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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】回路配線板とその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/38 20060101AFI20240408BHJP
   G02B 6/12 20060101ALI20240408BHJP
   H01Q 1/38 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
H05K3/38 A
G02B6/12 396
H01Q1/38
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020107887
(22)【出願日】2020-06-23
(65)【公開番号】P2022003669
(43)【公開日】2022-01-11
【審査請求日】2023-04-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000231361
【氏名又は名称】NISSHA株式会社
(72)【発明者】
【氏名】森 富士男
(72)【発明者】
【氏名】松井 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】坂田 喜博
(72)【発明者】
【氏名】中家 勇人
【審査官】齊藤 健一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/024175(WO,A1)
【文献】特開平6-157786(JP,A)
【文献】特開平10-212365(JP,A)
【文献】特開2012-102211(JP,A)
【文献】特開2015-131421(JP,A)
【文献】特開2017-40832(JP,A)
【文献】特開2018-166241(JP,A)
【文献】特開2020-72235(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/12
H01Q 1/38
H05K 1/00―3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶化度1%~30%の環状オレフィン系樹脂を主成分とし、C-H結合が規則的にかつ密集して配向される、基材フィルムを準備する工程と、
前記基材フィルムの表面に、前記表面の算術平均粗さRaが0.01~0.3μmになるように紫外線照射またはプラズマ処理を施す工程と、
前記紫外線照射またはプラズマ処理が施された基材フィルムの表面に、前記算術平均粗さRaの3~20倍の厚さの金属膜でなる電極を形成する工程と、
を備えた、回路配線板の製造方法。
【請求項2】
前記電極を形成する工程は、
前記基材フィルムの一方の面に、アンテナ受信または送信の電極パターンを形成する工程と、
前記基材フィルムの他方の面に、グラウンド電極を形成する工程と、
を含む、請求項1に記載の回路配線板の製造方法。
【請求項3】
前記環状オレフィン系樹脂は、式(1)の置換基R とR とがつながらず、かつC 2n+1 (n=0~8)の構造からなる、請求項1に記載の回路配線板の製造方法。
【化1】
・・・式(1)
【請求項4】
前記電極の上に光導波路を形成する工程を更に備えた、請求項1に記載の回路配線板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は基材フィルム上に電極が形成された回路配線板に関し、本発明の回路配線板の上部に光導波路などを形成することで次世代通信網における光電変換素子(光変調器)に適用できる。光電変換素子(光変調器など)は、光ファイバーを用いた光通信において、電気信号をある変換回路を用いて光源の強度を変調して光信号に変換したり、その逆の光信号を電気信号に変換するデバイスである。
【0002】
そして、本発明の基材フィルムに用いる環状オレフィン系樹脂は、極めて低吸水性・低透湿性でかつ誘電特性が非常に優秀な特性をもつ樹脂であり、次世代通信網で使用されると予想されるミリ波帯電波対応の回路基板材料の候補の一つにも挙げられている。
【背景技術】
【0003】
従来、環状オレフィン系樹脂からなる基材フィルム上に電極が形成された回路配線板(タッチセンサ)の発明として、特許文献1の発明があった。特許文献1の発明では、前記基材フィルムが、式(1)の置換基RとRがつながった環構造の水素化開環メタセシス重合体を主成分とし、電極が銅電極からなるタッチセンサの発明であり、透明性および耐熱性等に対応することを特長としていた。
・・・式(1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6267056号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記のような式(1)の置換基RとRがつながった環構造の水素化開環メタセシス重合体は、前記環構造が大きくなるほど非晶性になるため。透明性は優れていくものの誘電特性が多少低下する傾向になる課題があった。タッチセンサ用途では高透明性が必須の特性であるため高い誘電特性が多少低下しても許容されるが、高い誘電特性を必要とするミリ波帯通信対応の光電変換素子用回路配線板では、このような特性は不適であった。
【0006】
また、非晶性になればなるほど、化学的に金属材料などの電極との密着性が低下し、さらに表面が平滑になることにより物理的にも電極との密着性が低下する課題があった。したがって、一定の密着強度を維持するために、基材フィルムと金属材料などの電極との間に他の材質から成るアンカー層を設ける必要があり、そのアンカー層の相対的に低い誘電特性性能によって、回路配線板全体の誘電特性が大幅に低下してしまう課題があった。本発明らは、これらの課題を解決するために以下の回路配線板の発明をした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明の第一の特徴構成は、基材フィルム表面に、直接、接して電極が形成された回路配線板であって、前記基材フィルムが結晶化度1%~30%の環状オレフィン系樹脂を主成分とし、基材フィルム表面の算術平均粗さRaが0.01~0.3μmであって、前記電極が、前記基材フィルム表面の算術平均粗さRaの3~20倍の厚さの金属膜である回路配線板である。
【0008】
また、本発明の第二の特徴構成は、前記電極が、前記基材フィルムの一方の面に形成されたアンテナ受信または送信の電極パターンと、前記基材フィルムの他方の面に形成されたグラウンド電極とからなる回路配線板である。また、本発明の第三の特徴構成は、前記環状オレフィン系樹脂が、式(1)の置換基RとRとがつながらず、かつC2n+1(n=0~8)の構造からなる回路配線板である。
・・・式(1)
【0009】
また、本発明の第四の特徴構成は、電極の上部に光導波路が形成された回路配線板である。また、本発明の第五の特徴構成は、基材フィルムの表面に、表面の算術平均粗さRaが0.01~0,3μmになるように紫外線照射またはプラズマ処理をし、その表面に前記算術平均粗さRaの3~20倍の厚さの金属膜である電極を形成する回路配線板の製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の第一の特徴構成によれば、本発明の回路配線板は、基材フィルム表面に、直接、接して電極が形成された回路配線板であって、前記基材フィルムが結晶化度1%~30%の環状オレフィン系樹脂を主成分とし、基材フィルム表面の算術平均粗さRaが0.01~0.3μmであって、前記電極が前記基材フィルム表面の算術平均粗さRaの3~20倍の厚さの金属膜であることを特徴とする。したがって、基材フィルムの結晶質部分にあるC-H結合がほぼ規則的および密に配向し、基材フィルム表面もミリ波帯通信対応に適した適度の凹凸を有していて、金属膜の電極もその基材フィルム表面の凹凸に適応した厚みの範囲にあるため、C-H結合の一部を切断し電極材料と親和性のある官能基に改質する処理をすれば、基材フィルムとの密着強度の高い電極が形成されたミリ波帯通信に適する回路配線板を得ることができる効果がある。
【0011】
また、本発明の第二の特徴構成によれば、前記電極が、前記基材フィルムの一方の面に形成されたアンテナ受信または送信の電極パターンと、前記基材フィルムの他方の面に形成されたグラウンド電極とからなる回路配線板であることを特徴とする。したがって、グラウンド電極と基材フィルムとが背面から来る電波のノイズを遮蔽するため、アンテナ受信または送信の性能が向上する効果がある。また、各電極パターンは誘電特性の高い基材フィルムに直接接して形成されているため、受信または送信する電気信号の減衰が少なく、高性能のミリ波帯通信に適する回路配線板を得ることができる効果がある。
【0012】
また、本発明の第三の特徴構成によれば、前記環状オレフィン系樹脂が、式(1)の置換基RとRとがつながらず、かつC2n+1(n=0~8)の構造からなることを特徴とする。したがって、置換基が嵩らないため、ポリマーの主鎖が規則的に配向しやすく、結晶質部分の多い環状オレフィン系樹脂を製造しやすくできる効果がある。
【0013】
また、本発明の第四の特徴構成によれば、本発明の回路配線板は、電極の上部に光導波路が形成された回路配線板であることを特徴とする。したがって、環状オレフィン系樹脂を基板とする光電変換素子を得られる効果がある。その結果、ミリ波帯通信に適する非常に高性能な光電変換素子を得ることができる効果がある。
【0014】
また、本発明の第五の特徴構成によれば、本発明の回路配線板の製造方法は、基材フィルムの表面に、表面の算術平均粗さRaが0.01~0.3μmになるように紫外線照射またはプラズマ処理をし、その表面に前記算術平均粗さRaの3~20倍の厚さの金属膜である電極を形成することを特徴とする。したがって、紫外線またはプラズマガスの照射により基材フィルムの表面にミリ波帯通信対応に適しかつ密着強度の向上に寄与する微細な凹凸表面を形成できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第一の特徴構成における回路配線板の一例を示す概略断面図である。
図2】本発明の第二の特徴構成における回路配線板の一例を示す概略斜視図である。
図3】本発明の第四の特徴構成における回路配線板および光電変換素子の一例を示す概略断面図である。
図4】本発明の第四の特徴構成における回路配線板および光電変換素子の一例を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る用回路配線板の実施形態を図面に基づいて説明する。本発明の回路配線板1は、基材フィルム10上に、直接、接して電極20が形成された回路配線板であって、前記基材フィルム10が結晶化度1%~30%の環状オレフィン系樹脂を主成分とし、基材フィルム10の表面の算術平均粗さRaが0.01~0.3μmであって、前記電極20が、前記基材フィルム10表面の算術平均粗さRaの3~20倍の厚さの金属膜であることを特徴とする(図1参照)。
【0017】
上記前記基材フィルム10の環状オレフィン系樹脂の結晶化度は、X線回折法を用いて測定し、ピーク形状部となる結晶質部分とベースライン部となる非晶質部分のフィッティングを行い、各積分強度を以下の式に代入して結晶化度を算出する。なお、式中、Xは結晶性の散乱積分強度(すなわち、結晶質部分に由来する散乱積分強度)を示し、Yは非晶性散乱積分強度(すなわち非晶質部分に由来する散乱積分強度)を示す。
結晶化度(%)=[X/(X+Y)]×100
【0018】
上記結晶化度1%~30%の環状オレフィン系樹脂の例としては、式(1)の置換基RとRとがつながらず、かつC2n+1(n=0~8)の構造からなる環状オレフィン系樹脂が挙げられる。式(1)の置換基RとRとがつながった環構造の環状ポリオレフィン系ポリマーであると、その嵩高い置換基のためにポリマーの主鎖どうしの距離が離れ、ポリマーの主鎖の配向が阻害され、結果として結晶性部分が1%未満の非晶性ポリマーとなりやすい。
・・・式(1)
【0019】
この前記基材フィルム10の環状オレフィン系樹脂表面に何らかの表面改質処理を施すことによって、C-H結合の一部を切断し、金属材料などとの親和性のある-OH基、-COOH基、-CO基などの官能基に変化させることにより、基材フィルム10と電極20との密着強度を向上させることができる。
【0020】
とくに、結晶質部分にあるC-H結合はほぼ規則的にかつ密集して配向しているため、その箇所の部分を上記の官能基に改質すれば、効果的に密着強度を向上させることができる。したがって、結晶化度が高いほど効果的に密着強度を向上させることができるため、置換基RとRはC2n+1のnの値が低い置換基の方が好ましい。nの値が8を越えるような大きな置換基になれば、RとRとがつながった置換基の場合と大きな差がなくなる傾向になる。
【0021】
さらに、この前記基材フィルム10の表面に微細な凹凸11を形成して(図1参照)、直接その表面に電極20を形成すれば、微細な凹凸11の凹部深部に金属粒子などが喰い込むように析出形成され、そのアンカー効果により基材フィルム10と電極20との密着強度をより向上させることができる。
【0022】
しかし、この前記基材フィルム10の表面を一般的なメッキ手法で適用されているような数十μm~数百μmレベルの大きな凹凸形状にすれば、電極20内を移動する電気信号のうち基材フィルム10との界面付近を移動する電気信号の経路が減少するため、その界面付近を移動する電気信号の割合が高いミリ波帯電波対応の回路基板に適用するには、不都合が生じた。したがって、アンカー効果を維持しつつかつ界面付近を移動する電気信号の経路が充分確保できる微細な凹凸11の形状と、その製造方法を新たに発明考案する必要があった。
【0023】
発明者らは、どの程度の微細な凹凸11の形状が適切か創意工夫を重ねた結果、微細な凹凸11が算術平均粗さRaで0.01~0.3μmであるようにすれば、アンカー効果を維持しつつかつ界面付近を移動する電気信号の経路が充分確保できることを見出した。すなわち、Raが0.01μm未満であれば充分な密着強度が得られず、Raが0.3μmより大きければミリ波帯電波対応の回路基板に適用するには不充分であった(表1参照)。
【0024】
また、その微細な凹凸11をどのようにして製造するか鋭意工夫を重ねた結果、特定の条件による紫外線照射またはプラズマ処理による表面改質の方法を発明した。熱インプリント法も方法の一つとして挙げられるが、大面積でもってエンドレスに大量生産する場合には余り適していない。また、汎用的に用いられるコロナ放電処理も方法の一つとして挙げられるが、安定的に上記の範囲の微細な凹凸11を形成できる設定条件が狭かった。
【0025】
紫外線照射による表面改質の条件としては、例えば、紫外線ランプを用いて基材フィルム10から1~3cm離して3~10分程度照射するとよい(表2および表3参照)。前記以上に距離を離たり照射時間を短くすると、前記所望の微細な凹凸11が得られない。逆に、前記距離よりも近づけたり、照射時間を長くすると、前記凹凸が大きくなりすぎたり凹凸のバラツキが大きくなりすぎる問題があった。
【0026】
プラズマ処理による表面改質の条件としては、例えば、酸素や四フッ化炭素雰囲気中で真空紫外光のキセノンエキシマランプを用いて、基材フィルム10から0.5~2cm離して2~5分程度照射するとよい。前記距離を離したり、照射時間を短くすると前記所望の微細な凹凸11が得られず、逆に前記距離よりも近づけたり照射時間を長くすると前記凹凸が大きくなりすぎたり凹凸のバラツキが大きくなりすぎる問題があった。
【0027】
そして、電極20の厚みを、前記基材フィルム10表面の算術平均粗さRaの3~20倍にする必要がある。電極20の厚みが30nm(すなわち、前記基材フィルム10表面の算術平均最小粗さRa=0.01μmの3倍)未満になると電極20の断面積が小さくなり、充分な電気信号を伝播させるための経路が確保できない。一方、電極20の厚みが前記基材フィルム10表面の算術平均粗さの20倍を越えると、前記基材フィルム10表面に所望範囲の微細な凹凸11が形成されていても、アンカー効果が低下して電極20が基材フィルム10表面から剥がれやすくなる。
【0028】
電極20は金属膜から成る層であり、材質の例としては、銅、金、銀、アルミニウム、ニッケル、パラジウム、インジウムなどの純粋な導体金属のほか、前記金属を含む導電ペースト膜、前記金属を含む導電繊維、前記金属を含む酸化膜であってもよい。電極20の製膜方法としては、電解または無電解のメッキ法のほか、スパッタリング、真空蒸着、拡散転写などにより形成する方法が挙げられる。
【0029】
また電極20は、外部から送信された電波信号を受信したり外部に対して電波信号を送信するようなアンテナ受信または送信の電極パターン201であってもよい。また、それらの電波信号ノイズを遮蔽するグラウンド電極202であってもよい。そして、このアンテナ受信または送信の電極パターンからなる電極201と、電波信号ノイズを遮蔽するグラウンド電極からなる電極202とを、基材フィルム10の両面に形成してもよい(図2参照)。
【0030】
このように前記所望の微細な凹凸11からなる基材フィルム10の両面に、前記所望の厚みの電極201,202を形成することで、受信または送信する電気信号の減衰が少なく、アンテナ受信または送信の性能が向上した回路配線板1が得られる。そして、前記誘電特性の高い基材フィルム10に、直接、接して電極201,202が形成されているため、高性能のミリ波帯通信に適する回路配線板1になる。その結果、ミリ波光変調器、ミリ波受光電池、光ファイバーを利用した衝突防止ミリ波レーダー、アンテナ用コンバータ、船舶用レーダー、無線LAN、FWA、ETCなど様々な用途の製品に展開が可能となる。
【0031】
その中でも、この回路配線板1の上部に光導波路3を形成することで、ミリ波帯通信に適する次世代の光電変換素子5、例えば次世代のミリ波光変調器を得ることができる(図3図4参照)。光導波路3は、例えば、厚さ0.3mm程度のニオブ酸リチウムなどの板状基板の一部をアニールプロトン交換法によって屈折率を変化させて形成するとよい。屈折率の差によって光は光導波路3内に閉じ込められるため、一方向から光を入力すると光導波路3に沿って光が進行し出力するまでの間に、入力された光信号に応じて変換された無線電気信号が前記アンテナ送信の電極パターン201から電波として発信される。また、前記アンテナ受信の電極パターン201で受信された電波の無線電気信号を光信号に変換することもできる。前記板状基板と回路配線板との積層には、例えば低誘電のポリイミド接着剤を塗布・載置する方法が挙げられる。
【0032】
(実施例1)
基材フィルムとして、式(1)の置換基RとRとが水素原子、エチル基、n-オクタン基、n-ノナン基の構造からなる厚み200μmの環状オレフィン系樹脂ポリマーフィルムの両面に、波長254nmの紫外線ランプを用いて前記基材フィルムから2cm離して10分間照射したあと、25℃の無電解銅メッキ浴(硫酸銅・五水和物0.03mol/L、ホルマリン0.3mol/L、ロッシェル塩錯化剤0.3mol/L、PH12.5)に浸漬させ、続いて25℃の電解銅メッキ浴(硫酸銅・五水和物10%、硫酸18%、塩酸0.5%、有機系添加剤等1%、イオン交換水70.5%)に浸漬させて、厚み0.3~5μmの銅膜を両面に形成した。
【0033】
得られた回路配線板の基材フィルムに対する銅膜の引き剥がし強度結果を表1に示す。相対的に銅膜の厚みが薄いほど引き剥がし強度が高く、置換基RとRが小さいほど引き剥がし強度が高くなる傾向が見られた。そして、各基材フィルムの結晶化度を予め測定しておいたところ、置換基RとRが小さい官能基ほど結晶化度が高い傾向が見られた。また、得られた回路配線板の周波数60GHzにおける誘電特性を評価したところ、いずれの回路配線板においても誘電正接が0.0008~0.0015、比誘電率が2.3~2.7と低く、とくに置換基RとRが小さいほど良好であった。
【0034】
【表1】
【0035】
続いて、前記銅膜の両面に光感光性フィルムを貼付しフォトマスクを用いて露光、現像してアンテナ送信パターンの電極と電磁波シールドパターンの電極とを形成した回路配線板を得た。そして、得られた回路配線板のアンテナ送信パターン電極の上部に厚さ0.25mmのニオブ酸リチウムからなる光導波路を積層し、光電変換素子を作製した。得られた光電変換素子を光ファイバーと接続し、光ファイバーから光信号を入力すると光導波路を介して、光信号に応じた無線電気信号が周波数60GHzの電波としてアンテナ送信パターンの電極から発せられていることが確認された。
【0036】
発せられた周波数60GHzの電波を100m先にある受信機で受信し評価したところ、通信速度は平均1.2Gb/sであり、伝送密度は1m当たり5~8Gb/sであり、1m当たり接続可能な回線密度は4~7チャンネルに相当して、伝送による損失は2割以下に低く抑制されていた。よって、本発明の光電変換素子用回路配線板を使用すれば、高速・大容量の光信号データを効率的に60GHz帯の電波に変換して伝送できることが確認された。
【0037】
(実施例2)
基材フィルムとして、式(1)の置換基RとRとがn-オクタン基の構造からなる厚み200μmの環状オレフィン系樹脂ポリマーフィルムを用いて、紫外線ランプの照射時間や距離を変え、あとは実施例1と同じ条件にして回路配線板および光電変換素子を作製し、評価した。評価については、紫外線ランプが照射された環状オレフィン系樹脂ポリマーフィルムの表面に対し表面粗さ計を用いて算術平均粗さRaを測定した。その結果を表 2および表3に示す。評価の結果、環状オレフィン系樹脂ポリマーフィルムの表面の算術平均粗さRaが0.01~0.3μmの範囲にあり、かつ銅膜の厚みがRaの3~20倍の範囲なら銅膜と接着をし、光信号に応じた無線電気信号が周波数60GHzの電波としてアンテナ送信パターンの電極から発せられていることが確認された。とくにRaが0.04~0.3μmで銅膜の厚みがRaの3~5倍の範囲の範囲にあれば引き剥がし強度が10N/cm以上の回路配線板も得られた。一方で、算術平均粗さRaが0.3μmを越えた場合、銅膜との接着は強力であったが、周波数60GHzの電波は未検出になった。
【0038】
【表2】

【表3】
【0039】
(実施例3、4)
前記、紫外線ランプの代わりに酸素雰囲気中で真空紫外光のキセノンエキシマランプを用いて、同様にテストをした結果、基材フィルムからの距離や照射時間などの条件に相違があるものの、環状オレフィン系樹脂ポリマーフィルムの表面の算術平均粗さRaと銅膜との接着性、周波数60GHzの電波性能など評価結果については、同様の結果であった。このことから、環状オレフィン系樹脂ポリマーフィルムの表面の算術平均粗さRaや、銅膜の厚みとRaの関係性が前記所定の範囲内になるようにすれば、基材ファイルの表面改質の方法に関わらず所望の光電変換素子用の回路配線板を製造できることが確認された。
【符号の説明】
【0040】
1 回路配線板
3 光導波路
5 光電変換素子
10 基材フィルム
11 基材フィルム表面の微細な凹凸
20 電極
201 アンテナ受信または送信の電極パターンからなる電極
202 グラウンド電極
図1
図2
図3
図4