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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】口腔用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/73 20060101AFI20240408BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20240408BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
A61K8/73
A61K8/49
A61Q11/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020045092
(22)【出願日】2020-03-16
(65)【公開番号】P2021147317
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2022-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000106324
【氏名又は名称】サンスター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森川 拓磨
(72)【発明者】
【氏名】有田 卓矢
【審査官】▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-019725(JP,A)
【文献】国際公開第2007/066497(WO,A1)
【文献】特開2020-083787(JP,A)
【文献】特開2019-052110(JP,A)
【文献】特開2021-088510(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
A61P1/02
CAPLUS/MEDLINE/KOSMET/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインを0.01~0.3質量%、
β-シクロデキストリンを質量比で2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインの4倍以上
含有する、口腔用組成物。
【請求項2】
2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインを0.01~0.1質量%含有する、
請求項1に記載の口腔用組成物。
【請求項3】
β-シクロデキストリンを質量比で2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインの4~50倍
含有する、請求項1又は2に記載の口腔用組成物。
【請求項4】
β-シクロデキストリンを0.1~1質量%含有する、
請求項1~3のいずれかに記載の口腔用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、口腔用組成物等に関する。なお、本明細書に記載される全ての文献の内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
口腔用組成物には、殺菌効果又は発泡効果等を目的に、1種又は多種の界面活性剤が配合され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-104376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、界面活性剤によっては、所望の効果を得るために必要な量を口腔用組成物に配合すると、当該所望の効果に加えて好ましくない効果をも奏してしまうことがあった。
【0005】
本発明者らは、口腔用組成物に配合する界面活性剤として2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン(ココアンホ酢酸ナトリウムともいう)に注目し検討を進めたところ、当該界面活性剤により歯周病菌殺菌効果を得るために必要な量を口腔用組成物に配合すると、細胞傷害も引き起こしてしまい、口腔用組成物使用対象の口腔内細胞にダメージを与えてしまうおそれがあることを見いだした。
【0006】
このため、当該界面活性剤を、歯周病菌殺菌効果を得るために必要な量を口腔用組成物に配合しつつ、細胞傷害は引き起こさないようにする手法を提供すべく、さらに検討を重ねた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインを特定量配合し、さらにβ-シクロデキストリンを特定量配合することにより、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインによる殺菌効果を得ることができ、且つ、細胞傷害性は抑制された口腔用組成物が得られる可能性を見いだし、さらに改良を重ねた。
【0008】
本開示は例えば以下の項に記載の主題を包含する。
項1.
2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインを0.01~0.3質量%、
β-シクロデキストリンを質量比で2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインの4倍以上
含有する、口腔用組成物。
項2.
2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインを0.01~0.1質量%含有する、
項1に記載の口腔用組成物。
項3.
β-シクロデキストリンを質量比で2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインの4~50倍
含有する、項1又は2に記載の口腔用組成物。
項4.
β-シクロデキストリンを0.1~1質量%含有する、
項1~3のいずれかに記載の口腔用組成物。
項5.
抗歯周病菌用である、項1~4のいずれかに記載の口腔用組成物。
項6.
歯周病菌が、ポルフィロモナス・ジンジバリスである、項5に記載の口腔用組成物。
【発明の効果】
【0009】
2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインによる殺菌効果(好ましくは歯周病菌殺菌効果)を得ることができ、且つ、細胞傷害性は抑制された、口腔用組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインを各濃度含有する組成物が奏する殺菌効果を検討した結果を示す。
図2】2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインを各濃度含有する組成物が有する細胞傷害性を検討した結果を示す。
図3】2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン及びβ-シクロデキストリンを各濃度含有する組成物が奏する殺菌効果を検討した結果を示す。
図4】2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン及びβ-シクロデキストリンを各濃度含有する組成物が有する細胞傷害性を検討した結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示に包含される各実施形態について、さらに詳細に説明する。本開示は、口腔用組成物及びその用途、並びにその製造方法等を好ましく包含するが、これらに限定されるわけではなく、本開示は本明細書に開示され当業者が認識できる全てを包含する。
【0012】
本開示に包含される口腔用組成物は、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインとβ-シクロデキストリンとを特定量含有する。なお、本開示に包含される当該口腔用組成物を「本開示の口腔用組成物」ということがある。
【0013】
本開示の口腔用組成物において、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインは、0.01~0.3質量%含有される。当該範囲の上限又は下限は、例えば0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.15、0.2、又は0.25質量%であってもよい。例えば、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインは、0.01~0.1質量%又は0.02~0.1質量%含有されてもよい。
【0014】
また、本開示の口腔用組成物において、β-シクロデキストリンは、質量比で2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインの4倍以上含有される。好ましくは、4~50倍含有される。当該範囲の上限又は下限は、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、又は49倍であってもよい。
【0015】
本開示の口腔用組成物においては、上記の通り、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインは0.01~0.3質量%含有され、β-シクロデキストリンは質量比でその4倍以上含有されるところ、例えば2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインが0.01質量%含有される場合はβ-シクロデキストリンは0.04質量%以上含有され、また例えば2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインが0.3質量%含有される場合はβ-シクロデキストリンは1.2質量%以上含有されることになる。
【0016】
また、上記の通り、β-シクロデキストリンは質量比で2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインの4~50倍以上含有されることが好ましいところ、この好ましい範囲の具体的な上限含有量を考えると、例えば2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインが0.01質量%含有される場合はβ-シクロデキストリンは0.5質量%以下含有されることが好ましく、また例えば2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインが0.3質量%含有される場合はβ-シクロデキストリンは15質量%以下含有されることが好ましいことになる。
【0017】
以上の通り、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインの含有量にもよるが、本開示の口腔用組成物においてβ-シクロデキストリン含有量下限は0.04~0.3質量%の範囲にあり、また好ましい上限は0.5~15質量%の範囲にあるということになる。
【0018】
特に制限されないが、本開示の口腔用組成物において、β-シクロデキストリンは0.1~1質量%含有されることが好ましい。当該下限は0.15又は0.2質量%であってもよく、また当該上限は0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、又は0.4質量%であってもよい。例えば、0.2~0.5質量%であってもよい。
【0019】
本開示の口腔用組成物は、効果を損なわない範囲で、口腔用組成物に配合し得る公知の成分をさらに含有していてもよい。このような成分としては、例えば、界面活性剤、研磨剤、粘結剤、香味剤、甘味剤、湿潤剤、コンディショニング剤、防腐剤、保存剤、着色剤、pH調整剤、薬効成分等が挙げられるが、特に限定されない。以下、当該公知成分について記載するが、当該記載は例示であり、これに限定されるものではない。
【0020】
例えば、界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤または2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン以外の両性界面活性剤を配合することができる。具体的に例示すると、アニオン界面活性剤としては、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシアルキルエーテルリン酸塩、脂肪酸石鹸、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシアルキルエーテルスルホコハク酸塩、アシルアミノ酸塩、グリセリン脂肪酸エステル硫酸塩、アルキルエーテルリン酸塩、アルキルグルタミン酸塩などが挙げられる。カチオン界面活性剤としては、モノアルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルアミン塩などが挙げられる。ノニオン界面活性剤としては、糖脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、アルキルグルコシド、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、レシチンなどが挙げられる。両性界面活性剤としては、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルスルホベタイン、アルキルベタインなどが挙げられる。これらの界面活性剤は、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0021】
研磨剤としては、研磨性シリカ、リン酸水素カルシウム、リン酸カルシウム、第3リン酸カルシウム、第3リン酸マグネシウム、ピロリン酸カルシウム、ハイドロキシアパタイト、不溶性メタリン酸ナトリウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸ジルコニウム、ケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、アルミナ、水酸化アルミニウム、硫酸カルシウム、ポリメタクリル酸メチル、パミス(軽石)、ベントナイト、合成樹脂などが挙げられる。これら研磨剤は、単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0022】
粘結剤としては、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルエチルセルロース塩、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、結晶セルロース、結晶セルロース・カルメロースナトリウムなどのセルロース誘導体、キサンタンガムなどの微生物産生高分子、トラガントガム、カラヤガム、アラビヤガム、カラギーナン、デキストリン、寒天、ペクチン、プルラン、ジェランガム、ローカストビーンガム、アルギン酸ナトリウムなどの天然高分子または天然ゴム類、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルメチルエーテル、ポリアクリル酸ナトリウムなどの合成高分子、増粘性シリカ、ビーガムなどの無機粘結剤、塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロースなどのカチオン性粘結剤が挙げられる。これら粘結剤は、単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0023】
香味剤としては、メントール、カルボン、サリチル酸メチル、バニリン、ベンジルサクシネート、メチルオイゲノール、アネトール、リモネン、オシメン、n-デシルアルコール、メチルアセタート、シトロネニルアセテート、シネオール、エチルリナロール、ワニリン、タイム、ナツメグ、シンナミックアルデヒド、ベンズアルデヒド、チモール、スペアミント油、ペパーミント油、レモン油、オレンジ油、セージ油、ローズマリー油、珪皮油、シソ油、冬緑油、丁子油、ユーカリ油、ピメント油、ティーツリー油、タバナ油、スターアニス油、フェンネル油、珪藻油、バジル油などが挙げられる。これら香料は、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0024】
甘味剤としては、サッカリン、サッカリンナトリウム、アセスルファームカリウム、ステビアエキス、ステビオサイド、ネオヘスペリジルジヒドロカルコン、グリチルリチン、ペリラルチン、ソウマチン、アスパルチルフェニルアラニンメチルエステル、メトキシシンナミックアルデヒド、パラチノース、パラチニット、エリスリトール、マルチトール、キシリトール、ラクチトールなどが挙げられる。これら甘味剤は、単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0025】
湿潤剤・ハイドロトロープ剤としては、エタノール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、イソプレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ソルビット、ポリエチレングリコール、トルナーレ、トレハロース、ヒアルロン酸などが挙げられる。これらは単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0026】
コンディショニング剤としては、シリコーン誘導体、カチオン変性水溶性高分子、脂肪酸エステル、トリメチルグリシン、タンパク質加水分解物、アミノ酸およびその誘導体、尿素、リン脂質、糖脂質、セラミド類などが挙げられる。これらは単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0027】
防腐剤・保存剤として、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン等のパラベン類、安息香酸ナトリウム、フェノキシエタノール、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン等を配合することができる。
【0028】
着色剤として、青色1号、黄色4号、赤色202号、緑3号等の法定色素、群青、強化群青、紺青等の鉱物系色素、酸化チタン等を配合してもよい。
【0029】
pH調整剤として、クエン酸、リン酸、リンゴ酸、ピロリン酸、乳酸、酒石酸、グリセロリン酸、酢酸、硝酸、またはこれらの化学的に可能な塩や水酸化ナトリウム等を配合してもよい。これらは、組成物のpHが4~8、好ましくは5~7の範囲となるよう、単独または2種以上を組み合わせて配合することができる。pH調整剤の通常配合量は0.01~2質量%である。
【0030】
また、そのほかの成分として、動植油脂、粉体、紫外線吸収剤、動植物抽出物なども挙げられる。
【0031】
薬効成分としては、例えば、殺菌剤として、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、塩酸クロルヘキシジン、塩化セチルピリジニウムなどのカチオン性殺菌剤;ラウロイルサルコシンナトリウム等のアニオン性殺菌剤;アルキルジアミノエチルグリシン塩酸塩、ドデシルジアミノエチルグリシンなどの両性殺菌剤;トリクロサン(2’,4,4’-トリクロロ-2-ヒドロキシ-ジフェニルエーテル)などのハロゲン化ジフェニルエーテルやイソプロピルメチルフェノールなどのフェノール系殺菌剤;ヒノキチオール;血行促進剤として酢酸dl-α-トコフェロール、コハク酸トコフェロール、ニコチン酸トコフェロールなどのビタミンE類;デキストラナーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ、ムタナーゼ、リゾチーム、溶菌酵素(リテックエンザイム)などの酵素;抗炎症剤としてイプシロンアミノカプロン酸、グリチルリチン酸ジカリウム、グリチルレチン酸など;出血改善剤としてトラネキサム酸、アスコルビン酸など;組織修復剤としてアラントインなど;再石灰化剤としてフッ化ナトリウムなどのフッ素化合物;その他、水溶性溶媒で抽出された植物抽出物、銅クロロフィリンナトリウム、塩化ナトリウム、塩化亜鉛、硝酸カリウムなどが挙げられる。これらの薬効成分は、単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
また、基剤として、水、アルコール類、シリコン、アパタイト、白色ワセリン、パラフィン、流動パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、スクワラン等を用いることができる。
【0033】
本開示の口腔用組成物の形態も特には制限されず、例えば、歯磨剤(液体歯磨、液状歯磨、練歯磨)、洗口剤、マウススプレー剤、口腔内塗布剤、口腔用ジェル剤等として用いることができる。また例えば、医薬品、医薬部外品、若しくは化粧品として用いることができる。
【0034】
本開示の口腔用組成物は、殺菌効果(好ましくは歯周病菌殺菌効果)を奏することから、抗歯周病菌用として好適に用いることができる。特に制限はされないが、特に歯周病菌用のなかでもポルフィロモナス・ジンジバリスに対する殺菌効果が好ましく奏される。
【0035】
本開示の口腔用組成物は公知の方法又は公知の方法から容易に想到できる方法により調製することができる。例えば、各原材料成分を適宜混合することによって調整することができる。
【0036】
なお、本明細書において「含む」とは、「本質的にからなる」と、「からなる」をも包含する(The term "comprising" includes "consisting essentially of” and "consisting of.")。また、本開示は、本明細書に説明した構成要件を任意の組み合わせを全て包含する。
【0037】
また、上述した本開示の各実施形態について説明した各種特性(性質、構造、機能等)は、本開示に包含される主題を特定するにあたり、どのように組み合わせられてもよい。すなわち、本開示には、本明細書に記載される組み合わせ可能な各特性のあらゆる組み合わせからなる主題が全て包含される。
【実施例
【0038】
以下、例を示して本開示の実施形態をより具体的に説明するが、本開示の実施形態は下記の例に限定されるものではない。なお、以下CO濃度、生存菌率、細胞生存率を示す以外、特に断らない限り%は質量%を示す。
【0039】
歯肉上皮細胞及び歯周病菌を用いて、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインの殺菌効果及び細胞傷害性を検討した。殺菌効果は歯周病菌(ポルフィロモナス・ジンジバリス;以下「P.g菌」ともいう)の生存菌率により、細胞傷害性は歯肉上皮細胞の生存率により、それぞれ検討した。
【0040】
歯肉上皮細胞
Epi4(ヒト歯肉上皮細胞由来)を1%Supplement S7/Epilife培地に接種し、1x10個/mlに調整した後に、当該調整液を0.2mlずつ96ウェルプレートの各ウェルに移し、37℃、5%COの条件の下で1日培養し、培地交換してさらに1日培養した。
【0041】
2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインによるP.g菌殺菌効果の検討
P.g菌(P.gingivalis OMZ314)を変法GAM培地にて培養し、吸光度(O.D(600))=1.0に調整した。変法GAM培地で各濃度に調整した2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン液、又は、変法GAM培地そのもの180μLに、調整した菌液を20μL添加し、3分間放置して反応させた。放置後、反応液20μLを殺菌剤不活化培地(0.07%レシチン+0.5%Tween 80)180μLに移し、殺菌効果を停止させ、37℃嫌気条件下で24時間培養した。培養後、吸光プレートリーダー(xMark マイクロプレートリーダー)にて培地の吸光度(O.D(600))を測定し、殺菌効果(生存菌率)を確認した。吸光度が小さいほど菌が増殖していないことから、吸光度が小さいほど殺菌効果が高いということができる。生存菌率は、変法GAM培地そのものを処理して培養した菌液の吸光度を100%として、各サンプルの吸光度が何%にあたるかを示す値である。
【0042】
結果を図1に示す。図1の「濃度」は反応液中の2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン濃度である。
【0043】
2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインの細胞傷害性評価試験(WST-1 アッセイ)
96ウェルプレートに歯肉上皮細胞を培養した後、各ウェルの培地を交換した。1%Supplement S7/Epilife培地で各濃度に調整した2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインを細胞に0.2ml添加し、37℃、5%COの条件の下30分間培養した。
【0044】
その後、各ウェルをPBS(リン酸緩衝生理食塩水)で洗浄した後に、9%Premix WST-1(タカラ社製)/Epilife培地0.1mlを各ウェル(対照実験のウェルも含む)に添加し、37℃、5%COの条件の下1時間培養することでウェル中の生存細胞と反応させた。その後、xMARKマイクロプレートリーダー(BioRad社製)を用いて、450nmの吸光度を測定した(リファレンス600nm)。生存率は、1%Supplement S7/Epilife培地処理群の吸光度を100%として、各サンプルの吸光度が何%にあたるかを示す値である。
【0045】
結果を図2に示す。図2の「濃度」は反応液中の2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン濃度である。
【0046】
図1及び図2の結果から、殺菌効果が得られる2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン濃度では、細胞傷害性も生じてしまうことが明らかとなった。また、殺菌効果が得られる2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン濃度は、0.01質量%程度以上であろうことも分かった。
【0047】
β-シクロデキストリン及び2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインのP.g菌殺菌効果の検討
P.g菌(P.gingivalis OMZ314)を変法GAM培地にて培養し、吸光度(O.D(600))=1.0に調整した。変法GAM培地で各濃度に調整したβ-シクロデキストリン(βCD)液、若しくは2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン液、又はこれらの混合液、あるいは変法GAM培地そのもの180μLに、調整した菌液を20μL添加し、3分間放置して反応させた。放置後、反応液20μLを殺菌剤不活化培地(0.07%レシチン+0.5%Tween 80)180μLに移し、殺菌効果を停止させ、37℃嫌気条件下で24時間培養した。培養後、吸光プレートリーダー(xMark マイクロプレートリーダー)にて培地の吸光度(O.D(600))を測定し、殺菌効果を確認した。生存菌率は、変法GAM培地そのものを処理して培養した菌液の吸光度を100%として、各サンプルの吸光度が何%にあたるかを示す値である。
【0048】
結果を図3に示す。図3の「βCD濃度」は反応液中のβ-シクロデキストリン濃度であり、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインの濃度も反応液中の濃度である。
【0049】
2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインにβ-シクロデキストリンを組み合わせて用いても、殺菌活性にほとんど影響はないことが分かった。
【0050】
β-シクロデキストリン及び2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインの細胞傷害性低減評価試験(WST-1 アッセイ)
96ウェルプレートに歯肉上皮細胞を培養した後、各ウェルの培地を交換した。1%Supplement S7/Epilife培地で各濃度に調整したβ-シクロデキストリン液、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン液、又はその混合液を細胞に0.2ml添加し、37℃、5%COの条件の下30分間培養した。
【0051】
その後、各ウェルをPBS(リン酸緩衝生理食塩水)で洗浄した後に、9%Premix WST-1(タカラ社製)/Epilife培地0.1mlを各ウェル(対照実験のウェルも含む)に添加し、37℃、5%COの条件の下1時間培養することでウェル中の生存細胞と反応させた。その後、xMARKマイクロプレートリーダー(BioRad社製)を用いて、450nmの吸光度を測定した(リファレンス600nm)。生存率は、1%Supplement S7/Epilife培地処理群の吸光度を100%として、各サンプルの吸光度が何%にあたるかを示す値である。
【0052】
結果を図4に示す。図4の「βCD濃度」は反応液中のβ-シクロデキストリン濃度であり、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインの濃度も反応液中の濃度である。
【0053】
2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン0.036質量%にβ-シクロデキストリンを質量比で4倍以上加えると細胞傷害性が抑制されること、一方で2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン0.36質量%の場合はβ-シクロデキストリンを質量比で4倍以上加えても細胞傷害性が抑制されないこと、が分かった。
【0054】
以下に処方例を示す。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
【表3】
【0058】
【表4】
図1
図2
図3
図4