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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】接合方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 37/00 20060101AFI20240408BHJP
   C30B 29/36 20060101ALI20240408BHJP
   C30B 23/02 20060101ALI20240408BHJP
   C30B 33/06 20060101ALI20240408BHJP
   C01B 32/984 20170101ALI20240408BHJP
   C23C 14/06 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
C04B37/00 A
C30B29/36 A
C30B23/02
C30B33/06
C01B32/984
C23C14/06 B
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020054979
(22)【出願日】2020-03-25
(65)【公開番号】P2021155237
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000173522
【氏名又は名称】一般財団法人ファインセラミックスセンター
(74)【代理人】
【識別番号】100094190
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 清路
(74)【代理人】
【識別番号】100151644
【弁理士】
【氏名又は名称】平岩 康幸
(74)【代理人】
【識別番号】100151127
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 勝雅
(72)【発明者】
【氏名】末廣 智
(72)【発明者】
【氏名】木村 禎一
【審査官】浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-205590(JP,A)
【文献】特開2001-048667(JP,A)
【文献】特開2012-082095(JP,A)
【文献】特開2018-135224(JP,A)
【文献】特開平05-186211(JP,A)
【文献】特開昭62-197361(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0257997(US,A1)
【文献】国際公開第2014/167962(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 37/00-37/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
いずれも無機材料からなる第1部材と第2部材とを、炭化珪素により接合する方法であって、
前記第1部材及び前記第2部材の間に空隙を設けた状態でこれらを配置する工程と、
不活性ガスの雰囲気下、金属珪素及び炭素を含む原料体にレーザーを照射して、炭化珪素の合成及び該炭化珪素の昇華ガスの生成を行って、該昇華ガスを前記空隙に供給し、前記第1部材の表面及び前記第2部材の表面の少なくとも一方から炭化珪素を結晶成長させ前記空隙を炭化珪素で満たし接合部を形成する工程と、
を備えることを特徴とする、接合方法。
【請求項2】
前記第1部材及び前記第2部材の少なくとも一方が予熱されている請求項1に記載の接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、いずれも無機材料からなる複数の部材を炭化珪素により接合する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、セラミックスは、耐熱性、耐食性等に優れた構造材料として有用であり、最終製品の形状、サイズ等によっては、複数のセラミックス部材を接合して一体化物とすることがある。
【0003】
一般に、複数の部材を接合する単純な方法は、樹脂接着剤を用いる方法であるが、無機部材どうしを接合させてなる一体化物の使用条件等によっては、接着性が低下し接合部を起点として破断することがあった。そこで、接合部を無機材料からなるものとする接合方法が検討されてきた。
特許文献1には、アルミナ焼結体同士を接合するに際し、接合しようとするアルミナ焼結体の間にイットリア(Y)またはイットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)を主成分とする接合材を挟み、これを還元雰囲気中1500~1900℃で加熱することによってアルミナ焼結体同士を接合するアルミナ焼結体の接合方法が開示されている。特許文献2には、窒化アルミニウム焼結体の接合方法であって、一方の窒化アルミニウム焼結体の接合面と他方の窒化アルミニウム焼結体の接合面との間に、焼結助剤を含有する介在物(ペースト等)を配置し、電磁波照射によって該介在物を加熱して該窒化アルミニウム焼結体同士を接合させることを特徴とする窒化アルミニウム焼結体の接合方法が開示されている。特許文献3には、接合されるB系焼結助剤を用いたSiC焼結体の接合面に接合材としてのSiを介在させ、真空雰囲気あるいは非酸化雰囲気において熱処理し、SiC焼結体同士をSi接合し、このSi接合処理中に、SiC焼結体中のBをSi接合部中に拡散、濃縮し、Si接合部中のB濃度を1019atoms/cm(または、500ppm)以上、1021atoms/cmまでの濃度に高めることを特徴とするSiC焼結体の接合体の接合方法が開示されている。特許文献4には、セラミックス材と金属材とを積層して接合する方法であって、セラミックス材と金属材との間に、三次元網目状の金属多孔質材からなる中間層を配置し、セラミックス材と中間層との間、および中間層と金属材との間をロウ付けまたは拡散接合により接合し、中間層にセラミックス材との接合面または金属材との接合面に対して略垂直方向に延びるスリットを設けておくことを特徴とするセラミックス材と金属材との接合方法が開示されている。特許文献5には、同じ無機物質主成分を含む2つのセラミック製部材を相互に接合する方法であって、(a)無機物質主成分を含む第1および第2のセラミック成形体を準備する工程と、(b)第1のセラミック成形体の少なくとも一つの面に、添加物質を設置する工程であって、添加物質は、第1のセラミック成形体に含まれる無機物質主成分との間で、第1の温度以上の温度で液相を形成する第2の無機物質を含む、工程と、(c)第1および第2のセラミック成形体を焼成して、第1および第2のセラミック製部材を形成する工程と、(d)第1および第2のセラミック製部材を、第1のセラミック製部材の一つの面が、第2のセラミック製部材の一つの面と接触するように配置して、組立体を構成する工程と、(e)組立体を、第2の温度に保持する工程であって、第2の温度は、第1の温度以上の温度である工程と、を有し、これにより、第1のセラミック製部材の一つの面において、融液が生成し、第1および第2のセラミック製部材が相互に接合されることを特徴とする方法が開示されている。また、特許文献6には、複数のセラミックス部材を相互に接合する方法であって、(a)同じ無機物質主成分を含む第1および第2のセラミックス部材を準備するステップと、(b)第1および第2のセラミックス部材の被接合面に、無機物質主成分を構成する金属を、金属または合金成分として含む溶射膜を設置するステップと、(c)第1および第2のセラミックス部材の被接合面同士を密着させて、組立体を構成するステップと、(d)組立体を熱処理して、溶射膜中の金属または合金成分を溶融させるとともに、金属成分を、無機物質主成分と同じ物質に変化させるステップと、を有することを特徴とする方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-335583号
【文献】国際公開2007/114208号
【文献】特開2008-69059号
【文献】特開2011-241099号
【文献】特開2012-62223号
【文献】特開2012-82095号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、いずれも無機材料からなる第1部材と第2部材とを、炭化珪素により接合する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下に示される。
1.いずれも無機材料からなる第1部材と第2部材とを、炭化珪素により接合する方法であって、
上記第1部材及び上記第2部材の間に空隙を設けた状態でこれらを配置する工程(以下、「配置工程」ともいう)と、
不活性ガスの雰囲気下、金属珪素及び炭素を含む原料体にレーザーを照射して、炭化珪素の合成及び該炭化珪素の昇華ガスの生成を行って、該昇華ガスを上記空隙に供給し、上記第1部材の表面及び上記第2部材の表面の少なくとも一方から炭化珪素を結晶成長させ上記空隙を炭化珪素で満たし接合部を形成する工程(以下、「レーザー照射工程」ともいう)と、
を備えることを特徴とする、接合方法。
2.上記第1部材及び上記第2部材の少なくとも一方が予熱されている上記項1に記載の接合方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の接合方法によれば、いずれも無機材料からなる2つの部材を炭化珪素により接合することができる。3つ以上の部材の場合も、互いに空隙を設けた状態で本発明の接合方法に供することにより、すべての部材を効率よく接合することができる。特に、複数の部材の少なくとも一方が予熱されている場合には、より効率よく接合することができる。
本発明の接合方法を利用して、半導体装置部材の成膜装置や露光装置、ディーゼルエンジンの排ガスフィルター等に利用可能な接合物(一体化物)を効率よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の接合方法を説明する図であり、(A)は配置工程により配置された接合前の部材を示し、(B)はレーザー照射工程により得られた一体化物(接合物)を示す概略図である。
図2】本発明の接合方法の1例を示す概略図である。
図3】実施例1における接合方法を示す概略図である。
図4】実施例1で得られた一体化物(接合物)の破断面(研磨面)をSEMで撮影して得られた画像である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、いずれも無機材料からなる第1部材1及び第2部材2と、金属珪素及び炭素を含む原料体と、レーザー照射装置とを用いて、第1部材1及び第2部材2を、炭化珪素により接合して、図1(B)に示される一体化物(接合物)10を作製する接合方法である。そして、本発明の接合方法は、図2及び図3に示すように、第1部材1及び第2部材2の間に空隙5を設けた状態でこれらを配置する工程(配置工程)と、金属珪素及び炭素を含む原料体20にレーザーを照射して、炭化珪素の合成及び炭化珪素の昇華ガス25の生成を行って、昇華ガス25を空隙5に供給し、第1部材1の表面(第2部材に面する表面:被接合面)及び第2部材2の表面(第1部材に面する表面:被接合面)の少なくとも一方から炭化珪素を結晶成長させ空隙5を炭化珪素で満たし接合部8を形成し、図1(B)に示される一体化物(接合物)10を得る工程(レーザー照射工程)とを備える。尚、本発明においては、図1の接合形態、即ち、第1部材1及び第2部材2の合計2つの部材の接合に限定されるものではなく、合計3つ以上の部材の接合も可能である。
【0010】
第1部材1及び第2部材2を構成する無機材料は、特に限定されず、金属、合金、セラミックス(繊維強化セラミックスを含む)等のいずれであってもよい。また、第1部材1及び第2部材2の構成材料は、互いに同一であっても、異なってもよい。
第1部材1及び第2部材2の形状は、特に限定されないが、例えば、第2部材2に面する第1部材1の表面(被接合面)、及び、第1部材1に面する第2部材2の表面(被接合面)の形態も、特に限定されない。これらの表面は、平らな表面、凹部を有する表面及び凸部を有する表面のいずれでもよい。
【0011】
本発明に係る配置工程は、第1部材1及び第2部材2の間に空隙5を設けた状態でこれらを配置する工程である。空隙5は、レーザー照射工程により形成された炭化珪素の昇華ガス25が供給されて第1部材1の表面及び第2部材2の表面の少なくとも一方から結晶成長した炭化珪素で満たされて接合部8となる領域である。
第1部材1及び第2部材2の間隔(長さ)は、通常、得られる一体化物10の用途、サイズ等により、適宜、設定される。好ましい間隔(長さ)の上限は、30μmである。尚、この30μmより長い空隙5を設けた状態での接合も可能である。
第1部材1及び第2部材2は、通常、レーザー照射工程により形成された炭化珪素昇華ガス25が円滑に空隙5に供給されるように配置される。
【0012】
本発明に係るレーザー照射工程は、金属珪素及び炭素を含む原料体20(後述)にレーザーを照射して、炭化珪素の合成及び炭化珪素の昇華ガス25の生成を行って、昇華ガス25を空隙5に供給し、第1部材1の表面及び第2部材2の表面の少なくとも一方から炭化珪素を結晶成長させ空隙5を炭化珪素で満たし接合部8を形成する工程である。図2及び図3は、本発明の接合方法、特に、レーザー照射工程を説明する概略図であり、原料体20にレーザーを照射すると、原料体20に含まれた金属珪素と炭素とが反応して炭化珪素が生成されるとほぼ同時に昇華ガスとなる。昇華ガス25は原料体20の表面近傍に滞留するが、第1部材1及び第2部材2の間の空隙5に供給されて、第1部材1及び第2部材2の2つの被接合面に接触すると、少なくとも一方の表面から炭化珪素の結晶成長が進行する。そして、第1部材1及び第2部材2の空隙5が結晶で満たされ第1部材1及び第2部材2が接合される。尚、図2及び図3の方法では、昇華ガス25は、通常、第1部材1及び第2部材2の空隙5以外の周辺を滞留するため、第1部材1及び第2部材2の空隙5を形成する表面以外の表面で炭化珪素の結晶成長が起こることがある。これを抑制するために、また、昇華ガス25がより高い温度の部材表面に接触したときに優れた結晶成長性を有することを考慮してこれを更に向上させるために、図2及び図3の方法では、空隙5に面する第1部材1(の特に被接合面)及び第2部材2(の特に被接合面)の少なくとも一方は予熱されていることが好ましい。
【0013】
図2は、いずれも円柱状の第1部材1及び第2部材2を原料体20の上方で水平方向に配置し、その後、原料体20にレーザーを照射して生成させた昇華ガス25を第1部材1及び第2部材2の間の空隙5に供給する説明図である。また、図3は、いずれも板状の第1部材1及び第2部材2を積み重ねた状態で原料体20の上に載置し、その後、原料体20にレーザーを照射して生成させた昇華ガス25を第1部材1及び第2部材2の間の空隙5に供給する説明図である。
原料体20にレーザーを照射すると、炭化珪素の生成にともなって、輻射熱が発生するため、図3の場合は、レーザー照射と同時に第1部材1及び第2部材2が予熱状態となる。一方、図2の場合は、原料体20と、第1部材1及び第2部材2との距離により予熱効果が得られることがある。図2において、予熱手段を省略しているが、第1部材1の被接合面及び第2部材2の被接合面の少なくとも一方といった特定の部分を予熱するために、赤外線、レーザー、電子ビーム等の照射等を適用することができる。
尚、本発明は、図2及び図3に示される態様に限定されず、昇華ガス25を第1部材1及び第2部材2の空隙5のみに供給する構成も好ましい態様であることはいうまでもない。
【0014】
原料体20に照射するレーザーとしては、炭化珪素の円滑な生成性及び昇華性の観点から、500nm~11μmの波長のレーザーを用いることが好ましい。例えば、Nd:YAGレーザー、Nd:YVOレーザー、Nd:YLFレーザー、チタンサファイアレーザー、炭酸ガスレーザー等を用いることができる。
【0015】
レーザーの照射条件として、レーザー出力は、炭化珪素の円滑な生成性及び昇華性の観点から、好ましくは300W/cm以上、より好ましくは300~1000W/cm、特に好ましくは300~500W/cmである。また、照射時間は、第1部材1及び第2部材2のサイズ等により、適宜、選択される。
また、原料体20にレーザーを照射する場合、通常、密閉系で行われ、その雰囲気は、不活性ガス、例えば、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等であることが好ましい。
【0016】
レーザーは、原料体20の特定の位置のみに照射してよいし、広い面積に渡って照射してもよい。後者の場合、原料体20を固定した状態でレーザーをスキャンさせながら若しくは光拡散レンズを介して光路を変化させながら照射する方法、又は、原料体20を移動させながら、光路を固定したレーザーを照射する方法を適用することができる。
【0017】
ここで、原料体20について、説明する。この原料体20は、金属珪素及び炭素を含み、炭化珪素の生成を阻害しない限りにおいて、更に、酸化物、窒化物、酸窒化物、炭化物、炭窒化物等の他の成分を含有することができる。本発明においては、上記原料体20は、金属珪素粉末及び炭素粉末の混合物からなることが好ましい。
【0018】
上記金属珪素粉末は、その純度が好ましくは99%以上、より好ましくは99.9%以上の粉末である。
上記金属珪素粉末の形状は、特に限定されず、いずれも中実体の、球状、楕円球状、多面体状、線状、板状、不定形状等とすることができる。
上記金属珪素粉末の平均粒子径は、特に限定されないが、好ましくは100nm~1000μm、より好ましくは1000nm~100μmである。
【0019】
上記原料体20に含まれる炭素粉末は、金属不純物が除かれた、即ち、高純度化された炭素粉末が好ましく、天然黒鉛粉末、人造黒鉛粉末、フラーレン、カーボンナノチューブ等を用いることができる。
上記炭素粉末の平均粒子径は、特に限定されないが、好ましくは10nm~1000μm、より好ましくは50nm~10μmである。
【0020】
上記原料体20に含まれる金属珪素粉末及び炭素粉末の含有割合(モル比)は、炭化珪素昇華ガス25の生成効率の観点から、以下の通りである。炭素粉末の含有量は、金属珪素粉末の含有量を1モルとした場合に、好ましくは0.7~1.0モル、より好ましくは0.9~1.0モルである。
【0021】
上記原料体20は、上記のように、他の成分を含有することができる。この場合、他の成分の含有割合の上限は、金属珪素及び炭素の合計量に対して、通常、50体積%である。
【0022】
上記原料体20の調製方法は、特に限定されず、複数種の粉末を均一混合物とするための、従来、公知の方法を適用することができる。本発明においては、乾式混合法が好ましい。
【0023】
上記原料体20としては、レーザー受光時における金属珪素及び炭素の高い反応性が得られることから、各原料粉末が近接する、例えば、塊状物等の形態を有することが好ましく、圧縮成形物の形態を有することが特に好ましい。
【0024】
本発明により、例えば、図1(B)に示される接合部8を有する一体化物10を製造することができるが、接合部8をより長くして、第1部材1と第2部材2とを接合するために、(あ)本発明に係る配置工程を行わず、はじめに、第1部材1のみを配置した状態で原料体20へのレーザー照射を行って、第1部材1の被接合面のみにおいて炭化珪素を結晶成長させ、所望の厚さとなった後に、第2部材2を、その被接合面が第1部材1の炭化珪素膜に面するように且つ空隙を形成するように配置してレーザー照射を行う方法、(い)第1部材1の被接合面及び第2部材2の被接合面の両方に炭化珪素を結晶成長させ、所望の厚さとなった後に、両者の炭化珪素膜が面するように且つ空隙を形成するように配置してレーザー照射を行う方法等を適用することができる。
【実施例
【0025】
以下、実施例を挙げて、本発明の実施の形態を更に具体的に説明する。但し、本発明は、これらの実施例に何ら制約されるものではない。
【0026】
実施例1
高純度化学研究所社製ケイ素粉末(平均粒径:25μm)と、シグマアルドリッチ社製炭素粉末(平均粒径:100nm)とを、モル比で1:1となるように秤量した後、これらを乳鉢で混合した。次いで、得られた混合粉末を、圧粉成形(成形圧:10MPa)して10mm×10mm×1mmの原料成形体20を作製した。
次いで、密閉空間中、窒素ガス雰囲気において、この原料成形体20の上に載置した2枚のSiCウエハー1,2(Cree社製、サイズ:1mm×1mm×0.5mm(厚さ))を重ねて載置した。このとき、わずかな隙間が生じ、その平均値は50μmであった。そして、原料成形体20の表面に、その上方から波長1064nmのNd:YAGレーザーを出力300W/cmで1分間照射した(図3)。これにより、原料成形体20から炭化珪素を合成及び昇華させて、密閉空間内に、約2分間に渡って、昇華ガス25を2枚のウエハーの隙間に滞留させ、空隙5において炭化珪素を結晶成長させて、2枚のウエハーを一体化させた。尚、原料成形体20へのレーザー照射と同時に原料成形体20から輻射熱が発生してSiCウエハー1,2の温度が高くなることを確認した。
その後、得られた一体化物を、その中央付近で裁断して、露出した断面を研磨し、走査型電子顕微鏡を用いて撮影した。図4は、断面画像であり、この図4から、2枚のウエハーの隙間が炭化珪素で接合されたことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、いずれも無機材料、好ましくはセラミック材料からなる複数の部材を相互に接合する技術に利用することができる。例えば、炭化珪素部材どうしであれば、原子力の燃料棒の製造に、また、窒化アルミニウム部材どうしであれば、大型放熱基板の製造に有用である。
【符号の説明】
【0028】
1:第1部材
2:第2部材
5:空隙
8:SiC接合部
10:一体化物(接合物)
20:原料体(原料成形体)
25:昇華ガス
30:レーザー照射手段
図1
図2
図3
図4