IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 第一実業ビスウィル株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-吸着搬送装置 図1
  • 特許-吸着搬送装置 図2
  • 特許-吸着搬送装置 図3
  • 特許-吸着搬送装置 図4
  • 特許-吸着搬送装置 図5
  • 特許-吸着搬送装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】吸着搬送装置
(51)【国際特許分類】
   B65G 15/58 20060101AFI20240408BHJP
   B65G 15/14 20060101ALI20240408BHJP
   B65G 47/86 20060101ALI20240408BHJP
   B65G 47/30 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
B65G15/58 B
B65G15/14
B65G47/86 F
B65G47/30 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020057094
(22)【出願日】2020-03-27
(65)【公開番号】P2021155176
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】305021292
【氏名又は名称】第一実業ビスウィル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001531
【氏名又は名称】弁理士法人タス・マイスター
(74)【代理人】
【識別番号】100104662
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智司
(74)【代理人】
【識別番号】100184631
【弁理士】
【氏名又は名称】大久保 隆
(72)【発明者】
【氏名】橋口 幸平
(72)【発明者】
【氏名】辻尾 立志
(72)【発明者】
【氏名】稲岡 力
【審査官】大塚 多佳子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/002689(WO,A1)
【文献】特開平06-080234(JP,A)
【文献】特開2010-241512(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 15/58
B65G 15/14
B65G 47/86
B65G 47/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端環状に形成され、相互に間隔を隔てて並んだ状態で設けられる直線状の往路及び復路、並びに前記往路の終端と前記復路の始端とを接続する第1接続路、及び前記往路の始端と前記復路の終端とを接続する第2接続路を形成する搬送ベルトと、
前記往路、復路及び第1接続路において前記搬送ベルトと摺接するように該搬送ベルトの環内に配設されるとともに、前記往路、復路及び第1接続路に対応し、且つこれらに沿って形成された吸引口を有し、該吸引口を介して、前記往路、復路及び第1接続路に負圧を作用させる吸引ボックスと、
前記第2接続路において前記搬送ベルトが巻き掛けられる駆動プーリ、及び該駆動プーリを回転させる駆動モータを有し、該駆動モータにより前記駆動プーリを駆動して前記送ベルトを回動方向に走行させる駆動機構と、
前記吸引ボックスに負圧を作用させる負圧機構とを備えて構成され、
前記搬送ベルトは、その走行方向に沿って平行に形成された2つの搬送支持面を有し、該搬送支持面間に前記吸引ボックスからの負圧が作用することによって、前記往路、復路及び第1接続路が吸着搬送路を形成し、
更に、前記吸引ボックスの前記第1接続路に対応した部分に、前記搬送ベルトの走行方向と直交する支持軸を中心として回転自在に設けられた複数の回転ローラが前記第1接続路に沿って配設され、前記搬送ベルトは、前記第1接続路において該複数の回転ローラに外接するように巻き掛けられており、
前記回転ローラは、前記第1接続路に沿って、前記吸引口を挟んだその両側に配設されていることを特徴とする吸着搬送装置。
【請求項2】
前記搬送ベルトの往路及び復路は相互に平行に形成され、更に前記第1接続路は円弧状に形成されていることを特徴とする請求項1記載の吸着搬送装置。
【請求項3】
前記吸引ボックスは、前記往路、復路及び第1接続路に対応した部分において、その前記吸引口を挟んだ両側に、前記搬送ベルトの走行を案内するガイド部を備えていることを特徴とする請求項1又は2記載の吸着搬送装置。
【請求項4】
前記搬送ベルトは、平行に設けられた2つのベルトから構成され、各ベルトの外面がそれぞれ前記搬送支持面を形成し、
前記吸引ボックスは、前記往路、復路及び第1接続路に対応した部分において、その前記吸引口を挟んだ両側に、前記各ベルトの走行を案内するガイド溝をそれぞれ備えていることを特徴とする請求項1又は2記載の吸着搬送装置。
【請求項5】
前記回転ローラは、前記吸引ボックスに片持ち支持されていることを特徴とする請求項1乃至4記載のいずれかの吸着搬送装置。
【請求項6】
前記回転ローラは、前記第1接続路に沿って等間隔に配設されていることを特徴とする請求項1乃至記載のいずれかの吸着搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、錠剤及びカプセル等の医薬品、キャンディ等の小さな菓子類や、ボタン電池等に代表される小物物品を吸着して搬送することができる吸着搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上述した吸着搬送装置の一例として、特開平3-248047号公報(下記特許文献1)に開示された装置が知られている。この吸着搬送装置は、端縁同士間にスリットを形成するように対向した一対のスリット板と、各スリット板の端縁に形成したガイドレールと、各ガイドレールにそれぞれ案内されて走行する無端環状の2本の搬送ベルトと、前記スリット板間から排気して、前記スリットに負圧を作用させる吸引手段とから構成される。
【0003】
この吸着搬送装置によれば、前記スリットを介して前記搬送ベルト間に負圧が作用し、この負圧によって、対象物が搬送ベルトに吸着される。そして、搬送ベルトが走行することによって、当該搬送ベルトに吸着された対象物が搬送ベルトとともに搬送される。
【0004】
尚、下記特許文献1では、同じ構成の2つの上記吸着搬送装置、即ち、第1及び第2の吸着搬送装置を上下に反転した状態で接続した搬送システムが構築されており、更に、この搬送システムを用いた外観検査装置が構築されている。前記第1及び第2の吸着搬送装置は、それぞれの吸着搬送面が相互に対向するように接続されるとともに、前記第1の吸着搬送装置はその吸着搬送面が下方を向くように配設され、一方、前記第2の吸着搬送装置はその吸着搬送面が上方を向くように配設され、第1の吸着搬送装置の搬送終端は第2の吸着搬送装置の搬送始端に接続されている。また、第1の吸着搬送装置の下方に外観検査機構が配設され、同様に、第2の吸着搬送装置の上方に外観検査機構が配設されている。
【0005】
斯くして、この外観検査装置によれば、対象物は、前記第1の吸着搬送装置によりその上面が吸着された状態で搬送され、その搬送過程で、外観検査機構により、その下面及び側面の外観が検査される。そして、第1の吸着搬送装置によって搬送された対象物は、この後、前記第2の吸着搬送装置に受け渡され、この第2の吸着搬送装置によって、その下面が吸着された状態で搬送され、その搬送過程で、外観検査機構により、その上面及び側面の外観が検査される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平3-248047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、医薬品の分野では、近年、錠剤などについて、その外観検査の他に、表面に品番等の印刷を施すようになってきており、このような要請に応えるために、上述した外観検査装置において、前記外観検査機構に印刷機構を並設することで、当該印刷機構を組み込む試みがなされている。そして、印刷機構としては、多様な印刷に容易に対応できるその使い勝手の良さから、インクジェット印刷機構の採用が検討されている。
【0008】
ところが、インクジェット印刷機構の場合、対象物に対してインク滴を吐出して印刷を行うというその特質から、下方に向けてインク滴を吐出する態様の場合には、良好な印刷を実現できるものの、上方に向けてインク滴を吐出する態様の場合には、重力とは逆方向にインク滴を吐出することになるため、良好な印刷ができないという問題があり、また、吹き付けたインク滴が下方に垂れ落ち、垂れ落ちたインクによって装置周辺が汚損されるという問題がある。
【0009】
したがって、錠剤等の両面に印刷を行う場合には、錠剤等に対して上方から印刷する必要があるが、上述した搬送システムを用いたのでは、錠剤の両面に対して、その上方から印刷を行うという態様を採ることができなかった。
【0010】
本発明は、以上の実情に鑑みなされたものであって、錠剤等の対象物の上下両面に対して、その上方から印刷を行うことを可能にする吸着搬送装置の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための本発明は、
無端環状に形成され、相互に間隔を隔てて並んだ状態で設けられる直線状の往路及び復路、並びに前記往路の終端と前記復路の始端とを接続する第1接続路、及び前記往路の始端と前記復路の終端とを接続する第2接続路を形成する搬送ベルトと、
前記往路、復路及び第1接続路において前記搬送ベルトと摺接するように該搬送ベルトの環内に配設されるとともに、前記往路、復路及び第1接続路に対応し、且つこれらに沿って形成された吸引口を有し、該吸引口を介して、前記往路、復路及び第1接続路に負圧を作用させる吸引ボックスと、
前記第2接続路において前記搬送ベルトが巻き掛けられる駆動プーリ、及び該駆動プーリを回転させる駆動モータを有し、該駆動モータにより前記駆動プーリを駆動して前記送ベルトを回動方向に走行させる駆動機構と、
前記吸引ボックスに負圧を作用させる負圧機構とを備えて構成され、
前記搬送ベルトは、その走行方向に沿って平行に形成された2つの搬送支持面を有し、該搬送支持面間に前記吸引ボックスからの負圧が作用することによって、前記往路、復路及び第1接続路が吸着搬送路を形成し、
更に、前記吸引ボックスの前記第1接続路に対応した部分に、前記搬送ベルトの走行方向と直交する支持軸を中心として回転自在に設けられた複数の回転ローラが前記第1接続路に沿って配設され、前記搬送ベルトは、前記第1接続路において該複数の回転ローラに外接するように巻き掛けられた吸着搬送装置に係る。
【0012】
この吸着搬送装置によれば、前記負圧機構によって前記吸引ボックス内が負圧にされ、これにより、前記搬送ベルトの往路、復路及び第1接続路に対応し、且つこれらに沿って形成された吸引口を介して、当該搬送ベルトの往路、復路及び第1接続路の部分に負圧が作用する。前記搬送ベルトは、その走行方向に沿って平行に形成された2つの搬送支持面を有しており、この搬送支持面間に前記吸引ボックスからの負圧が作用することによって、前記往路、復路及び第1接続路が吸着搬送路となる。
【0013】
前記吸引ボックスの前記第1接続路に対応した部分には、前記搬送ベルトの走行方向と直交する支持軸を中心として回転自在に設けられた複数の回転ローラが前記第1接続路に沿って配設されているが、前記吸引口に作用する負圧は、複数の回転ローラ間の隙間から前記搬送ベルトに作用するため、当該第1接続路が吸着搬送路となる。
【0014】
一方、前記搬送ベルトは、前記駆動機構によって前記回動方向に駆動されて、当該回動方向に走行する。その際、前記搬送ベルトは、前記第1接続路において前記複数の回転ローラに外接するように巻き掛けられているため、この第1接続路を走行する際には、外接した回転ローラが回転することで、抵抗を受けることなく当該第1接続路を走行することができる。また、搬送ベルトは、前記往路及び復路において前記吸引ボックスと摺接するように構成されているが、前記往路及び復路は直線状であるので、大きな摺動抵抗を受けることなく回動方向に走行する。
【0015】
このように、この吸着搬送装置によれば、前記搬送ベルトの往路側の搬送始端において、適宜供給された対象物を、当該搬送ベルトの2つの搬送支持面に吸着し、このようにして吸着した対象物を、その吸着状態を維持したまま、搬送ベルトの走行によって、往路側から第1接続路を経て復路側に搬送することができる。
【0016】
したがって、この吸着搬送装置を、その往路側を下、復路側を上にした状態で配設し、往路側において対象物の上面となる一方面を吸着して復路側に搬送すると、復路側では、対象物の他方面が上面となる。即ち、この吸着搬送装置によれば、対象物を往路側から復路側に移送することで、その天地を反転させることができる。
【0017】
斯くして、この吸着搬送装置によれば、例えば、インクジェット印刷機構を用いて、対象物の前記他方面に印刷を施したい場合に、前記搬送ベルトの復路側の上方にインクジェット印刷機構を配設して印刷を実行することで、対象物の他方面に、その上方からインク滴を吐出させる態様で、当該対象物の他方面に印刷を施すことができる。このため、下方からインク滴を吐出させて印刷を施す場合に比べて、良好な印刷を実現することができ、また、吹き付けたインク滴が下方に垂れ落ちて、装置周辺が汚損されるといった問題が生じることはない。
【0018】
尚、前記吸引口は一つの開口から形成することができ、或いは、前記往路、第1接続路及び復路に沿って配設した複数の開口から形成することができる。
【0019】
また、本発明において、前記搬送ベルトの往路及び復路は相互に平行に形成され、更に前記第1接続路は円弧状に形成されているのが好ましい。このようにすれば、対象物を搬送ベルトに吸着させた状態で、安定して、往路側から復路側に搬送(移送)することができる。
【0020】
また、前記吸引ボックスは、前記往路、復路及び第1接続路に対応した部分において、その前記吸引口を挟んだ両側に、前記搬送ベルトの走行を案内するガイド部を備えているのが好ましい。このようにすれば、搬送ベルトの走行をガイド部によって案内することができ、安定した状態で搬送ベルトを走行させることができる。
【0021】
この場合の搬送ベルトは、帯状の一つのベルトから構成することができる。そして、この搬送ベルトの外面に周方向に沿って吸引用の溝を形成することで、前記2つの搬送支持面を形成することができる。また、吸引用の溝の底面に、周方向に沿って複数の貫通孔を形成することで、吸引ボックスの吸引口に作用する負圧を、この貫通孔を介して前記溝内、即ち、2つの搬送支持面間に作用させることができる。
【0022】
また、前記搬送ベルトは、平行に設けられた2つのベルトから構成され、各ベルトの外面がそれぞれ前記搬送支持面を形成し、
前記吸引ボックスは、前記往路、復路及び第1接続路に対応した部分において、その前記吸引口を挟んだ両側に、前記各ベルトの走行を案内するガイド溝をそれぞれ備えた態様を採ることができる。
【0023】
このような態様によっても、2本のベルト間に吸着用の負圧を安定した状態で作用させることができ、また、ガイド溝の案内作用によって、ベルトを安定した状態で走行させることができる。
【0024】
また、前記回転ローラは、前記第1接続路に沿って、前記吸引口を挟んだその両側に配設され、また、前記吸引ボックスに片持ち支持されていても良い。このようにすれば、第1接続路において、搬送ベルトに対象物を確実に安定して吸着させることができるような負圧を前記2つの搬送支持面間に作用させることができる。
【0025】
また、前記回転ローラは、前記第1接続路に沿って等間隔に配設されているのが好ましい。このようにすれば、第1接続路における搬送ベルトの走行を安定したものにすることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る吸着搬送装置によれば、前記搬送ベルトの往路側の搬送始端において、適宜供給された対象物の一方面を、当該搬送ベルトの2つの搬送支持面に吸着し、このようにして吸着した対象物を、その吸着状態を維持したまま、搬送ベルトの走行によって、往路側から第1接続路を経て復路側に搬送することができる。したがって、この吸着搬送装置を、その往路側を下、復路側を上にした状態に配設して、対象物を往路側から復路側に移送することで、その天地を反転させることができる。
【0027】
このため、例えば、インクジェット印刷機構を用いて、対象物の他方面に印刷を施したい場合に、前記搬送ベルトの復路側の上方にインクジェット印刷機構を配設して印刷を実行することで、対象物の他方面に、その上方からインク滴を吐出させる態様で、当該対象物の他方面に印刷を施すことができる。したがって、下方からインク滴を吐出させて印刷を施す場合に比べて、良好な印刷を実現することができ、また、吹き付けたインク滴が下方に垂れ落ちて、装置周辺が汚損されるといった問題が生じることはない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の一実施形態に係る第2吸着搬送装置を備えた検査・印刷装置を示した正面図である。
図2】検査・印刷装置を構成する第1吸着搬送装置を示した正面図である。
図3図2における矢視A-A方向の部分断面図である。
図4】本実施形態に係る第2吸着搬送装置を示した正面図である。
図5図4における矢視B-B方向の部分断面図である。
図6図4における矢視C-C方向の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0030】
図1は、本発明の一実施形態に係る第2吸着搬送装置を備えた検査・印刷装置を示す正面図である。同図1に示すように、本例の検査・印刷装置1は、第2吸着搬送装置30の他に、第1吸着搬送装置10、3D検査ユニット70,75、印刷ユニット71,76、外観検査ユニット72,77、選別回収ユニット78、及び制御装置80などを備えて構成される。尚、本例の検査・印刷装置1では、処理対象物を医薬品である錠剤Tとし、この錠剤Tの上下面の立体形状および外観を検査し、且つ上下面に印刷を施すものとする。
【0031】
前記第1吸着搬送装置10は、矢示D方向に沿った直線状の吸着搬送路をその上面に有し、一方、前記第2吸着搬送装置30は、下面の直線状の往路60、右側面の円弧状の第1接続路61及び上面の直線状の復路からなる矢示E方向に向けて回動する吸着搬送路を有し、その前記往路60の吸着搬送始端が、前記第1吸着搬送装置10の吸着搬送終端と対向するように、当該第1吸着搬送装置10の上方に配設されている。
【0032】
そして、前記3D検査ユニット70、印刷ユニット71及び外観検査ユニット72は、前記第1吸着搬送装置10の吸着搬送路に臨むように、矢示D方向に沿って当該第1吸着搬送装置10の上方に順次配設され、また、前記3D検査ユニット75、印刷ユニット76、外観検査ユニット77及び選別回収ユニット78は、前記第2吸着搬送装置30の復路62に臨むように、矢示E方向に沿って当該第2吸着搬送装置30の上方に順次配設されている。
【0033】
図2及び図3に示すように、前記第1吸着搬送装置10は、細長い筐体状をした吸引ボックス11と、無端環状をした2本の搬送ベルト15,16と、吸引ボックス11内を負圧にする排気ポンプ17と、吸引ボックス11の周囲を囲繞するカバー体23などから構成される。
【0034】
前記吸引ボックス11は、その上面に開口し、且つその長手方向に沿って形成されたスリット12を備え、更に、このスリット12を挟んだ両側にそれぞれ形成されたガイド溝13、14を備えている。
【0035】
前記カバー体23には、その4隅に、前記吸引ボックス11を取り囲むように、駆動プーリ18、従動プーリ19,20,21が配設されており、前記搬送ベルト15,16は、前記吸引ボックス11の上面に形成されたガイド溝13,14にそれぞれ嵌まり込んだ状態で、駆動プーリ18、従動プーリ19,20,21に巻き掛けられている。また、駆動プーリ18には、駆動モータ22が接続されており、駆動プーリ18は、この駆動モータ22によって駆動される。そして、この駆動モータ22によって駆動プーリ18を回転させると、前記搬送ベルト15,16が矢示D方向に回動する。
【0036】
尚、本例の搬送ベルト15,16はタイミングベルトから構成され、また、前記駆動プーリ18、従動プーリ19,20,21は、それぞれタイミングプーリから構成されている。
【0037】
この第1吸着搬送装置10では、前記排気ポンプ17により吸引ボックス11内を排気して、当該吸引ボックス11内を負圧にすると、この負圧が前記スリット12を介して搬送ベルト15,16間に作用する。そして、この第1吸着搬送装置10の上流側から、搬送ベルト15,16に跨るように順次錠剤Tが供給されると、供給された錠剤Tは、前記負圧の作用により、搬送ベルト15,16上に吸着され、搬送ベルト15,16に吸着された錠剤は、当該搬送ベルト15,16の矢示D方向に向けた走行によって、第2吸着搬送装置30に向けて搬送される。
【0038】
このように、この第1吸着搬送装置10では、搬送ベルト15,16の上側の面が搬送支持面となっており、その走行路が吸着搬送路となっている。
【0039】
前記第2吸着搬送装置30は、図1及び図4図6に示すように、細長い筐体状をした吸引ボックス31と、無端環状をした2本の搬送ベルト35,36と、吸引ボックス31内を負圧にする負圧機構としての排気ポンプ37と、吸引ボックス31の両側面に設けられるカバー体43などから構成される。尚、図4では、カバー体43を取り外した状態の第2吸着搬送装置30を示している。
【0040】
前記2本の搬送ベルト35,36は、無端環状をしたタイミングベルトから構成され、直線状の往路60及び復路62、並びに前記往路60の終端と前記復路62の始端とを接続する円弧状をした第1接続路61、及び前記往路60の始端と前記復路62の終端とを接続する第2接続路63を形成している。尚、往路60及び復路62は平行に設けられ、往路60が下側に位置し、復路62が上側に位置している。
【0041】
前記吸引ボックス31は、前記往路60、第1接続路61及び復路62において前記搬送ベルト35,36と摺接するように、当該搬送ベルト35,36の環内に配設されている。即ち、前記往路60及び復路62に対応する部分は直線状に形成され、前記第1接続路61に対応する部分は円弧状(半円状)に形成されている。
【0042】
また、この吸引ボックス31は、前記往路60、第1接続路61及び復路62に対応し、且つこれらに沿って形成された吸引口32を備えており、また、この吸引口32の両側には、前記往路60、第1接続路61及び復路62に沿ってガイド溝33,34がそれぞれ形成され、このガイド溝33,34に、前記搬送ベルト35,36がそれぞれ嵌まり込んだ状態になっている。尚、この吸引口32は、前記往路60、第1接続路61及び復路62に沿って形成された一つの開口から構成することができ、或いは、前記往路60、第1接続路61及び復路62に沿って、連続的に、好ましくは等間隔に配置された複数の一群の開口から構成することができる。
【0043】
そして、吸引ボックス31は、排気ポンプ37によりその内部の空気が排気されることによって当該内部が負圧になり、この負圧が、前記吸引口32を介して、前記往路60、第1接続路61及び復路62を形成する搬送ベルト35,36間に作用するようになっている。斯くして、これら往路60、第1接続路61及び復路62が吸着搬送路を形成する。
【0044】
図6に示すように、前記吸引ボックス31内の前記第1接続路61に対応した部分には、前記吸引口32を挟んだその両側に、相互に対向し且つ同軸となるように、回転ローラ48,49及び回転ローラ54,55がそれぞれ配設されている。
【0045】
前記回転ローラ48,49は、前記搬送ベルト35,36の走行方向と直交する支持軸46を中心として回転自在となっており、この支持軸46はナット50によって前記吸引ボックス31内に締結され、これにより、回転ローラ48,49は当該支持軸46によって、片持ち支持された状態となっている。そして、これら支持軸46、回転ローラ48,49及びナット50から構成される回転ローラユニットが前記第1接続路61に沿って等間隔に配設されている。
【0046】
同様に、前記回転ローラ54,55は、前記搬送ベルト35,36の走行方向と直交する支持軸52を中心として回転自在となっており、この支持軸52はナット56によって前記吸引ボックス31内に締結され、これにより、回転ローラ54,55は当該支持軸52によって、片持ち支持された状態となっている。そして、これら支持軸52、回転ローラ54,55及びナット56から構成される回転ローラユニットが前記第1接続路61に沿って等間隔に配設されている。
【0047】
そして、前記搬送ベルト35は、前記第1接続路61において、当該第1接続路61に沿って配設された前記複数の回転ローラ48,49に外接するように巻き掛けられ、同様に、前記搬送ベルト36は、前記第1接続路61に沿って配設された前記複数の回転ローラ54,55に外接するように巻き掛けられている。
【0048】
また、前記第2接続路に対応する部分には、それぞれタイミングプーリから構成される駆動プーリ38、従動プーリ39,40,41が配設されており、前記搬送ベルト35,36が、これら駆動プーリ38、従動プーリ39,40,41に巻き掛けられている。また、従動プーリ41にはテンション調節機構が付設されており、このテンション調整機構の作用によって、搬送ベルト35,36のテンションが調整される。
【0049】
また、前記駆動プーリ38には、駆動機構としての駆動モータ42が接続されており、駆動プーリ38は、この駆動モータ42によって駆動される。そして、この駆動モータ42によって駆動プーリ38を回転させると、前記搬送ベルト35,36が矢示E方向に回動する。その際、搬送ベルト35,36は、前記第1接続路61において前記複数の回転ローラ48,49、54,55に外接するように巻き掛けられているので、この第1接続路61を走行する際には、外接した回転ローラ48,49、54,55が回転することで、抵抗を受けることなく当該第1接続路61を走行することができる。また、搬送ベルト35,36は、前記往路60及び復路62において前記吸引ボックス31のガイド溝33,34と摺接するように構成されているが、前記往路60及び復路62は直線状であるので、大きな摺動抵抗を受けることなく回動方向である矢示E方向に走行する。
【0050】
以上の構成を備えた本例の第2吸着搬送装置30では、前記排気ポンプ37により吸引ボックス31内を排気して、当該吸引ボックス31内を負圧にすると、この負圧が前記吸引口32を介して搬送ベルト35,36間に作用する。そして、前記第1吸着搬送装置10により、その下面が搬送ベルト15,16に吸着された状態で吸着搬送終端に搬送された錠剤Tは、前記第2吸着搬送装置30の往路60の吸着搬送始端において、その負圧の作用により、搬送ベルト35,36に跨るようにその上面が吸着され、矢示E方向に向けて、この往路60から第1接続路61を経て復路62側に移送される。尚、搬送ベルト35,36は、往路60,第1接続路61及び復路62において、その外面がそれぞれ搬送支持面となっている。
【0051】
前記3D検査ユニット70,75は、搬送方向の斜め前方又は後方から、搬送方向と直交するスリット光を照射するとともに、錠剤Tに照射されたスリット光の画像をその直上からカメラによって撮像し、得られた画像に基づいて、所謂光切断法により錠剤Tの3次元形状を測定して、その良否を判別する検査ユニットである。
【0052】
前記印刷ユニット71,76は、対象物にインク滴を吐出して印刷を施す、所謂インクジェット印刷機構を備えたユニットである。
【0053】
また、前記外観検査ユニット72,77は、カメラによって錠剤Tの外表面を撮像し、得られた画像に基づいて、錠剤Tの外表面に存在する割れ、欠け、汚れといった外観不良の有無や、前記印刷ユニット71,76によって施された印刷の良否を検査するユニットである。
【0054】
また、選別回収ユニット80は、前記3D検査ユニット70,75、及び外観検査ユニット72,77の検査結果に基づいて、良品の錠剤Tと不良品の錠剤Tとを選別して回収するユニットである。
【0055】
前記制御装置80は、CPU、RAM、ROMなどを含むコンピュータから構成され、第1吸着搬送装置10、第2吸着搬送装置30、3D検査ユニット70,75、印刷ユニット71,76、外観検査ユニット72,76及び選別回収ユニット78の作動を制御するとともに、3D検査ユニット70,75及び外観検査ユニット72,76において撮像された画像の処理を実行し、これに基づいた良否の判別処理を実行する。
【0056】
以上の構成を備えた本例の検査・印刷装置1によれば、前記第1吸着搬送装置10の上流側から、搬送ベルト15,16に跨るように順次錠剤Tが供給されると、供給された錠剤Tは、その負圧の作用により、搬送ベルト15,16上に吸着され、搬送ベルト15,16に吸着された錠剤Tは、当該搬送ベルト15,16の矢示D方向に向けた走行によって、第2吸着搬送装置30に向けて搬送される。
【0057】
そして、第1吸着搬送装置10によって搬送される過程で、錠剤Tは、前記3D検査ユニット70によって、その3次元形状の良否が判別された後、前記印刷ユニット71によって、上方からその上面(一方面)に適宜印刷が施され、この後、前記外観検査ユニット72によって、外観の良否及び印刷の良否が判別され、このような各処理を経た後、吸着搬送終端に至る。
【0058】
次に、錠剤Tは、前記第2吸着搬送装置30の往路60の吸着搬送始端において、その負圧の作用により、搬送ベルト35,36に跨るようにその上面(一方面)が吸着され、矢示E方向に向けて、この往路60から第1接続路61を経て復路62側に移送され、その移送過程において、その天地が反転され、錠剤Tは、前記復路62上では、前記一方面とは反対の面である他方面が上面となる。
【0059】
そして、錠剤Tは、この復路62上を搬送される過程で、前記3D検査ユニット75によって、その3次元形状の良否が判別された後、前記印刷ユニット76によって、上方からその他方面に適宜印刷が施され、この後、前記外観検査ユニット77によって、外観の良否及び印刷の良否が判別され、このような各処理を経た後、選別回収ユニット78において、前記3D検査ユニット70,75、及び外観検査ユニット72,77の検査結果に基づいて、良品の錠剤Tと不良品の錠剤Tとが選別された状態で回収される。
【0060】
このように、本例の検査・印刷装置1によれば、錠剤Tの両面に印刷を施す必要がある場合に、第1吸着搬送装置10によって錠剤Tを搬送する過程で、インクジェット印刷機構を用いて、その上方からインク滴を吐出させることで、一方の面に印刷を施すことができる。そして、この一方面に印刷を施した錠剤Tを、第2吸着搬送装置30によって、当該一方面を吸着して復路62側に移送することで、その天地が反転されて他方面が上向きとなり、この復路62上で、インクジェット印刷機構を用いて、その上方からインク滴を吐出させることで、当該他方面に印刷を施すことができる。
【0061】
斯くして、この第2吸着搬送装置30を備えた検査・印刷装置1によれば、錠剤Tの両面に印刷を施す際に、各面に対して、その上方からインク滴を吐出させる態様で印刷を施すことができるので、下方からインク滴を吐出させて印刷を施す場合に比べて、良好な印刷を実現することができ、また、吹き付けたインク滴が下方に垂れ落ちて、装置の周辺が汚損されるといった問題が生じることがない。
【0062】
また、本例の第2吸着搬送装置30では、前記第1接続路61に沿って、前記吸引口32を挟んだその両側に、前記回転ローラ48,49及び回転ローラ54,55をそれぞれ配設し、更に、これらをそれぞれ吸引ボックス31に片持ち支持する構成としたので、前記吸引口32に良好な負圧を作用させることができ、第1接続路61において、搬送ベルト35,36に錠剤Tをより確実に安定した状態で吸着させ、搬送することができる。
【0063】
以上、本発明の一実施の形態について説明したが、本発明が採り得る具体的な態様は、何ら、これに限定されるものではない。
【0064】
例えば、前記吸引口32に十分な負圧を作用させることができるのであれば、前記回転ローラ48,49,54,55は、前記吸引ボックス31にナット50,56によって両持支持された一つの支持軸によって回転自在に支持された態様を採ることができる。尚、この場合、これら支持軸、回転ローラ48,49,54,55及びナット50,56から構成される回転ローラユニットが前記第1接続路61に沿って等間隔に配設される。このようにしても、第1接続路61に沿った方向に隣接する回転ローラ48,49,54,55と回転ローラ48,49,54,55との間の隙間から前記搬送ベルト35,36に吸引ボックス31内の負圧が作用するため、当該第1接続路61を吸着搬送路とすることができる。
【0065】
また、上例の回転ローラ48,49は、これらを一つの回転ローラとしても良く、同様に、回転ローラ54,55を一つの回転ローラから構成しても良い。
【0066】
また、上例では、前記搬送ベルト35,36の往路60及び復路61を水平にしたが、必ずしも、厳密な意味で水平である必要はなく、印刷に支障をきたさない範囲で、多少の傾斜を有していても良い。また、前記第1接続路61を円弧状に形成したが、必ずしも、このような形状に限られるものではない。
【0067】
また、上例では、第1吸着搬送装置10において2本の搬送ベルト15,16を用いて搬送路を形成し、同様に、第2吸着搬送装置30においても2本の搬送ベルト35,36を用いて搬送路を形成したが、このような構成に限られるものではない。例えば、帯状の一つの搬送ベルトから構成し、この搬送ベルトの外面に周方向に沿って吸引用の溝を形成することによって、2つの搬送支持面を形成するとともに、この吸引用の溝の底面に、周方向に沿って複数の貫通孔を形成することで、吸引ボックス11,31の吸引口に作用する負圧を、この貫通孔を介して前記溝内、即ち、2つの搬送支持面間に作用させるようにしても良い。このようにしても、2つの搬送支持面上に錠剤Tを吸着させることができる。
【0068】
そして、この場合に、前記吸引ボックス11,31は、前記吸引口12,32を挟んだ両側に、前記搬送ベルトの走行を案内するガイド部を備えているのが好ましい。
【0069】
また、本例の検査・印刷装置1に適用可能な対象物は、上例の錠剤Tに限られるものではなく、錠剤Tの他に、カプセル等の医薬品、キャンディ等の小さな菓子類や、ボタン電池等に代表される小物物品を適用することができる。
【符号の説明】
【0070】
1 検査・印刷装置
10 第1吸着搬送装置
11 吸引ボックス
12 スリット
13,14 ガイド溝
15,16 搬送ベルト
17 排気ポンプ
18 駆動プーリ
19,20,21 従動プーリ
22 駆動モータ
30 第2吸着搬送装置
31 吸引ボックス
32 吸引口
33,34 ガイド溝
35,36 搬送ベルト
38 駆動プーリ
39,40,41 従動プーリ
42 駆動モータ
46,52 支持軸
48,49,54,55 回転ローラ
60 往路
61 第1接続路
62 復路
63 第2接続路
70,75 3D検査ユニット
71,76 印刷ユニット
72,77 外観検査ユニット
78 選別回収ユニット
80 制御装置
T 錠剤

図1
図2
図3
図4
図5
図6