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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】コリメータ及びコリメータモジュール
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/42 20240101AFI20240408BHJP
【FI】
A61B6/42 530Y
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020045857
(22)【出願日】2020-03-16
(65)【公開番号】P2021145733
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】西島 輝
【審査官】佐野 浩樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-105740(JP,A)
【文献】特表2006-528017(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0023832(US,A1)
【文献】特開2016-067879(JP,A)
【文献】特開2007-155638(JP,A)
【文献】特開2004-184163(JP,A)
【文献】特表2006-526761(JP,A)
【文献】特開2019-063509(JP,A)
【文献】特開2002-022842(JP,A)
【文献】特開2002ー207082(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0265822(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 - 6/14 、
G01T 1/00 - 1/16 、 1/167- 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線CT装置用のコリメータであって、
X線検出器のチャネル方向及び列方向に沿って格子状に配列された複数の散乱線除去部を有するコリメータモジュールと、
前記複数の散乱線除去部を保持する樹脂と
を備え
前記樹脂は、前記チャネル方向及び前記列方向に沿って格子状に配列された複数の溝状のスリットが形成されており、当該複数の溝状のスリット内に前記複数の散乱線除去部が形成されており、
前記樹脂において、前記列方向における中央付近の範囲では、前記列方向における外側の範囲と比べて、前記列方向に配列されるスリットの溝の幅が小さく、かつ、溝の間隔が小さく形成されている、
コリメータ。
【請求項2】
前記樹脂は、中空構造を有する、
請求項1に記載のコリメータ。
【請求項3】
前記樹脂は、前記中空構造の領域に前記樹脂を補強する補強部をさらに備える、
請求項2に記載のコリメータ。
【請求項4】
前記コリメータモジュールは、少なくとも一次元方向に複数配列されている、
請求項1~3のいずれか一つに記載のコリメータ。
【請求項5】
複数の散乱線除去部は、金属粒子を含有するフィラーを前記複数の溝状のスリットそれぞれに流し込んだ後に硬化させることによって形成されている、
請求項1~4のいずれか一つに記載のコリメータ。
【請求項6】
前記複数の溝状のスリットは、3Dプリンタによって形成されている、
請求項5に記載のコリメータ。
【請求項7】
前記複数の溝状のスリットは、X線の入射方向に沿って形成されている、
請求項5又は6に記載のコリメータ。
【請求項8】
前記複数の溝状のスリットは、それぞれの溝の深さが異なる、
請求項5~7のいずれか一つに記載のコリメータ。
【請求項9】
前記複数の溝状のスリットは、それぞれの溝の幅が異なる、
請求項5~8のいずれか一つに記載のコリメータ。
【請求項10】
少なくとも一次元方向に配列されて、X線CT装置用のコリメータを構成するコリメータモジュールであって、
X線検出器のチャネル方向及び列方向に沿って格子状に配列された複数の散乱線除去部と、
前記複数の散乱線除去部を保持する樹脂と
を備え
前記樹脂は、前記チャネル方向及び前記列方向に沿って格子状に配列された複数の溝状のスリットが形成されており、当該複数の溝状のスリット内に前記複数の散乱線除去部が形成されており、
前記樹脂において、前記列方向における中央付近の範囲では、前記列方向における外側の範囲と比べて、前記列方向に配列されるスリットの溝の幅が小さく、かつ、溝の間隔が小さく形成されている、
コリメータモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、コリメータ及びコリメータモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、X線CT(Computed Tomography)装置は、X線を検出するためのX線検出器を備える。ここで、一般的に、X線CT装置用のX線検出器は、複数のX線遮蔽板が格子状に配列され、当該X線遮蔽板によってX線検出素子への散乱X線の入射を防護するコリメータを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平9-257996号公報
【文献】特開平7-333395号公報
【文献】特表2014-209107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、X線CT装置用のコリメータの製造コストを低減させることである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置付けることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係るコリメータは、X線CT装置用のコリメータであって、コリメータモジュールと、樹脂とを備える。コリメータモジュールは、第1の散乱線除去部と、第2の散乱線除去部とを有する。樹脂は、前記第1の散乱線除去部と前記第2の散乱線除去部との間に設けられ、前記第1の散乱線除去部及び第2散乱線除去部を保持する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、本実施形態に係るX線CT装置の構成例を示す図である。
図2図2は、本実施形態に係るX線検出器の構成例を示す図である。
図3図3は、本実施形態に係るコリメータの構成例を示す図である。
図4図4は、本実施形態に係るコリメータモジュールの構成例を示す図である。
図5図5は、本実施形態に係るコリメータモジュールに含まれる樹脂の構成例を示す図である。
図6図6は、本実施形態に係るコリメータモジュールに含まれる樹脂の各種の例を示す図である。
図7図7は、本実施形態に係るコリメータモジュールに含まれる樹脂の各種の例を示す図である。
図8図8は、本実施形態に係るコリメータモジュールに含まれる樹脂の各種の例を示す図である。
図9図9は、本実施形態に係るコリメータモジュールに含まれる樹脂の各種の例を示す図である。
図10図10は、本実施形態に係るコリメータモジュールに含まれる樹脂の各種の例を示す図である。
図11図11は、本実施形態に係るコリメータモジュールに含まれる樹脂の各種の例を示す図である。
図12図12は、本実施形態に係るコリメータモジュールに含まれる樹脂の各種の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
(実施形態)
以下、図面を参照しながら、本願が開示するコリメータ及びコリメータモジュールの実施形態について説明する。ここで、各図面に示される構成は模式的なものであり、図示されている各構成要素の寸法や構成要素間の寸法の比率は実物と異なる場合がある。また、図面相互の間でも、同じ構成要素の寸法や構成要素間の寸法の比率が異なって示されている場合がある。
【0008】
なお、以下に示す実施形態では、本願が開示するコリメータ及びコリメータモジュールの構成をX線検出器及びX線CT装置に適用した場合の例を説明する。
【0009】
図1は、本実施形態に係るX線CT装置の構成例を示す図である。
【0010】
例えば、図1に示すように、本実施形態に係るX線CT装置1は、架台装置10と、寝台装置30と、コンソール装置40とを有する。なお、図1では説明の便宜上、架台装置10を複数示している。
【0011】
なお、本実施形態では、非チルト状態での回転フレーム13の回転軸又は寝台装置30の天板33の長手方向を「Z軸方向」と定義する。また、Z軸方向に直交し、床面に対し水平である軸方向を「X軸方向」と定義する。また、Z軸方向に直交し、床面に対し垂直である軸方向を「Y軸方向」と定義する。
【0012】
架台装置10は、被検体P(患者等)にX線を照射し、被検体Pを透過したX線を検出して、コンソール装置40に出力する装置である。架台装置10は、X線管11と、X線検出器12と、回転フレーム13と、制御装置15と、ウェッジ16と、X線絞り17と、X線高電圧装置14とを有する。
【0013】
X線管11は、X線高電圧装置14からの高電圧の印加により、陰極(フィラメント)から陽極(ターゲット)に向けて熱電子を照射することでX線を発生する真空管である。例えば、X線管11は、回転する陽極に熱電子を照射することでX線を発生させる回転陽極型のX線管である。
【0014】
ウェッジ16は、X線管11から照射されたX線量を調節するためのフィルタである。具体的には、ウェッジ16は、X線管11から被検体Pへ照射されるX線が、予め定められた分布になるように、X線管11から照射されたX線を透過して減衰するフィルタである。例えば、ウェッジ16は、所定のターゲット角度や所定の厚みとなるようにアルミニウムを加工したフィルタである。なお、ウェッジ16は、ウェッジフィルタ(wedge filter)や、ボウタイフィルタ(bow-tie filter)とも呼ばれる。
【0015】
X線絞り17は、ウェッジ16を透過したX線の照射範囲を絞り込むための鉛板等を含み、複数の鉛板等を組み合わせることによってスリットを形成している。
【0016】
X線検出器12は、X線管11から照射され、被検体Pを通過したX線を検出する。具体的には、X線検出器12は、X線管11の焦点を中心として一つの円弧に沿ってチャネル方向に複数の検出素子が配列された複数の検出素子列を有する。例えば、X線検出器12は、チャネル方向に複数の検出素子が配列された検出素子列が列方向(スライス方向、row方向とも呼ばれる)に複数配列された構造を有する。
【0017】
また、X線検出器12は、各検出素子から出力される電気信号を処理するDAS(Data Acquisition System)を有する。DASは、X線検出器12の各X線検出素子から出力される電気信号に対して増幅処理を行う増幅器と、電気信号をデジタル信号に変換するA/D変換器とを有し、検出データを生成する。DASが生成した検出データは、コンソール装置40へと転送される。
【0018】
X線高電圧装置14は、変圧器(トランス)及び整流器等の電気回路を有し、X線管11に印加する高電圧を発生する機能を有する高電圧発生装置と、X線管11が照射するX線出力に応じた出力電圧の制御を行うX線制御装置とを有する。高電圧発生装置は、変圧器方式であってもよいし、インバータ方式であっても構わない。なお、X線高電圧装置14は、後述する回転フレーム13に設けられてもよいし、架台装置10において回転フレーム13を回転可能に支持する支持フレーム(図示は省略)に設けられてもよい。
【0019】
回転フレーム13は、X線管11とX線検出器12とを対向支持し、後述する制御装置15によってX線管11とX線検出器12とを回転させる円環状のフレームである。なお、回転フレーム13は、X線管11とX線検出器12に加えて、X線高電圧装置14を更に備えて支持する。ここで、X線検出器12が有するDASが生成した検出データは、回転フレーム13に設けられた発光ダイオード(Light Emitting Diode:LED)を有する送信機から光通信によって架台装置10の非回転部分(例えば、支持フレーム等)に設けられたフォトダイオードを有する受信機に送信され、コンソール装置40へ転送される。なお、回転フレーム13から架台装置10の非回転部分への検出データの送信方法は、前述の光通信に限らず、非接触型のデータ伝送であれば如何なる方式を採用しても構わない。
【0020】
制御装置15は、CPU(Central Processing Unit)等を有する処理回路と、モータ及びアクチュエータ等の駆動機構とを有する。制御装置15は、コンソール装置40若しくは架台装置10に取り付けられた入力インターフェース43からの入力信号を受けて、架台装置10及び寝台装置30の動作制御を行う機能を有する。例えば、制御装置15は、入力信号を受けて回転フレーム13を回転させる制御や、架台装置10をチルトさせる制御、及び寝台装置30及び天板33を動作させる制御を行う。なお、架台装置10をチルトさせる制御は、架台装置10に取り付けられた入力インターフェース43によって入力される傾斜角度(チルト角度)情報により、制御装置15がX軸方向に平行な軸を中心に回転フレーム13を回転させることによって実現される。なお、制御装置15は、架台装置10に設けられてもよいし、コンソール装置40に設けられても構わない。
【0021】
寝台装置30は、スキャン対象である被検体Pを載置、移動させる装置であり、基台31と、寝台駆動装置32と、天板33と、支持フレーム34とを有する。基台31は、支持フレーム34を鉛直方向に移動可能に支持する筐体である。寝台駆動装置32は、被検体Pが載置された天板33を天板33の長軸方向に移動するモータあるいはアクチュエータである。支持フレーム34の上面に設けられた天板33は、被検体Pが載置される板である。なお、寝台駆動装置32は、天板33に加え、支持フレーム34を天板33の長軸方向に移動してもよい。
【0022】
コンソール装置40は、操作者によるX線CT装置1の操作を受け付けるとともに、架台装置10によって収集された検出データを用いてCT画像データを再構成する装置である。コンソール装置40は、メモリ41と、ディスプレイ42と、入力インターフェース43と、処理回路44とを有する。なお、ここでは、コンソール装置40と架台装置10とが別体である場合の例を説明するが、架台装置10にコンソール装置40又はコンソール装置40の構成要素の一部が含まれていてもよい。
【0023】
メモリ41は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等により実現される。メモリ41は、例えば、投影データやCT画像データを記憶する。
【0024】
ディスプレイ42は、各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイ42は、処理回路44によって生成された医用画像(CT画像)や、操作者からの各種操作を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)等を出力する。例えば、ディスプレイ42は、液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイである。なお、例えば、ディスプレイ42は、架台装置10に設けられていてもよい。また、例えば、ディスプレイ42は、デスクトップ型でもよいし、コンソール装置40本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されていてもよい。
【0025】
入力インターフェース43は、操作者からの各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路44に出力する。例えば、入力インターフェース43は、投影データを収集する際の収集条件や、CT画像データを再構成する際の再構成条件、CT画像から後処理画像を生成する際の画像処理条件等を操作者から受け付ける。例えば、入力インターフェース43は、マウスやキーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック等により実現される。なお、例えば、入力インターフェース43は、架台装置10に設けられていてもよい。また、例えば、入力インターフェース43は、コンソール装置40本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されていてもよい。
【0026】
処理回路44は、X線CT装置1全体の動作を制御する。例えば、処理回路44は、システム制御機能441、前処理機能442、再構成処理機能443、及び画像処理機能444を実行する。
【0027】
システム制御機能441は、入力インターフェース43を介して操作者から受け付けた入力操作に基づいて、処理回路44の各種機能を制御する。例えば、システム制御機能441は、X線CT装置1において実行されるCTスキャンを制御する。また、システム制御機能441は、前処理機能442、再構成処理機能443、及び画像処理機能444を制御することで、コンソール装置40におけるCT画像データの生成や表示を制御する。
【0028】
前処理機能442は、X線検出器12のDASから出力された検出データに対して対数変換処理やオフセット補正処理、チャネル間の感度補正処理、ビームハードニング補正等の前処理を施した投影データを生成する。なお、前処理前のデータ(検出データ)及び前処理後のデータを総称して投影データと称する場合もある。
【0029】
再構成処理機能443は、前処理機能442にて生成された投影データに対して、フィルタ補正逆投影法や逐次近似再構成法等を用いた再構成処理を行ってCT画像データ(再構成画像データ)を生成する。
【0030】
画像処理機能444は、入力インターフェース43を介して操作者から受け付けた入力操作に基づいて、再構成処理機能443によって生成されたCT画像データを公知の方法により、任意断面の断層像データや3次元画像データに変換する。なお、3次元画像データの生成は再構成処理機能443が直接行っても構わない。
【0031】
ここで、例えば、処理回路44は、プロセッサにより実現される。この場合に、処理回路44が有する各処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態でメモリ41に記憶される。そして、処理回路44は、メモリ41から各プログラムを読み出して実行することで、各プログラムに対応する機能を実現する。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路44は、図1の処理回路44内に示された各処理機能を有することとなる。
【0032】
なお、ここでは、単一の処理回路44によって、上述した各処理機能が実現されるものとして説明したが、例えば、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路44を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより各処理機能を実現するものとしても構わない。また、処理回路44が有する各処理機能は、単一又は複数の処理回路に適宜に分散又は統合されて実現されてもよい。また、処理回路44が有する各処理機能は、回路等のハードウェアとソフトウェアとの混合によって実現されても構わない。また、ここでは、単一のメモリ41が各処理機能に対応するプログラムを記憶する場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、複数の記憶回路が分散して配置され、処理回路44が、個別の記憶回路から対応するプログラムを読み出して実行する構成としても構わない。
【0033】
図2は、本実施形態に係るX線検出器12の構成例を示す図である。
【0034】
例えば、図2に示すように、X線検出器12は、全体として略円弧状に形成されており、当該円弧の中心がX線管11の位置と一致するように、前述した回転フレーム13に固定されている。
【0035】
ここで、X線検出器12における円弧の周方向は、チャネル方向に一致している。また、X線検出器12における円弧の軸方向は、列方向に一致している。また、X線検出器12における円弧の径方向は、X線の照射方向に一致している。なお、以下の説明で参照する各図面では、チャネル方向を矢印Cで示し、列方向を矢印Rで示し、X線の照射方向を矢印Iで示している。
【0036】
例えば、X線検出器12は、複数のX線検出器モジュール121と、コリメータ122と、第1の固定フレーム123と、第2の固定フレーム124と、第1の支持フレーム125と、第2の支持フレーム126と、遮光板127とを有する。
【0037】
X線検出器モジュール121は、それぞれ、X線検出アレイ1211と、支持部材1212と、DAS1213とを有する。
【0038】
X線検出アレイ1211は、シンチレータアレイと、フォトダイオードアレイとを有する。シンチレータアレイは、チャネル方向及び列方向に配列された複数のシンチレータを有し、各シンチレータが、入射X線量に応じた光子量の光を出力するシンチレータ結晶を有する。フォトダイオードアレイは、チャネル方向及び列方向に配列された複数のフォトダイオードを検出素子として有する。ここで、フォトダイオードアレイに含まれるフォトダイオードは、それぞれ、シンチレータアレイに含まれるシンチレータと1対1で対応するように配置されており、対応するシンチレータから出力される光量に応じた電気信号をDAS1213に出力する。
【0039】
支持部材1212は、略直方体状に形成されており、X線管11と対向して配置される面上にX線検出アレイ1211が固定され、当該X線検出アレイ1211を支持する。
【0040】
DAS1213は、支持部材1212におけるX線検出アレイ1211とは反対側の面に、X線の照射方向に沿って延在するように取り付けられており、X線検出アレイ1211の各フォトダイオードから出力される電気信号に基づいて、検出データを生成する。
【0041】
コリメータ122は、チャネル方向及び列方向に沿って格子状に配列された複数のX線遮蔽板を有し、当該X線遮蔽板によって各X線検出器モジュール121のX線検出アレイ1211への散乱X線の入射を防護する。具体的には、コリメータ122は、チャネル方向に沿った略円弧状に形成され、各X線検出器モジュール121を覆うように配置されており、各X線遮蔽板が、各X線検出器モジュール121のX線検出アレイ1211に入射するX線から散乱線を除去する。
【0042】
第1の固定フレーム123及び第2の固定フレーム124は、コリメータ122の列方向における両端に固定されており、X線が入射する側とは反対側に、複数のX線検出器モジュール121がチャネル方向に並べて取り付けられる。ここで、第1の固定フレーム123及び第2の固定フレーム124は、各X線検出器モジュール121が単独で着脱可能となるように構成されている。
【0043】
第1の支持フレーム125及び第2の支持フレーム126は、コリメータ122及び固定フレームを支持する。具体的には、第1の支持フレーム125及び第2の支持フレーム126は、列方向に両側から第1の固定フレーム123、第2の固定フレーム124及びコリメータ122挟み込むように支持し、その状態で、架台装置10の支持フレーム(図示は省略)に固定されている。
【0044】
遮光板127は、各X線検出器モジュール121のX線検出アレイ1211に入射する光を抑制する。例えば、遮光板127は、光を抑制することが可能な材料を用いて薄い板状に形成された部材であり、コリメータ122の全体を覆うように、第1の支持フレーム125及び第2の支持フレーム126に取り付けられている。
【0045】
以上、X線CT装置1及びX線検出器12の構成について説明した。このような構成のもと、本実施形態では、上述したように、X線検出器12が、複数のX線遮蔽板が格子状に配列されたコリメータを有する。
【0046】
このように、複数のX線遮蔽板が格子状に配列されたコリメータは、一般的に、製造コストが高いことが知られている。例えば、高精度に溝が形成されたフレームに手作業でX線遮蔽板を挿入して接着剤等で固定する方法や、3Dプリンタを用いてコリメータを形成する方法等があるが、いずれもスループットが悪く、コストが高い。また、一般的に、X線遮蔽板は、材料として用いられるモリブデン等の加工性が悪いため、X線検出器の高詳細化に伴ってX線遮蔽板のピッチが狭くなるほど製造が難しくなり、製造コストが高くなっている。
【0047】
このようなことから、本実施形態では、X線CT装置用のコリメータ122の製造コストを低減させることができるようにしている。
【0048】
具体的には、本実施形態では、コリメータ122が、チャネル方向に配列された複数のコリメータモジュールを備える。そして、各コリメータモジュールは、格子状に配列された複数のX線遮蔽板と、各X線遮蔽板の間に設けられ、各X線遮蔽板を保持する樹脂とを有する。ここで、X線遮蔽板は、第1の散乱線除去部及び第2の散乱線除去部の一例である。
【0049】
図3は、本実施形態に係るコリメータ122の構成例を示す図である。
【0050】
例えば、図3に示すように、コリメータ122は、チャネル方向に沿って円弧状に配列された複数のコリメータモジュール500によって構成される。ここで、各コリメータモジュール500は、それぞれが単独で交換可能となっている。
【0051】
なお、ここでは、コリメータモジュール500がチャネル向に配列される場合の例を説明するが、コリメータモジュール500の配置はこれに限られない。例えば、チャネル方向に並べられたコリメータモジュール500がさらに列方向に複数並べられることによって、コリメータ122が構成されてもよい。
【0052】
図4は、本実施形態に係るコリメータモジュール500の構成例を示す図である。
【0053】
例えば、図4に示すように、コリメータモジュール50は、チャネル方向及び列方向に沿って格子状に配置された複数のX線遮蔽板を有する。具体的には、コリメータモジュール50は、チャネル方向に配列された複数のX線遮蔽板511と、列方向に配列された複数のX線遮蔽板512とを有する。
【0054】
ここで、コリメータモジュール50は、格子状に配置されたX線遮蔽板によって形成される複数のスリット(矩形状の貫通孔)のそれぞれが、一つのX線検出アレイ1211に含まれるシンチレータ及びフォトダイオードと1対1で対応する位置に配置されるように構成されている。
【0055】
なお、コリメータモジュール50におけるX線遮蔽板の配置はこれに限られず、例えば、格子状に配置されたX線遮蔽板によって形成される複数のスリットのそれぞれが、一つのX線検出アレイ1211に含まれるシンチレータ及びフォトダイオードのチャネル方向に沿った一列ごとに配置されるように構成されていてもよい。
【0056】
そして、コリメータモジュール50は、格子状に配列された複数のX線遮蔽板それぞれの間に設けられ、各X線遮蔽板を保持する樹脂520を有する。
【0057】
ここで、本実施形態では、このようなコリメータモジュール50を実現するため、格子状に配列された複数の溝状のスリットが樹脂520に形成されており、各スリットに金属粒子を含有するフィラーを流し込んだ後に硬化させることによって、X線遮蔽板が形成される。
【0058】
図5は、本実施形態に係るコリメータモジュール500に含まれる樹脂520の構成例を示す図である。
【0059】
例えば、図5に示すように、樹脂520には、チャネル方向及び列方向に沿って格子状に配置された複数の溝状のスリットが形成されている。具体的には、樹脂520には、チャネル方向に配列された複数のスリット521と、列方向に配列された複数のスリット522とが形成されている。
【0060】
そして、樹脂520に形成された各スリットに金属粒子を含有するフィラーを流し込んだ後に、当該フィラーを硬化させることによって、チャネル方向に配列された複数のX線遮蔽板511と、列方向に配列された複数のX線遮蔽板512とが形成される。
【0061】
ここで、例えば、各スリットは、3Dプリンタによって形成される。または、各スリットは、ブレードで溝加工することによって形成されてもよい。また、フィラーに含まれる金属粒子としては、例えば、タングステン、モリブデン、スズ等が用いられる。
【0062】
このような構成によれば、樹脂520に形成されたスリット内でX線遮蔽板が形成されることによって、各X線遮蔽板が樹脂520によって保持されることになる。
【0063】
通常、金属製のX線遮蔽板のみのコリメータの場合には、X線遮蔽板が薄すぎて自立が困難だったり、回転や振動による変形の制御が困難だったりといった課題があるが、上述した構造では、これらの課題が解決される。また、内R、外R矯正板等の構造が不要となり、コリメータの成形もフィラーの流し込みだけになるので、スループットや歩留まりの向上が見込まれる。
【0064】
なお、本実施形態において、コリメータモジュール500に含まれる樹脂520は、各種の形状に形成することが可能である。
【0065】
図6~12は、本実施形態に係るコリメータモジュール500に含まれる樹脂520の各種の例を示す図である。
【0066】
例えば、樹脂520は、中空構造を有するように形成されてもよい。
【0067】
例えば、図6に示すように、樹脂520において、格子状のスリットによって形成される複数の立方体状の部分523の内部に、X線入射側とは反対側に開口する穴524が形成される。または、例えば、格子状のスリットによって形成される複数の立方体状の部分523の内部に、複数のスリットが形成されてもよい。このように、樹脂520が、中空構造を有するように形成されることによって、X線のプライマリ成分の減衰を抑えることができる。
【0068】
また、例えば、樹脂520は、中空構造の領域に樹脂520を補強する補強部をさらに備えてもよい。
【0069】
例えば、図7に示すように、樹脂520において、格子状のスリットによって形成される複数の立方体状の部分523の内部に形成された穴524に、板状の補強部525が設けられる。この場合に、例えば、補強部525は、立方体状の部分523の内部に形成される穴524を補強部525を有するような形状に形成することによって設けられてもよい。または、例えば、立方体状の部分523の内部に形成された穴524に補強部525となる板状の部材を取り付けることによって設けられてもよい。
【0070】
また、例えば、樹脂520の複数のスリットが、X線の入射方向に沿って形成されてもよい。
【0071】
例えば、図8に示すように、樹脂520において、チャネル方向に配列される複数のスリット521が、それぞれX線の入射方向に沿うように形成される。この場合、スリット521は、チャネル方向における両端側に近いものほど、傾斜角度が大きくなるように形成される。なお、例えば、樹脂520において、列方向に配列された複数のスリット522も同様に、それぞれX線の入射方向に沿うように形成されてもよい。このように、樹脂520のスリットがX線の入射方向に沿って形成されることによって、X線の入射方向に沿ったX線遮蔽板を形成することができる。
【0072】
また、例えば、樹脂520は、複数のスリットそれぞれの溝の深さが異なるように形成されてもよい。
【0073】
例えば、図9に示すように、樹脂520が、チャネル方向の両端側に近くなるにつれて厚さが薄くなるように形成されることによって、チャネル方向の両端側に近いスリット521ほど、溝の深さが浅くなるように形成される。このように、スリットの溝の深さを変更することによって、X線遮蔽板の高さを適宜に調整できるようになり、散乱線除去能を容易に制御することができる。例えば、検出素子(ピクセル)ごとにスリットの溝の深さを変更することによって、検出素子ごとの散乱線除去能を揃えることも、ずらすことも可能である。
【0074】
また、例えば、樹脂520は、複数のスリットそれぞれの溝の幅が異なるように形成されてもよい。
【0075】
例えば、図10に示すように、樹脂520において、列方向における中央付近の範囲では、列方向における外側の範囲と比べて、チャネル方向に配列されるスリット521及び列方向に配列されるスリット522それぞれの溝の幅が小さく、かつ、溝の間隔が小さく形成される。この結果、列方向における中央付近の範囲では、列方向における外側の範囲と比べて、X線遮蔽板の幅が小さくなり、かつ、X線遮蔽板の間隔が小さくなる。これにより、X線検出器12に含まれる検出素子の配置が、高詳細な部分と通常分解能の部分とを含むような場合でも、検出素子ごとに適切に散乱線除去を行うことができる。
【0076】
また、例えば、樹脂520は、コリメータ122の全体にわたって、チャネル方向に配列されるスリット521のピッチPが一定となるように形成されてもよい。
【0077】
この場合には、コリメータモジュール500がチャネル方向に配列された際に、コリメータ122の全体にわたってスリット521のピッチPが一定となるように、樹脂520において、チャネル方向における端部に位置するスリット521の幅が調整される。
【0078】
例えば、図11に示すように、樹脂520において、チャネル方向における両端にスリット521が設けられる場合には、当該両端に位置するスリット521が、内側に位置するスリット521の幅の半分の大きさからコリメータモジュール500間のギャップの半分の大きさを差し引いた幅を有するように形成される。
【0079】
または、例えば、図12に示すように、樹脂520において、チャネル方向における一端にスリット521が設けられる場合には、当該一端に位置するスリット521が、内側に位置するスリット521の幅の大きさからコリメータモジュール500間のギャップの大きさを差し引いた幅を有するように形成される。
【0080】
上述したように、本実施形態では、コリメータ122が、少なくとも一次元方向に配列された複数のコリメータモジュールを備える。そして、各コリメータモジュールが、複数のX線遮蔽板と、各X線遮蔽板の間に設けられ、各X線遮蔽板を保持する樹脂とを有する。
【0081】
このような構成によれば、樹脂の加工やフィラーの流し込みのような汎用的な技術によって容易にコリメータ122を製造できるようになる。したがって、本実施形態によれば、X線CT装置用のコリメータの製造コストを低減させることができる。
【0082】
また、上述した実施形態によれば、X線遮蔽板が樹脂で保持されるため、X線検出器の高詳細化に伴い、X線遮蔽板を薄くすることができる。また、樹脂のスリットの溝の深さを変更することによって、散乱線除去能を容易に制御することができる。また、3Dプリンタによって樹脂を形成することで、球面配置の二次元コリメータ等の複雑な形状も容易に実現することができる。また、X線遮蔽板の間に樹脂が充填された構造となるため、X線遮蔽板の間にごみ等が混入することによるアーチファクトの発生を抑えることができる。また、X線遮蔽板の変形を矯正するための構造体が不要となる。また、コリメータの製造にかかる工数が小さくなるため、製造コストが安くなる。また、汎用技術の組み合わせによって実現することができるので、安いコストで導入することができる。また、X線遮蔽板が樹脂で保持されるため、回転や振動によるアーチファクトを低減することができる。
【0083】
なお、上述した実施形態では、コリメータモジュール500に樹脂520が残される場合の例を説明したが、X線の利用効率を向上させるため、例えば、コリメータモジュール500が形成された後に、エッチング等によって樹脂が除去されてもよい。
【0084】
なお、上述した説明で用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサが例えばCPUである場合、プロセッサは、記憶回路に保存されたプログラムを読み出して実行することで、機能を実現する。一方、プロセッサが例えばASICである場合、記憶回路にプログラムを保存する代わりに、当該機能がプロセッサの回路内に論理回路として直接組まれる。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて一つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、図1における複数の構成要素を一つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
【0085】
また、上述した実施形態及び変形例において、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散又は統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散又は統合して構成することができる。更に、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部又は任意の一部が、CPU及び当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、或いは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
【0086】
また、上述した実施形態及び変形例において説明した各処理のうち、自動的に行なわれるものとして説明した処理の全部又は一部を手動的に行なうこともでき、或いは、手動的に行なわれるものとして説明した処理の全部又は一部を公知の方法で自動的に行なうこともできる。この他、上記文書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0087】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、X線CT装置用のコリメータの製造コストを低減させることができる。
【0088】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0089】
1 X線CT装置
12 X線検出器
122 コリメータ
50 コリメータモジュール
511、512 X線遮蔽板(第1の散乱線除去部、第2の散乱線除去部)
520 樹脂
524 穴(中空構造)
525 補強部
521、522 スリット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12