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特許7467206映像管理支援システムおよび映像管理支援方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】映像管理支援システムおよび映像管理支援方法
(51)【国際特許分類】
   H04N 7/18 20060101AFI20240408BHJP
   H04N 5/77 20060101ALI20240408BHJP
   H04N 5/92 20060101ALI20240408BHJP
   G06Q 10/20 20230101ALI20240408BHJP
【FI】
H04N7/18 D
H04N7/18 U
H04N5/77
H04N5/92 010
G06Q10/20
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020067581
(22)【出願日】2020-04-03
(65)【公開番号】P2021164135
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柏瀬 翔一
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 健司
(72)【発明者】
【氏名】菱沼 朋美
【審査官】佐野 潤一
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-032436(JP,A)
【文献】特開2016-018463(JP,A)
【文献】国際公開第2020/021858(WO,A1)
【文献】特開2016-012168(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 7/18
H04N 23/60
H04N 5/77
H04N 5/92
G06Q 10/20
G06T 1/00
G06T 7/00
G08B 13/00-31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者が所持する移動可能な端末に搭載され、映像を撮影するカメラと、
前記カメラによる前記映像の撮影時の位置を特定可能な位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記カメラによる前記映像の撮影時の方向を特定可能な方向情報を取得する方向情報取得部と、
前記カメラによる前記映像の撮影時の設定を特定可能な設定情報を取得する設定情報取得部と、
前記位置情報と前記方向情報と前記設定情報とを含む撮影情報を前記映像に対応付けて記録する撮影情報記録部と、
新たに撮影を行うときに、過去の撮影時に取得した前記撮影情報に基づいて前記映像の撮影時の位置および方向を指定する指定情報を出力する指定情報出力部と、
を備え、
前記指定情報出力部は、前記指定情報としての、前記映像の撮影時の位置および方向を指定するARオブジェクトを生成し、前記ARオブジェクトを前記端末に搭載されたディスプレイに表示するものであり、
前記ARオブジェクトは、前記端末の形状を成しており、かつ前記映像の撮影時の位置で空中に浮いているように前記ディスプレイに表示される、
映像管理支援システム。
【請求項2】
前記設定情報は、
前記カメラによる前記映像の撮影時の絞り値を特定可能な絞り値情報と、
前記カメラによる前記映像の撮影時のシャッタースピードを特定可能なシャッタースピード情報と、
前記カメラによる前記映像の撮影時のISO感度を特定可能なISO感度情報と、
前記カメラによる前記映像の撮影時の画角を特定可能な画角情報と、
前記カメラによる前記映像の撮影時の倍率を特定可能な倍率情報と、
の少なくともいずれかを含む、
請求項1に記載の映像管理支援システム。
【請求項3】
前記カメラによる撮影の対象となる対象部分の前記撮影情報が記憶された撮影情報データベースを備える、
請求項1または請求項2に記載の映像管理支援システム。
【請求項4】
前記撮影情報データベースに記憶された前記位置情報に基づいて前記映像の撮影時の位置まで前記端末の所持者を誘導する誘導情報を出力する誘導情報出力部を備える、
請求項3に記載の映像管理支援システム。
【請求項5】
前記撮影情報データベースに記憶された前記設定情報に基づいて前記映像の撮影時に前記カメラの設定を調整する設定調整部を備える、
請求項3または請求項4に記載の映像管理支援システム。
【請求項6】
前記カメラによる前記映像の撮影時の時間を特定可能な時間情報を取得する時間情報取得部を備える、
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の映像管理支援システム。
【請求項7】
前記撮影情報が対応付けられた前記映像を、前記カメラによる撮影の対象となる対象部分を個々に識別可能な対象情報に対応付けて管理する映像情報管理部を備える、
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の映像管理支援システム。
【請求項8】
点検項目リストに登録されている個々の点検項目のそれぞれに対応付けて前記映像の撮影が実行されたか否かを記録する点検項目記録部と、
前記点検項目のそれぞれについて前記映像の撮影が実行されたか否かを示す完了情報を前記端末に搭載された前記ディスプレイに表示する点検項目表示部と、
を備える、
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の映像管理支援システム。
【請求項9】
前記カメラで撮影された前記映像と同一の前記撮影情報が対応付けられた過去に撮影された前記映像を抽出する過去映像抽出部と、
現在の前記映像と過去の前記映像とを比較して差分の有無を判定する映像差分判定部と、
現在の前記映像と過去の前記映像との間に差分が有ると判定された場合に前記端末に差分の箇所を表示する映像差分表示部と、
を備える、
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の映像管理支援システム。
【請求項10】
前記端末に搭載されたデバイスにより得られた情報に基づいて前記端末の位置および姿勢を推定し、かつ前記端末の周辺環境の情報を含む環境地図の作成を行う位置姿勢推定部を備え、
前記環境地図に基づいて、前記位置情報取得部が前記映像の撮影時の位置の取得を行い、かつ前記方向情報取得部が前記映像の撮影時の方向の取得を行う、
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の映像管理支援システム。
【請求項11】
撮影場所に対応して予め設けられたマーカを前記カメラで撮影して3次元空間の基準点を取得する基準取得部を備え、
前記基準点に基づいて、前記位置情報取得部が前記映像の撮影時の位置の取得を行い、かつ前記方向情報取得部が前記映像の撮影時の方向の取得を行う、
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の映像管理支援システム。
【請求項12】
前記位置情報に基づいて前記カメラによる前記映像の撮影時の位置を指定する位置指定部と、
前記方向情報に基づいて前記カメラによる前記映像の撮影時の方向を指定する方向指定部と、
を備える、
請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の映像管理支援システム。
【請求項13】
作業者が所持する移動可能な端末に搭載され、映像を撮影するカメラと、
予め取得した位置情報に基づいて前記カメラによる前記映像の撮影時の位置を指定する位置指定部と、
予め取得した方向情報に基づいて前記カメラによる前記映像の撮影時の方向を指定する方向指定部と、
前記位置情報および前記方向情報に基づいて前記映像の撮影時の位置および方向を指定する指定情報を出力する指定情報出力部と、
を備え、
前記指定情報出力部は、前記指定情報としての、前記映像の撮影時の位置および方向を指定するARオブジェクトを生成し、前記ARオブジェクトを前記端末に搭載されたディスプレイに表示するものであり、
前記ARオブジェクトは、前記端末の形状を成しており、かつ前記映像の撮影時の位置で空中に浮いているように前記ディスプレイに表示される、
映像管理支援システム。
【請求項14】
作業者が所持する移動可能な端末に搭載されたカメラにより映像を撮影するステップと、
前記カメラによる前記映像の撮影時の位置を特定可能な位置情報を取得するステップと、
前記カメラによる前記映像の撮影時の方向を特定可能な方向情報を取得するステップと、
前記カメラによる前記映像の撮影時の設定を特定可能な設定情報を取得するステップと、
前記位置情報と前記方向情報と前記設定情報とを含む撮影情報を前記映像に対応付けて記録するステップと、
新たに撮影を行うときに、過去の撮影時に取得した前記撮影情報に基づいて前記映像の撮影時の位置および方向を指定する指定情報を出力するステップと、
を含
前記指定情報を出力するステップで、前記指定情報としての、前記映像の撮影時の位置および方向を指定するARオブジェクトを生成し、前記ARオブジェクトを前記端末に搭載されたディスプレイに表示し、
前記ARオブジェクトは、前記端末の形状を成しており、かつ前記映像の撮影時の位置で空中に浮いているように前記ディスプレイに表示される、
映像管理支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、映像管理支援技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、施設に設けられる設備の点検において、設備の外観検査による異常の有無の確認をしている。例えば、カメラを用いて設備の外観の映像を記録しておくことは、過去の外観検査結果との比較が容易になるため有効である。しかし、設備の数または検査項目が非常に多い場合には、設備ごとまたは検査項目ごとに検査結果と記録した映像を対応付ける必要がある。このような映像の管理は、煩雑となるばかりか、その負担も大きく、後の確認の際の混乱の原因にもなる。そこで、現場の映像とともに被写体を撮影した時間、位置、方向、部位を記録し、現場の配置図またはCADに対応付けて管理することで、撮影した被写体の場所および部位を具体的に表示する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平8-88825号公報
【文献】国際公開第2018/105117号公報
【文献】特許第6498369号公報
【文献】特開2019-159523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現場の映像とともに被写体を撮影した時間、位置、方向、部位を記録することは有効であるが、撮影する度に被写体の映り方にばらつきが生じることがある。そのため、これらの映像を互いに比較して被写体の外観検査をしたときに、被写体に生じている外観の変化を見落としてしまうおそれがある。
【0005】
本発明の実施形態は、このような事情を考慮してなされたもので、記録した映像を用いて外観検査を行う際に、検査対象に生じている外観の変化を見落とさないようにできる映像管理支援技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態に係る映像管理支援システムは、作業者が所持する移動可能な端末に搭載され、映像を撮影するカメラと、前記カメラによる前記映像の撮影時の位置を特定可能な位置情報を取得する位置情報取得部と、前記カメラによる前記映像の撮影時の方向を特定可能な方向情報を取得する方向情報取得部と、前記カメラによる前記映像の撮影時の設定を特定可能な設定情報を取得する設定情報取得部と、前記位置情報と前記方向情報と前記設定情報とを含む撮影情報を前記映像に対応付けて記録する撮影情報記録部と、新たに撮影を行うときに、過去の撮影時に取得した前記撮影情報に基づいて前記映像の撮影時の位置および方向を指定する指定情報を出力する指定情報出力部と、を備え、前記指定情報出力部は、前記指定情報としての、前記映像の撮影時の位置および方向を指定するARオブジェクトを生成し、前記ARオブジェクトを前記端末に搭載されたディスプレイに表示するものであり、前記ARオブジェクトは、前記端末の形状を成しており、かつ前記映像の撮影時の位置で空中に浮いているように前記ディスプレイに表示される
【発明の効果】
【0007】
本発明の実施形態により、記録した映像を用いて外観検査を行う際に、検査対象に生じている外観の変化を見落とさないようにできる映像管理支援技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】映像管理支援システムを示すシステム構成図。
図2】映像管理支援システムが用いられる作業現場を示す平面図。
図3】現場端末を用いて撮影している状態を示す斜視図。
図4】映像管理支援システムを示すブロック図。
図5】端末制御部を示すブロック図。
図6】基準点管理テーブルを示す説明図。
図7】撮影管理テーブルを示す説明図。
図8】撮影情報の記録態様を示す説明図。
図9】管理コンピュータに表示されるレイアウト図を示す画面図。
図10】現場端末に表示されるナビゲーション画面を示す画面図。
図11】現場端末に表示されるARオブジェクトを示す画面図。
図12】現場端末に表示されるAR枠を示す画面図。
図13】現場端末に表示される映像比較結果を示す画面図。
図14】現場端末に表示される点検項目リストを示す画面図。
図15】管理コンピュータが実行する管理制御処理を示すフローチャート。
図16】管理コンピュータが実行する映像情報管理処理を示すフローチャート。
図17】現場端末が実行する端末制御処理を示すフローチャート。
図18】現場端末が実行するマーカ認識処理を示すフローチャート。
図19】現場端末が実行する自己位置推定処理を示すフローチャート。
図20】現場端末が実行する指定情報出力処理を示すフローチャート。
図21】現場端末が実行する撮影制御処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、映像管理支援システムおよび映像管理支援方法の実施形態について詳細に説明する。
【0010】
図1の符号1は、本実施形態の映像管理支援システムである。この映像管理支援システム1は、点検作業を行う作業現場に居る作業者Wが所持する現場端末2と、作業者Wの監視または支援を行う管理者Mが扱う管理コンピュータ3とを備える。
【0011】
本実施形態の作業現場としては、発電プラント、化学プラント、工場などがある。これらの作業現場には、点検の対象となっている複数の対象機器4(図3参照)が設置されている。これらの対象機器4が、現場端末2を用いた撮影の対象となる対象部分となっている。
【0012】
なお、本実施形態では、撮影の対象となっている対象部分としての対象機器4を例示しているが、その他の態様であっても良い。例えば、対象部分としての対象機器4は、計器でも良いし、操作スイッチでも良いし、バルブでも良いし、配管でも良いし、装置でも良いし、センサでも良い。
【0013】
また、本実施形態では、対象部分として対象機器4を例示しているが、対象部分は建物の所定の部分、例えば、窓、扉、壁、天井、床、通路、壁の開口部、室内空間の一部の範囲であっても良い。また、巨大な1つの装置の一部が対象部分であっても良い。さらに、1つの装置の複数箇所が対象部分であっても良い。
【0014】
映像管理支援システム1では、作業現場における対象機器4が設置された位置が予め特定されているものとする。そのため、作業現場において、常に同じ撮影位置および同じカメラアングルで対象機器4の撮影を行えば、対象機器4の映り方にばらつきが生じることがない。そして、定期点検の度に同じ映り方の対象機器4の映像を取得し、過去の定期点検において取得した映像と見比べることで、対象機器4に生じている外観の変化を見落とさないようにできる。
【0015】
なお、作業者Wは、現場端末2を用いて作業現場で対象機器4の撮影を行い、その映像が管理コンピュータ3に送信される。本実施形態の映像は、いわゆる画像であって、動画像または静止画像のいずれでも良い。また、「映像ファイル」には、静止画像を含むファイルのみならず、動画像を含むファイルが含まれるものとして説明する。
【0016】
なお、対象機器4の外観検査は、管理者Mが管理コンピュータ3に記憶された映像に基づいて行う。また、作業者Wが作業現場で対象機器4の外観検査を行っても良い。また、作業者Wが所持する現場端末2から管理コンピュータ3にリアルタイムで送られてくる映像に基づいて、管理者Mが作業者Wとともに対象機器4の外観検査を行っても良い。
【0017】
本実施形態では、過去に撮影された映像と同じ映り方の映像を撮影し、過去の映像と現在の映像とを比較することで対象機器4の外観検査を行う。この外観検査を行う際には、同一位置および同一方向から撮影した映像同士を比較することが望ましい。
【0018】
ここで、過去に撮影された映像と同じ映り方の映像を撮影するために、過去の撮影時の撮影位置と撮影方向などの撮影態様を特定可能な撮影情報を管理コンピュータ3が記憶している。そして、作業者Wが新たに撮影を行う際に、管理コンピュータ3が記憶している撮影情報に基づいて、過去の撮影態様と同一の撮影態様で撮影が行えるように、現場端末2の位置およびカメラアングルを指定する(図11および図12参照)。このようにすれば、過去に撮影された映像と、同一位置および同一方向から撮影した映像を撮影することができる。そのため、過去の映像と現在の映像とを比較して外観検査を行う際に、検査対象に生じている外観の変化を見落とさないようにできる。
【0019】
なお、現場端末2は、オフライン環境でも利用できる。例えば、過去の映像または撮影情報を、予め現場端末2に記憶させるようにし、オフライン環境で現場端末2のみで外観検査を行うようにしても良い。
【0020】
作業者Wが扱う移動可能な現場端末2は、例えば、ディスプレイ6(図4参照)を備えるスマートフォン7で構成されている。このスマートフォン7には、現場の状況を撮影するためのカメラ8(図4参照)が搭載されている。なお、スマートフォン7のディスプレイ6は、画像の表示を行う装置であるとともに、入力操作が行われる装置としてのタッチパネルを兼ねる。本実施形態の入力操作には、タッチパネルを用いたタッチ操作が含まれる。
【0021】
また、他の作業者Wが扱う異なるタイプの現場端末2は、この作業者Wが装着する透過型ヘッドマウントディスプレイ9を備えるウェアラブルコンピュータ10(スマートグラス)で構成されている。このウェアラブルコンピュータ10は、透過型ヘッドマウントディスプレイ9と分離した構造でも良い。このウェアラブルコンピュータ10にも現場の状況を撮影するカメラが搭載されている。
【0022】
なお、現場端末2は、タブレット型PCまたはノートPCで構成されても良い。その他、撮影機能、通話機能、通信機能を持つ機器で構成されるものであり、それぞれの機能を持つ複数の機器で構成されるものでも良い。
【0023】
スマートフォン7およびウェアラブルコンピュータ10のシステム構成は、ほぼ同一であるため、以下の説明では、スマートフォンで構成される現場端末2を例示する。なお、本実施形態は、ウェアラブルコンピュータ10にも適用可能である。
【0024】
管理者Mが扱う管理コンピュータ3は、例えば、デスクトップPC、ノートPC、またはタブレット型PCなどの所定のコンピュータで構成される。本実施形態では、デスクトップPCを例示する。管理コンピュータ3は、コンピュータ本体11と、管理者Mが視認を行うディスプレイ12と、現場端末2と無線通信を行う無線通信装置13を備える。ここでは、無線通信を行う例を記載しているが、有線での通信とすることも可能である。なお、ディスプレイ12はコンピュータ本体11と別体であっても良いし、一体であっても良い。
【0025】
本実施形態において、現場端末2は、自位置および自姿勢を特定することができる。例えば、GPS(Global Positioning System)などの位置測定システムを有していても良い。
【0026】
また、現場端末2の自位置および自姿勢の変位の算出に用いる位置推定技術には、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)、SfM(Structure from Motion)などの公知の技術を用いることができる。
【0027】
本実施形態の現場端末2は、VSLAM(Visual Simultaneous Localization and Mapping)を用いて、現場端末2で撮影された映像に基づいて、その位置および姿勢の変位を算出する。つまり、現場端末2は、例えば、屋内などのGPSが使用できない場所でも自己位置を推定することができる。
【0028】
VSLAM技術では、現場端末2のカメラ8およびセンサなどの所定のデバイスで取得した情報を用いて、周囲の物体の特徴点を抽出する。そして、カメラ8で撮影した動映像を解析し、物体の特徴点(例えば、角などの物体の部分)をリアルタイムに追跡する。そして、現場端末2の位置または姿勢の3次元情報を推定する。
【0029】
図2に示すように、作業者Wが作業を行う作業現場として所定の建物14を例示する。例えば、発電プラントにおける所定の区画に設けられた建物14が作業現場となっている。この作業現場は、壁で囲まれた複数の部屋15がある。例えば、これら複数の部屋15のうち、1つの部屋15が点検作業を行う作業現場として予め設定される。つまり、この部屋15が、点検エリア16として予め設定される。
【0030】
建物14の出入口17は、現場端末2の位置を推定する基準となる基準点として設定される。この建物14の出入口17には、マーカ5が配置される。また、それぞれの部屋15の出入口18も、現場端末2の位置を推定する基準となる基準点として設定される。これらの部屋15の出入口18にも、マーカ5が配置される。なお、マーカ5は、出入口17,18の近傍の壁面に設けられても良いし、出入口17,18の扉面に設けられても良い。
【0031】
作業者Wは、作業を開始するときに、まず、建物14の出入口17でマーカ5を撮影する。ここで、現場端末2は、マーカ5が写った映像に基づいて、自位置および自姿勢を推定する。なお、建物14の出入口17でマーカ5の撮影を開始し、移動中も撮影を継続することで、基準点から現場端末2が移動した移動経路19を推定できる。
【0032】
なお、マーカ5は、映像認識が可能な図形である。例えば、マトリックス型2次元コード、所謂QRコード(登録商標)をマーカ5として用いる。また、建物14または建物14に設置されている対象機器4などの場所を特定できる情報をマーカとして用いても良い。例えば、出入口17の銘板、部屋15の銘板、対象機器4の機器番号または名称を記載した銘板などをマーカとして用いても良い。また、マーカ5には、対応するマーカ5を個々に識別可能なマーカIDを示す情報が含まれる。このようにすれば、複数のマーカ5をそれぞれ識別することができる。
【0033】
管理コンピュータ3には、例えば、それぞれの部屋15の出入口18に設けられたマーカ5のマーカIDに対応して対象機器4に関する情報が登録される。なお、部屋15の出入口18のマーカ5を撮影して基準点を取得しなければ、部屋15の内部で映像の撮影を行えないように制御しても良い。
【0034】
作業者Wは、部屋15の出入口18に到着したら、まず、現場端末2でマーカ5を読み取る。そして、マーカ5に基づいて取得される基準点の座標と、部屋15に対応して予め設定されている基準点の座標とを一致させる。そして、現場端末2で映像の保存をした場合に、撮影時の現場端末2の位置を特定可能な位置情報と、撮影時にカメラ8が向いている方向を特定可能な方向情報とを、基準点の座標に基づいて取得する。なお、読み込んだマーカ5の座標と現場端末2との相対位置を特定し、現場端末の撮影時の位置情報と方向情報とを取得しても良い。
【0035】
また、現場端末2で映像の保存をした場合に、撮影時のカメラ8の設定情報を取得する。設定情報は、絞り値情報とシャッタースピード情報とISO感度情報と画角情報と倍率情報との少なくともいずれかを含む。ここで、絞り値情報は、カメラ8による映像の撮影時の絞り値を特定可能な情報である。シャッタースピード情報は、カメラ8による映像の撮影時のシャッタースピードを特定可能な情報である。ISO感度情報は、カメラ8による映像の撮影時のISO感度(明度)を特定可能な情報である。画角情報は、カメラ8による映像の撮影時の画角を特定可能な情報である。倍率情報は、カメラ8による映像の撮影時の倍率(拡大率)を特定可能な情報である。
【0036】
マーカ5を設ける態様としては、例えば、マーカ5が印刷されたパネルを作成し、このパネルを、作業開始前に作業現場の壁面などに配置しておく。なお、壁面などにマーカ5を直接印刷しても良い。
【0037】
図2に示すように、点検エリア16において、作業者Wが現場端末2を用いて対象機器(図3参照)の撮影を行う。このときに撮影された映像は、映像ファイルとして現場端末2に記憶される。なお、映像ファイルは、現場端末2を用いた撮影態様を特定可能な情報が対応付けられた状態で記憶される。例えば、映像ファイルは、位置情報と方向情報と設定情報とを含む撮影情報(図8参照)が対応付けられた状態で記憶される。
【0038】
ここで、位置情報は、建物14またはマーカ5を基準とする3次元座標に基づいて特定される。方向情報は、撮影時の位置での水平面内の方位(ヨー角)と現場端末2のピッチ角、ロール角に基づいて求められる。
【0039】
また、現場端末2で撮影された映像を含む映像ファイルは、管理コンピュータ3に送信される。なお、管理コンピュータ3に対する映像の送信タイミングは、作業中であっても良いし、作業終了後であっても良い。
【0040】
本実施形態では、撮影情報が映像を含む映像ファイルの属性として記録される。このようにすれば、映像ファイルと撮影情報とを直接的に対応付けることができる。例えば、映像をExif(Exchangeable image file format)の形式で保存した場合には、そのプロパティ(属性)として撮影情報を記録することができる。映像ファイルを移動しても一緒に撮影情報も移動されるため、映像ファイルの管理が容易になる。
【0041】
例えば、図8に示すように、映像ファイルのプロパティには、ファイル名と端末IDとユーザIDと撮影日時(時間情報)と撮影IDと対象機器ID(対象情報)と基準点IDとマーカIDと位置情報(座標数値)と方向情報(角度数値)と絞り値情報とシャッタースピード情報とISO感度情報と画角情報(角度数値)と倍率情報とが記録される。なお、その他の情報を映像ファイルのプロパティに追記しても良い。
【0042】
また、新規の撮影態様で撮影された映像の場合には、プロパティに撮影IDが記録されない状態で、現場端末2から管理コンピュータ3に送信される。そして、管理コンピュータ3で新規な撮影IDが生成され、この撮影IDがプロパティに記録される。
【0043】
図8では、静止画像の映像ファイルのプロパティを例示している。ここで、ファイル名は、映像ファイルの名称である。端末IDは、複数の現場端末2を個々に識別可能な識別情報である。映像ファイルのプロパティには、作業現場で撮影に用いた現場端末2の端末IDが記録される。
【0044】
ユーザIDは、複数の作業者Wを個々に識別可能な識別情報である。なお、ユーザIDは、現場端末2にログインするときに使用するものであっても良いし、それぞれの作業者Wが所持するIDカードに登録されるものであっても良い。映像ファイルのプロパティには、作業現場で撮影を行った作業者WのユーザIDが記録される。
【0045】
撮影日時(時間情報)は、現場端末2で撮影を行った日付と時刻である。なお、動画像の映像ファイルの撮影日時は、録画の開始時でも良いし、録画の終了時でも良い。
【0046】
撮影IDは、現場端末2を用いた撮影態様を個々に識別可能な撮影態様識別情報である。1つの撮影IDは、1つの位置情報と1つの方向情報とに対応付けられる。カメラ8で取得した映像が静止画像である場合には、1つの撮影IDが対応付けられる。また、カメラ8で取得した映像が動画像である場合には、1フレームごとに1つの撮影IDが対応付けられる。例えば、動画像の撮影時にカメラ8が移動または動作している場合には、現場端末2の位置およびカメラ8の向きが変化するため、1つの映像ファイルに複数の撮影IDが対応付けられる。一方、動画像の撮影時にカメラ8が固定されている場合には、現場端末2の位置およびカメラ8の向きが変化することがないため、1つの映像ファイルに対応付けられる撮影IDが1つでも良い。なお、カメラ8で取得した映像が動画像である場合には、1フレームごとに絞り値情報とシャッタースピード情報とISO感度情報と画角情報と倍率情報とが対応付けられる。
【0047】
また、撮影情報は、予め規定された識別子として生成しても良い。識別子とは、例えば、所定の計算関数に撮影情報のそれぞれの値を入力すると、所定の数式として出力されるものである。そして、識別子に基づいて撮影情報を再現できるようにする。このようにすれば、撮影情報を識別子という規定化された態様で記録することができる。例えば、映像ファイルの属性に識別子を記録しても良い。
【0048】
また、識別子を映像に含ませる態様で記録しても良い。このようにすれば、映像そのものに撮影情報を含ませることができる。そのため、映像の管理が容易になる。なお、識別子を映像に含ませる態様とは、例えば、識別子をマトリックス型2次元コードとして生成し、この2次元コードを映像に合成する態様でも良い。また、識別子を電子透かしとして映像に含める態様でも良い。
【0049】
また、撮影情報が、映像を含む映像ファイルとは異なる記録ファイルに記録されても良い。例えば、映像ファイルと同一のファイル名を有する記録ファイルを生成し、この記録ファイルに撮影情報を記録しても良い。このようにすれば、撮影情報のデータ量が多くなる場合であっても、その記録を行うことができる。例えば、動画の場合には、撮影情報のデータ量が多くなるが、この場合でも撮影情報を記録することができる。
【0050】
なお、本実施形態では、ファイル名により映像ファイルと記録ファイルとを対応付けているが、その他の態様であっても良い。例えば、映像ファイルを特定可能な特定IDを生成し、この特定IDを記録ファイルに記録することで、映像ファイルと対応付けても良い。また、コンピュータのファイルシステムを用いて映像ファイルと記録ファイルとを対応付けても良い。
【0051】
図9に示すように、管理コンピュータ3は、ディスプレイ12に作業現場のレイアウト30(レイアウトを示す図面)を表示させる。このレイアウト30は、3次元CADに基づいて構成された作業現場の平面図である。レイアウト30には、撮影の対象となる対象機器4とその他の設置物31が表示されている。さらに、対象機器4を現場端末2で撮影したときの撮影位置を示すカメラアイコン32が表示されている。カメラアイコン32をマウスカーソル33でクリックすると、その撮影位置で撮影された映像34が表示される。なお、1つの撮影位置に対応して、複数の映像34が記憶される。それぞれの撮影日時を参照して、映像34同士を比較することで、対象機器4の外観の変化を把握することができる。また、作業現場のレイアウト30には、映像34の撮影をしたときの撮影方向(画角)を示すマーク75が表示される。
【0052】
本実施形態では、作業者Wが建物14の出入口17から作業現場となる部屋15まで移動する際に、現場端末2を用いてナビゲーションを行うことができる。例えば、作業者Wは、カメラ8を起動し、周囲を撮影しながら進行する。ここで、カメラ8で撮影された映像は、現場端末2のディスプレイ6に表示される。
【0053】
図10に示すように、現場端末2のディスプレイ6には、現場端末2の所持者としての作業者Wを誘導するための誘導情報としてのナビゲーション表示35が成される。作業者Wは、ナビゲーション表示35に従って進むことで、目的とする部屋15まで到達することができる。
【0054】
図11に示すように、作業者Wが対象機器4の近傍まで到達すると、現場端末2のディスプレイ6には、映像の撮影時の位置および方向を指定するARオブジェクト70が表示される。ARオブジェクト70は、例えば、現場端末2の形状と同一の形状を成している。そして、ARオブジェクト70は、適切な撮影位置で恰も空中に浮いているようにディスプレイ6に表示される。
【0055】
作業者Wは、その手に持っている現場端末2を、ARオブジェクト70の位置に合せるように移動させる。なお、現場端末2の向きもARオブジェクト70の向きに合せるようにする。
【0056】
本実施形態のARオブジェクト70は、現実の世界の物事に対して仮想の情報を付加するAR(Augmented Reality:拡張現実)技術を用いて生成される。なお、MR(Mixed Reality:複合現実)技術を用いても良い。
【0057】
AR技術とは、現実環境が映された映像における所定の物体(例えば、対象機器4)の位置などに対応して、3Dモデル、テキストなどの所定のコンテンツ(指定情報)を表示させる技術である。このAR技術において、端末が備えるカメラ8により撮影された映像に基づいてコンテンツの提供を行うものはビジョンベースAR(画像認識型AR)と呼ばれる。また、加速度センサ、角速度センサ、GNSS(Global Navigation Satellite System)などの端末の位置情報および姿勢情報に基づいてコンテンツの提供を行うものはロケーションARと呼ばれる。
【0058】
本実施形態で1は、AR技術(拡張現実技術)およびVSLAM技術(位置推定技術)を活用して、作業現場での点検または記録などの作業の効率化(負荷軽減)と、ヒューマンエラーの発生を機械化により低減させる。
【0059】
図12に示すように、現場端末2の位置とARオブジェクト70(指定情報)の位置とが一致すると、現場端末2のディスプレイ6には、適切なカメラアングルを示すAR枠71(指定情報)と、ディスプレイ6の中央に固定的に表示される照準枠72とが表示される。作業者Wは、照準枠72とAR枠71とを一致させるようにカメラ8を操作する。
【0060】
また、現場端末2のディスプレイ6には、AR枠71と照準枠72の差分を数値で示す補正情報76が表示される。例えば、この補正情報76には、適切な撮影方向の角度の差、適切な撮影位置までの距離、対象機器4までの距離などが含まれる。このようにすれば、座標と方位との差を数値で表示し、補正量を可視化することができる。なお、カメラ8の画角および倍率は、照準枠72とAR枠71とを一致された時点で過去の撮影情報を基にして自動的に調整される。また、カメラ8の画角および倍率は、作業者Wの手動操作により調整されても良い。
【0061】
また、AR枠71の表示とともに、カメラ8の画角と倍率と絞り値とシャッタースピードとISO感度などの設定を指定する表示(指定情報の表示)を行っても良い。なお、画角と倍率と絞り値とシャッタースピードとISO感度の調整は、自動的に行われても良いし、作業者Wの手動操作により行われても良い。
【0062】
撮影時のISO感度は、過去の映像に対応付けて記録されているISO感度に基づいて調整される。このようにすれば、屋外など現場の明度が異なる場所においても撮影が可能となる。また、時間帯または周囲の明るさに応じて撮影時のISO感度を調整しても良い。
【0063】
ARオブジェクト70およびAR枠71は、過去に同じ位置で対象機器4が撮影されたときに現場端末2で取得された各種情報に基づいて表示される。そのため、作業者Wは、過去に撮影されたときと同じ撮影位置で対象機器4の映像を撮影することができる。つまり、同一位置および同一方向から撮影した映像を複数回に亘って取得することができる。
【0064】
このようにすれば、撮影時の位置と方向を指定することで、映像を撮影する度に対象機器4(被写体)の映り方にばらつきが生じてしまうことを抑制できる。そのため、現在と過去の互いの映像を比較する外観検査を行うときに、検査対象に生じている外観の変化を見落とさないようにできる。
【0065】
また、ARオブジェクト70およびAR枠71により撮影態様を指定するのみならず、他の手法で撮影態様を指定しても良い。例えば、カメラ8が適切な撮影位置にあること、または適切な位置にないことを、現場端末2が振動することで作業者Wに知らせても良いし、報知音を出力することで作業者Wに知らせても良い。
【0066】
なお、ARオブジェクト70およびAR枠71により誘導され、現場端末2が適切な撮影位置および撮影方向になったときに、自動的に撮影(映像の記録)が行われても良い。また、手ブレまたは位置ずれが生じないように、自動的に調整して撮影が行われても良い。
【0067】
現場端末2で対象機器4の撮影が行われると、対象機器4の映像が管理コンピュータ3に送信される。管理コンピュータ3では、現在撮影されたばかりの映像と同一の撮影態様で撮影された過去の対象機器4の映像を抽出する。そして、現在の映像と過去の映像とを比較して差分の有無を判定する。さらに、管理コンピュータ3は、映像の比較結果を現場端末2に送信する。比較結果には、差分が有る部分、つまり、対象機器4で詳細な点検が必要と思われる正常でない部分を示す情報が含まれる。
【0068】
なお、オフライン環境で現場端末2を使用する場合には、過去の映像を予め現場端末2に記憶させるようにする。そして、現場端末2で対象機器4の撮影が行われると、現在撮影されたばかりの映像と同一の撮影態様で撮影された過去の対象機器4の映像を抽出する。そして、現在の映像と過去の映像とを比較して差分の有無を判定する。
【0069】
図13に示すように、現場端末2のディスプレイ6には、過去の映像34が表示される。さらに、現在撮影された対象機器4において正常でない部分を示す指示表示73が成される。なお、過去にトラブルが有った箇所を指示表示73で示しても良い。
【0070】
作業者Wは、この指示表示73に基づいて、対象機器4で詳細な点検が必要な部分を把握することができる。このようにすれば、点検を行う作業者Wが映像に映っている対象機器4の変化を撮影現場で知ることができ、即座にメンテナンスなどの対応を行うことができる。なお、管理コンピュータ3のディスプレイ12に表示される映像で指示表示73が成されても良い。管理者Mは、この指示表示73に基づいて、対象機器4で詳細な点検が必要な部分を把握することができる。
【0071】
例えば、作業者Wは、瞬時に錆、ひび、液漏れなどの対象機器4の外観変化を認識することができる。さらに、過去のトラブル情報に基づいて、対象機器4に対して注意深く点検すべき箇所を指示表示73により作業者Wに知らせても良い。
【0072】
図14に示すように、現場端末2のディスプレイ6には、点検項目リスト74が表示される。この点検項目リスト74には、撮影が必要な複数の点検項目と、それぞれの点検項目撮影の完了の有無の表示が成される。それぞれの点検項目は、対象機器4の撮影態様に対応付けられている。撮影が完了していない点検項目には「未完了」の表示が成されている。撮影が完了した点検項目には「撮影完了」の表示が成される。このようにすれば、点検を行う作業者Wが点検項目リスト74に沿って撮影が完了したか否かを把握することができるため、撮り忘れ、または点検漏れを抑制することができる。
【0073】
点検項目リスト74は、現場端末2から送信される完了情報に基づいて、管理コンピュータ3で更新される。そして、管理コンピュータ3から現場端末2に点検項目リスト74が送信され、現場端末2のディスプレイ6に表示される。なお、管理コンピュータ3のディスプレイ12に点検項目リスト74を表示しても良い。このようにすれば、管理者Mが点検漏れを把握することができる。
【0074】
次に、映像管理支援システム1のシステム構成を図4から図5示すブロック図を参照して説明する。
【0075】
本実施形態の現場端末2および管理コンピュータ3は、CPU、ROM、RAM、HDDなどのハードウェア資源を有し、CPUが各種プログラムを実行することで、ソフトウェアによる情報処理がハードウェア資源を用いて実現されるコンピュータで構成される。さらに、本実施形態の映像管理支援方法は、プログラムをコンピュータに実行させることで実現される。
【0076】
図4に示すように、現場端末2は、カメラ8と加速度センサ22と角速度センサ23と3次元測定センサ24とディスプレイ6と操作入力部25と通信部26と映像記憶部27と端末制御部28とを備える。
【0077】
カメラ8は、現場端末2に搭載され、現場端末2の周辺の物体を可視光により撮影する。例えば、カメラ8は、レンズ付きの撮像素子を備えている。なお、カメラ8で撮影された映像は、端末制御部28に入力される。
【0078】
加速度センサ22は、現場端末2に搭載され、この現場端末2が移動したときに生じる加速度を検出する。また、この加速度センサ22により重力加速度の検出も行える。例えば、3軸の加速度センサ22とすることで、現場端末2の姿勢に応じた各軸の加速度を検出することが可能となる。なお、この加速度センサ22で検出された加速度の値を示す加速度情報は、端末制御部28に入力される。
【0079】
角速度センサ23(ジャイロセンサ)は、現場端末2に搭載され、この現場端末2の筐体の姿勢が変化したときに生じる角速度を検出する。この角速度センサ23の値と加速度センサ22の値とを合わせて、この現場端末2の筐体の姿勢を特定することで、カメラ8の撮影方向を把握することができる。なお、この角速度センサ23で検出された角速度の値を示す角速度情報は、端末制御部28に入力される。
【0080】
撮影方向は、例えば、現場端末2の水平方向および垂直方向の傾きの測定に基づいて取得される。また、現場端末2の筐体に向きが異なる2つ以上のカメラ8が搭載されている場合には、撮影に使用するカメラ8の筐体における位置および向きを設定し、このカメラ8の撮影方向を取得する。
【0081】
なお、慣性センサ(3軸加速度センサと3軸角速度センサ)と3軸地磁気センサを組み合わせた9軸センサであるモーションセンサを現場端末2に搭載しても良い。
【0082】
3次元測定センサ24は、現場端末2の周辺の物体の3次元形状を測定する。3次元測定センサ24としては、例えば、深度センサが用いられる。なお、3次元測定センサ24として赤外線センサまたはLiDARなどのレーザセンサを用いても良い。
【0083】
3次元測定センサ24は、現場端末2の筐体において、カメラ8が設けられている背面側に設けられる。この3次元測定センサ24は、例えば、物体にレーザを投光してその反射光を受光素子により受光することで、現場端末2から物体までの距離を測定することができる。本実施形態では、3次元測定センサ24は、投光パルスに対する受光パルスの遅れ時間を距離に換算するToF(Time of Flight)方式を用いて、現場端末2から周辺の物体までの距離を測定して3次元点群化する。なお、カメラ8による撮像方向と3次元測定センサ24による測定方向は一致している。
【0084】
ディスプレイ6は、カメラ8で撮影された映像を表示する。なお、カメラ8が、レンズ付きの2つの撮像素子を備えるステレオカメラである場合には、いずれか一方の撮像素子で撮影した映像を表示すれば良い。
【0085】
操作入力部25は、作業者Wにより操作され、所定の情報の入力操作が行えるようにしたデバイスである。本実施形態では、操作入力部25がディスプレイ6と一体的に設けられるタッチパネルで構成される。なお、現場端末2としてウェアラブルコンピュータ10を用いる場合は、操作入力部25が作業者Wの手元に配置され、入力操作が適宜可能となっている。
【0086】
通信部26は、通信回線を介して管理コンピュータ3と通信を行う。本実施形態の通信部26には、ネットワーク機器、例えば、無線LANのアンテナが含まれる。その他にも、LANケーブルまたはUSBケーブルを用いて通信を行う場合もある。この通信部26を介して現場端末2は、管理コンピュータ3にアクセスする。
【0087】
映像記憶部27は、カメラ8で撮影した映像を含む映像ファイルを記憶する。なお、映像記憶部27に記憶される映像は、動画像であっても良いし、静止画像であっても良い。また、映像ファイルとともに、映像ファイルに対応付けられた記録ファイルを記憶しても良い。さらに、映像ファイルに関連する所定のデータを記憶しても良い。
【0088】
なお、映像記憶部27には、対象機器4の過去の映像を記憶させても良い。例えば、点検作業の開始前に、管理コンピュータ3から対象機器4の過去の映像をダウンロードし、映像記憶部27に記憶させても良い。そして、作業者Wは、過去の映像と現在の対象機器4の状態とを見比べて外観検査を行うようにしても良い。
【0089】
図5に示すように、端末制御部28は、現場端末2を統括的に制御する。この端末制御部28は、位置情報取得部50と方向情報取得部51と設定情報取得部52と時間情報取得部53と位置姿勢推定部54と基準取得部55と映像差分表示部56と点検項目表示部57と位置指定部58と方向指定部59と設定指定部60と設定調整部61と指定情報出力部62と誘導情報出力部63と撮影情報記録部64と識別子生成部65とを備える。これらは、メモリまたはHDDに記憶されたプログラムがCPUによって実行されることで実現される。
【0090】
位置情報取得部50は、カメラ8による映像の撮影時の位置を特定可能な位置情報を取得する。例えば、位置姿勢推定部54がVSLAM技術を用いて作成した環境地図に基づいて、位置情報取得部50が映像の撮影時の位置の取得を行うことができる。また、基準取得部55が取得した基準点に基づいて、位置情報取得部50が映像の撮影時の位置の取得を行うことができる。
【0091】
方向情報取得部51は、カメラ8による映像の撮影時の方向を特定可能な方向情報を取得する。例えば、位置姿勢推定部54がVSLAM技術を用いて作成した環境地図に基づいて、方向情報取得部51が映像の撮影時の方向の取得を行うことができる。また、基準取得部55が取得した基準点に基づいて、方向情報取得部51が映像の撮影時の方向の取得を行うことができる。
【0092】
なお、環境地図に基づく位置情報または方向情報と、基準点に基づく位置情報または方向情報とに誤差がある場合には、基準点に基づく位置情報または方向情報を優先的に適用しても良い。このようにすれば、作業者Wが作業現場にてマーカ5を撮影することで、情報の補正を行うことができる。VSLAM技術は、相対的な移動量を算出する手法であるため、長時間の使用により誤差が蓄積されてしまう場合がある。そこで、基準点となるマーカ5を現場端末2で読み込むことで、点検エリア16における位置情報を正確に把握することができる。
【0093】
設定情報取得部52は、カメラ8による映像の撮影時の設定を特定可能な設定情報を取得する。例えば、絞り値情報とシャッタースピード情報とISO感度情報と画角情報と倍率情報とを取得する。これらの設定情報は、撮影時のカメラ8の設定に基づいて取得される。このようにすれば、撮影する度に撮影時のカメラ8の設定が異なることがなく、撮影する度に対象機器4(被写体)の映り方にばらつきが生じないようにできる。
【0094】
時間情報取得部53は、カメラ8による映像の撮影時の時間(撮影日時)を特定可能な時間情報を取得する。このようにすれば、記録した映像を用いて外観検査を行う際に、映像が撮影された日時などの時間を把握することができる。
【0095】
位置姿勢推定部54は、撮影された映像と加速度情報と角速度情報とに基づいて現場端末2の位置および姿勢を推定する制御を行う。つまり、現場端末2に搭載されたデバイスにより得られた情報に基づいて現場端末2の位置および姿勢を推定する。この位置姿勢推定部54は、現場端末の位置および姿勢の推定と同時に現場端末2の周辺環境の情報を含む環境地図の作成を行う。つまり、位置姿勢推定部54では、VSLAM技術を用いている。このようにすれば、映像の撮影時の位置および方向の取得精度を向上させることができる。
【0096】
VSLAM技術では、現場端末2のカメラ8および3次元測定センサ24で取得した情報を用いて、現場端末2の周辺の物体の特徴点を抽出することができる。なお、現場端末2のカメラ8で取得した情報のみを用いて、現場端末2の周辺の物体の特徴点を抽出する場合もある。この特徴点の集合させたものを3次元特徴点群データと称する。そして、カメラ8で撮影した映像(動画像)を解析し、物体の特徴点(例えば、箱状の物体の辺または角の部分)をリアルタイムに追跡する。この3次元特徴点群データに基づいて、現場端末2の位置および姿勢の3次元情報を推定することができる。
【0097】
また、現場端末2の周辺の物体の3次元特徴点群データを所定の時間毎に検出し、時系列において前後する3次元特徴点群データ間の変位に基づいて、現場端末2の位置および姿勢の変位を算出することができる。また、時系列に得られる一連の自位置および自姿勢から、現在位置および現在姿勢に先立つ現場端末2の移動経路19が得られる。
【0098】
つまり、位置姿勢推定部54は、基準点から現場端末2が移動するときに連続的に撮影された映像に基づいて、現場端末2の位置および姿勢を推定する制御を行う。このようにすれば、基準点から現場端末2が移動した移動経路19(図2参照)を映像により推定できるので、現場端末2の位置および姿勢の推定精度を向上させることができる。
【0099】
なお、本実施形態では、カメラ8および3次元測定センサ24で取得した情報に基づいて、現場端末2の位置および姿勢を推定するVSLAM技術を例示しているが、その他の態様であっても良い。例えば、ステレオカメラ、魚眼カメラ、ジャイロセンサ、赤外線センサで取得した情報に基づいて、現場端末2の位置および姿勢を推定するVSLAM技術を用いても良い。このVSLAM技術は、屋内での位置計測が可能であり、ビーコンまたは歩行者自律航法(PDR:Pedestrian Dead Reckoning)などの屋内で使用可能な位置情報計測技術の中で、最も精度よく3次元座標を算出することができる。
【0100】
なお、現場端末2の位置および姿勢は、それぞれ算出または更新された時点の時刻と対応付けて記録される。
【0101】
基準取得部55は、撮影場所(対象機器4)に対応して予め設けられたマーカ5をカメラ8で撮影したときに3次元空間の基準点を取得する。なお、マーカ5の位置を基準点としても良いし、マーカ5から離れた所定の位置を基準点としても良い。このようにすれば、作業現場にマーカ5を設ける簡便な作業、およびマーカ5を撮影する簡素な処理で取得精度を向上させることができる。
【0102】
映像差分表示部56は、管理コンピュータ3で現在の映像と過去の映像との間に差分が有ると判定された場合に、現場端末2のディスプレイ6に差分の箇所を表示する。例えば、現在撮影された対象機器4において正常でない部分を示す指示表示73が成される(図13参照)。
【0103】
点検項目表示部57は、点検項目のそれぞれについて映像の撮影が実行されたか否かを示す完了情報を現場端末2のディスプレイ6に表示する。例えば、点検項目リスト74(図14)をディスプレイ6に表示する。
【0104】
位置指定部58は、過去の撮影時に取得された位置情報または予め取得した位置情報に基づいて、カメラ8による映像の撮影時の位置を指定する。方向指定部59は、過去の撮影時に取得された方向情報または予め取得した方向情報に基づいて、カメラ8による映像の撮影時の方向を指定する。ここで、位置指定部58と方向指定部59は、ARオブジェクト70およびAR枠71の位置と向き(方向)とを指定する処理を行う。
【0105】
なお、プラントの設計情報に関する3D-CADデータに基づいて、カメラ8による映像の撮影時の位置および方向が指定されても良い。つまり、予め取得した位置情報または方向情報には、3D-CADデータに基づいて管理者Mが指定した情報が含まれる。例えば、過去に撮影がされておらず、新規に撮影を行う場合であっても、管理者Mが、映像の撮影時の位置および方向が指定することができる。
【0106】
設定指定部60は、カメラ8の画角と倍率と絞り値とシャッタースピードとISO感度とを指定する指定情報を現場端末2のディスプレイ6に表示する制御を行う。作業者Wは、指定情報に基づいてカメラ8の設定を調整する操作を行うことができる。
【0107】
設定調整部61は、管理コンピュータ3に記憶された設定情報に基づいて映像の撮影時にカメラ8の設定を調整する。例えば、カメラ8の画角および倍率は、照準枠72とAR枠71とを一致された時点で自動的に調整される(図12参照)。また、絞り値とシャッタースピードとISO感度が自動的に調整される。このようにすれば、カメラ8を操作する作業者Wの技量に頼らずに、適切な撮影が行えるようにカメラ8の設定を自動的に調整することができる。
【0108】
指定情報出力部62は、過去の撮影時に取得された位置情報および方向情報に基づいて、映像の撮影時の位置および方向を指定する指定情報を出力する。ここで、指定情報出力部62は、映像の撮影時の位置および方向を指定するARオブジェクト70およびAR枠71を生成し、ARオブジェクト70およびAR枠71を現場端末2に搭載されたディスプレイ6に表示する制御を行う。このようにすれば、ディスプレイ6に表示されたARオブジェクト70およびAR枠71に基づいて、カメラ8を操作する作業者Wが、映像の撮影時の位置および方向を把握することができる。さらに、指定情報出力部62は、AR枠71と照準枠72の間の差分(位置ズレまたは角度ズレ)を数値で示す補正情報76を算出し、この補正情報76をディスプレイ6に表示する制御を行う。
【0109】
誘導情報出力部63は、管理コンピュータ3に記憶された位置情報に基づいて映像の撮影時の位置まで現場端末2を所持する作業者Wを誘導する誘導情報を出力する。つまり、誘導情報出力部63は、現場端末2のディスプレイ6でナビゲーション表示35(経路表示)を行う(図10参照)。このようにすれば、作業者Wを適切な撮影位置まで誘導することができる。
【0110】
撮影情報記録部64は、位置情報と方向情報と設定情報と時間情報とを含む撮影情報を映像に対応付けて記録する。撮影情報は、映像ファイルの属性として記録しても良いし、映像ファイルとは異なる記録ファイルに記録しても良い。なお、作業者Wは、いずれの方式で記録するかを事前に設定することができる。管理コンピュータ3は、それぞれの映像に対応付けて記録された撮影情報に基づいて、映像の管理を行うことができる。
【0111】
識別子生成部65は、撮影情報に基づいて、識別子を生成する。なお、作業者Wは、撮影情報を識別子として記録するか否かを事前に設定することができる。識別子が生成される設定の場合には、撮影情報記録部64が識別子を映像に対応付けて記録する。なお、撮影情報記録部64が識別子を映像に含ませる態様で記録しても良い。
【0112】
本実施形態の現場端末2は、撮影機能を有する。この撮影機能とは、現場端末2のカメラ8を用いて撮影した映像を映像記憶部27に記憶させる機能をいう。例えば、現場端末2が点検エリア16にあるときに、現場端末2のカメラ8で撮影をした場合には、その映像はディスプレイ6に表示され、映像記憶部27に記憶されることがない。なお、映像は、動画像を例示する。ここで、作業者Wがディスプレイ6に表示された撮影ボタン(録画ボタン)をタッチ操作すると、そのときにカメラ8で撮影されていた映像が映像記憶部27に記憶される。つまり、動画像の録画が開始される。なお、静止画像の場合には、撮影ボタンをタッチ操作した時点の画像が映像記憶部27に記憶される。
【0113】
本実施形態において、「映像の取得」という用語には、「映像の保存」または「映像の転送」という意味とが含まれる。また、映像の取得は、現場端末2が行うものでも良いし、管理コンピュータ3が行うものでも良い。
【0114】
図4に示すように、管理コンピュータ3は、撮影情報データベース38とディスプレイ12と操作入力部39と通信部40と映像記憶部41と管理制御部42とを備える。
【0115】
撮影情報データベース38は、メモリまたはHDDに記憶され、検索または蓄積ができるよう整理された情報の集まりである。この撮影情報データベース38には、点検の対象となっている対象機器4の3次元位置を特定可能な撮影情報が記憶されている。撮影情報は、過去に対象機器4を撮影したときに現場端末2を用いて取得されたものである。このようにすれば、対象機器4の撮影情報を蓄積することができる。撮影情報データベース38の撮影情報は、現場端末2に送信される。この撮影情報データベース38に記憶された撮影情報を参照することで、毎回同じ映し方で対象部分を撮影することができる。
【0116】
なお、撮影情報データベース38には、作業現場となるプラントの設計情報が記憶されていても良い。例えば、設計情報に関する3D-CADデータが予め記憶されても良い。この3D-CADデータには、対象機器4が配置されている位置(座標)に関する情報が含まれている。また、建物14の部屋15の配置に関する情報も含まれている。
【0117】
なお、点検の対象となる対象機器4は、3D-CADデータを用いて設定しても良いし、管理コンピュータ3のディスプレイ12にデータを表示して個々に選択または指定しても良い。さらに、3D-CADデータが有している対象機器4の名称または型式などの情報に基づいて、自動的に選択または指定しても良い。
【0118】
ディスプレイ12は、現場端末2で撮影された映像の出力を行う装置である。また、レイアウト図(図9参照)などの映像も出力することができる。つまり、管理コンピュータ3は、ディスプレイ12に表示される映像の制御を行う。なお、ネットワークを介して接続される他のコンピュータが備えるディスプレイに表示される映像の制御を管理コンピュータ3が行っても良い。
【0119】
なお、本実施形態では、情報を表示する装置としてディスプレイ12を例示するが、その他の態様であっても良い。例えば、プロジェクタを用いて情報の表示を行っても良い。さらに、紙媒体に情報を印字するプリンタをディスプレイ12の替りとして用いても良い。つまり、管理コンピュータ3が制御する対象としてプロジェクタまたはプリンタが含まれても良い。
【0120】
操作入力部39は、管理者Mの操作に応じて所定の情報を入力するために用いられるマウスまたはキーボードなどの入力装置などで構成される。本実施形態の入力操作には、マウスを用いたクリック操作、またはタッチパネルを用いたタッチ操作が含まれる。つまり、これら入力装置の操作に応じて所定の情報が管理コンピュータ3に入力される。
【0121】
通信部40は、通信回線を介して現場端末2と通信を行う。この通信部40は、無線通信装置13に搭載されている。また、通信部40は、所定のネットワーク機器、例えば、無線LANアクセスポイントまたはアンテナに搭載されても良い。なお、通信部40は、WAN(Wide Area Network)、インターネット回線、または携帯通信網を介して現場端末2と通信を行っても良い。その他にも、LANケーブルまたはUSBケーブルにより現場端末2と接続して通信を行っても良い。
【0122】
映像記憶部41は、現場端末2から受信した映像ファイルを記憶する。なお、映像記憶部41に記憶される映像は、動画像であっても良いし、静止画像であっても良い。また、映像ファイルとともに、映像ファイルに対応付けられた記録ファイルを記憶しても良い。さらに、映像ファイルに関連する所定のデータを記憶しても良い。
【0123】
管理制御部42は、管理コンピュータ3を統括的に制御する。この管理制御部42は、映像情報管理部43と点検項目記録部44と過去映像抽出部45と映像差分判定部46とを備える。これらは、メモリまたはHDDに記憶されたプログラムがCPUによって実行されることで実現される。
【0124】
映像情報管理部43は、撮影情報が対応付けられた映像を、カメラ8の撮影対象となる対象機器4(対象部分)を個々に識別可能な対象情報としての対象機器IDに対応付けて管理する。また、映像情報管理部43は、映像を撮影IDに対応付けて管理する。このようにすれば、外観検査を行う際に、対象機器4または撮影態様に対応する映像を抽出することができる。
【0125】
点検項目記録部44は、現場端末2から受信した完了情報に基づいて、点検項目リスト74に登録されている個々の点検項目のそれぞれに対応付けて映像の撮影が実行されたか否かを記録する(図14参照)。なお、点検項目記録部44は、現場端末2が備えるものでも良い。そして、現場端末2で点検項目リスト74の更新を行い、管理コンピュータ3にアクセスしたときに現場端末2から点検項目リスト74をアップロードし、管理コンピュータ3が記憶している点検項目リスト74を更新しても良い。
【0126】
過去映像抽出部45は、カメラ8で撮影された映像と同一の撮影情報が対応付けられた過去に撮影された映像を映像記憶部41から抽出する。そして、抽出された映像は、現場端末2に送信され、現場端末2のディスプレイ6に過去の映像34が表示される(図13参照)。
【0127】
映像差分判定部46は、現在の映像と過去の映像とを比較して差分の有無を判定する。この映像差分判定部46の判定結果に基づいて、現場端末2のディスプレイ6に現在撮影された対象機器4において正常でない部分を示す指示表示73が成される(図13参照)。なお、映像差分判定部46を現場端末2に搭載しても良い。そして、オフライン環境で現場端末2が現在の映像と過去の映像とを比較して差分の有無を判定するようにしても良い。
【0128】
本実施形態の管理コンピュータ3のシステム構成は、必ずしも1つのコンピュータに設ける必要はない。例えば、ネットワークで互いに接続された複数のコンピュータを用いて1つのシステムを実現しても良い。例えば、撮影情報データベース38を管理コンピュータ3とは異なる他のコンピュータに設けても良い。
【0129】
管理制御部42は、撮影情報データベース38に対象情報を記憶させる設定を行う。例えば、基準点を管理する基準点管理テーブル(図6参照)と撮影態様を管理する撮影管理テーブル(図7参照)に各種情報を記憶させる設定を行う。
【0130】
図6に示すように、基準点管理テーブルには、基準点IDに対応付けて、基準点座標情報とマーカIDと対象機器IDとが登録されている。
【0131】
基準点IDは、複数の基準点を個々に識別可能な識別情報である。なお、1つの基準点に対して1つの基準点IDが付与される。
【0132】
基準点管理テーブルに登録される基準点座標情報は、基準点が設けられた位置を指定する3次元座標の情報である。なお、座標の情報には、水平方向(X軸,Y軸)と垂直方向(Z軸)の位置を指定する情報を含む。また、この基準点座標情報には、基準点の姿勢または向きに関する情報が含まれても良い。
【0133】
本実施形態では、建物14の出入口17に設けられた1つのマーカ5を基準点(原点、起点)として座標を設定する(図2参照)。なお、座標は、マーカ5を基準点としなくても良く、建物14の所定の位置を座標の基準点としても良い。また、基準点座標情報は、建物14の設計段階で作成された3次元CADに基づいて構成されても良い。
【0134】
基準点管理テーブルに登録されるマーカIDは、複数のマーカ5を個々に識別可能な識別情報である。なお、1つのマーカ5に対して1つのマーカIDが付与される。さらに、基準点管理テーブルでは、1つの基準点に対して1つのマーカIDが付与される。なお、1つの基準点に対して、それぞれ異なる位置に設けられる複数のマーカIDが付与されても良い。
【0135】
対象機器IDは、複数の対象機器4を個々に識別可能な対象情報である。なお、1つの対象機器4に対して1つの対象機器IDが付与される。
【0136】
基準点管理テーブルでは、1つの基準点IDに対応して複数の対象機器IDが登録されても良い。例えば、建物14の出入口17のマーカ5のマーカIDに対応付けて、その建物14の内部に配置された全ての対象機器4の対象機器IDが登録されても良い。また、部屋15の出入口18のマーカ5のマーカIDに対応付けて、その部屋15の内部に配置された全ての対象機器4の対象機器IDが登録されても良い。
【0137】
図7に示すように、撮影管理テーブルには、撮影IDに対応付けて、対象機器IDと位置情報と方向情報と絞り値情報とシャッタースピード情報とISO感度情報と画角情報と倍率情報とを含む撮影情報が登録されている。
【0138】
現場端末2で撮影を行う際には、管理コンピュータ3にアクセスし、点検項目リスト74のそれぞれの点検項目に対応付けられた撮影IDを取得する。なお、点検項目リスト74は、過去の事例に基づいて、自動的に作成されても良いし、管理者Mが任意に作成しても良い。そして、これらの撮影IDに対応付けて撮影管理テーブルに記憶されている撮影情報を取得する。これらの撮影情報に基づいて、現場端末2がARオブジェクト70などの表示により撮影態様を指定し、的確な撮影を行うことができる。
【0139】
なお、管理コンピュータ3では、基準点ID、マーカID、撮影ID、対象機器ID、端末ID、ユーザID、撮影日時などに基づいて、撮影情報データベース38に登録された各種データを検索することができる。
【0140】
図4に示すように、映像差分判定部46は、機械学習部47を備える。機械学習部47は、正常な対象機器4が写った映像と、正常でない対象機器4であって点検が必要な対象機器4が写った映像とを機械学習により識別することができる。本実施形態では、作業者Wの目視による点検のみならず、目視による点検に重畳して、機械学習部47を用いて対象機器4を点検することができる。このようにすれば、カメラ8による映像の撮影時に、機械学習により補助的に対象機器4の点検を行える。なお、作業者Wは、機械学習部47で映像を解析するか否かを事前に設定することができる。
【0141】
機械学習部47は、人工知能(AI:Artificial Intelligence)を備えている。本実施形態のコンピュータを用いた解析には、人工知能の学習に基づく解析技術を用いることができる。例えば、ニューラルネットワークによる機械学習により生成された学習モデル、その他の機械学習により生成された学習モデル、深層学習アルゴリズム、回帰分析などの数学的アルゴリズムを用いることができる。また、機械学習の形態には、クラスタリング、深層学習などの形態が含まれる。
【0142】
本実施形態のシステムは、機械学習を行う人工知能を備えるコンピュータを含む。例えば、ニューラルネットワークを備える1台のコンピュータでシステムを構成しても良いし、ニューラルネットワークを備える複数台のコンピュータでシステムを構成しても良い。
【0143】
ここで、ニューラルネットワークとは、脳機能の特性をコンピュータによるシミュレーションによって表現した数学モデルである。例えば、シナプスの結合によりネットワークを形成した人工ニューロン(ノード)が、学習によってシナプスの結合強度を変化させ、問題解決能力を持つようになるモデルを示す。さらに、ニューラルネットワークは、深層学習(Deep Learning)により問題解決能力を取得する。
【0144】
例えば、ニューラルネットワークには、6層のレイヤーを有する中間層が設けられる。この中間層の各レイヤーは、300個のユニットで構成されている。また、多層のニューラルネットワークに学習用データを用いて予め学ばせておくことで、回路またはシステムの状態の変化のパターンの中にある特徴量を自動で抽出することができる。なお、多層のニューラルネットワークは、ユーザインターフェース上で、任意の中間層数、任意のユニット数、任意の学習率、任意の学習回数、任意の活性化関数を設定することができる。
【0145】
なお、学習対象となる各種情報項目に報酬関数が設定されるとともに、報酬関数に基づいて価値が最も高い情報項目が抽出される深層強化学習をニューラルネットワークに用いても良い。
【0146】
例えば、画像認識で実績のあるCNN(Convolution Neural Network)を用いる。このCNNでは、中間層が畳み込み層とプーリング層で構成される。畳み込み層は、前の層で近くにあるノードにフィルタ処理を施すことで特徴マップを取得する。プーリング層は、畳込み層から出力された特徴マップを、さらに縮小して新たな特徴マップとする。この際に特徴マップにおいて着目する領域に含まれる画素の最大値を得ることで、特徴量の位置の多少のずれも吸収することができる。
【0147】
畳み込み層は、画像の局所的な特徴を抽出し、プーリング層は、局所的な特徴をまとめる処理を行う。これらの処理では、入力画像の特徴を維持しながら画像を縮小処理する。つまり、CNNでは、画像の持つ情報量を大幅に圧縮(抽象化)することができる。そして、ニューラルネットワークに記憶された抽象化された画像イメージを用いて、入力される画像を認識し、画像の分類を行うことができる。
【0148】
なお、深層学習には、オートエンコーダ、RNN(Recurrent Neural Network)、LSTM(Long Short-Term Memory)、GAN(Generative Adversarial Network)などの各種手法がある。これらの手法を本実施形態の深層学習に適用しても良い。
【0149】
本実施形態では、予め機械学習部47に様々なパターンの対象機器4が写った映像と対象機器4が写っていない映像とを大量に学習させる。これらの学習用の映像は、実際にカメラ8で撮影した映像でも良いし、コンピュータグラフィックス(CG)で合成した映像でも良い。このように対象機器4の形状などを識別可能な状態になるまで、大量の映像を機械学習部47に予め学習させておく。
【0150】
本実施形態の機械学習の方法は、大きく2つの処理に分けられる。まず、学習用映像を生成する第1処理を行う。この第1処理では、学習用映像を取得し、その学習用映像に含まれる対象機器4の像を特徴ごとに分類する。そして、1つの学習用映像を、種類の異なる像が1つ以上含まれるように調整する。次に、学習モデルを作成する第2処理を行う。この第2処理では、学習用映像をニューラルネットワークに学習させて、映像学習モデルを作成する。この学習用モデルを映像の判定用にセットする。
【0151】
なお、管理コンピュータ3において保存した過去の対象機器4の映像を、連続写真でアニメーションのように出力しても良い。このようにすれば、管理者Mが対象機器4の長期間に亘る外観変化を可視化できるようになる。そのため、管理者Mが対象機器4の変化を確認し易くなる。
【0152】
次に、映像管理支援システム1が実行する処理について図15から図21のフローチャートを用いて説明する。なお、前述の図面を適宜参照する。
【0153】
管理コンピュータ3は、図15に示す管理制御処理を実行する。現場端末2は、図17に示す端末制御処理を実行する。これら処理は、一定時間毎に繰り返される処理である。これらの処理が繰り返されることで、映像管理支援システム1で映像管理支援方法が実行される。
【0154】
管理コンピュータ3が実行する管理制御処理について図15のフローチャートを用いて説明する。なお、管理コンピュータ3が他の処理を実行中に、この管理制御処理を割り込ませて実行しても良い。さらに、以下のステップは、管理制御処理に含まれる少なくとも一部の処理であり、他のステップが管理制御処理に含まれても良い。
【0155】
まず、ステップS11において、管理制御部42は、メイン制御処理を実行する。このメイン制御処理では、管理コンピュータ3のディスプレイ12などの各種デバイスを制御する処理が行われる。また、現場端末2からアクセスがあった場合に所定の情報の送受信を行う。例えば、現場端末2から映像ファイルの送信があった場合には、その映像ファイルを映像記憶部41に記憶する処理を行う。
【0156】
次のステップS12において、管理制御部42は、操作受付処理を実行する。この操作受付処理では、操作入力部39により所定の入力操作を受け付ける処理が行われる。
【0157】
次のステップS13において、管理制御部42は、事前登録処理を実行する。この事前登録処理では、撮影情報データベース38に各種情報を記憶させる処理が行われる。例えば、基準点管理テーブル(図6参照)に基準点に関する情報の登録が行われる。
【0158】
次のステップS14において、管理制御部42は、レイアウト図管理処理を実行する。このレイアウト図管理処理では、撮影情報データベース38に記憶された情報に基づいて、ディスプレイ12に作業現場のレイアウト30を表示させる(図9参照)。また、レイアウト30のカメラアイコン32がマウスカーソル33でクリックされたときに、その撮影位置で撮影された映像を映像記憶部41から抽出し、ディスプレイ12に表示させる制御を行う。
【0159】
次のステップS15において、映像情報管理部43は、後述する映像情報管理処理(図16)を実行する。この映像情報管理処理では、撮影情報が対応付けられた映像を、撮影IDまたは対象機器IDに対応付けて管理する処理を行う。
【0160】
次のステップS16において、点検項目記録部44は、点検項目記録処理を実行する。この点検項目記録処理では、現場端末2から受信した完了情報に基づいて、点検項目リスト74に登録されている個々の点検項目のそれぞれに対応付けて映像の撮影が実行されたか否かを記録する(図14参照)。
【0161】
次のステップS17において、管理制御部42は、映像比較処理を実行する。この映像比較処理では、過去映像抽出部45が、カメラ8で撮影された映像と同一の撮影情報が対応付けられた過去に撮影された映像を映像記憶部41から抽出する。また、抽出された過去の映像を現場端末2に送信する。さらに、映像差分判定部46が、現在の映像と過去の映像とを比較して差分の有無を判定する。また、差分の有無を示す判定結果(比較結果)を現場端末2に送信する。そして、管理制御処理を終了する。
【0162】
次に、管理コンピュータ3が実行する映像情報管理処理について図16のフローチャートを用いて説明する。
【0163】
まず、ステップS21において、映像情報管理部43は、現場端末2から映像ファイルを受信したか否かを判定する。ここで、映像ファイルを受信していない場合(ステップS21にてNOの場合)は、映像情報管理処理を終了する。一方、映像ファイルを受信した場合(ステップS21にてYESの場合)は、ステップS22に進む。
【0164】
ステップS22において、映像情報管理部43は、位置情報と方向情報と設定情報と時間情報を含む撮影情報が対応付けられた映像ファイルを映像記憶部41に記憶する。ここで、映像情報管理部43は、映像ファイルのプロパティ(図8参照)の撮影時刻に基づいて、時間情報を特定する。さらに、その他の情報を特定しても良い。
【0165】
次のステップS23において、映像情報管理部43は、映像ファイルのプロパティ(図8参照)に撮影IDが対応付けられているか否か、つまり、新規の撮影態様で撮影された映像であるか否かを判定する。ここで、撮影IDが対応付けられている場合(ステップS23にてYESの場合)は、映像情報管理処理を終了する。一方、撮影IDが対応付けられていない場合(ステップS23にてNOの場合)は、ステップS24に進む。
【0166】
ステップS24において、映像情報管理部43は、映像ファイルのプロパティ(図8参照)の位置情報に基づいて、撮影位置を特定する。
【0167】
次のステップS25において、映像情報管理部43は、映像ファイルのプロパティ(図8参照)の方向情報に基づいて、撮影方向を特定する。
【0168】
次のステップS26において、映像情報管理部43は、映像ファイルのプロパティ(図8参照)に基づいて、設定情報を特定する。
【0169】
次のステップS27において、映像情報管理部43は、映像ファイルの位置情報と方向情報と設定情報とに基づいて、撮影管理テーブル(図7参照)に既に対応する撮影IDが登録されているか否かを判定する。ここで、対応する撮影IDが登録されている場合(ステップS27にてYESの場合)は、ステップS29に進む。一方、対応する撮影IDが登録されていない場合(ステップS27にてNOの場合)は、ステップS28に進む。
【0170】
ステップS28において、映像情報管理部43は、映像ファイルに対応する撮影IDを新規に生成する。
【0171】
次のステップS29において、映像情報管理部43は、新規に生成された撮影IDまたは既に登録されている撮影IDを、映像ファイルのプロパティ(図8参照)に記録する。なお、新規に生成された撮影IDの場合には、この撮影IDを撮影管理テーブル(図7参照)に登録する。なお、撮影管理テーブルには、新規に生成された撮影IDに対応付けて、対象機器ID、位置情報、方向情報、絞り値情報、シャッタースピード情報、ISO感度情報、画角情報、倍率情報などが登録される。そして、映像情報管理処理を終了する。
【0172】
次に、現場端末2が実行する端末制御処理について図17のフローチャートを用いて説明する。なお、現場端末2が他の処理を実行中に、この端末制御処理を割り込ませて実行しても良い。さらに、以下のステップは、端末制御処理に含まれる少なくとも一部の処理であり、他のステップが端末制御処理に含まれても良い。
【0173】
まず、ステップS31において、端末制御部28は、メイン制御処理を実行する。このメイン制御処理では、現場端末2に搭載されるディスプレイ6などの各種デバイスを制御する処理が行われる。
【0174】
次のステップS32において、端末制御部28は、操作受付処理を実行する。この操作受付処理では、操作入力部25により所定の入力操作を受け付ける処理が行われる。
【0175】
次のステップS33において、端末制御部28は、データベースアクセス処理を実行する。このデータベースアクセス処理では、管理コンピュータ3の撮影情報データベース38にアクセスし、各種データのダウンロード処理が行われる。例えば、基準点管理テーブル(図6参照)のデータがダウンロードされる。また、撮影管理テーブル(図7参照)のデータがダウンロードされる。
【0176】
次のステップS34において、端末制御部28は、後述するマーカ認識処理(図18参照)を実行する。このマーカ認識処理では、カメラ8で撮影された映像に基づいて、マーカ5を認識する処理が行われる。
【0177】
次のステップS35において、端末制御部28は、後述する自己位置推定処理(図19参照)を実行する。この自己位置推定処理では、カメラ8で撮影された映像と加速度情報と角速度情報とに基づいて現場端末2の位置および姿勢を推定する処理が行われる。この自己位置推定処理が実行されるときには、カメラ8が起動して撮影が開始される。
【0178】
次のステップS36において、誘導情報出力部63は、誘導情報出力処理を実行する。誘導情報出力部63は、現場端末2で経路案内の設定がされている場合において、管理コンピュータ3(撮影情報データベース38)からダウンロードした位置情報に基づいて映像の撮影時の位置まで現場端末2を所持する作業者Wを誘導する誘導情報を出力する。例えば、現場端末2のディスプレイ6でナビゲーション表示35(経路表示)を行う(図10参照)。
【0179】
次のステップS37において、指定情報出力部62は、後述する指定情報出力処理(図20参照)を実行する。この指定情報出力処理では、過去の撮影時に取得された位置情報および方向情報に基づいて、映像の撮影時の位置および方向を指定する指定情報を出力する。ここで、位置指定部58と方向指定部59は、ARオブジェクト70およびAR枠71の位置と向き(方向)とを指定する処理を行う。
【0180】
次のステップS38において、端末制御部28は、後述する撮影制御処理(図21参照)を実行する。この撮影制御処理では、位置情報と方向情報と設定情報と時間情報とを含む撮影情報を映像に対応付けて記録する。
【0181】
次のステップS39において、端末制御部28は、映像送信処理を実行する。この映像送信処理では、映像記憶部27に記憶されている映像ファイルを管理コンピュータ3に送信する処理が行われる。なお、映像ファイルを送信する処理は、作業者Wの操作に基づいて行っても良いし、一定時間ごとに自動的に行っても良い。そして、端末制御処理を終了する。
【0182】
次のステップS40において、点検項目表示部57は、点検項目表示処理を実行する。この点検項目表示処理では、現場端末2で点検項目リスト74(図14参照)の表示の設定がされている場合において、点検項目のそれぞれについて映像の撮影が実行されたか否かを示す完了情報を現場端末2のディスプレイ6に表示する。つまり、管理コンピュータ3から送信された情報に基づいて、点検項目リスト74をディスプレイ6に表示する。
【0183】
次のステップS41において、映像差分表示部56は、映像比較結果出力処理を実行する。この映像比較結果出力処理では、現場端末2で映像比較結果の出力の設定がされている場合において、管理コンピュータ3で現在の映像と過去の映像との間に差分が有ると判定された場合に、現場端末2のディスプレイ6に差分の箇所を表示する。例えば、現在撮影された対象機器4において正常でない部分を示す指示表示73が成される(図13参照)。そして、端末制御処理を終了する。
【0184】
次に、現場端末2が実行するマーカ認識処理について図18のフローチャートを用いて説明する。
【0185】
まず、ステップS45において、端末制御部28は、カメラ8により撮影された映像を取得する。
【0186】
次のステップS46において、端末制御部28は、取得した映像にマーカ5が写っているか否かを判定する。ここで、映像にマーカ5が写っていない場合(ステップS46にてNOの場合)は、マーカ認識処理を終了する。一方、映像にマーカ5が写っている場合(ステップS46にてYESの場合)は、ステップS47に進む。
【0187】
ステップS47において、端末制御部28は、マーカ5の図形に含まれるマーカIDを読み取る。
【0188】
次のステップS48において、基準取得部55は、予め管理コンピュータ3の撮影情報データベース38からダウンロードされた基準点管理テーブルのデータに基づいて、読み取ったマーカIDに対応する基準点IDの基準点座標情報を特定する。この基準点に対応する基準点座標情報に基づいて、現場端末2の位置情報を取得または補正を行う。そして、マーカ認識処理を終了する。
【0189】
次に、現場端末2が実行する自己位置推定処理について図19のフローチャートを用いて説明する。
【0190】
まず、ステップS51において、位置姿勢推定部54は、座標の原点となる基準点の設定に基づく座標の確認処理を行う。例えば、建物14の出入口17に設けられた1つのマーカ5を原点として基準点を設定する(図2参照)。また、部屋15の出入口18に設けられた1つのマーカ5を原点として基準点を設定しても良い。なお、マーカ5の映像が取得されるまでの間、ディスプレイ6にマーカ5の撮影を促す旨の表示を行っても良い。
【0191】
次のステップS52において、端末制御部28は、カメラ8により撮影された映像を取得する。
【0192】
次のステップS53において、位置姿勢推定部54は、加速度センサ22で検出された加速度の値を示す加速度情報を取得する。
【0193】
次のステップS54において、位置姿勢推定部54は、角速度センサ23で検出された角速度の値を示す角速度情報を取得する。
【0194】
次のステップS55において、位置姿勢推定部54は、カメラ8の映像に基づいて現場端末2の周辺の物体の3次元形状を測定する。また、3次元測定センサ24の測定に基づいて現場端末2の周辺の物体の3次元形状を取得しても良い。
【0195】
次のステップS56において、位置姿勢推定部54は、現場端末2の周辺環境の情報を含む環境地図を作成する。
【0196】
次のステップS57において、位置姿勢推定部54は、基準点から現場端末2が移動するときに連続的に撮影された映像に基づいて、現場端末2の位置および姿勢を推定する。この移動中の現場端末2の位置および姿勢を時刻情報とともに記録することで、現場端末2の移動経路19(図2参照)が記録される。また、部屋15の内部における移動経路が記録されても良い。
【0197】
次のステップS58において、位置姿勢推定部54は、現場端末2の現在の位置および姿勢を推定する。そして、自己位置推定処理を終了する。
【0198】
次に、現場端末2が実行する指定情報出力処理について図20のフローチャートを用いて説明する。
【0199】
まず、ステップS61において、指定情報出力部62は、ARオブジェクト70を表示させる設定中であるか否かを判定する。ここで、ARオブジェクト70(図11参照)を表示させる設定中でない場合(ステップS61にてNOの場合)は、指定情報出力処理を終了する。一方、ARオブジェクト70を表示させる設定中である場合(ステップS61にてYESの場合)は、ステップS62に進む。
【0200】
次のステップS62において、指定情報出力部62は、管理コンピュータ3(撮影情報データベース38)からダウンロードした撮影情報に基づいて、ARオブジェクト70またはAR枠71を生成する。さらに、指定情報出力部62は、AR枠71と照準枠72の間の差分を数値で示す補正情報76を算出する。
【0201】
次のステップS63において、指定情報出力部62は、生成したARオブジェクト70またはAR枠71をディスプレイ6に表示する。なお、照準枠72は、ディスプレイ6の中央に固定的に表示される。さらに、指定情報出力部62は、算出した補正情報76をディスプレイ6に表示する。
【0202】
次のステップS64において、指定情報出力部62は、管理コンピュータ3(撮影情報データベース38)からダウンロードした撮影情報に基づいて、現在の現場端末2の撮影位置が適切か否かの判定を行う。ここで、撮影位置が適切でない場合(ステップS64にてNOの場合)は、指定情報出力処理を終了する。一方、撮影位置が適切である場合(ステップS64にてYESの場合)は、ステップS65に進む。
【0203】
次のステップS65において、指定情報出力部62は、管理コンピュータ3(撮影情報データベース38)からダウンロードした撮影情報に基づいて、現在の現場端末2の撮影方向が適切か否かの判定を行う。ここで、撮影方向が適切でない場合(ステップS65にてNOの場合)は、指定情報出力処理を終了する。一方、撮影方向が適切である場合(ステップS65にてYESの場合)は、ステップS66に進む。
【0204】
次のステップS66において、指定情報出力部62は、現場端末2のディスプレイ6に、カメラ8の画角と倍率と絞り値とシャッタースピードとISO感度などの設定を指定する表示(指定情報の表示)を行う。
【0205】
次のステップS67において、指定情報出力部62は、カメラ8の自動調整の設定中か否かの判定を行う。ここで、自動調整の設定中でない場合(ステップS67にてNOの場合)は、指定情報出力処理を終了する。一方、自動調整の設定中である場合(ステップS67にてYESの場合)は、ステップS68に進む。
【0206】
次のステップS68において、指定情報出力部62は、管理コンピュータ3(撮影情報データベース38)からダウンロードした設定情報に基づいて、画角と倍率と絞り値とシャッタースピードとISO感度などの調整を自動的に行う。また、自動的に撮影中の映像を映像記憶部27に記憶する処理を行っても良い。そして、指定情報出力処理を終了する。
【0207】
次に、現場端末2が実行する撮影制御処理について図21のフローチャートを用いて説明する。
【0208】
まず、ステップS71において、端末制御部28は、カメラ8が既に起動しているか否かを判定する。つまり、カメラ8により映像を撮影しているか否かを判定する。ここで、カメラ8が起動中でない場合(ステップS71にてNOの場合)は、撮影制御処理を終了する。一方、カメラ8が起動中である場合(ステップS71にてYESの場合)は、ステップS72に進む。
【0209】
ステップS72において、端末制御部28は、カメラ8により撮影された映像をディスプレイ6に表示する。
【0210】
次のステップS73において、撮影情報記録部64は、カメラ8により撮影された映像を映像記憶部27に保存する操作である、撮影操作(録画操作)を受け付けたか否かを判定する。なお、撮影操作とは、例えば、撮影ボタンをタッチ操作することである。ここで、撮影操作を受け付けていない場合(ステップS73にてNOの場合)は、撮影制御処理を終了する。一方、撮影操作を受け付けた場合(ステップS73にてYESの場合)は、ステップS74に進む。
【0211】
ステップS74において、位置情報取得部50は、カメラ8による映像の撮影時の位置を特定可能な位置情報を取得する。
【0212】
次のステップS75において、方向情報取得部51は、カメラ8による映像の撮影時の方向を特定可能な方向情報を取得する。
【0213】
次のステップS76において、設定情報取得部52は、カメラ8による映像の撮影時の設定を特定可能な設定情報を取得する。
【0214】
次のステップS77において、撮影情報記録部64は、位置情報と方向情報と設定情報と時間情報とを含む撮影情報を映像に対応付けて記録する。ここで、撮影情報記録部64は、映像の撮影時刻に基づいて、時間情報を特定する。さらに、その他の情報を特定しても良い。なお、識別子生成部65が撮影情報に基づいて識別子を生成し、この識別子を映像に対応付けて記録しても良い。ここで、映像ファイルは、映像記憶部27に記憶される。
【0215】
次のステップS78において、指定情報出力部62は、ARオブジェクト70およびAR枠71の表示の設定中であるか否かを判定する。ここで、AR表示の設定中でない場合(ステップS78にてNOの場合)は、撮影制御処理を終了する。一方、AR表示の設定中である場合(ステップS78にてYESの場合)は、ステップS79に進む。
【0216】
ステップS79において、撮影情報記録部64は、カメラ8による撮影がAR表示で指定された通りの撮影であるか否かを判定する。つまり、撮影IDに対応付けられている撮影態様で撮影が行われたか否かを判定する。ここで、指定された通りの撮影でない場合(ステップS79にてNOの場合)は、撮影制御処理を終了する。一方、指定された通りの撮影である場合(ステップS79にてYESの場合)は、ステップS80に進む。
【0217】
ステップS80において、撮影情報記録部64は、カメラ8により撮影された映像とAR表示に用いた撮影情報に対応する撮影IDとを対応付けて記録する。つまり、映像ファイルのプロパティ(図8参照)に撮影IDを記録する。
【0218】
次のステップS81において、撮影情報記録部64は、点検項目リスト74に撮影された映像に対応付けられた撮影IDの点検項目があるか否かを判定する。ここで、点検項目がない場合(ステップS81にてNOの場合)は、撮影制御処理を終了する。一方、点検項目がある場合(ステップS81にてYESの場合)は、ステップS82に進む。
【0219】
ステップS82において、撮影情報記録部64は、点検項目に対応する映像の撮影が完了したことを示す完了情報を管理コンピュータ3に送信する。そして、撮影制御処理を終了する。
【0220】
なお、本実施形態のフローチャートにおいて、各ステップが直列に実行される形態を例示しているが、必ずしも各ステップの前後関係が固定されるものでなく、一部のステップの前後関係が入れ替わっても良い。また、一部のステップが他のステップと並列に実行されても良い。
【0221】
本実施形態のシステムは、専用のチップ、FPGA(Field Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)、またはCPU(Central Processing Unit)などのプロセッサを高集積化させた制御装置と、ROM(Read Only Memory)またはRAM(Random Access Memory)などの記憶装置と、HDD(Hard Disk Drive)またはSSD(Solid State Drive)などの外部記憶装置と、ディスプレイなどの表示装置と、マウスまたはキーボードなどの入力装置と、通信インターフェースとを備える。このシステムは、通常のコンピュータを利用したハードウェア構成で実現できる。
【0222】
なお、本実施形態のシステムで実行されるプログラムは、ROMなどに予め組み込んで提供される。もしくは、このプログラムは、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD-ROM、CD-R、メモリカード、DVD、フレキシブルディスク(FD)などのコンピュータで読み取り可能な非一過性の記憶媒体に記憶されて提供するようにしても良い。
【0223】
また、このシステムで実行されるプログラムは、インターネットなどのネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせて提供するようにしても良い。また、このシステムは、構成要素の各機能を独立して発揮する別々のモジュールを、ネットワークまたは専用線で相互に接続し、組み合わせて構成することもできる。
【0224】
なお、本実施形態では、VSLAM技術を用いて現場端末2の位置情報を取得しているが、その他の態様であっても良い。例えば、GPSを利用して位置情報を取得しても良い。Wi-Fi(登録商標)などの無線通信を利用して位置情報を取得しても良い。加速度センサなどを利用するPDRにより位置情報を取得しても良い。
【0225】
なお、現場端末2が魚眼レンズ付カメラを備えても良い。例えば、2つの魚眼レンズ付カメラを用いて作業者Wの上下左右全方位の360度パノラマ映像である全天球映像の同時撮影を行っても良い。そして、全天球映像に対象機器4が写っているか否かを判定しても良い。その場合には、撮影方向および設定情報を参照せずに、位置情報のみに基づいて判定を行っても良い。
【0226】
なお、本実施形態の現場端末2は、作業者Wが持運びできる大きさおよび重さであれば良い。例えば、作業現場において、三脚などの固定器具を用いて現場端末2を固定的に設置して使用しても良い。
【0227】
なお、本実施形態のカメラ8は、ステレオカメラであっても良い。例えば、カメラ8がレンズ付きの2つの撮像素子を備えていても良い。このステレオカメラは、物体を複数の異なる2つの方向から同時に撮影することにより、その物体までの奥行き方向の情報が取得可能となっている。また、ステレオカメラのそれぞれの撮像素子により取得される映像は2次元映像であるが、これら2つの2次元映像に写る像の差異に基づいて、立体的な空間把握が可能な立体写真の生成が可能になっている。
【0228】
なお、本実施形態の現場端末2は、作業者Wにより作業現場で操作されるものであるが、その他の態様であっても良い。例えば、作業者Wが現場端末2を作業現場まで搬送し、撮影の操作は、管理者Mにより行われても良い。
【0229】
以上説明した実施形態によれば、位置情報と方向情報と設定情報とを含む撮影情報を映像に対応付けて記録する撮影情報記録部を備えることにより、記録した映像を用いて外観検査を行う際に、検査対象に生じている外観の変化を見落とさないようにできる。
【0230】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0231】
1…映像管理支援システム、2…現場端末、3…管理コンピュータ、4…対象機器、5…マーカ、6…ディスプレイ、7…スマートフォン、8…カメラ、9…透過型ヘッドマウントディスプレイ、10…ウェアラブルコンピュータ、11…コンピュータ本体、12…ディスプレイ、13…無線通信装置、14…建物、15…部屋、16…点検エリア、17,18…出入口、19…移動経路、22…加速度センサ、23…角速度センサ、24…3次元測定センサ、25…操作入力部、26…通信部、27…映像記憶部、28…端末制御部、30…レイアウト、31…設置物、32…カメラアイコン、33…マウスカーソル、34…映像、35…ナビゲーション表示、38…撮影情報データベース、39…操作入力部、40…通信部、41…映像記憶部、42…管理制御部、43…映像情報管理部、44…点検項目記録部、45…過去映像抽出部、46…映像差分判定部、47…機械学習部、50…位置情報取得部、51…方向情報取得部、52…設定情報取得部、53…時間情報取得部、54…位置姿勢推定部、55…基準取得部、56…映像差分表示部、57…点検項目表示部、58…位置指定部、59…方向指定部、60…設定指定部、61…設定調整部、62…指定情報出力部、63…誘導情報出力部、64…撮影情報記録部、65…識別子生成部、70…ARオブジェクト、71…AR枠、72…照準枠、73…指示表示、74…点検項目リスト、75…マーク、76…補正情報、M…管理者、W…作業者。
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