(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】点検計画装置、点検計画システム及び点検計画方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/20 20230101AFI20240408BHJP
G06Q 50/10 20120101ALI20240408BHJP
G06Q 10/0631 20230101ALI20240408BHJP
【FI】
G06Q10/20
G06Q50/10
G06Q10/0631
(21)【出願番号】P 2020039076
(22)【出願日】2020-03-06
【審査請求日】2023-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100103263
【氏名又は名称】川崎 康
(72)【発明者】
【氏名】年澄 かほり
(72)【発明者】
【氏名】村上 正雄
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼窪 倫弘
【審査官】野元 久道
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-133412(JP,A)
【文献】特開2002-374583(JP,A)
【文献】特開2020-004396(JP,A)
【文献】特開2019-166476(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の自動ドアの設置現場情報、自動ドア情報、稼働情報、修理履歴を含めた保守点検情報、部品の在庫情報、顧客情報、及び保守点検作業者情報を関連付けて管理する管理部の情報に基づいて、前記複数の自動ドアの保守点検の優先順位と最適な保守点検人員とを予測する計算モデルを記憶するモデル記憶部と、
個々の保守点検作業者の勤務情報を入力する入力部と、
前記入力部に入力された前記勤務情報と、前記管理部の情報と、前記計算モデルとに基づいて、前記複数の自動ドアの保守点検の優先順位と最適な保守点検人員とを決定する計画決定部と、を備える、点検計画装置。
【請求項2】
前記管理部の情報と、個々の保守点検作業者の勤務情報と、個々の自動ドアの実際の保守点検時期と、
前記実際の保守点検時期に実際に保守点検を行った保守点検作業者
に関する前記保守点検作業者情報と
を関連づけて学習した結果を反映させた前記計算モデルを生成するモデル生成器を備え、
前記モデル記憶部は、前記モデル生成器で生成された前記計算モデルを記憶する、請求項1に記載の点検計画装置。
【請求項3】
前記モデル生成器は、定期的又は不定期的に、個々の保守点検作業者の勤務情報と、個々の自動ドアの実際の保守点検時期と、
前記実際の保守点検時期に実際に保守点検を行った保守点検作業者
に関する前記保守点検作業者情報と
を関連づけて再学習して前記計算モデルを更新し、
前記モデル記憶部は、更新された前記計算モデルを記憶する、請求項2に記載の点検計画装置。
【請求項4】
前記保守点検作業者情報は、個々の保守点検作業者と個々の自動ドアの顧客管理担当者との相性
がよいか否かに関する情報を含み、
前記計画決定部は、前記相性
がよいか否かに関する情報に基づいて、前記複数の自動ドアの保守点検の優先順位と最適な保守点検人員とを決定する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の点検計画装置。
【請求項5】
前記計画決定部で決定された前記複数の自動ドアの保守点検の優先順位と最適な保守点検人員とに関する情報を、該当する保守点検作業者が携帯する通信端末に送信する通信部を備える、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の点検計画装置。
【請求項6】
前記通信部は、前記計画決定部が同一の保守点検作業者が同日に複数箇所の自動ドアの保守点検を行うことを決定した場合には、保守点検を行う順序及び場所に関する情報を、該当する保守点検作業者の前記通信端末に送信する、請求項5に記載の点検計画装置。
【請求項7】
前記通信部は、前記計画決定部で決定された前記複数の自動ドアの保守点検の優先順位と最適な保守点検人員とに関する情報に基づいて、前記複数の自動ドアのそれぞれの顧客管理担当者に、保守点検時期と保守点検作業者とに関する情報を送信する、請求項5又は6に記載の点検計画装置。
【請求項8】
前記顧客情報は、顧客管理担当者の繁忙時期及び閑散時期の少なくとも一方の情報を含み、
前記計画決定部は、顧客管理担当者の繁忙時期を避けるように前記複数の自動ドアの保守点検の優先順位と最適な保守点検人員とを決定する、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の点検計画装置。
【請求項9】
前記稼働情報は、前記自動ドアの通行量に関する情報を含み、
前記計画決定部は、前記通行量が所定の基準量を超えると見込まれる時期を避けるように前記複数の自動ドアの保守点検の優先順位と最適な保守点検人員とを決定する、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の点検計画装置。
【請求項10】
複数の自動ドアの設置現場情報、自動ドア情報、稼働情報、修理履歴を含めた保守点検情報、部品の在庫情報、顧客情報、及び保守点検作業者情報を関連付けて記憶する保守情報記憶装置と、
前記保守情報記憶装置に記憶された情報を管理する管理部と、
前記管理部が管理する情報に基づいて、前記複数の自動ドアの保守点検の優先順位と最適な保守点検人員とを予測する計算モデルを記憶するモデル記憶部と、
個々の保守点検作業者の勤務情報を入力する入力部と、
前記入力部に入力された前記勤務情報と、前記管理部の情報と、前記計算モデルとに基づいて、前記複数の自動ドアの保守点検の優先順位と最適な保守点検人員とを決定する計画決定部と、を備える、点検計画システム。
【請求項11】
複数の自動ドアの設置現場情報、自動ドア情報、稼働情報、修理履歴を含めた保守点検情報、部品の在庫情報、顧客情報、及び保守点検作業者情報を関連付けて管理する管理部の情報に基づいて、前記複数の自動ドアの保守点検の優先順位と最適な保守点検人員とを予測する計算モデルをモデル記憶部に記憶する工程と、
個々の保守点検作業者の勤務情報を入力する工程と、
前記入力された前記勤務情報と、前記管理部の情報と、前記計算モデルとに基づいて、前記複数の自動ドアの保守点検の優先順位と最適な保守点検人員とを決定する工程と、を備える、点検計画方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動ドアの点検計画装置、点検計画システム及び点検計画方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動ドアの定期点検や故障対応を行う作業者の派遣は、自動ドア販売会社等の各拠点の管理者の裁量により行われるのが一般的である。しかしながら、保守点検対象の自動ドアの数が多い地域は、作業者の数も多いため、作業者の最適な割り振りを行うのは容易ではない。特に、自動ドアは、機種や設置場所、使用頻度等によって故障の発生率が異なり、現場の状況に精通している作業者と、精通していない作業者では、保守点検作業の効率や品質に大きな差が生じ、保守点検作業に要する時間も作業者によって異なる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、保守点検作業は、本来的には、現場に精通している作業者に任せるのが望ましいが、現場に精通している作業者の数は限られている。また、作業者の割り振りを行う管理者が、個々の作業者がどの現場に精通しているかをすべて把握するのは困難である。
【0005】
また、一日のうちに複数箇所の自動ドアの保守点検を同一の作業者に依頼する場合、どういう順番で各自動ドアの保守点検を行うのが最も効率的かを管理者が事前に把握するのは容易ではない。また、顧客側の都合や作業者側の事情により、一部の自動ドアの保守作業が急に中止になった場合、保守作業計画を作成し直す必要があるが、管理者だけでは、保守作業計画を作成し直すのに時間がかかってしまう。
【0006】
さらには、保守点検を行う作業者が顧客管理担当者との相性がよくない場合、保守点検作業中に無用なトラブルが発生するおそれもある。
【0007】
本発明の一態様は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、保守点検作業者が効率的に自動ドアの保守点検を行うことが可能な点検計画装置、点検計画システム及び点検計画方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様では、複数の自動ドアの設置現場情報、自動ドア情報、稼働情報、修理履歴を含めた保守点検情報、部品の在庫情報、顧客情報、及び保守点検作業者情報を関連付けて管理する管理部の情報に基づいて、前記複数の自動ドアの保守点検の優先順位と最適な保守点検人員とを予測する計算モデルを記憶するモデル記憶部と、
個々の保守点検作業者の勤務情報を入力する入力部と、
前記入力部に入力された前記勤務情報と、前記管理部の情報と、前記計算モデルとに基づいて、前記複数の自動ドアの保守点検の優先順位と最適な保守点検人員とを決定する計画決定部と、を備える、点検計画装置が提供される。
【0009】
前記管理部の情報と、個々の保守点検作業者の勤務情報と、個々の自動ドアの実際の保守点検時期と、実際に保守点検を行った保守点検作業者との関係を学習した結果を反映させた前記計算モデルを生成するモデル生成器を備え、
前記モデル記憶部は、前記モデル生成器で生成された前記計算モデルを記憶してもよい。
【0010】
前記モデル生成器は、定期的又は不定期的に、個々の保守点検作業者の勤務情報と、個々の自動ドアの実際の保守点検時期と、実際に保守点検を行った保守点検作業者との関係を再学習して前記計算モデルを更新し、
前記モデル記憶部は、更新された前記計算モデルを記憶してもよい。
【0011】
前記保守点検作業者情報は、個々の保守点検作業者と個々の自動ドアの顧客管理担当者との相性に関する情報を含み、
前記計画決定部は、前記相性を考慮に入れて、前記複数の自動ドアの保守点検の優先順位と最適な保守点検人員とを決定してもよい。
【0012】
前記計画決定部で決定された前記複数の自動ドアの保守点検の優先順位と最適な保守点検人員とに関する情報を、該当する保守点検作業者が携帯する通信端末に送信する通信部を備えてもよい。
【0013】
前記通信部は、前記計画決定部が同一の保守点検作業者が同日に複数箇所の自動ドアの保守点検を行うことを決定した場合には、保守点検を行う順序及び場所に関する情報を、該当する保守点検作業者の前記通信端末に送信してもよい。
【0014】
前記通信部は、前記計画決定部で決定された前記複数の自動ドアの保守点検の優先順位と最適な保守点検人員とに関する情報に基づいて、前記複数の自動ドアのそれぞれの顧客管理担当者に、保守点検時期と保守点検作業者とに関する情報を送信してもよい。
【0015】
前記顧客情報は、顧客管理担当者の繁忙時期及び閑散時期の少なくとも一方の情報を含み、
前記計画決定部は、顧客管理担当者の繁忙時期を避けるように前記複数の自動ドアの保守点検の優先順位と最適な保守点検人員とを決定してもよい。
【0016】
前記稼働情報は、前記自動ドアの通行量に関する情報を含み、
前記計画決定部は、前記通行量が所定の基準量を超えると見込まれる時期を避けるように前記複数の自動ドアの保守点検の優先順位と最適な保守点検人員とを決定してもよい。
【0017】
本発明の他の一態様では、複数の自動ドアの設置現場情報、自動ドア情報、稼働情報、修理履歴を含めた保守点検情報、部品の在庫情報、顧客情報、及び保守点検作業者情報を関連付けて記憶する保守情報記憶装置と、
前記保守情報記憶装置に記憶された情報を管理する管理部と、
前記管理部が管理する情報に基づいて、前記複数の自動ドアの保守点検の優先順位と最適な保守点検人員とを予測する計算モデルを記憶するモデル記憶部と、
個々の保守点検作業者の勤務情報を入力する入力部と、
前記入力部に入力された前記勤務情報と、前記管理部の情報と、前記計算モデルとに基づいて、前記複数の自動ドアの保守点検の優先順位と最適な保守点検人員とを決定する計画決定部と、を備える、点検計画システムが提供される。
【0018】
本発明の他の一態様では、複数の自動ドアの設置現場情報、自動ドア情報、稼働情報、修理履歴を含めた保守点検情報、部品の在庫情報、顧客情報、及び保守点検作業者情報を関連付けて管理する管理部の情報に基づいて、前記複数の自動ドアの保守点検の優先順位と最適な保守点検人員とを予測する計算モデルをモデル記憶部に記憶する工程と、
個々の保守点検作業者の勤務情報を入力する工程と、
前記入力された前記勤務情報と、前記管理部の情報と、前記計算モデルとに基づいて、前記複数の自動ドアの保守点検の優先順位と最適な保守点検人員とを決定する工程と、を備える、点検計画方法が提供される。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、保守点検作業者が効率的に自動ドアの保守点検を行うことが可能な点検計画を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】一実施形態による点検計画装置を備えた点検計画システムの概略構成を示すブロック図。
【
図3】データベース装置に登録されている自動ドアに関する各種情報の一例を示す図。
【
図5】モデル生成器の処理手順の一例を示すフローチャート。
【
図6】計画決定部の処理手順の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、点検計画装置、点検計画システム及び点検計画方法の実施形態について説明する。以下では、点検計画装置、点検計画システム及び点検計画方法の主要な構成部分を中心に説明するが、点検計画装置、点検計画システム及び点検計画方法には、図示又は説明されていない構成部分や機能が存在しうる。
【0022】
図1は一実施形態による点検計画装置1を備えた点検計画システム2の概略構成を示すブロック図である。
図1の点検計画装置1は、複数の自動ドア3の保守点検の優先順位と最適な保守点検人員とを自動的に予測するものである。
図1の点検計画装置1は、必須の構成部分として、モデル記憶部4と、入力部5と、計画決定部6とを備えている。点検計画システム2は、点検計画装置1にデータベース装置(保守情報記憶装置)7を付加した構成である。また、後述するように、点検計画装置1又は点検計画システム2には、管理部8が設けられる。さらに、保守点検作業者は、携帯通信端末9を携帯している。携帯通信端末9は、例えば携帯電話やスマートフォン、タブレットなどである。保守点検作業者は、販社管理装置10からの管理の下で自動ドア3の保守点検を行う。携帯通信端末9、販社管理装置10及び管理部8は、例えばインターネット20を介して情報の送受を行う。
【0023】
モデル記憶部4は、複数の自動ドア3の設置現場情報、自動ドア情報、稼働情報、修理履歴を含めた保守点検情報、部品の在庫情報、顧客情報、及び保守点検作業者情報を関連付けて管理する管理部8の情報に基づいて、複数の自動ドア3の保守点検の優先順位と最適な保守点検人員とを予測する計算モデルを記憶する。
【0024】
計算モデルは、例えばニューラルネットワーク11を用いたモデルである。ニューラルネットワーク11は、典型的には、
図2に示すように、例えば入力層12と、隠れ層13と、出力層14の3つの層を有し、各層12~14を結ぶ経路には重み係数が付与されている。各層12~14とも複数の値を有する。入力層12の各値は、それぞれ異なる物理量の値であり、各層の値の総数は任意である。入力層12の各値に重み係数を掛け合わせた値同士を足し合わせることにより、隠れ層13の各値が決定される。
図2に示すように、隠れ層13の各値は、入力層12の各値と、各値に対応する重み係数とに応じて変化する。隠れ層13と出力層14との間も同様であり、出力層14の各値は、隠れ層13の各値と、各値に対応する重み係数とに応じて変化する。このように、ニューラルネットワーク11では、各層12~14ごとに、各層12~14の各値と重み係数の積和演算を行うことで、次の層の値が決定される。重み係数の値を学習結果に応じて更新することにより、学習結果を反映させた出力値が得られる。
【0025】
例えば、自動ドア3の保守点検の優先順位と最適な保守点検人員とを決定する目的で
図2のニューラルネットワーク11を利用する場合、データベース装置7に登録されている管理部8が管理する情報と、個々の保守点検作業者の勤務情報とをニューラルネットワーク11の入力層12に与えて、過去に行った自動ドア3の保守点検の優先順位と保守点検人員が出力層14から出力されるように、学習させる。より具体的な一例としては、特定の機種の自動ドア3の不具合情報がデータベース装置7に登録されている場合、同一機種の自動ドア3については、優先順位を高くして点検時期を早めるように学習させる。あるいは、粉塵の多い場所に設置されている自動ドア3や、過去に不具合件数が数多く報告されている自動ドア3については、優先順位を高くして点検時期を早めるように学習させる。あるいは、同一ビル内の自動ドア3の数が多い場合や、トラブル事例の多い自動ドア3については、熟練した保守点検作業員を割り振るように学習させる。学習内容は任意であるが、保守点検の優先順位と最適な保守点検人員に関連する数多くの情報を与えて学習させることで、実用性に優れて信頼性の高い計算モデルを生成できる。
【0026】
なお、
図2のニューラルネットワーク11は単純化した例を示しており、実際には、4層以上の層で構成されていてもよい。また、計算モデルは、ニューラルネットワーク11以外のモデル式に基づいて生成されてもよい。
【0027】
入力部5は、個々の保守点検作業者の勤務情報を入力する。勤務情報とは、個々の保守点検作業者が勤務する日にちや曜日、時間帯に関する情報である。また、勤務情報には、個々の保守点検作業者が勤務する場所に関する情報を含んでいてもよい。さらに、勤務情報には、個々の保守作業者が保守点検可能な自動ドア3の種別に関する情報を含んでいてもよい。
【0028】
点検計画システム2内に、個々の保守点検作業者情報を蓄積したデータベース装置7と管理部8が設けられている場合には、管理部8はデータベース装置7内の各情報を、個々の自動ドア3や保守点検作業者の識別情報で管理することができる。この場合、入力部5から任意の保守点検作業者の識別情報(例えばシリアル番号)を入力することで、管理部8は、そのシリアル番号に対応する保守点検作業者情報の中に含まれる勤務情報を、データベース装置7から簡易かつ迅速に取得することができる。
【0029】
入力部5は、データベース装置7にまだ登録されていない個々の保守点検作業者の勤務情報を入力することも可能である。例えば、保守点検作業者が不定期に取得する有給休暇や忌引きの情報などを入力部5から入力してもよい。入力部5に入力された情報は、管理部8の管理の下で、必要に応じてデータベース装置7に登録される。例えば、勤務情報は、例えば保守点検作業者情報に含めてデータベース装置7に登録される。
【0030】
計画決定部6は、入力部5に入力された勤務情報と、管理部8の情報と、計算モデルとに基づいて、複数の自動ドア3の保守点検の優先順位と最適な保守点検人員とを決定する。計画決定部6は、一日単位、一週間単位、一ヶ月単位、一年単位などの任意の期間ごとに、保守点検計画を決定できる。また、一度決定した保守点検計画を、保守点検作業者や顧客管理担当者の都合等により、随時更新することも可能である。
【0031】
上述した保守点検作業者情報は、個々の保守点検作業者と個々の自動ドア3の顧客管理担当者との相性に関する情報を含んでいてもよい。この場合、計画決定部6は、個々の保守点検作業者と個々の自動ドア3の顧客管理担当者との相性を考慮に入れて、複数の自動ドア3の保守点検の優先順位と最適な保守点検人員を決定することができる。具体的には、顧客管理担当者との相性があまりよくない保守点検作業者を極力避けて、各自動ドア3の保守点検を行う保守点検作業者を決定する。相性がよくない保守点検作業者を顧客管理担当者に引き合わせると、無用なトラブルを生じさせる要因になりうるためである。
【0032】
保守点検作業者情報は、個々の保守点検作業者が保守点検資格を所持しているか否かの情報を含んでいてもよい。自動ドア3の保守点検に関する国家資格として自動ドア施行技能士1級と2級がある。自動ドア施行技能士1級を所持している保守点検作業者は、保守点検作業に精通している熟練作業者であると見なすことができる。このため、保守点検対象の自動ドア3のうち、保守点検作業が難しいことが予想される自動ドア3や、保守点検時間が限られている場合には、自動ドア施行技能士の資格を所持しているか否かを考慮に入れて、保守点検作業者を決定するのが望ましい。
【0033】
図1の点検計画装置1は、通信部15を備えていてもよい。通信部15は、計画決定部6で決定された複数の自動ドア3の保守点検の優先順位と最適な保守点検人員とに関する情報を、該当する保守点検作業者が携帯する通信端末に送信する。
【0034】
通信部15は、計画決定部6が同一の保守点検作業者が同日に複数箇所の自動ドア3の保守点検を行うことを決定した場合には、保守点検を行う順序及び場所に関する情報を、該当する保守点検作業者の通信端末に送信してもよい。その際、保守点検を行う順序を地図情報に推奨経路を明示するなどして、保守点検作業者にわかりやすく通知するのが望ましい。
【0035】
また、通信部15は、計画決定部6で決定された複数の自動ドア3の保守点検の優先順位と最適な保守点検人員とに関する情報に基づいて、複数の自動ドア3のそれぞれの顧客管理担当者に、保守点検時期と保守点検作業者とに関する情報を送信してもよい。
【0036】
通信部15は、インターネット20を介した有線又は無線通信により、保守点検作業者の携帯通信端末9や顧客管理担当者、販社管理装置10等に、上述した情報を送信する。あるいはインターネット20を介さずに基地局等から直接携帯通信端末9等に情報を送信してもよい。
【0037】
データベース装置7に登録されている顧客情報は、顧客管理担当者の繁忙時期及び閑散時期の少なくとも一方の情報を含んでいてもよい。この場合、計画決定部6は、顧客管理担当者の繁忙時期を避けるように複数の自動ドア3の保守点検の優先順位と最適な保守点検人員とを決定してもよい。
【0038】
また、データベース装置7に登録されている稼働情報は、自動ドア3の通行量に関する情報を含んでいてもよい。この場合、計画決定部6は、顧客管理担当者の繁忙時期を避けるように複数の自動ドア3の保守点検の優先順位と最適な保守点検人員とを決定してもよい。自動ドア3の通行量は、例えば自動ドア3の無目部等に設置されたカメラやセンサ等を用いて検出し、検出結果は、例えば販社管理装置10からインターネット20を介して管理部8に送信される。
【0039】
上述した計算モデルは、点検計画装置1とは別の装置で生成してもよいし、点検計画装置1の内部で生成してもよい。点検計画装置1とは別の装置で計算モデルを生成する場合、例えば、複数の点検計画システム2内の各データベース装置の登録内容を参照して計算モデルを生成するサーバ装置を設け、生成された計算モデルを複数の点検計画システム2で共有してもよい。また、計算モデルは、随時更新する必要があるが、計算モデルの更新も、点検計画装置1とは別個の装置で行ってもよいし、点検計画装置1内で行ってもよい。
図1は点検計画装置1の内部にモデル生成器16を設けて、点検計画装置1内で計算モデルの生成と更新を行う例を示している。
【0040】
モデル生成器16は、管理部8が管理する情報と、個々の保守点検作業者の勤務情報と、個々の自動ドア3の実際の保守点検時期と、実際に保守点検を行った保守点検作業者との関係を学習した結果を反映させた計算モデルを生成する。より具体的には、モデル生成器16は、例えば
図2のニューラルネットワーク11の重み係数を学習過程で更新し、ニューラルネットワーク11を含む計算モデルを生成する。モデル生成器16で生成された計算モデルは、モデル記憶部4に記憶される。
【0041】
モデル生成器16は、定期的又は不定期的に、個々の保守点検作業者の勤務情報と、個々の自動ドア3の実際の保守点検時期と、実際に保守点検を行った保守点検作業者との関係を再学習して計算モデルを更新するのが望ましい。個々の保守点検作業者の勤務情報と、実際の保守点検時期と、実際に保守点検を行った保守点検作業者との関係を再学習することで、実用性の高い計算モデルを生成でき、計算モデルの信頼性を向上できる。モデル記憶部4は、計算モデルが更新された場合には、すでに記憶されている計算モデルを更新後の計算モデルに置換する。
【0042】
図3はデータベース装置7に登録されている自動ドア3に関する各種情報の一例を示す図である。
図3のデータベース装置7は、複数の自動ドア3のそれぞれごとに、自動ドア3の識別情報と、設置現場情報と、自動ドア情報と、稼働情報と、修理履歴を含めた保守点検情報と、部品の在庫情報と、顧客情報と、保守点検作業者情報とを関連づけて登録する。なお、
図3はデータベース装置7に登録されている情報の一例にすぎない。データベース装置7には
図3に示した以外に種々の情報を登録することができる。管理部8は、必要に応じて、データベース装置7内の各種情報を更新する。モデル生成器16は、データベース装置7内の登録情報に基づいて、計算モデルの生成と更新を行う。
【0043】
図3のデータベース装置7内の設置現場情報とは、自動ドア3の設置場所の住所や電話番号、ビル名、ビル内の設置場所などである。設置場所には、現場種別や、室内/屋外の情報や、周辺環境情報を含めてもよい。現場種別は、工場、オフィス、家庭などの、自動ドア3の設置現場を分類した情報である。室内/屋外の情報を設けるのは、屋外に面する場所に設置された自動ドア3は、屋内の自動ドア3に比べて、粉塵等の影響が大きいためである。周辺環境情報は、同一機種の自動ドア3が周辺に存在するか否か等の情報である。
【0044】
自動ドア情報は、保守対象の個々の自動ドア3の詳細なハードウェア情報(建具符号、取付方法、ドア寸法、開閉方式、ドアの種類)などである。
【0045】
稼働情報とは、自動ドア3の単位時間当たりの開閉回数や開閉速度、自動ドア3の単位時間当たりの通行量、設置時点からの経過時間、過去の部品交換時期や交換部品名などである。また、日時や時間帯、季節ごとの開閉回数や通行量なども稼働情報に含めてもよい。
【0046】
保守点検情報は、過去の保守点検時期や点検報告書の内容、不具合箇所の情報、保守点検作業者の氏名などである。
【0047】
部品の在庫情報は、保守対象の個々の自動ドア3ごとに、自動ドア3で使用されている交換対象の各部品の在庫があるか否かを示す情報であり、具体的には、サプライヤ保有数、メーカ保有数、販社保有数、車載搭載数、入庫予定日などである。
【0048】
顧客情報は、顧客の名称、管理担当者名、電話番号、Eメールアドレス、顧客登録番号、顧客の年間スケジュール(作業許可時間、繁忙期/閑散期の情報、管理担当者の不在日情報)などである。
【0049】
保守点検作業者情報は、個々の保守点検作業者に関する種々の情報である。
図4は保守点検作業者情報の詳細な一例を示す図である。
図4の保守点検作業者情報は、個々の保守点検作業者ごとに、氏名と、経験年数と、技能資格と、血液型と、血圧と、平均作業時間と、指導力と、性格と、製品対応力と、主な対応現場と、作業者登録とに関する情報を含む。
図4は保守点検作業者情報の一例であり、種々の変更が可能である。
【0050】
保守点検作業者情報の少なくとも一部は、個々の保守点検作業者が、自身の携帯通信端末9にて入力したものをデータベース装置7に登録してもよい。また、保守点検作業者情報の少なくとも一部は、保守点検作業者の管理者が販社管理装置10等を用いて入力したものをデータベース装置7に登録してもよい。さらに、保守点検作業者情報は、定期的又は不定期的に更新するのが望ましい。
【0051】
図5はモデル生成器16の処理手順の一例を示すフローチャートである。まず、データベース装置7から、ある識別番号iの自動ドア3の設置現場情報、自動ドア情報、稼働情報、修理履歴を含めた保守点検情報、部品の在庫情報、顧客情報、及び保守点検作業者情報を取得する(ステップS1)。
【0052】
次に、ステップS1で取得された各情報と、識別番号iの自動ドア3の過去の保守点検時期と、過去に保守点検を行った保守点検作業者情報との関係を学習し、学習結果を反映させた計算モデルを生成する(ステップS2)。ここでは、例えば
図2に示したニューラルネットワーク11の入力層12に、ステップS1で取得された識別番号iの自動ドア3の設置現場情報、自動ドア情報、稼働情報、修理履歴を含めた保守点検情報、部品の在庫情報、及び顧客情報を入力し、出力層14が過去の保守点検時期と保守点検作業者情報になるように、重み係数を学習する。
【0053】
次に、管理部8が管理するすべての自動ドア3についての学習を行ったか否かを判定する(ステップS3)。まだ、学習を行っていない自動ドア3がある場合、そのうちの任意の識別番号の自動ドア3を選択してステップS1~S3の処理を繰り返す。
【0054】
ステップS4ですべての自動ドア3についての学習を行った旨が判定されると、学習済の計算モデルをモデル記憶部4に記憶する(ステップS4)。
【0055】
計算モデルを生成する過程で、入力層12に個々の保守点検作業者と個々の自動ドア3の顧客管理担当者との相性に関する情報をニューラルネットワーク11に入力して、相性を考慮に入れて学習を行って計算モデルを生成してもよい。これにより、顧客管理担当者との相性がよくない保守点検作業者が割り振られないようにすることができる。
【0056】
また、計算モデルを生成する過程で、顧客管理担当者の繁忙/閑散時期に関する情報をニューラルネットワーク11に入力して、繁忙/閑散時期を考慮に入れて学習を行って計算モデルを生成してもよい。これにより、顧客管理担当者が繁忙なときに保守点検を計画することを防止できる。
【0057】
さらに、計算モデルを生成する過程で、自動ドア3の通行量に関する情報をニューラルネットワーク11に入力して、通行量を考慮に入れて計算モデルを生成してもよい。これにより、自動ドア3の通行量が多いときに保守点検を計画することを防止できる。
【0058】
図6は学習済の計算モデルを用いて保守点検の優先順位と最適な保守点検人員を予測する計画決定部6の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0059】
まず、個々の保守点検作業者の勤務情報を入力する(ステップS11)。勤務情報がすでにデータベース装置7に登録されている場合には、個々の保守点検作業者の識別情報を入力することで、データベース装置7内の該当する保守点検作業者情報から勤務情報を取得することができる。次に、モデル記憶部4から、学習済の計算モデルを読み出す(ステップS12)。
【0060】
次に、管理部8が管理する情報と、入力部5で入力された各保守点検作業者の勤務情報とを学習済の計算モデルに入力して、計算モデルの演算処理を行い、計算モデルから複数の自動ドア3の保守点検の優先順位と最適な保守点検人員とを決定する(ステップS13)。
【0061】
次に、決定された優先順位と最適な保守点検人員を、該当する保守点検作業者が携帯する携帯通信端末9に送信する(ステップS14)。このとき、同一の保守点検作業者に対して一日に複数の自動ドア3の保守点検を指示する場合、どのようなルートで複数の自動ドア3の設置場所を訪問すればよいかを地図情報に推奨経路を明示して提供してもよい。
【0062】
保守点検作業者は、決定された優先順位に従って、複数の自動ドア3の保守点検を行うことになるが、作業の効率性から考えて優先順位を変更した方がよいと考えた場合は、携帯通信端末9を介して、優先順位の変更を申し出てもよい。この場合、計画決定部6は、保守点検作業者からの要望に従って計画モデルを更新した上で、再度、保守点検の優先順位を決定してもよい。
【0063】
このように、本実施形態では、管理部8が管理する情報に基づいて複数の自動ドア3の保守点検の優先順位と最適な保守点検人員とを予測する計算モデルを生成し、この計算モデルに各保守点検作業者の勤務情報等を入力することで、複数の自動ドア3の保守点検の優先順位と最適な保守点検人員とを簡易かつ迅速に決定できる。
【0064】
決定された優先順位は、該当する保守点検作業者が携帯する携帯通信端末9に送信できるため、保守点検作業者は、複数の自動ドア3の保守点検作業を効率よく行うことができる。また、複数の自動ドア3を優先順位に従って訪問する際のルートを地図情報とともに明示することで、保守点検作業者は効率的に各自動ドア3の保守点検を行うことができる。
【0065】
また、個々の保守点検作業者と個々の自動ドア3の顧客管理担当者との相性を考慮に入れて、複数の自動ドア3の保守点検の優先順位と最適な保守点検人員を決定するため、保守点検時の無用なトラブルを防止できる。
【0066】
上述した実施形態で説明した点検計画装置1及び点検計画システム2の少なくとも一部は、ハードウェアで構成してもよいし、ソフトウェアで構成してもよい。ソフトウェアで構成する場合には、点検計画装置1及び点検計画システム2の少なくとも一部の機能を実現するプログラムをフレキシブルディスクやCD-ROM等の記録媒体に収納し、コンピュータに読み込ませて実行させてもよい。記録媒体は、磁気ディスクや光ディスク等の着脱可能なものに限定されず、ハードディスク装置やメモリなどの固定型の記録媒体でもよい。
【0067】
また、点検計画装置1及び点検計画システム2の少なくとも一部の機能を実現するプログラムを、インターネット20等の通信回線(無線通信も含む)を介して頒布してもよい。さらに、同プログラムを暗号化したり、変調をかけたり、圧縮した状態で、インターネット20等の有線回線や無線回線を介して、あるいは記録媒体に収納して頒布してもよい。
【0068】
本発明の態様は、上述した個々の実施形態に限定されるものではなく、当業者が想到しうる種々の変形も含むものであり、本発明の効果も上述した内容に限定されない。すなわち、特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更および部分的削除が可能である。
【符号の説明】
【0069】
1 点検計画装置、2 点検計画システム、3 自動ドア、4 モデル記憶部、5 入力部、6 計画決定部、7 データベース装置、8 管理部、9 携帯通信端末、10 販社管理装置、11 ニューラルネットワーク、12 入力層、13 隠れ層、14 出力層、15 通信部、16 モデル生成器、20 インターネット