(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】回転電機の回転子およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 3/51 20060101AFI20240408BHJP
H02K 9/19 20060101ALI20240408BHJP
H02K 15/04 20060101ALI20240408BHJP
H02K 15/09 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
H02K3/51
H02K9/19 B
H02K15/04 E
H02K15/09
(21)【出願番号】P 2020078334
(22)【出願日】2020-04-27
【審査請求日】2023-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】牧野 駿介
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 忠利
(72)【発明者】
【氏名】森 淳二
(72)【発明者】
【氏名】長田 大
(72)【発明者】
【氏名】石塚 博明
【審査官】中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-080358(JP,A)
【文献】特開2015-019488(JP,A)
【文献】特開平07-231619(JP,A)
【文献】特開昭59-122340(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/00- 3/52
H02K 9/00- 9/28
H02K 15/00-15/02
H02K 15/04-15/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転子軸方向に延在する複数のスロットが外径側において周方向に離間して設けられる回転子鉄心と、各スロットに下コイル片および上コイル片が配置される回転子コイルと、を具備する回転電機の回転子であって、
あるスロットに配置される下コイル片と、別のスロットに配置される上コイル片とが、それぞれ、前記回転子鉄心の軸方向鉄心端から外側へ延出するコイルエンド部を有し、それぞれのコイルエンド部が互いに電気的に接続されるように構成されており、
前記あるスロットに配置される前記下コイル片および
前記別のスロットに配置される前記上コイル片のそれぞれのコイルエンド部は、延在する方向が前記回転子鉄心の軸方向から内径方向へと転向する部分と、さらに内径方向から当該それぞれのコイルエンド部が
前記回転子鉄心の内径側へ向かいながら互いにより近づく方向へと転向する部分とを有
し、
前記あるスロットに配置される前記下コイル片および前記別のスロットに配置される前記上コイル片のそれぞれのコイルエンド部の前記回転子鉄心の内径側へ向かいながら互いにより近づく方向に延在する部分は、前記回転子鉄心との間に冷媒が通る空間が確保されるように配置され、
前記あるスロットに配置される前記下コイル片および前記別のスロットに配置される前記上コイル片のそれぞれのコイルエンド部の前記回転子鉄心の内径側へ向かいながら互いにより近づく方向に延在する部分の端部同士が、電気伝導性を有する部材により電気的に接続される、
回転電機の回転子。
【請求項2】
回転子軸方向に延在する複数のスロットが外径側において周方向に離間して設けられる回転子鉄心と、各スロットに下コイル片および上コイル片が配置される回転子コイルと、を具備する回転電機の回転子であって、
あるスロットに配置される下コイル片と、別のスロットに配置される上コイル片とが、それぞれ、前記回転子鉄心の軸方向鉄心端から外側へ延出するコイルエンド部を有し、それぞれのコイルエンド部が互いに電気的に接続されるように構成されており、
前記下コイル片および前記上コイル片のそれぞれのコイルエンド部は、延在する方向が前記回転子鉄心の軸方向から内径方向へと転向する部分と、さらに内径方向から当該それぞれのコイルエンド部が互いにより近づく方向へと転向する部分とを有し、
前記下コイル片のコイルエンド部のうち、前記回転子鉄心の内径方向に延在する範囲および内径方向から前記上コイル片のコイルエンド部により近づく方向に転向して延在する範囲に対応する第1の部分が、単独の部材で形成されており、
前記上コイル片のコイルエンド部のうち、前記回転子鉄心の内径方向に延在する範囲および内径方向から前記下コイル片のコイルエンド部により近づく方向に転向して延在する範囲に対応する第2の部分が、単独の部材で形成されており、
前記第1の部分を形成する部材および前記第2の部分を形成する部材が、前記下コイル片および前記上コイル片のそれぞれの回転子軸方向に延在する範囲の部材とは異なる材料で形成されている、
回転電機の回転子。
【請求項3】
回転子軸方向に延在する複数のスロットが外径側において周方向に離間して設けられる回転子鉄心と、各スロットに下コイル片および上コイル片が配置される回転子コイルと、を具備する回転電機の回転子であって、
あるスロットに配置される下コイル片と、別のスロットに配置される上コイル片とが、それぞれ、前記回転子鉄心の軸方向鉄心端から外側へ延出するコイルエンド部を有し、それぞれのコイルエンド部が互いに電気的に接続されるように構成されており、
前記下コイル片および前記上コイル片のそれぞれのコイルエンド部は、延在する方向が前記回転子鉄心の軸方向から内径方向へと転向する部分と、さらに内径方向から当該それぞれのコイルエンド部が互いにより近づく方向へと転向する部分とを有し、
前記下コイル片および前記上コイル片のそれぞれのコイルエンド部は、延在する方向が前記回転子鉄心の軸方向から、内径方向へと転向するに際し、渡り部を通じて周方向に位置移動するように構成されている、
回転電機の回転子。
【請求項4】
回転子軸方向に延在する複数のスロットが外径側において周方向に離間して設けられる回転子鉄心と、各スロットに下コイル片および上コイル片が配置される回転子コイルとを具備する、回転電機の回転子の製造方法であって、
あるスロットに配置される下コイル片と、別のスロットに配置される上コイル片とが、それぞれ、前記回転子鉄心の軸方向鉄心端から外側へ延出するコイルエンド部を有し、それぞれのコイルエンド部が互いに電気的に接続されるように、前記回転子コイルを作製することを含み、
前記あるスロットに配置される前記下コイル片および
前記別のスロットに配置される前記上コイル片のそれぞれのコイルエンド部は、延在する方向が前記回転子鉄心の軸方向から内径方向へと転向する部分と、さらに内径方向から当該それぞれのコイルエンド部が
前記回転子鉄心の内径側へ向かいながら互いにより近づく方向へと転向する部分とを有
し、
前記あるスロットに配置される前記下コイル片および前記別のスロットに配置される前記上コイル片のそれぞれのコイルエンド部の前記回転子鉄心の内径側へ向かいながら互いにより近づく方向に延在する部分は、前記回転子鉄心との間に冷媒が通る空間が確保されるように配置され、
前記あるスロットに配置される前記下コイル片および前記別のスロットに配置される前記上コイル片のそれぞれのコイルエンド部の前記回転子鉄心の内径側へ向かいながら互いにより近づく方向に延在する部分の端部同士を、電気伝導性を有する部材により電気的に接続することを含む、
回転電機の回転子の製造方法。
【請求項5】
回転子軸方向に延在する複数のスロットが外径側において周方向に離間して設けられる回転子鉄心と、各スロットに下コイル片および上コイル片が配置される回転子コイルとを具備する、回転電機の回転子の製造方法であって、
あるスロットに配置される下コイル片と、別のスロットに配置される上コイル片とが、それぞれ、前記回転子鉄心の軸方向鉄心端から外側へ延出するコイルエンド部を有し、それぞれのコイルエンド部が互いに電気的に接続されるように、前記回転子コイルを作製することを含み、
前記下コイル片および前記上コイル片のそれぞれのコイルエンド部は、延在する方向が前記回転子鉄心の軸方向から内径方向へと転向する部分と、さらに内径方向から当該それぞれのコイルエンド部が互いにより近づく方向へと転向する部分とを有し、
前記下コイル片のコイルエンド部のうち、前記回転子鉄心の内径方向に延在する範囲および内径方向から前記上コイル片のコイルエンド部により近づく方向に転向して延在する範囲に対応する第1の部分を、単独の部材で形成し、
前記上コイル片のコイルエンド部のうち、前記回転子鉄心の内径方向に延在する範囲および内径方向から前記下コイル片のコイルエンド部により近づく方向に転向して延在する範囲に対応する第2の部分を、単独の部材で形成し、
前記第1の部分を形成する部材の端部と、前記下コイル片の回転子軸方向に延在する範囲の部材の端部とを電気的に接続し、
前記第2の部分を形成する部材の端部と、前記上コイル片の回転子軸方向に延在する範囲の部材の端部とを電気的に接続することを含み、
前記第1の部分を形成する部材および前記第2の部分を形成する部材を、前記下コイル片および前記上コイル片のそれぞれの回転子軸方向に延在する範囲の部材とは異なる材料で形成することを含む、
回転電機の回転子の製造方法。
【請求項6】
回転子軸方向に延在する複数のスロットが外径側において周方向に離間して設けられる回転子鉄心と、各スロットに下コイル片および上コイル片が配置される回転子コイルとを具備する、回転電機の回転子の製造方法であって、
あるスロットに配置される下コイル片と、別のスロットに配置される上コイル片とが、それぞれ、前記回転子鉄心の軸方向鉄心端から外側へ延出するコイルエンド部を有し、それぞれのコイルエンド部が互いに電気的に接続されるように、前記回転子コイルを作製することを含み、
前記下コイル片および前記上コイル片のそれぞれのコイルエンド部は、延在する方向が前記回転子鉄心の軸方向から内径方向へと転向する部分と、さらに内径方向から当該それぞれのコイルエンド部が互いにより近づく方向へと転向する部分とを有し、
前記下コイル片および前記上コイル片のそれぞれのコイルエンド部を、延在する方向が前記回転子鉄心の軸方向から、内径方向へと転向するに際し、渡り部を通じて周方向に位置移動するように構成することを含む、
回転電機の回転子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、回転電機の回転子およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
揚水発電所などに納入される大型の発電電動機のうち、例えば可変速発電電動機においては、回転子を3相巻線形構造にする。3相巻線形回転子を備えた回転電機では、回転子鉄心の外径側に設けられた個々のスロット内に上コイル片および下コイル片が配置され、スロットの外径側がスロット楔により閉止される。
【0003】
回転子鉄心の軸方向鉄心端側には、スロットから外側に出る上コイル片および下コイル片のそれぞれのコイル端部(以下、「コイルエンド部」と呼ぶ。)がある。このコイルエンド部は、鉄心とスロット楔による保持ができない。そのため、コイルエンド部においては、例えばUボルトと呼ばれる複数のU字形状の支持部材を、回転子外径側から個々のコイル片の間の空間に通し、回転子内径側に配置される支えリングに固定させることで、コイルエンド部に作用する遠心力を支えリングに伝達させ、支えリングの円環剛性によりコイルエンド部を支持する方法、もしくはバインド線を用いてコイルエンド部を支持する方法が採用されるのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
Uボルトを用いる支持方式を採用した場合、コイルエンド部においてUボルトを通すコイル片間に空間があることから、コイルエンド部廻りにおける空気などの冷媒の循環が容易で冷却に優れるが、Uボルトを通すための空隙を確保する必要から、コイルエンド部の回転子軸方向の寸法が大きくなり、回転子の軸長寸法が大きくなる傾向がある。このためUボルトを用いる支持方式では、コイルエンド部の小型化が難しい。
【0006】
一方、バインド線を用いる支持方式を採用した場合は、Uボルトを通す必要がないことから、コイル片間の寸法を最小限にでき、コイルエンド部の回転子軸方向の寸法を小さくできるが、コイル片間が狭いのに加えてコイルエンド部の外径側をバインド線で閉止する関係から、コイルエンド部の充分な冷却が難しい。
【0007】
発明が解決しようとする課題は、コイルエンド部の冷却に支障がなく、コイルエンド部の回転子軸方向の寸法を低減できる、回転電機の回転子およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態によれば、回転子軸方向に延在する複数のスロットが外径側において周方向に離間して設けられる回転子鉄心と、各スロットに下コイル片および上コイル片が配置される回転子コイルと、を具備する回転電機の回転子であって、あるスロットに配置される下コイル片と、別のスロットに配置される上コイル片とが、それぞれ、前記回転子鉄心の軸方向鉄心端から外側へ延出するコイルエンド部を有し、それぞれのコイルエンド部が互いに電気的に接続されるように構成されており、前記あるスロットに配置される前記下コイル片および前記別のスロットに配置される前記上コイル片のそれぞれのコイルエンド部は、延在する方向が前記回転子鉄心の軸方向から内径方向へと転向する部分と、さらに内径方向から当該それぞれのコイルエンド部が前記回転子鉄心の内径側へ向かいながら互いにより近づく方向へと転向する部分とを有し、前記あるスロットに配置される前記下コイル片および前記別のスロットに配置される前記上コイル片のそれぞれのコイルエンド部の前記回転子鉄心の内径側へ向かいながら互いにより近づく方向に延在する部分は、前記回転子鉄心との間に冷媒が通る空間が確保されるように配置され、前記あるスロットに配置される前記下コイル片および前記別のスロットに配置される前記上コイル片のそれぞれのコイルエンド部の前記回転子鉄心の内径側へ向かいながら互いにより近づく方向に延在する部分の端部同士が、電気伝導性を有する部材により電気的に接続される、回転電機の回転子が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、コイルエンド部の冷却に支障がなく、コイルエンド部の回転子軸方向の寸法を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1の実施形態に係る回転電機の回転子の一部を周方向に見たときの構造の一例を示す図。
【
図2】同実施形態に係る回転電機の回転子の一部を軸方向に見たときの構造の一例を示す図。
【
図3】第2の実施形態に係る回転電機の回転子の一部を周方向に見たときの構造の一例を示す図。
【
図4】第3の実施形態に係る回転電機の回転子の一部を周方向に見たときの構造の一例を示す図。
【
図5】同実施形態に係る回転電機の回転子の一部を軸方向に見たときの構造の一例を示す図。
【
図6】第4の実施形態に係る回転電機の回転子の一部を周方向に見たときの構造の一例を示す図。
【
図7】第5の実施形態に係る回転電機の回転子の一部を軸方向に見たときの構造の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0012】
(第1の実施形態)
最初に、
図1及び
図2を参照して、第1の実施形態について説明する。
【0013】
本実施形態に係る回転電機は、例えば揚水発電所などにおいて使用される可変速発電電動機であり、その回転子は3相巻線形回転子である。後述する各実施形態の回転電機も同様である。
【0014】
図1は、第1の実施形態に係る回転電機の回転子の一部を周方向に見たときの構造の一例を示す図である。また、
図2は、同実施形態に係る回転電機の回転子の一部を軸方向に見たときの構造の一例を示す図である。
【0015】
本実施形態に係る回転電機は、回転軸0を中心に回転する回転子と、この回転子の周囲に間隙をおいて配置される固定子(図示せず)とからなる。回転子には回転子鉄心1が備えられ、この回転子鉄心1には、回転子軸方向に延在する複数のスロット1-aが外径側において周方向に離間して設けられている。
【0016】
各スロット1-aには、回転子コイルを構成する下コイル片2および上コイル片3が二段構成で配置される。下コイル片2と上コイル片3との間やこれらの周囲には、図示しない絶縁材が配置される。また、下コイル片2および上コイル片3は、スロット1-aの外径側をスロット楔4により閉止することで固定される。
【0017】
回転子コイルは、あるスロット1-aに配置される下コイル片2と、別のスロット1-aに配置される上コイル片3とが、それぞれ、回転子鉄心1の軸方向鉄心端から外側へ延出するコイルエンド部を有し、それぞれのコイルエンド部が互いに電気的に接続されるように作製される。
【0018】
本実施形態では、回転子鉄心1の軸方向鉄心端から外側へ延出する下コイル片2および上コイル片3のそれぞれのコイルエンド部は、延在する方向が回転子鉄心1の軸方向から内径方向(例えば、回転子軸方向に対して垂直な方向)へと転向する部分2-x,3-xと、さらに内径方向に向かう過程で、内径方向から当該それぞれのコイルエンド部が互いにより近づく方向へと転向する部分(即ち、周方向側に少し向きが変わる部分)2-y,3-yとを有する。
【0019】
また、本実施形態では、下コイル片2および上コイル片3のそれぞれのコイルエンド部が互いにより近づく方向に延在する部分の端部同士が、電気伝導性を有する部材5によって電気的に接続される。この接続には、ロウ付け等による接合を適用してもよい。
【0020】
本実施形態によれば、個々のコイルエンド部の軸方向の寸法を小さくすることができる。また、コイルエンド部の冷却においては、コイル片間にて冷媒が通る空間を確保できるため、回転子の回転に伴って周囲の冷媒が循環することにより、冷却を支障なく行うことができる。
【0021】
また、電気伝導性を有する部材5が回転子内径側にて接続されるため、口出し銅帯などとの取合構造やその支持構造の簡略化が可能になる。
【0022】
(第2の実施形態)
次に、
図3を参照して、第2の実施形態について説明する。なお、第1の実施形態と共通する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。以下では、第1の実施形態と異なる部分を中心に説明する。前述した
図2も適宜参照する。
【0023】
図3は、第2の実施形態に係る回転電機の回転子の一部を周方向に見たときの構造の一例を示す図である。なお、この回転子の一部を軸方向に見たときの構造については、前述の
図2から容易に理解できるため、当該構造の図示を省略する。
【0024】
本実施形態では、下コイル片2のコイルエンド部のうち、回転子鉄心1の内径方向に延在する範囲および内径方向から上コイル片3のコイルエンド部により近づく方向に転向して延在する範囲に対応する第1の部分が、単独の部材2-bで形成される。
【0025】
同様に、上コイル片3のコイルエンド部のうち、回転子鉄心1の内径方向に延在する範囲および内径方向から下コイル片2のコイルエンド部により近づく方向に転向して延在する範囲に対応する第2の部分が、単独の部材3-bで形成される。
【0026】
具体的には、部材2-b、部材3-b、部材2-c、部材3-c、及び、部材5は、それぞれ、下コイル片2の回転子軸方向に延在する範囲の部材2-a、及び、上コイル片3の回転子軸方向に延在する範囲の部材3-aからは独立して別々に製造される。いずれも電気伝導性を有する部材である。
【0027】
部材2-b,3-bは、部材2-a,3-aと異なる材料で形成されてもよい。例えば部材2-b,3-bを、比重が小さく電気伝導性に優れた材料で作ることにより、運転中にコイルエンド部に作用する遠心力を低減できる。
【0028】
回転子の組立時には、部材2-bの端部と部材2-aの端部とが、電気伝導性を有する部材2-cによって電気的に接続される。同様に、部材3-bの端部と部材3-aの端部とが、電気伝導性を有する部材3-cによって電気的に接続される。これらの接続には、ロウ付け等による接合を適用してもよい。
【0029】
なお、部材5による部材2-bの端部と部材3-bの端部との電気的接続は、上記組立時の前に行ってもよいし、後に行ってもよい。また、この接続には、ロウ付け等による接合を適用してもよい。
【0030】
第2の実施形態によれば、個々のコイル片の形状が単純化され、回転子コイルの製造が容易になる。また、コイルエンド部の回転子内径側の部分を、比重が小さく電気伝導性に優れた材料で製造できることから、運転中にコイルエンド部に作用する遠心力を低減できる。
【0031】
(第3の実施形態)
次に、
図4及び
図5を参照して、第3の実施形態について説明する。なお、第1及び第2の実施形態と共通する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。以下では、第1及び第2の実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0032】
図4は、第3の実施形態に係る回転電機の回転子の一部を周方向に見たときの構造の一例を示す図である。また、
図5は、同実施形態に係る回転電機の回転子の一部を軸方向に見たときの構造の一例を示す図である。
【0033】
本実施形態では、(1)下コイル片2のコイルエンド部のうち、回転子鉄心1の内径方向に延在する範囲および内径方向から上コイル片3のコイルエンド部により近づく方向に転向して延在する範囲に対応する第1の部分と、(2)上コイル片3のコイルエンド部のうち、回転子鉄心1の内径方向に延在する範囲および内径方向から下コイル片2のコイルエンド部により近づく方向に転向して延在する範囲に対応する第2の部分と、(3)第1の部分と第2の部分とを電気的に接続する第3の部分とが、単独の部材23で一体として形成される。
【0034】
具体的には、部材23、部材2-c、及び、部材3-cは、それぞれ、下コイル片2の回転子軸方向に延在する範囲の部材2-a、及び、上コイル片3の回転子軸方向に延在する範囲の部材3-aからは独立して別々に製造される。いずれも電気伝導性を有する部材である。
【0035】
部材23は、部材2-a,3-aと異なる材料で形成されてもよい。例えば部材23を、比重が小さく電気伝導性に優れた材料で作ることにより、運転中にコイルエンド部に作用する遠心力を低減できる。
【0036】
回転子の組立時には、部材23の一方の端部と部材2-aの端部とが、電気伝導性を有する部材2-cによって電気的に接続される。同様に、部材23の他方の端部と部材3-aの端部とが、電気伝導性を有する部材3-cによって電気的に接続される。これらの接続には、ロウ付け等による接合を適用してもよい。
【0037】
第3の実施形態によれば、上記した第1の部分、第2の部分、第3の部分を部材23で一体として製造するので、第2の実施形態と比べて部品点数およびロウ付け等による接合箇所の数を低減できる。また、コイルエンド部の回転子内径側の部分を、比重が小さく電気伝導性に優れた材料で製造できることから、運転中にコイルエンド部に作用する遠心力を低減できる。
【0038】
(第4の実施形態)
次に、
図6を参照して、第4の実施形態について説明する。なお、第1の実施形態と共通する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。以下では、第1の実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0039】
図6は、第4の実施形態に係る回転電機の回転子の一部を周方向に見たときの構造の一例を示す図である。なお、この回転子の一部を軸方向に見たときの構造については、前述の
図2から容易に理解できるため、当該構造の図示を省略する。
【0040】
本実施形態では、下コイル片2および上コイル片3のそれぞれのコイルエンド部に作用する遠心力を回転子に予め設置されているシャーシなどの支持構造物6に伝達するトランスミッタ7が、当該コイルエンド部の一部(回転子内径側の一部)と支持構造物6の一部の両方に取り付けられる。これにより、当該コイルエンド部は、支持構造物6の剛性により保持される。
【0041】
なお、支持構造物6に冷媒が通過できる適切な開口を設けることによって、冷媒の流れが促進されるようにしてもよい。また、冷媒が過剰に流れる場合においては、支持構造物6の内径側に通風抵抗を生じさせる部分を設けることで、冷媒の通過を抑制し、当該コイルエンド部の風損を低減させるようにしてもよい。
【0042】
第4の実施形態によれば、トランスミッタ7の設置により、下コイル片2および上コイル片3のそれぞれのコイルエンド部の回転子内径側を支持構造物6の剛性により安定的に保持させることができる。また、支持構造物6を適宜加工するで、下コイル片2および上コイル片3のそれぞれのコイルエンド部の風損を低減させたり、冷媒の流れを促進させたりすることもできる。
【0043】
(第5の実施形態)
次に、
図7を参照して、第5の実施形態について説明する。なお、第1の実施形態と共通する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。以下では、第1の実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0044】
図7は、第5の実施形態に係る回転電機の回転子の一部を軸方向に見たときの構造の一例を示す図である。なお、この回転子の一部を周方向に見たときの構造については、前述の
図1から容易に理解できるため、当該構造の図示を省略する。
【0045】
本実施形態では、回転子鉄心1の軸方向鉄心端から外側へ延出する下コイル片2および上コイル片3のそれぞれのコイルエンド部は、延在する方向が回転子鉄心1の軸方向から、内径方向へと転向するに際し、渡り部2-d,3-dを通じて周方向に位置移動するように構成されている。
【0046】
第5の実施形態によれば、回転子鉄心1の径が小さい場合やコイル片の数が多い場合など、内径側においてコイル片間の寸法の確保が難しい場合において、渡り部2-d,3-dで周方向に位置移動させることにより、径方向の寸法制約を緩和させることができる。
【0047】
以上詳述したように、各実施形態によれば、コイルエンド部の冷却に支障がなく、コイルエンド部の回転子軸方向の寸法を低減できる。
【0048】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0049】
1…回転子鉄心、2…下コイル、3…上コイル、4…スロット楔、5…上下コイル接続部、6…支持構造物、7…トランスミッタ。