(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】ブーム式作業車
(51)【国際特許分類】
B66F 9/075 20060101AFI20240408BHJP
B66C 23/76 20060101ALI20240408BHJP
B66F 9/06 20060101ALI20240408BHJP
B66F 11/04 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
B66F9/075 C
B66C23/76 A
B66F9/06 B
B66F11/04
(21)【出願番号】P 2020056763
(22)【出願日】2020-03-26
【審査請求日】2023-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000116644
【氏名又は名称】株式会社アイチコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100092897
【氏名又は名称】大西 正悟
(74)【代理人】
【識別番号】100157417
【氏名又は名称】並木 敏章
(74)【代理人】
【識別番号】100218095
【氏名又は名称】山崎 一夫
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 裕也
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】実開昭61-200748(JP,U)
【文献】特開平10-060938(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 9/00-11/04
B66C 19/00-23/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行可能な走行体と、
前記走行体に旋回可能に設けられた旋回台と、
先端側に作業装置が設けられ、後端側にカウンタウエイトが設けられたブームと、
前記旋回台に対して前記ブームを起伏可能に支持するリンク機構と、
前記リンク機構および前記ブームを起伏させるブーム起伏シリンダと、を備え、
前記リンク機構は、
一方端が前記旋回台に設けられた第1支持軸によって軸支され、他方端が前記ブームの基端部に設けられた第2支持軸によって軸支された従動リンクと、
一方端が前記旋回台に前記第1支持軸よりも前記ブームの先端側に設けられた第3支持軸によって軸支され、他方端が前記ブームに前記第2支持軸よりも前記ブームの先端側に設けられた第4支持軸によって軸支された駆動リンクと、により構成され、
前記ブーム起伏シリンダが前記駆動リンクと前記ブームとに軸支され、
前記ブーム起伏シリンダが伸長することによって前記ブームが倒伏状態から起立するときに、前記リンク機構の起立により前記ブームの起伏中心が、前記倒伏状態における位置よりも上昇しつつ前記旋回台の旋回中心に近づくように移動することを特徴とするブーム式作業車。
【請求項2】
前記旋回台は、前記ブームの倒伏状態から起立状態への起伏作動に伴う前記カウンタウエイトが移動する範囲内において、前記カウンタウエイトの側方及び後方部分を外方に対して保護する保護部材を有することを特徴とする請求項
1に記載のブーム式作業車。
【請求項3】
前記作業装置は、作業者が搭乗可能な作業台であることを特徴とする請求項1
または2に記載のブーム式作業車。
【請求項4】
前記作業装置は、荷物を吊架した状態で昇降可能な吊上装置であることを特徴とする請求項1
または2に記載のブーム式作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に起伏可能に設けたブームに、作業者が搭乗可能な作業台や荷物を吊架可能な吊上装置などの作業装置を取り付けたブーム式作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
高所作業車や移動式クレーンなどのブーム式作業車は、旋回作動する旋回台に起伏可能にブームを設け、ブームに取り付けた作業装置(フック及びウインチで構成された吊上装置や作業台等)により、作業者や荷物(以下、「作業者等」という。)を昇降させる。このようなブーム式作業車は、一般に、ブームを起立させて作業者等を上昇させたときに、先端部にかかる荷重とのバランスを取るため、旋回台にカウンタウエイトを取り付けている。例えば、特許文献1に記載されている関節ブーム式の高所作業車は、作業台が設けられた3セクションZ形関節ブームを備え、3つのセクションのうち最も車体に近いセクションのアームにカウンタウエイトを取り付けている。これにより、関節ブームが作動して作業台が上昇したときは、上述したアームの動きとともにカウンタウエイトが転倒支点から離れる方向にシフトするため、作業台との重量バランスを取ることができる。
【0003】
また、特許文献2に記載されている高所作業車は、車輪を有するシャーシと、シャーシに旋回可能に設けられたタレット(旋回体)と、タレットに起伏可能に設けられたブームと、ブームに設けられた作業台とを有している。また、ブームの起伏中心の後方にはリンク機構が取り付けられており、このリンク機構は、タレット内に設けられたカウンタウエイトに結合している。これにより、ブームが起立すると、その動きによってタレット内のカウンタウエイトがタレットの旋回軸へ向かって斜め下方へ移動していく。これにより上昇した作業台との重量バランスを取るとともに、作業台が最も高い位置にあるときにカウンタウエイトをより低い位置へ移動させることで、高所作業車全体の重心を下げ、高所作業車の安定性を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第5669517号明細書
【文献】特開2001-146396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、ブーム式作業車は、ブームを起立させて作業者等を上昇させたときの安定度を確保するために、安定モーメントを発生させるためのカウンタウエイトを旋回台に設けている。しかしながら、ブーム式作業車の停車位置の地形(具体的には傾斜)や、旋回台の向き及びブームの起立位置によっては、旋回台に設けたカウンタウエイトによって転倒モーメントが発生する場合がある。そこで、カウンタウエイトによって発生した転倒モーメントに対抗するため、車体側にもカウンタウエイトを設けることが考えられるが、この場合、ブーム式作業車全体の重量が増してしまうため、車体への荷重負担や走行性能の低下などを勘案すると好ましくない。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、ブームの起立時においてカウンタウエイトによる転倒モーメントが発生しにくいブーム式作業車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係るブーム式作業車は、走行可能な走行体と、前記走行体に旋回可能に設けられた旋回台と、先端側に作業装置(例えば、実施形態における作業台40)が設けられ、後端側にカウンタウエイトが設けられたブームと、前記旋回台に対して前記ブームを起伏可能に支持するリンク機構と、前記リンク機構および前記ブームを起伏させるブーム起伏シリンダと、を備え、前記リンク機構は、一方端が前記旋回台に設けられた第1支持軸(例えば、実施形態における従動支持軸FLP)によって軸支され、他方端が前記ブームの基端部に設けられた第2支持軸(例えば、実施形態における起伏中心軸UDC)によって軸支された従動リンクと、一方端が前記旋回台に前記第1支持軸よりも前記ブームの先端側に設けられた第3支持軸(例えば、実施形態における駆動支持軸DLP)によって軸支され、他方端が前記ブームに前記第2支持軸よりも前記ブームの先端側に設けられた第4支持軸(例えば、実施形態における駆動リンク枢結軸DPC)によって軸支された駆動リンクと、により構成され、前記ブーム起伏シリンダが前記駆動リンクと前記ブームとに軸支され、前記ブーム起伏シリンダが伸長することによって前記ブームが倒伏状態から起立するときに、前記リンク機構の起立により前記ブームの起伏中心が、前記倒伏状態における位置よりも上昇しつつ前記旋回台の旋回中心に近づくように移動する。
【0009】
また、上記構成のブーム式作業車において、前記旋回台は、前記ブームの倒伏状態から起立状態への起伏作動に伴う前記カウンタウエイトが移動する範囲内において、前記カウンタウエイトの側方及び後方部分を外方に対して保護する保護部材(例えば、実施形態におけるバンパー25)を有するのが好ましい。
【0010】
なお、上記のいずれかの構成のブーム式作業車において、前記作業装置は、作業者が搭乗可能な作業台であってもよいし、荷物を吊架した状態で昇降可能な吊上装置であってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るブーム式作業車によれば、カウンタウエイトをブームに設けるとともに、カウンタウエイトの重心をブームの起伏中心よりも後端側にしているので、ブームが起立するに連れてカウンタウエイトの重心がブームの起伏中心側へ移動していく。これにより、カウンタウエイトが旋回台に固定されている場合に比べ、カウンタウエイトによる転倒モーメントが発生しにくい。また、ブームの起立に伴ってカウンタウエイトが移動する間に、カウンタウエイトの位置が地上に近づかないように移動させることができるので、倒伏状態におけるブームの地上高を低くすることができる。また、作業装置を所定の高さまで上昇させるために必要となるブームの長さを、ブームの起伏中心が上昇する分だけ短くすることができる。
【0013】
また、上記の構成のブーム式作業車において、好ましくは、前記ブームの倒伏状態から起立状態への起伏作動に伴う前記カウンタウエイトが移動する範囲内において、前記カウンタウエイトの側方及び後方部分を外方に対して保護する保護部材を有する。これにより、例えば、旋回台が旋回作動をしているときに壁面などに当たったとしても、カウンタウエイト及びブーム等を保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係るブーム式作業車の外観を示す図であり、(a)は高所作業車の平面図、(b)は高所作業車の側面図である。
【
図2】上記ブーム式作業車の外観を示す斜視図である。
【
図3】上記ブーム式作業車の作動制御構成を示すブロック図である。
【
図4】上記ブーム式作業車に設けられたブームの起伏作動の様子を示す側面である。
【
図5】上記ブーム式作業車に設けられたブームの起立状態を示す側面図である。
【
図6】本発明に係るブーム式作業車の、他の実施形態の外観を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。本発明に係るブーム式作業車の一例として、
図1及び
図2に自走式の高所作業車1の外観を示している。これらの図に示すように、高所作業車1は、走行可能に構成された走行体10と、走行体10の上部に設けられ、水平方向に旋回可能な旋回体20と、旋回体20の上部に設けられ、起伏可能なブーム30と、ブーム30の先端部に設けられた屈伸アーム45と、屈伸アーム45に取り付けられた作業台40とを備えて構成される。
【0016】
走行体10は、走行体フレーム11に回転自在に設けられた左右一対の操舵輪12(左操舵輪12L及び右操舵輪12R)と、左右一対の駆動輪13(左駆動輪13L及び右駆動輪13R)を有している。左駆動輪13L及び右駆動輪13Rは、
図3に示す走行モータ16によって回転駆動される。左操舵輪12L及び右操舵輪12Rは、操舵機構60によって操舵作動(舵角の変位作動)されるように構成されている。操舵機構60は、左操舵輪12L及び右操舵輪12Rを各々回転自在に支持する左右のステアリングブラケット、左右のステアリングブラケットを相互に結合するタイロッド、及び左右のステアリングブラケットを転舵作動させる操舵シリンダ66(
図3参照)などによって構成されている。そして、操舵シリンダ66のロッドが中立位置から伸長作動又は収縮作動すると、タイロッドによって左右のステアリングブラケットが連動して転舵し、これにより操舵輪12の舵角が変位する。なお、本実施形態では
図1(b)に示すように、走行体10は、図中、右方向への移動を前進とし、図中、左方向への移動を後退としている。
【0017】
走行体フレーム11の上部中央には旋回機構15が設けられ、旋回機構15によって、旋回体20を
図1(b)に示す旋回軸TAを中心に旋回させるように構成されている。旋回機構15は、走行体フレーム11に固定された外輪と、この外輪に係合し、旋回体20に固定された内輪と、旋回体20に設けられている各種アクチュエータ(後述する)に作動油を供給するためのロータリーセンタージョイント(図示略)とを有している。旋回体20は、旋回体筐体21(
図2参照)と旋回体シャシー22とを有している。なお、
図1(a)及び
図1(b)では旋回体筐体21を破線で示している。旋回体筐体21の内部には、油圧ポンプ及びその駆動源であるエンジンや各種バルブなど、油圧回路を構成する各種部品などが収容されている。旋回体シャシー22は、ブーム30と枢結している駆動リンク23及び従動リンク24を軸支する。より詳細には、駆動支持軸DLPにより駆動リンク23の一方を軸支し、従動支持軸FLPにより従動リンク24の一方を軸支する。
【0018】
旋回体20の後退側には後述するカウンタウエイト37を保護するためのバンパー25が設けられている。
図1(a)に示すように、バンパー25の幅Wbはカウンタウエイト37の幅Wcよりも広くなっている。また、走行体10の後退方向におけるバンパー25の端部は、カウンタウエイト37の端部よりも長さDだけ長くなっている。なお、旋回体筐体21の幅も、バンパー25の幅Wbと同じ寸法になっており、よって、カウンタウエイト37の幅Wcよりも広くなっている。
【0019】
旋回体20の上部には前述した駆動リンク23及び従動リンク24を介してブーム30が設けられている。ブーム30は、基端ブーム31と、基端ブーム31に入れ子式に組み合わされた中間ブーム32及び先端ブーム33と、によって構成されている。ここで、ブーム30の前後方向は、基端ブーム31側(
図1中、左側)を後方、先端ブーム33側(
図1中、右側)を前方とする。基端ブーム31の後部にはカウンタウエイト37が固定され、先端ブーム31の前方には屈伸アーム45が設けられている。
【0020】
基端ブーム31は、駆動リンク枢結軸DPCにおいて駆動リンク23の他方と枢結し、起伏中心軸UDCにおいて従動リンク24の他方と枢結している。ここで、カウンタウエイト37は、基端ブーム31の起伏中心軸UDCよりもさらに後端側に固定されている。駆動リンク23の駆動リンク枢結軸DPC及び駆動支持軸DLPの間には、シリンダ支持軸SP(
図4及び
図5参照)が設けられ、ブーム起伏シリンダ35の本体と枢結している。そして、ブーム起伏シリンダ35のシリンダロッドの先端が、ブーム30に設けられたシリンダ支持軸SPCに枢結している。屈伸アーム45の先端には、作業者Mが搭乗可能な作業台40が設けられている。作業台40は、作業者Mが搭乗可能な略矩形状の作業床41と、その作業床41の周囲に立設された手摺り42とを有している。また、作業台40には、走行体10の走行制御やブーム30の作動制御等を行うための操作装置70(
図3参照)が設けられている。
【0021】
次に、操作装置70の操作に基づいて、走行体10の走行制御や、旋回体20、ブーム30、屈伸アーム45及び作業台40の作動制御を行う制御装置について、
図3を参照して説明する。この制御装置は、走行体10、旋回体20、ブーム30、屈伸アーム45及び作業台40を作動させる各種アクチュエータを制御するものであり、前述した作業台40に設けられている操作装置70と、上述した各種アクチュエータの駆動源として、各種アクチュエータに作動油を供給する油圧ユニット80と、油圧ユニット80から各種アクチュエータに供給する作動油を、操作装置70の各操作レバーに対する操作に応じて制御するコントローラ50とによって構成されている。コントローラ50は、旋回体筐体21の内部に設置されている。
【0022】
高所作業車1が備えているアクチュエータのうち、走行制御に関するアクチュエータとしては、走行体10を所定の速度範囲で前進又は後退させる走行モータ16、操舵輪12の操舵作動をさせる操舵シリンダ66及び走行中の走行体10を制動するブレーキシリンダ18とがある。また、作業台40の移動制御に関するアクチュエータとしては、旋回モータ26、ブーム起伏シリンダ35、ブーム伸縮シリンダ36、首振りモータ46、屈伸シリンダ47及びレベリングシリンダ48がある。
【0023】
走行モータ16は、供給される作動油の油圧によって駆動されるモータ軸の回転を駆動輪13(
図1参照)に伝達し、モータ軸を正転又は逆転することで、駆動輪13を正転又は逆転させ、これにより走行体10(
図1参照)を前進又は後退させる。またモータ軸の回転速度を制御して、走行体10の走行速度を変化させる。ブレーキシリンダ18は、作動油の供給を受けていないときに、内蔵されたスプリングの力により走行モータ16のモータ軸の回転を制動ロックし、駆動輪13の回転を制動するネガティブブレーキである。操舵シリンダ66は、シリンダロッドの先端が操舵機構60(
図1(a)参照)に連結されており、操舵シリンダ66の伸縮によって操舵輪12を操舵作動させる。
【0024】
旋回モータ26は旋回体20に設けられ、そのモータ軸の回転を、走行体フレーム11に固定された外輪と係合する内輪に伝達し、旋回モータ26を正転又は逆転させることで、旋回体20を走行体10に対して時計回り又は反時計回りに旋回させる。ブーム起伏シリンダ35は、駆動リンク23とブーム30の間に跨設され、シリンダロッドを伸縮させることで、起伏中心軸UDCを中心にしてブーム30を起伏させる。ブーム伸縮シリンダ36は、ブーム30内に設けられ、ブーム伸縮シリンダ36を伸縮させることで、基端ブーム31に入れ子式に組み合わされた中間ブーム32及び先端ブーム33を基端ブーム31に対して伸縮させる。
【0025】
首振りモータ46は、作業台40に設けられ、供給される作動油の油圧によって駆動されるモータ軸の回転により、作業台40を
図1(a)の矢印アの方向に揺動作動(首振り作動)させる。屈伸アーム45は、先端ブーム33の先端部に上下揺動可能に枢結されたレベリングブラケット45aと、一端がレベリングブラケット45aに上下揺動可能に枢結され他端が作業台40を支持するヘッドブラケット45bに上下揺動可能に枢結された第1アーム45c及び第2アーム45dとからなる平行リンク機構により形成される。屈伸アーム45には、第1アーム45cと第2アーム45dとの間に屈伸シリンダ47(
図3参照)が設けられており、屈伸シリンダ47を伸縮作動させることによりレベリングブラケット45aに対して屈伸アーム45を上下揺動自在に構成される。先端ブーム33とレベリングブラケット45aとの間にはレベリングシリンダ48が設けられており、レベリングシリンダ48の伸縮によって、ブーム30の起伏角度位置によらず車体に対して常時一定の角度姿勢を保持するように制御される。これにより、第1アーム45c及び第2アーム45dとからなる平行リンク機構の作用によりヘッドブラケット45bの角度姿勢も常時一定に保持される。
【0026】
上述した各種アクチュエータを作動させる駆動源となる作動油を供給する油圧ユニット80は、旋回体20に設けられたエンジンEと、エンジンEによって駆動される油圧ポンプPと、作動油タンクTと、油圧ポンプPから各油圧アクチュエータに供給する作動油の供給方向および供給量を制御する制御バルブユニット85とを有している。制御バルブユニット85は、各油圧アクチュエータに対応して設けられた複数の制御バルブを有している。これら複数の制御バルブには、走行モータ16を駆動制御するための走行制御バルブV1、ブレーキシリンダ18を制御するブレーキ制御バルブV2、操舵シリンダ66を制御する操舵方向切換バルブV3、旋回制御バルブV4、起伏制御バルブV5、伸縮制御バルブV6、首振り制御バルブV7、屈伸制御バルブV8及びレベリング制御バルブV9がある。
【0027】
図3に示す制御装置を構成する操作装置70は、走行体10の発進停止、前進後退及び走行速度の切り替え等を行う走行操作レバー71と、走行体10の舵取り操作(操舵輪12の操舵操作)を行う操舵レバー72と、旋回体20の旋回操作を行う旋回操作レバー73と、ブーム30の起伏および伸縮操作を行うブーム操作レバー74と、作業台40の首振り操作(旋回操作)を行う作業台操作レバー75と、屈伸アーム45の屈伸操作を行う屈伸アーム操作レバー76とを有している。これらの各操作レバーは、非操作状態のときは、レバーの向きが垂直姿勢となる中立位置に位置し、この中立位置を基準に各操作レバーに応じて定められた方向へ傾倒操作可能に構成されている。
【0028】
コントローラ50は、上述した各操作レバーに対する作業者の傾倒操作に応じて、制御バルブユニット85内の各制御バルブを制御する。走行操作レバー71は中立位置から前後方向に傾倒操作可能であり、走行操作レバー71が前方向に傾倒操作されたときは、コントローラ50は、走行体10がレバーの傾倒角度に応じた速度で前進するように、走行制御バルブV1のスプール移動方向及びバルブ開度を制御して、走行モータ16へ供給する作動油の供給方向とその流量とを制御する。一方、走行操作レバー71が後方向に傾倒操作されたときは、走行モータ16へ供給する作動油の供給方向が、走行操作レバー71が前方向に傾倒操作されたときとは逆方向になるように走行制御バルブV1のスプール移動方向及びバルブ開度を制御して、レバーの傾倒角度に応じた速度で走行体10が後退するように作動油の供給方向とその流量を制御する。
【0029】
また、走行操作レバー71が中立状態から前後いずれかの方向に傾倒操作されると、コントローラ50は、ブレーキ制御バルブV2をオープン状態にしてブレーキシリンダ18へ作動油を供給する。これにより、走行モータ16のモータ軸において、制動ロック状態が解除され、モータ軸が回転可能な状態となる。これに対して、走行操作レバー71が中立位置にあるとき、又は傾倒操作された状態から中立位置に復帰したときは、コントローラ50は、ブレーキ制御バルブV2をクローズ状態にしてブレーキシリンダ18への作動油の供給を停止させる。これにより、走行モータ16のモータ軸が制動ロック状態となり、駆動輪13の回転に制動をかける。
【0030】
操舵レバー72は、中立位置から左右方向に傾倒操作可能であり、コントローラ50は、レバーが左方向に傾倒操作された状態で走行体10が前進したときは左に曲がり、レバーが右方向に傾倒操作された状態で走行体10が前進したときは右に曲がるように、操舵輪12の舵角を変位させる。操舵輪12の舵角作動は、コントローラ50によって、操舵方向切換バルブV3のスプール移動方向及びバルブ開度を制御することで行われる。旋回操作レバー73は、中立位置から左右方向に傾倒操作可能に構成され、コントローラ50は、レバーが右方向に傾倒操作された場合は、
図1(b)に示す旋回軸TAを中心に旋回体20が時計回りに回転し、レバーが左方向に傾倒操作された場合は旋回軸TAを中心に旋回体20が反時計回りに回転するように、旋回制御バルブV4のスプール移動方向およびバルブ開度を制御して、旋回モータ26を駆動する。
【0031】
ブーム操作レバー74は、中立位置から左右及び前後方向に傾倒操作可能に構成されており、ブーム操作レバー74が左右方向に傾倒操作されたときは、コントローラ50は、伸縮制御バルブV6のスプール移動方向を操作レバーの傾倒方向に応じて切り換えるとともに、所定のバルブ開度に制御して、ブーム伸縮シリンダ36を駆動させてブーム30を伸縮作動させる。一方、ブーム操作レバー74が前後方向に傾倒操作された場合、コントローラ50は、起伏制御バルブV5のスプール移動方向をレバーの傾倒方向に応じて切り換えるとともに、所定のバルブ開度に制御して、ブーム起伏シリンダ35駆動させてブーム30を起伏作動させる。なお、上記実施形態では、1つのブーム操作レバー74の操作により、ブーム30の伸縮作動と起伏作動を行うようにしたが、起伏操作レバーと伸縮操作レバーを別々に設け、起伏操作レバーの前後方向への傾倒操作によりブーム30の起伏作動を行い、伸縮操作レバーの前後方向への傾倒操作によりブーム30の伸縮作動を行うようにしても良い。
【0032】
ここで、ブーム30が起立状態に起伏作動した場合、コントローラ50は、ブーム30の起伏作動に合わせて、作業床41の水平状態を保つように、作業台40が
図1(b)の矢印イにおいて下方向(時計回り)へ移動するように、レベリング制御バルブV9のスプール移動方向及びバルブ開度を制御する。これに対して、ブーム30が倒伏作動した場合、コントローラ50は、ブーム30の倒伏作動に合わせて、作業床41の水平状態を保つように、作業台40が
図1(b)の矢印イにおいて上方向(反時計回り)へ移動するように、レベリング制御バルブV9のスプール移動方向及びバルブ開度を制御する。
【0033】
作業台操作レバー75は、中立位置から左右方向に傾倒操作可能に構成される。コントローラ50は、レバーが右方向に傾倒操作された場合、作業台40が、
図1(a)の矢印アの方向において反時計回りに首振り作動するように首振り制御バルブV7のスプール移動方向及びバルブ開度を制御する。これに対して、作業台操作レバー75が左方向に傾倒操作された場合、コントローラ50は、作業台40が、
図1(a)の矢印アの方向において時計回りに首振り作動するように首振り制御バルブV7のスプール移動方向及びバルブ開度を制御する。また、屈伸アーム操作レバー76の操作に応じて屈伸制御バルブV8のスプール移動方向及びバルブ開度を制御して、屈伸シリンダ47を伸縮させることにより、ブーム30に対して屈伸アーム45を上下に屈伸作動させる。
【0034】
次に、
図4及び
図5を参照して、ブーム起伏シリンダ35の伸縮作動に伴う基端ブーム31の起伏作動について説明する。なお、
図4及び
図5において、基端ブーム31の作動状況を見やすくするため、旋回台20の旋回台筐体21及び旋回台シャシー22の図示を省略している。まず、
図4(a)は、基端ブーム31の倒伏状態を示しており、この状態では、ブーム起伏シリンダ35のシリンダロッドが収縮しており、基端ブーム31は水平よりも下方へ傾いている。この状態から作業者がブーム操作レバー74を前方へ傾倒操作すると、ブーム起伏シリンダ35のシリンダロッドが伸長し始めることにより、基端ブーム31のシリンダ枢結軸SPCに作用する。これにより、
図4(b)に示すように、起伏中心軸UDCを中心に基端ブーム31を水平状態にするとともに、駆動リンク23及び従動リンク24を、各々、駆動支持軸DLP及び従動支持軸FLPを中心に、図中、時計回りの方向へ回動させる。この駆動リンク23及び従動リンク24の作動により、起伏中心軸UDC及び駆動リンク枢結軸DPCの位置は、
図4(a)に示した倒伏状態の位置よりも、図中、わずかに右上方向へ移動する。
【0035】
図4(b)の状態から、引き続き作業者がブーム操作レバー74の前方への傾倒操作を維持すると、ブーム起伏シリンダ35のシリンダロッドがさらに伸長し、
図4(c)に示すように、基端ブーム31は起伏中心軸UDCを中心にして、水平よりも上方に向かって傾いていく。また、駆動リンク23及び従動リンク24を、各々、駆動支持軸DLP及び従動支持軸FLPを中心に、さらに時計回りの方向へ回動させる。これにより、起伏中心軸UDC及び駆動リンク枢結軸DPCの位置は、さらに図中、右上方向へ移動し、これにより、カウンタウエイト37はバンパー25を越えて旋回台20の旋回軸TAへ近づいていく。
【0036】
図4(c)の状態から、さらに作業者がブーム操作レバー74の前方への傾倒操作を維持すると、ブーム起伏シリンダ35のシリンダロッドが伸長し続け、
図5に示すように、基端ブーム31が起立状態となる。なお、
図5には、
図4(a)に示した倒伏状態における基端ブーム31’、起伏中心軸UDP’及びカウンタウエイト37’を破線で図示している。また、基端ブーム31が倒伏状態から起立状態へ移行する間に移動する起伏中心軸UDCの軌跡を矢印ウで示す。
【0037】
図5に示すように、基端ブーム31の起立状態においては、起伏中心軸UDCの位置が最も高く、かつ、旋回軸TAに最も接近することで、カウンタウエイト37を旋回軸TAにより近づけることができる。このため、作業台40との重量バランスをとりつつ、カウンタウエイト37による転倒モーメントを発生し難くすることができる。また、駆動リンク23及び従動リンク24によって、基端ブーム31の倒伏状態から起立状態へ至る間、起伏中心軸UDCが
図5の矢印ウで示す軌跡を辿るため、カウンタウエイト37の地上からの高さを大きく変化させることなく、旋回軸TAへ近づけることができる。加えて、基端ブーム31の起立状態において、起伏中心軸UDCの位置が最も高くなるため、その分だけ、作業台40を所定の高さまで上昇させるために必要となるブーム30の長さを短くすることができる。
【0038】
さらに、基端ブーム31の倒伏状態において、走行体10の後退方向におけるバンパー25の端部は、カウンタウエイト37の端部よりも長さDだけ長くなっている。また、基端ブーム31が倒伏状態から起立状態へ移行する間、カウンタウエイト37が、破線で示す位置から実線で示す位置へ移動することになるが、この間、バンパー25及び旋回体筐体21の幅は、カウンタウエイト37の幅Wcよりも広くなっている(
図1(a)参照)。したがって、ブーム30が、倒伏状態から起立状態の間の、いずれの姿勢を取っても、バンパー25及び旋回体筐体21によって、旋回台が旋回作動をしているときにカウンタウエイト37、ブーム30、駆動リンク23及び従動リンク24等が壁面などに当たらないように保護することができる。
【0039】
なお、上述した実施形態では、ブーム30を倒伏状態から起立状態へ移行させるときに、駆動リンク23及び従動リンク24によって起伏中心軸UDCの位置を上方へ移動させていたが、これらのリンクを省略してもよい。例えば、
図6に示すように、旋回台シャシー22”にブーム30を起伏自在に支持するブーム支持体27を設け、基端ブーム31”の起伏中心軸UDC”と枢結させる。また、ブーム起伏シリンダ35”のシリンダロッドを基端ブーム31”のシリンダ枢結軸SPC”で枢結し、ブーム起伏シリンダ35”の本体端部をブーム支持体27に設けたシリンダ支持軸SP”で枢結する。これにより、基端ブーム31が水平状態(
図6において破線で示す。)から起立状態へ移行するに連れて、カウンタウエイト37”を旋回台20の旋回軸TAに近づけることができる。
【0040】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば適宜改良可能である。例えば、本実施形態では、先端ブーム32の先端部分に屈伸アーム45及び作業台40を設けた高所作業車1を例示していたが、作業台の代わりに、荷物を吊架するフックと、このフックに連結されたワイヤと、このワイヤを巻き上げ可能な巻上装置とによって構成される吊上装置を備えたクレーン車にも適用可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 高所作業車
10 走行体
12 操舵輪
20 旋回台
23 駆動リンク
24 従動リンク
30 ブーム
35 ブーム起伏シリンダ
37 カウンタウエイト
40 作業台
45 屈伸アーム
50 コントローラ
70 操作装置