(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】発酵豆乳含有飲料の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 11/00 20210101AFI20240408BHJP
A23C 11/10 20210101ALI20240408BHJP
A23L 11/60 20210101ALI20240408BHJP
A23L 11/65 20210101ALI20240408BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
A23L11/00 Z
A23C11/10
A23L2/52
(21)【出願番号】P 2020060573
(22)【出願日】2020-03-30
【審査請求日】2023-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】596126465
【氏名又は名称】アサヒ飲料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100154988
【氏名又は名称】小林 真知
(72)【発明者】
【氏名】香月 実歩
(72)【発明者】
【氏名】森 満高
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 俊輔
【審査官】川崎 良平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/119343(WO,A1)
【文献】特開2019-115374(JP,A)
【文献】特開平07-147898(JP,A)
【文献】特開2014-147369(JP,A)
【文献】特開2014-168441(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23C 1/00-23/00
A23L 2/00- 2/84
A23L 11/00-11/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発酵豆乳含有飲料の製造方法であって、
豆乳に大豆ペプチドを混合して発酵原料を調整する工程、及び
前記発酵原料を、乳酸菌によって発酵する工程を含み、
(a)前記発酵原料が、
4質量%以上7質量%未満の大豆固形分を含み、
全大豆固形分に対する、前記混合した大豆ペプチド由来の大豆固形分の質量比率が7%以上である、又は、
(b)前記発酵原料が、
7質量%以上10質量%以下の大豆固形分を含み、
全大豆固形分に対する、前記混合した大豆ペプチド由来の大豆固形分の質量比率が20%以上である、
発酵豆乳含有飲料の製造方法。
【請求項2】
前記豆乳が、粉末豆乳を含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記発酵豆乳含有飲料のpHが、3.0~4.5である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発酵豆乳含有飲料の製造方法に関し、より詳しくは、カードの形成が抑制された、発酵豆乳含有飲料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の健康志向などを背景に、健康上有益な生理活性を有する食品として、乳酸菌発酵により得られる発酵豆乳、それを材料とした乳酸菌含有飲食品及び食品などが注目されている。乳酸菌は、これまでに整腸作用、抗アレルギー作用、コレステロール低減作用、血圧降下作用、美肌作用、安眠作用など、様々な生理活性を有することが知られている。
したがって、現在、豆乳や発酵豆乳に関する様々な研究が進められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、発酵食品の製造方法が開示されており、具体的には大豆豆乳に酵母と乳酸菌を混合し、大豆豆乳を発酵させて、苦味などを抑えたカード(凝乳)を生成することが記載されている。また、特許文献2には、濃縮豆乳を含む発酵原料をラクトバチルス・ブレビス属の乳酸菌で乳酸発酵することで得られる豆乳ヨーグルトの製造方法が開示されており、具体的には、濃縮豆乳の大豆固形分の割合は14~23重量%程度であり、糖類の割合は1~30重量部程度であることが記載されている。このように、豆乳から得られたカード(凝乳)を形成させてそれを食品に利用することが試みられている。
【0004】
また、特許文献3には、豆乳発酵食品において、滑らかな食感を有し、ホエーの分離がなく、高粘度を有するクリーム状の製品を開示しており、具体的には、3%以上の大豆固形分及び5~10%の糖を含有する豆乳に乳酸菌を添加し、豆乳の粘度が6000cP以上となるまで発酵を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-170964号公報
【文献】特開2018-068267号公報
【文献】特開2007-014303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、カードを形成しにくく簡便な、発酵豆乳含有飲料の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
豆乳を乳酸菌により発酵すると、乳酸菌の分泌する有機酸によるpHへの影響により、豆乳中のたんぱく質が変性してカード(凝乳)が生じることは知られているところ、このカードとカード以外の豆乳清(ホエー)とが分離していない発酵食品を得るには、製造工程の複雑化などの難点がある。また、発酵豆乳を飲料の原料として利用する際には、カードの形成が、飲料の外観や舌触りに悪影響を与える恐れがあるため、カードを破砕して均一な状態にする工程が必要となりうるが、完全に均一な状態にするためには大掛かりな設備が必要になる。
また、発酵豆乳を飲料の原料として用いる場合に、より豆乳らしさを付与するため等の目的で大豆固形分を増加させる場合(例えば、大豆固形分を4質量%以上にする場合)に、その手段として粉末豆乳を利用すること等が挙げられる。しかしながら、発酵原料に粉末豆乳を含有させた場合には、乳酸菌発酵の際に強固なカードを形成してしまう。
そこで、本発明者らが鋭意検討した結果、発酵原料に大豆ペプチドを混合して、全大豆固形分に対する大豆ペプチド由来の大豆固形分の質量比率を7%以上に調整することで、発酵後の豆乳含有飲食品におけるカードの形成を抑制することができることを見出した。そして、本発明者は、発酵原料における豆乳や粉末豆乳と大豆ペプチドとの配合比などを調整し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、以下の態様を含むものである。
【0008】
[態様1]
発酵豆乳含有飲料の製造方法であって、豆乳に大豆ペプチドを混合して発酵原料を調整する工程、及び前記発酵原料を、乳酸菌によって発酵する工程を含み、
(a)前記発酵原料が、
4質量%以上7質量%未満の大豆固形分を含み、
全大豆固形分に対する、前記混合した大豆ペプチド由来の大豆固形分の質量比率が7%以上である、又は、
(b)前記発酵原料が、
7質量%以上10質量%以下の大豆固形分を含み、
全大豆固形分に対する、前記混合した大豆ペプチド由来の大豆固形分の質量比率が20%以上である、
発酵豆乳含有飲料の製造方法。
[態様2]
前記豆乳が、粉末豆乳を含む、前記[態様1]に記載の製造方法。
[態様3]
前記発酵豆乳含有飲料のpHが、3.0~4.5である、前記[態様1]又は[態様2]に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、カードを形成しにくく簡便な、発酵豆乳含有飲料の製造方法を提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】乳酸菌発酵後の各サンプルで形成したカードの評価基準を示した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、発酵豆乳含有飲料の製造方法であって、豆乳に大豆ペプチドを混合して発酵原料を調整する工程、及び前記発酵原料を、乳酸菌によって発酵する工程を含む方法に関する。本発明において前記発酵原料は、大豆固形分、及び混合する大豆ペプチド由来の大豆固形分が以下の(a)又は(b)の条件を満たす。
(a)の条件:
4質量%以上7質量%未満の大豆固形分、より好ましくは4質量%以上5.5質量%以下の大豆固形分を含み、
全大豆固形分に対する、前記混合した大豆ペプチド由来の大豆固形分の質量比率が7%以上、好ましくは20%以上である。また、全大豆固形分に対する、前記混合した大豆ペプチド由来の大豆固形分の質量比率の上限値は、60%であることが好ましい。
(b)の条件:
7質量%以上10質量%以下の大豆固形分、より好ましくは7質量%以上8質量%以下の大豆固形分を含み、
全大豆固形分に対する、前記混合した大豆ペプチド由来の大豆固形分の質量比率が20%以上、好ましくは40%以上である。また、全大豆固形分に対する、前記混合した大豆ペプチド由来の大豆固形分の質量比率の上限値は、70%であることが好ましい。
【0012】
本発明に係る製造方法では、前記発酵原料の大豆固形分と大豆ペプチドの配合量を調整するプロセスを含むことで、簡便に得られる発酵豆乳含有飲料におけるカード形成を抑制するか、柔らかいカードの形成にとどめることができる。
ここで、本発明における「発酵原料」は、各原料を混合し、さらにこれに乳酸菌(スターター)を投入したのちに発酵条件下に置く前、すなわち乳酸菌によって発酵する工程の直前の組成物を意味する。したがって、上記(a)及び(b)の条件は、乳酸菌によって発酵する工程の直前の組成物に関する。
また、本発明における製造方法で得られる発酵豆乳含有飲料は、そのまま飲食することもできるし、豆乳含有飲食品の原料として用いることもできる。
以下、各工程について詳述する。
【0013】
≪豆乳に大豆ペプチドを混合して発酵原料を調整する工程≫
本発明における製造方法で用いる発酵原料に含まれる豆乳は、例えば、平成30年3月29日農林水産省告示第683号に記載される豆乳のほか、調製豆乳、又は豆乳飲料を含むものであれば特に限定はされない。また、当該発酵原料に含まれる豆乳は粉末豆乳のみからなるものであってもよく、粉末豆乳を含むもの、例えば粉末豆乳と豆乳の混合物を含むものであってもよい。本発明において粉末豆乳とは、例えば、平成30年3月29日農林水産省告示第683号に記載される豆乳を凍結乾燥などにより、大豆由来成分の変性を抑えつつ水分を除いた粉末状の豆乳であり、大豆由来成分以外の成分を含んでいてもよい。当該粉末豆乳は、市販のものを使用してもよく、例えば、豆乳パウダーT、豆乳パウダーM、豆乳パウダーIM、豆乳パウダーIM100(以上、井村屋社)、ソヤフィット2000(不二製油社)を使用することができる。当該発酵原料に粉末豆乳を含有させることによって、大豆固形分の調整を容易にできる利点がある。また、本発明における製造方法で用いる発酵原料において、大豆固形分は、上述した(a)又は(b)の条件を満たすように調整される。当該大豆固形分は、当該豆乳含有飲食品の製造に用いられる原料の大豆固形分と、その配合率に基づいて算出することができる。なお、本発明における「大豆固形分」は、「大豆由来の固形分」を意味する(一般的な意味と同義である)。また、本発明における発酵原料に含まれる豆乳は、低脂肪(例えば脂肪分0~1質量%)であることが好ましい。
【0014】
本発明における製造方法で用いる発酵原料に含まれる大豆ペプチドは、大豆から抽出・精製されたタンパク質を分解して得られるタンパク分解物であって、該タンパク質を熱や圧力、酸、アルカリ、酵素によって分解することで得られる。また、大豆ペプチドの重量平均分子量は特に限定されないが、10000以下であることが好ましく、5000以下であることがより好ましく、1000以下であることがさらに好ましい。また、大豆ペプチドとして、市販のハイニュートAM、ハイニュートDC6、ハイニュートDH、ハイニュートD1(以上、不二製油社)を用いることができる。
本発明における製造方法において、「大豆ペプチド」における固形分は、「大豆固形分」にそのまま対応するものとする。また、本発明における製造方法においては、大豆ペプチドとそれ以外の成分、例えば水分や賦形剤等を含む大豆ペプチド組成物を用いてもよい。当該大豆ペプチド組成物を用いる場合には、大豆ペプチド由来の固形分は、大豆ペプチド組成物から当該水分や賦形剤等を除いた固形分とすることができる。
また、本発明における発酵原料には、発酵助剤、及び乳酸菌を含むスターター(種菌)が含まれる。
【0015】
本発明で用いられる「発酵助剤」は、一般的に発酵工程をより良く進めるために加えられる物質であれば特に制限されず、例えば、塩化ナトリウム、酸性リン酸カリウム、酸性リン酸カルシウム、リン酸アンモニウム、硫酸マグネシウム、硫酸アンモニウム等の無機塩;ラクトース、グルコース、スクロース、フルクトース、ガラクトース、マルトース、トレハロース等の糖類;ビタミン類;酵母エキス、肉エキス、植物エキス、を用いることができる。
その他、本発明における発酵原料には、本発明の目的を損なわない範囲であれば、一般的に使用されうる、上述していない甘味料や香料、各種栄養成分、各種植物抽出物、着色料、希釈剤、酸化防止剤等の食品添加物を含有させてもよい。
【0016】
本発明で用いられる「乳酸菌」としては、ラクトバチルス属、ストレプトコッカス属、ビフィドバクテリウム属、エンテロコッカス属、ロイコノストック属、ラクトコッカス属、ペディオコッカス属、及びワイセラ属に属する微生物が挙げられ、特にラクトバチルス属が好ましい。「ラクトバチルス属の微生物」としては、ラクトバチルス・ヘルベティカス、ラクトバチルス・デルブルッキ サブスピーシーズ ブルガリカス、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・アミロボラス、ラクトバチルス・ガセリ、ラクトバチルス・パラカゼイ、ラクトバチルス・ゼアエ、ラクトバチルス・ラムノーサス、ラクトバチルス・ロイテリ、ラクトバチルス・クリスパタス、ラクトバチルス・ガリナーラム、ラクトバチルス・ブレビス、ラクトバチルス・ファーメンタム、ラクトバチルス・プランタラム、及びラクトバチルス・ジョンソニー等が挙げられ、特にラクトバチルス・ヘルベティカス(L. helveticus)、及びラクトバチルス・アシドフィルス(L.acidophilus)が好適に使用できる。本発明の飲料において使用する上記の乳酸菌種に属する菌株は、天然からの単離株、寄託株、保存株、市販株などのいずれであってもよい。
本発明において、乳酸菌を含むスターターは、当該スターター以外の全ての原料を混合した組成物を100質量%とした場合に、当該組成物の1~20質量%に当たる量のスターターを添加(接種)することが好ましい。
【0017】
≪発酵原料を乳酸菌によって発酵する工程≫
本工程では、上記の通り調製した発酵原料を乳酸菌によって発酵させることを含む。本工程においては、例えば、発酵槽内において、発酵原料を静置発酵させる。
発酵条件は、例えば、20~50℃、より好ましくは30~40℃で、1~48時間、より好ましくは、15~30時間(静置)発酵させることが好ましい。また、本工程で得られる発酵液のpHは、3.0~5.5、好ましくは3.0~4.5であることが好ましい。発酵する工程の終期は、原料に含まれる乳酸菌が対数増殖の後、定常期になった時としてもよい。乳酸菌発酵の具合は、常法に従い、乳酸酸度とpHを測定して確認することができる。
また、発酵終了後における特有の風味を極力保つため、これ以上発酵が進まないように、(加熱)殺菌を行ってもよい。
【0018】
≪その他の工程≫
上述の乳酸菌による発酵工程の後、適宜必要に応じて、均質化処理や殺菌処理を加えてもよい。
均質化処理は、通常、ホモゲナイザーを用いて行うことができる。均質化条件は特に限定されず、常法に従うことができる。
殺菌処理の方法は特に制限されず、通常のプレート式殺菌、チューブラー式殺菌、レトルト殺菌、バッチ殺菌、オートクレーブ殺菌等の方法を採用することができる。
【0019】
<得られる発酵豆乳含有飲料>
本発明における製造方法で得られる発酵豆乳含有飲料は、離水やたんぱく質などの沈殿(カード)や浮遊が生じないか、あまり見られず、外観や舌触りがよい発酵豆乳含有飲料である。本発明で得られる発酵豆乳含有飲料は、そのまま飲食することもできるし、さらに別の成分を添加したものであってもよく、他の豆乳含有飲食品の原料として用いてもよい。
また、本発明において得られた発酵豆乳含有飲料には、さらに乳成分を添加させてもよい。当該乳成分は、例えば、獣乳及び植物乳のいずれの原料乳を由来とするものであってもよい。獣乳としては、例えば、牛乳、山羊乳、羊乳及び馬乳等が挙げられる。乳成分の形態としては、例えば、全脂乳、脱脂乳、乳清、乳たんぱく濃縮物、バターミルク粉、無糖練乳、脱脂加糖練乳、全脂加糖練乳、生クリーム、及び発酵乳が挙げられる。また、粉乳や濃縮乳から還元した乳も使用できる。なかでも、脱脂乳が好ましく、ハンドリングのよさから脱脂粉乳を用いることが特に好ましい。また、植物乳としては、例えば、アーモンドミルク、ライスミルク、ココナッツミルク等が挙げられる。また、乳成分としては、単一種類の原料由来であっても、複数種類の原料由来であってもよい。
【0020】
また、本発明において得られた発酵豆乳含有飲料の発酵豆乳の風味等を損なわない範囲で、必要に応じて任意の酸性成分として、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、酢酸、リン酸等の酸味料や、果汁、例えば、オレンジ、レモン、グレープフルーツ等の柑橘系の果汁や、ブドウ、モモ、リンゴ、バナナ等の果汁を添加してもよい。
また、本発明において得られる発酵豆乳含有飲料には、本発明の目的を損なわない範囲であれば、一般的に使用されうる、上述していない甘味料や香料、各種栄養成分、各種植物抽出物、着色料、希釈剤、酸化防止剤等の食品添加物を含有させてもよい。
本発明の発酵豆乳含有飲料は、飲食品であれば特に限定されないが、例えば、調製豆乳、豆乳飲料、清涼飲料水、コーヒー飲料、茶系飲料、果実飲料、スポーツ飲料、健康飲料、ノンアルコール飲料又はアルコール飲料、豆乳ヨーグルト等でありうる。
【0021】
本発明における発酵豆乳含有飲料には、甘味料や香料、各種栄養成分、各種植物抽出物、着色料、希釈剤、酸化防止剤等の食品添加物を適宜混合してもよい。
また、本発明における発酵豆乳含有飲料を容器に充填する方法としては、例えば、飲食品を容器にホットパック充填し、充填した容器を冷却する方法、又は容器充填に適した温度まで飲料を冷却して、予め洗浄殺菌した容器に無菌充填する方法により行うことができる。
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。ただし、これらの実施例により本発明が何ら限定されるものでない。
【実施例】
【0022】
実施例、参考例、及び比較例で製造する各サンプルの原料成分として、以下のものを準備した。
・豆乳(低脂肪豆乳)
・粉末豆乳
・大豆ペプチド組成物(大豆ペプチドと水分とを含む)
・糖類
・発酵助剤
・スターター(乳酸菌)
・イオン交換水(残部を構成する溶媒)
また、上記のうち、低脂肪豆乳、粉末豆乳、及び大豆ペプチド組成物の水分量と固形分の組成は、表1の通りであった。本実施例においては、表1に示される大豆ペプチド組成物中の水分を除いたものを大豆ペプチド由来の固形分とした。
【0023】
【0024】
[実施例1~5、及び比較例4]
下記表2に示す配合で、低脂肪豆乳、及び/又は、粉末豆乳、並びに大豆ペプチド組成物、糖類、発酵助剤、及びイオン交換水(残部)を混ぜあわせ、原料組成物を得た。得られた当該原料組成物に、当該原料組成物の3質量%又は10質量%に当たる量のスターター(乳酸菌)を添加(接種)して、発酵原料を作製し、この発酵原料を表2に示す条件で乳酸発酵させて、サンプルを得た。
[参考例1、及び比較例1~3]
下記表2に示す配合で、低脂肪豆乳、粉末豆乳、糖類、発酵助剤、及びイオン交換水(残部)を混ぜあわせ、原料組成物を得た。この原料組成物にスターター(乳酸菌)を添加して、発酵原料を得た。得られた発酵原料を下記表2に示す条件で乳酸発酵させて、サンプルを得た。
なお、表2に示す、スターター濃度、全大豆固形分、及び大豆ペプチド由来の大豆固形分は、前記発酵原料に基づく数値である。
【0025】
【0026】
ここで、表2に示す全大豆固形分(質量%)、大豆ペプチド組成物由来の大豆固形分(質量%)、及び大豆ペプチド組成物由来の大豆固形分/全大豆固形分(質量比率)(%)は、乳酸菌発酵を行う直前の発酵原料の固形分に基づく値である。
また、実施例1~5、参考例1、及び比較例1~4における乳酸菌発酵は、全て37℃で行った。但し、乳酸菌発酵の終期をサンプルに含まれる乳酸菌が対数増殖の後、定常期になった時にしたため、表2に示すように、各実施例、参考例1、及び各比較例で発酵時間は異なった(18時間から24時間)。乳酸菌発酵の具合は、常法に従い、乳酸酸度及びpHを測定して確認した。
【0027】
<カードの評価>
実施例1~5、参考例1、及び比較例1~4で得らえた乳酸菌発酵後の各サンプルをレードルですくい、カード固さを確認した(
図1の検討1参照)。また、当該各サンプル50mlを80メッシュで篩にかけ、メッシュ上に残るカード性状を確認した(
図1の検討2参照)。
発酵に習熟した3名のパネリストによって、発酵後の各サンプルにおけるカードの固さや形状を目視で、以下の基準で評価を行い、最も人数の多かった評価を採用した(
図1も合わせて参照)。
・カード固さの評価基準
+ :ほぼ生成しない
++ :少し生成する
+++:生成し固い
【0028】
<乳酸酸度の測定>
200ml三角フラスコに対して5~15gの実施例1~5、参考例1、及び比較例1~4で得らえた乳酸菌発酵後の各サンプルを正確に秤量し、水を用いて適宜希釈した後、上記試料に対して1%フェノールフタレイン指示薬を数滴加えて撹拌した。次いで、三角フラスコ内のサンプル溶液をマグネティックスターラ―で撹拌しながら、25mLビューレットに入れた0.1Mの水酸化ナトリウムを上記サンプル溶液に添加しながら滴定試験を実施した。なお、滴定試験の終点は、三角フラスコ内のサンプル溶液が30秒間赤色を持続した点とした。上記方法で行った滴定試験結果に基づき、各サンプルの乳酸酸度を次式によって算出した。
乳酸酸度(質量%)=A×f×100/W×0.0090
上記式において、Aは、0.1M水酸化ナトリウム溶液の滴定量(mL)を示し、fは0.1M水酸化ナトリウム溶液の力価を示し、Wはサンプルの質量(g)を示す。また、上記式において乗算している「0.0090」という値は、1mLの0.1M水酸化ナトリウム溶液に相当する乳酸の質量(g)を指す。
上記酸度は、乳酸菌発酵の終期の目安となりうる。
【0029】
【0030】
比較例1~3の結果から、全大豆固形分が4質量%以上で、大豆ペプチドを豆乳原料に混合させない場合、発酵後のサンプルはカードを多量に形成し、かつ、カードが固いことが確認された。また、比較例4の結果から、全大豆固形分の量が7質量%以上である場合には、ある程度の大豆ペプチドを発酵原料に混合させたとしても、発酵後のサンプルはカードを多量に形成し、かつ、カードが固いことが確認された。なお、参考例1の結果から、全大豆固形分が4質量%以下では、本発明の課題が生じにくいことが確認された。
一方で、実施例1~3の結果から、全大豆固形分が4質量%以上7質量%未満である場合には、発酵原料にある程度の大豆ペプチドを混合させることで、発酵後のサンプルはカードをほとんど形成しないことが確認された。また、実施例4の結果から、発酵原料に粉末豆乳を含まない場合に、発酵原料にある程度の大豆ペプチドを混合させてもカードを少し形成することが示唆されたが、実施例4の発酵後のサンプルのカードは柔らかいものであったため、ハンドリングを困難にするものとは言えなかった。また、実施例5の結果から、全大豆固形分の量が7質量%以上である場合には、多量の大豆ペプチドを発酵原料に混合させることで発酵後のサンプルはカードをほとんど形成しないことが確認された。