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特許7467192ガス状生成物を得るための装置およびガス状生成物を得るための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】ガス状生成物を得るための装置およびガス状生成物を得るための方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 19/00 20060101AFI20240408BHJP
   C07C 9/04 20060101ALI20240408BHJP
   C07C 31/04 20060101ALI20240408BHJP
   C07C 1/12 20060101ALI20240408BHJP
   C07C 29/152 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
B01J19/00 A
B01J19/00 301Z
C07C9/04
C07C31/04
C07C1/12
C07C29/152
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020055079
(22)【出願日】2020-03-25
(65)【公開番号】P2021154194
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109508
【弁理士】
【氏名又は名称】菊間 忠之
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 郷紀
(72)【発明者】
【氏名】今田 典幸
(72)【発明者】
【氏名】横山 公一
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-532707(JP,A)
【文献】特開2014-147925(JP,A)
【文献】特開2013-212479(JP,A)
【文献】特公昭29-001970(JP,B1)
【文献】国際公開第2012/001759(WO,A1)
【文献】特開2007-055970(JP,A)
【文献】特開2002-181468(JP,A)
【文献】特開2018-111696(JP,A)
【文献】国際公開第2019/082538(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0290117(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 10/00-12/02
14/00-19/32
B01J 8/00-8/46
C07B 31/00-61/00
63/00-63/04
C07C 1/00-409/44
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス流入口とガス流出口とを両端に有し且つガス流入口からガス流出口までを連通する反応管内腔を有する反応管と、
伝熱媒体流入口と伝熱媒体流出口とを有し且つ伝熱媒体流入口から伝熱媒体流出口までを連通する伝熱媒体管内腔を有する伝熱媒体管と
を具備する反応器を含み、
反応管は、
径方向断面が扁平形状であり、
反応管壁の内側面から内に向かって突き出した挟持部を有し、
反応管内腔に板状触媒が、前記挟持部によって挟まれて反応管の長手に前記板状触媒の板面が沿うように、置かれており、且つ
ガス流入口にてガス状原料が反応管内腔に流入し、反応管内腔にてガス状原料を板状触媒と接触させて化学反応させ、ガス流出口にて反応管内腔から前記化学反応で得られるガス状生成物を含むガスが流出する、機構を有し、
伝熱媒体管は、
伝熱媒体流入口にて伝熱媒体が伝熱媒体管内腔に流入し、伝熱媒体流出口にて伝熱媒体管内腔から伝熱媒体が流出する、機構を有し、且つ
反応管が伝熱媒体管内腔に挿通されていて、伝熱媒体管内腔内の伝熱媒体が反応管壁を介して反応管内腔内のものとの間で熱交換する、機構を有する、
ガス状生成物を得るための装置。
【請求項2】
反応管の径方向断面の扁平形状が、レクタングルまたはオーバルである、請求項1に記
載のガス状生成物を得るための装置。
【請求項3】
反応管は、反応管壁の内側面から内に向かって突き出した伝熱フィンを有する、請求項1または2に記載のガス状生成物を得るための装置。
【請求項4】
伝熱フィンは、ガス流入口に近い側の部分にガス流出口に近い側の部分よりも多めに設けられている、請求項3に記載のガス状生成物を得るための装置。
【請求項5】
反応管が複数あり、各反応管はそれらの径方向断面の扁平形状における長手方向が相互に平行になるように配置されている、請求項1~4のいずれかひとつに記載のガス状生成物を得るための装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかひとつに記載のガス状生成物を得るための装置において、
ガス状原料をガス流入口にて反応管内腔に供給すること、
伝熱媒体を伝熱媒体流入口にて伝熱媒体管内腔に供給し、伝熱媒体管内腔に流し且つ伝熱媒体流出口にて伝熱媒体管内腔から排出することによって、反応管内腔内のものの温度を制御しながらガス状原料の化学反応を行うこと、および
前記化学反応で得られるガス状生成物を含むガスをガス流出口にて反応管内腔から排出することを含む、
ガス状生成物を得るための方法。
【請求項7】
ガス状原料が水素ガスおよび二酸化炭素ガスを含むものであり、ガス状生成物が一酸化炭素、メタノールまたはメタンを含むものである、請求項6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス状生成物を得るための装置およびガス状生成物を得るための方法に関する。より詳細に、本発明は、ガス状原料を触媒の存在下で化学反応させてガス状生成物を得るための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス状生成物を得るための装置および方法として種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1は、気体状態の反応物の発熱反応によって、製品ガスと、前記製品ガスが溶存する生成水とを生成させる反応部と、前記発熱反応によって発生する熱を除去する冷却水を冷却する冷却塔と、前記反応部と前記冷却塔との間で冷却水を循環させる冷却水循環系統と、前記反応部において生成された生成水を、前記冷却水循環系統内へ混合させる混合手段とを備え、反応部は、発熱反応が行われる反応塔と、前記反応塔において熱交換を行う熱媒体を循環させる熱媒体循環系統と、前記熱媒体循環系統の熱媒体と前記冷却水循環系統の冷却水とを熱交換させる熱交換器とを有する、生成装置を開示している。
【0003】
特許文献2は、プロセスフロー順に、a)複数の反応チューブを含む第1シェルアンドチューブ反応段であって、前記第1反応段の反応チューブは、プロピレンを酸化してアクロレインを生成するための第1触媒を含む、第1シェルアンドチューブ反応段と、b)段間熱交換器と、c)オープン段間領域と、d)複数の反応チューブを含む第2シェルアンドチューブ反応段であって、前記第2反応段の反応チューブは、アクロレインを酸化してアクリル酸を生成するための第2触媒を含む、第2シェルアンドチューブ反応段とを含み、前記第2反応段の反応チューブが22.3mm超の直径を有する、プロピレンからアクリル酸を製造するための単一シェルオープン段間反応器を開示している。
【0004】
特許文献3は、第一流体が通過する内管(伝熱管)群と、第二流体が通過する外管(胴体)とを備え、複数本の伝熱管群が、それらの両端を第一流体導入側及び第一流体排出側にそれぞれ位置する導入側・排出側保持板に保持させて配設されてなる多管式熱交換器において、前記各伝熱管の流路の壁面に、長手方向の所定間隔(所定ピッチ)で板状又は瘤状の突起部が形成されていることを特徴とする多管式熱交換器を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】WO2019/082538A1
【文献】特開2018-111696号公報
【文献】特開2002-181468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、ガス状原料を触媒の存在下で化学反応させてガス状生成物を得るための新たな装置および方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために以下の形態を包含する本発明を完成するに至った。
【0008】
〔1〕 ガス流入口とガス流出口とを両端に有し且つガス流入口からガス流出口までを連通する反応管内腔を有する反応管と、
伝熱媒体流入口と伝熱媒体流出口とを有し且つ伝熱媒体流入口から伝熱媒体流出口までを連通する伝熱媒体管内腔を有する伝熱媒体管と
を具備する反応器を含み、
反応管は、
径方向断面が扁平形状であり、
反応管内腔に触媒が置かれており、且つ
ガス流入口にてガス状原料が反応管内腔に流入し、反応管内腔にてガス状原料を触媒と接触させて化学反応させ、ガス流出口にて反応管内腔から前記化学反応で得られるガス状生成物を含むガスが流出する、機構を有し、
伝熱媒体管は、
伝熱媒体流入口にて伝熱媒体が伝熱媒体管内腔に流入し、伝熱媒体流出口にて伝熱媒体管内腔から伝熱媒体が流出する、機構を有し、且つ
反応管が伝熱媒体管内腔に挿通されていて、伝熱媒体管内腔内の伝熱媒体が反応管壁を介して反応管内腔内のものとの間で熱交換する、機構を有する、
ガス状生成物を得るための装置。
【0009】
〔2〕 反応管の径方向断面の扁平形状が、レクタングルまたはオーバルである、〔1〕に記載のガス状生成物を得るための装置。
【0010】
〔3〕 反応管は、反応管壁の内側面から内に向かって突き出した伝熱フィンを有する、〔1〕または〔2〕に記載のガス状生成物を得るための装置。
【0011】
〔4〕 伝熱フィンは、ガス流入口に近い側の部分にガス流出口に近い側の部分よりも多めに設けられている、〔3〕に記載のガス状生成物を得るための装置。
【0012】
〔5〕 反応管が複数あり、各反応管はそれらの径方向断面の扁平形状における長手方向が相互に平行になるように配置されている、〔1〕~〔4〕のいずれかひとつに記載のガス状生成物を得るための装置。
【0013】
〔6〕 〔1〕~〔5〕のいずれかひとつに記載のガス状生成物を得るための装置において、
ガス状原料をガス流入口にて反応管内腔に供給すること、
伝熱媒体を伝熱媒体流入口にて伝熱媒体管内腔に供給し、伝熱媒体管内腔に流し且つ伝熱媒体流出口にて伝熱媒体管内腔から排出することによって、反応管内腔内のものの温度を制御しながらガス状原料の化学反応を行うこと、および
前記化学反応で得られるガス状生成物を含むガスをガス流出口にて反応管内腔から排出することを含む、
ガス状生成物を得るための方法。
【0014】
〔7〕 ガス状原料が水素ガスおよび二酸化炭素ガスを含むものであり、ガス状生成物が一酸化炭素、メタノールまたはメタンを含むものである、〔6〕に記載の方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明のガス状生成物を得るための装置および方法は、反応管内の温度分布を所定範囲内に均一に制御でき、ホットスポットに係る不具合を防ぐことができる。本発明のガス状生成物を得るための装置および方法は、COを利用してメタンガスおよび水を生成する化学反応などにおいて好ましく用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明のガス状生成物を得るための装置の一例を示す図である。
図2】反応器の一例を示す図である。
図3図2に示した反応器のガス流入口側から見たときの図である。
図4図3に示した反応器のA-A断面を示す図である。
図5図3に示した反応器のB-B断面を示す図である。
図6】反応器の別の一例におけるガス流入口側から見たときの図である。
図7】反応器の別の一例におけるガス流入口側から見たときの図である。
図8】反応器の別の一例におけるガス流入口側から見たときの図である。
図9】反応管の一例を示す図である。
図10図9に示した反応管のC-C断面を示す図である。
図11図9に示した反応管のD-D断面を示す図である。
図12】反応管の別の一例におけるC-C断面を示す図である。
図13】反応管の別の一例におけるC-C断面を示す図である。
図14】反応管の別の一例におけるC-C断面を示す図である。
図15】反応管の別の一例におけるC-C断面を示す図である。
図16】反応管の別の一例におけるC-C断面を示す図である。
図17】反応管の別の一例におけるC-C断面を示す図である。
図18】反応器の別の一例における断面を示す図である。
図19】反応器の別の一例を示す図である。
図20】反応器の別の一例における断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図面を参照しながら本発明を説明する。ただし、本発明は図面に示した態様のものに限定されない。
【0018】
本発明のガス状生成物を得るための装置1は、反応器10を有する。反応器10は、反応管12と伝熱媒体管13とを有する。
【0019】
伝熱媒体管13は、伝熱媒体流入口16と伝熱媒体流出口17とを有し且つ伝熱媒体流入口16から伝熱媒体流出口17までを連通する伝熱媒体管内腔24を有する。伝熱媒体管の径方向断面は、例えば、円形、卵形、楕円形、長円形、角丸四角形、四角形などであることができる。
【0020】
反応管12は、ガス流入口4とガス流出口5とを両端に有し且つガス流入口4からガス流出口5までを連通する反応管内腔23を有する。反応管の径方向断面は、扁平形状である。該扁平形状は、レクタングル(長方形、角丸長方形)またはオーバル(卵形、長円形、楕円形)であることが好ましい。扁平形状のアスペクト比(長手方向の長さ/短手方向の長さ)は、下限が、好ましくは1.1、より好ましくは1.5、さらに好ましくは2であり、上限が、好ましくは20、より好ましくは10、さらに好ましくは4である。本発明の装置においては、反応管12が複数あることが好ましく、各反応管はそれらの径方向断面の扁平形状における長手方向が相互に平行になるように配置されていることが好ましい。反応管の太さは、同一であってもよいし、異なってもよい。反応管の配置の例としては、図3のごとく径方向断面が角丸四角形である伝熱媒体管内腔24に反応管を縦および横に複数列並べる態様、図6のごとく径方向断面が角丸四角形である伝熱媒体管内腔24に反応管を縦に一列並べる態様、図7のごとく径方向断面が円形である伝熱媒体管内腔24に反応管を均等に並べる態様、図8のごとく径方向断面が円形である伝熱媒体管内腔24に反応管を縦に一列並べる態様、などを挙げることができる。
【0021】
ガス流入口4は、伝熱媒体流入口16または伝熱媒体流出口17と区別されており、ガス流入口4にてガス状原料8が反応管内腔23に流入する。ガス流入口4と伝熱媒体流入口16または伝熱媒体流出口17との区別は、例えば、反応管のガス流入口側の端部を保持する板25によって行うことができる。
【0022】
反応器10の上流には、ガス状原料を調製するための装置、例えば、ガス状原料を構成する各成分を所定の割合で混ぜ合わせるための混合機構や、ガス状原料を構成する各成分を貯蔵するためのタンクや、コンプレッサ11、熱交換器22などを設置することができる。原料が、液化二酸化炭素のように液体である場合には、安全に気化させるなどのために、蒸発器14などを設けることができる。ガス状原料を構成する成分は反応器で行う化学反応に応じて適宜選択でき、例えば、二酸化炭素のメタン化反応に用いられるガス状原料は、水素ガスと二酸化炭素ガスとを少なくとも含むものである。反応管内腔23へのガス状原料8の流入量は、反応器10で行う化学反応に応じて適宜設定できる。
【0023】
伝熱媒体流入口16にて伝熱媒体19が伝熱媒体管内腔24に流入する。伝熱媒体19は、所望の化学反応を行うための温度範囲において変質せず、流動性を維持できるものであれば、特に限定されない。伝熱媒体の具体例としては、グリセリン、ポリグリコールなどの多価アルコール類; アニソール、ジフェニルエーテル、フェノールなどのフェノ-ル類およびフェノール性エーテル; ターフェニルなどのポリフェニル類、o-ジクロルベンゼン、ポリクロルポリフェニルなどの塩素化ベンゼンおよび塩素化ポリフェニル; テトラアリルケイ酸塩などのケイ酸エステル類; ナフタレン誘導体、鉱油などの分留タールおよび石油類; 硝酸ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、硝酸カリウムなどの硝酸塩および亜硝酸塩(Heat Transfer Salt); シリコーン類; フッ素化合物; グリコール類; Na金属、K金属、Pb金属、Pb-Bi共融混合物、Na-K合金などの融解金属および合金; などを挙げることができる。
【0024】
伝熱媒体流入口16と伝熱媒体流出口17とは、その配置において、特に制限されないが、伝熱媒体が反応管の径方向断面の扁平形状における長手方向の面(図4に示すような反応管の広い方の投影面)に対して平行な方向で流れやすくするように、図3または図6~8のごとく、配置することが好ましい。また、伝熱媒体が反応管の径方向断面の扁平形状における短手方向の面(図5に示すような反応管の狭い方の投影面)に対して直交する方向で流れやすくするように、図20に示すような仕切板27を設けて、流路を蛇行させることができる。また、伝熱媒体管壁の内側面に沿って、らせん状に伝熱媒体が流れるように誘導するために、らせん状の仕切板を設けてもよい。なお、仕切板は、反応管の中間部を保持するように反応管が貫通可能な孔を有することができる。
【0025】
反応管内腔23に触媒が置かれており、反応管内腔においてガス状原料を触媒と接触させて化学反応させる。
触媒として、粉末、顆粒、ペレット、平板、波板、コルゲート、ハニカムなどの形状のものを適宜用いることができる。触媒は、反応管内腔23に装填もしくは充填してもよいし、反応管壁の内側面に付着させてもよい。
【0026】
反応管は、板状触媒を装填したときに、板状触媒の位置を安定させるために、反応管壁の内側面から内に向かって突き出した挟持部を有してもよい。挟持部は、その形状や数は特に限定されず、例えば、図12,13に示すように突起が互い違いに向き合うようにしたもの、図14,15に示すように突起が相互に向かい合うようにしたもの、図16,17に示すようなT字状の突起が互い違いに向き合うようにしたものなどを挙げることができる。挟持部を熱伝導性の高い材料で構成し、板状触媒に接触するように設置することによって後述する伝熱フィン2としての役割を担わせることもできる。
【0027】
触媒は、反応器で行う化学反応に応じて、適宜、選択することができる。例えば、二酸化炭素のメタン化反応においては、Ni系触媒、白金族金属系触媒、その他の貴金属系触媒等などを用いることができる。メタネーション触媒の具体例としては、ニッケルアルミネート(NiAl)、Ru/NiAl、Ru/Al、Ru/TiO、Ni/TiO、Ru-Ni/TiOなどを挙げることができる。
【0028】
ガス流出口5は伝熱媒体流入口16または伝熱媒体流出口17と区別されており、ガス流出口5にてガス状生成物を含むガス9が反応管内腔23から流出する。ガス流出口5と伝熱媒体流入口16または伝熱媒体流出口17との区別は、例えば、反応管のガス流出口側の端部を保持する板26によって行うことができる。伝熱媒体流出口17にて伝熱媒体20が伝熱媒体管内腔24から流出する。流出した伝熱媒体20はリサイクルすることができる。
【0029】
ガス流出口5にて流出するガス状生成物を含むガス9は、ガス状生成物以外に、未反応のガス状原料、ガス状副生物などを含むことがある。二酸化炭素のメタン化反応で得られる、ガス状生成物はメタンおよび水蒸気である。反応器10の下流には、ガス9から有用なガス状生成物(メタン化反応においてはメタン)を分離精製する装置、例えば、冷却器、凝縮器、気液セパレータ、膜分離装置、吸着分離装置、吸収分離装置、蒸留分離装置、深冷分離装置などを設置してもよい。分離精製において得られる未反応のガス状原料は、リサイクルすることができる。水蒸気は冷却水などとしてリサイクルすることができる。
【0030】
反応管12は伝熱媒体管内腔24に挿通されていて、伝熱媒体管内腔24内の伝熱媒体19が反応管壁を介して反応管内腔23内のものとの間で熱交換する機構を有する。反応管12は、反応管壁の内側面から内に向かって突き出した伝熱フィン2を有することが好ましい。また、反応管は、反応管壁の外側面から外に向かって突き出した伝熱フィンをさらに有することができる。
【0031】
一般に、管型反応器においては、反応管の流れ方向の温度分布が不均一になりやい。発熱量の多い化学反応においてはホットスポットが発生することもある。ホットスポットの発生を抑制し、反応管の流れ方向の温度分布を均一化することが好ましい。
図2図19のように、伝熱媒体流入口16をホットスポットが発生するおそれのある部分に近い側に設置することができる。図18のように仕切板27によって伝熱媒体管内腔を分割し、分割されたそれぞれに伝熱媒体流入口および伝熱媒体流出口を設けることができる。分割された伝熱媒体管内腔に流す伝熱媒体は、ホットスポットが発生するおそれのある部分に近い側において、温度を他の部分よりも相対的に低くしたり、流量を他の部分よりも相対的に多くしたりすることができる。また、伝熱フィンをホットスポットが発生するおそれのある部分の近辺に多めに設け、その部分における熱移動量を増やすことによって、反応管の流れ方向の温度分布を均一化することができる。例えば、伝熱フィンは、ガス流入口4に近い側の部分にガス流出口5に近い側の部分よりも多めに設けてもよい。
【0032】
伝熱フィンは、触媒の置かれた範囲のうちガス流入口4に近い側の部分だけに設けられていてもよいし、触媒の置かれた範囲のうちガス流出口5に近い側の部分だけに設けられていてもよいし、触媒の置かれた範囲の全部に設けられていてもよい。例えば、触媒の置かれた範囲のうちガス流入口4に近い側の部分だけに伝熱フィンを設けた反応管において、図10は粒状触媒を充填した反応管12のガス流入口4に近い側の断面(C-C断面)を示す図であり、図11は粒状触媒を充填した反応管12のガス流出口5に近い側の断面(D-D断面)を示す図である。
【0033】
本発明のガス状生成物を得るための装置は、それの製造方法によって特に限定されない。たとえば、反応管および伝熱媒体管ならびに付属物をそれぞれ用意し、それらを溶接、螺合などによって組み立てることで、製造することができる。
【0034】
複雑な形状を有する反応管、伝熱媒体管、付属物または反応器は、それらの3Dデータに基づいて、その断面形状を積層していくことでひと塊の金属製立体物として形成することを含む方法で、製造することができる。
【0035】
3Dデータは、目的部品の3D形状データであってもよい。3DCADにて3D形状データを設計することができる。3Dデータは、3D形状データを変換して得られる、例えば、STL(Stereolithography)データであってもよい。STLデータは、3次元の立体形状を小さな三角形(ポリゴン)の集合体で表現するものである。
【0036】
断面形状の積層による金属製立体物の形成(造形)は、パウダーベッドフュージョン(PBF)法、メタルデポジッション法、材料押出堆積(FDM)法、液体金属インクジェット法、バインダージェット法、PBFによる積層造形中に切削を行うハイブリッド法などで行うことができる。これらのうち、パウダーベッドフュージョン(PBF)法、またはメタルデポジッション法が好ましい。
【0037】
パウダーベッドフュージョン法は、金属粉末を敷き詰め、熱源となるレーザや電子ビームで造形する部分を溶融・凝固させる方法である。金属粉末を敷き詰め、溶融・凝固を繰り返すことで造形する。造形終了後には、固化していない粉末を取り除いて造形物を取り出す。
【0038】
パウダーベッドフュージョン法には、レーザビーム熱源方式、電子ビーム熱源方式などがある。
【0039】
パウダーベッド・レーザビーム熱源方式は、敷き詰められた金属粉材料にレーザビームを照射して、溶融・凝固または焼結させて積層造形する。レーザビーム熱源方式は、通常、窒素などの不活性雰囲気中で溶融凝固がなされる。レーザビーム熱源方式はレーザを照射する際の位置決めをミラーの角度を変えて行う。
【0040】
パウダーベッド・電子ビーム熱源方式は、敷き詰められた金属粉材料に電子ビームを高真空中で照射し衝突させることで、運動エネルギーを熱に変換し粉末を溶融させる。電子ビーム熱源方式は、通常、真空中で溶融凝固がなされる。電子ビーム熱源方式は、磁界によるレンズを用いて電子ビームの向きを変える。その結果、電子ビーム熱源方式は、高速な位置決めが可能である。
【0041】
メタルデポジッション法は、溶融した金属材料を所定の場所に積層・凝固させて造形する方法である。メタルデポジッション方法は、造形終了後のパウダー除去の作業を要しない。
【0042】
メタルデポジッション法には、金属粉末を材料とするレーザビーム熱源方式、合金ワイヤーを材料とするアーク放電方式などがある。
【0043】
メタルデポジッション・レーザビーム熱源方式は、ノズルから金属パウダーを噴射すると同時にレーザ光を照射することで金属パウダーを溶融池に供給、凝固させて造形を行う。溶融ノズルまたはステージを移動させることによって立体形状を描く。金属粉の供給経路を切り替えることで、異種金属の造形ができる。レーザ出力が大きいので、高速造形に適する。
【0044】
メタルデポジッション・アーク放電方式は、金属ワイヤー先端のアーク放電により金属ワイヤーを溶融し、これを積層することによって造形する。装置価格や材料費が比較的安く、高速造形ができる。
【0045】
造形の後、応力緩和、強度向上などのために、熱処理することができる。熱処理における、温度、時間、雰囲気などの条件は、使用する金属材料などに応じて適宜設定できる。
【0046】
本発明のガス状生成物を得るための方法は、本発明のガス状生成物を得るための装置において、ガス状原料をガス流入口にて反応管内腔に供給すること、伝熱媒体を伝熱媒体流入口にて伝熱媒体管内腔に供給し、伝熱媒体管内腔に流し且つ伝熱媒体流出口にて伝熱媒体管内腔から排出することによって、反応管内腔内のものの温度を制御しながらガス状原料の化学反応を行うこと、および前記化学反応で得られるガス状生成物を含むガスを反応管内腔からガス流出口にて排出することを含む。
【0047】
CO(一酸化炭素)、メタノールまたはメタンの製造方法においては、ガス状原料として、CO(二酸化炭素)とH(水素)を含むガスを使用し、COの還元反応を行う。
流入させるCOとHを含むガスの量は、反応速度、反応管内腔の容量などに応じて、適宜設定できる。
COとHとの比率によって、COの還元反応は次のように進行する。
CO + H → CO + H
CO + 3H → CHOH + H
CO + 4H → CH + 2H
【0048】
本発明のガス状生成物を得るための装置および方法は、CO(二酸化炭素)とH(水素)を含むガスからCO(一酸化炭素)、メタノールまたはメタンを製造する方法以外のC1化学合成法などにも好ましく用いることができる。C1化学合成法として、例えば、メタンと水(水蒸気)との反応で一酸化炭素と水素とを製造する方法、メタンと二酸化炭素との反応で一酸化炭素と水素とを製造する方法、一酸化炭素と水との反応で二酸化炭素と水素とを製造する方法、メタンと水との反応で二酸化炭素と水素とを製造する方法、一酸化炭素と水素との反応でメタンと二酸化炭素を製造する方法、一酸化炭素と水素との反応でメタノールを製造する方法、一酸化炭素と水素との反応でアセトンと水を製造する方法、メタンと酸素との反応で一酸化炭素と水素、エチレンと水、またはメタノールを製造する方法などを挙げることができる。
【0049】
本発明においては、COの還元反応により得られる生成物(CO(一酸化炭素)、メタノールまたはメタン)ならびに未反応物(主にCO)を、分離精製することができる。分離精製法としては、膜分離法、吸着分離法、吸収分離法、蒸留分離法、深冷分離法等を挙げることができる。メタンの分離精製においては、膜分離法が、分離選択性、分離速度、安価でコンパクトな設備という観点から好ましい。
メタンの分離精製において得られる未反応物(主にCO)と低濃度のメタンは、上記メタンの製造方法におけるガス状原料として使用することができる。
【0050】
また、分離精製によって得られるメタンを燃料としてガスタービンに供給することができる。このガスタービンにより発電することができる。
ガスタービンからの燃焼排ガスは、通常、二酸化炭素を含むので、これを上記メタンの製造方法におけるガス状原料として使用することができる。
【0051】
本発明は、各種の化学反応において使用することができる。本発明は、水の電気分解などにて生成する水素の活用、人や動物の呼吸によって若しくは燃料などの燃焼によって生成する二酸化炭素の活用、水の製造、または燃料などとしてのメタンの製造において、有用である。本発明は、宇宙ステーション、宇宙船、ロケットなどにおいても、利用できる。
【符号の説明】
【0052】
1:ガス状生成物を得るための装置
2:伝熱フィン
3:粒状触媒
4:ガス流入口
5:ガス流出口
6:板状触媒(平板)
7:板状触媒(波板)
8:ガス状原料
G1:原料ガス
LG2:液化原料ガス
9:ガス状生成物を含むガス
10:反応器
11:コンプレッサ
12:反応管
13:伝熱媒体管
14:蒸発器
15:冷却器
16:伝熱媒体流入口
17:伝熱媒体流出口
18:気液セパレータ
19:伝熱媒体(流入)
20:伝熱媒体(流出)
21:ドレイン
22:熱交換器
23:反応管内腔
24:伝熱媒体管内腔
25:流入側保持板
26:流出側保持板
27:仕切板
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