(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】接着剤の塗布方法および塗布装置
(51)【国際特許分類】
B05D 1/36 20060101AFI20240408BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20240408BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20240408BHJP
B05D 7/00 20060101ALI20240408BHJP
B05C 5/00 20060101ALI20240408BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
B05D1/36 Z
B05D3/00 D
B05D7/24 301P
B05D7/00 N
B05C5/00 101
B05C11/10
(21)【出願番号】P 2020045382
(22)【出願日】2020-03-16
【審査請求日】2022-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本間 彰
【審査官】市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-098306(JP,A)
【文献】特開平01-135561(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D1/00-7/26
B05C5/00-21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に接着剤を塗布するための塗布方法であって、
前記接着剤を前記対象物の指定部分に塗布する前に前記接着剤を前記指定部分とは異なる部分に塗布すること、
前記指定部分とは異なる部分に塗布した前記接着剤の塗布量を算出すること、
前記算出の結果に基づき、
算出した前記接着剤の塗布量が規定範囲内にあるか否かを判定すること、
算出した前記接着剤の塗布量が規定範囲内にないと判定した場合、前記接着剤の塗布量が補正可能な範囲内にあるか否かをさらに判定すること、
前記接着剤の塗布量が補正可能な範囲内にあると判定した場合、前記接着剤を吐出するための塗布圧を補正する第1補正を実行すること、
前記第1補正において補正された前記塗布圧で前記接着剤を前記指定部分に塗布すること、を含み、
前記第1補正においては、前記第1補正の前にされた補正である第2補正における前記塗布圧の増減量と、前記第2補正から前記第1補正までの経過時間である補正間隔と、に基づき、前記塗布圧の増減量が設定される、
塗布方法。
【請求項2】
前記算出することは、前記指定部分とは異なる部分に塗布された前記接着剤をカメラで撮像することと、前記カメラにより撮像した画像に基づき前記接着剤の塗布量を求めることと、を含む、
請求項1に記載の塗布方法。
【請求項3】
前記補正間隔が規定時間未満である場合、前記第1補正における前記塗布圧の増減量は、前記第2補正における前記塗布圧の増減量よりも大きい、
請求項1に記載の塗布方法。
【請求項4】
前記対象物は、ディスク装置用サスペンションが備えるフレキシャと、複数の前記フレキシャが固定されたフレームと、を含み、
前記指定部分とは異なる部分は、前記フレームの一部である、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の塗布方法。
【請求項5】
対象物に接着剤を塗布するための塗布装置であって、
前記接着剤を前記対象物に対して吐出するディスペンサと、
前記接着剤の吐出を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記ディスペンサに前記接着剤を前記対象物の指定部分に塗布する前に前記接着剤を前記指定部分とは異なる部分に塗布させ、前記指定部分とは異なる部分に塗布された前記接着剤の塗布量を算出し、前記算出の結果に基づき、
算出した前記接着剤の塗布量が規定範囲内にあるか否かを判定し、算出した前記接着剤の塗布量が規定範囲内にないと判定した場合、前記接着剤の塗布量が補正可能な範囲内にあるか否かをさらに判定し、前記接着剤の塗布量が補正可能な範囲内にあると判定した場合、前記接着剤を吐出するための塗布圧を補正する第1補正を実行し、前第1補正において補正された前記塗布圧で前記ディスペンサに前記接着剤を前記指定部分に塗布させ、
前記第1補正においては、前記第1補正の前にされた補正である第2補正における前記塗布圧の増減量と、前記第2補正から前記第1補正までの経過時間である補正間隔と、に基づき、前記塗布圧の増減量が設定される、
塗布装置。
【請求項6】
前記指定部分とは異なる部分に塗布された前記接着剤を撮像するためのカメラをさらに備え、
前記制御装置は、前記カメラにより撮像した画像に基づき前記接着剤の塗布量を求める、
請求項5に記載の塗布装置。
【請求項7】
前記制御装置は、前記補正間隔が規定時間未満である場合、前記第1補正における前記塗布圧の増減量を前記第2補正における前記塗布圧の増減量よりも大きく設定する、
請求項5に記載の塗布装置。
【請求項8】
前記対象物は、ディスク装置用サスペンションが備えるフレキシャと、複数の前記フレキシャが固定されたフレームと、を含み、
前記指定部分とは異なる部分は、前記フレームの一部である、
請求項5乃至7のいずれか1項に記載の塗布装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤を塗布するための塗布方法および塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピュータなどの情報処理装置に、ハードディスク装置(HDD)が使用されている。ハードディスク装置は、スピンドルを中心に回転する磁気ディスクや、ピボット軸を中心に旋回するキャリッジなどを含んでいる。キャリッジはアクチュエータアームを有し、ボイスコイルモータ等のポジショニング用モータによってピボット軸を中心にディスクのトラック幅方向に旋回する。
【0003】
上記アクチュエータアームにディスク装置用サスペンション(これ以降、単にサスペンションと称す)が取り付けられている。サスペンションは、ロードビームや、ロードビームに重ねて配置されたフレキシャなどを含んでいる。フレキシャの先端付近に形成されたジンバル部に、磁気ヘッドを構成するスライダが設けられている。スライダには、データの読取りあるいは書込み等のアクセスを行なうための素子(トランスジューサ)が設けられている。これらロードビームやフレキシャおよびスライダなどによって、ヘッドジンバルアセンブリが構成されている。
【0004】
上記ジンバル部は、スライダを搭載するタングと、タングの両側に形成された一対のアウトリガーとを含んでいる。これらアウトリガーは、それぞれフレキシャの両側部の外側に張り出す形状である。各アウトリガーの長さ方向の両端部付近は、それぞれ、例えばレーザ溶接等によりロードビームに固定されている。各アウトリガーは、それぞれ厚さ方向にばねのように撓むことができ、タングのジンバル運動を確保する上で重要な役割を担っている。
【0005】
ディスクの高記録密度化に対応するためには、ヘッドジンバルアセンブリをさらに小形化することが必要であり、サスペンションに搭載するアクチュエータもDSA(Dual Stage Actuator)タイプからCLA(Co-Located Actuator)タイプへと小型化が進んでいる。そのため、アクチュエータの固定に使用される接着剤の塗布量管理が益々重要となっている。
【0006】
接着剤の塗布工程は、ディスペンサにて一定の空気圧を付加したシリンジから接着剤を吐出することでなされることがある。この場合、塗布開始から使用時間の経過に伴って接着剤の粘度が上昇するため、一定の空気圧にて接着剤を塗布していても接着剤の塗布量が減少してしまうという問題がある。
【0007】
このような問題に対して接着剤の塗布量を管理する方法として、接着剤の塗布量を塗布高さで管理する方法がある(例えば、特許文献1)。当該方法は、接着剤が目標高さ以上となるように使用経過時間に応じた圧力を予め設定しておき、設定された圧力にて接着剤を塗布することで塗布高さを維持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
例えば現在主流となっているCLAタイプのアクチュエータのように接着剤の塗布量が極微小な製品においては、接着剤の粘度の経時変化だけでなく、接着剤の生産ロット違いによる粘度の差、サスペンション生産設備の癖、および接着剤塗布ノズル径のバラつき等に起因した接着剤の塗布量のわずかなバラつきが問題となる。
【0010】
上述の使用経過時間に応じて圧力を設定する方法では、塗布量を一定化するとの要求に高精度で応えることが難しくなっている。接着剤の塗布量を監視しその都度補正をかける場合であっても、単純な一定係数に基づく補正では実際の塗布量が正確に補正されないため、補正を繰り返すこととなり生産のタクトダウンにつながっている。
【0011】
このように、接着剤の塗布方法には種々の改善の余地がある。そこで、本発明は、接着剤を精度良く塗布することが可能な塗布方法および塗布装置を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一実施形態に係る塗布方法は、対象物に接着剤を塗布するための塗布方法であって、前記接着剤を前記対象物の指定部分に塗布する前に前記接着剤を前記指定部分とは異なる部分に塗布すること、前記指定部分とは異なる部分に塗布した前記接着剤の塗布量を算出すること、前記算出の結果に基づき、前記接着剤の塗布条件を補正する第1補正を実行すること、前記第1補正において補正された塗布条件で前記接着剤を前記指定部分に塗布すること、を含む。
【0013】
前記第1補正においては、前記第1補正の前にされた補正である第2補正における前記塗布条件への補正量と、前記第2補正から前記第1補正までの補正間隔との少なくとも1つに基づき補正量が設定される。
【0014】
前記算出することは、前記指定部分とは異なる部分に塗布された前記接着剤をカメラで撮像することと、前記カメラにより撮像した画像に基づき前記接着剤の塗布量を算出することと、を含んでもよい。
【0015】
前記第1補正においては、前記第2補正での補正量と前記補正間隔の双方に基づき補正量が設定されてもよい。前記塗布条件は、前記接着剤を吐出するための塗布圧であってもよい。前記補正間隔が規定時間未満である場合、前記第1補正における塗布圧の補正量は、前記第2補正における前記塗布圧の補正量よりも大きくてもよい。
【0016】
一実施形態に係る塗布装置は、対象物に接着剤を塗布するための塗布装置であって、前記接着剤を前記対象物に対して吐出するディスペンサと、前記接着剤の吐出を制御する制御装置と、を備える。
【0017】
前記制御装置は、前記ディスペンサに前記接着剤を前記対象物の指定部分に塗布する前に前記接着剤を前記指定部分とは異なる部分に塗布させ、前記指定部分とは異なる部分に塗布された前記接着剤の塗布量を算出し、前記算出の結果に基づき前記接着剤の塗布条件を補正する第1補正を実行し、前第1補正において補正された塗布条件で前記ディスペンサに前記接着剤を前記指定部分に塗布させる。
【0018】
前記第1補正においては、前記第1補正の前にされた補正である第2補正における前記塗布条件への補正量と、前記第2補正から前記第1補正までの補正間隔との少なくとも1つに基づき補正量が設定される。
【0019】
前記指定部分とは異なる部分に塗布された前記接着剤を撮像するためのカメラをさらに備えてもよい。前記制御装置は、前記カメラにより撮像した画像に基づき前記接着剤の塗布量を算出してもよい。前記制御装置は、前記第2補正での補正量と前記補正間隔の双方に基づき前記第1補正における補正量を設定してもよい。前記塗布条件は、前記接着剤を吐出するための塗布圧であってもよい。前記制御装置は、前記補正間隔が規定時間未満である場合、前記第1補正における前記塗布圧の補正量を前記第2補正における前記塗布圧の補正量よりも大きく設定してもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、接着剤を精度良く塗布することが可能な塗布方法および塗布装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、ディスク装置の一例を示す概略的な斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示されたディスク装置の概略的な断面図である。
【
図3】
図3は、サスペンションの先端部付近の概略的な平面図である。
【
図4】
図4は、本実施形態に係る塗布装置の概略的な構成を示す図である。
【
図5】
図5は、対象物にマイクロアクチュエータ素子が搭載された状態の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、本実施形態に係る塗布装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、本実施形態に係る塗布装置による塗布量変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
いくつかの実施形態につき、図面を参照しながら説明する。
本実施形態に係る塗布装置として、ディスク装置用サスペンションの製造工程に適用し得る塗布装置を例示する。当該塗布装置は、サスペンションの製造工程のみならず、他の製品の製造工程にも適用することが可能である。各図においては、塗布装置を構成する各部材の相対的な大きさや位置を模式的に示すことがある。なお、以下に説明する実施形態によって本発明が限定されるものではない。
【0023】
図1は、ディスク装置1の一例を示す概略的な斜視図である。
図1に示すように、ディスク装置(HDD)1は、ケース2と、スピンドル3を中心に回転する複数のディスク4と、ピボット軸5を中心に旋回可能なキャリッジ6と、キャリッジ6を駆動するためのポジショニング用モータ(ボイスコイルモータ)7とを備えている。ケース2は、図示しない蓋によって密閉される。
【0024】
図2は、
図1に示されたディスク装置1の概略的な断面図である。キャリッジ6には、アーム8が設けられている。アーム8の先端部にサスペンション10が取付けられている。サスペンション10の先端部に、磁気ヘッドを構成するスライダ11が搭載されている。ディスク4が高速で回転すると、ディスク4とスライダ11との間に空気が流入することによって、エアベアリングが形成される。
【0025】
ボイスコイルモータ7によってキャリッジ6が旋回すると、サスペンション10がディスク4の径方向に移動することにより、スライダ11がディスク4の所望トラックまで移動する。
【0026】
図3は、サスペンション10の先端部付近の概略的な平面図である。
図3に示した例においては、サスペンション10の先端部付近をスライダ11側から見ている。サスペンション10は、キャリッジ6のアーム8(
図1および
図2に示す)に固定される図示しないベースプレートと、ロードビーム12と、フレキシャ13とを備えている。フレキシャ13は、ロードビーム12に沿って配置されている。フレキシャ13は、ロードビーム12にレーザースポット溶接等により固定されている。
【0027】
ロードビーム12およびフレキシャ13は、いずれもサスペンション10の長さ方向Xに延びている。以下、長さ方向Xに直交する方向をサスペンション10、ロードビーム12およびフレキシャ13などの幅方向Yと呼ぶ。また、スウェイ方向SWをロードビーム12の先端近傍に円弧状の矢印で示す。
【0028】
フレキシャ13は、薄いステンレス鋼板からなるメタルベース21と、メタルベース21に沿って配置された配線部22とを有している。メタルベース21の厚さは、ロードビーム12の厚さよりも小さい。配線部22の一部は、スライダ11用の端子を介してスライダ11の素子に電気的に接続されている。フレキシャ13は、タング23と、第1アウトリガー31と、第2アウトリガー32とを有している。タング23には、スライダ11が搭載されている。
【0029】
磁気ヘッドをなすスライダ11の先端部には、例えばMR素子のように磁気信号と電気信号とを変換可能な図示しない素子が設けられている。これらの素子によって、ディスク4に対するデータの書込みあるいは読取り等のアクセスが行なわれる。スライダ11、ロードビーム12およびフレキシャ13などによって、ヘッドジンバルアセンブリ(head gimbal assembly)が構成されている。
【0030】
第1アウトリガー31と第2アウトリガー32は、幅方向Yにおけるタング23の両側にそれぞれ配置されている。第1アウトリガー31と第2アウトリガー32は、幅方向Yにおけるタング23の両外側に張り出す形状である。タング23、第1アウトリガー31および第2アウトリガー32は、いずれもメタルベース21の一部であり、例えばエッチングによってそれぞれの輪郭が形成される。
【0031】
ロードビーム12の先端付近に、タング23に向かって突出するディンプル24が形成されている。ディンプル24の先端は、タング23に接している。タング23は、ディンプル24の先端を中心として揺動し、所望のジンバル運動をなすことができる。タング23、第1アウトリガー31、第2アウトリガー32およびディンプル24などによってジンバル部25が構成されている。
【0032】
ジンバル部25には、第1マイクロアクチュエータ素子41および第2マイクロアクチュエータ素子42が搭載されている。マイクロアクチュエータ素子41,42は、幅方向Yにおけるスライダ11の両側に配置されている。
【0033】
マイクロアクチュエータ素子41,42は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の圧電体から形成される。マイクロアクチュエータ素子41,42は、タング23をスウェイ方向SWに回動させる機能を有している。
【0034】
第1マイクロアクチュエータ素子41の両端部41a,41bは、それぞれタング23のアクチュエータ支持部33,34に接着剤ADを介して接続されている。第2マイクロアクチュエータ素子42の両端部42a,42bは、それぞれタング23のアクチュエータ支持部35,36に接着剤ADを介して接続されている。
【0035】
例えば、接着剤ADとしては、非導電性接着剤や導電性接着剤が使用される。接着剤ADは、例えば導電性接着剤である。導電性接着剤は、主剤(バインダ)に導電性フィラーが分散されたものである。導電性接着剤の一例として、エポキシ樹脂等の主剤に銀粉が分散された銀ペーストがある。接着剤ADは、使用経過時間が長くなると接着剤中の溶剤が揮発する等して粘度が変化す場合がある。例えば接着剤ADを塗布するにあたり塗布量が規定量よりも少ない場合、接着強度が弱くなることでマイクロアクチュエータ素子41,42によるタング23をスウェイ方向SWに回動させる機能がうまく果たされない。
【0036】
図4は、本実施形態に係る塗布装置100の概略的な構成を示す図である。塗布装置100は、例えばサスペンション10の製造工程に使用される。本実施形態に係る塗布装置100は、サスペンション10の製造工程だけでなく、他の製品の製造工程にも適用することが可能である。
【0037】
塗布装置100は、搬送装置50と、ディスペンサ60と、位置制御装置70と、カメラ80と、制御装置90と、を備えている。搬送装置50、ディスペンサ60、位置制御装置70、およびカメラ80は、制御装置90とそれぞれ通信可能に接続されている。制御装置90は、搬送装置50、ディスペンサ60、位置制御装置70、およびカメラ80をそれぞれ制御可能に構成されている。
【0038】
搬送装置50は、可動ステージ51と、可動ステージ51を矢印D1で示す方向に移動させるステージ駆動機構52とを有している。可動ステージ51上に塗布装置100により加工される対象物Wが設置される。可動ステージ51上の対象物Wは、矢印D1で示す方向に搬送される。
【0039】
ディスペンサ60は、接着剤を対象物Wに対して吐出するものである。ディスペンサ60は、吐出駆動機構61と、接着剤が収容されるシリンジ62を有している。吐出駆動機構61には、図示しない空気供給源から圧縮空気が供給される。吐出駆動機構61で圧縮空気の圧力調整が可能であり、圧力調整された圧縮空気がシリンジ62に供給される。シリンジ62は、先端に接着剤が吐出するノズル63を有している。可動ステージ51上の対象物Wの指定部分に対して、ノズル63から接着剤が塗布される。本実施形態において、例えば、ディスペンサ60は空気式の吐出方法であるため、シリンジ62に供給される圧縮空気の圧力を吐出駆動機構61で調整することで、接着剤の塗布量を調整することが可能である。
【0040】
位置制御装置70は、保持具71と、シリンジ駆動機構72とを有している。保持具71は、可動ステージ51上でシリンジ62を保持している。シリンジ駆動機構72は、可動ステージ51上でシリンジ62および保持具71を移動させる。シリンジ62および保持具71は、シリンジ駆動機構72により可動ステージ51と平行な面上のみならず、可動ステージ51と垂直な方向にも移動可能である。
【0041】
カメラ80は、可動ステージ51上の対象物Wを撮像可能に保持されている。また、カメラ80は、シリンジ62と同様に他の位置制御装置などによって駆動可能に保持されていてもよい。カメラ80は、例えば、CMOSカメラやCCDカメラなどである。カメラ80は、対象物Wに照明を照射するための光源(LED照明等)をさらに備えていてもよい。カメラ80の台数は1台に限られず、複数台であってもよい。例えば、カメラ80は、対象物Wを上方から撮像するカメラと、側方から撮像するカメラ等の複数台のカメラで構成されていてもよい。
【0042】
制御装置90が接着剤の塗布量を制御する。制御装置90は、駆動制御モジュール91と、吐出制御モジュール92と、撮像制御モジュール93と、算出制御モジュール94と、を含んでいる。駆動制御モジュール91は、ステージ駆動機構52を制御し、可動ステージ51上の対象物Wを所定の位置に搬送する。また、駆動制御モジュール91は、シリンジ駆動機構72を制御し、対象物Wに対しシリンジ62を位置決めする。
【0043】
吐出制御モジュール92は、ディスペンサ60を制御し、シリンジ62から対象物Wに対して接着剤を吐出させる。吐出制御モジュール92は、ディスペンサ60の吐出駆動機構61を制御することにより接着剤を塗布するタイミングのみならず、塗布するための塗布条件の設定や塗布条件への補正を実行することが可能である。吐出制御モジュール92による補正が可能な塗布条件とは、例えば、シリンジ62に供給される圧縮空気の圧力等である。接着剤を吐出するためにシリンジ62に供給される圧縮空気の圧力を塗布圧と呼ぶ。
【0044】
撮像制御モジュール93は、カメラ80を制御し、対象物Wを撮像させる。算出制御モジュール94は、カメラ80で撮像された画像に基づいて接着剤の塗布量を算出する。さらに、算出制御モジュール94は、予め定められた基準に基づいて接着剤の塗布量が規定範囲内であるかを判定する。また、算出制御モジュール94による判定結果に基づいて、吐出制御モジュール92は、接着剤を塗布するための塗布条件への補正量を設定し、補正を実行する。
【0045】
塗布装置100は、
図4に示した構成要素以外の他の要素を含むものとして定義されてもよい。例えば、塗布装置100は、塗布条件を表示するモニターやネットワークを介して塗布条件を他の装置に送信する通信ユニットなどの出力装置を備えてもよい。また塗布装置100は、独立したシステムとして構成されてもよいし、他の装置の一部として組み込まれてもよい。
【0046】
図5は、対象物Wにマイクロアクチュエータ素子41,42が搭載された状態の一例を示す図である。対象物Wは、例えば複数のフレキシャ要素13Wが連鎖したフレキシャ連鎖シートである。対象物Wは、複数のフレキシャ要素13Wと、複数のフレキシャ要素13Wを固定するフレームFと、を含んでいる。
【0047】
フレキシャ要素13Wは、フレキシャ13と同様の構成を有している。対象物Wは、一枚のステンレス鋼板をエッチング等により加工することで形成される層と、銅等の導体層と、ポリイミド等の絶縁層とを含んでいる。対象物Wの各フレキシャ要素13Wに接着剤が塗布された後にマイクロアクチュエータ素子41,42が搭載されることで、
図5に示す状態となる。マイクロアクチュエータ素子41,42は、
図3に示したアクチュエータ支持部33,34やアクチュエータ支持部35,36にそれぞれ接続されている。例えば、塗布装置100は、
図3におけるサスペンション10の先端部において、接着剤ADをアクチュエータ支持部33,34やアクチュエータ支持部35,36に塗布する。
【0048】
図6は、本実施形態に係る塗布装置100の動作の一例を示すフローチャートである。当該フローチャートが示す動作は、制御装置90によって実行される。制御装置90は、プロセッサやメモリ等で構成されたコンピュータを含む。例えば、制御装置90が備えるプロセッサがメモリに記憶されたコンピュータプログラムを実行することによって、上述の駆動制御モジュール91、吐出制御モジュール92、撮像制御モジュール93、および算出制御モジュール94が実現される。
【0049】
コンピュータプログラムの実行は、複数のプロセッサを用いて実現されてもよい。各モジュール91乃至94の少なくとも1つは、制御装置90とは独立した個別の装置であってもよい。
【0050】
まず、塗布装置100による接着剤を塗布するための動作を開始する前に、可動ステージ51上に対象物Wが配置される。対象物Wの配置は、制御装置90によって実行されてもよいし、他の装置によって実行されてもよい。
【0051】
塗布装置100による動作が開始すると、駆動制御モジュール91がステージ駆動機構52を制御し、可動ステージ51上の対象物Wが所定の位置に搬送される。また、駆動制御モジュール91がシリンジ駆動機構72を制御し、シリンジ62のノズル63が対象物Wの指定部分とは異なる部分に位置決めされる。指定部分とは異なる部分とは、例えば
図5に図示した対象物WのフレームFの一部である。また、異なる部分として事前に接着剤を塗布するためのステージを別途塗布装置100内に設置してもよい。
【0052】
ノズル63が位置決めされると、吐出制御モジュール92が吐出駆動機構61を制御し、ノズル63から接着剤を吐出させ、指定部分とは異なる部分に接着剤を塗布する(ステップS101)。接着剤が塗布されると、撮像制御モジュール93がカメラを制御し、カメラ80に塗布された接着剤を撮像させる(ステップS102)。撮像された画像は、制御装置90に記憶される。記憶された画像は、必要に応じてノイズ除去や画像の明るさの補正等の画像処理が施されてもよい。
【0053】
算出制御モジュール94は、カメラ80で撮像された画像に基づいて、塗布された接着剤の塗布量を算出する(ステップS103)。例えば塗布された接着剤の平面形状が円形である場合、接着剤の塗布量Aは以下の近似式1を用いて算出することができる。近似式1において、hは塗布された接着剤の高さであり、rは当該接着剤が塗布された領域の半径である。
[近似式1] A=2×π×h×r2÷3
また、例えば塗布された接着剤の平面形状が楕円形である場合、接着剤の塗布量Aは以下の近似式2を用いて算出することができる。近似式2において、r1は接着剤が塗布された領域の長軸半径であり、r2は当該領域の短軸半径である。
[近似式2] A=2×π×h×r1×r2÷3
高さh、半径r、長軸半径r1および短軸半径r2は、いずれもカメラ80で撮像された画像から計測することができる。高さhと各半径r,r1,r2とを正確に計測するために、複数の方向から撮像された画像が用いられてもよい。
【0054】
算出制御モジュール94は、ステップS103で算出された接着剤の塗布量が規定範囲内であるかを判定する(ステップS104)。塗布量の規定範囲は、予め制御装置90に記憶されていてもよい。
【0055】
接着剤の塗布量が規定範囲内でない場合(ステップS104のNo)、次に算出制御モジュール94は、接着剤の塗布量に基づいて塗布装置100による補正が可能であるかを判定する(ステップS105)。塗布装置100による補正が可能であるかの判定は、塗布量が補正可能な範囲内であるかを基準に行われる。つまり、接着剤の塗布量が規定範囲外で、かつ補正可能な範囲内であれば、塗布装置100による補正が可能であると判定される。一方、接着剤の塗布量が規定範囲外で、かつ補正可能な範囲外であれば、塗布装置100による補正が可能でないと判定される。
【0056】
塗布装置100による補正が可能である場合(ステップS105のYes)には、吐出制御モジュール92が必要な補正量を決定する(ステップS106)。必要な補正量の決定に関しては、後述する
図7において説明する。吐出制御モジュール92は、決定された補正量に基づいて塗布条件の補正を実行する(ステップS107)。そして、再びステップS101に戻り、補正された塗布条件により塗布される塗布量が規定範囲内であるかを確認する。
【0057】
一方、塗布装置100による補正が可能でない場合(ステップS105のNo)には、制御装置90が算出制御モジュール94の判定結果に基づいて塗布装置100を停止させる(ステップS108)。このとき、ディスプレイへの表示、ランプの点灯または点滅、あるいはスピーカからの警告音の発生などにより、塗布装置100の異常停止が作業者に報知されてもよい。塗布装置100が停止した場合には、作業者により塗布装置100の外観検査、塗布装置100の手動操作による塗布量の調整、および必要に応じて塗布装置100を構成する各機器の点検が実行される。
【0058】
接着剤の塗布量が規定範囲内である場合(ステップS104のYes)には、吐出制御モジュール92は吐出駆動機構61を制御し、対象物Wの指定部分へ接着剤を塗布させる(ステップS109)。対象物Wの指定部分への接着剤の塗布終了後、制御装置90は次に塗布すべき対象物Wの有無を判定する(ステップS110)。また、ステップS109において、ステップS110へ移行する前に一定時間経過した場合には、再びステップS101乃至104を実行することで接着剤の塗布量の確認をしてもよい。
【0059】
次に塗布すべき対象物Wがある場合(ステップS110のYes)には、再びステップS101に戻る。塗布すべき対象物Wがなくなるまで、これらのステップは繰り返し実行される。上記の各ステップを繰り返し実行した後、次に塗布すべき対象物Wがない場合(ステップS110のNo)には、塗布装置100による動作は終了する。
【0060】
図7は、本実施形態に係る塗布装置100による塗布量変化を示す図である。
図7は、
図6に示すフローチャートの動作が繰り返し実行された際に、各ループのステップS103において算出制御モジュール94によって算出された塗布量の一部を抜粋したものである。
図7において、縦方向が塗布量を示し、横方向が経過時間を示す。
図7内の折れ線は、算出制御モジュール94によって算出された接着剤の塗布量Aである。
【0061】
上述した接着剤の塗布量の規定範囲の上限を閾値Max1とし、当該規定範囲の下限を閾値Min1とする。算出制御モジュール94により算出される接着剤の塗布量が閾値Max1から閾値Min1の範囲内であれば、ステップS104において塗布量が規定範囲内であると算出制御モジュール94は判定する。規定範囲の中央部が基準値SAである。
【0062】
また、ステップS105において塗布装置100による補正が可能であると判定される塗布量の範囲の上限を閾値Max2とし、当該範囲の下限を閾値Min2とする。
図7の例においては、吐出制御モジュール92による塗布条件を補正する補正C1乃至C6が時系列に実行されている。
【0063】
ここで、塗布条件に対して時系列で実行される補正のうちのいずれかを第1補正とし、この第1補正の前に実行された補正を第2補正とする。この場合、第1補正における塗布条件への補正量は、第2補正における塗布条件への補正量と、第2補正から第1補正までの補正間隔Pとに基づいて設定される。
【0064】
補正間隔Pは、第2補正が実行されたときから第1補正が実行される直前のステップS104にて塗布量が規定範囲外であると判定されるまでの時間であってもよいし、第2補正が実行される直前のステップS104にて塗布量が規定範囲外であると判定されたときから第1補正が実行される直前のステップS104にて塗布量が規定範囲外であると判定されるまでの時間であってもよい。
【0065】
本実施形態においては、補正の対象となる塗布条件が塗布圧であり、さらに第1補正の補正量(塗布圧の増減量)を決定するための条件として以下の条件1乃至4が定められている場合を想定する。ただし、第1補正の補正量を決定するための条件はこの例に限られない。
【0066】
[条件1]
補正間隔Pが規定時間Ps以上(P≧Ps)であり、さらに塗布量Aが閾値Min1以下かつ閾値Min2以上(Min2≦A≦Min1)である場合、塗布圧を第1補正量Q1増加させる。
【0067】
[条件2]
塗布量Aが閾値Max1以上かつ閾値Max2以下(Max1≦A≦Max2)である場合、塗布圧を第1補正量Q1減少させる。
【0068】
[条件3]
補正間隔Pが規定時間Ps未満(P<Ps)であり、塗布量Aが閾値Min1以下かつ閾値Min2以上(Min2≦A≦Min1)であり、さらに前回の第2補正における補正量が第1補正量Q1である場合、塗布圧を第1補正量Q1よりも大きい第2補正量Q2(Q1<Q2)増加させる。
【0069】
[条件4]
補正間隔Pが規定時間Ps未満(P<Ps)であり、塗布量Aが閾値Min1以下かつ閾値Min2以上(Min2≦A≦Min1)であり、さらに前回の第2補正における補正量が第2補正量Q2以上である場合、塗布圧を第2補正量Q2よりも大きい第3補正量Q3(Q2<Q3)増加させる。
【0070】
上述のステップS106においては、これら条件1乃至4に基づいて補正量が決定される。さらに、上述のステップS105においては、以下の条件5に基づいて補正可能か否かが判定される。
[条件5]
塗布量Aが閾値Max2よりも大きいか(A>Max2)、あるいは閾値Min2未満(A<Min2)である。
【0071】
なお、第1補正量Q1、第2補正量Q2および第3補正量Q3の関係は、塗布装置100や接着剤の特性等を考慮して適宜に定め得る。一例として、Q2-Q1<Q3-Q2が成立するように補正量Q1乃至Q3を定めてもよい。この場合において、例えば第3補正量Q3が第2補正量Q2の2倍以上であってもよい。
【0072】
以下、これら条件1乃至5を踏まえ、
図7における補正C1が実行された後の接着剤の塗布量Aの変化と補正C2乃至C6について説明する。
まず、補正C1が実行されると塗布量Aが規定範囲内(Min1<A<Max1)まで増加する。補正C1が実行された直後は、塗布量Aは基準値SA以上である。その後、ステップS101乃至S104,S109,S110が繰り返し実行されて時間が経過すると、塗布量Aが次第に減少していく。接着剤は、使用経過時間が長くなると接着剤中の溶剤が揮発する等して粘度が上昇する。そのため、ディスペンサ60で一定の塗布圧で接着剤を塗布していても、接着剤の塗布量が減少してしまう。
【0073】
補正C1の後に塗布量Aが閾値Min1以下に減少すると、ステップS104において塗布量Aが規定範囲内でないと判定され、補正C2が実行される。
図7における補正C2のタイミングにおいては、塗布量Aが閾値Min1以下かつ閾値Min2以上である。そのため、ステップS105において塗布装置100による補正が可能であると判定される。そして、ステップS106において必要な補正量が決定される。
【0074】
ここで、補正C1における補正量が第1補正量Q1であり、補正C1から補正C2までの補正間隔P1が規定時間Ps以上であるとする。この場合、補正C2における補正量は、上述の条件1により第1補正量Q1の増加に決定される。このように決定された補正量に基づいて吐出制御モジュール92が塗布圧に対する補正C2を実行することで、新たな塗布圧が設定される。
【0075】
図7の例においては、補正C2が実行されると塗布量Aが規定範囲内まで増加している。ただし、補正C2が実行された直後であっても、塗布量Aは基準値SA以下である。その後、時間が経過すると、塗布量Aが次第に減少している。
【0076】
補正C2の後に塗布量Aが閾値Min1以下に減少すると、再びステップS104において塗布量Aが規定範囲内でないと判定され、補正C3が実行される。
図7における補正C3のタイミングにおいては、塗布量Aが閾値Min1以下かつ閾値Min2以上である。そのため、ステップS105において塗布装置100による補正が可能であると判定される。そして、ステップS106において必要な補正量が決定される。
【0077】
ここで、補正C2から補正C3までの補正間隔P2が規定時間Ps未満であるとする。この場合、補正C2の補正量が第1補正量Q1であるため、補正C3における補正量は上述の条件3により第2補正量Q2の増加に決定される。このように決定された補正量に基づいて吐出制御モジュール92が塗布圧に対する補正C3を実行することで、新たな塗布圧が設定される。
【0078】
図7の例においては、補正C3が実行されると塗布量Aが規定範囲内まで増加している。ただし、補正C3が実行された直後であっても、塗布量Aは基準値SA以下である。その後、時間が経過すると、塗布量Aが次第に減少している。
【0079】
補正C3の後に塗布量Aが閾値Min1以下に減少すると、再びステップS104において塗布量Aが規定範囲内でないと判定され、補正C4が実行される。
図7における補正C4のタイミングにおいては、塗布量Aが閾値Min1以下かつ閾値Min2以上である。そのため、ステップS105において塗布装置100による補正が可能であると判定される。そして、ステップS106において必要な補正量が決定される。
【0080】
ここで、補正C3から補正C4までの補正間隔P3が規定時間Ps未満であるとする。この場合、補正C3の補正量が第2補正量Q2であるため、補正C4における補正量は上述の条件4により第3補正量Q3の増加に決定される。このように決定された補正量に基づいて吐出制御モジュール92が塗布圧に対する補正C4を実行することで、新たな塗布圧が設定される。
【0081】
図7の例においては、補正C4が実行されると塗布量Aが規定範囲内かつ基準値SAより大きい値まで増加している。このように、第3補正量Q3は補正C2における第1補正量Q1や補正C3における第2補正量Q2よりも大きいので、第3補正量Q3での補正が実行された直後の塗布量Aは基準値SAを超える程度に増加しやすい。その後、時間が経過すると、塗布量Aが次第に減少している。
【0082】
補正C4の後に塗布量Aが閾値Min1以下に減少すると、再びステップS104において塗布量Aが規定範囲内でないと判定され、補正C5が実行される。
図7における補正C5のタイミングにおいては、塗布量Aが閾値Min1以下かつ閾値Min2以上である。そのため、ステップS105において塗布装置100による補正が可能であると判定される。そして、ステップS106において必要な補正量が決定される。
【0083】
ここで、補正C4から補正C5までの補正間隔P4が規定時間Ps未満であるとする。この場合、補正C4の補正量が第2補正量Q2以上の第3補正量Q3であるため、補正C5における補正量は上述の条件4により第3補正量Q3の増加に決定される。このように決定された補正量に基づいて吐出制御モジュール92が塗布圧に対する補正C5を実行することで、新たな塗布圧が設定される。
【0084】
図7の例においては、補正C5が実行されると塗布量Aが閾値Max1以上かつ閾値Max2以下の値に増加している。すなわち、補正C5の直後の塗布量Aは、規定範囲を外れている。この場合、補正C5の直後のステップS104において塗布量Aが規定範囲内でないと判定され、ステップS109における対象物への接着剤の塗布を経ることなく補正C6が実行される。
【0085】
図7における補正C6のタイミングにおいては、塗布量Aが閾値Max1以上かつ閾値Max2以下である。そのため、ステップS105において塗布装置100による補正が可能であると判定される。そして、ステップS106において必要な補正量が決定される。
【0086】
ここでは塗布量Aが閾値Max1以上かつ閾値Max2以下であることから、補正C6における補正量は上述の条件2により第1補正量Q1の減少に決定される。このように決定された補正量に基づいて吐出制御モジュール92が塗布圧に対する補正C6を実行することで、新たな塗布圧が設定される。補正C6が実行されると塗布量Aが規定範囲内まで減少する。その後、時間の経過とともに塗布量が減少している。
【0087】
図7の例では、補正C6の後のタイミングEにおいて塗布量Aが閾値Min2未満の値まで減少している。このとき、再びステップS104において塗布量Aが規定範囲内でないと判定される。ただし、塗布量Aが閾値Min2未満であるため、上述の条件5によりステップS105においては塗布装置100による補正が不可能であると判定される。これに伴い、ステップS108にて制御装置90が塗布装置100を停止させる。塗布装置100が停止した場合には、作業者により塗布装置100の外観検査、塗布装置100の手動操作による塗布量の調整、および必要に応じて塗布装置100を構成する各機器の点検が実施される。
【0088】
以上説明したように、特に本実施形態では、接着剤を塗布する前に対象物Wの指定部分とは異なる部分に塗布した接着剤の塗布量を算出し、補正が必要である場合には過去の補正量と補正間隔から必要な補正量を自動で決定している。予め定められた時間に応じて補正量を設定しているのではなく、過去の補正量と補正間隔を監視し塗布量の変化傾向を管理することで補正量を決定しているため、様々な接着剤の状態やノズルの状況に応じて最適な補正圧を選択することができる。
【0089】
本実施形態による補正であれば無駄な補正を実行せずに最小限の補正動作により対応することが可能であるため、タクトダウンを抑制することができる。また、塗布面積と塗布高さによる近似値を塗布量とすることで、正確で素早いフィードバックが可能となる。
【0090】
なお、本実施形態おいては第2補正(前回の補正)における補正量と補正間隔の双方を用いた条件1乃至4に基づき、第1補正(今回の補正)における塗布条件の補正量を決定する場合を例示した。しかしながら、第1補正の補正量は、第2補正における補正量および補正間隔のいずれか一方にのみ基づいて決定されてもよい。
【0091】
また、閾値Min1、閾値Max1および規定時間Psは、多段的に設定されてもよい。この場合において、塗布量Aがいずれの閾値の範囲に属するか、あるいは補正間隔Pがいずれの規定時間の範囲に属するかに基づいて、上述した補正量Q1乃至Q3よりも細かく塗布条件が補正されてもよい。
【0092】
以上説明した実施形態は、発明の範囲を当該実施形態にて開示した構成に限定するものではない。本発明はその他の様々な形態で実施することが可能である。当該実施形態にて開示した構成やその変形は、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0093】
1…ディスク装置、2…ケース、3…スピンドル、4…ディスク、5…ピボット軸、6…キャリッジ、7…ボイスコイルモータ、8…アーム、10…サスペンション、11…スライダ、12…ロードビーム、13…フレキシャ、21…メタルベース、22…配線部、23…タング、31…第1アウトリガー、32…第2アウトリガー、33,34,35,36…アクチュエータ支持部、41…第1マイクロアクチュエータ素子、42…第2マイクロアクチュエータ素子、50…搬送装置、51…可動ステージ、52…ステージ駆動機構、60…ディスペンサ、61…吐出駆動機構、62…シリンジ、63…ノズル、70…位置制御装置、71…保持具、72…シリンジ駆動機構、80…カメラ、90…制御装置、91…駆動制御モジュール、92…吐出制御モジュール、93…撮像制御モジュール、94…算出制御モジュール、100…塗布装置、AD…接着剤、F…フレーム、W…対象物