。セラミックスはアルミナ系、シリカ系、マグネシア系などが利用可能である。クロム含有合金鋼は、高クロム含有合金鋼であると更に好ましい。
【0082】
特定部65は、センサによる配管部材の減肉量の計測結果に基づいて、配管部材の肉厚が下限肉厚値tminに達した位置、または減肉速度が最大減肉速度Vmaxに達した位置を含むように、配管部材の内周面に対する耐摩耗材の貼付などの摩耗対策の施工範囲を特定する。センサが減肉の発生し易い位置に対応して設置されているため、減肉が進行している位置を効率的に特定して、特定した位置を含むようにして過不足を抑制した効率的な摩耗対策が施工されることで効果的な対策を行うことが可能となる。
【0083】
次に、上述の減肉監視システム60によるセンサ設置位置設定処理の一例について
図14を参照して説明する。
図14は、本実施形態に係る減肉監視システム60によるセンサ設置位置設定処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図14に示すフローは、例えば、使用者によってセンサ設置位置設定処理の開始指示が入力された場合に開始される。
【0084】
まず、配管100bを構成する各配管部材に対して摩耗リスクを評価する(S101)。S101では、摩耗リスクの関係情報に基づいて、固体粒子の衝突による配管100bの内周面の摩耗リスクとして、各配管部材を例えば、リスクAからリスクEの7段階へ割り当てる。
【0085】
次に、摩耗リスクに基づいて監視対象範囲を設定する(S102)。S102では、摩耗リスクに基づいて、例えば、閾値をリスクCに設定し、摩耗リスクが高いリスクAには耐摩耗材の貼付対策を実施済としてリスクAを除いて、リスクB、リスクCに割り当てられている配管部材が監視対象範囲として対象となる配管部材が設定される。
【0086】
次に、監視対象範囲における複数の計測候補位置の減肉量情報に基づいて、センサの設置位置を選定する(S103)。S103では、減肉量を◎,〇,△の3段階評価を行ってセンサの優先設置位置を決定する。
【0087】
このようにして、センサの設置位置が選定され、選定した適正な位置にセンサが設置されることによって、配管部材の効率的な減肉監視を行うことが可能となる。
【0088】
以上説明したように、本実施形態に係る減肉監視システム及び発電プラント、並びに減肉監視方法、並びに減肉監視プログラムによれば、配管100bの内周面の摩耗リスクを評価し、摩耗リスクの評価結果に基づいて配管100bに対して監視対象範囲を設定するため、摩耗リスクによって監視対象範囲を絞り込むことができる。そして、監視対象範囲における複数の計測候補位置の減肉量情報により減肉量を計測するセンサの設置位置を選定することによって、より効率的にセンサの設置位置を決定することが可能となる。すなわち、センサを、配管100bの減肉監視において、必要な領域内におけるより必要で効果的な計測位置に適切に配置することが可能となる。
【0089】
また、配管サイズと衝突角度とに対応して予め設定された摩耗リスクの関係情報、及び流速と衝突角度とに対応して予め設定された摩耗リスクの関係情報の少なくともいずれか一方によることで、微粉燃料(固体粒子)による配管部材の内周面の摩耗リスクをより精度よく評価することが可能となる。
【0090】
また、センサを、減肉量の計測が必要な領域内において、より必要な計測位置に適切に配置することができるため、耐摩耗材の貼り付け等の摩耗対策を施工する範囲をより適切に特定することが可能となる。摩耗対策が、適切な範囲に施工されることによって、減肉による配管部材の異常発生を効果的に防止することができる。また、必要性の低い範囲への摩耗対策の施工を抑制してコストの低減を図ることも可能となる。
【0091】
また、センサによる減肉量の計測結果に基づくことで、肉厚が下限肉厚値未満となっているか否か、及び配管部材の減肉速度が最大減肉速度以上となっているか否かを効果的に判定することができる。判定結果に応じて、配管部材の交換や耐摩耗材の貼り付け等の摩耗対策の施工実施タイミングを適切に設定することができる。
【0092】
本開示は、上述の実施形態のみに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々変形実施が可能である。
【0093】
例えば、タイル状などの耐摩耗材の貼付施工によって摩耗対策を行うこととしているが、他の対応を行うこととしてもよい。例えば、固体燃料(微粉燃料)の種類、配管100bを流通する微粉燃料の流量、配管100bを流通する微粉燃料を含む流体の流速、及び配管に100b対する微粉燃料の衝突角度の少なくともいずれか1つによっても、摩耗による減肉の進行度合いを調整することが可能である。具体的には、固体燃料(微粉燃料)の種類、配管100bを流通する微粉燃料の流量、配管100bを流通する微粉燃料を含む流体の流速、及び配管100bに対する微粉燃料の衝突角度の少なくともいずれか1つを、減肉の進行が抑制されるように変更する。例えば、
図15に示すように、出力部66を設け、センサによる減肉量の計測結果に基づいて、固体燃料(微粉燃料)の種類、配管100bを流通する微粉燃料の流量、配管100bを流通する微粉燃料を含む流体の流速、及び配管100bに対する微粉燃料の衝突角度の少なくともいずれか1つに対する変更指令要求を出力することとしてもよい。具体的には、配管100bの肉厚が下限肉厚値未満となった場合、または減肉速度が最大減肉速度以上となった場合に、出力部66から変更指令要求が出力される。変更指令要求によって、予め設定した変更内容に従い自動的に変更が行われても良いし、作業員等に通知が行われ、手動で変更が行われることとしてもよい。
【0094】
固体燃料の種類は、例えば、粉砕により微粉燃料(固体粒子)となる粒子の硬度が低い性質を保有する固体燃料に種類変更されることで、摩耗による配管100bの減肉の進行を抑制することができる。配管100bを流通する微粉燃料の流量は、微粉燃料の流量が減少されるように、例えば、粉砕機に供給される固体燃料の流量が減少するように変更されることで、摩耗による減肉の進行を抑制することができる。配管100bを流通する微粉燃料を含む流体の流速は、流速が減少されるように、例えば、搬送用ガスの流量が減少するように変更されることで、摩耗による減肉の進行を抑制することができる。また、摩耗による配管100bの減肉の進行を抑制するには、配管100bのサイズを増加させてもよい。配管100bに対する微粉燃料の衝突角度は、衝突角度が
図7に示すような所定値α1から離れるように、例えば、配管100bの配置が変更されることで、摩耗による減肉の進行を抑制することができる。
【0095】
摩耗による配管100bの減肉の進行を抑制するにあたり、固体燃料の種類、配管を流通する微粉燃料の流量、配管100bを流通する微粉燃料を含む流体の流速、及び配管100bに対する微粉燃料の衝突角度の少なくともいずれか1つによっても摩耗による減肉の抑制を図ることができる。このため、減肉量の計測結果に基づいて出力部から変更指令が出力されることで、減肉抑制の対応を図ることができる。なお、変更指令によっては、手動で対応が行われてもよいし、自動で対応が実行されてもよい。
【0096】
以上説明した各実施形態に記載の減肉監視システム及び発電プラント、並びに減肉監視方法、並びに減肉監視プログラムは例えば以下のように把握される。
本開示に係る減肉監視システム(60)は、固体粒子を含む流体が流通する配管(100b)において、前記固体粒子の衝突による前記配管(100b)の内周面の摩耗の進行度合を表す摩耗リスクを評価する評価部(61)と、前記摩耗リスクの評価結果に基づいて、前記配管(100b)に対して監視対象範囲を設定する設定部(62)と、前記監視対象範囲において設定された複数の計測候補位置の減肉量情報に基づいて、前記配管(100b)における減肉量を計測する計測手段の設置位置を選定する選定部(63)と、を備える。
【0097】
本開示に係る減肉監視システム(60)によれば、配管(100b)の内周面の摩耗リスクを評価し、摩耗リスクの評価結果に基づいて配管(100b)に対して監視対象範囲を設定するため、摩耗リスクによって監視対象範囲を絞り込むことができる。そして、監視対象範囲における複数の計測候補位置の減肉量情報により減肉量を計測する計測手段の設置位置を選定することによって、より効率的に計測手段の設置位置を決定することが可能となる。すなわち、計測手段を、配管(100b)の減肉監視において、必要な領域内におけるより必要な計測位置に適切に配置することが可能となる。
【0098】
本開示に係る減肉監視システム(60)は、前記評価部(61)は、前記配管(100b)の配管サイズと、前記配管(100b)に対する前記固体粒子の衝突角度とに対応して予め設定された摩耗リスクの関係情報、及び前記配管(100b)を流通する前記固体粒子を含む流体の流速と、前記配管(100b)に対する前記固体粒子の衝突角度とに対応して予め設定された摩耗リスクの関係情報の少なくともいずれか一方に基づいて、前記固体粒子の衝突による前記配管(100b)の内周面の摩耗リスクを評価することとしてもよい。
【0099】
本開示に係る減肉監視システム(60)によれば、配管(100b)の配管サイズと衝突角度とに対応した摩耗リスクの関係情報、及び流速と衝突角度とに対応して予め設定された摩耗リスクの関係情報の少なくともいずれか一方によることで、固体粒子の衝突による配管(100b)の内周面の摩耗リスクをより精度よく評価することが可能となる。
【0100】
本開示に係る減肉監視システム(60)は、前記摩耗リスクの関係情報は、予め設定された前記配管(100b)に対する前記固体粒子の衝突角度と摩耗との対応関係に基づいて設定されることとしてもよい。
【0101】
本開示に係る減肉監視システム(60)によれば、固体粒子の衝突による配管の摩耗は、配管(100b)に対する固体粒子の衝突角度に依存するため、予め設定した衝突角度と摩耗度合との対応関係に基づくことで、摩耗リスクの評価において用いる関係情報を適切に設定することが可能となる。
【0102】
本開示に係る減肉監視システム(60)は、前記配管(100b)の内周面の前記摩耗リスクの評価結果に基づいて、最も高いリスク評価となった前記配管(100b)の内周面に対して、摩耗対策の施工範囲を特定する特定部(65)を備えることとしてもよい。
【0103】
本開示に係る減肉監視システム(60)によれば、計測手段を、必要な領域内におけるより必要な計測位置に適切に配置することができるため、摩耗対策の施工範囲をより適切に特定することが可能となる。摩耗対策がより適切な施工範囲に施工されることによって、減肉による配管(100b)の異常発生を効果的に防止することができる。また、必要性の低い範囲への摩耗対策の施工を抑制してコストの低減を図ることも可能となる。
【0104】
本開示に係る減肉監視システム(60)は、前記摩耗対策は、クロム含有合金鋼の板状部材または環状部材が前記配管(100b)の内周面に貼り付けられることとしてもよい。
【0105】
本開示に係る減肉監視システム(60)によれば、耐摩耗材としてクロム含有合金鋼を用いることで効果的に配管内周面の摩耗を抑制することが可能となる。
【0106】
本開示に係る減肉監視システム(60)は、前記摩耗対策は、セラミックスの板状部材が前記配管(100b)の内周面に貼り付けられることとしてもよい。
【0107】
本開示に係る減肉監視システム(60)によれば、耐摩耗材としてセラミックスを用いることで効果的に配管内周面の摩耗を抑制することが可能となる。
【0108】
本開示に係る減肉監視システム(60)は、前記計測手段の計測結果に基づいて、前記配管(100b)の肉厚が下限肉厚値未満となっているか否か、及び前記配管(100b)の減肉速度が最大減肉速度以上となっているか否かの少なくともいずれか一方を判定する判定部(64)を備えることとしてもよい。
【0109】
本開示に係る減肉監視システム(60)によれば、計測手段の計測結果に基づくことで、肉厚が下限肉厚値未満となっているか否か、及び配管(100b)の減肉速度が最大減肉速度以上となっているか否かを効果的に判定することができる。判定結果に応じて、配管(100b)の交換や耐摩耗材の貼り付け等の摩耗対策の施工実施タイミングを適切に設定することができる。
【0110】
本開示に係る減肉監視システム(60)は、前記計測手段による前記配管(100b)の内周面の減肉量の計測結果に基づいて、粉砕により前記固体粒子となる固体燃料の種類、前記配管(100b)を流通する前記固体粒子の流量、前記配管(100b)を流通する前記固体粒子を含む流体の流速、及び前記配管(100b)に対する前記固体粒子の衝突角度の少なくともいずれか1つに対する変更指令要求を出力する出力部(66)と、を備えることとしてもよい。
【0111】
本開示に係る減肉監視システム(60)によれば、粉砕して固体粒子となる固体燃料の種類、配管(100b)を流通する固体粒子の流量、配管(100b)を流通する固体粒子を含む流体の流速、及び配管(100b)に対する固体粒子の衝突角度の少なくともいずれか1つによって、配管の減肉の抑制を図ることができる。このため、減肉量の計測結果に基づいて変更指令要求が出力されることで、作業員などに減肉抑制の対応を促すことができる。なお、変更指令によっては、作業員などにより手動で対応が行われてもよいし、自動で対応が実行されてもよい。
【0112】
本開示に係る減肉監視システム(60)は、前記計測候補位置は、前記監視対象範囲において、前記配管(100b)の周方向及び長手軸方向に設定されていることとしてもよい。
【0113】
本開示に係る減肉監視システム(60)によれば、監視対象範囲において、配管(100b)の周方向及び軸方向の複数位置に計測候補位置が設けられることで、より効率的に計測手段の設置位置を選定することが可能となる。
【0114】
本開示に係る発電プラント(1)は、ボイラ(200)と、固体燃料を粉砕する粉砕機(10)と、前記粉砕機(10)において生成された微粉燃料を固体粒子として前記ボイラ(200)へ搬送する配管(100b)と、上記の減肉監視システム(60)と、を備える。
【0115】
本開示に係る減肉監視方法は、固体粒子を含む流体が流通する配管(100b)において、前記固体粒子の衝突による前記配管(100b)の内周面の摩耗の進行度合を表す摩耗リスクを評価する工程と、前記摩耗リスクの評価結果に基づいて、前記配管(100b)に対して監視対象範囲を設定する工程と、前記監視対象範囲において設定された複数の計測候補位置の減肉量情報に基づいて、前記配管(100b)における減肉量を計測する計測手段の設置位置を選定する工程と、を有する。
【0116】
本開示に係る減肉監視プログラムは、固体粒子を含む流体が流通する配管(100b)において、前記固体粒子の衝突による前記配管(100b)の内周面の摩耗の進行度合を表す摩耗リスクを評価する処理と、前記摩耗リスクの評価結果に基づいて、前記配管(100b)に対して監視対象範囲を設定する処理と、前記監視対象範囲において設定された複数の計測候補位置の減肉量情報に基づいて、前記配管(100b)における減肉量を計測する計測手段の設置位置を選定する処理と、をコンピュータに実行させる。
【符号の説明】
【0117】
1 :発電プラント
10 :ミル(粉砕部、固体燃料粉砕機)
11 :ハウジング
12 :回転テーブル
13 :ローラ
14 :駆動部
16 :回転式分級機
16a :ブレード
17 :燃料供給部
18 :分級機モータ
19 :出口
20 :給炭機(燃料供給機)
21 :バンカ
22 :搬送部
23 :搬送モータ
24 :ダウンスパウト部
30 :送風部
30a :熱ガス流路
30b :冷ガス流路
30c :熱ガスダンパ
30d :冷ガスダンパ
31 :一次空気通風機
32 :押込気通風機
34 :熱交換器
40 :状態検出部
41 :底面部
42 :天井部
45 :ジャーナルヘッド
47 :支持アーム
48 :支持軸
49 :押圧装置
50 :制御部
60 :減肉監視システム
61 :評価部
62 :設定部
63 :選定部
64 :判定部
65 :特定部
66 :出力部
100 :固体燃料粉砕装置
100a :一次空気流路
100b :配管
120 :ROM
130 :RAM
140 :ハードディスクドライブ
150 :通信部
160 :CPU
180 :バス
200 :ボイラ
210 :火炉
220 :バーナ部
R1 :リスクマップ
R2 :リスクマップ