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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】非水電解質電池及び電池パック
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0525 20100101AFI20240408BHJP
   H01M 4/131 20100101ALI20240408BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20240408BHJP
   H01M 4/485 20100101ALI20240408BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20240408BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20240408BHJP
【FI】
H01M10/0525
H01M4/131
H01M4/36 E
H01M4/485
H01M4/505
H01M4/525
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020032899
(22)【出願日】2020-02-28
(65)【公開番号】P2021136188
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2023-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】西尾 尚己
(72)【発明者】
【氏名】村司 泰章
(72)【発明者】
【氏名】服部 将司
【審査官】山下 裕久
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/020667(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/023501(WO,A1)
【文献】特開2010-153258(JP,A)
【文献】特開2015-149267(JP,A)
【文献】国際公開第2013/128678(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/052
H01M 4/13
H01M 4/36
H01M 4/485
H01M 4/505
H01M 4/525
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム含有マンガン酸化物とリチウム含有ニッケルコバルトマンガン酸化物とを含む正極活物質を備え、前記正極活物質における前記リチウム含有ニッケルコバルトマンガン酸化物の含有量が3wt%以上20wt%以下の正極活物質含有層を含む正極と、
リチウムチタン含有酸化物としてスピネル型構造を有するチタン酸リチウムを含有する負極活物質含有層を含む負極と、
非水電解質とを含む非水電解質電池であって
前記非水電解質電池を0.2Cで1.8Vまで放電した時の前記正極の開回路電圧が3.6V(vs.Li/Li )以上3.9V(vs.Li/Li )以下であり、かつ下記(1)式を満たす、非水電解質電池。
0.005≦(GCo/SCo)/(GTi/STi)≦0.15 (1)
但し、GCoは、前記正極活物質含有層に含まれるCo重量(mg)、SCoは、前記正極活物質含有層の面積(cm)、GTiは、前記負極活物質含有層に含まれるTi重量(mg)、STiは、前記負極活物質含有層の面積(cm)である。
【請求項2】
前記正極の厚さが100μm以下である、請求項1に記載の非水電解質電池。
【請求項3】
前記正極の密度が2.5g/cc以上3.1g/cc以下である、請求項1~のいずれか1項に記載の非水電解質電池。
【請求項4】
下記(2)式を満たす、請求項1~のいずれか1項に記載の非水電解質電池。
0.9≦A/B≦1.1 (2)
但し、Aは前記正極の充放電範囲が3.0V(vs.Li/Li)以上4.25V(vs.Li/Li)以下である時の単位面積当たりの充電容量(mAh/m)であり、Bは前記負極の充放電範囲が1.4V(vs.Li/Li)以上2.0V(vs.Li/Li)以下である時の単位面積当たりの充電容量(mAh/m)である。
【請求項5】
請求項1~のいずれか1項に記載の非水電解質電池を含む、電池パック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、非水電解質電池及び電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池を含め、二次電池は、携帯機器、自動車などの車両や蓄電池などに広く用いられている。二次電池は、市場規模の拡大が見込まれている蓄電デバイスである。
【0003】
二次電池は、正極及び負極を含む電極を含んでいる。二次電池は、電解質をさらに含み得る。ある設計の二次電池の電極は、集電体と、この集電体の主面上に設けられた活物質含有層とを備える。電極の活物質含有層は、例えば、活物質粒子、導電剤、及びバインダにより構成される層であり得、電解質を保持可能な多孔体であり得る。
【0004】
リチウムイオン電池または二次電池の正極に用いられる一例の活物質として、リチウム含有マンガン酸化物がある。正極にリチウム含有マンガン酸化物を用い、負極にチタン酸リチウムを用いたリチウムイオン二次電池は、低温出力や寿命性能に優れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2016/132436号
【文献】国際公開第2016/143123号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
充放電サイクル寿命に優れた非水電解質電池、及びこの電池を具備する電池パックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態によれば、正極と、リチウムチタン含有酸化物としてスピネル型構造を有するチタン酸リチウムを含有する負極活物質含有層を含む負極と、非水電解質とを含み、かつ下記(1)式を満たす、非水電解質電池が提供される。正極は、リチウム含有マンガン酸化物とリチウム含有ニッケルコバルトマンガン酸化物とを含む正極活物質を含有する正極活物質含有層を含む。正極活物質におけるリチウム含有ニッケルコバルトマンガン酸化物の含有量が3wt%以上20wt%以下である。
0.005≦(GCo/SCo)/(GTi/STi)≦0.15 (1)
但し、GCoは、正極活物質含有層に含まれるCo重量(mg)、SCoは、正極活物質含有層の面積(cm)、GTiは、負極活物質含有層に含まれるTi重量(mg)、STiは、負極活物質含有層の面積(cm)である。
また、非水電解質電池を0.2Cで1.8Vまで放電した時の正極の開回路電圧が3.6V(vs.Li/Li )以上3.9V(vs.Li/Li )以下である。
【0008】
他の実施形態によれば、上記実施形態に係る非水電解質電池を含む電池パックが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る電池の一例を示す一部切欠き斜視図。
図2図1に示す電池のA部の拡大断面図。
図3】実施形態に係る電池の他の例を示す一部切欠き斜視図。
図4】実施形態に係る電池のさらに他の例を示す一部切欠き斜視図。
図5図4に示す電池のB部の拡大断面図。
図6】実施形態に係る電池パックの一例を示す分解斜視図。
図7図6に示す電池パックの電気回路の一例を示すブロック図。
図8】第1の正極活物質のみを活物質とする正極Aの放電電位曲線を示すグラフ。
図9】第2の正極活物質のみを活物質とする正極Bの放電電位曲線を示すグラフ。
図10】第1の正極活物質と第2の正極活物質を活物質とする正極Cの放電電位曲線を示すグラフ。
図11】正極Cを備えた実施形態の非水電解質電池の正極と負極の充放電電位曲線を示すグラフ。
図12】正極Cを備えた実施形態の非水電解質電池の正極と負極の充放電電位曲線を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0010】
正極にリチウム含有マンガン酸化物を用い、負極にチタン酸リチウムを用いたリチウムイオン二次電池は、低温出力や寿命性能に優れる。一方で、このような電池ではガス発生が生じるという課題があった。また、正極からのMn溶出による電池性能の劣化という課題があった。
【0011】
ガス発生に対する対策として、層状構造を持つ活物質を加えることができる。そういった活物質の中でもリチウム含有コバルト酸化物はガス吸着材の役割を果たすため、リチウム含有マンガン酸化物とリチウム含有コバルト酸化物の双方を正極活物質に用いることでガス発生が低減する。
【0012】
しかし、リチウム含有コバルト酸化物には、高電位での劣化が大きいという課題がある。そこで、リチウム含有コバルト酸化物の代替としてリチウム含有ニッケルコバルトマンガン酸化物を用いることが検討されている。リチウム含有ニッケルコバルトマンガン酸化物は、リチウムイオンを吸蔵放出する際の膨張収縮が大きく、サイクル寿命性能に課題がある。
【0013】
以下に、実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、実施の形態を通して共通の構成には同一の符号を付すものとし、重複する説明は省略する。また、各図は実施の形態の説明とその理解とを促すための模式図であり、その形状や寸法、比などは実際の装置と異なる個所があるが、これらは以下の説明と公知の技術とを参酌して、適宜設計変更することができる。
【0014】
(第1の実施形態)
第1の実施形態によると、正極活物質含有層を含む正極と、負極活物質含有層を含む負極と、非水電解質とを含む非水電解質電池が提供される。正極活物質含有層は、第1の正極活物質としてのリチウム含有マンガン酸化物と第2の正極活物質としてのリチウム含有ニッケルコバルトマンガン酸化物とを含む正極活物質を含む。正極活物質中の第2の正極活物質の含有量が3wt%以上20wt%以下である。負極活物質含有層は、リチウムチタン含有酸化物を含む。非水電解質電池は、下記(1)式を満たす。
【0015】
0.005≦(GCo/SCo)/(GTi/STi)≦0.15 (1)
但し、GCoは、正極活物質含有層に含まれるCo重量(mg)、SCoは、正極活物質含有層の面積(cm)、GTiは、負極活物質含有層に含まれるTi重量(mg)、STiは、負極活物質含有層の面積(cm)である。
【0016】
正極活物質中の第2の正極活物質の含有量を上記範囲にする理由と、(GCo/SCo)/(GTi/STi)の比を(1)式の範囲に特定する理由とを説明する。
含有量を3wt%未満にするか、あるいは(GCo/SCo)/(GTi/STi)で表される比の値を0.005未満にすると、負極における非水電解質の還元分解で発生するガスを正極で吸収できないため、サイクル性能に劣る。また、含有量が20wt%を超えると、サイクル性能に劣る。一方、(GCo/SCo)/(GTi/STi)で表される比の値が0.15を超えると、正極の初回充電電位曲線と放電電位曲線とのずれの大きさに拘わらず、サイクル性能が劣ったものになる。
【0017】
以上説明した理由により、正極活物質中の第2の正極活物質の含有量を上記範囲にすると共に、(GCo/SCo)/(GTi/STi)の比を(1)式の範囲に特定することにより、サイクル性能を向上することが可能である。
【0018】
正極活物質中の第2の正極活物質の含有量のより好ましい範囲は4wt%以上10wt%以下である。また、(GCo/SCo)/(GTi/STi)で表される比の値のより好ましい範囲は0.01以上0.08以下である。第2の正極活物質の含有量または比の値をこの範囲に特定するか、あるいは両者の値を特定することにより、サイクル性能をより向上することができる。
【0019】
(GCo/SCo)/(GTi/STi)値は、第1正極活物質と第2正極活物質それぞれの組成、正極活物質中の第2正極活物質の重量比率、負極活物質の組成、負極活物質含有層の組成、あるいは正極と負極それぞれの目付量(g/m)を調整することにより目的とする値に設定可能なものである。
【0020】
非水電解質電池を0.2Cで1.8Vまで放電した時の正極の開回路電圧を3.6V(vs.Li/Li)以上3.9V(vs.Li/Li)以下にすることが望ましい。開回路電圧を3.6V(vs.Li/Li)以上にすることにより、過放電による正極の劣化を抑制することができる。また、開回路電圧を3.9V(vs.Li/Li)以下にすることにより、正極の開回路電圧が3.9V(vs.Li/Li)よりも高い範囲を充放電領域として使用することができるため、高容量を得ることができる。非水電解質電池を0.2Cで1.8Vまで放電した時の正極の開回路電圧のより好ましい範囲は、3.65V(vs.Li/Li)以上3.80V(vs.Li/Li)以下である。
【0021】
図8図12は、電極の放電電位曲線又は充放電電位曲線を示す。なお、正極電位は、0.2Cで4.25Vまで定電流定電圧(CCCV)充電後、0.2Cで3.1Vまで放電した際のものである。また、負極電位は、0.2Cで1.4VまでCCCV充電後、0.2Cで2Vまで放電した際のものである。第1の正極活物質のみからなる正極活物質を含む正極(以下、正極A)の放電電位曲線を図8に、第2の正極活物質のみからなる正極活物質を含む正極(以下、正極B)の放電電位曲線を図9に、第1の正極活物質と第2の正極活物質からなり、第2の正極活物質の含有量が10wt%の正極活物質を含む正極(以下、正極C)の放電電位曲線を図10に示す。図8図10のグラフにおける横軸はDOD(放電深度:degree of discharge)、縦軸は正極電位V(vs.Li/Li)を示す。図8に示す通り、正極Aの電位は、DODが90%程度まで4.0V(vs.Li/Li)以上であり、DODが100%付近で急峻に3.0V(vs.Li/Li)程度まで下降する。図9に示す通り、正極Bの電位は、DODの進行と共に正極電位がほぼ連続的に下降する。また、図10に示す通り、正極Cの電位は、DODが90%程度まで3.8V以上で、100%付近で急峻に下降する。電位がこのような特徴を有する正極は、例えば、第1の正極活物質と第2の正極活物質とを混合し、正極活物質における第2の正極活物質の含有量を3wt%以上20wt%以下にすることにより、得られる。この正極とリチウムチタン含有酸化物を含む負極とを用い、非水電解質の組成、エージング条件などの製造条件を調整することにより、非水電解質電池を0.2Cで1.8Vまで放電した時の正極の開回路電圧を3.6V(vs.Li/Li)以上3.9V(vs.Li/Li)以下にすることができる。
【0022】
正極Cと、リチウムチタン含有酸化物を含む負極とを備えた実施形態に係る非水電解質電池のうち、上記開回路電圧を満たす非水電解質電池の充放電電位曲線を図11に、上記開回路電圧を満たさない非水電解質電池の充放電電位曲線を図12に示す。図11図12の横軸が電池の容量(Ah)で、縦軸が電位V(vs.Li/Li)を示す。
図11において、正極Cの充放電電位曲線をPで、負極の充放電電位曲線をNで示す。PとNとの電位差が1.8Vの時の正極の開回路電圧が例えば3.64V(vs.Li/Li)である。過放電が進行すると、正極電位Pが低下する一方で、負極電位Nも上昇するため、正極電位Pが極端に下がりきらない状態で過放電を停止することができる。
【0023】
一方、図12において、正極Aの充放電電位曲線をPで、負極の充放電電位曲線をNで示す。PとNとの電位差が1.8Vの時の正極の開回路電圧が3.6V(vs.Li/Li)よりも小さい(例えば3.55V(vs.Li/Li))。この場合、過放電が進行すると、正極電位Pの低下が進みやすい傾向がある。
また、正極の充放電範囲が3.0V(vs.Li/Li)以上4.25V(vs.Li/Li)以下である時の単位面積当たりの充電容量をA(mAh/m)、負極の充放電範囲が1.4V(vs.Li/Li)以上2.0V(vs.Li/Li)以下である時の単位面積当たりの充電容量をB(mAh/m)とした時、非水電解質電池は0.9≦A/B≦1.1 (2)を満たすことが望ましい。充電容量の比(A/B)を大きくすることは、正極の過放電については影響が小さいものの、正極電位が上がり難くなるので、過充電されにくくなり、サイクル特性を向上することができる。そのため、電池が(2)式:0.9≦A/B≦1.1を満たすことにより、電池のサイクル性能を向上することができる。
【0024】
以下、実施形態に係る電池を詳細に説明する。
(1)正極
正極は、正極集電体と、正極集電体の一方または両方の面に担持される正極活物質含有層とを含む。
【0025】
正極活物質含有層は、第1の正極活物質としてのリチウム含有マンガン酸化物と第2の正極活物質としてのリチウム含有ニッケルコバルトマンガン酸化物とを含む。正極活物質含有層中のリチウム含有ニッケルコバルトマンガン酸化物の含有量を3wt%以上20wt%以下にする。
【0026】
リチウム含有マンガン酸化物は、例えば、化学式LiMn2-xx4で表される化合物であるスピネル型マンガン酸リチウム含む。ここでMは、Mg、Ti、Cr、Fe、Co、Zn、Al、およびGaからなる群より選択される少なくとも一つである。添字xは、0.22以上0.7以下である。以降、リチウム含有マンガン酸化物を“LMO”と表記することがある。
【0027】
リチウム含有ニッケルコバルトマンガン酸化物は、例えば、LiNi1-y-zCoyMnz2(ここで、0<y<1、0<z<1及び0<y+z<1)を含む。
【0028】
正極活物質は、第1、第2の正極活物質以外の他の正極活物質を含んでいても良い。他の正極活物質は、例えば、リチウム含有コバルト酸化物、リチウム含有ニッケルコバルト複合酸化物、及びリチウム含有マンガンコバルト酸化物からなる群より選択される1以上の化合物を含むことができる。リチウム含有コバルト酸化物の例は、LiwCoO2を含む。当該化学式LiwCoO2における添字wの範囲は、0<w≦1である。リチウムニッケルコバルト複合酸化物の例は、LiNi1-yCoy2(ここで、0<y<1)を含む。リチウムマンガンコバルト酸化物の例は、LiMnCo1-y2(ここで、0<y<1)を含む。
【0029】
正極活物質は、例えば、粒子状である。粒子状である場合には、正極活物質は、一次粒子であってもよいし、又は一次粒子の凝集した二次粒子であってもよい。
【0030】
第1の正極活物質の粒子の平均粒子径は0.01μm以上10μm以下であることが好ましい。また、第2の正極活物質の粒子の平均粒子径は0.05μm以上30μm以下であることが好ましい。
【0031】
正極活物質含有層は、必要に応じて結着剤及び導電剤を含むことができる。
【0032】
結着剤は、活物質と導電剤とを結着させ得る。結着剤としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、又はフッ素系ゴムが含まれる。使用する結着剤の種類は、1種又は2種以上にすることができる。
【0033】
導電剤は、電子導電性を高め、集電体との接触抵抗を抑え得る。導電剤としては、例えば、アセチレンブラック、カーボンブラック、黒鉛、カーボンナノファイバー又はカーボンナノチューブなどの炭素材料が含まれる。使用する導電剤の種類は、1種又は2種以上にすることができる。
【0034】
正極活物質、導電剤及び結着剤の配合比は、正極活物質80~95重量%、導電剤3~18重量%、結着剤2~7重量%の範囲にすることが好ましい。
【0035】
集電体としては、例えば、電気伝導性の高い材料を含むシートを使用することができる。例えば、集電体としては、アルミニウム箔またはアルミニウム合金箔を使用することができる。アルミニウム箔又はアルミニウム合金箔を使用する場合、その厚さは、20μm以下であることが好ましい。アルミニウム合金箔は、マグネシウム(Mg)、チタニウム(Ti)、亜鉛(Zn)、マンガン(Mn)、及びケイ素(Si)等を含むことができる。また、アルミニウム合金箔は、他の遷移金属を含んでいてもよい。アルミニウム合金箔における遷移金属の含有量は、1質量%以下であることが好ましい。遷移金属としては、例えば、鉄(Fe)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、又はクロム(Cr)を挙げることができる。集電体は、アルミニウム箔、又は、アルミニウムと、Mg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu、及びSiから成る群より選択される一以上の元素とを含むアルミニウム合金箔であることが好ましい。
【0036】
集電体は、その表面に活物質含有層を担持していない部分を含むことができる。この部分は、例えば、電極集電タブとして働くことができる。或いは、電極は、電極集電体とは別体の電極集電タブをさらに具備することもできる。別体の電極集電タブは、電極に電気的に接続され得る。
【0037】
正極の厚さは、100μm以下にすることが望ましい。ここで、正極の厚さは、正極活物質含有層と正極集電体の合計厚さである。正極集電体の両面に正極活物質含有層が担持されている場合には、2つの正極活物質含有層と正極集電体の合計厚さが正極厚さである。正極の厚さを100μm以下にすることにより、正極の抵抗を低くすることができるため、正極にかかる過電圧を小さくすることができる。それにより、放電末期の正極電位の低下を抑制することができるため、正極の過放電による劣化を抑えることができる。実用的な電池容量を確保するため、正極の厚さは、30μm以上にすることが望ましい。
【0038】
正極活物質含有層の密度は、2.5g/cc以上3.1g/cc以下にすることが好ましい。これにより、正極の厚さが例えば100μm以下と薄くても、実用に耐え得る正極容量を確保することができる。
【0039】
正極活物質含有層の目付、すなわち単位面積当たりの重量(g/m)は、30g/m以上130g/m以下にすることができる。
【0040】
正極の製造では、まず、例えば正極活物質、正極導電剤及び結着剤を適当な溶媒に懸濁させ、得られたスラリーを正極集電体に塗布して乾燥させることにより正極活物質含有層を作成した後、プレスを施す。その他、正極活物質、正極導電剤及び結着剤をペレット状に形成し、正極活物質含有層として用いてもよい。
(2)負極
負極は、負極集電体と、負極集電体の一方または両方の面に担持される負極活物質含有層とを含む。負極活物質含有層は、リチウムチタン含有酸化物を含む。
【0041】
負極集電体は、表面に負極活物質含有層を担持していない部分を含むことができる。この部分は、負極タブとして働くことができる。或いは、負極は、負極集電体とは別体の負極タブを含むこともできる。
【0042】
リチウムチタン含有酸化物は、例えば、リチウムチタン酸化物、リチウムチタン酸化物の構成元素の一部を異種元素で置換したリチウムチタン複合酸化物、斜方晶型リチウムチタン含有酸化物、単斜晶型リチウムニオブチタン含有酸化物が含まれる。リチウムチタン酸化物には、例えば、スピネル型構造を有するチタン酸リチウム(例えばLi4+xTi12(xは充放電により変化する値で、0≦x≦3))、ラムスデライト型のチタン酸リチウム(例えばLi2+yTi(yは充放電により変化する値で、0≦y≦3))等を挙げることができる。一方、酸素のモル比についてはスピネル型Li4+xTi12では、12、ラムスデライト型Li2+yTiでは7と形式的には示しているが、酸素ノンストイキオメトリーなどの影響によってこれらの値は変化し得る。負極活物質の種類は1種類または2種類以上にすることができる。
【0043】
斜方晶型リチウムチタン含有酸化物としては、一般式Li2+wNa2-xM1Ti6-zM214+δで表され、M1はCs及び/又はKであり、M2はZr,Sn,V,Nb,Ta,Mo,W,Fe,Co,Mn,及びAlのうち少なくとも1つを含む化合物が挙げられ、0≦w≦4、0≦x≦2、0≦y≦2、0≦z<6、-0.5≦δ≦0.5である。
【0044】
単斜晶型リチウムニオブチタン含有酸化物としては、一般式LiTi1-yM3Nb2-zM47+δで表され、M3はZr、Si、Sn、Fe、Co、Mn及びNiから成る群から選択される少なくとも1つであり、M4はV,Nb,Ta,Mo,W及びBiから成る群から選択される少なくとも1つである化合物が挙げられ、0≦x≦5、0≦y<1、0≦z<2、-0.3≦δ≦0.3である。
【0045】
リチウムチタン含有酸化物は、例えば、粒子状である。粒子状である場合には、リチウムチタン含有酸化物は、一次粒子であってもよいし、又は一次粒子の凝集した二次粒子であってもよい。
【0046】
リチウムチタン含有酸化物の粒子の平均粒子径は0.01μm以上10μm以下であることが好ましい。
【0047】
負極活物質含有層は、必要に応じて導電剤及び結着剤を含んでいても良い。
【0048】
結着剤は、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ素系ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリイミド、ポリアミドなどを挙げることができる。結着剤の種類は1種類または2種類以上にすることができる。
【0049】
負極導電剤としては、例えばアセチレンブラック、ケッチェンブラックなどのカーボンブラック、黒鉛、炭素繊維、カーボンナノチューブ、フラーレンなどを挙げることができる。導電剤の種類は1種類または2種類以上にすることができる。
【0050】
負極活物質含有層における負極活物質、導電剤および結着剤の配合割合は、負極活物質70重量%以上96重量%以下、導電剤2重量%以上28重量%以下および結着剤2重量%以上28重量%以下にすることが好ましい。
【0051】
負極活物質含有層の密度は、2.0g/cm以上にすることが好ましい。
【0052】
集電体は、アルミニウム箔またはアルミニウム合金箔であることが好ましい。アルミニウム箔又はアルミニウム合金箔を使用する場合、その厚さは、20μm以下であることが好ましい。アルミニウム合金箔は、マグネシウム(Mg)、チタニウム(Ti)、亜鉛(Zn)、マンガン(Mn)、及びケイ素(Si)等を含むことができる。また、アルミニウム合金箔は、他の遷移金属を含んでいてもよい。アルミニウム合金箔における遷移金属の含有量は、1質量%以下であることが好ましい。遷移金属としては、例えば、鉄(Fe)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、又はクロム(Cr)を挙げることができる。集電体は、アルミニウム箔、又は、アルミニウムと、Mg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu、及びSiから成る群より選択される一以上の元素とを含むアルミニウム合金箔であることが好ましい。
【0053】
負極は、例えば負極活物質、負極導電剤及び結着剤を適当な溶媒に懸濁し、得られたスラリーを、負極集電体に塗布し、乾燥し、負極活物質含有層を作製した後、プレスを施すことにより作製される。その他、負極活物質、負極導電剤及び結着剤をペレット状に形成し、負極活物質含有層として用いてもよい。
【0054】
負極の厚さは、20μm以上80μm以下の範囲にすることができる。ここで、負極の厚さは、負極活物質含有層と負極集電体の合計厚さである。負極集電体の両面に負極活物質含有層が担持されている場合には、2つの負極活物質含有層と負極集電体の合計厚さが負極厚さである。
【0055】
負極活物質含有層の目付、すなわち単位面積当たりの重量(g/m)は、10g/m以上80g/m以下にすることができる。
(3)非水電解質
非水電解質は、電解質を非水溶媒に溶解し調整される液状非水電解質、液状非水電解質と高分子材料を複合化したゲル状非水電解質等が挙げられる。
【0056】
電解質は、例えば、過塩素酸リチウム(LiClO)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF)、六フッ化砒素リチウム(LiAsF)、ジフルオロリン酸リチウム(LiPO)、トリフルオロメタスルホン酸リチウム(LiCFSO)、ビストリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム[LiN(CFSO]、四フッ化アルミニウムリチウム(LiAlF)、下記化1に示すリチウムジフルオロビスオキサレートホスフェート(LiDFBOP)などのリチウム塩を挙げることができる。これらの電解質は、単独または2種類以上を混合してもよい。電解質は、六フッ化リン酸リチウムを含むものが好ましい。より好ましい電解質は、第1電解質として六フッ化リン酸リチウムと、第2電解質として四フッ化ホウ酸リチウム及びリチウムジフルオロビスオキサレートホスフェートのうちの少なくとも一方とを含むものである。この組成の電解質を含む非水電解質は、負極の表面にリチウムイオン伝導性の保護被膜を形成することが可能である。保護被膜の形成により、放電末期の負極の充放電電位を貴側にシフトさせることができる。
【0057】
【化1】
【0058】
電解質は、非水溶媒に対して0.5mol/L以上2.5mol/L以下の範囲で溶解させることが好ましい。
【0059】
非水電解質に第2の電解質を含有させる場合、第2の電解質は、非水溶媒に対して0.01mol/L以上0.5mol/L以下の範囲で溶解させることが好ましい。第2の電解質の濃度を0.01mol/L以上にすることにより、負極表面に均一にリチウムイオン伝導性の保護被膜を形成することができる。第2の電解質の濃度を0.5mol/L以下にすることにより、保護被膜形成による負極抵抗の上昇を抑制することができる。
【0060】
非水溶媒は、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ビニレンカーボネート(VC)などの環状カーボネート;ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)などの鎖状カーボネート;テトラヒドロフラン(THF)、2メチルテトラヒドロフラン(2MeTHF)などの環状エーテル;ジメトキシエタン(DME)などの鎖状エーテル;γ-ブチロラクトン(BL)などの環状エステル;酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどの鎖状エステル;アセトニトリル(AN);スルホラン(SL)等の有機溶媒を挙げることができる。これらの有機溶媒は、単独または2種以上の混合物の形態で用いることができる。
【0061】
ゲル状非水電解質に用いる高分子材料としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエチレンオキシド(PEO)等を挙げることができる。
【0062】
正極と負極とは、電極群を構成することができる。電極群においては、正極活物質含有層と負極活物質含有層とが、例えば、セパレータを介して対向することができる。
【0063】
電極群は、様々な構造を有することができる。例えば、電極群は、スタック型の構造を有することができる。スタック型構造の電極群は、例えば、複数の正極及び複数の負極を、正極活物質含有層と負極活物質含有層との間にセパレータを挟んで交互に積層することによって得ることができる。或いは、電極群は、捲回型の構造を有することができる。捲回型の電極群は、例えば、一枚のセパレータと、一枚の負極と、もう一枚のセパレータと、一枚の正極とをこの順で積層させて積層体を作り、この積層体を捲回することによって得ることができる。
【0064】
セパレータの材質は、特に限定されない。セパレータは、電気的絶縁性を有することが望ましい。セパレータとしては、例えば、多孔質フィルム(porous film)、微多孔性の膜(microporous film)、織布、若しくは不織布、又はこれらのうち同一材若しくは異種材の積層物などを用いることができる。セパレータを形成する材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合ポリマー、エチレン-ブテン共重合ポリマー、ポリオレフィン、セルロース、ポリエチレンテレフタレート、及びビニロンのようなポリマーなどを挙げることができる。セパレータの材料は1種類であってもよく、或いは、2種類以上を組合せて用いてもよい。
【0065】
セパレータの厚さは、2μm以上30μm以下であることが好ましい。
【0066】
実施形態に係る非水電解質電池は、正極端子及び負極端子を更に具備することができる。正極端子は、その一部が正極の一部に電気的に接続されることによって、正極と外部端子との間で電子が移動するための導体として働くことができる。正極端子は、例えば、正極集電体、特に正極タブに接続することができる。同様に、負極端子は、その一部が負極の一部に電気的に接続されることによって、負極と外部端子との間で電子が移動するための導体として働くことができる。負極端子は、例えば、負極集電体、特に負極タブに接続することができる。
【0067】
外装部材は、電極群及び非水電解質を収容する。非水電解質は、外装部材内で、電極群に含浸され得る。正極端子及び負極端子のそれぞれの一部は、外装部材から延出させることもできる。
【0068】
外装部材は、ラミネートフィルムから形成しても金属製容器で構成してもよい。金属製容器を用いる場合、蓋は容器と一体または別部材にすることができる。金属製容器の肉厚は0.5mm以下、0.2mm以下であるとより好ましい。外装部材の形状としては、扁平型、角型、円筒型、コイン型、ボタン型、シート型、積層型などが挙げられる。携帯用電子機器などに積載される小型電池の他、二輪ないしは四輪の自動車に積載される大型電池でもよい。
【0069】
ラミネートフィルム製外装部材の肉厚は0.2mm以下であることが望ましい。ラミネートフィルムの例には、樹脂フィルムと樹脂フィルム間に配置された金属層とを含む多層フィルムが挙げられる。金属層は、軽量化のためにアルミニウム箔もしくはアルミニウム合金箔が好ましい。樹脂フィルムは、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの高分子材料を用いることができる。ラミネートフィルムは、熱融着によりシールを行って外装部材の形状に成形することができる。
【0070】
金属製容器は、アルミニウムまたはアルミニウム合金などから作られる。アルミニウム合金としては、マグネシウム、亜鉛、ケイ素などの元素を含む合金が好ましい。アルミニウムまたはアルミニウム合金において、鉄、銅、ニッケル、クロムなどの遷移金属の含有量は100ppm以下にすることが高温環境下での長期信頼性、放熱性を飛躍的に向上させる上で好ましい。
【0071】
アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる金属製容器は、平均結晶粒径が50μm以下、より好ましくは30μm以下、さらに好ましくは5μm以下であることが望ましい。平均結晶粒径を50μm以下とすることによって、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる金属製容器の強度を飛躍的に増大させることができ、容器のより一層の薄肉化が可能になる。その結果、軽量かつ高出力で長期信頼性に優れた車載などに適切な非水電解質電池を実現することができる。
【0072】
次に、実施形態に係る非水電解質電池の具体例を、図面を参照しながら説明する。
【0073】
まず、図1及び図2を参照しながら、実施形態に係る第1の例の非水電解質電池を説明する。
【0074】
図1は、実施形態に係る非水電解質電池の一例の一部切欠斜視図である。図2は、図1に示す非水電解質電池のA部の拡大断面図である。
【0075】
図1及び図2に示す非水電解質電池100は、扁平型の電極群1とラミネートフィルム製の外装部材7を具備する。扁平型の電極群1は、負極2と、正極3と、セパレータ4とを含む。扁平型の電極群1は、負極2と正極3とがその間にセパレータ4を介して扁平形状に捲回されたものである。
【0076】
負極2は、図2に示すように、負極集電体2aと、負極集電体2a上に担持された負極活物質含有層2bとを具備する。なお、図2に示すように、負極2の最外側に位置する部分では、負極集電体2aの2つの主面のうち正極3と向き合わない主面上には、負極活物質含有層2bが担持されていない。負極2のその他の部分では、負極集電体の両方の主面上に、負極活物質含有層2bが担持されている。正極3は、図2に示すように、正極集電体3aと、正極集電体3aの2つの主面上に担持された正極活物質含有層3bとを具備する。
【0077】
負極2には帯状の負極端子5が電気的に接続されている。正極3には帯状の正極端子6が電気的に接続されている。
【0078】
電極群1は、ラミネートフィルム製の外装部材7内に、負極端子5及び正極端子6の端部を外装部材7から延出させた状態で収容されている。ラミネートフィルム製外装部材7内には、図示しない非水電解質が収容されている。非水電解質は、電極群1に含浸されている。ラミネートフィルム製の外装部材7は、一端部に負極端子5と正極端子6とを挟んだ状態で、この端部及びこの端部と直交する二端部それぞれを熱融着させることにより封止されている。
【0079】
次に、実施形態に係る電池の他の例を、図3を参照しながら詳細に説明する。図3は、実施形態に係る電池の他の例を示す一部切欠き斜視図である。
【0080】
図3に示す電池100は、外装部材が金属製容器17a及び封口板17bから構成されている点で、図1及び図2に示す電池100と異なる。
【0081】
扁平型の電極群1は、図1及び図2に示す電池100における電極群1と同様に、負極と、正極と、セパレータとを含む。また、図1図3との間で、電極群1は同様な構造を有している。ただし図3では、後述するとおり負極端子5及び正極端子6に代わって、負極リード15a及び正極リード16aが、それぞれ、負極及び正極に電気的に接続されている。
【0082】
図3に示す電池100では、このような電極群1が、金属製容器17aの中に収容されている。金属製容器17aは、図示しない電解質をさらに収容している。金属製容器17aは、金属製の封口板17bにより封止されている。金属製容器17aと封口板17bとは、例えば、外装部材としての外装缶を構成する。
【0083】
負極リード15aは、その一端が負極集電体に電気的に接続され、他端が負極端子15に電気的に接続されている。正極リード16aは、その一端が正極集電体に電気的に接続され、他端が封口板17bに固定された正極端子16に電気的に接続されている。正極端子16は、封口板17bに絶縁部材17cを介して固定されている。正極端子16と封口板17bとは、絶縁部材17cにより電気的に絶縁されている。
【0084】
図4及び図5に、電池のさらに他の例として、スタック型の電極群を含む電池を示す。図4は、実施形態に係る電池のさらに他の例を示す一部切欠き斜視図である。図5は、図4に示す電池のB部の拡大断面図である。
【0085】
図4及び図5に示す例の電池100は、図4及び図5に示す電極群1と、図4及び図5に示す外装容器7と、図4及び図5に示す正極端子6と、図4に示す負極端子5とを具備している。
【0086】
図4及び図5に示す電極群1は、複数の正極3と、複数の負極2と、1枚のセパレータ4とを備える。
【0087】
各正極3は、図5に示すように、正極集電体3aと、この正極集電体3aの両面に形成された正極活物質含有層3bとを備えている。また、図5に示すように、正極集電体3aは、表面に正極活物質含有層3bが形成されていない部分を含んでいる。この部分は、正極集電タブ3cとして働く。
【0088】
各負極2は、負極集電体2aと、この負極集電体2aの両面に形成された負極活物質含有層2bとを備えている。また、負極集電体2aは、表面に負極活物質含有層2bが形成されていない部分を含んでいる(図示せず)。この部分は、負極集電タブとして働く。
【0089】
図5に一部を示すように、セパレータ4は九十九折にされている。九十九折にされたセパレータ4の互いに対向する面によって規定される空間には、正極3又は負極2がそれぞれ配置されている。それにより、正極3と負極2とは、図5に示すように、正極活物質含有層3bと負極活物質含有層2bとがセパレータ4を間に介在させて対向するように積層されている。かくして、電極群1が形成されている。
【0090】
電極群1の正極集電タブ3cは、図5に示すように、正極活物質含有層3b及び負極活物質含有層2bのそれぞれの端部よりも外まで延出している。これらの正極集電タブ3cは、図5に示すように、1つにまとめられて、正極端子6に接続されている。また、図示はしていないが、電極群1の負極集電タブも正極活物質含有層3b及び負極活物質含有層2bのそれぞれの他方の端部よりも外まで延出している。これらの負極集電タブは、図示していないが、1つにまとめられて、図4に示す負極端子5に接続されている。
【0091】
このような電極群1は、図4及び図5に示すように、ラミネートフィルム製の外装容器7からなる外装部材に収容されている。
【0092】
外装容器7は、アルミニウム箔71とその両面に形成された樹脂フィルム72及び73とからなるアルミニウム含有ラミネートフィルムから形成されている。外装容器7を形成するアルミニウム含有ラミネートフィルムは、折り曲げ部7dを折り目として、樹脂フィルム72が内側を向くように折り曲げられて、電極群1を収容している。また、図4及び図5に示すように、外装容器7の周縁部7bにおいて、樹脂フィルム72の互いに向き合った部分が、間に正極端子6を挟み込んでいる。同様に、外装容器7の周縁部7cにおいて、樹脂フィルム72の互いに向き合った部分が、間に負極端子5を挟み込んでいる。正極端子6及び負極端子5は、外装容器7から、互いに反対の向きに延出している。
【0093】
正極端子6及び負極端子5を挟み込んだ部分を除く外装容器7の周縁部7a、7b及び7cにおいて、樹脂フィルム72の互いに対向した部分が熱融着されている。
【0094】
また、電池100では、正極端子6と樹脂フィルム72との接合強度を向上させるために、図5に示すように、正極端子6と樹脂フィルム72との間に絶縁フィルム9が設けられている。また、周縁部7bにおいて、正極端子6と絶縁フィルム9とが熱融着されており、樹脂フィルム72と絶縁フィルム9とが熱融着されている。同様に、図示していないが、負極端子5と樹脂フィルム72との間にも絶縁フィルム9が設けられている。また、周縁部7cにおいて、負極端子5と絶縁フィルム9とが熱融着されており、樹脂フィルム72と絶縁フィルム9とが熱融着されている。すなわち、図5に示す電池100では、外装容器7の周縁部7a、7b及び7cの全てがヒートシールされている。
【0095】
外装容器7は、図示していない電解質を更に収容している。電解質は、電極群1に含浸されている。
【0096】
図4及び図5に示す電池100では、図5に示すように、電極群1の最下層に複数の正極集電タブ3cをまとめている。同様に、図示していないが、電極群1の最下層に複数の負極集電タブをまとめている。しかしながら、例えば、電極群1の中段付近に複数の正極集電タブ3c及び複数の負極集電タブを、それぞれ1つにまとめて、正極端子6及び負極端子5のそれぞれに接続することもできる。
【0097】
以上説明した第1の実施形態の非水電解質電池によれば、リチウム含有マンガン酸化物とリチウム含有ニッケルコバルトマンガン酸化物とを含む正極活物質を含む正極活物質含有層と、リチウムチタン含有酸化物を含む負極活物質含有層とを含む。正極活物質中のリチウム含有ニッケルコバルトマンガン酸化物の含有量が3wt%以上20wt%以下である。非水電解質電池は、下記(1)式を満たす。
【0098】
0.005≦(GCo/SCo)/(GTi/STi)≦0.15 (1)
上記非水電解質電池によれば、正極の過放電を抑制して充放電サイクル寿命性能を向上することができる。
【0099】
(第2の実施形態)
第2の実施形態によると、電池パックが提供される。この電池パックは、第1の実施形態に係る電池を含む。
【0100】
実施形態に係る電池パックは、複数の電池を備えることもできる。複数の電池は、電気的に直列に接続することもできるし、又は電気的に並列に接続することもできる。或いは、複数の電池を、直列及び並列の組み合わせで電気的に接続することもできる。すなわち、実施形態に係る電池パックは、組電池を備えていても良い。組電池の数は複数にすることができる。複数の組電池は、直列、並列、又は直列及び並列の組み合わせで電気的に接続することができる。
【0101】
以下に、実施形態に係る電池パックの一例を、図6及び図7を参照しながら説明する。図6は、実施形態に係る電池パックの一例を示す分解斜視図である。図7は、図6に示す電池パックの電気回路の一例を示すブロック図である。
【0102】
図6及び図7に示す電池パック20は、複数個の単電池21を備える。単電池21は、例えば、図1を参照しながら説明した実施形態に係る一例の扁平型の電池100であり得る。
【0103】
複数の単電池21は、外部に延出した負極端子5及び正極端子6が同じ向きに揃えられるように積層され、粘着テープ22で締結されることにより、組電池23を構成している。これらの単電池21は、図7に示すように互いに電気的に直列に接続されている。
【0104】
プリント配線基板24は、単電池21の負極端子5及び正極端子6が延出する側面に対向するように配置されている。プリント配線基板24には、図7に示すようにサーミスタ25、保護回路26及び外部機器への通電用端子27が搭載されている。なお、プリント配線基板24には、組電池23と対向する面に、組電池23の配線との不要な接続を回避するために絶縁板(図示せず)が取り付けられている。
【0105】
正極側リード28は、組電池23の最下層に位置する正極端子6に接続され、その先端はプリント配線基板24の正極側コネクタ29に挿入されて電気的に接続されている。負極側リード30は、組電池23の最上層に位置する負極端子5に接続され、その先端はプリント配線基板24の負極側コネクタ31に挿入されて電気的に接続されている。これらのコネクタ29及び31は、プリント配線基板24に形成された配線32及び33を通して保護回路26に接続されている。
【0106】
サーミスタ25は、単電池21の温度を検出し、その検出信号は保護回路26に送信される。保護回路26は、所定の条件で保護回路26と外部機器への通電用端子27との間のプラス側配線34a及びマイナス側配線34bを遮断できる。所定の条件の一例としては、サーミスタ25の検出温度が所定温度以上になったときを挙げられる。また、所定の条件の他の例とは、単電池21の過充電、過放電、又は過電流等を検出したときが挙げられる。この過充電等の検出は、個々の単電池21もしくは組電池23全体について行われる。なお、個々の単電池21を検出する場合、電池電圧を検出してもよいし、正極電位又は負極電位を検出してもよい。後者の場合、個々の単電池21中に参照極として用いるリチウム電極が挿入される。図6及び図7の電池パック20は、単電池21それぞれに電圧検出のための配線35が接続されている。これら配線35を通して検出信号が保護回路26に送信される。
【0107】
正極端子6及び負極端子5が突出する側面を除く組電池23の三側面には、ゴム若しくは樹脂からなる保護シート36がそれぞれ配置されている。
【0108】
組電池23は、各保護シート36及びプリント配線基板24と共に収容容器37内に収容される。即ち、収容容器37の長辺方向に沿う両方の内側面と短辺方向に沿う内側面それぞれに保護シート36が配置され、組電池23を介して反対側にある他方の短辺方向に沿う内側面にプリント配線基板24が配置される。組電池23は、保護シート36及びプリント配線基板24で囲まれた空間内に位置する。蓋38は、収容容器37の上面に取り付けられている。
【0109】
なお、組電池23の固定には粘着テープ22に代えて、熱収縮テープを用いてもよい。この場合、組電池の両側面に保護シートを配置し、熱収縮テープを周回させた後、熱収縮テープを熱収縮させて組電池を結束させる。
【0110】
図6及び図7では単電池21を電気的に直列接続した形態を示したが、電池容量を増大させるためには電気的に並列に接続してもよい。さらに、組み上がった電池パックを直列及び/又は並列に電気的に接続することもできる。
【0111】
また、実施形態に係る電池パックの態様は用途により適宜変更される。実施形態に係る電池パックの用途としては、大電流の充放電におけるサイクル性能が望まれるものが好ましい。具体的な用途としては、デジタルカメラの電源用や、二輪乃至四輪のハイブリッド電気自動車、二輪乃至四輪の電気自動車、及びアシスト自転車等の車載用が挙げられる。実施形態に係る電池パックの用途としては、特に、車載用が好適である。
【0112】
第2の実施形態に係る電池パックは、第1の実施形態に係る電池を備えている。従って、実施形態に係る電池パックは優れた寿命性能を有する。
【0113】
以下、正極活物質中の第2の正極活物質の含有量、(GCo/SCo)/(GTi/STi)値、正極の開回路電圧、正極と負極の厚さ並びに密度の測定方法を説明する。まず、正極の取り出し方法を説明する。
【0114】
<正極の取り出し方法>
電池を完全放電して充電状態(State of charge(SOC))を0%にする。この電池を解体し、正極を2cm角程度切り出す。切り出した正極を50cc(cm)のエチルメチルカーボネートに浸漬し、1時間放置する。その後、正極を乾燥するため、1時間真空乾燥し、測定試料を得る。ここまでの操作は、アルゴン雰囲気のグローブボックス内で行う。
【0115】
<活物質の組成の測定>
電極に含まれている活物質の組成は、次のとおり測定できる。
【0116】
測定サンプルとしての電極から、例えば、スパチュラなどを用いて活物質含有層を剥がし取り、粉末状の試料を得る。
【0117】
粉末状試料に対する粉末X線回折(X-Ray Diffraction;XRD)測定によって、活物質の結晶構造を同定する。測定は、CuKα線を線源として、2θが10°以上90°以下の測定範囲で行う。この測定により、選定した粒子に含まれる化合物のX線回折パターンを得ることができる。
【0118】
粉末X線回折測定の装置としては、例えば、Rigaku社製SmartLabを用いる。測定条件は以下の通りとする:
X線源:Cuターゲット
出力:45kV、200mA
ソーラスリット:入射及び受光共に5°
ステップ幅:0.02deg
スキャン速度:20deg/分
半導体検出器:D/teX Ultra 250
試料板ホルダー:平板ガラス試料板ホルダー(厚さ0.5mm)
測定範囲:10°≦2θ≦90°の範囲。
【0119】
その他の装置を使用する場合は、上記と同等の測定結果が得られるように、粉末X線回折用標準Si粉末を用いた測定を行い、ピーク強度及びピークトップ位置が上記装置と一致する条件に調整して測定を行う。
【0120】
続いて、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope; SEM)によって、活物質を含有する試料を観察する。SEM観察においても試料が大気に触れないようにし、アルゴンや窒素などの不活性雰囲気で行うことが望ましい。
【0121】
例えば、3000倍のSEM観察像にて、視野内で確認される一次粒子または二次粒子の形態を持つ幾つかの粒子を選定する。この際、選定した粒子の粒度分布ができるだけ広くなるように選定する。観察できた活物質粒子に対するEDX分析により、活物質の構成元素の種類および組成を特定する。これにより、選定したそれぞれの粒子に含まれる元素のうちLi以外の元素の種類及び量を特定することができる。複数の活物質粒子それぞれに対し同様の操作を行い、活物質粒子の混合状態を判断する。
【0122】
続いて、上述したように活物質含有層から採取した粉末状試料をアセトンで洗浄し乾燥する。得られた粉末を塩酸で溶解し、導電剤をろ過して除いた後、イオン交換水で希釈して測定試料を準備する。誘導結合プラズマ発光分光(Inductively Coupled Plasma Atomic Emission Spectroscopy;ICP-AES)分析法により測定試料中の含有金属比を算出する。
【0123】
活物質が複数種類ある場合は、各活物質に固有の元素の含有比率からその質量比を推定する。固有の元素と活物質の質量との比率はEDX分析により求めた構成元素の組成から判断する。例えば、活物質含有層から得られた測定試料には、第1活物質としてリチウム含有マンガン酸化物と共に第2活物質としてリチウム含有ニッケルコバルトマンガン酸化物が含まれ得る。この場合、求めた金属比から第1及び第2活物質それぞれの化学式および式量を算出し、採取した所定重量の活物質含有層に含まれる第1及び第2活物質の重量比を求める。第1及び第2活物質の重量比から、正極活物質中の第2活物質の含有量を得る。
<(GCo/SCo)/(GTi/STi)値の測定方法>
正極中のCoの分析方法
1)正極からSCo(cm)を切り出し、ビーカーにサンプリングする。
2)塩酸及び過酸化水素水を用い、活物質を溶解する。
3)ろ過し、ろ液を及び洗液をメスフラスコに受け、水を標線まで加える。これを試料溶液とする。
4)ICP発光分析法にてCoの予備定量を行い、その結果から、Co濃度が5~10μg/mlになるように、試料溶液を希釈する(D)。
5)ICP発光分析法にて、Coを定量する。このとき、Co濃度が0μg/ml、5μg/ml及び10μg/mlの濃度の標準溶液を使用し、検量線法で定量する(C)。
6)次式(2)でCo量を計算する。
【0124】
Co(mg)=C×D×V×10-3 (2)
但し、Cは希釈溶液中のCo濃度(μg/ml)、Dは希釈倍率、Vはメスフラスコの容量(ml)、10-3は、μgをmgに換算する係数。
【0125】
負極中のTiの分析方法
(1)負極からSTi(cm)を切り出し、ビーカーにサンプリングする。
(2)塩酸を用い、Al箔を溶解する。
(3)硫酸を加えて加熱し、活物質の大部分を溶解する。
(4)水を加えて希釈した後にろ過し、ろ液を及び洗液をメスフラスコAで受け、水を標線まで加える。これを試料溶液Aとする。不溶分は、(5)で示す工程以降で使用する。
(5)不溶分をろ紙と共に白金るつぼに移し、ガスバーナー、電気炉で加熱し灰化する。
(6)二流酸カリウムを加え、電気炉を使用し加熱して融解処理する。
(7)硫酸1体積当たり水を20体積足して希釈した溶液10mlで溶解する。
(8)ろ紙5種Cでろ過し、ろ液を及び洗液をメスフラスコBで受け、水を標線まで加える。これを試料溶液Bとする。
(9)ICP発光分析法にて試料溶液Aの予備定量を行い、その結果から、Ti濃度が5~10μg/mlになるように、試料溶液を希釈する(DA)。
(10)ICP発光分析法にて、Tiを定量する。このとき、Ti濃度が0μg/ml、5μg/ml及び10μg/mlの濃度の標準溶液を使用し、検量線法で定量する(CA)。
(11)ICP発光分析法にて試料溶液Bの予備定量を行い、その結果から、Ti濃度が10μg/ml以下になるように、試料溶液を希釈する(DB)。
(12)ICP発光分析法にて、Tiを定量する。このとき、Ti濃度が0μg/ml、5μg/ml及び10μg/mlの濃度で二流酸カリウムを添加した標準溶液を使用し、検量線法で定量する(CB)。
(13)次式(3)でTi量を計算する。
【0126】
Ti(mg)=CA×DA×VA×10-3 +CB×DB×VB×10-3 (3)
但し、CAは試料溶液Aの希釈溶液中のTi濃度(μg/ml)、DAは試料溶液Aの希釈倍率、VAはメスフラスコAの容量(ml)、10-3は、μgをmgに換算する係数、CBは、試料溶液Bの希釈溶液中のTi濃度(μg/ml)、DBは試料溶液Bの希釈倍率、VBはメスフラスコBの容量(ml)である。
【0127】
(GCo/SCo)/(GTi/STi)の値の算出方法
正極のSCo(cm)として、正極集電体それぞれの面に形成された正極活物質含有層の面積を合計した値を求める。また、負極のSTi(cm)として、負極集電体それぞれの面に形成された負極活物質含有層の面積を合計した値を求める。
【0128】
上記で得たGCo、SCo、GTi、STiの値から、(GCo/SCo)/(GTi/STi)を算出する。
<正極の開回路電圧の測定>
非水電解質電池を0.2Cで4.25Vまで定電流定電圧(CCCV)充電後、0.2Cで1.8Vまで放電する。次いで、Ar雰囲気中で非水電解質電池を解体し、電極群を取り出す。取り出した電極群から正極を切り出す。この正極と、対向極である金属Liとを、エチルメチルカーボネート(EMC)とエチレンカーボネート(EC)の混合溶媒に1mol/LのLiPFを溶解させた電解液中に浸漬し、テスターにより、金属Liに対する正極電位を測定し、0.2Cで1.8Vまで放電時の正極の開回路電圧V(vs.Li/Li)とする。なお、1Cは、非水電解質電池の公称容量を1時間で充放電し得る電流値である。
<正極及び負極それぞれの厚さと活物質含有層の密度の測定方法>
まず、電極の厚みを、厚み測定機を用いて計測する。得られた値を、正極または負極の厚さとする。
次に、裁断機を用いて、電極を1cm×1cmサイズに打ち抜き、電極試料を得る。次いで、この電極試料の質量を測定する。次に、電極試料をN-メチルピロリドンなどの溶媒に浸漬することにより、電極試料から活物質含有層を除去する。なお、活物質含有層を剥がすために用いる溶媒としては、集電体を侵食せず且つ活物質含有層を剥がすことができるものであれば、特に限定されない。次いで、集電体試料の厚さと質量とを測定する。
【0129】
次に、電極試料の厚みから集電体試料の厚みを減じて、活物質含有層の厚みを算出する。この厚みから、活物質含有層の体積を算出する。また、電極試料の質量から集電体試料の質量を減じて、活物質含有層の質量を算出する。次いで、活物質含有層の質量を活物質含有層の体積で除することにより、活物質含有層の密度(g/cm3)を算出する。
【実施例
【0130】
以下、実施例を詳細に説明する。
(実施例1)
正極の作製
正極活物質として、LiMn1.7Al0.34で表される平均粒径が5μmのリチウム含有マンガン酸化物粒子からなる第1正極活物質を90重量%と、LiNi0.5Co0.2Mn0.32で表される平均粒径が5μmのリチウム含有ニッケルコバルトマンガン酸化物粒子からなる第2正極活物質を10重量%とを用意した。正極活物質に、導電剤としてアセチレンブラックと、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)とを90:5:5の重量比でN-メチルピロリドン(NMP)に分散させた。得られた分散液を、厚さが15μmのアルミニウム箔からなる集電体上に塗布し、乾燥し、プレス処理を施すことにより、正極活物質含有層を設けた。正極の片面の目付、正極の密度及び正極の厚みを下記表1に示す。
【0131】
負極の作製
負極活物質として、Li4Ti512で表される平均粒径が3μmのチタン酸リチウム粒子を用意した。負極活物質に、導電剤としてグラファイト、結着剤としてポリフッ化ビニリデンとを95:3:2の重量比でN-メチルピロリドン(NMP)に分散させた。得られた分散液を、厚さが15μmのアルミニウム箔からなる集電体上に塗布し、乾燥し、プレス処理を施すことにより、負極活物質含有層を設けた。負極の片面の目付、負極の密度及び負極の厚みを下記表2に示す。
セパレータとして、厚さが15μmのセルロース製不織布セパレータを用意した。正極と負極の間にセパレータが配置されるように捲回し、渦巻き状の電極群を作製した。電極群をアルミニウム製容器内に収納した。これを乾燥機に投入し、95℃で6時間真空乾燥を行った。乾燥後、露点-50℃以下に管理されたグローブボックスに運んだ。容器内に、エチルメチルカーボネート(MEC)とエチレンカーボネート(EC)の混合溶媒に1mol/LのLiPFを溶解させた電解液を70cc注入した。なお、混合溶媒におけるMECの割合が70体積%で、ECの割合が30体積%であった。
電解液を入れた外装容器は、-90kPaの減圧環境下において封止した。注液後、1C(10A)で充電状態(State of Charge; SOC)80%まで初充電を行い、70℃の恒温槽で24hのエージングを行った。エージング後、缶を開封し、再度-90kPaの減圧環境下に封止し、非水電解質電池を作製した。
(実施例2~12)
第1正極活物質、第2正極活物質、第1,第2の正極活物質の重量比率、正極及び負極それぞれについて密度、片面の目付、厚さ、Co/Ti重量比率を表1~表3に示す通りに設定すること以外は実施例1と同様にして非水電解質電池を作製した。
(実施例13)
非水電解質として、エチルメチルカーボネート(MEC)とエチレンカーボネート(EC)の混合溶媒に1mol/LのLiPF(第1電解質)と0.1mol/LのLiBF(第2電解質)を溶解させた電解液を用意した。なお、混合溶媒におけるMECの割合が70体積%で、ECの割合が30体積%であった。
【0132】
上記非水電解質を用い、第1正極活物質、第2正極活物質、第1,第2の正極活物質の重量比率、正極及び負極それぞれについて密度と片面の目付と厚さ、Co/Ti重量比率を表1~表3に示す通りに設定すること以外は実施例1と同様にして非水電解質電池を作製した。
(実施例14~16)
第1正極活物質、第2正極活物質、第1,第2の正極活物質の重量比率、正極及び負極それぞれについて密度と片面の目付と厚さ、非水電解質の第2電解質の種類と濃度、Co/Ti重量比率を表1~表3に示す通りに設定すること以外は実施例1と同様にして非水電解質電池を作製した。
(実施例17)
負極活物質の種類をLiNa1.5Ti5.5Nb0.514で表される斜方晶型のリチウムチタン含有酸化物に変更し、第1正極活物質、第2正極活物質、第1,第2の正極活物質の重量比率、正極及び負極それぞれについて密度と片面の目付と厚さ、非水電解質の第2電解質の種類と濃度、Co/Ti重量比率を表1~表3に示す通りに設定すること以外は実施例1と同様にして非水電解質電池を作製した。
(比較例1)
第2正極活物質及び第2電解質を用いず、正極及び負極それぞれについて密度と片面の目付と厚さ、Co/Ti重量比率を表1~表3に示す通りに設定すること以外は実施例1と同様にして非水電解質電池を作製した。
(比較例2)
第1正極活物質、第2正極活物質、第1,第2の正極活物質の重量比率、正極及び負極それぞれについて密度と片面の目付と厚さ、非水電解質の第2電解質の種類と濃度、Co/Ti重量比率を表1~表3に示す通りに設定すること以外は実施例1と同様にして非水電解質電池を作製した。
<サイクル特性評価>
45℃環境下で電圧範囲1.8V~2.8Vにて1C定電流充放電サイクルを実施した。3000サイクル後の容量維持率を下記表3に示す。
<正極の開回路電圧>
前述の方法により、非水電解質電池を0.2Cで1.8Vまで放電した時の正極の開回路電圧V(vs.Li/Li)を測定し、その結果を表3に示す。
【0133】
【表1】
【0134】
【表2】
【0135】
【表3】
【0136】
表1~表3に示す通り、実施例1~17の電池は、3000サイクル後の容量維持率が、0.005≦(GCo/SCo)/(GTi/STi)≦0.15を満たさない比較例1,2に比して高い。正極の厚さが100μm以下の実施例1~11,13~17は、正極の厚さが100μmを超える実施例12に比して3000サイクル後の容量維持率が高い。また、(GCo/SCo)/(GTi/STi)の値が同じ実施例4と実施例13~15とを比較することにより、第2の電解質を用いることがサイクル性能に有利であることがわかる。一方、(GCo/SCo)/(GTi/STi)の値が同じ実施例1と実施例17を比較することにより、負極活物質としてチタン酸リチウムを用いる実施例1の方が実施例17に比してサイクル性能に優れていることがわかる。
【0137】
以上に説明した少なくとも一つの実施形態および実施例に係る非水電解質電池は、0.005≦(GCo/SCo)/(GTi/STi)≦0.15を満たすため、正極の過放電を抑制して充放電サイクル寿命を向上することができる。
【0138】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] リチウム含有マンガン酸化物とリチウム含有ニッケルコバルトマンガン酸化物とを含む正極活物質を備え、前記正極活物質における前記リチウム含有ニッケルコバルトマンガン酸化物の含有量が3wt%以上20wt%以下の正極活物質含有層を含む正極と、
リチウムチタン含有酸化物を含有する負極活物質含有層を含む負極と、
非水電解質とを含み、かつ下記(1)式を満たす、非水電解質電池。
0.005≦(G Co /S Co )/(G Ti /S Ti )≦0.15 (1)
但し、G Co は、前記正極活物質含有層に含まれるCo重量(mg)、S Co は、前記正極活物質含有層の面積(cm )、G Ti は、前記負極活物質含有層に含まれるTi重量(mg)、S Ti は、前記負極活物質含有層の面積(cm )である。
[2] 前記非水電解質電池を0.2Cで1.8Vまで放電した時の前記正極の開回路電圧が3.6V(vs.Li/Li )以上3.9V(vs.Li/Li )以下である、[1]に記載の非水電解質電池。
[3] 前記正極の厚さが100μm以下である、[1]または[2]に記載の非水電解質電池。
[4] 前記正極の密度が2.5g/cc以上3.1g/cc以下である、[1]~[3]のいずれか1項に記載の非水電解質電池。
[5] 下記(2)式を満たす、[1]~[4]のいずれか1項に記載の非水電解質電池。
0.9≦A/B≦1.1 (2)
但し、Aは前記正極の充放電範囲が3.0V(vs.Li/Li )以上4.25V(vs.Li/Li )以下である時の単位面積当たりの充電容量(mAh/m )であり、Bは前記負極の充放電範囲が1.4V(vs.Li/Li )以上2.0V(vs.Li/Li )以下である時の単位面積当たりの充電容量(mAh/m )である。
[6] [1]~[5]のいずれか1項に記載の非水電解質電池を含む、電池パック。
【符号の説明】
【0139】
1…電極群、2…負極、2a…負極集電体、2b…負極活物質含有層、3…正極、3a…正極集電体、3b…正極活物質含有層、3c…正極集電タブ、4…セパレータ、5…負極端子、6…正極端子、7…外装部材、15…負極端子、15a…負極リード、16…正極端子、16a…正極リード、17a…金属製容器、17b…封口板、17c…絶縁部材、20…電池パック、23…組電池、24…プリント配線基板、25…サーミスタ、26…保護回路、27…通電用端子、28…正極側リード、30…負極側リード、36…保護シート、37…収容容器、38…蓋。
図1
図2
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図12